説明

工作機械スピンドルの潤滑油供給装置

【課題】従来の給油装置は、油タンク、ポンプ等が、潤滑対象となる軸受及びその軸受を含むスピンドルから離れた場所に設置されるため、配管の取り回しが必要とる不便があり、また、ポンプの駆動のために外部電源を使用していたので省エネの点から問題があった。
【解決手段】スピンドル外部に潤滑油の貯蔵タンク55を設け、貯蔵タンク55から給油経路を経て回転軸13を支持する転がり軸受14に潤滑油を供給する工作機械スピンドルの潤滑油供給装置において、前記貯蔵タンク55を前記転がり軸受14より高い位置に設置し、潤滑油の自重による圧力でこれを転がり軸受14へ送るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械スピンドルの軸受に対する潤滑油の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械スピンドルの潤滑油供給装置として、スピンドルから離れた位置に油タンク、ポンプ等を設置し、ポンプと軸受間に配管を設け、ポンプの駆動によってスピンドルの軸受内部に潤滑油を供給する潤滑油供給装置が従来から知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−130593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の潤滑油供給装置は、油タンク、ポンプ等の潤滑装置が、潤滑対象となる軸受及びその軸受を含むスピンドルから離れた場所に設置されるため、配管の取り回しが必要となり、装置全体の取り付けに手間が掛かる不具合があった。
【0005】
また、潤滑油の圧送のためにポンプが用いられるため、そのポンプの駆動及び給油量調節装置の駆動のために、外部電源からの通電が必要となるので、省エネルギー化の点から問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、給油のための配管がスピンドルの外部にわたることなくスピンドル内に収まるようにして配管の取り回しを必要とせず、また省エネルギー効果のある潤滑油供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明に係る工作機械スピンドルの潤滑油供給装置は、スピンドル外部に潤滑油の貯蔵タンクを設け、前記貯蔵タンクから給油経路を経て回転軸を支持する転がり軸受に潤滑油を供給する工作機械スピンドルの潤滑油供給装置において、前記貯蔵タンクを前記転がり軸受より高い位置に設置した構成としたものである。前記の構成により、貯蔵タンク内の潤滑油はその自重による圧力によって転がり軸受に供給される。
【0008】
また、前記転がり軸受の固定側及び回転側軌道輪の前記貯蔵タンクに近い方の端面に隣接してそれぞれ固定側間座及び回転側間座が設けられ、前記固定側間座及び回転側間座の間にその固定側間座に固定された環状のユニットケーシングが介在され、前記ユニットケーシングは、隔壁によって前記転がり軸受側の内部タンクとその反対側の制御室に分けられ、前記内部タンクは前記貯蔵タンクに連通され、その内部タンクに設けられたノズルが前記貯蔵タンクより低い位置において当該転がり軸受の内部に向けて開放され、前記貯蔵タンクからノズルに至る給油系によって給油ユニットを構成し、前記制御室とその内部部材によって制御ユニットを構成することができる。
【0009】
前記のユニットケーシングは、間座の部分に介在されるので、装置のコンパクト化、省スペース化に資することができる。
【0010】
また、制御部及び弁の作動に必要な電源は、回転側間座に取り付けられた多極磁石と、その多極磁石に対向して前記制御室に設けられた発電コイルによって構成される発電機によって得るようにしている。このため、外部から電源を供給する必要がない。
【発明の効果】
【0011】
(1)潤滑油の自重による圧力で給油するようにしたので、貯蔵タンクの内圧を高めるためのポンプ等の加圧手段が不要となり、省エネルギー化を図ることができる。
【0012】
(2)潤滑油の貯蔵タンクを装置のコラムに設置することができるので、給油経路が短くなり配管の取り回しを必要としない。
【0013】
(3)ノズルを開放するための電源は、回転側間座(実施形態の内輪側間座)の回転に伴って発電される電力を利用するものであるため、外部電源を使用する必要がない。また、ノズルはばねの付勢力によって常時閉鎖され、給油が必要なときのみ電磁石に通電するようにしているので、これらの点からも省エネルギー化を図ることができる。
【0014】
(4)回転側間座(実施形態の内輪間座)と固定側間座(同外輪間座)の間にユニットケーシングを介在し、そのユニットケーシングの内部を内部タンクと制御室に分離しているので、制御ユニットと給油ユニットの弁体部分を隣接状態に組み込むことができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置の断面図である。
【図2】図2は、図1の一部拡大断面図である。
【図3】図3は、図2の一部拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の一部拡大断面図である。
【図5】図5は、図1の一部拡大断面図である。
【図6】図6は、図1の一部拡大断面図である。
【図7】図7は、制御ユニットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0017】
まず、図1及び図2に示した工作機械スピンドルの概要を説明する。このスピンドルは、マシンニングセンター、研削盤、旋盤等の工作機械において使用されるものである。図示の場合は縦型のものを示しているが、この発明は横型のものにも適用することができる。
【0018】
機械の本体に固定された鋳物製のコラム11にハウジング12が固定され、そのハウジング12のセンターに回転軸13が配置される。ハウジング12は、下部ハウジング部材12bの上端の段差部12c(図4参照)に上部ハウジング部材12aを嵌め、段差部12cに設けた周溝37に溜めた接着剤により結合一体化している。
【0019】
回転軸13を支持する軸受は、負荷側(以下、下部という。)の転がり軸受14及び反負荷側(以下、上部という。)転がり軸受15によって構成される。下部の転がり軸受14は4個使用し軸方向に4段に配置している。下部の転がり軸受15は1個である。これらの転がり軸受14、15としてはいずれもアンギュラ玉軸受が使用される。
【0020】
下部及び上部の転がり軸受14、15の間に回転軸13を駆動するためのモータ16が設けられる。モータ16は回転軸13に取り付けられたモータロータ16aとハウジング12側に取り付けられたモータステータ16bにより構成される。スピンドルを駆動するモータ16は、このようにスピンドル内部に設けるほか直接回転軸13を駆動する形式や、スピンドル外部に設置しベルト伝動等により駆動する形式もある。
【0021】
前記下部の転がり軸受14を構成するアンギュラ玉軸受は、内輪(回転側軌道輪)17と外輪(固定側軌道輪)18の間に転動体19を介在したものであり(図2、図3参照)、転動体19は保持器21によって一定間隔に保持される。下側の2段の転がり軸受14は、それぞれのアンギュラ玉軸受の正面側を上向きとした姿勢で配置される。また上側の2段はこれとは反対に正面側を下向きとした姿勢で配置される。
【0022】
各内輪17の上段に隣接して内輪間座(回転側間座)22が介在され、同様に各外輪18の上段に隣接して外輪間座(固定側間座)23が介在される。各転がり軸受14のシール部材25(図3参照)は各転がり軸受14の下部肩部に装着され、上部から下向きに後述のノズル78を挿入する場合の妨げとならないようにしている。
【0023】
下部の4段の転がり軸受14は、回転軸13と下部分配筒24の間に介在される。下部分配筒24は下部ハウジング部材12bの内径面に回転軸13と同軸状態に固定され、その肉厚内に後述の分配経路66が設けられる。下部分配筒24の外径面と下部ハウジング部材12bの内径面の間には冷却水通路39が設けられ、下部分配筒24を介して転がり軸受14の冷却を行うようにしている。但し、冷却水の配管経路は図示を省略している。
【0024】
最上段に配置された内輪間座22と、回転軸13の拡径部26の段差部分27の間に内輪固定間座28が介在される(図1、図2参照)。また、最下段に配置された転がり軸受14の内輪17の下端面に内輪位置決め間座29が軸方向に押し当てられる。その内輪位置決め間座29は、回転軸13の下端部にねじ止めされた内輪固定ナット31によって軸方向に位置決めされる。
【0025】
また、最上段に配置された外輪間座23に対して、回転軸13の前記拡径部26に微小な回転すき間をおいて嵌合された外輪押さえ部材32(図1、図2参照)が軸方向に押し当てられる。外輪押さえ部材32はそのツバ部33が前記の下部分配筒24の上端面に固定される。最下段に配置された転がり軸受14の外輪18にハウジング12の下部蓋リング34が軸方向に押し当てられる。
【0026】
下部蓋リング34は、前記の内輪位置決め間座29及び内輪固定ナット31の外径面に微小な回転すき間をおいて嵌合される。下部蓋リング34は、ハウジング12の下端面との間に下部分配筒24のツバ部35を挟んで下部ハウジング部材12bに固定される。
【0027】
図4に示したように、上部ケーシング部材12a、下部ケーシング部材12b及び下部分配筒24の各外径面にそれぞれ浅い周溝36、37、38が設けられる。これらの周溝36、37、38に溜めた接着剤によって、コラム11と上部ケーシング部材12a、上部ケーシング部材12aと下部ケーシング部材12b、下部ケーシング部材12bと下部分配筒24の相互間を接着により結合一体化している。
【0028】
前述の上部の転がり軸受15は、図1及び図5に示したように、回転軸13と上部分配筒41との間にアンギュラ玉軸受の正面側を上向きにして介在される。上部分配筒41はハウジング12の上端面に固定された上部蓋リング42の内径面に固定される。
【0029】
この場合も上部分配筒41の外径面と上部蓋リング42の内径面の間に設けられた冷却水通路43(図5参照)が設けられ、上部分配筒41を介して転がり軸受15を冷却するようにしている。但し、冷却水の配管経路は図示を省略している。上部分配筒41はその下端部に内向きのツバ部44が設けられ、そのツバ部44の内径面と回転軸13との間には微小な回転すき間が設けられる。
【0030】
また、転がり軸受15のシール部材30はその下部(背面側)の肩部に装着され、上部からノズル78を挿入する際の妨げとならないようにしている。
【0031】
前記転がり軸受15の内輪45の下部端面と回転軸13の段差部分46との間に内輪固定間座47が介在され、また内輪45の上端面と内輪固定ナット48の間に内輪間座49が介在される。内輪固定ナット48は回転軸13の上端部外周にねじ結合により固定される。
【0032】
転がり軸受15の外輪51の下端面と、上部分配筒41のツバ部44との間に外輪固定間座52が介在され、また外輪51の上端面と外輪押さえリング53の間に外輪間座54が介在される。外輪押さえリング53は、内輪固定ナット48に対し径方向及び軸方向に回転すき間をおいて上部分配筒41の端面に固定される。
【0033】
次に、前記の各転がり軸受14、15に対する給油装置について説明する。下部の転がり軸受14と上部の転がり軸受15に対する各給油装置は独立している。また各給油装置はそれぞれ給油系をまとめた給油ユニット40(図1、図2、図3参照)と、制御系をまとめた制御ユニット50(図2、図3、図6参照)により構成される。
【0034】
下部の転がり軸受14に関する給油ユニット40は、貯蔵タンク55から、下部分配筒24及びユニットケーシング72の内部タンク76を経てノズル78に至る一連の部材によって構成される。
【0035】
図1に示したように、金属製又はプラスチック製の貯蔵タンク55は、コラム11の外側面において最上段の転がり軸受14よりも高い位置に取り付けられる。貯蔵タンク55は上面に潤滑油の補充口56が設けられる。補充口56にフィルター57が装着され蓋58が施される。蓋58には空気穴58aが設けられ、貯蔵タンク55の内部を大気に開放するようにしている。
【0036】
貯蔵タンク55の底面又は側面下部に流出口59が設けられ、また内部底面に流出口59に向う勾配を付けることにより、潤滑油の流出残りを生じないようにしている。貯蔵タンク55の前面又は側面に耐油性プラスチック板からなるのぞき窓60が設けられる。目盛り線を設けるとなお良い。
【0037】
前記流出口59に流量調整弁65が取り付けられ、その流量調整弁65にワンタッチ継手等の適宜な継手61を介してホース62が接続される。ホース62はコラム11に斜めに設けられた配管経路63内に導かれ、上部ハウジング部材12aに設けられた油穴64に連通される。油穴64は前記の下部分配筒24の分配経路66の主経路67に連通される(図2及び図3参照)。
【0038】
前記分配経路66は、軸方向に設けられた主経路67と、各外輪間座23に対応した位置において主経路67から径方向に分岐した分岐経路68により構成される。
【0039】
各外輪間座23の外径面には、分岐経路68に対応した位置に円周溝69が設けられ(図2参照)、その円周溝69に通じた内部経路70が各外輪間座23に設けられる。内部経路70は、外輪間座23と内輪間座22間に設けられた後述の内部タンク76(図3参照)に連通される。前記の円周溝69は、分岐経路68と、内部経路70との周方向の位置合わせをラフなものにするメリットがある。
【0040】
内部タンク76については後述するが、その底面に弁体79によって開閉されるノズル78が設けられる。「特許請求の範囲」においては、前記の貯蔵タンク55の流出口59からノズル78に至るまでの給油系統を「給油経路」と総称している。
【0041】
上部の転がり軸受15の給油ユニット40は、図1及び図5に示したように、前述した下部の転がり軸受14の給油ユニット40と同様の構成であるので、同一部材に対しては同一符号を付して示すにとどめ、その説明を省略する。但し、この場合は貯蔵タンク55を転がり軸受15より高い位置に設置するため、コラム11の上端面に架台71を設け、その上に貯蔵タンク55を設置している。また、ホース62は直接上部分配筒41の分配経路66に接続している。
【0042】
次に、下部の転がり軸受14の制御ユニット50について説明する。制御ユニット50は、内輪間座22と外輪間座23の間に介在されたユニットケーシング72の制御室77とその内部に設けられた諸部材により構成される(図3、図5〜図7参照)。
【0043】
図3に示したように、各転がり軸受14の軸方向上部に接して介在された4段の内輪間座22と外輪間座23の間ごとにそれぞれ環状のユニットケーシング72が介在される。ユニットケーシング72は外輪間座23の内径面に接着固定され、内輪間座22との間に所要の回転すき間が設けられる。ユニットケーシング72の上面部分は蓋部材74となっている。
【0044】
ユニットケーシング72の内部は、隔壁75(図3参照)によって上下に分割されている。下部は前記給油ユニット40の一部を構成する内部タンク76、上部は制御ユニット50を構成する制御室77となっている。
【0045】
前記内部タンク76には前述の内部経路70が連通され、内部タンク76の下面には、対応する転がり軸受14の内部に向けて下向き延びたノズル78が設けられ、そのノズル78の内側の内部タンク76内に弁体79が上下方向に移動可能に設けられる。内部タンク76、ノズル78及び弁体79は給油系に属し、前述の給油ユニット40の構成部材である。
【0046】
前述のように4段の転がり軸受14のうち、上部の2段はその正面側が下向き、即ち背面側が上向きとなっているので、そのままでは背面側に上方からノズル78を挿入することは困難である。このため、上部の2段の転がり軸受14については、背面側にノズル78を挿入するスペースを確保すべく、その転がり軸受14の外輪18内径面の肩部に軌道溝80に達する拡径段差部81が設けられる。ノズル78の先端を拡径段差部81の内径面に形成されたスペースに挿入し、軌道溝80及び転動体19に接近している。
【0047】
下部の2段の転がり軸受14は正面側が上向きとなっているので特別な加工を施すことなく、その軌道溝82に向けてそのままノズル78を挿入し、その先端を内輪17側の軌道溝82及び転動体19に接近している。
【0048】
前記弁体79の下端にガイドピン83が設けられ、そのガイドピン83を所要のすき間をおいてノズル78に挿通し弁体79のガイドとしている。弁体79とガイドピン83の間の弁体肩部84によってノズル78を開閉する。弁体肩部84(図6参照)にOリング(図示省略)を装着し、そのOリングによってノズル78を開閉するようにしてもよい。
【0049】
前記弁体79の上端面に磁性片85が埋められ、その磁性片85の周りに嵌めたコイルばね86の上端を隔壁75に押し当てることによって、弁体79によって常時ノズル78を閉鎖方向に付勢している。
【0050】
前記制御ユニット50を構成する制御室77においては、前記弁体79に対向した隔壁75の一部に電磁石87が取り付けられ、その電磁石87が励磁されると弁体79をコイルばね86の付勢力に対向して引き寄せノズル78を開放するようにしている。
【0051】
前記の電磁石87の励磁用電源部となる発電機88は、そのロータとなるリング状の多極磁石89が制御室77に対向した内輪間座22の外径面に埋め込まれる。制御室77の内部にはステータとなる発電コイル90が多極磁石89に対向して、周方向に1個所又は複数個所に設けられる。発電コイル90は鉄心に巻回され、多極磁石89の回転に伴ってその発電コイル90の両端に交流電力が発生する。
【0052】
前記の多極磁石89は、フェライト、希土類などの磁性粉をNBR(ニトリルゴム)などをバインダとして混ぜ合わせて加硫成形し、これに着磁を施したものを内輪間座22の外径面に設けた円周溝22aに接着固定する。前記接着方法以外に、前記円周溝22aにフェライト、希土類などの磁性粉をNBRなどをバインダとして混ぜ合わせたものを装着し、そのゴム磁性材料を円周溝22aに加硫接着し、これに着磁を施す方法もある。
【0053】
また、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などをバインダとしたプラスチック磁石、焼結製の磁石のセグメントを前記円周溝22aに接着する方法もある。
【0054】
制御室77の内部に制御部91が設けられる。制御部91は前記の交流を直流に変換する交直変換器92(図7参照)、変換された直流電力を蓄電する電気二重層キャパシタ等のコンデンサ93、CPU94、各種の検知手段が設けられる。検知手段としては、コンデンサ93の充電量検知センサー95、転がり軸受14の温度を検知する温度センサー96、転がり軸受14の回転速度を検知する速度センサー97がある。その他、コンデンサ93の充電時間計測タイマー、回転軸13に作用する負荷の大きさを検知するトルクセンサー等がある。
【0055】
CPU94は、これらの検知手段から得られる信号に基づき適宜電磁石87を制御しノズル78を開閉させ、潤滑油を転がり軸受14に対して吐出させる。
【0056】
前記転がり軸受15側のユニットケーシング72、内部タンク76、制御室77の構成、制御室77を含む制御ユニット50(図5参照)の構成は、前述の転がり軸受14の場合と同様の構成であるので、図5に同一符号を付して示すにとどめその説明を省略する。
【0057】
実施形態1の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置は以上のようなものであり、次にその作用について説明する。
【0058】
下部の転がり軸受14及び上部の転がり軸受15に対応した各貯蔵タンク55の内部においては、蓋58の一部に設けられた空気穴58aによって大気圧が油面に作用している。流量調整弁65によって調整された量の潤滑油は、大気圧と油面の高さ及び潤滑油の比重に基づく圧力、即ち自重による圧力によって、各ノズル78から転がり軸受14、15の内部に吐出される。
【0059】
回転軸13の回転に伴い各転がり軸受14、15が回転すると、内輪間座22に設けられた多極磁石89の回転によって発電コイル90に交流電力が誘起される。その交流電力は交直変換器92によって直流に変換されコンデンサ93に蓄積される。多極磁石89と発電コイル90によって構成された発電機88、交直変換器92及びコンデンサ93を電源部と総称する。
【0060】
ノズル78の開閉は、前記電源部から電磁石87への通電を、充電量検知センサー95等の各種センサーの検知信号に基づきCPU94によって制御することにより行う。その制御により、給油が必要であるときのみ弁体79を後退開放させ、ノズル78を開放して転がり軸受14、15に給油を行う。
【符号の説明】
【0061】
11 コラム
12 ハウジング
12a 上部ハウジング部材
12b 下部ハウジング部材
12c 段差部
13 回転軸
14 転がり軸受
15 転がり軸受
16 モータ
16a モータロータ
16b モータステータ
17 内輪
18 外輪
19 転動体
21 保持器
22 内輪間座
22a 円周溝
23 外輪間座
24 下部分配筒
25 シール部材
26 拡径部
27 段差部分
28 内輪固定間座
29 内輪位置決め間座
30 シール部材
31 内輪固定ナット
32 外輪押さえ部材
33 ツバ部
34 下部蓋リング
35 ツバ部
36〜38 周溝
39 冷却水通路
40 給油ユニット
41 上部分配筒
42 上部蓋リング
43 冷却水通路
44 ツバ部
45 内輪
46 段差部分
47 内輪固定間座
48 内輪固定ナット
49 内輪間座
50 制御ユニット
51 外輪
52 外輪固定間座
53 外輪押さえリング
54 外輪間座
55 貯蔵タンク
56 補充口
57 フィルター
58 蓋
58a 空気穴
59 流出口
60 のぞき窓
61 継手
62 ホース
63 配管経路
64 油穴
65 流量調整弁
66 分配経路
67 主経路
68 分岐経路
69 円周溝
70 内部経路
71 架台
72 ユニットケーシング
74 蓋部材
75 隔壁
76 内部タンク
77 制御室
78 ノズル
79 弁体
80 軌道溝
81 拡径段差部
82 軌道溝
83 ガイドピン
84 弁体肩部
85 磁性片
86 コイルばね
87 電磁石
88 発電機
89 多極磁石
90 発電コイル
91 制御部
92 交直変換器
93 コンデンサ
94 CPU
95 充電量検知センサー
96 温度センサー
97 速度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル外部に潤滑油の貯蔵タンクを設け、前記貯蔵タンクから給油経路を経て回転軸を支持する転がり軸受に潤滑油を供給する給油ユニットを備えた工作機械スピンドルの潤滑油供給装置において、前記貯蔵タンクを前記転がり軸受より高い位置に設置したことを特徴とする工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記貯蔵タンクが工作機械のコラムに取り付けられ、その貯蔵タンクの底面又は側面下部に設けられた潤滑油の流出口と前記転がり軸受の間を給油経路によって接続したことを特徴とする請求項1に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記貯蔵タンクは、その上面に潤滑油の補充口を有し、その補充口の内部にフィルターが装着され、そのフィルターより外側の補充口内部に蓋が着脱自在に嵌合され、前記蓋に空気穴が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記貯蔵タンクの底面又は側面下部に潤滑油の流出口が設けられ、その流出口に流量調節弁が設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項5】
前記スピンドルが縦型であり、その回転軸を支持する前記転がり軸受が下部と上部に分けて配置され、前記給油ユニットが下部の転がり軸受と上部の転がり軸受にそれぞれ独立して設けられたことを特徴とする工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項6】
前記下部の転がり軸受に対応した給油ユニットの貯蔵タンクは前記コラムの側面に取り付けられ、上部の転がり軸受に対応した給油ユニットの貯蔵タンクは前記コラムの上面に設置した架台の上に搭載されたことを特徴とする請求項5に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項7】
前記転がり軸受の固定側及び回転側軌道輪の前記貯蔵タンクに近い方の端面に隣接してそれぞれ固定側間座及び回転側間座が設けられ、前記固定側間座及び回転側間座の間にその固定側間座に固定された環状のユニットケーシングが介在され、前記ユニットケーシングは、隔壁によって前記転がり軸受側の内部タンクとその反対側の制御室に分けられ、前記内部タンクは前記貯蔵タンクに連通され、その内部タンクに設けられたノズルが前記貯蔵タンクより低い位置において当該転がり軸受の内部に向けて開放され、前記貯蔵タンクからノズルに至る給油系によって給油ユニットが構成され、前記制御室とその内部部材によって制御ユニットが構成されたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項8】
前記スピンドルハウジングと前記固定側間座の間に分配筒が設けられ、前記分配筒に前記貯蔵タンクに連通した分岐経路が固定側間座に対応して設けられ、前記固定側間座の外径面に前記分岐経路と連通した周溝が設けられ、その周溝に連通した内部経路が前記固定側間座に設けられたことを特徴とする請求項7に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項9】
前記ノズルの開閉弁が前記内部タンク内に軸方向に移動可能、かつ常時ノズルを閉鎖する方向に付勢して設けられたことを特徴とする請求項7又は8に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項10】
前記開閉弁の制御手段が前記制御室に設けられ、前記制御手段が前記開閉弁をその付勢力に対抗して吸引し開放させるせる電磁石とその電源部及び制御部とからなることを特徴とする請求項9に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項11】
前記電源部は、回転側間座に取り付けられた多極磁石と、その多極磁石に対向して前記制御室に設けられた発電コイルと、前記発電コイルから得られる交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、その直流電力を蓄積するコンデンサによって構成され、前記発電コイルに回転すき間をおいて対向した回転側間座に多極磁石が取り付けられ発電機を構成することを特徴とする請求項10に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項12】
前記制御部はCPUを有し、そのCPUにより前記コンデンサに蓄積された電力の前記電磁石への通電を制御することを特徴とする請求項10又は11に記載の工作機械スピンドルの潤滑油供給装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の潤滑油供給装置を備えたことを特徴とする工作機械スピンドル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92238(P2013−92238A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235983(P2011−235983)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】