説明

差圧制御弁及び容量可変型圧縮機

【課題】圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる差圧制御弁を提供する。
【解決手段】差圧制御弁100は、弁座110と、弁座110に対して下流側に位置し、上流側と下流側との圧力差に応じて弁座110に対して着座又は離座することにより弁孔111を開閉する弁体120と、弁座110に固定され、弁体120を案内する案内部材130とを備える。弁座110は磁性材料からなる。弁体120は、弁座110に着座して弁孔111を閉鎖可能な磁性材料からなる蓋体121と、案内部材130に案内される非磁性材料からなる被案内部材125とを有する。弁座110及び蓋体121の一方には永久磁石150が設けられ、永久磁石150の吸引力により弁体120が弁座110に接近するように付勢される。永久磁石150は弁体120が弁座110に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差圧制御弁及び容量可変型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1〜図8に従来の差圧制御弁の4つの例が開示されている。これらの差圧制御弁は、上流側から下流側に流体を流す流路上に配設されるものである。各差圧制御弁は、流体が通過する弁孔が形成された弁座と、弁座に対して下流側に位置し、上流側と下流側との圧力差に応じて弁座に対して着座又は離反することにより、弁孔を開閉する弁体と、弁座に固定され、弁体を案内する案内部材とを備えている。これらの差圧制御弁では、弁座及び弁体の一方が磁性材料からなり、弁座及び弁体の他方は全体が永久磁石からなる。
【0003】
これらの差圧制御弁によれば、弁孔の閉鎖時、永久磁石と磁性材料との間に作用する吸着力により、弁体が弁座に対して着座を維持する。また、弁孔の開放時、永久磁石と磁性材料との間に作用する吸引力により、弁体が弁座に向かって付勢される。
【0004】
ここで、バネのみによって弁体を弁座に付勢する一般的な差圧制御弁と、これらの差圧制御弁とを比較した場合、バネの付勢力は弁体が弁座から離れるほど強くなるのに対し、永久磁石の吸引力は弁体が弁座から離れるほど弱くなる。このため、これらの差圧制御弁は、一般的な差圧制御弁と比較して、弁孔の開放時に弁体が弁座から離れ易い。このため、この差圧制御弁は、圧力差が小さくても、弁孔を確実に開放でき、流体が上流側から弁孔を介して下流側に流れる際の圧力損失を低減できる。
【0005】
しかし、上記各差圧制御弁は、弁座又は弁体の全体が永久磁石からなるため、弁孔の閉鎖時に永久磁石が磁性材料に衝突し、永久磁石が割れ易い。
【0006】
このため、特許文献1の図9〜図11に差圧制御弁の別の3つの例が提案されている。これらの差圧制御弁では、樹脂に包まれた永久磁石を有する弁座又は弁体を採用している。これらの差圧制御弁によれば、弁孔の閉鎖時における永久磁石と磁性材料との衝突が樹脂によって緩和されるので、永久磁石の割れを防止できる。このため、この差圧制御弁では、耐久性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−55223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の図9〜図11に提案された差圧制御弁では、弁体が弁座に着座している間ばかりでなく、弁体が弁座に向かって付勢されている間、永久磁石と磁性材料との間に樹脂が介在することにより、永久磁石の磁束が磁性材料に向かって流れ難く、弁体と弁座との間の磁束密度が低い。このため、これらの差圧制御弁では、弁体と弁座との間に作用する磁力が小さく、弁体が弁座に向かって移動し難く、かつ弁座に安定して着座し難い。
【0009】
このため、例えば永久磁石の種類はそのままでサイズを大きくすることが考えられるが、この場合、その差圧制御弁は、嵩張る永久磁石の配置スペースを広く確保しなければならず、小型化が難しくなってしまう。その結果、その差圧制御弁を備えた容量可変型圧縮機も小型化が難しくなってしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる差圧制御弁を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、差圧制御弁を備えた容量可変型圧縮機において、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の差圧制御弁は、流体が通過する弁孔が形成された弁座と、前記弁座に対して下流側に位置し、上流側と下流側との圧力差に応じて前記弁座に対して着座又は離座することにより、前記弁孔を開閉する弁体と、前記弁座に固定され、前記弁体を案内する案内部材とを備える差圧制御弁において、
前記弁座は、磁性材料からなり、
前記弁体は、前記弁座に着座して前記弁孔を閉鎖可能な磁性材料からなる蓋体と、前記案内部材に案内される非磁性材料からなる被案内部材とを有し、
前記弁座及び前記蓋体の一方には、永久磁石が設けられ、前記永久磁石の吸引力により前記弁体が前記弁座に接近するように付勢され、
前記永久磁石は、前記弁体が前記弁座に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
本発明の差圧制御弁は、永久磁石を採用していることから、弁体が弁座から離れるほど永久磁石の吸引力が弱くなり、一般的な差圧制御弁と比較して、弁孔の開放時に弁体が弁座から離れ易い。このため、この差圧制御弁は、圧力差が小さくても、弁孔を確実に開放でき、流体が上流側から弁孔を介して下流側に流れる際の圧力損失を低減できる。
【0013】
また、この差圧制御弁では、弁座及び蓋体の一方に設けられた永久磁石は、弁体が弁座に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられている。これにより、永久磁石は、弁座及び蓋体の他方と接触しないため、弁孔の閉鎖時に永久磁石が弁座及び蓋体の他方と衝突しない。その結果、この差圧制御弁は、永久磁石の割れを防止でき、耐久性が向上する。
【0014】
さらに、この差圧制御弁では、弁座及び蓋体が磁性材料からなり、被案内部材が非磁性材料からなる。このため、弁孔の閉鎖時に、永久磁石の磁束は、弁座及び蓋体の一方から被案内部材に向かって流れ難くなる一方、弁座及び蓋体の一方から弁座及び蓋体の他方に向かって流れ易くなる。このため、この差圧制御弁は、特許文献1の図9〜図11に提案の差圧制御弁と比較し、蓋体と弁座との間の磁束密度が高くなる。このため、この差圧制御弁は、蓋体と弁座との間に作用する磁力が大きく、弁体が弁座に向かって移動し易く、かつ弁座に安定して着座する。このため、この差圧制御弁は、永久磁石を小さくできるので、永久磁石の配置スペースが小さくなって、小型化が実現される。
【0015】
したがって、本発明の差圧制御弁は、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる。
【0016】
また、永久磁石が蓋体に固定されている場合、永久磁石は弁体と一体に変位する錘となる。本発明の差圧制御弁によれば、永久磁石を小さくして弁体の重量を軽くできるので、上流側と下流側との圧力差の変動に対する弁体の作動性が向上する。
【0017】
弁座や蓋体を構成する磁性材料としては、S45C等の高炭素鋼、SCM435及びSCM440等のクロムモリブデン鋼等の鉄系材料、並びに磁性を持つマルテンサイト系ステンレス鋼等を採用することができる。また、被案内部材を構成する非磁性材料としては、樹脂、アルミニウム系材料等を採用することができる。
【0018】
案内部材は非磁性材料からなることが好ましい(請求項2)。この場合、弁孔の閉鎖時に、永久磁石の磁束は、弁座及び蓋体の一方から案内部材及び被案内部材に向かって流れ難くなる一方、弁座及び蓋体の一方から弁座及び蓋体の他方に向かって一層流れ易くなる。このため、蓋体と弁座との間の磁束密度が一層高くなるので、蓋体と弁座との間に作用する磁力がより大きくなり、弁体が弁座に向かってさらに移動し易く、かつ弁座にさらに安定して着座する。このため、この差圧制御弁は、永久磁石を一層小さくでき、さらなる小型化が実現される。
【0019】
本発明の差圧制御弁は、弁体を弁座に向かって付勢するバネを備えていることができる(請求項3)。永久磁石の吸引力は弁体が弁座から離れるほど弱くなる。このため、バネによって弁体を弁座に向かって付勢すれば、弁体が弁座から大きく離反しても、弁体を確実に弁座に着座させることができる。また、本発明の差圧制御弁では、蓋体と弁座との間の磁束密度が高いことから、バネの付勢力はさほどの大きさである必要はなく、バネの小型化も実現できる。バネは、SUS316、樹脂又はFRP等の非磁性材料からなることが好ましい。
【0020】
本発明の差圧制御弁は、弁体を弁座に向かって付勢するバネを備えていなくてもよい。この場合、弁体は、永久磁石と磁性材料との間に作用する吸引力のみによって弁座に向かって付勢される。このため、この差圧制御弁は、バネが不要となるので、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0021】
永久磁石は弁孔と同軸の柱状であってもよく、弁孔と同心の環状であってもよい。永久磁石は、弁孔と同心の環状であることが好ましい(請求項4)。永久磁石が環状であれば、弁孔の閉鎖時に永久磁石が弁孔回りの座面に近づき、蓋体と弁座との間の磁束密度がより一層高くなる。このため、この差圧制御弁は、蓋体と弁座との間に作用する磁力がより大きくなるので、永久磁石をより一層小さくできる。このため、この差圧制御弁は、一層の小型化が実現されるとともに、製造コストの低廉化を図れる。
【0022】
永久磁石は、弁孔回りの座面から離れた位置で弁座に固定されていることが好ましい(請求項5)。永久磁石は、流体に含まれる磁性材料からなる異物を吸着する。この際、永久磁石が座面から離れた位置でその異物を吸着すれば、異物が座面に噛み込む不具合を抑制できる。このため、この差圧制御弁は、弁孔を確実に閉鎖できる。
【0023】
永久磁石は接着剤等を用いて弁座又は蓋体の一方に固定され得る。しかし、被案内部材は、蓋体が嵌合される開口と、開口を介して挿入される永久磁石を保持する保持空間とを有することが好ましい。そして、永久磁石は、保持空間に保持された状態で開口に蓋体が嵌合されることにより、蓋体の下流側に固定されていることが好ましい(請求項6)。この場合、この差圧制御弁は、永久磁石を接着剤等を用いて弁座又は蓋体の一方に固定するよりも、組み付け作業の簡素化を実現できる。また、永久磁石が接着剤を用いて蓋体に固定される場合には、接着剤が高温により劣化して永久磁石が蓋体から剥がれるおそれがあるのに対し、この場合には、永久磁石が高温の影響を受け難く、耐久性を向上させることができる。
【0024】
永久磁石としては、(1)バリウムフェライト磁石、ストロンチウムフェライト磁石等のフェライト磁石、(2)アルニコ磁石や希土類磁石である金属磁石、(3)ゴム磁石やプラスチック磁石であるボンド磁石等を採用することが可能である。希土類磁石としては、1−5系磁石や1−17磁石等のサマリウム−コバルト磁石の他、ネオジム磁石を採用することができる。ゴム磁石としては、フェライトゴム磁石、ネオジムゴム磁石を採用することができる。プラスチック磁石としては、フェライトプラスチック磁石、ネオジムプラスチック磁石を採用することができる。これらのうち、発明者らの知見によれば、サマリウム−コバルト磁石であることが好ましい(請求項7)。サマリウム−コバルト磁石は、ネオジム磁石と比べて磁力はやや低下するが、磁力の温度変化率(温度低下率)がネオジム磁石より小さく、温度特性に優れているとともに、錆びにくいからである。このため、差圧制御弁を圧縮機の逆止弁に採用する場合には、サマリウム−コバルト磁石が特に適している。
【0025】
本発明の容量可変型圧縮機は、圧縮室と吐出室とを備え、前記圧縮室内に吸入された流体を圧縮して前記吐出室に吐出可能であるととともに、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される前記流体の吐出容量を変更可能に構成された容量可変型圧縮機であって、
前記吐出室又は前記吐出室に連通する吐出通路に上記差圧制御弁が配設されていることを特徴とする(請求項8)。
【0026】
本発明の容量可変型圧縮機では、吐出室又は吐出通路における上流側と下流側との圧力差に応じて、差圧制御弁が弁孔を開閉する。具体的には、流体の吐出容量が最小となり、上流側と下流側との圧力差が所定値以下となれば、差圧制御弁が弁孔を閉鎖する。その結果、吐出通路から吐出室又は吐出室から圧縮室への流体の逆流が防止される。つまり、差圧制御弁は逆止弁として機能する。一方、流体の吐出容量が最小から増加し、上流側と下流側との圧力差が所定値より大きくなれば、差圧制御弁が弁孔を開放する。その結果、圧縮室から吐出された流体が吐出室から吐出通路へと流れる。この際、この容量可変型圧縮機は、本発明の差圧制御弁が奏する作用効果により、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の差圧制御弁を採用した容量可変型圧縮機の断面図である。
【図2】実施例1の差圧制御弁の断面図である。
【図3】実施例1の差圧制御弁に係り、弁体の変位量と、弁体に作用する付勢力との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の差圧制御弁に係り、永久磁石の磁束線を示す説明図である。
【図5】比較例1の差圧制御弁に係り、永久磁石の磁束線を示す説明図である。
【図6】比較例2の差圧制御弁に係り、永久磁石の磁束線を示す説明図である。
【図7】実施例2の差圧制御弁の断面図である。
【図8】実施例3の差圧制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の差圧制御弁100は容量可変型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」という。)に組み付けられて逆止弁として機能するものである。この圧縮機は、シリンダブロック1に複数個のシリンダボア1aが同心円状に等角度間隔でそれぞれ平行に形成されている。シリンダブロック1は、前方に位置するフロントハウジング3と後方に位置するリヤハウジング5とに挟持され、この状態で締結されている。シリンダブロック1とフロントハウジング3とによって内部にクランク室9が形成されている。ここで、図1における紙面左側が前方であり、紙面右側が後方である。図2及び図4〜図8も同様である。
【0030】
フロントハウジング3には軸孔3aが形成され、シリンダブロック1には軸孔1bが形成されている。軸孔3a、1bには軸封装置9a及び軸受装置9b、9cを介して駆動軸11が回転可能に支持されている。フロントハウジング3には軸受装置3bを介してプーリ13が設けられており、プーリ13は駆動軸11に固定されている。プーリ13には車両のエンジンやモータによって駆動されるベルト13cが巻き掛けられている。なお、プーリ13の代わりに電磁クラッチを設けることも可能である。
【0031】
クランク室9内では、駆動軸11にラグプレート15が圧入されており、ラグプレート15とフロントハウジング3との間には軸受装置9d、9eが設けられている。また、駆動軸11には斜板17が挿通されている。ラグプレート15と斜板17との間には、駆動軸11回りで傾角縮小ばね19が設けられている。また、クランク室9内では、駆動軸11にサークリップ11aが固定されており、サークリップ11aには斜板17に向かって復帰ばね21が設けられている。また、ラグプレート15と斜板17とは、斜板17を傾角変動可能に支持するリンク機構23によって接続されている。
【0032】
各シリンダボア1a内にはピストン25が往復動可能に収納されている。各ピストン25と斜板17との間には前後で対をなすシュー27a、27bが設けられている。各対のシュー27a、27bによって斜板17の揺動運動が各ピストン25の往復動に変換されるようになっている。
【0033】
シリンダブロック1とリヤハウジング5との間には弁ユニット29が設けられている。各シリンダボア1aはピストン25と弁ユニット29との間が圧縮室31となっている。リヤハウジング5内には、径方向内側に位置する吸入室5aと、径方向外側に位置する環状の吐出室5bとが形成されている。吸入室5aには、熱交換用の流体としての冷媒ガスが供給される。
【0034】
弁ユニット29は、ピストン25が吸入行程にあるときに吸入室5a内の冷媒ガスを圧縮室31に吸入し、ピストン25の吐出工程にあるときに圧縮室31内の冷媒ガスを圧縮し、吐出室5bに吐出する。
【0035】
クランク室9と吸入室5aとは抽気通路42によって接続されている。クランク室9と吐出室5bとは給気通路44、46によって接続されている。リヤハウジング5内には、吸入室5aと検圧通路48によって連通するとともに、給気通路44、46と連通する容量制御弁2が収納されている。
【0036】
容量制御弁2は、以下のように動作する。すなわち、容量制御弁2は、検圧通路48により検圧される冷媒ガスの流量差圧等に基づいて給気通路44、46を開閉する。そうすると、吐出室5b内の高圧の冷媒ガスが給気通路44、46を介してクランク室9に供給され、クランク室9内の圧力が所望の値に調整される。その結果、斜板17の傾角が変化して、所望の吐出容量に変更される。
【0037】
リヤハウジング5内には、吐出室5bに連通するとともに、リヤハウジング5の後面に開口する吐出通路50が形成されている。圧縮機が車両用空調装置に搭載される際、吐出通路50におけるリヤハウジング5の後面側の開口5cは、図示しない凝縮器に接続される。
【0038】
図2に拡大して示すように、吐出通路50は、前後方向と平行な軸線X1を中心軸として、吐出室5bの内壁面から後方に向かって凹設された大径穴部50aと、大径穴部50aと開口5cとを連通させる小径穴部50bとからなる。大径穴部50a内に差圧制御弁100が配設されている。
【0039】
差圧制御弁100は、弁座110と、案内部材130と、弁体120と、バネ140とを備えている。差圧制御弁100は、これらが組み付けられてユニット化されている。そして、差圧制御弁100は、吐出室5b側から大径穴部50aに挿入されて段部50cに弁座110が当て止まった状態で、図示しないサークリップ等により抜け止めされる。こうして、差圧制御弁100は、吐出室5bと、吐出通路50とを区分けした状態でリヤハウジング5内に固定されている。吐出室5bが吐出通路50の上流側であり、大径穴部50aにおける弁座110を挟んで吐出室5bとは反対側が吐出通路50の下流側である。
【0040】
弁座110は、軸線X1を中心軸とする肉厚の円盤形状とされた基部113と、基部113に対して同心かつ小径の円筒形状とされて、基部113に対して後方に位置する円筒部114とからなる。本実施例では、弁座110は、磁性材料である鉄(S45C等)からなる。
【0041】
基部113及び円筒部114には、軸線X1を中心軸とする弁孔111が貫設されている。弁孔111は吐出室5bと、吐出通路50の下流側とを連通させている。円筒部114において後方を向く弁孔111回りの端面は、平坦な座面112とされている。座面112は、軸線X1と直交する平面と平行である。
【0042】
案内部材130は、軸線X1を中心軸とする円筒形状とされた円筒部133と、円筒部133の後端縁を塞ぐ円盤形状とされた円盤部134とからなる。本実施例では、案内部材130は、非磁性材料である樹脂(ナイロン樹脂等)からなる。円筒部133の前端縁133aが円筒部114の外周面に対して外側から嵌合することにより、案内部材130が弁座110に固定されている。
【0043】
円筒部133における前後方向の中間には、円筒部133の内部と外部とを連通させる複数の窓133bが軸線X1を中心とする円周上に並ぶように貫設されている。
【0044】
弁体120は、弁座110の円筒部114と、案内部材130とにより囲まれた空間内に収容されて、弁座110に対して吐出通路50の下流側に位置している。弁体120は、蓋体121と被案内部材125とからなる。
【0045】
蓋体121は、軸線X1を中心軸とする薄肉円盤形状とされており、座面112と対向している。本実施例では、蓋体121は、磁性材料である鉄(S45C等)からなる。
【0046】
被案内部材125は、軸線X1を中心軸とする円筒形状とされている。被案内部材125の前方の開口125aが蓋体121の外周縁に対して外側から嵌合することにより、被案内部材125が蓋体121と一体化されている。本実施例では、被案内部材125は、非磁性材料である樹脂(ナイロン樹脂等)からなる。
【0047】
被案内部材125の外周面と、円筒部133の内周面との間には、被案内部材125を前後方向に摺動可能とするクリアランスが確保されている。これにより、弁体120は、案内部材130に案内されて、前後方向に変位可能となっている。弁体120が前方に変位して、蓋体121が座面112に当接することにより、弁体120が弁座110に着座して弁孔111を閉鎖する。この際、被案内部材125は窓133bを閉じている。その状態から弁体120が後方に変位することにより、弁体120が弁座110から離反して弁孔111を開放する。この際、被案内部材125は窓133bを開放する。そして、弁体120がさらに後方に変位して、被案内部材125の後端縁125cが円盤部134に当て止まることにより、弁孔111が全開状態となる。この際、被案内部材125は窓133bを全開にする。
【0048】
被案内部材125の内周面における前後方向の中間には、軸線X1に向かってフランジ状に突出する内フランジ部125dが形成されている。内フランジ部125dと蓋体121とに挟まれた空間は、保持空間125bとされている。
【0049】
保持空間125b内には、軸線X1を中心軸とする環状とされた永久磁石150が保持されている。この永久磁石150は、その磁力により蓋体121に吸着している。永久磁石150は、開口125aを介して保持空間125bに挿入された後に、蓋体121が開口125aに嵌合されることにより、保持空間125bに保持される。永久磁石150は、蓋体121を挟んで弁座110とは反対側に位置している。すなわち、永久磁石150は、弁体120が弁座110に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられている。これにより、永久磁石150は、弁座110と接触することはない。
【0050】
本実施例では、永久磁石150は、サマリウム−コバルト磁石である。サマリウム−コバルト磁石は、ネオジム磁石と比べて磁力はやや低下するが、磁力の温度変化率(温度低下率)がネオジム磁石より小さく、温度特性に優れているとともに、錆びにくい。このため、車両用空調装置に適用されて、高温の冷媒ガスに曝される差圧制御弁100に特に適している。
【0051】
バネ140は、前端が蓋体121に当接し、後端が円盤部134に形成されたバネ保持部134a内に挿入された状態で、弁体120と案内部材130との間に設けられている。このバネ140は、バネのみによって弁体を弁座に付勢する一般的な差圧制御弁に使用されるバネと比較して、付勢力が非常に弱い小型のものが採用されている。本実施例では、バネ140は、非磁性材料からなるSUS316からなる。
【0052】
図3に、弁体120の変位量と、弁体120を弁座110に付勢する付勢力との関係を実線S1、S2により示す。実線S1は、弁体120の変位量と、永久磁石150と弁座110との間に作用する磁力との関係を示している。ここで、永久磁石150と弁座110との間に作用する磁力は、弁体120の変位量が0の場合は吸着力であり、変位量が0より大きい場合は吸引力である。
【0053】
一方、実線S2は、バネのみによって弁体を弁座に付勢する一般的な差圧制御弁において、バネが弁体を弁座に付勢する付勢力の一例を示している。この例では、本実施例の差圧制御弁100から永久磁石150を除き、バネ140の代わりに付勢力が強いバネを採用した差圧制御弁を想定している。
【0054】
実施例1の場合、実線S1で示すように、弁孔111の閉鎖時、すなわち、弁体120の変位量が0の場合、永久磁石150と弁座110との間に作用する吸着力は、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が所定の値ΔP以下である場合に弁座110と弁体120との着座を維持できるように設定されている。また、この吸着力は、実線S2で示すように、一般的な差圧制御弁におけるバネが弁孔111の閉鎖時に弁体120を弁座110に付勢する付勢力と同じになるように設定されている。
【0055】
一方、一般的な差圧制御弁の場合、実線S2で示すように、弁孔111の開放時、すなわち、弁体120の変位量が0より大きくなる場合、バネが弁体120を弁座110に付勢する付勢力が比例的に増加する。
【0056】
これに対して、実施例1の場合、実線S1で示すように、弁孔111の開放時、すなわち、弁体120の変位量が0より大きくなる場合、永久磁石150と弁座110との間に作用する吸引力が急激に低下する。
【0057】
以上のように構成された圧縮機は、車両用空調装置において、吐出室5bが吐出通路50を介して凝縮器に接続され、凝縮器が膨張弁を介して蒸発器に接続され、蒸発器が吸入室5aに接続される。そして、エンジン等によって駆動軸11が回転駆動されれば、斜板17の傾角に応じた吐出容量で吸入室5a内の冷媒ガスを圧縮室31で圧縮して吐出室5bに吐出する。
【0058】
この間、例えば、搭乗者による空調温度の変更指令や、車両のエンジン等の回転数の変化等に対応して容量制御弁2が作動する。そして、吐出室5b内の高圧の冷媒ガスが給気経路44、46を介してクランク室9に供給されれば、斜板17の傾角が増加して、吐出容量が大きくなる。逆に、吐出室5b内の高圧の冷媒ガスが給気経路44、46を介してクランク室9に供給され難くなれば、斜板17の傾角が減少して、吐出容量が小さくなる。こうして、この圧縮機では、吐出容量が適宜変更され得ることとなる。
【0059】
ここで、差圧制御弁100は、以下のように動作する。斜板17の傾角が最小となって、吐出室5bから吐出される冷媒ガスの吐出容量が最小になると、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が所定の値ΔP以下となる。そうすると、図2に示すように、永久磁石150と弁座110との間に作用する吸引力と、バネ140の非常に弱い付勢力とにより、弁体120が弁座110に向かって付勢されて弁座110に着座し、蓋体121が弁孔111を閉鎖する。そして、その状態が永久磁石150と弁座110との間に作用する吸着力により維持される。その結果、吐出通路50が閉鎖状態となり、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器間の冷媒循環が停止する。
【0060】
その一方、斜板17の傾角が最小から増加すると、吐出室5bから吐出される冷媒ガスの吐出容量も増加し、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が所定の値ΔPを超える。そうすると、永久磁石150と弁座110との間に作用する吸着力がその圧力差に負けて、蓋体121が弁孔111を閉鎖できなくなり、弁体120が案内部材130に案内されて弁座110から離反する。そうすると、図3に実線S1で示すように、永久磁石150と弁座110との間に作用する吸引力が急激に低下するので、弁孔111を通過する冷媒ガスに蓋体121がさらに押される。このため、弁体120が弁座110から大きく離反して、被案内部材125が窓133bを開放する。その結果、吐出通路50が速やかに全開状態に切り替わり、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器間の冷媒循環が行われる。
【0061】
ここで、実施例1の差圧制御弁100は、永久磁石150を採用していることから、図3に実線S1、S2で示すように、弁体120が弁座110から離れるほど永久磁石150の吸引力が弱くなり、一般的な差圧制御弁と比較して、弁孔111の開放時に弁体120が弁座110から離れ易い。このため、この差圧制御弁100は、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が小さくても、弁孔111を確実に開放でき、冷媒ガスが吐出室5bから弁孔111を介して吐出通路50の下流側に流れる際の圧力損失を低減できる。
【0062】
また、この差圧制御弁100では、蓋体121に設けられた永久磁石150は、弁体120が弁座110に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられている。これにより、永久磁石150は、弁座110と接触しないため、弁孔111の閉鎖時に永久磁石150が弁座110と衝突しない。その結果、この差圧制御弁100は、永久磁石150の割れを防止でき、耐久性が向上する。
【0063】
さらに、この差圧制御弁100では、弁座110及び蓋体121が磁性材料からなり、案内部材130及び被案内部材125が非磁性材料からなる。このため、図4に示すように、弁孔111の閉鎖時に、永久磁石150の磁束は、蓋体121から案内部材130及び被案内部材125に向かって流れ難くなる一方、蓋体121から弁座110に向かって一層流れ易くなる。このため、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が一層高くなっている。図4において、仮想線(二点鎖線)は、弁座110、弁体120、案内部材130及び永久磁石150の一部分を示し、複数本の曲線(実線)は、永久磁石150の磁束を示している。
【0064】
これに対して、図5に比較例1を示す。比較例1では、磁性材料からなる蓋体121及び非磁性材料からなる被案内部材125の代わりに、それらが一体化された形状を有し、磁性材料からなる弁体120Hを採用している。この例では、永久磁石150の磁束が弁体120Hに殆ど流れてしまう一方、弁座110には殆ど流れ難くなる。このため、図4に示す場合と比較して、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が極めて低くなってしまう。
【0065】
また、図6に比較例2を示す。比較例2では、磁性材料からなる蓋体121の代わりに、非磁性材料からなる蓋体121Hを採用している。つまり、弁体120I全体が非磁性材料からなる。この例では、永久磁石150と弁座110との間に非磁性材料が介在するので、永久磁石150の磁束が弁座110に流れ難くなる。このため、図4に示す場合と比較して、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が低くなってしまう。
【0066】
このように、実施例1の差圧制御弁100は、比較例1、2と比較して、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が一層高くなっているので、蓋体121と弁座110との間に作用する磁力がより大きくなり、弁体120が弁座110に向かってさらに移動し易く、かつ弁座110にさらに安定して着座する。このため、この差圧制御弁100は、永久磁石150を一層小さくできるので、永久磁石150の配置スペースがより小さくなり、さらなる小型化が実現される。
【0067】
したがって、実施例1の差圧制御弁100は、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる。そして、差圧制御弁100を備えた容量可変型圧縮機も、差圧制御弁100が奏する作用効果により、圧力損失を低減できるとともに、耐久性の向上と小型化とを実現できる。
【0068】
なお、蓋体121に固定されている永久磁石150は、弁体120と一体に変位する錘といえる。この点、本実施例では、永久磁石150を小さくして弁体120の重量を軽くできるので、上記従来技術と比較して、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差の変動に対する弁体120の作動性が向上する。
【0069】
また、この差圧制御弁100では、案内部材130も非磁性材料である樹脂(ナイロン樹脂等)からなる。このため、図4に示すように、弁孔111の閉鎖時に、永久磁石150の磁束は、蓋体121から案内部材130及び被案内部材125に向かって流れ難くなる一方、蓋体121から弁座110に向かって一層流れ易くなる。このため、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が一層高くなるので、蓋体121と弁座110との間に作用する磁力がより大きくなり、弁体120が弁座110に向かってさらに移動し易く、かつ弁座110にさらに安定して着座する。このため、この差圧制御弁100は、永久磁石150を一層小さくでき、さらなる小型化が実現される。
【0070】
さらに、この差圧制御弁100は、弁体120が弁座110から離れるほど吸引力が弱くなる永久磁石150を補助するバネ140を備えている。このため、弁体120が弁座110から大きく離反して永久磁石150の吸引力が非常に弱くなっても、バネ140により、弁体120を確実に弁座110に着座させることができる。また、この差圧制御弁100では、蓋体121と弁座110との間の磁束密度が高いことから、バネ140の付勢力はさほどの大きさである必要はなく、バネ140の小型化も実現できる。さらに、バネ140は、非磁性材料からなるので、永久磁石150の影響を受けることなく、確実に、弁体120を弁座110に向かって付勢できる。
【0071】
また、この差圧制御弁100では、永久磁石150は、弁孔111と同心の環状である。このため、弁孔111の閉鎖時に永久磁石150が弁孔111回りの座面112に近づき、弁体120と弁座110との間の磁束密度がより一層高くなる。このため、この差圧制御弁100は、蓋体121と弁座110との間に作用する磁力がより大きくなるので、永久磁石150をより一層小さくできる。このため、この差圧制御弁100は、一層の小型化が実現されるとともに、製造コストの低廉化を図れる。
【0072】
さらに、この差圧制御弁100では、永久磁石150が保持空間125bに保持された状態で開口125aに蓋体121が嵌合されることにより、蓋体121の下流側に固定されている。このため、この差圧制御弁100は、永久磁石150を接着剤等を用いて蓋体121に固定するよりも、組み付け作業の簡素化を実現できる。また、永久磁石150が接着剤を用いて蓋体121に固定される場合には、接着剤が高温により劣化して永久磁石150が蓋体121から剥がれるおそれがあるのに対し、この場合には、永久磁石150が高温の影響を受け難く、耐久性を向上させることができる。
【0073】
(実施例2)
図7に示すように、実施例2の差圧制御弁200は、実施例1の差圧制御弁100における永久磁石150の代わりに、弁座110に固定された永久磁石250を採用するとともに、バネ140を無くしている。その他の構成は、実施例1の差圧制御弁100と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0074】
差圧制御弁200において、円筒部114には、弁孔111の座面112側が拡径されてなる段部114aが形成されている。
【0075】
段部114aには、軸線X1を中心軸とする環状とされた永久磁石250が装着されている。永久磁石250は、その磁力により弁座110に吸着している。永久磁石250の後方を向く端面250aは、座面112よりも前方に位置して座面112から離れている。すなわち、永久磁石250は、弁体120が弁座110に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられている。これにより、永久磁石250は、蓋体121と接触することはない。また、蓋体121には、永久磁石250の端面250aとの間に大きなクリアランスを確保するための逃げ部121aが凹設されている。
【0076】
この差圧制御弁200は、永久磁石250と蓋体121との間に作用する磁力により、実施例1の差圧制御弁100と同様に動作して、弁孔111を開閉できる。この際、この差圧制御弁200は、実施例1の差圧制御弁100と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
また、この差圧制御弁200は、弁体120を弁座110に向かって付勢するバネを備えていない。このため、弁体120は、永久磁石250と蓋体121との間に作用する吸引力のみによって弁座110に向かって付勢される。このため、この差圧制御弁200は、バネが不要となっており、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0078】
さらに、この差圧制御弁200において、永久磁石250は、弁孔111回りの座面112から離れた位置で弁座110に固定されている。そして、永久磁石250は、冷媒ガスに含まれる磁性材料からなる異物を吸着する。この際、永久磁石250が座面112から離れた位置、例えば、端面250aでその異物を吸着すれば、異物が座面112に噛み込む不具合を抑制できる。また、端面250aと逃げ部121aとの間に大きなクリアランスが確保されているので、端面250aで大きな異物を吸着した場合でも、端面250aと逃げ部121aとの間にその異物が挟まって弁孔111を閉鎖できくなる不具合を防止できる。その結果、この差圧制御弁200は、弁孔111を確実に閉鎖できる。
【0079】
(実施例3)
図8に示すように、実施例3の差圧制御弁300は、実施例1の差圧制御弁100における永久磁石150の代わりに、弁座110に固定された永久磁石350を採用するとともに、バネ140を無くしている。その他の構成は、実施例1の差圧制御弁100と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0080】
差圧制御弁300において、円筒部114には、円筒部114の外周面の座面112側が縮径されてなる段部114bが形成されている。
【0081】
段部114bには、軸線X1を中心軸とする環状とされた永久磁石350が装着されている。永久磁石350は、その磁力により弁座110に吸着している。永久磁石350の後方を向く端面350aは、座面112よりも前方に位置して座面112から離れている。すなわち、永久磁石350は、弁体120が弁座110に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられている。これにより、永久磁石350は、蓋体121と接触することはない。また、蓋体121及び非案内部材125には、永久磁石350の端面350aとの間に大きなクリアランスを確保するための逃げ部121bが凹設されている。
【0082】
この差圧制御弁300も、永久磁石350と蓋体121との間に作用する磁力により、実施例1、2の差圧制御弁100、200と同様に動作して、弁孔111を開閉できる。
【0083】
ここで、上記構成である実施例3の差圧制御弁300と、実施例2の差圧制御弁200との相違点は、永久磁石250、350が座面112の内周側に位置するか、又は外周側に位置するかだけである。このため、実施例3の差圧制御弁300も、実施例2の差圧制御弁200と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0085】
例えば、差圧制御弁100、200、300の向きを上下方向に向けてもよいし、リヤハウジング5以外の位置に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
111…弁孔
110…弁座
120…弁体
130…案内部材
100、200、300…差圧制御弁(逆止弁)
121…蓋体
125…被案内部材
150、250、350…永久磁石
140…バネ
112…座面
125a…開口
125b…保持空間
31…圧縮室
5b…吐出室
50…吐出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する弁孔が形成された弁座と、前記弁座に対して下流側に位置し、上流側と下流側との圧力差に応じて前記弁座に対して着座又は離座することにより、前記弁孔を開閉する弁体と、前記弁座に固定され、前記弁体を案内する案内部材とを備える差圧制御弁において、
前記弁座は、磁性材料からなり、
前記弁体は、前記弁座に着座して前記弁孔を閉鎖可能な磁性材料からなる蓋体と、前記案内部材に案内される非磁性材料からなる被案内部材とを有し、
前記弁座及び前記蓋体の一方には、永久磁石が設けられ、前記永久磁石の吸引力により前記弁体が前記弁座に接近するように付勢され、
前記永久磁石は、前記弁体が前記弁座に対して着座又は離座する領域から外れた位置に取り付けられていることを特徴とする差圧制御弁。
【請求項2】
前記案内部材は非磁性材料からなる請求項1記載の差圧制御弁。
【請求項3】
前記弁体を前記弁座に向かって付勢するバネを備えている請求項1又は2記載の差圧制御弁。
【請求項4】
前記永久磁石は、前記弁孔と同心の環状である請求項1乃至3のいずれか1項記載の差圧制御弁。
【請求項5】
前記永久磁石は、前記弁孔回りの座面から離れた位置で前記弁座に固定されている請求項4記載の差圧制御弁。
【請求項6】
前記被案内部材は、前記蓋体が嵌合される開口と、前記開口を介して挿入される前記永久磁石を保持する保持空間とを有し、
前記永久磁石は、前記保持空間に保持された状態で前記開口に前記蓋体が嵌合されることにより、前記蓋体の下流側に固定されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の差圧制御弁。
【請求項7】
前記永久磁石は、サマリウム−コバルト磁石である請求項1乃至6のいずれか1項記載の差圧制御弁。
【請求項8】
圧縮室と吐出室とを備え、前記圧縮室内に吸入された流体を圧縮して前記吐出室に吐出可能であるととともに、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される前記流体の吐出容量を変更可能に構成された容量可変型圧縮機であって、
前記吐出室又は前記吐出室に連通する吐出通路に請求項1乃至7のいずれか1項記載の前記差圧制御弁が配設されていることを特徴とする容量可変型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112449(P2012−112449A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261876(P2010−261876)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】