説明

巻付け装置、及び、巻付け方法

【課題】被巻付け体への狭幅部材の巻き付けにかかる時間を短縮した巻付け装置、及び、巻付け方法を提供することを課題とする。
【解決手段】巻付け装置10は、タイヤベルト形成用の狭幅部材20A〜Cが巻き付けられた3つのヘッド12A〜Cを備え、ヘッド12A〜Cからそれぞれ巻き出された狭幅部材20A〜Cをドラム14に同時に巻き付ける装置とされている。ヘッド12A〜Cは、ドラム幅方向Wに独立して移動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤベルト形成用の狭幅部材を巻き付ける巻付け装置及び巻付け方法に関し、更に詳細には、スチールコードを有する空気入りタイヤを製造するのに最適な巻付け装置及び巻付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造でベルトを形成する際、ベルト形成用の狭幅部材を予め巻き付けた専用のヘッドからこの狭幅部材を巻き出し、ドラムやカーカス上などの被巻付け体に巻回することが広く行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来、被巻付け体上に狭幅部材を多数回にわたって巻き付けるので、巻き付けるのに多大な時間がかかっていた。
【0004】
更には、狭幅部材のコードが波状にされている場合、被巻付け体上の位置に応じてコード波形を変化させるには被巻付け体上の位置に応じて狭幅部材の張力を変化させる必要がある。このため、狭幅部材の張力コントロールまで必要となり、巻き付け時間が更にかかっていた。
【特許文献1】特開2005−28688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、被巻付け体への狭幅部材の巻き付けにかかる時間を短縮した巻付け装置、及び、巻付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、タイヤベルト形成用の狭幅部材が巻き付けられた複数のヘッドを備え、前記ヘッドからそれぞれ巻き出された前記狭幅部材を被巻付け体に同時に巻き付け可能であることを特徴とする。
【0007】
これにより、巻き付けにかかる時間を大幅に短縮することができる。また、各ヘッドの狭幅部材の種類をヘッド毎に設定することができるので、複数種の狭幅部材を被巻付け体に巻き付けることができる。更に、狭幅部材のテンション(張力)をヘッド毎に調整することが可能である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記被巻付け体の被巻付け部幅方向に、前記ヘッドが互いに独立して移動可能であることを特徴とする。
これにより、被巻付け体の幅方向各部位で狭幅部材をスムーズに巻き付けることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の巻付け装置を用いた巻付け方法であって、前記ヘッド毎に互いに異種の前記狭幅部材を巻き付けておくことを特徴とする。
これにより、複数種の狭幅部材を被巻付け体に同時に巻き付けることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記狭幅部材を構成するコードの波形を互いに異ならせることにより前記狭幅部材を互いに異種としたことを特徴とする。
これにより、ヘッド毎にテンションを調整しなくても、巻き付けられた状態における狭幅部材のコード波形を互いに異ならせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、以下の効果を奏することができる。
請求項1に記載の発明によれば、巻き付けにかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、被巻付け体の幅方向各部位で狭幅部材をスムーズに巻き付けることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、複数種の狭幅部材を被巻付け体に同時に巻き付けることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、ヘッド毎にテンションを調整しなくても、巻き付けられた状態における狭幅部材のコード波形を互いに異ならせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る巻付け装置10の模式的な構成を示す斜視図である。巻付け装置10は、タイヤベルト形成用の狭幅部材が巻き付けられた3つのヘッド12A〜Cを備えており、各ヘッド12A〜Cから巻き出された狭幅部材をドラム14に同時に巻き付けることが可能になっている。
【0016】
3つのヘッド12A〜Cは、それぞれ、ドラム幅方向Wに互いに独立して移動可能(横行可能)とされている。従って、狭幅部材を巻き付けるドラム幅方向位置に応じて、ヘッド12A〜Cはドラム幅方向Wに移動することができる。
【0017】
3つのヘッド12A〜Cには、それぞれ、狭幅部材20A〜Cが巻き付けられている。ヘッド12A〜Cはそれぞれ巻付け装置10に着脱自在とされており、巻き付けられている狭幅部材が少なくなると、ロボット等によって、充分な長さの狭幅部材が巻き付けられた予め準備されたヘッドに交換されるようになっている。
【0018】
本実施形態では、狭幅部材20A〜Cは、何れもスチールコードが配列されたリボン状の部材である。また、ヘッド12A〜Cにそれぞれ巻き付けられているスチールコード22A〜Cの形状は、図2〜図4に示すように、予め形状が互いに異なっている。狭幅部材20Aのスチールコード22Aは比較的短い波長λAの波形24Aを形成しており、狭幅部材20Bのスチールコード22Bは波長λAよりも長い波長λBの波形24Bを形成している。また、狭幅部材20Cのスチールコード22Cは直線状であり波形を形成していない(すなわち波長が無限大)。なお、本実施形態では、同じ線種のコードからスチールコード22A〜Cを形成している。従って、スチールコード22A〜Cの材質、太さは同じである。
【0019】
以上説明したように、本実施形態では、狭幅部材20A〜Cがそれぞれ巻き付けられたヘッド12A〜Cを備えており、ヘッド12A〜Cからそれぞれ巻き出された狭幅部材20A〜Cをドラム14に同時に巻き付けることが可能となっている。これにより、巻き付けにかかる時間を大幅に短縮することができる(最大で1/3にまで時間短縮をすることができる)。また、狭幅部材20A〜Cの種類をヘッド毎に設定することができるので、3種の狭幅部材20A〜Cをドラム14に巻き付けることができる。
【0020】
また、ドラム幅方向Wに、ヘッド12A〜Cが互いに独立して移動可能とされている。これにより、ヘッド12の幅方向各部位で各狭幅部材20A〜Cをスムーズに巻き付けることができる。また、ドラム14の幅方向各部位で各狭幅部材20A〜Cの巻き付け速度を調整することができる。
【0021】
また、狭幅部材20A〜Cをそれぞれ構成するスチールコード22A〜Cの波形を互いに異ならせた狭幅部材20A〜Cをそれぞれヘッド12A〜Cから巻き出している。従って、ドラム14の幅方向各部位で必要な狭幅部材を必要な層位置、層厚で巻き付けることができる。しかも、ヘッド毎にテンションを調整しなくても、巻き付けられた状態における狭幅部材のコード波形を互いに異ならせることができる。
【0022】
なお、狭幅部材20A〜Cのテンションを各ヘッド12A〜Cでそれぞれコントロールする構成としてもよい。これにより、巻き付けた状態におけるスチールコード22A〜Cの波形の種類を更に増大させることができる。また、同じ線種のコードからスチールコード22A〜Cを形成したが、材質、太さ等が互いに異なるコードからスチールコード22A〜Cを形成してもよい。
【0023】
また、本実施形態では、狭幅部材20A〜Cをそれぞれ巻き出す3つのヘッド12A〜Cが設けられている例を説明したが、ヘッド数が2つであっても、4つ以上であっても、本発明に含まれる。
【0024】
更に、本実施形態では、狭幅部材20A〜Cのスチールコードの波形が互いに異なる例で説明したが、狭幅部材20A〜Cのコード種などの他の要因が互いに異なる場合であっても、同様に狭幅部材を同時に巻き付けることができる。
【0025】
また、図1では、複数のヘッドを設ける例としてヘッド12A〜Cを3つ並べて描いたが、複数のヘッドが互いに独立してドラム幅方向Wに移動可能とされている概念図として示したものであり、図5に示すように、ヘッド12A〜Cがヘッド軸方向に互いに干渉しない位置に配置されているような例も含む概念である。
【0026】
<試験例>
本発明者は、上記実施形態に係る巻付け装置10の一例(以下、実施例の巻付け装置という)、及び、従来の巻付け装置の一例(以下、従来例の巻付け装置という)を用い、必要量の狭幅部材をドラムに巻き付けるのにかかる時間を測定する試験を行った。
【0027】
ここで、従来例の巻付け装置は、実施例の巻付け装置に比べ、図6〜図9に示すように、ヘッド52の数が1つである。このヘッド52には1本の狭幅部材60が巻き付けられている。
【0028】
従来例の巻付け装置では、ヘッド52に巻き付けられた狭幅部材60のみを、すなわち1本の狭幅部材60をドラム54に巻き付ける構成である。また、図7〜図9に示すように、狭幅部材60のスチールコード62の波形を変形させる必要があるときには、ヘッド52により狭幅部材60のテンションを調整する必要がある。すなわち、狭幅部材60のテンションを通常テンションとした場合には、図7に示すように、スチールコード62は比較的短い波長λAの波形64Aを形成する。図8に示すように、狭幅部材60を軽く引っ張る場合には、スチールコード62は波長λAよりも長い波長λBの波形64Bを形成する。また、図9に示すように、狭幅部材60を強く引っ張ることにより、スチールコード62を直線状として波形を形成させない状態(すなわち波長が無限大の状態)にすることもできる。従来例の巻付け装置の実際の使用では、ショルダー部とタイヤセンター部とで狭幅部材60のテンションを異ならせている場合が多い。これらの要因により、実施例の巻付け装置に比べ、従来例の巻付け装置では巻付け速度が著しく遅いという結果になった。
【0029】
一方、実施例の巻付け装置では、3つのヘッド12A〜Cからそれぞれ巻き出されたスチールコード22A〜Cをドラム14に同時に巻き付けており、しかも、テンション調整をしなくても3種のスチールコード22A〜C(図2〜図4参照)を巻き付けることができるので、従来例の巻付け装置に比べ、巻付け速度が著しく速いという結果になった。
【0030】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻付け装置の基本的な構成を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施形態で、第1のヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態で、第2のヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態で、第3のヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る巻付け装置の構成の具体例を示す概念図である。
【図6】従来例の巻付け装置の基本的な構成を示す概念図である。
【図7】従来例の巻付け装置で、ヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である(コード張力が弱いとき)。
【図8】従来例の巻付け装置で、ヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である(コード張力が中程度であるとき)。
【図9】従来例の巻付け装置で、ヘッドから巻き出される狭幅部材のコード形状を示す平面図である(コード張力が高いとき)。
【符号の説明】
【0032】
10 巻付け装置
12A〜C ヘッド
14 ドラム(被巻付け体)
20A〜C 狭幅部材
22A〜C スチールコード(コード)
24A、B 波形
52 ヘッド
60 狭幅部材
54 ドラム(被巻付け体)
62 スチールコード
64A、B 波形
W ドラム幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤベルト形成用の狭幅部材が巻き付けられた複数のヘッドを備え、
前記ヘッドからそれぞれ巻き出された前記狭幅部材を被巻付け体に同時に巻き付け可能であることを特徴とする巻付け装置。
【請求項2】
前記被巻付け体の被巻付け部幅方向に、前記ヘッドが互いに独立して移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の巻付け装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の巻付け装置を用いた巻付け方法であって、
前記ヘッド毎に互いに異種の前記狭幅部材を巻き付けておくことを特徴とする巻付け方法。
【請求項4】
前記狭幅部材を構成するコードの波形を互いに異ならせることにより前記狭幅部材を互いに異種としたことを特徴とする請求項3に記載の巻付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−260186(P2008−260186A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103752(P2007−103752)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】