説明

巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器

【課題】シーリングコンパンド塗布のための管理、材料費および加工費をなくし、巻締め密閉金属容器を安価に提供する。
【解決手段】本発明による巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器は、有底容器胴(1)に蓋(2)が被せられ、二重巻締めにより密閉されているものである。容器胴(1)の内外両面にポリプロピレンフィルム(3)(4)が接合被覆せられており、厚さが内面フィルム(3)200μm、外面フィルム(4)100μmであり、巻締め部(5)には、容器胴(1)の上端周縁を折り曲げて形成せられた逆U形部(6)の両壁(6a)(6b)内面と蓋(2)の上端周縁を折り曲げて形成せられたU形部(7)内壁(7a)両面間に外面フィルム(4)が、容器胴(1)のU形部(7)の外壁(7b)内面と蓋(2)の逆U形部(6)内壁(6a)両面間に内面フィルム(3)が密着状態に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品缶詰等巻締め部を有する金属容器において、巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容器胴の頂部と底部のうち少なくとも頂部に蓋を被せて巻締めてなる密閉金属容器は、単に耐食性の付与を目的とした樹脂コーティングが施されている金属製容器胴材と金属製蓋材とを巻締めするものであるから、密閉金属容器に内容物を密封する場合、巻締め部分から内容物の洩れる懸念があり、これを防ぐため、下記刊行物に開示せられているように、金属製蓋材の巻締め部分に相当する内面に巻締め前に巻締め用密封材であるシーリングコンパンドと称するゴム系の樹脂を環状に塗布している。
【特許文献1】特開2000−15373号公報
【特許文献2】特開2001−278326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記シーリングコンパンドの塗布には、塗布量、塗布の均一性および塗布位置等の管理に厳密性が要求せられるため、これらのいずれかが欠けると内容物が洩れるおそれがある。また、シーリングコンパンドの材料費および加工費が必要なため、これが巻締め密閉金属容器の原価アップの一因ともなっている。
【0004】
本発明の目的は、上記の問題をなくすために巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器は、容器胴の頂部と底部のうち少なくとも頂部に蓋を被せて巻締めてなる密閉金属容器において、容器胴の内外両面のうち少なくともいずれか一方の面に厚さ10〜500μmの合成樹脂フィルムが接合被覆せられていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器において、内面の合成樹脂フィルムがポリプロピレンまたはポリエチレン、外面の合成樹脂フィルムがポリプロピレンよりなることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の発明の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器は、容器胴の頂部と底部のうち少なくとも頂部に蓋を被せて巻締めてなる密閉金属容器において、蓋の内面に厚さ10〜500μmの合成樹脂フィルムが接合被覆せられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1記載の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器において、合成樹脂フィルムがポリプロピレンまたはポリエチレンよりなることを特徴とするものである。
【0009】
上記において、容器胴および蓋に用いられる金属としては、アルミニウムが好ましく,アルミニウムを用いる場合、その厚さは50〜300μmが必要であり、そのうちでも80〜150μmが好ましい。厚さが50μm未満では強度が不足するため巻締めが困難となり、300μmを超えるとコストアップになる。
【0010】
上記請求項1の発明において、容器胴の内外両面のうち少なくともいずれか一方の面に被覆せられた合成樹脂フィルムの厚さを10〜500μmに限定したのは、厚さが10μm未満では密封性が保てず、500μmを超えるとコストアップになるからであり、好ましい厚さは50〜200μmである。
【0011】
上記請求項2および請求項4の発明において、容器胴および蓋の内面の合成樹脂フィルムにポリプロピレンまたはポリエチレンが用いられているのは、耐食性および加熱殺菌時における耐熱性を付与するためであり、上記請求項2の発明において、容器胴の外面の合成樹脂フィルムにポリプロピレンが用いられているのは、加熱殺菌時における耐熱性を付与するためである。
【0012】
上記請求項3の発明において、蓋の内面の合成樹脂フィルムの厚さを10〜500μmに限定したのは、厚さが10μm未満では密封性が保てず、500μmを超えるとコストアップになるからであり、好ましい厚さは50〜200μmである。
【0013】
上記合成樹脂フィルムの接合に用いられる接着剤としては、加熱殺菌時において耐熱性のある接着剤が用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器によれば、従来用いられていた巻締め用密封材としてのシーリングコンパンドの塗布に要求せられる塗布量、塗布の均一性および塗布位置等の厳密な管理が不必要になるばかりか、シーリングコンパンドの材料費および加工費がなくなるため、巻締め密閉金属容器を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明による巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉アルミニウム容器の要部を示すものであり、有底容器胴(1)に蓋(2)が被せられ、二重巻締めにより密閉されているものである。容器胴(1)の内外両面にポリプロピレンフィルム(3)(4)が接合被覆せられており、内面ポリプロピレンフィルム(3)の厚さが200μm、外面ポリプロピレンフィルム(4)の厚さが100μmであり、巻締め部(5)には、容器胴(1)の上端周縁を折り曲げて形成せられた逆U形部(6)の両壁(6a)(6b)内面と蓋(2)の上端周縁を折り曲げて形成せられたU形部(7)の内壁(7a)両面間にそれぞれ外面ポリプロピレンフィルム(4)が密着状態に存在し、容器胴(1)のU形部(7)の外壁(7b)内面と蓋(2)の逆U形部(6)の内壁(6a)両面間にそれぞれ内面ポリプロピレンフィルム(3)が密着状態に存在する。
【0017】
上記実施例では、容器胴の内外両面にポリプロピレンフィルムが接合被覆せられているが、両面ではなく、両面のうちいずれか一方の面にのみ被覆してもよい。しかしながら、両面に被覆した方が内容物の洩れ防止に対する信頼性が高くなる。また、両面のうちいずれか一方の面にのみ被覆する場合には、内面に被覆する方が好ましい。さらに、蓋の内面にポリプロピレンフィルムを接合被覆した場合には、敢えて容器胴にポリプロピレンフィルムを接合被覆する必要はない。
【0018】
蓋(2)には、上向きカール縁(8)を周囲に有する円形開口部(9)が存在し、円形開口部(9)は開封円形アルミニウム板(10)で上から塞がれている。円形アルミニウム板(10)の上面にはポリテトラフルオロエチレンフィルム(11)が耐熱性接着剤を介して接合被覆され、同下面は熱封緘材であるポリエステル系樹脂コーティング皮膜(12)で覆われており、これにより円形アルミニウム板(10)の周縁部が蓋(2)に剥離自在にヒートシールされている。円形アルミニウム板(10)の厚さは40μm、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(11)の厚さは12μm、ポリエステル系樹脂コーティング皮膜(12)の厚さは5μmである。円形アルミニウム板(10)の下面がコーティング皮膜(12)で覆われているのは、これ従来のように厚手のフィルムを使用すると、シール部より酸素透過による内容物の保存性低下を招来するからである。コーティング皮膜を形成する合成樹脂は、熱封緘材となるものであればよく、ポエステル系、エポキシ系およびアクリル系等の合成樹脂が挙げられ、その厚さは1〜15μmであり、好ましくは2〜10μmである。厚さが1μm未満であると、シール性が確保されず、15μmを超えると、コーティング皮膜のシール部分より酸素透過が生じるばかりでなく、コストアップとなる。
【実施例および比較例】
【0019】
巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした本発明の実施例1〜4と巻締め部にシーリングコンパンドを施した比較例1および巻締め部にシーリングコンパンドを施さない比較例2とを下記表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
註:上記において、エポキシ樹脂は耐食性付与のためにコーティングしたものである。
【0022】
上記実施例および比較例につき、下記3つの巻締め評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0023】
(1)浸透液による漏れの有無
容器胴と蓋との巻締め部分に、容器内面から染色浸透探傷剤(浸透液)を注入し、5日間放置して浸透液の外面への浸透の有無を目視で確認した。
【0024】
(2)パンク圧力(単位:Kpa)
容器胴と蓋を巻締めした後、容器底面よりノズルを差込み、エアーを注入して巻締め部からパンクしたときの空気圧を測定した。
【0025】
(3)耐圧試験(単位:200N×1分)
容器胴と蓋を巻締めした後、容器の上から200Nの荷重を1分間加え、巻締め部からの漏れの有無を目視で確認した。
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示すように、実施例1〜4の巻締め部にシーリングコンパンドを不要としたアルミニウム製容器は、シーリングコンパンドを施した比較例1のAl製容器と同様にいずれも密封性のよいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示す要部の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0029】
(1)有底容器胴
(2)蓋
(3)(4)ポリプロピレンフイルム(合成樹脂フィルム)
(5)巻締め部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器胴の頂部と底部のうち少なくとも頂部に蓋を被せて巻締めてなる密閉金属容器において、容器胴の内外両面のうち少なくともいずれか一方の面に厚さ10〜500μmの合成樹脂フィルムが接合被覆せられていることを特徴とする巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器。
【請求項2】
内面の合成樹脂フィルムがポリプロピレンまたはポリエチレン、外面の合成樹脂フィルムがポリプロピレンよりなることを特徴とする請求項1記載の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器。
【請求項3】
容器胴の頂部と底部のうち少なくとも頂部に蓋を被せて巻締めてなる密閉金属容器において、蓋の内面に厚さ10〜500μmの合成樹脂フィルムが接合被覆せられていることを特徴とする巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器。
【請求項4】
合成樹脂フィルムがポリプロピレンまたはポリエチレンよりなることを特徴とする請求項3記載の巻締め部にシーリングコンパンドを不要とした密閉金属容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−286433(P2009−286433A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140676(P2008−140676)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】