希土類磁石の製造方法
【課題】HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる希土類磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、圧粉体が所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、バルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含する。
【解決手段】本発明の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、圧粉体が所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、バルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類磁石の製造方法、特に、R−Fe−B系希土類磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能永久磁石として代表的なR−Fe−B系希土類磁石(Rは希土類元素、Feは鉄、Bはホウ素)は、三元系正方晶化合物であるR2Fe14B相を主相として含む組織を有し、優れた磁気特性を発揮する。
【0003】
特に代表的なR−Fe−B系焼結磁石は、一般的な粉末冶金法によって作製される。具体的には、原料合金を磁化容易軸が一方向に揃った粉末に粉砕した後、磁界中成形によって磁化容易軸の揃った成形体を得て、その成形体を焼結することで作製される。R−Fe−B系焼結磁石は、磁化容易軸の揃った結晶粒径数μmの組織を有し、R−Fe−B系希土類磁石のなかでも比較的高い残留磁束密度Brと保磁力HcJを有している。
【0004】
しかし、R−Fe−B系希土類磁石は、温度上昇による保磁力HcJの低下が大きく、例えばR−Fe−B系焼結磁石の場合100℃以上の環境で使用し難いという問題がある。耐熱性を改善するためには保磁力を向上させる必要があり、結晶粒径を単磁区臨界粒径(Nd2Fe14B相では理論的に約0.2μmと計算される)以下に微細化すれば保磁力を向上させられることが知られている。しかし、粉末冶金法では原料合金の粉砕粒径が磁石の結晶粒径を決める大きな要因となり、機械粉砕で合金原料を約1μmより細かくすることは困難である。
【0005】
一方、R−Fe−B系合金の結晶粒を、元の磁化容易軸を保ちつつサブミクロンのサイズに微細化する方法として、HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)処理法が知られている。「HDDR」は水素化(Hydrogenation)および不均化(Disproportionation)と、脱水素(Desorption)および再結合(Recombination)とを順次実行するプロセスを意味している。公知のHDDR処理によれば、R−Fe−B系合金のインゴットまたは粉末を、H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって上記インゴットまたは粉末に水素を吸蔵させた後、例えばH2圧力が13Pa以下の真空雰囲気、またはH2分圧が13Pa以下の不活性雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で脱水素処理し、次いで冷却することを特徴としている。
【0006】
上記処理において、典型的には、次のような反応が進行する。すなわち、上記水素吸蔵を起こすための熱処理によって、水素化ならびに不均化反応(双方を合わせて「HD反応」と呼ぶ。反応式の例:Nd2Fe14B+2H2→2NdH2+12Fe+Fe2B)が進行し微細組織が形成される。次いで脱水素処理をおこすための熱処理を行うことにより、脱水素ならびに再結合反応(双方を合わせて「DR反応」と呼ぶ。反応式の例:2NdH2+12Fe+Fe2B→Nd2Fe14B+2H2)が起こり、微細なR2Fe14B結晶相を含む合金が得られる。
【0007】
HDDR処理によって高い磁気特性を得るためには、H2ガスとの反応を均質に起こすことが好ましく、一般的には約1mm以下の合金粉末に適用することが好ましい。そのために、現在は異方性ボンド磁石用の希土類磁石粉末の製造方法として用いられている。
【0008】
HDDR処理を施して製造されたR−Fe−B系磁石粉末(以下、「HDDR粉末」と称する)は、大きな保磁力を有し、磁気的な異方性を有している。このような性質を有する理由は、金属組織が実質的に0.1μm〜1μmと非常に微細で、かつ、反応条件や組成を適切に選択することによって、容易磁化軸が一方向にそろった結晶の集合体となるためである。より詳細には、HDDR処理によって得られる極微細結晶の粒径が正方晶R2Fe14B系化合物の単磁区臨界粒径に近いために高い保磁力を発揮する。HDDR処理を施すことによって、再結合集合組織をもつR−Fe−B系合金粉末を製造する方法は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0009】
また、HDDR粉末を磁界配向した後、ホットプレスや熱間静水圧プレス(HIP)などの熱間成形法を用いてバルク化する技術が提案されており、例えば、特許文献3に開示されている。熱間成形法を用いることにより、低温で緻密化することができるため、HDDR粉末が有する微細な再結晶集合組織を保ったままバルク磁石を作製することができる。
【0010】
特許文献4〜6には、Co,Ga,Hf,Ti,V,Nb,Ta,Al,Siなどの添加物によってHDDR粉末の異方性を高め、磁界中成形とホットプレス法のみで高い特性をもつ異方性バルク磁石が得られることが開示されている。
【0011】
特許文献7では、HDDR粉末を缶封入し粉末の流出を防いだ後、焼結磁石の焼結温度に比べ低温で熱間塑性加工を行うか、もしくはホットプレス法によってバルク化した後、熱間塑性加工を焼結磁石の焼結温度に比べ低温で行うことにより、微細結晶粒を保ったまま異方性バルク磁石を作製できることが開示されている。
【0012】
特許文献8には、磁界中成形の磁界方向と磁界中成形のプレス方向を直角にし、磁界中成形の磁界方向とホットプレスのプレス方向を平行方向にすることでより異方性の高いバルク磁石が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平1−132106号公報
【特許文献2】特開平2−4901号公報
【特許文献3】特開平4−253304号公報
【特許文献4】特開平4−245403号公報
【特許文献5】特開平4−246803号公報
【特許文献6】特開平4−247604号公報
【特許文献7】特開平2−39503号公報
【特許文献8】特開平11−195548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、磁気特性の優れた異方性バルク磁石を得るために種々の検討がなされているが、HDDR粉末を用いてバルク磁石を量産する技術は、確立されたとは言い難い状況にある。
【0015】
例えば、熱間成形に用いられる従来の一般的なホットプレス装置や熱間静水圧プレス(HIP)装置では、昇温速度が10℃/分程度で、冷却速度も10℃/分程度であり、HDDR粉末をバルク化するためには100分以上の長いサイクルタイムを必要としていた。
従来のホットプレス装置では、ヒーターによる抵抗加熱式が一般的であり、昇温速度は10℃/分程度が限界であった。また、冷却は、窒素またはアルゴンガスで空冷するのが一般的で、冷却速度は10℃/分程度が限界であった。そのため、HDDR粉末をバルク化するために、100分以上のサイクルタイムを必要としていた。
【0016】
また、SPS(Spark-Plasma-Sintering)法も知られているが、この方法は、5℃/秒程度と昇温速度は速いものの、圧粉体に直接電流を流して加熱するので、圧粉体(磁石)を均一に加熱することが難しく、安定した品質の磁石を量産することは難しい。
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる希土類磁石の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、前記HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、前記圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、前記圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの前記圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、前記圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、前記バルク体を前記所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含することを特徴とする。
【0019】
ある実施形態において、前記圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧する工程を含み、加圧状態を維持したままで前記工程(c)を行う。
【0020】
ある実施形態において、前記工程(c)の後に前記圧粉体の加圧を開始する。
【0021】
ある実施形態において、前記工程(d)の後、前記バルク体に対する加圧を終了した後に、前記工程(e)を開始する。なお、前記工程(d)の後、前記工程(e)を行いながら、前記バルク体に対する加圧を終了してもよい。
【0022】
ある実施形態において、前記工程(e)は、前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却する工程を含む。200℃以下の温度まで前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却することが好ましい。なお、5℃/秒以上の降温速度とは、1秒当たりの温度の低下が5℃以上であることをいい、例えば1秒当たりの温度の低下が10℃であることをいう。
【0023】
ある実施形態において、前記工程(b)は、磁界中で前記HDDR粉末を加圧する工程を含む。
【0024】
ある実施形態において、前記工程(d)または(e)の後に、500℃以上の温度で60分以上熱処理を行う工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる希土類磁石の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法に用いることができるホットプレス装置を模式的に示す図である。
【図2】(a)は実施例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例1の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図3】(a)は比較例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例1の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図4】(a)は実施例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例2の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図5】(a)は比較例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例2の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図6】(a)は実施例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例3の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図7】(a)は比較例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例3の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図8】(a)は実施例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例4の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図9】(a)は実施例5の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例5の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図10】(a)は実施例6の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例6の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図11】(a)は比較例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例4の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図12】(a)は実施例7の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例7の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図13】(a)は実施例8の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例8の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図14】(a)は実施例9の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例9の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、実施例および比較例を示しながら、図面を参照して本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法を説明する。
【0028】
まず、図1に、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法に用いることができるホットプレス装置を模式的に示す。このホットプレス装置は、高周波加熱による高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)と、ヘリウムガスによる高速冷却(降温速度5℃/秒以上)とが可能であり、HDDR粉末を15分以内でバルク化することができる。
【0029】
図1のホットプレス装置は、一軸プレス装置であり、HDDR粉末またはその圧粉体を受容する開口部(キャビティ)を中央に有する金型(ダイ)2と、HDDR粉末またはHDDR粉末の圧粉体を加圧するための上パンチ3aおよび下パンチ3bと、上パンチ3aを昇降させる加圧シリンダー5とを備えている。加圧シリンダー5には加圧機構7から圧力が与えられる。加圧シリンダー5は下パンチ3bを昇降させるように設けても良い。
【0030】
金型2およびパンチ3a、3bは、チャンバ1内に配置されており、チャンバ1内は真空装置8で真空に引くことによって真空状態するか、またはヘリウムガス供給源(例えばボンベ)9から供給されるヘリウムガスによって充たされる。チャンバ1内を真空状態にする、またはヘリウムガスで充たすことによって、HDDR粉末が酸化されることを防止することができる。また、ヘリウムガスを供給することによって、チャンバ1内の雰囲気の温度を高速(降温速度5℃/秒以上)で低下させることもできる。
【0031】
金型2の周囲には高周波コイル4が設けられており、高周波電源6から供給される高周波電力によって金型2および金型2内のHDDR粉末の圧粉体を高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)することが出来る。
【0032】
金型2およびパンチ3a、3bは、使用する雰囲気ガス中で、最高到達温度(500℃〜900℃)および最高印加圧力(20MPa〜3000MPa)に耐えうる材料、例えばカーボンまたは超硬合金で形成されている。
【0033】
また、変位計10は、上パンチ3aの変位および変位の時間変化を測定することができる。上パンチ3aの変位および変位の時間変化から、加圧方向における圧粉体の寸法および加圧方向における寸法変化、さらには寸法変化の時間微分の値を求めることが出来る。寸法変化の時間微分の値は、ホットプレス中における試料の寸法変化の挙動(寸法変化の有無)の指標となる値で、寸法変化の時間微分の値が0であるということは、試料の寸法変化がまったく無いことを示している。なお、ホットプレスによって試料が緻密化し、上記の微分値が0に収束した後、金型や加圧シリンダーの熱膨張により微分値が−0.12mm/分までの範囲でマイナスの値になる場合がある。したがって、後述の工程(d)における圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値は−0.12mm/分以上0.0mm/分以下とする。変位計10は、実際の量産装置には必ずしも必要でなく、後述する条件を求めた後は、ホットプレス装置の温度と圧力とを所定の範囲内で制御さえすれば、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法を行うことが出来る。
【0034】
上述のホットプレス装置を用いて、HDDR粉末を用いてバルク磁石を短時間(例えば15分以下)で製造するプレス条件を種々検討したところ、ホットプレス条件によっては、結晶粒径はホットプレス前とほとんど変化していないにも拘わらず、バルク磁石の保磁力が粉末の保磁力よりも低下する(再着磁しても戻らない、材料そのものの保磁力の低下)という、特異な現象が見られた。この保磁力の低下は、十分に緻密化していない真密度の98%未満の全ての試料で見られ、また真密度の98%以上まで緻密化したバルク磁石でも見られた。このようなホットプレスによる保磁力の低下はHDDR粉末以外の、例えば急冷磁石粉末等をホットプレスした場合には見られないため、HDDR粉末の熱間成形に特有の現象と考えられる。
【0035】
従来からHDDR粉末を用いてバルク磁石を製造する方法が種々検討されているにも拘わらず、上記の現象が見出されていなかった理由としては、まず第1に、従来はバルク化するために長いサイクルタイム(100分以上)を必要としていたので、短い時間範囲におけるホットプレス条件がバルク磁石の磁気特性に影響することを示す実験結果が得られなかったことが考えられる。そのため、従来は、バルク磁石の磁気特性はもっぱらホットプレスの温度および圧力によって決まると考えられていた。また、HDDR粉末を用いる最大の目的が異方性を有するバルク磁石を得る点にあり、バルク磁石の磁気特性として、残留磁束密度(Br)に注目されていたこともその理由として考えられる。少なくとも本発明者は、ホットプレスの条件がバルク磁石の保磁力に影響し、しかも、バルク磁石の保磁力が粉末の保磁力よりも低下する場合があるとは全く予想していなかった。
【0036】
本発明は、本発明者が見出した上記の知見に基づいて、HDDR粉末を用いて、粉末の保磁力以上の保磁力を有するバルク磁石を熱間成形によって短時間に製造する方法を種々検討した結果得られたものである。
【0037】
後に示す実施例および比較例から理解されるように、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、バルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含する。
【0038】
なお、上記の(d)工程における温度、圧力、時間の具体的な条件は、例えば、温度、圧力および時間の内のいずれか2条件を所定の範囲内で決め、残りの1条件を、上記の時間微分の値が上記の範囲に入るように実験で求めることにより、決めることができる。
【0039】
さらに、工程(d)または(e)の後に、必要に応じて、500℃以上の温度で60分以上熱処理を行う工程(f)を包含する。
【0040】
以下、工程ごとに説明する。
【0041】
工程(a):HDDR粉末は、公知の方法で作製したものを広く用いることができる(例えば、上記特許文献1および2参照)。平均粒径は例えば100μm〜200μmの範囲内にあることが好ましい。HDDR粉末の組成は特に限定されない。HDDR粉末は、例えば、以下の組成を有する合金を用いて作製される。
【0042】
原料合金は、R(希土類元素)とT(Feを50原子%以上含む遷移金属)とB(ほう素)を含む。典型的にはRの総量を10原子%以上20原子%未満、Bの総量を3原子%以上15原子%未満とする。なお、B(ほう素)の一部をC(炭素)で置換してもよい。RとしてはNdおよび/またはPrを主体とすることが望ましく、R全体の70%以上とすることが好ましい。また、RはDyやTbを含んでいてもよい。ここでは希土類元素はY(イットリウム)を含むものとする。遷移金属Tは、Coを含むことが好ましく、Co量は1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。また、0.01原子%以上1原子%以下のGaを含むことが好ましい。Gaの添加によって、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJを増大させることができる。Ga添加量は0.1原子%以上0.7原子%以下がより好ましい。また、これらの元素の他に、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ta、W、Biなどの元素を適宜添加してもよい。ただし、これらの元素の添加総量が5原子%を超えると、磁気特性の低下を招くため、総添加量は5原子%以下に調整することが好ましい。なお、上記の原子%は、合金全体に対する比率を示す。
【0043】
工程(b):HDDR粉末を用いて圧粉体(コンパクト)を作製する。異方性バルク磁石を製造するためには、磁界中でHDDR粉末をプレス成形した圧粉体を用いる。例えば、10MPa〜200MPaの圧力を印加し、0.5T〜20T(0.4MA/m〜1.6MA/m)の磁界中(静磁界、パルス磁界など)でプレス成形する。成形は、公知の粉末プレス装置によって行うことができる。粉末プレス装置から取り出したときの圧粉体密度(成形体密度)は、例えば3.5g/cm3〜5.2g/cm3(真密度(7.6g/cm3)の46%〜68%)程度である。このとき、圧粉体の外形寸法を、次の熱間成形工程で用いるホットプレス装置の金型の開口部の寸法よりも数%以上小さくしておくと、熱間塑性変形が起こることにより異方性のより高いバルク磁石を得ることができる。
【0044】
なお、上記の圧粉体の作製工程は、HDDR粉末に磁界を印加することなく実行しても良い。但し、この場合には、等方性のバルク磁石が得られることになる。また、圧粉体は、図1に示したホットプレス装置で作製して、同じ装置内で引き続いて、加熱工程(工程(c))および熱間成形(工程(d))を行っても良い。
【0045】
工程(c):圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する。この高速加熱工程は、図1に示したホットプレス装置では、高周波を用いて行う。
【0046】
例えば、予め作製した圧粉体をホットプレス装置の金型2の開口部にセットした後、圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧した状態を維持したままで高速加熱する。ホットプレス装置を用いて圧粉体を作製する場合には、圧粉体を作製する前または圧粉体の作製途中から加熱を開始しても良い。また、HDDR粉末または圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に到達した後で、加圧を開始してもよい。
【0047】
工程(d):圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る。すなわち、本発明者は、所定の温度範囲で、所定の圧力を印加して、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る際に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上必要であることを実験的に確認した。この条件さえ満足すれば、この条件を実現するための加熱工程(冷却工程)および加圧工程(除圧工程)は任意であってよい。但し、HDDR粉末を用いてバルク磁石を短いサイクルタイムで製造することを目的としているので、圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間は出来るだけ短い方が好ましく、15分以下であることが好ましい。
【0048】
なお、異方性バルク磁石を作製する場合には、ホットプレスを行うときのプレス方向を、圧粉体中のHDDR粉末の磁化容易軸の配向方向(圧粉体を形成する際に印加した磁界の方向)と一致させることが好ましい。
【0049】
工程(e):得られたバルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する。上記のホットプレス装置では、ヘリウムガスによってバルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却することができる。
【0050】
この冷却工程は、工程(d)の後、加圧を終了(圧力付与を解除)した後に開始することが好ましい。ホットプレス装置を効率よく利用するためには、冷却工程はホットプレス装置からバルク体を取り出して、他の場所(例えばヘリウムガスが満たされた電気炉)で行うことが好ましい。ホットプレス装置からバルク体を取り出して他の場所に移動する際の取り扱いを容易にするために、また、その間のバルク体の酸化を抑制するために、ホットプレス装置内で加圧終了後バルク体を概ね200℃以下の温度まで冷却することが好ましく、100℃以下の温度まで冷却することがさらに好ましい。ホットプレス装置から取り出したバルク体を室温まで冷却する速度は量産性に影響を与えないので、酸化を防止した雰囲気で、歪みが発生しないような降温速度で冷却すればよい。バルク体の温度が100℃以下であれば大気と接触させても急激な酸化は起こらない。
【0051】
工程(c)から(e)は、図1に示したホットプレス装置を用いて、例えば、以下のようにして行うことが出来る。
【0052】
用意した圧粉体を金型2の開口部にセットする。チャンバ1内を不活性ガス雰囲気または1×10-1Torr(13.3Pa)以下の真空にする。
【0053】
その後、高周波電源6から高周波コイル4に高周波電力(例えば9.9kHz、10kW)を供給し、金型2の開口部にセットされた圧粉体の温度を500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する。所定の温度に保持された状態において、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、加圧機構7によって加圧シリンダー5を降下させ、上部パンチ3aと下部パンチ3bとの間で圧粉体に20〜3000MPaの圧力を印加する。加圧を開始するタイミングは昇温過程開始前から昇温過程終了後の間のいつでも良い。
【0054】
加圧終了(圧力付与解除)後、ヘリウムガスをチャンバ1内に導入し、金型2および得られたバルク体を冷却する。バルク体(希土類磁石)が大気と接触しても、酸化しない程度の低い温度(例えば100℃以下程度)まで冷却が進んだ後、バルク体をチャンバ1から取り出す。このようにして、HDDR粉末を用いたバルク磁石が得られる。
【0055】
工程(f):工程(d)または(e)の後に、必要に応じて、500℃以上の温度で熱処理を行う。熱処理時間は10分以上、さらには60分以上とすることが望ましい。熱処理を行うことによって、保磁力HcJを増大させることができる。熱処理の温度は900℃以下であり、700℃を超えないことが好ましい。熱処理時間は、適宜設定できる。また、この熱処理工程は、バルク体を加圧した状態で行う必要が無いので、バルク体をプレス装置から電気炉に移動してから行うことが好ましい。加熱処理の雰囲気は、10Pa以下の真空中で行うことが好ましい。
【0056】
なお、得られたバルク磁石を粉砕し、粉末化した後、ボンド磁石などの原料粉末として利用することも可能である。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明による実施例と比較例を示して、本発明による実施形態をより詳細に説明する。
【0058】
(実施例1、比較例1)
以下の表1に示す組成の合金を用意し、上述した公知の製造方法により、HDDR粉末を作製した。表1における数値の単位は質量%である。以下、本実施例の作製方法を説明する。
【0059】
【表1】
【0060】
まず、表1の組成を有する鋳造合金を作製した。得られた合金を水素吸蔵崩壊法によって粒径300μm以下の粉末に粗粉砕した後、HDDR処理した。具体的には、粗粉砕した合金を100kPa(大気圧)のアルゴン流気中で840℃まで加熱し、その後、雰囲気を100kPa(大気圧)の水素流気に切り替えた後、840℃を180分保時して水素化・不均化反応を行った。次に、840℃のまま5.3kPaに減圧したアルゴン流気中で60分保時し、脱水素・再結合処理を行った。得られたHDDR粉末を振動試料型磁力計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))で測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0063】
上記のHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)(1.2MA/m)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0064】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形(金型の開口部の寸法と同寸法)に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬合金製の金型の開口部に挿入した。以下の実施例および比較例についても同様に圧粉体を加工した。
【0065】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で200MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は730℃と710℃の2条件検討した。昇温速度は12℃/sec、温度保持時間は2分で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0066】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表3に示す。730℃でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、710℃でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0067】
【表3】
【0068】
表3において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0069】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。ここで、寸法変化は圧粉体の加圧方向におけるホットプレス開始位置からの寸法変化を意味しており、実用上マグネスケールで測定したシリンダーの変位で代用され、本実施例では0.01mm刻みで計測されている。また、圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値を単に寸法変化の傾きということにする。
【0070】
図2(a)に、実施例1の試料(金型)温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図2(b)に実施例1の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図3(a)に比較例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図3(b)に比較例1の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。なお、ホットプレス開始からt秒後の寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値))は、1秒間隔でモニターしている寸法変化(x)から1秒毎の差分(△x、△x(t)=x(t)−x(t-1))を求め、(t−9)秒からt秒までの10個の△xの平均値(△x(t-9)から△x(t)までの10個の△xの平均値、1秒毎に求めた△xの10秒間の単純移動平均値)とした。
【0071】
実施例1および比較例1ともに、寸法変化は温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図2(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、730℃の条件では1分10秒、710℃の条件では34秒であった。なお、実施例1および比較例1ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0072】
(実施例2、比較例2)
実施例1で作製したHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0073】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬製の金型の開口部に挿入した。
【0074】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は630℃と610℃の2条件検討した。昇温速度は11℃/sec、温度保持時間は2分で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0075】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表4に示す。630℃でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、610℃でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0076】
【表4】
【0077】
表4において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0078】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図4(a)に、実施例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図4(b)に実施例2の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図5(a)に比較例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図5(b)に比較例2の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0079】
実施例2および比較例2ともに、寸法変化は温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図4(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、630℃の条件では1分8秒、610℃の条件では27秒であった。なお、実施例2および比較例2ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0080】
(実施例3、比較例3)
実施例1で作製したHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)(1.2MA/m)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0081】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬製の金型の開口部に挿入した。
【0082】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は580℃、昇温速度は11℃/sec、温度保持時間は10分と2分の2条件で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0083】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表5に示す。580℃、10分でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、580℃、2分でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。また密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0084】
【表5】
【0085】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図6(a)に、実施例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図6(b)に実施例3の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図7(a)に比較例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図7(b)に比較例3の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0086】
実施例3において、図6(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は6分16秒であった。比較例3では寸法変化は飽和せず、寸法変化の傾きが0になった時間は0分であった。なお、実施例3および比較例3ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0087】
(実施例4〜6、比較例4)
実施例1で作製したHDDR粉末に対してホットプレス処理を行った。HDDR粉末を金型に充填した後、金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で高周波加熱により金型を加熱した後、圧力を印加した。設定温度、昇温速度、プレス圧力、温度保持時間の各条件は表6に示す。また、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。
【0088】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表7に示す。実施例4、実施例5、実施例6の試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、比較例4の試料はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。また密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図8〜10(a)に、実施例4〜6の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図8〜10(b)に実施例4〜6の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図11(a)に比較例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図11(b)に比較例4の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0092】
実施例4〜6および比較例4のいずれも、寸法変化は、温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図8〜10(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、実施例4では1分32秒、実施例5では1分27秒、実施例6では6分34秒であり、比較例4では2秒であった。なお、実施例4〜6および比較例4のいずれも、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0093】
上述した実施例1〜6および比較例1〜4の結果から明らかなように、HDDR粉末の圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得れば、HDDR粉末の保磁力以上の保磁力を有するバルク磁石を熱間成形によって製造することができる。上記の条件を満足する時間は1分以上であればよく、15分以下とすることができる。従って、本発明の実施形態によると、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる。
【0094】
(実施例7〜24、参考例1〜3)
以下の表8に示す組成の合金を用意し、上述した公知の製造方法により、HDDR粉末を作製した。表8における数値の単位は質量%である。
【0095】
【表8】
【0096】
まず、表8の組成を有する鋳造合金を作製した。得られた合金を水素吸蔵崩壊法によって粒径300μm以下の粉末に粗粉砕した後、HDDR処理した。具体的には、粗粉砕した合金を100kPa(大気圧)のアルゴン流気中で820℃まで加熱し、その後、雰囲気を100kPa(大気圧)の水素流気に切り替えた後、820℃を300分保時して水素化・不均化反応を行った。次に、820℃のまま5.3kPaに減圧したアルゴン流気中で60分保時し、脱水素・再結合処理を行った。得られたHDDR粉末を振動試料型磁力計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))で測定した。結果を表9に示す。
【0097】
【表9】
【0098】
表9において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0099】
次に、得られたHDDR粉末に対してホットプレス処理を行った。粉末を充填した金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は650℃、700℃、750℃の3条件検討した。昇温速度は11〜13℃/sec、温度保持時間は2分で、保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0100】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表10に示す。650℃、700℃、750℃でホットプレスした3つの試料は、ホットプレス前の磁石粉末の保磁力HcJより若干低下したものの高い保磁力HcJを示した。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0101】
【表10】
【0102】
表10において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0103】
図12(a)、図13(a)および図14(a)に、実施例7、実施例8、実施例9の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図12(b)、図13(b)、図14(b)に実施例7、実施例8、実施例9の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化とを示す。ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化は、先と同様に、1secの間隔でモニターし、寸法変化の傾きは、寸法変化の時間微分の10sec平均値である。
【0104】
実施例7、実施例8、実施例9は、寸法変化が温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図12(b)、図13(b)および図14(b)から、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、実施例7では1分14秒、実施例8では1分33秒、実施例9では1分25秒であった。なお、実施例7、実施例8、実施例9は、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0105】
さらに、実施例7〜9で得られたバルク体に熱処理を施した。実施例7〜9で得られたバルク体を、10Pa以下の真空中で、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃の温度で60分の熱処理を行った。熱処理後のバルク体の磁気特性を表11に示す。
【0106】
実施例7のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例1、実施例10、11、12、13、14とし、実施例8のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例2、実施例15、16、17、18、19とし、実施例9のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例3、実施例20、21、22、23、24とする。
【0107】
450℃で60分間熱処理を行った参考例1〜3のバルク体の保磁力HcJは、それぞれ熱処理を行っていない実施例7〜9のバルク体の保磁力HcJよりも小さいのに対し、500℃以上の温度で60分間熱処理を行った実施例10〜24のバルク体の保磁力HcJは、それぞれ熱処理を行っていない実施例7〜9のバルク体の保磁力HcJよりも大きい。
【0108】
このように、工程(e)を経て得られたバルク体(希土類磁石)に対して、500℃以上の温度で熱処理を行うことにより保磁力HcJをさらに増大させることができる。熱処理時間は、ここで例示したように60分間以上であることが好ましいが、10分程度でも効果が得られることがある。なお、ここでは、工程(e)の後で熱処理(工程(f))を行ったが、工程(d)の後で工程(e)の前に熱処理(工程(f))を行い、その後で、工程(e)を行っても同様の効果を得ることができる。
【0109】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によるとHDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる。
【符号の説明】
【0111】
1 チャンバ
2 金型(ダイ)
3a 上部パンチ
3b 下部パンチ
4 高周波コイル
5 加圧シリンダー
6 高周波電源
7 加圧機構
8 真空装置
9 ヘリウムガス供給源
10 変位計
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類磁石の製造方法、特に、R−Fe−B系希土類磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能永久磁石として代表的なR−Fe−B系希土類磁石(Rは希土類元素、Feは鉄、Bはホウ素)は、三元系正方晶化合物であるR2Fe14B相を主相として含む組織を有し、優れた磁気特性を発揮する。
【0003】
特に代表的なR−Fe−B系焼結磁石は、一般的な粉末冶金法によって作製される。具体的には、原料合金を磁化容易軸が一方向に揃った粉末に粉砕した後、磁界中成形によって磁化容易軸の揃った成形体を得て、その成形体を焼結することで作製される。R−Fe−B系焼結磁石は、磁化容易軸の揃った結晶粒径数μmの組織を有し、R−Fe−B系希土類磁石のなかでも比較的高い残留磁束密度Brと保磁力HcJを有している。
【0004】
しかし、R−Fe−B系希土類磁石は、温度上昇による保磁力HcJの低下が大きく、例えばR−Fe−B系焼結磁石の場合100℃以上の環境で使用し難いという問題がある。耐熱性を改善するためには保磁力を向上させる必要があり、結晶粒径を単磁区臨界粒径(Nd2Fe14B相では理論的に約0.2μmと計算される)以下に微細化すれば保磁力を向上させられることが知られている。しかし、粉末冶金法では原料合金の粉砕粒径が磁石の結晶粒径を決める大きな要因となり、機械粉砕で合金原料を約1μmより細かくすることは困難である。
【0005】
一方、R−Fe−B系合金の結晶粒を、元の磁化容易軸を保ちつつサブミクロンのサイズに微細化する方法として、HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)処理法が知られている。「HDDR」は水素化(Hydrogenation)および不均化(Disproportionation)と、脱水素(Desorption)および再結合(Recombination)とを順次実行するプロセスを意味している。公知のHDDR処理によれば、R−Fe−B系合金のインゴットまたは粉末を、H2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、それによって上記インゴットまたは粉末に水素を吸蔵させた後、例えばH2圧力が13Pa以下の真空雰囲気、またはH2分圧が13Pa以下の不活性雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で脱水素処理し、次いで冷却することを特徴としている。
【0006】
上記処理において、典型的には、次のような反応が進行する。すなわち、上記水素吸蔵を起こすための熱処理によって、水素化ならびに不均化反応(双方を合わせて「HD反応」と呼ぶ。反応式の例:Nd2Fe14B+2H2→2NdH2+12Fe+Fe2B)が進行し微細組織が形成される。次いで脱水素処理をおこすための熱処理を行うことにより、脱水素ならびに再結合反応(双方を合わせて「DR反応」と呼ぶ。反応式の例:2NdH2+12Fe+Fe2B→Nd2Fe14B+2H2)が起こり、微細なR2Fe14B結晶相を含む合金が得られる。
【0007】
HDDR処理によって高い磁気特性を得るためには、H2ガスとの反応を均質に起こすことが好ましく、一般的には約1mm以下の合金粉末に適用することが好ましい。そのために、現在は異方性ボンド磁石用の希土類磁石粉末の製造方法として用いられている。
【0008】
HDDR処理を施して製造されたR−Fe−B系磁石粉末(以下、「HDDR粉末」と称する)は、大きな保磁力を有し、磁気的な異方性を有している。このような性質を有する理由は、金属組織が実質的に0.1μm〜1μmと非常に微細で、かつ、反応条件や組成を適切に選択することによって、容易磁化軸が一方向にそろった結晶の集合体となるためである。より詳細には、HDDR処理によって得られる極微細結晶の粒径が正方晶R2Fe14B系化合物の単磁区臨界粒径に近いために高い保磁力を発揮する。HDDR処理を施すことによって、再結合集合組織をもつR−Fe−B系合金粉末を製造する方法は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0009】
また、HDDR粉末を磁界配向した後、ホットプレスや熱間静水圧プレス(HIP)などの熱間成形法を用いてバルク化する技術が提案されており、例えば、特許文献3に開示されている。熱間成形法を用いることにより、低温で緻密化することができるため、HDDR粉末が有する微細な再結晶集合組織を保ったままバルク磁石を作製することができる。
【0010】
特許文献4〜6には、Co,Ga,Hf,Ti,V,Nb,Ta,Al,Siなどの添加物によってHDDR粉末の異方性を高め、磁界中成形とホットプレス法のみで高い特性をもつ異方性バルク磁石が得られることが開示されている。
【0011】
特許文献7では、HDDR粉末を缶封入し粉末の流出を防いだ後、焼結磁石の焼結温度に比べ低温で熱間塑性加工を行うか、もしくはホットプレス法によってバルク化した後、熱間塑性加工を焼結磁石の焼結温度に比べ低温で行うことにより、微細結晶粒を保ったまま異方性バルク磁石を作製できることが開示されている。
【0012】
特許文献8には、磁界中成形の磁界方向と磁界中成形のプレス方向を直角にし、磁界中成形の磁界方向とホットプレスのプレス方向を平行方向にすることでより異方性の高いバルク磁石が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平1−132106号公報
【特許文献2】特開平2−4901号公報
【特許文献3】特開平4−253304号公報
【特許文献4】特開平4−245403号公報
【特許文献5】特開平4−246803号公報
【特許文献6】特開平4−247604号公報
【特許文献7】特開平2−39503号公報
【特許文献8】特開平11−195548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、磁気特性の優れた異方性バルク磁石を得るために種々の検討がなされているが、HDDR粉末を用いてバルク磁石を量産する技術は、確立されたとは言い難い状況にある。
【0015】
例えば、熱間成形に用いられる従来の一般的なホットプレス装置や熱間静水圧プレス(HIP)装置では、昇温速度が10℃/分程度で、冷却速度も10℃/分程度であり、HDDR粉末をバルク化するためには100分以上の長いサイクルタイムを必要としていた。
従来のホットプレス装置では、ヒーターによる抵抗加熱式が一般的であり、昇温速度は10℃/分程度が限界であった。また、冷却は、窒素またはアルゴンガスで空冷するのが一般的で、冷却速度は10℃/分程度が限界であった。そのため、HDDR粉末をバルク化するために、100分以上のサイクルタイムを必要としていた。
【0016】
また、SPS(Spark-Plasma-Sintering)法も知られているが、この方法は、5℃/秒程度と昇温速度は速いものの、圧粉体に直接電流を流して加熱するので、圧粉体(磁石)を均一に加熱することが難しく、安定した品質の磁石を量産することは難しい。
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる希土類磁石の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、前記HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、前記圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、前記圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの前記圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、前記圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、前記バルク体を前記所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含することを特徴とする。
【0019】
ある実施形態において、前記圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧する工程を含み、加圧状態を維持したままで前記工程(c)を行う。
【0020】
ある実施形態において、前記工程(c)の後に前記圧粉体の加圧を開始する。
【0021】
ある実施形態において、前記工程(d)の後、前記バルク体に対する加圧を終了した後に、前記工程(e)を開始する。なお、前記工程(d)の後、前記工程(e)を行いながら、前記バルク体に対する加圧を終了してもよい。
【0022】
ある実施形態において、前記工程(e)は、前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却する工程を含む。200℃以下の温度まで前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却することが好ましい。なお、5℃/秒以上の降温速度とは、1秒当たりの温度の低下が5℃以上であることをいい、例えば1秒当たりの温度の低下が10℃であることをいう。
【0023】
ある実施形態において、前記工程(b)は、磁界中で前記HDDR粉末を加圧する工程を含む。
【0024】
ある実施形態において、前記工程(d)または(e)の後に、500℃以上の温度で60分以上熱処理を行う工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる希土類磁石の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法に用いることができるホットプレス装置を模式的に示す図である。
【図2】(a)は実施例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例1の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図3】(a)は比較例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例1の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図4】(a)は実施例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例2の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図5】(a)は比較例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例2の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図6】(a)は実施例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例3の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図7】(a)は比較例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例3の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図8】(a)は実施例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例4の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図9】(a)は実施例5の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例5の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図10】(a)は実施例6の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例6の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図11】(a)は比較例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は比較例4の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図12】(a)は実施例7の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例7の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図13】(a)は実施例8の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例8の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【図14】(a)は実施例9の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示す図であり、(b)は実施例9の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、実施例および比較例を示しながら、図面を参照して本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法を説明する。
【0028】
まず、図1に、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法に用いることができるホットプレス装置を模式的に示す。このホットプレス装置は、高周波加熱による高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)と、ヘリウムガスによる高速冷却(降温速度5℃/秒以上)とが可能であり、HDDR粉末を15分以内でバルク化することができる。
【0029】
図1のホットプレス装置は、一軸プレス装置であり、HDDR粉末またはその圧粉体を受容する開口部(キャビティ)を中央に有する金型(ダイ)2と、HDDR粉末またはHDDR粉末の圧粉体を加圧するための上パンチ3aおよび下パンチ3bと、上パンチ3aを昇降させる加圧シリンダー5とを備えている。加圧シリンダー5には加圧機構7から圧力が与えられる。加圧シリンダー5は下パンチ3bを昇降させるように設けても良い。
【0030】
金型2およびパンチ3a、3bは、チャンバ1内に配置されており、チャンバ1内は真空装置8で真空に引くことによって真空状態するか、またはヘリウムガス供給源(例えばボンベ)9から供給されるヘリウムガスによって充たされる。チャンバ1内を真空状態にする、またはヘリウムガスで充たすことによって、HDDR粉末が酸化されることを防止することができる。また、ヘリウムガスを供給することによって、チャンバ1内の雰囲気の温度を高速(降温速度5℃/秒以上)で低下させることもできる。
【0031】
金型2の周囲には高周波コイル4が設けられており、高周波電源6から供給される高周波電力によって金型2および金型2内のHDDR粉末の圧粉体を高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)することが出来る。
【0032】
金型2およびパンチ3a、3bは、使用する雰囲気ガス中で、最高到達温度(500℃〜900℃)および最高印加圧力(20MPa〜3000MPa)に耐えうる材料、例えばカーボンまたは超硬合金で形成されている。
【0033】
また、変位計10は、上パンチ3aの変位および変位の時間変化を測定することができる。上パンチ3aの変位および変位の時間変化から、加圧方向における圧粉体の寸法および加圧方向における寸法変化、さらには寸法変化の時間微分の値を求めることが出来る。寸法変化の時間微分の値は、ホットプレス中における試料の寸法変化の挙動(寸法変化の有無)の指標となる値で、寸法変化の時間微分の値が0であるということは、試料の寸法変化がまったく無いことを示している。なお、ホットプレスによって試料が緻密化し、上記の微分値が0に収束した後、金型や加圧シリンダーの熱膨張により微分値が−0.12mm/分までの範囲でマイナスの値になる場合がある。したがって、後述の工程(d)における圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値は−0.12mm/分以上0.0mm/分以下とする。変位計10は、実際の量産装置には必ずしも必要でなく、後述する条件を求めた後は、ホットプレス装置の温度と圧力とを所定の範囲内で制御さえすれば、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法を行うことが出来る。
【0034】
上述のホットプレス装置を用いて、HDDR粉末を用いてバルク磁石を短時間(例えば15分以下)で製造するプレス条件を種々検討したところ、ホットプレス条件によっては、結晶粒径はホットプレス前とほとんど変化していないにも拘わらず、バルク磁石の保磁力が粉末の保磁力よりも低下する(再着磁しても戻らない、材料そのものの保磁力の低下)という、特異な現象が見られた。この保磁力の低下は、十分に緻密化していない真密度の98%未満の全ての試料で見られ、また真密度の98%以上まで緻密化したバルク磁石でも見られた。このようなホットプレスによる保磁力の低下はHDDR粉末以外の、例えば急冷磁石粉末等をホットプレスした場合には見られないため、HDDR粉末の熱間成形に特有の現象と考えられる。
【0035】
従来からHDDR粉末を用いてバルク磁石を製造する方法が種々検討されているにも拘わらず、上記の現象が見出されていなかった理由としては、まず第1に、従来はバルク化するために長いサイクルタイム(100分以上)を必要としていたので、短い時間範囲におけるホットプレス条件がバルク磁石の磁気特性に影響することを示す実験結果が得られなかったことが考えられる。そのため、従来は、バルク磁石の磁気特性はもっぱらホットプレスの温度および圧力によって決まると考えられていた。また、HDDR粉末を用いる最大の目的が異方性を有するバルク磁石を得る点にあり、バルク磁石の磁気特性として、残留磁束密度(Br)に注目されていたこともその理由として考えられる。少なくとも本発明者は、ホットプレスの条件がバルク磁石の保磁力に影響し、しかも、バルク磁石の保磁力が粉末の保磁力よりも低下する場合があるとは全く予想していなかった。
【0036】
本発明は、本発明者が見出した上記の知見に基づいて、HDDR粉末を用いて、粉末の保磁力以上の保磁力を有するバルク磁石を熱間成形によって短時間に製造する方法を種々検討した結果得られたものである。
【0037】
後に示す実施例および比較例から理解されるように、本発明による実施形態の希土類磁石の製造方法は、HDDR粉末を用意する工程(a)と、HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、バルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)とを包含する。
【0038】
なお、上記の(d)工程における温度、圧力、時間の具体的な条件は、例えば、温度、圧力および時間の内のいずれか2条件を所定の範囲内で決め、残りの1条件を、上記の時間微分の値が上記の範囲に入るように実験で求めることにより、決めることができる。
【0039】
さらに、工程(d)または(e)の後に、必要に応じて、500℃以上の温度で60分以上熱処理を行う工程(f)を包含する。
【0040】
以下、工程ごとに説明する。
【0041】
工程(a):HDDR粉末は、公知の方法で作製したものを広く用いることができる(例えば、上記特許文献1および2参照)。平均粒径は例えば100μm〜200μmの範囲内にあることが好ましい。HDDR粉末の組成は特に限定されない。HDDR粉末は、例えば、以下の組成を有する合金を用いて作製される。
【0042】
原料合金は、R(希土類元素)とT(Feを50原子%以上含む遷移金属)とB(ほう素)を含む。典型的にはRの総量を10原子%以上20原子%未満、Bの総量を3原子%以上15原子%未満とする。なお、B(ほう素)の一部をC(炭素)で置換してもよい。RとしてはNdおよび/またはPrを主体とすることが望ましく、R全体の70%以上とすることが好ましい。また、RはDyやTbを含んでいてもよい。ここでは希土類元素はY(イットリウム)を含むものとする。遷移金属Tは、Coを含むことが好ましく、Co量は1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。また、0.01原子%以上1原子%以下のGaを含むことが好ましい。Gaの添加によって、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJを増大させることができる。Ga添加量は0.1原子%以上0.7原子%以下がより好ましい。また、これらの元素の他に、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ta、W、Biなどの元素を適宜添加してもよい。ただし、これらの元素の添加総量が5原子%を超えると、磁気特性の低下を招くため、総添加量は5原子%以下に調整することが好ましい。なお、上記の原子%は、合金全体に対する比率を示す。
【0043】
工程(b):HDDR粉末を用いて圧粉体(コンパクト)を作製する。異方性バルク磁石を製造するためには、磁界中でHDDR粉末をプレス成形した圧粉体を用いる。例えば、10MPa〜200MPaの圧力を印加し、0.5T〜20T(0.4MA/m〜1.6MA/m)の磁界中(静磁界、パルス磁界など)でプレス成形する。成形は、公知の粉末プレス装置によって行うことができる。粉末プレス装置から取り出したときの圧粉体密度(成形体密度)は、例えば3.5g/cm3〜5.2g/cm3(真密度(7.6g/cm3)の46%〜68%)程度である。このとき、圧粉体の外形寸法を、次の熱間成形工程で用いるホットプレス装置の金型の開口部の寸法よりも数%以上小さくしておくと、熱間塑性変形が起こることにより異方性のより高いバルク磁石を得ることができる。
【0044】
なお、上記の圧粉体の作製工程は、HDDR粉末に磁界を印加することなく実行しても良い。但し、この場合には、等方性のバルク磁石が得られることになる。また、圧粉体は、図1に示したホットプレス装置で作製して、同じ装置内で引き続いて、加熱工程(工程(c))および熱間成形(工程(d))を行っても良い。
【0045】
工程(c):圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する。この高速加熱工程は、図1に示したホットプレス装置では、高周波を用いて行う。
【0046】
例えば、予め作製した圧粉体をホットプレス装置の金型2の開口部にセットした後、圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧した状態を維持したままで高速加熱する。ホットプレス装置を用いて圧粉体を作製する場合には、圧粉体を作製する前または圧粉体の作製途中から加熱を開始しても良い。また、HDDR粉末または圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に到達した後で、加圧を開始してもよい。
【0047】
工程(d):圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る。すなわち、本発明者は、所定の温度範囲で、所定の圧力を印加して、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る際に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上必要であることを実験的に確認した。この条件さえ満足すれば、この条件を実現するための加熱工程(冷却工程)および加圧工程(除圧工程)は任意であってよい。但し、HDDR粉末を用いてバルク磁石を短いサイクルタイムで製造することを目的としているので、圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間は出来るだけ短い方が好ましく、15分以下であることが好ましい。
【0048】
なお、異方性バルク磁石を作製する場合には、ホットプレスを行うときのプレス方向を、圧粉体中のHDDR粉末の磁化容易軸の配向方向(圧粉体を形成する際に印加した磁界の方向)と一致させることが好ましい。
【0049】
工程(e):得られたバルク体を所定の温度から500℃未満の温度に冷却する。上記のホットプレス装置では、ヘリウムガスによってバルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却することができる。
【0050】
この冷却工程は、工程(d)の後、加圧を終了(圧力付与を解除)した後に開始することが好ましい。ホットプレス装置を効率よく利用するためには、冷却工程はホットプレス装置からバルク体を取り出して、他の場所(例えばヘリウムガスが満たされた電気炉)で行うことが好ましい。ホットプレス装置からバルク体を取り出して他の場所に移動する際の取り扱いを容易にするために、また、その間のバルク体の酸化を抑制するために、ホットプレス装置内で加圧終了後バルク体を概ね200℃以下の温度まで冷却することが好ましく、100℃以下の温度まで冷却することがさらに好ましい。ホットプレス装置から取り出したバルク体を室温まで冷却する速度は量産性に影響を与えないので、酸化を防止した雰囲気で、歪みが発生しないような降温速度で冷却すればよい。バルク体の温度が100℃以下であれば大気と接触させても急激な酸化は起こらない。
【0051】
工程(c)から(e)は、図1に示したホットプレス装置を用いて、例えば、以下のようにして行うことが出来る。
【0052】
用意した圧粉体を金型2の開口部にセットする。チャンバ1内を不活性ガス雰囲気または1×10-1Torr(13.3Pa)以下の真空にする。
【0053】
その後、高周波電源6から高周波コイル4に高周波電力(例えば9.9kHz、10kW)を供給し、金型2の開口部にセットされた圧粉体の温度を500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する。所定の温度に保持された状態において、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、加圧機構7によって加圧シリンダー5を降下させ、上部パンチ3aと下部パンチ3bとの間で圧粉体に20〜3000MPaの圧力を印加する。加圧を開始するタイミングは昇温過程開始前から昇温過程終了後の間のいつでも良い。
【0054】
加圧終了(圧力付与解除)後、ヘリウムガスをチャンバ1内に導入し、金型2および得られたバルク体を冷却する。バルク体(希土類磁石)が大気と接触しても、酸化しない程度の低い温度(例えば100℃以下程度)まで冷却が進んだ後、バルク体をチャンバ1から取り出す。このようにして、HDDR粉末を用いたバルク磁石が得られる。
【0055】
工程(f):工程(d)または(e)の後に、必要に応じて、500℃以上の温度で熱処理を行う。熱処理時間は10分以上、さらには60分以上とすることが望ましい。熱処理を行うことによって、保磁力HcJを増大させることができる。熱処理の温度は900℃以下であり、700℃を超えないことが好ましい。熱処理時間は、適宜設定できる。また、この熱処理工程は、バルク体を加圧した状態で行う必要が無いので、バルク体をプレス装置から電気炉に移動してから行うことが好ましい。加熱処理の雰囲気は、10Pa以下の真空中で行うことが好ましい。
【0056】
なお、得られたバルク磁石を粉砕し、粉末化した後、ボンド磁石などの原料粉末として利用することも可能である。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明による実施例と比較例を示して、本発明による実施形態をより詳細に説明する。
【0058】
(実施例1、比較例1)
以下の表1に示す組成の合金を用意し、上述した公知の製造方法により、HDDR粉末を作製した。表1における数値の単位は質量%である。以下、本実施例の作製方法を説明する。
【0059】
【表1】
【0060】
まず、表1の組成を有する鋳造合金を作製した。得られた合金を水素吸蔵崩壊法によって粒径300μm以下の粉末に粗粉砕した後、HDDR処理した。具体的には、粗粉砕した合金を100kPa(大気圧)のアルゴン流気中で840℃まで加熱し、その後、雰囲気を100kPa(大気圧)の水素流気に切り替えた後、840℃を180分保時して水素化・不均化反応を行った。次に、840℃のまま5.3kPaに減圧したアルゴン流気中で60分保時し、脱水素・再結合処理を行った。得られたHDDR粉末を振動試料型磁力計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))で測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0063】
上記のHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)(1.2MA/m)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0064】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形(金型の開口部の寸法と同寸法)に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬合金製の金型の開口部に挿入した。以下の実施例および比較例についても同様に圧粉体を加工した。
【0065】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で200MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は730℃と710℃の2条件検討した。昇温速度は12℃/sec、温度保持時間は2分で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0066】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表3に示す。730℃でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、710℃でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0067】
【表3】
【0068】
表3において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0069】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。ここで、寸法変化は圧粉体の加圧方向におけるホットプレス開始位置からの寸法変化を意味しており、実用上マグネスケールで測定したシリンダーの変位で代用され、本実施例では0.01mm刻みで計測されている。また、圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値を単に寸法変化の傾きということにする。
【0070】
図2(a)に、実施例1の試料(金型)温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図2(b)に実施例1の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図3(a)に比較例1の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図3(b)に比較例1の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。なお、ホットプレス開始からt秒後の寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値))は、1秒間隔でモニターしている寸法変化(x)から1秒毎の差分(△x、△x(t)=x(t)−x(t-1))を求め、(t−9)秒からt秒までの10個の△xの平均値(△x(t-9)から△x(t)までの10個の△xの平均値、1秒毎に求めた△xの10秒間の単純移動平均値)とした。
【0071】
実施例1および比較例1ともに、寸法変化は温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図2(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、730℃の条件では1分10秒、710℃の条件では34秒であった。なお、実施例1および比較例1ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0072】
(実施例2、比較例2)
実施例1で作製したHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0073】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬製の金型の開口部に挿入した。
【0074】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は630℃と610℃の2条件検討した。昇温速度は11℃/sec、温度保持時間は2分で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0075】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表4に示す。630℃でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、610℃でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0076】
【表4】
【0077】
表4において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0078】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図4(a)に、実施例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図4(b)に実施例2の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図5(a)に比較例2の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図5(b)に比較例2の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0079】
実施例2および比較例2ともに、寸法変化は温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図4(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、630℃の条件では1分8秒、610℃の条件では27秒であった。なお、実施例2および比較例2ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0080】
(実施例3、比較例3)
実施例1で作製したHDDR粉末をプレス装置の金型に充填し、1.5テスラ(T)(1.2MA/m)の磁界中において、磁界と垂直方向に60MPaの圧力を印加して圧粉体を作製した。
【0081】
次に、圧粉体に対してホットプレス処理を行った。具体的には、圧粉体を所望の形に研削加工し、磁界中成形の磁場方向とホットプレスのプレス方向が平行になるように超硬製の金型の開口部に挿入した。
【0082】
金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は580℃、昇温速度は11℃/sec、温度保持時間は10分と2分の2条件で、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。温度保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0083】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表5に示す。580℃、10分でホットプレスした試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、580℃、2分でホットプレスした磁石はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。また密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0084】
【表5】
【0085】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図6(a)に、実施例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図6(b)に実施例3の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図7(a)に比較例3の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図7(b)に比較例3の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0086】
実施例3において、図6(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は6分16秒であった。比較例3では寸法変化は飽和せず、寸法変化の傾きが0になった時間は0分であった。なお、実施例3および比較例3ともに、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0087】
(実施例4〜6、比較例4)
実施例1で作製したHDDR粉末に対してホットプレス処理を行った。HDDR粉末を金型に充填した後、金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で高周波加熱により金型を加熱した後、圧力を印加した。設定温度、昇温速度、プレス圧力、温度保持時間の各条件は表6に示す。また、温度保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。
【0088】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表7に示す。実施例4、実施例5、実施例6の試料はホットプレス前の磁石粉末と同等以上の保磁力HcJを示したが、比較例4の試料はホットプレス前の磁石粉末と比べ保磁力HcJが低下していた。また密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化を1secの間隔でモニターした。図8〜10(a)に、実施例4〜6の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図8〜10(b)に実施例4〜6の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。また、図11(a)に比較例4の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図11(b)に比較例4の寸法変化と寸法変化の傾き(時間微分(10sec平均値):単位mm/分)の時間変化を示す。
【0092】
実施例4〜6および比較例4のいずれも、寸法変化は、温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図8〜10(b)より、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、実施例4では1分32秒、実施例5では1分27秒、実施例6では6分34秒であり、比較例4では2秒であった。なお、実施例4〜6および比較例4のいずれも、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0093】
上述した実施例1〜6および比較例1〜4の結果から明らかなように、HDDR粉末の圧粉体が500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上となるように、圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得れば、HDDR粉末の保磁力以上の保磁力を有するバルク磁石を熱間成形によって製造することができる。上記の条件を満足する時間は1分以上であればよく、15分以下とすることができる。従って、本発明の実施形態によると、HDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる。
【0094】
(実施例7〜24、参考例1〜3)
以下の表8に示す組成の合金を用意し、上述した公知の製造方法により、HDDR粉末を作製した。表8における数値の単位は質量%である。
【0095】
【表8】
【0096】
まず、表8の組成を有する鋳造合金を作製した。得られた合金を水素吸蔵崩壊法によって粒径300μm以下の粉末に粗粉砕した後、HDDR処理した。具体的には、粗粉砕した合金を100kPa(大気圧)のアルゴン流気中で820℃まで加熱し、その後、雰囲気を100kPa(大気圧)の水素流気に切り替えた後、820℃を300分保時して水素化・不均化反応を行った。次に、820℃のまま5.3kPaに減圧したアルゴン流気中で60分保時し、脱水素・再結合処理を行った。得られたHDDR粉末を振動試料型磁力計(VSM:装置名VSM5(東英工業社製))で測定した。結果を表9に示す。
【0097】
【表9】
【0098】
表9において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0099】
次に、得られたHDDR粉末に対してホットプレス処理を行った。粉末を充填した金型をホットプレス装置内に設置し、1×10-2Pa以下の真空中で586MPaの圧力を印加しながら、高周波加熱により金型を加熱した。設定温度は650℃、700℃、750℃の3条件検討した。昇温速度は11〜13℃/sec、温度保持時間は2分で、保持時間経過の10秒前にプレス圧力を抜いた。保持時間経過後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。
【0100】
得られた試料の寸法と単重から密度を計算した。また磁気特性をBHトレーサー(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))で測定した。密度と磁気特性を表10に示す。650℃、700℃、750℃でホットプレスした3つの試料は、ホットプレス前の磁石粉末の保磁力HcJより若干低下したものの高い保磁力HcJを示した。なお、密度はいずれも真密度近く(98%以上)まで到達していた。
【0101】
【表10】
【0102】
表10において、Jmaxは、着磁したサンプルの着磁方向に2テスラ(T)(1.6MA/m)まで外部磁界Hを印加したときのサンプルの磁化J(T)の最大測定値である。
【0103】
図12(a)、図13(a)および図14(a)に、実施例7、実施例8、実施例9の試料温度およびプレス圧力の時間変化を示し、図12(b)、図13(b)、図14(b)に実施例7、実施例8、実施例9の寸法変化と寸法変化の傾きの時間変化とを示す。ホットプレス処理中の試料(金型)温度、プレス圧力、寸法変化は、先と同様に、1secの間隔でモニターし、寸法変化の傾きは、寸法変化の時間微分の10sec平均値である。
【0104】
実施例7、実施例8、実施例9は、寸法変化が温度保持中に飽和し、寸法変化の傾きが0に収束した。図12(b)、図13(b)および図14(b)から、寸法変化の傾きが−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である時間は、実施例7では1分14秒、実施例8では1分33秒、実施例9では1分25秒であった。なお、実施例7、実施例8、実施例9は、それぞれの所定の温度から約200℃までの降温速度は5℃/秒以上であった。
【0105】
さらに、実施例7〜9で得られたバルク体に熱処理を施した。実施例7〜9で得られたバルク体を、10Pa以下の真空中で、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃の温度で60分の熱処理を行った。熱処理後のバルク体の磁気特性を表11に示す。
【0106】
実施例7のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例1、実施例10、11、12、13、14とし、実施例8のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例2、実施例15、16、17、18、19とし、実施例9のバルク体を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃で熱処理したバルク体を、それぞれ、参考例3、実施例20、21、22、23、24とする。
【0107】
450℃で60分間熱処理を行った参考例1〜3のバルク体の保磁力HcJは、それぞれ熱処理を行っていない実施例7〜9のバルク体の保磁力HcJよりも小さいのに対し、500℃以上の温度で60分間熱処理を行った実施例10〜24のバルク体の保磁力HcJは、それぞれ熱処理を行っていない実施例7〜9のバルク体の保磁力HcJよりも大きい。
【0108】
このように、工程(e)を経て得られたバルク体(希土類磁石)に対して、500℃以上の温度で熱処理を行うことにより保磁力HcJをさらに増大させることができる。熱処理時間は、ここで例示したように60分間以上であることが好ましいが、10分程度でも効果が得られることがある。なお、ここでは、工程(e)の後で熱処理(工程(f))を行ったが、工程(d)の後で工程(e)の前に熱処理(工程(f))を行い、その後で、工程(e)を行っても同様の効果を得ることができる。
【0109】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によるとHDDR粉末を用いたバルク磁石を従来よりも高い効率で製造できる。
【符号の説明】
【0111】
1 チャンバ
2 金型(ダイ)
3a 上部パンチ
3b 下部パンチ
4 高周波コイル
5 加圧シリンダー
6 高周波電源
7 加圧機構
8 真空装置
9 ヘリウムガス供給源
10 変位計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDDR粉末を用意する工程(a)と、
前記HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、
前記圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、
前記圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの前記圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、前記圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、
前記バルク体を前記所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)と
を包含する、希土類磁石の製造方法。
【請求項2】
前記圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧する工程を含み、加圧状態を維持したままで前記工程(c)を行う、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)の後に前記圧粉体の加圧を開始する、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項4】
前記工程(d)の後、前記バルク体に対する加圧を終了した後に、前記工程(e)を開始する、請求項1から3のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項5】
前記工程(e)は、前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却する工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)は、磁界中で前記HDDR粉末を加圧する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項1】
HDDR粉末を用意する工程(a)と、
前記HDDR粉末を成形して圧粉体を作製する工程(b)と、
前記圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で500℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱する工程(c)と、
前記圧粉体が前記所定の温度にある間に、加圧方向を正としたときの前記圧粉体の加圧方向における寸法変化の時間微分の値が−0.12mm/分以上0.0mm/分以下の値である期間が1分以上15分以下となるように、前記圧粉体を20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧することによって、真密度の98%以上の密度を有するバルク体を得る工程(d)と、
前記バルク体を前記所定の温度から500℃未満の温度に冷却する工程(e)と
を包含する、希土類磁石の製造方法。
【請求項2】
前記圧粉体を500℃未満の温度で20MPa以上3000MPa以下の圧力で加圧する工程を含み、加圧状態を維持したままで前記工程(c)を行う、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)の後に前記圧粉体の加圧を開始する、請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項4】
前記工程(d)の後、前記バルク体に対する加圧を終了した後に、前記工程(e)を開始する、請求項1から3のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項5】
前記工程(e)は、前記バルク体を5℃/秒以上の降温速度で冷却する工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)は、磁界中で前記HDDR粉末を加圧する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−251740(P2010−251740A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72710(P2010−72710)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、21年度、文部科学省科学技術試験研究委託事業元素戦略プロジェクトの委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、21年度、文部科学省科学技術試験研究委託事業元素戦略プロジェクトの委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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