説明

希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法

【課題】希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されている製品から、樹脂を除去した希土類磁石類とそれ以外の金属を回収することができる希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法を提供する。
【解決手段】希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、前記希土類磁石類が前記樹脂と一体化されている製品から、希土類磁石類とそれ以外の金属を回収する方法であって、(a)前記製品を解体して、樹脂と一体化された希土類磁石類を含む部位Aと前記希土類磁石類以外の金属を含む部位Bとを分離する工程と、(b)分離した前記部位Aを熱水処理して前記樹脂を分解、剥離して前記希土類磁石類を回収する工程と、(c)分離した前記部位Bから前記金属を回収する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希少金属(レアメタル)や希少希土類(レアアース)は、一般家電製品からコンピュータ周辺機器、電子機器、自動車、医療機器など幅広く使用されている。特に、Nd(ネオジウム)やDy(ジスプロシウム)などの希土類を含む希土類磁石合金などの希土類磁石類は、磁気性能が良く、発電機などのモータ、ハードディスク用のアクチュエータ、洗濯機のモータ・ロータなどに使われている。
【0003】
これら希少物質を利用するためには、希少物質を安定的に確保することが重要であり、資源の偏在性による社会的制約や需要増加による価格高騰などが要因となって、リサイクルに対する要求が高まっている。
【0004】
一方、2001年4月より家電リサイクル法が施行され、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられている。これら家電製品のリサイクル処理では、鉄、銅、アルミニウムなどの金属と、プラスチックなどの樹脂屑とを分別回収している。例えば、図3に示すように、洗濯機などの廃棄家電をそのまま粉砕し、磁力、渦電流、比重などを利用した選別手法による機械分割で、金属と樹脂屑とを分別回収している。
【0005】
このような状況のもと、最近、洗濯機やエアコンにおいて、高性能な希土類磁石類を含むコンプレッサ・ロータやモータ・ロータが使われるようになってきている。特に希土類磁石類が樹脂などと固着されて用いられている場合、手作業や機械的に解体、粉砕するなどの従来の方法によって希土類磁石類に固着している樹脂を除去して希土類磁石類を回収することは困難である。手作業や機械的な解体の場合、手間の割りに樹脂を綺麗に分離することが困難であり、粉砕してしまうと鉄等の金属成分との分離が困難である。
【0006】
これまでに報告されている回収技術としては、特許文献1記載の技術がある。特許文献1記載の技術は、希土類磁石の磁石加工工程で発生するスクラップやスラッジから希土類元素を回収する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−60863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この回収技術は、回収された希土類磁石のスクラップやスラッジを対象とする希土類元素の回収技術である。洗濯機やエアコンなどの家電製品に含まれる希土類磁石類はその家電製品単体中の数%程度であるため、希土類元素を回収するためには、まず、家電製品の筐体であるプラスチックや鋼板から希土類磁石類を選択的に回収することが必要になる。
【0009】
また、家電製品に含まれている希土類磁石類は、上述したように、樹脂で被覆(封止)されていたり樹脂が固着されていたりするなど樹脂と一体化された状態となっている場合には、希土類磁石類から樹脂を除去することが必要になる。
【0010】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、次のことを課題とする。希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されている製品から、樹脂を除去した希土類磁石類とそれ以外の金属を回収することができる希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法は、希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、前記希土類磁石類が前記樹脂と一体化されている製品から、希土類磁石類とそれ以外の金属を回収する方法であって、(a)前記製品を解体して、樹脂と一体化された希土類磁石類を含む部位Aと前記希土類磁石類以外の金属を含む部位Bとを分離する工程と、(b)分離した前記部位Aを熱水処理して前記樹脂を分解、剥離して前記希土類磁石類を回収する工程と、(c)分離した前記部位Bから前記金属を回収する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記部位Bは樹脂を含有し、前記工程(c)では前記部位Bを粉砕してこの粉砕物から前記金属と前記樹脂とを分別回収し、前記工程(b)では前記工程(c)において回収した前記樹脂を前記部位Aとともに熱水処理することが好ましい。
【0013】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記部位A中の前記樹脂の一部を切断分離することが好ましい。
【0014】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記工程(c)では前記部位Aから切断分離した前記樹脂を前記部位Bとともに粉砕してこの粉砕物から前記金属と前記樹脂とを分別回収し、前記工程(b)では前記工程(c)において回収した前記樹脂を前記部位Aとともに熱水処理することが好ましい。
【0015】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記部位Bの粉砕物から比重による選別により前記樹脂を分別回収することが好ましい。
【0016】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記部位B中の前記金属は磁性金属と非磁性金属とを含有し、前記工程(c)では前記部位Bを粉砕してこの粉砕物から磁力選別により前記磁性金属と前記非磁性金属とを分別回収することが好ましい。
【0017】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記樹脂は無機物を含有し、前記工程(b)の熱水処理後の分解液から前記希土類磁石類を回収した後、前記分解液を固液分離して前記樹脂の分解物を含む液体成分を回収することが好ましい。
【0018】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記分解液を固液分離して前記無機物を含む固形分を回収し、これを乾燥し粉砕して無機フィラーとして回収することが好ましい。
【0019】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記熱水処理は、前記樹脂100質量部に対して水を100〜500質量部添加して行うことが好ましい。
【0020】
この希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法においては、前記熱水処理の水は、アルカリ金属塩を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されている製品から、樹脂を除去した希土類磁石類とそれ以外の金属を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法の一実施形態を示したフローチャートである。
【図2】熱水処理のプロセスフローの模式図である。
【図3】従来の廃棄家電の回収方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、上記のとおり、希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されている製品から、希土類磁石類とそれ以外の金属を回収する方法である。
【0024】
本発明が対象としている製品としては、例えば、洗濯機やエアコンなどの家電製品を挙げることができるが、希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されているものであれば、特に限定されない。例えば、コンピュータ周辺機器、電子機器、通信機器、自動車、医療機器などでもよい。また、上記した製品に含まれるモータやアクチュエータなども本発明が対象としている製品とすることもできる。これらの製品は、使用済み製品などの廃棄製品を含む。
【0025】
本発明において、希土類磁石類とは、サマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石などの希土類磁石をはじめとする各種の希土類金属およびそれを含む合金、さらに希少金属などである。
【0026】
希土類磁石類以外の金属としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性金属、銅、アルミニウム、ステンレス、真鍮などの非磁性金属を例示することができる。
【0027】
樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、樹脂には、炭酸カルシウムや水酸化カルシウムなどの無機充填材や、ガラス繊維などの無機物や、その他の成分が含有されていてもよい。
【0028】
希土類磁石類が樹脂と一体化されているとは、希土類磁石類の全部または一部が、樹脂の硬化物で被覆もしくは封止されていたり、接着剤などを介してまたは介さずに樹脂の硬化物と固着されていたりすることなどをいう。希土類磁石類は粉末または成形体として樹脂と一体化されている。希土類磁石類が成形体として樹脂と一体化されている場合、本方法によれば希土類磁石類を成形体のまま回収することができる。
【0029】
このような樹脂と一体化されている希土類磁石類は、製品やそれを構成する部品の構成部材であるとすることができる。例えば、回収の対象となる製品が洗濯機やエアコンなどの家電製品の場合、樹脂と一体化された希土類磁石類は、その家電製品を構成するモータのロータの構成部材とすることができる。回収の対象となる製品がモータである場合にはそのモータを構成するロータの構成部材とすることができる。このロータは、例えば、希土類磁石の成形体および鉄枠が熱硬化性樹脂でモールドされるなどして構成されている。
【0030】
このように構成部材としての樹脂と一体化された希土類磁石類には、樹脂や希土類磁石類以外の部材、例えば、鉄、銅などの金属部材、炭素繊維などの無機部材、有機部材などが含まれていてもよい。
【0031】
一方、希土類磁石類以外の金属についても、製品やそれを構成する部品の構成部材であるとすることができる。例えば、回収の対象となる製品が洗濯機やエアコンなどの家電製品の場合、希土類磁石類以外の金属は、その家電製品を構成するモータのステータの構成部材とすることができる。回収の対象となる製品がモータである場合にはそれを構成するステータの構成部材とすることができる。このステータは、例えば、リング状の鉄心の周囲に銅線が設けられ、その周囲が熱硬化性樹脂でモールドされるなどして構成されている。
【0032】
このように構成部材としての希土類磁石類以外の金属には、樹脂、炭素繊維などの無機部材、有機部材なども含まれていてもよい。
【0033】
本発明は、(a)製品を解体して、樹脂と一体化された希土類磁石類を含む部位A(以下、単に、部位Aともいう)と希土類磁石類以外の金属を含む部位B(以下、単に、部位Bともいう)とを分離する工程を備える。さらに、(b)分離した部位Aを熱水処理して樹脂を分解、剥離して希土類磁石類を回収する工程と、(c)分離した部位Bから金属を回収する工程も備える。
【0034】
以下、図1の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収のフローチャート、図2の熱水処理のプロセスフローの模式図に沿って説明する。図1の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収のフローチャートは、本発明の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法の一実施形態を示しており、本発明を洗濯機などの廃棄家電に適用した例である。
【0035】
本実施形態では、まず、廃棄家電など製品単体そのものを解体することから始める。例えば、工作機械や治具などを用いて製品を部品単位(部品単体)まで解体して、樹脂と一体化された希土類磁石類が構成部材とされている、部位Aと、希土類磁石類以外の金属が構成部材とされている、部位Bとに分ける。
【0036】
図1では、洗濯機などの廃棄家電を解体して廃モータを回収し、さらに廃モータを解体して、ロータ(部位A)と、ステータ(部位B)とに分けている。このロータは、上述したように、希土類磁石の成形体および鉄枠が熱硬化性樹脂でモールドされるなどして構成されている。ステータは、リング状の鉄心の周囲に銅線が設けられ、その周囲が熱硬化性樹脂でモールドされるなどして構成されている。
【0037】
また、この解体作業では、部品単位まで解体された一部品に対して、工作機械や治具などを用いて切断などの作業を行うことにより、部位Aとそれ以外の部位とに分離することができる。例えば、部位Aについて、樹脂の一部を切断するなどして部位Aから樹脂の一部を分離することができる。分離された樹脂は、後述するが、部位Bとともに粉砕や破砕などの処理が施され、機械分離によって金属と樹脂とに分けられる。分けられた樹脂は部位Aとともに熱水処理される。樹脂が塊状で含まれている部位Aを熱水処理する場合、塊状の樹脂は分解効率が悪いため、熱水処理の反応条件をより厳しくする必要がある。部位A中の樹脂の一部を分離することにより、熱水処理の反応条件をより緩やかにすることができ、希土類磁石類から樹脂を容易に除去することができる。
【0038】
また、部位Aに、希土類磁石類以外の金属が含まれる場合、この希土類磁石類以外の金属を含む部位の全部または一部を切断するなどして、これを部位Bとして分離することができる。
【0039】
製品が一部品で構成されている場合にも、同様な切断などの作業を行うことにより、部位Aと部位Bとに分離することができる。
【0040】
以上の解体作業は手作業で行うこともできる。部位Aおよび部位Bが製品のどこに存在しているかは、製品の特性から把握されているため、これらを選択的に容易に回収することができる。なお、解体作業では、破砕や粉砕などの処理は行わない。
【0041】
解体作業の後、部位Aに含まれる希土類磁石を脱磁する脱磁工程を実施することができる。この脱磁工程は、例えば、図1の場合、廃モータを取り出した後もしくはロータを取り出した後に行うことができる。
【0042】
次に、分離した部位Aを熱水処理する。
【0043】
熱水処理にあたっては、まず、図2に示すように、分離した部位A20を網目状収納体10に収納し、この網目状収納体10を分解槽1に投入する。次いで熱水処理を行う。部位A20を分解槽1に直接投入して熱水処理することもできるが、網目状収納体10を用いた方が熱水処理後に残留する希土類磁石類30などの部材の取り出しが容易であり効率が良いため好ましい。
【0044】
網目状収納体10は、内部に水が浸入可能であり、部位A20を熱水処理した後に残留する希土類磁石類30などの部材が外部に抜け落ちない程度の網目構造を有していればよい。この網目状収納体10の全体構造としては、例えば、上方が開放している籠状のものを採用することができる。
【0045】
分解槽1は、蓋部8を有する圧力容器であり、蓋部8が急速に開閉自在に作動するJISなどで定められた急速蓋開閉機構を備えていることが好ましい。ボルト締め方式によって蓋部8を開閉することもできるが、規模が大きい工業用装置において作業性を考慮すると急速蓋開閉機構によって蓋部8を開閉することが好ましい。
【0046】
熱水処理は、次のフローによって行われる。図2に示すように、貯水槽2からの水が、ポンプ3により加圧され、熱交換器4で熱媒と熱交換をしながら加熱され、加圧熱水が分解槽1へ供給される。分解槽1内では加圧熱水により部位A20の熱水処理が行われる。分解槽1を排出した熱水は、貯水槽2から分解槽1に供給される水と熱交換しながら冷却され、また熱交換器5で冷水と熱交換しながら冷却され、圧力調整弁6を通じて、減圧される。減圧された水は有機物や無機物を含む場合もあるため、水循環排水設備7で有機物や無機物が取り除かれるなどの水処理が施されたうえで、大部分の水は貯水槽2に供給されて循環使用され、一部は排水される。貯水槽2内の水が不足する場合には、外部から水が適宜補給される。
【0047】
分解槽1に供給される加圧熱水は、例えば、180℃〜350℃程度に加熱された液体状態の水であり、亜臨界状態とされている。圧力は、例えば、2〜15MPa程度である。
【0048】
熱水処理は、分解槽1内に加圧熱水を通水しつづけて行なわれてもよいが、一定時間通水した後、加圧熱水の供給を停止してそのまま加圧熱水を分解槽1内に保持することにより行われてもよい。本実施形態では、部位A20中の樹脂の分解に必要な熱源がこの加圧熱水から供給されるので、分解槽1は断熱容器であることが望ましい。
【0049】
分解槽1に水を供給し、分解槽1の周囲にジャケットなどを設けて分解槽1の周囲に熱媒を循環させるなどして、180℃〜350℃の反応温度で亜臨界状態で部位A20を熱処理することもできる。
【0050】
分解槽1に供給する水の供給量は、例えば、部位A20中の樹脂100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましい。水の供給量が上記の範囲であれば、樹脂を効率的に分解することができる。
【0051】
熱水処理により部位A20中の樹脂の加水分解反応が進行する。加水分解反応が進むと、樹脂が低分子量化し、希土類磁石類から樹脂が剥離したり、一部が水に溶解するなどして希土類磁石類から樹脂が除去され、希土類磁石類が分離される。接着剤を介して樹脂が希土類磁石類と固着している場合でも、この熱水処理により接着剤としての機能を消失させて希土類磁石類から樹脂および接着剤を除去することが可能である。部位A20中に鉄などの金属部材や炭素繊維などの無機部材が含まれている場合には、これら部材も樹脂から分離される。また、希土類磁石の脱磁も一部可能である。
【0052】
このような熱水処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩を含む加圧熱水でなされることが好ましい。アルカリ金属塩を含むことにより、例えば、180℃〜270℃の温度で樹脂の加水分解反応を効果的に進行させることができる。また、樹脂の分解物から有価物を回収することも可能となる。
【0053】
熱水処理後は、減圧および冷水の通水により、分解槽1内が常温〜80℃程度まで冷却される。分解槽1を自然冷却することもできる。
【0054】
減圧、冷却後、分解槽1から網目状収納体10を払い出す。払い出された網目状収納体10から、樹脂が除去された希土類磁石類30を回収することができる。部位A20中に鉄などの金属部材や炭素繊維などの無機部材が含まれている場合には、樹脂が除去された状態でこれら部材を希土類磁石類30とともに得る。図1の場合、一般にロータ構造は電磁鋼板(鉄枠)内に希土類磁石が挿入された構造であり、樹脂分離後は、鉄枠と希土類磁石は一体化した状態で回収される。
【0055】
回収された鉄枠から機械的に希土類磁石を抜き出すことにより磁石形状を保ったまま回収することが可能である。この抜き出しは手作業でも良いし、引き抜きのための治具を用いても良い。また、機械的な振動を与えて分離しても良い。
【0056】
網目状収納体10を払い出した後の分解槽1内には、網目状収納体10から回収された以外の部位A20中の成分、例えば、樹脂の分解物が水ととともに分解液として残る。樹脂に炭酸カルシウムや水酸化カルシウムなどの無機充填材やガラス繊維などの無機物が含まれている場合には、これらは固形分として分解液中に残る。この固形分は、ろ過などの方法で分解液を固液分離することにより無機屑として回収することができる。回収した無機屑は、乾燥して粉砕することにより、無機フィラー(再生無機フィラー)として再利用することができる。
【0057】
一方、分解液の分離ろ液からは有価物を回収することができる。例えば、樹脂が不飽和ポリエステル樹脂であれば、スチレンマレイン酸共重合体(SFC)などの多塩基酸ビニルモノマー共重合体や、多価アルコールおよび多塩基酸などのポリエステル由来のモノマーを得ることができる。
【0058】
製品を解体して分離した部位Bについては、粉砕機などによって粉砕や破砕などの処理を施し、例えば、粒径10mm〜15mm程度の大きさに微細化することができる。部位Aの樹脂の一部を切断などして樹脂を分離した場合には、分離した樹脂を部位Bとともに粉砕や破砕などの処理を施すことができる。粉砕あるいは破砕などの処理を施した後は、磁力、渦電流、比重などを利用した公知の選別手法による機械分離によって、金属と樹脂とを分別回収することができる。
【0059】
複数の種類の金属が樹脂とともに存在する場合でも、これら選別手法により、またはこれら選別手法を組み合わせて、複数の種類の金属と樹脂とをそれぞれ分別回収することができる。例えば、磁性金属と非磁性金属とを含む金属である場合には、磁力選別や渦電流選別によって磁性金属と非磁性金属と樹脂とに分けることができる。金属と樹脂とを公知の選別手法による機械分離によって分別回収した後、回収した金属を磁力選別や渦電流選別によって磁性金属と非磁性金属とに分けることもできる。
【0060】
図1では、ステータを粉砕処理している。また、ロータの熱処理前にロータ中の樹脂の一部を切断して分離した樹脂塊部をステータとともに粉砕処理している。粉砕処理後、機械分離により金属と樹脂とに分けている。この機械分離として風力を利用したり水中に沈降させたりするなど簡易な比重による選別を行うことができるが、金属と樹脂とを分別回収することができればこれに限定されない。上述した磁力、渦電流などの方法でも分別回収することができる。図1では、さらに、分別回収した金属を簡易な磁力選別により、鉄と銅とに分けている。ここで、磁性金属と非磁性金属とを選別することができれば、磁力選別に限定されず、例えば渦電流選別によって鉄と銅とを分けることもできる。また、ステータを粉砕処理後、磁力選別や渦電流選別によって鉄と銅と樹脂とに分けることもできる。
【0061】
分別回収された樹脂については、部位Aとともに熱水処理することができる。樹脂を熱水処理することにより、上述したような有価物を回収することができるので、製品の解体物の再利用率を高めることができる。また、分別回収された樹脂は粉砕や破砕などの処理によって微細化されているので、分解の効率がよい。
【0062】
さらに、分解槽の充填率を向上させ、熱水処理を効率的に行うことができる。すなわち、部位Aは粉砕や破砕などの処理が施されておらず部品単体あるいはその分離物が分解槽内に積み重ねられるなどして収納されているので、分解槽には多数の空隙が生じている。微細化されている樹脂はこの空隙への充填が可能であり、微細化されている樹脂を隙間に充填することで、分解槽の充填率を向上させ、装置の稼働率を向上させることができる。
【0063】
例えば、部位Aがロータの場合、ロータは内側と外側にそれぞれ円環部(インナーとアウター)を有する二重円筒形状を有しており、インナーとアウターとの間に隙間が生じている。この隙間に、微細化されている樹脂を充填すれば、複数のロータを網目状収納体に上下に積み重ねて収納しこれを分解槽に投入したときでも分解槽の充填率を向上させることができる。
【0064】
以上のように、本発明の方法によれば、希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、希土類磁石類が樹脂と一体化されている製品から、樹脂を除去した希土類磁石類とそれ以外の金属を回収することができる。樹脂と一体化された希土類磁石類は簡易な解体作業により回収されるので、経済的負担が少なく、希土類磁石類回収のコストを低減することができる。また、希土類磁石類を成形体のまま回収することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
20 樹脂と一体化された希土類磁石類を含む部位A
30 希土類磁石類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石類、この希土類磁石類以外の金属および樹脂を含有し、前記希土類磁石類が前記樹脂と一体化されている製品から、希土類磁石類とそれ以外の金属を回収する方法であって、
(a)前記製品を解体して、樹脂と一体化された希土類磁石類を含む部位Aと前記希土類磁石類以外の金属を含む部位Bとを分離する工程と、
(b)分離した前記部位Aを熱水処理して前記樹脂を分解、剥離して前記希土類磁石類を回収する工程と、
(c)分離した前記部位Bから前記金属を回収する工程と、
を備えることを特徴とする希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項2】
前記部位Bは樹脂を含有し、前記工程(c)では前記部位Bを粉砕してこの粉砕物から前記金属と前記樹脂とを分別回収し、前記工程(b)では前記工程(c)において回収した前記樹脂を前記部位Aとともに熱水処理することを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項3】
前記部位A中の前記樹脂の一部を切断分離することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項4】
前記工程(c)では前記部位Aから切断分離した前記樹脂を前記部位Bとともに粉砕してこの粉砕物から前記金属と前記樹脂とを分別回収し、前記工程(b)では前記工程(c)において回収した前記樹脂を前記部位Aとともに熱水処理することを特徴とする請求項3に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項5】
前記部位Bの粉砕物から比重による選別により前記樹脂を分別回収することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項6】
前記部位B中の前記金属は磁性金属と非磁性金属とを含有し、前記工程(c)では前記部位Bを粉砕してこの粉砕物から磁力選別により前記磁性金属と前記非磁性金属とを分別回収することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項7】
前記樹脂は無機物を含有し、前記工程(b)の熱水処理後の分解液から前記希土類磁石類を回収した後、前記分解液を固液分離して前記樹脂の分解物を含む液体成分を回収することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項8】
前記分解液を固液分離して前記無機物を含む固形分を回収し、これを乾燥し粉砕して無機フィラーとして回収することを特徴とする請求項7に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項9】
前記熱水処理は、前記樹脂100質量部に対して水を100〜500質量部添加して行うことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。
【請求項10】
前記熱水処理の水は、アルカリ金属塩を含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の希土類磁石類とそれ以外の金属の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132051(P2012−132051A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283743(P2010−283743)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】