説明

帯状ゴム部材の巻付け方法および装置

【課題】コンベア21による運搬時に帯状ゴム部材12に消極的に発生する張力を低減させることで、タイヤ性能の向上を図る。
【解決手段】コンベア21の上流端に位置するローラ22aと被巻付け体20との間に付与手段27を設置し、該付与手段27から帯状ゴム部材12に対し被巻付け体20に向かうとともに、帯状ゴム部材12に作用する消極的な張力(コンベア21から帯状ゴム部材12に付与される転がり抵抗、剥離抵抗等の抵抗に基づく張力)より小さな値の力を付与したので、該帯状ゴム部材12内に生じる消極的な張力は前記力により一部が相殺されて低減される。これにより、帯状ゴム部材12の長手方向伸びおよび幅方向収縮が抑制され、タイヤ性能の向上を容易に図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯状ゴム部材を被巻付け体の周囲に巻き付ける巻付け方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の帯状ゴム部材の巻付け方法および装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−205857号公報
【0004】
このものは、巻きロールから巻出された帯状ゴム部材を下流側に向かって送り出す送出ローラと、下流側に向かって走行している途中の帯状ゴム部材に形成されたフェスツーンと、フェスツーンより下流側に設置され、回転駆動力を受けて軸線回りに回転することで前記帯状ゴム部材を引取りながら周囲に巻付ける被巻付け体と、被巻付け体とフェスツーンとの間に設置され、前記帯状ゴム部材を下方から支持しながらフリー走行することで、該帯状ゴム部材を被巻付け体に向かって運搬するコンベアとを備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のような巻付け方法・装置にあっては、コンベアによって帯状ゴム部材を運搬しているとき、コンベア内部に生じる転がり抵抗や、帯状ゴム部材の粘着によるコンベアからの剥離抵抗等の抵抗がコンベアから帯状ゴム部材に付与され、この結果、該帯状ゴム部材内に消極的な長手方向の余計な張力が発生し、帯状ゴム部材が長手方向に伸びるとともに、幅方向に収縮してしまうのである。そして、このように長手方向伸びや幅方向収縮が生じた帯状ゴム部材を用いて空気入りタイヤを製造すると、寸法、形状等が設計値からずれ、タイヤ性能が低下してしまうという課題がある。
【0006】
特に、帯状ゴム部材内に長手方向に対して傾斜したスチール等の補強コードが埋設されている場合には、前述した帯状ゴム部材の長手方向伸びにより前記補強コードは長手方向に対する傾斜角が小となるよう傾くため、前記帯状ゴム部材の幅方向収縮がより顕著となる。また、前記コンベアが、帯状ゴム部材の流れ方向に離れた複数のフリー回転するローラから構成されている場合には、被巻付け体に巻付けられるまでの間にローラと接触する回数が、帯状ゴム部材の始端側より終端側で多いため、帯状ゴム部材は終端側となるに従いローラから長時間抵抗を受けて、図3、4に示すように、長手方向伸び率および幅方向収縮率が大となる。
【0007】
この結果、被巻付け体に巻付けられた帯状ゴム部材の幅は周方向位置で異なった値となり、この結果、前述した寸法、形状等の設計値からのずれが周方向でばらつき、タイヤ性能がさらに低下するという課題もある。なお、このとき、被巻付け体に対して既に巻付けられた帯状ゴム部材は、粘着力や、被巻付け体に装着された磁石によるスチールコードの吸引力により被巻付け体に強力に拘束されているため、長手方向に伸縮することはなく、問題は発生しない。
【0008】
この発明は、コンベアによる運搬時に帯状ゴム部材に消極的に発生する張力を低減させることで、タイヤ性能の向上を図ることができる帯状ゴム部材の巻付け方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、第1に、回転駆動力を受けて被巻付け体が軸線回りに回転することにより、帯状ゴム部材を該被巻付け体によって引取りながらその周囲に巻付ける際、該被巻付け体の上流側に設置されたフリー状態のコンベアにより前記帯状ゴム部材を下方から支持しながら被巻付け体に向かって運搬するようにした帯状ゴム部材の巻付け方法において、コンベアの上流端と被巻付け体との間に設置された付与手段から帯状ゴム部材に対し被巻付け体に向かう力を付与し、これにより、コンベアから帯状ゴム部材に付与される抵抗に基づいて該帯状ゴム部材に生じる消極的な張力を低減させるようにした帯状ゴム部材の巻付け方法により、達成することができる。
【0010】
第2に、回転駆動力を受けて軸線回りに回転することで、帯状ゴム部材を引取りながら周囲に巻付ける被巻付け体と、被巻付け体の上流側に設置され、前記帯状ゴム部材を下方から支持しながら被巻付け体に向かって運搬するフリー状態のコンベアと、コンベアの上流端と被巻付け体との間に設置され、帯状ゴム部材に対し被巻付け体に向かう力を付与する付与手段とを備え、コンベアから帯状ゴム部材に付与される抵抗に基づいて該帯状ゴム部材に生じる消極的な張力を前記力により低減させるようにした帯状ゴム部材の巻付け装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、コンベアの上流端と被巻付け体との間に付与手段を設置し、該付与手段から帯状ゴム部材に対し被巻付け体に向かう力を付与するようにしたので、コンベアから帯状ゴム部材に付与される抵抗(転がり抵抗、剥離抵抗等)に基づいて該帯状ゴム部材内に生じる消極的な張力は、前記付与手段から帯状ゴム部材に付与される力により相殺されて低減される。この結果、被巻付け体に供給される帯状ゴム部材の長手方向伸びおよび幅方向収縮が抑制され、タイヤ性能の向上を容易に図ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載のように構成すれば、送出手段から送出される帯状ゴム部材の走行速度と、被巻付け体の巻付け位置における周速度(巻付け速度)との間に差が生じても、これを容易に吸収し、帯状ゴム部材に余計な張力が生じる事態を防止することができる。さらに、請求項4に記載のように構成すれば、構造を簡単としながら狭いスペースに付与手段を設置することが可能となる。また、請求項5に記載のように構成すれば、付与ローラから帯状ゴム部材に張力が付与されたり、あるいは、付与ローラと被巻付け体との間の帯状ゴム部材に弛みが生じる事態を回避することができる。
【0013】
さらに、請求項6に記載のように構成すれば、コンベアにコンベアベルトを用いた場合に比較し、運搬時における帯状ゴム部材との接触面積が狭くなって剥離抵抗が小さくなり、消極的な張力を低減させることができる。また、ローラから付与される抵抗により帯状ゴム部材内に生じる張力は、被巻付け体に接近するに従い大となるため、請求項7に記載のように構成すれば、相殺後の帯状ゴム部材に残留する張力を長手方向において均一に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略正面図である。
【図2】この発明の実施形態2を示す概略正面図である。
【図3】試験例における帯状ゴム部材の長手方向伸び率を示すグラフである。
【図4】試験例における帯状ゴム部材の幅方向収縮率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1において、11は図示していない固定フレームに回転可能に支持された水平なリールであり、このリール11の周囲には、ポリエチレン等のフィルムからなる図示していないライナーと、内部に長手方向に対して傾斜した補強コードが多数本平行に埋設された帯状ゴム部材12、ここではベルトプライとが、互いに重なり合った状態で多数回ロール状に巻取られている。前述したリール11、ライナー、帯状ゴム部材12は全体として、巻取りロール13を構成する。なお、前述の帯状ゴム部材は、カーカスプライ、ワイヤーチェーファー、幅狭のリボン状体等であってもよく、また、内部に埋設されている補強コードとしては、スチール、芳香族ポリアミド繊維等を用いることができる。さらに、前記巻取りロールはライナーを省略し帯状ゴム部材のみを巻取るようにしてもよい。
【0016】
16は巻取りロール13の前方(下流側)に設けられた送出ローラであり、この送出ローラ16は巻取りロール13の軸線に平行な軸線回りに回転可能で、その外周の一部にはライナーから剥離された後の帯状ゴム部材12が接触する。そして、この送出ローラ16は図示していない駆動モータから駆動力が付与されると、駆動回転して巻取りロール13から帯状ゴム部材12を巻出し下流側(前方)に向かって送出する。前述した送出ローラ16、駆動モータは全体として、後述するコンベアより上流側に設置され、巻取りロール13から巻出された帯状ゴム部材12に対し下流側(前方)に向かう送出力を付与することで、該帯状ゴム部材12を前記コンベアに向かって送り出す送出手段17を構成する。
【0017】
なお、この実施形態においては、成形された帯状ゴム部材12を一旦ロール状に巻取って一時保管した後、巻取りロール13から巻出すとともに、送出ローラ16により送出するようにしたが、この発明においては、成形装置によって成形された直後の帯状ゴム部材をそのまま送出ローラにより送出するようにしてもよい。また、この発明においては、前記送出手段として、帯状ゴム部材を両側から挟持するとともに、挟持部が同一速度で前方に走行するベルトコンベアから構成してもよい。
【0018】
20は円筒状をした拡縮可能な成形ドラムからなる被巻付け体であり、この被巻付け体20は前記送出ローラ16の前方に配置されている。そして、この被巻付け体20は図示していない駆動部から回転駆動力を受けることで、送出ローラ16の軸線に平行な軸線回りに回転することができる。このように被巻付け体20が回転しているとき、送出ローラ16から帯状ゴム部材12が前方に向かって送出されると、該帯状ゴム部材12は被巻付け体20により引取られながらその周囲に巻付けられる。
【0019】
なお、この被巻付け体は、断面略トロイダル状となるよう幅方向中央部が膨出した成形ドラムと、該成形ドラムの周囲に貼り付けられたインナーライナー、カーカスプライ等のタイヤ中間体とから構成されていてもよく、あるいは、外表面が加硫済み空気入りタイヤの内表面と同一形状である剛体コアと、該剛体コアの周囲に成形されたタイヤ中間体とから構成されていてもよく、さらには、剛体コア単体から構成されていてもよい。
【0020】
21は前記送出ローラ16と被巻付け体20との間に配置されることで、前記被巻付け体20より上流側(後方)に設置されたフリー状態のコンベアであり、このコンベア21は図示していない支持フレームに支持された前後方向に離隔している複数のローラ22を有し、前記帯状ゴム部材12を下方から支持しながら被巻付け体20に向かって運搬することができる。このようにコンベア21は帯状ゴム部材12に積極的な搬送力を付与することで被巻付け体20を搬送するものではない。
【0021】
ここで、前記コンベア21としてフリー走行するコンベアベルトを用いてもよいが、この実施形態のようにコンベア21を帯状ゴム部材12の流れ方向に離れたフリー回転する複数の互いに平行なローラ22から構成すれば、コンベアとしてコンベアベルトを用いた場合に比較し、運搬時におけるローラ22と帯状ゴム部材12との接触面積が狭くなって剥離抵抗が小さくなり、消極的な張力を効果的に低減させることができる。
【0022】
24は送出手段17とコンベア21との間、ここでは送出ローラ16と前記ローラ22のうち後端(上流端)に位置するローラ22aとの間において下方に垂れ下がった帯状ゴム部材12のフェスツーンであり、このような位置にフェスツーン24を設ければ、送出手段17から送出される帯状ゴム部材12の走行速度と、被巻付け体20の巻付け位置Mにおける周速度(巻付け速度)との間に差が生じても、該フェスツーン24が前記差を吸収し、帯状ゴム部材12に余計な張力が生じる事態を防止することができる。ここで、前述のように送出ローラ16と被巻付け体20との間にフェスツーン24が形成されるとともに、コンベア21がフリー状態であると、運搬途中の帯状ゴム部材12に対し大きな抵抗が積極的に付与されることはなく、この結果、帯状ゴム部材12内に所定の大きな張力が付与されることはない。
【0023】
しかしながら、コンベア21によって帯状ゴム部材12を運搬しているとき、該コンベア21内に生じる抵抗、例えば、ローラ22の回転時に生じる転がり抵抗や、帯状ゴム部材12の粘着によるローラ22からの剥離抵抗等の抵抗がコンベア21から帯状ゴム部材12に付与され、この結果、該帯状ゴム部材12内に消極的な長手方向の張力が発生し、帯状ゴム部材12が長手方向に伸びる一方、幅方向に収縮する。特に、帯状ゴム部材12内に長手方向に対して傾斜した補強コードが埋設されている場合には、前述した帯状ゴム部材12の長手方向伸びにより前記補強コードは長手方向に対する傾斜角が小となるよう傾くため、前記帯状ゴム部材12の幅方向収縮がより顕著となる。
【0024】
このため、この実施形態においては、コンベア21の上流端に位置するローラ22aと被巻付け体20との間、ここでは被巻付け体20の近傍に付与手段27を設置し、該付与手段27から帯状ゴム部材12に対し、被巻付け体20に向かうとともに前記消極的な張力より小さな値の力を付与するようにしたのである。この結果、前述のコンベア21から帯状ゴム部材12に付与される抵抗(転がり抵抗、剥離抵抗等)に基づいて該帯状ゴム部材12内に生じる消極的な引張力は、前記付与手段27から帯状ゴム部材12に付与される力により一部が相殺されて低減される。これにより、被巻付け体20に供給される帯状ゴム部材12の長手方向伸びおよび幅方向収縮が抑制され、タイヤ性能の向上を容易に図ることができる。
【0025】
ここで、前記付与手段27はローラ22の軸線に平行な軸線回りに回転可能な付与ローラ28を有し、この付与ローラ28は被巻付け体20の近傍における1個のローラ22の代わりに設置され、帯状ゴム部材12の下面に外周が接触している。29は付与ローラ28に連結され該付与ローラ28と一体的に回転するプーリであり、このプーリ29と駆動モータ30の出力軸に固定されたプーリ31との間にはタイミングベルト32が掛け渡されている。この結果、前記駆動モータ30が作動してプーリ31が回転すると、このプーリ31の回転はタイミングベルト32を介してプーリ29に伝達され、付与ローラ28を帯状ゴム部材12の運搬時におけるローラ22の回転方向と同一方向に回転させる。
【0026】
前述したプーリ29、駆動モータ30、プーリ31、タイミングベルト32は全体として、付与ローラ28に回転駆動力を付与する駆動機構33を構成する。なお、この発明においては、前記駆動機構33を電動モータ、エアモータ単体から構成し、これら電動、エアモータの出力軸に付与ローラを直結するようにしてもよい。また、前記付与ローラ28、駆動機構33は全体として、前記付与手段27を構成する。このように付与手段27を帯状ゴム部材12に外周が接触する回転可能な付与ローラ28と、該付与ローラ28に回転駆動力を付与する駆動機構33とから構成すれば、構造を簡単としながら狭いスペースに付与手段27を設置することが可能となる。なお、この発明のおいては、付与手段を帯状ゴム部材に走行部が接触するベルトコンベアと、該ベルトコンベアを走行させる駆動機構とから構成してもよい。
【0027】
ここで、前記付与ローラ28の周速は、帯状ゴム部材12が現在巻付けられている巻付け位置Mにおける被巻付け体20の周速と実質上同一とすることが好ましい。その理由は、付与ローラ28の周速が被巻付け体20の巻付け位置Mにおける周速より小であると、付与ローラ28と帯状ゴム部材12との間に滑りが生じて、付与ローラ28から帯状ゴム部材12に余計な張力が付与されることがあり、一方、付与ローラ28の周速が被巻付け体20の巻付け位置Mにおける周速より大であると、付与ローラ28と被巻付け体20との間の帯状ゴム部材12に弛みが生じることがあるが、前述のように実質上同一とすると、このような事態を容易に回避することができる。
【0028】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
今、巻取りロール13から巻出されるとともにライナーから剥離された帯状ゴム部材12が、駆動モータからの駆動力を受けて回転している送出手段17の送出ローラ16に接触し、被巻付け体20(下流側)に向かって送出されているとする。このようにして送出手段17により前方に向かって送出された帯状ゴム部材12は、垂れ下がってフェスツーン24を形成した後、駆動部から回転駆動力を受けて回転する被巻付け体20により引取られ、その周囲に巻付けられる。
【0029】
ここで、フェスツーン24と被巻付け体20との間には帯状ゴム部材12を下方から支持しながら帯状ゴム部材12を被巻付け体20まで運搬するフリー状態のコンベア21(フリー回転する複数のローラ22)が設置されているが、このようなコンベア21にはローラ22の回転時に生じる転がり抵抗や、帯状ゴム部材12の粘着によるローラ22からの剥離抵抗等の抵抗が発生する。そして、このような抵抗がコンベア21から帯状ゴム部材12に付与されると、該帯状ゴム部材12内に消極的な長手方向の張力が発生し、帯状ゴム部材12が長手方向に伸びる一方、幅方向に収縮する。
【0030】
しかしながら、この実施形態では、前述のようにコンベア21の途中に付与ローラ28を設置し、該付与ローラ28を駆動機構33により帯状ゴム部材12の運搬時におけるローラ22の回転方向と同一方向に回転させて、該付与ローラ28から帯状ゴム部材12に対し被巻付け体20に向かう小さな力を付与するようにしたので、コンベア21から帯状ゴム部材12に付与される抵抗に基づいて該帯状ゴム部材12内に生じる消極的な張力は、前記付与手段27から帯状ゴム部材12に付与される力により一部が相殺されて低減される。これにより、被巻付け体20に供給される帯状ゴム部材12の長手方向伸びおよび幅方向収縮が抑制され、タイヤ性能の向上を容易に図ることができる。
【0031】
そして、被巻付け体20の周囲に帯状ゴム部材12(ベルトプライ)が1周分巻付けられる直前に、該帯状ゴム部材12を図示していないカッターにより切断して被巻付け体20の1周長と等長の帯状ゴム部材片を切り出し、その後、該帯状ゴム部材片の残余部を被巻付け体20の周囲に巻付ける。これにより、被巻付け体20の周囲に帯状ゴム部材12が1周分巻付けられる。その後、補強コードが逆方向あるいは同一方向に傾斜した帯状ゴム部材12を被巻付け体20の周囲にさらに1層以上巻付け、ベルト層を成形する。次に、被巻付け体20を回転させながらベルト層の外側にトレッドを巻付け、ベルト・トレッドバンドを成形する。その後、該ベルト・トレッドバンドを図示していない成形ドラムに搬送して略半円状に膨出変形したグリーンケースの外側に貼付け、グリーンタイヤを成形する。
【0032】
図2はこの発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、前記付与手段27より上流側(後方)におけるコンベア21の途中に、該付与手段27と同様の構成をした付与手段37を設けている。この結果、付与手段が帯状ゴム部材12の流れ方向に沿って複数設置されるが、このように付与手段27、37を複数設置したとき、付与手段から帯状ゴム部材12に付与される力を、被巻付け体20に近接する位置の付与手段であるほど大とする、この実施形態では、帯状ゴム部材12に付与される力を付与手段37より付与手段27で大とする。
【0033】
これは、前述のようにコンベア21が複数のフリー回転するローラ22から構成されている場合、被巻付け体20に巻付けられるまでの間にローラ22と接触する回数が、帯状ゴム部材12の始端側より終端側で多いため、帯状ゴム部材12は終端側となるに従いローラ22から長時間抵抗を受けて、図3、4に示すように、長手方向の伸び率および幅方向の収縮率が大となるが、前述のように構成すれば、相殺後の帯状ゴム部材12に残留する張力を長手方向において均一に近付けることができるからである。しかも、被巻付け体20に巻付けられた帯状ゴム部材12の幅の周方向でのばらつきが低減され、タイヤ性能が向上する。
【実施例1】
【0034】
次に、試験例について説明する。この試験においては、コンベアを全てフリー回転する複数のローラから構成した従来装置と、前記ローラのうち、1個のローラを付与ローラに代えた実施装置とを準備した。そして、このような従来、実施装置を用いて成形ドラムに帯状ゴム部材を巻付けた。ここで、前記帯状ゴム部材として、幅が 390mm、内部に長手方向に対して52度の傾斜角のスチールコードが埋設されているベルトプライを用いるとともに、直径が80cmで巻付け位置における周速が 48.0m/minである成形ドラムを用いた。
【0035】
また、実施装置では、成形ドラムから上流側に1500mm離れた位置に付与手段の付与ローラを設置し、成形ドラムに供給途中の帯状ゴム部材に対して消極的な張力と逆方向の力を付与することで、前記張力を相殺した。なお、このときの付与ローラの周速も前記成形ドラムの巻付け位置における周速と実質上同一の 48.0m/minであった。その結果を図3、4に示すが、これら図3、4において×印は従来装置を用いた場合の伸び率、収縮率であり、一方、〇印は実施装置を用いた場合の伸び率、収縮率である。これら図3、4から明らかなように、実施装置を用いた場合には従来装置を用いた場合より長手方向伸び率および幅方向収縮率の双方を全体的に減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、帯状ゴム部材を被巻付け体の周囲に巻付ける産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
12…帯状ゴム部材 17…送出手段
20…被巻付け体 21…コンベア
22…ローラ 24…フェスツーン
27…付与手段 28…付与ローラ
33…駆動機構 M…巻付け位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を受けて被巻付け体が軸線回りに回転することにより、帯状ゴム部材を該被巻付け体によって引取りながらその周囲に巻付ける際、該被巻付け体の上流側に設置されたフリー状態のコンベアにより前記帯状ゴム部材を下方から支持しながら被巻付け体に向かって運搬するようにした帯状ゴム部材の巻付け方法において、コンベアの上流端と被巻付け体との間に設置された付与手段から帯状ゴム部材に対し被巻付け体に向かう力を付与し、これにより、コンベアから帯状ゴム部材に付与される抵抗に基づいて該帯状ゴム部材に生じる消極的な張力を低減させるようにしたことを特徴とする帯状ゴム部材の巻付け方法。
【請求項2】
回転駆動力を受けて軸線回りに回転することで、帯状ゴム部材を引取りながら周囲に巻付ける被巻付け体と、被巻付け体の上流側に設置され、前記帯状ゴム部材を下方から支持しながら被巻付け体に向かって運搬するフリー状態のコンベアと、コンベアの上流端と被巻付け体との間に設置され、帯状ゴム部材に対し被巻付け体に向かう力を付与する付与手段とを備え、コンベアから帯状ゴム部材に付与される抵抗に基づいて該帯状ゴム部材に生じる消極的な張力を前記力により低減させるようにしたことを特徴とする帯状ゴム部材の巻付け装置。
【請求項3】
前記コンベアより上流側に、帯状ゴム部材に対し下流側に向かう送出力を付与することで、該帯状ゴム部材をコンベアに向かって送り出す送出手段を設けるとともに、該送出手段とコンベアとの間に帯状ゴム部材が垂れ下がったフェスツーンを形成するようにした請求項2記載の帯状ゴム部材の巻付け装置。
【請求項4】
前記付与手段を帯状ゴム部材に外周が接触する回転可能な付与ローラと、該付与ローラに回転駆動力を付与する駆動機構とから構成した請求項2または3記載の帯状ゴム部材の巻付け装置。
【請求項5】
前記付与ローラの周速を被巻付け体の巻付け位置における周速と実質上同一とした請求項4記載の帯状ゴム部材の巻付け装置。
【請求項6】
前記コンベアを帯状ゴム部材の流れ方向に離れたフリー回転する複数のローラから構成した請求項2〜5のいずれかに記載の帯状ゴム部材の巻付け装置。
【請求項7】
前記付与手段を帯状ゴム部材の流れ方向に沿って複数設置したとき、付与手段から帯状ゴム部材に付与される力を、被巻付け体に近接する位置の付与手段であるほど大とした請求項6記載の帯状ゴム部材の巻付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42426(P2011−42426A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190101(P2009−190101)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】