説明

帯電装置

【課題】 コロナ帯電器2のグリッド電極13にトナーが付着した状態でコロナ帯電を行うと、トナーの帯電量が上昇して静電的付着力が増すため、清掃ブラシ22によりグリッド電極13の清掃処理を行っても、適切に除去することができない。
【解決手段】 グリッド電極13に付着したトナーを除電しながら清掃処理が行われるように、清掃ブラシ22として導電性のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコロナ帯電器を用いて被帯電体を帯電する帯電装置に関する。この帯電装置は、例えば、複写機、プリンタ、FAX、及びこれらの機能を複数備えた複合機などの電子写真画像形成装置において用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真画像形成装置では、電子写真プロセスの1つである帯電工程において、被帯電体である感光体をコロナ帯電器により一様に帯電する処理が行われている。
【0003】
このコロナ帯電器を用いて帯電処理を行う構成では、構造上、装置内に浮遊しているホコリや飛散トナーなどの異物(付着物)がグリッド電極に付着してしまう状況にある。
【0004】
このようにグリッド電極に異物が付着してしまうと、異物が付着した部位での放電効率が低下することに伴い感光体の帯電電位にムラが生じ、出力画像の濃度ムラを引き起こす原因となってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1〜3に記載の装置では、清掃パッドや清掃ブラシを用いたグリッド電極の清掃機構を設け、コロナ帯電器のグリッド電極に付着した異物をこの清掃機構により清掃する構成を採用している。
【特許文献1】特開平06−43735号公報
【特許文献2】特開平06−208283号公報
【特許文献3】特開2005−338797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の装置では、グリッド電極に付着した異物を適切に除去することができない。
【0007】
これは、グリッド電極に付着したトナーなどの絶縁性の異物がコロナ放電を受けてその電荷量が増大し、グリッド電極に対する異物の静電的な付着力が大きくなってしまった為であると考えられる。
【0008】
この静電的な付着力(鏡映力と呼ばれる)は、コロナ放電を受ける時間が長くなるほど増大し、また、グリッド電極に生じる鏡像電荷との静電気力で表すことができることから異物の電荷量の2乗に比例する。
【0009】
このように強固に付着した状態にある異物をグリッド電極から除去するため、清掃機構の清掃能力を高める、例えば、清掃ブラシをグリッド電極に強く押し当てる、といった対処方法が考えられる。
【0010】
しかし、このような対処方法では、逆に、異物をグリッド電極に強固に擦り付けてしまうことになり、かえって逆効果となってしまう。その結果、グリッド電極に異物が融着してしまい、感光体の帯電電位にムラが生じ、出力画像の濃度ムラを引き起こす原因となってしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、コロナ帯電器のグリッド電極に付着した付着物を適切に除去することができる帯電装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被帯電体を帯電するコロナ帯電器と、前記コロナ帯電器のグリッド電極を清掃する清掃機構と、を有する帯電装置において、
前記清掃機構は前記グリッド電極に付着した付着物を除電しながら清掃処理を行う導電性部材を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コロナ帯電器のグリッド電極に付着した付着物を適切に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る帯電装置について、この帯電装置が搭載された画像形成装置を例に図面に則して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、電子写真画像形成装置の概略側面図である。まず、画像形成装置の画像形成部の全体構成について説明し、次に帯電装置について詳述する。
【0017】
(画像形成部)
図1に示すように、被帯電体である電子写真感光体(以下、感光体と呼ぶ)1が矢印方向に回転可能に設置されている。
【0018】
この感光体1の周囲には、帯電装置(コロナ帯電器)2、画像露光装置7、現像装置3、転写装置4、クリーニング装置5、光除電装置6が、感光体1の回転方向に沿って順に設置されている。
【0019】
このような画像形成部では、電子写真プロセスによりトナー像を記録紙であるシートPに形成することができる。
【0020】
具体的には、帯電装置2により感光体1の表面を負極性に一様に帯電する。そして、画像露光装置7から画像信号に対応したレーザ光Lが感光体1の表面に照射される。その結果、感光体1の光が照射された部位の電位が減衰し、画像信号に対応した静電潜像が形成される。次に、感光体1上に形成された静電潜像は現像装置3により負帯電特性のトナーを付着させることによって、静電潜像に対応したトナー像が形成される。そして、感光体1上に形成されたトナー像は転写装置4によってシートPに静電的に転写される。その後、シートP上に転写されたトナー像は不図示の定着装置によって定着処理され、機外へと排出される。
【0021】
なお、感光体1上に残留した転写残トナーはクリーニング装置5によって掻き取られ、クリーニング装置5に回収される。その後、光除電装置6によって感光体1に残存している電位履歴を消去し、次の画像形成に供される。
【0022】
(帯電装置)
次に、図2、3を用いて帯電装置について説明する。図2は帯電装置2の長手側(正面)から見た断面図であり、図3は帯電装置2の短手側(側面)から見た断面図である。
【0023】
本例では、図2、3に示すように、帯電装置2としてコロナ帯電器を採用している。コロナ帯電器2は、両端に絶縁性支持部11を備えたコの字状のシールドケース10(以下、シールド)と、シールド10の内部に長手方向に沿って張架された放電電極としての放電ワイヤ(ワイヤ電極とも呼ぶ)12を有している。さらに、シールド10の感光体1と対向する開口には、グリッド電極13が設けられている。
【0024】
本例では、放電ワイヤ12として直径φが60μmのタングステン線を使用しており、このタングステン線が絶縁支持部11に設けられたワイヤ保持部9にバネを介して張架されている。また、放電ワイヤ12には電源S1が接続されており、感光体の帯電処理を行う際には直流電圧が印加される。なお、その際、放電電流が−800μAとなるように放電ワイヤ12へ印加する直流電圧(DC電圧)が制御される(定電流制御)。
【0025】
本例では、グリッド電極13として厚さが0.1mmのSUS304を使用しており、このSUS304にはエッチング処理により多数の開口部が形成されている。このグリッド電極13と感光体の最近接位置での距離は1.0mmとなっている。さらに、グリッド電極13の表面には、防錆処理として、厚さが1μmとなるようにニッケルメッキ処理が施されている。
【0026】
以上の構成から、コロナ帯電器2による帯電処理範囲はグリッド電極13の設置範囲に対応した領域W1とされている。言い換えると、上述したシールドの開口がこの領域W1に対応する範囲で設けられている。
【0027】
また、グリッド電極13には電源S2が接続されており、感光体の帯電処理を行う際には−400〜−900Vの直流電圧が印加される。これは、放電ワイヤ12から感光体に向かうイオンの量を安定化させるためのものであり、その結果、感光体を所望の電位(本例では−600V)に帯電することが可能となる。
【0028】
なお、後述するが、グリッド電極13を清掃する際には、図3、5、6に示す切替え手段としてのスイッチ190により、電源S2による帯電用の電圧を印加停止するのに伴い接地(0V)に切替えられる。
【0029】
(帯電装置の清掃機構)
本例の帯電装置2には、放電ワイヤ12とグリッド電極13をそれぞれ清掃する清掃装置が設けられている。
【0030】
(放電ワイヤの清掃機構)
放電ワイヤ12を清掃する清掃機構には、図2に示すように、放電ワイヤ清掃部材15が設けられている。この放電ワイヤ清掃部材15は、図2に示すように、一対のスポンジパッド15を有しており、これが放電ワイヤ12を両側から圧接するように配設されている。この一対のスポンジパッドの放電ワイヤ12との摺動面に研磨紙などを貼り付けても良い。
【0031】
また、放電ワイヤ清掃部材15は移動機構により図3のb方向(放電ワイヤ12の張架方向と略平行な方向)へ往復移動する構成とされている。
【0032】
具体的には、この放電ワイヤ清掃部材15はホルダ16に保持され、このホルダ16はコロナ帯電器2の感光体に対面する側とは反対側に配置されたネジ軸17に係合している。
【0033】
このネジ軸17は、らせん状の溝が長手方向に亘って周面に形成された、所謂、スクリュー軸となっている。また、このネジ軸17は、絶縁性支持部11が有する軸受け18によって保持されており、また、駆動連結関係にあるモータM1によってa方向へ回転駆動される構成となっている。
【0034】
その結果、ネジ軸17の回転に伴い、ホルダ16が矢印b方向へ往復動することが可能な構成となっている。具体的には、ネジ軸17を正方向へ回転させることでホルダ16が往動作し、一方、ネジ軸17を正方向とは逆方向へ回転させることでホルダ16が復動作する。
【0035】
このような往復動作は、図6に示すDCコントローラ32によりモータM1を制御することにより行われ、放電ワイヤ清掃部材15の移動速度が35(mm/sec)となるように制御される。
【0036】
また、図4、5は、放電ワイヤ清掃部材15が帯電処理範囲W1外の退避位置にある状態を示しており、通常の画像を形成すべく感光体に対して帯電処理を行う際には放電ワイヤ清掃部材15はこの退避位置に位置している。この退避位置が放電ワイヤ清掃部材15のホームポジションとなる(以下、ホームポジションH(図5)と呼ぶ)。
【0037】
つまり、上述したように、放電ワイヤ清掃部材15による清掃処理を行う際は、放電ワイヤ清掃部材15をこのホームポジションHから帯電処理範囲W1よりも右方(図3において)の反転位置へと移動させる。そして、放電ワイヤ清掃部材15が反転位置に到達すると、DCコントローラ32によりネジ軸17の回転方向を逆転させ、放電ワイヤ清掃部材15の移動方向を反転させホームポジションHに移動させる。
【0038】
なお、モータM1の回転方向を反転させるタイミング並びにモータM1を停止させるタイミングについては、モータM1を駆動(オン)させる動作時間を基にCPU31により制御される。なお、反転位置と退避位置(ホームポジション)に相当する部位に位置検知センサを設置し、且つ、位置検知センサによって検知される検知フラグをホルダ16に設置することでモータM1の制御を行う構成であっても構わない。つまり、位置検知センサの出力に基づき、モータM1の回転方向を反転させるタイミングとモータM1を停止させるタイミングをCPU31により制御する構成としても構わない。
【0039】
このような一連の往復動作を行うことで、放電ワイヤ清掃部材15による清掃処理が完了する。
【0040】
(グリッド電極の清掃機構)
グリッド電極13の内面に付着している異物(付着物)を清掃除去する清掃機構には、図2、3に示すように、グリッド電極清掃部材14が設けられている。
【0041】
このグリッド電極清掃部材14は、グリッド電極13に付着した異物を除電しながらこれを摺擦除去するための導電性部材(清掃部材)としての清掃ブラシ22が設けられている。
【0042】
具体的には、グリッド電極清掃部材14は、導電性の清掃ブラシ22が取り付けられた基布24をブラシ基台23に貼り付けたものであり、板バネとされる伸縮部材19を介してホルダ16と一体になっている。また、後述するように、このグリッド電極清掃部材14は、異物を除電する機能も併せ持っていることから、電気的に接地されている。
【0043】
そして、導電性の清掃ブラシ22は、その毛先がグリッド電極13の内面(放電ワイヤ12側の面)と接触するように、ホルダ16に取り付けられている。
【0044】
本例では、導電性ブラシ22の毛長は2.5mmとされ、清掃ブラシ22のグリッド電極13への侵入量が0.3mmとなるように設定されている。清掃ブラシ22のグリッド電極13への侵入量が少な過ぎると清掃処理能力が低下し、多過ぎるとブラシの毛倒れが発生し易くなり、清掃処理能力を維持することができない。そこで、選択したブラシ(毛、繊維)の特性に合わせて侵入量を最適化することが望ましい。
【0045】
また、本例では、清掃ブラシ22を構成するブラシ(毛、繊維)として、導電性のアクリル繊維を用いている。このアクリル繊維は、染色方式を用いて銅イオンにより導体化したものである。また、ブラシの植毛密度は200デニール/80フィラメント、1平方ミリメートルあたり150本の密度である。
【0046】
なお、ブラシの材質としては、導電性のレーヨン繊維やPVA繊維、アモルファス繊維などを用いても良い。なお、清掃処理中に毛切れなどが発生すると、帯電不良を引き起こす原因となるので、繊維は十分な引っ張り強度を持っていることが望ましい。また、清掃効果を高める為には、ブラシの密度が、一平方ミリメートルあたり120本以上に設定するのが好ましい。これよりも少ないと、清掃処理時にブラシの接触不足による異物のすり抜けが発生してしまうからである。
【0047】
また、清掃処理時において清掃ブラシ22による除電効果を発揮するには、清掃ブラシ22の電気抵抗が重要な因子となる。本例で用いた清掃ブラシ22の電気抵抗値は1×10Ωである。
【0048】
この電気抵抗値の測定は、雰囲気の温度が22.5℃、相対湿度が55%の条件下で、行った。具体的には、直径φが30mmの金属製のドラム(本例ではアルミ製)に、ブラシが取り付けられた5mm×10mmの基布を当接させ、100Vの電圧を印加したときに流れる電流から換算したものである。ブラシのドラムへの侵入量は0.3mmとしている。
【0049】
本例では、グリッド電極に付着した異物を除電しながらグリッド電極を摺擦することで清掃処理を行う構成となっているので、電気抵抗値の低い清掃ブラシを用いるのがより好ましい。具体的には、後述するように、電気抵抗値が1×10Ω以下のものを用いるのが好ましい。
【0050】
また、ブラシ基台23のシールド10に対向する両側面には、金属製の突起(被ガイド部)20がそれぞれ設けられており、この突起20はシールド10に形成されたガイドレール21にガイドされる構造となっている。そして、ブラシ基布24は金属製の突起20と接触している。このような構成により、清掃処理中において、清掃ブラシ22は電気的に接地されているシールド10と電気的に導通する関係となる。つまり、清掃ブラシ22はシールド10を介して電気的に接地される構成となっている。
【0051】
以上説明したように、グリッド電極清掃部材14は、放電ワイヤ清掃部材15と同様にホルダ16に取り付けられているので、放電ワイヤ清掃部材15と共に移動機構により図3のb方向へ往復可能に移動する構成とされている。
【0052】
つまり、モータM1によってネジ軸17が回転するのに伴いホルダ16をコロナ帯電器の長手方向に沿って往復動させることで、グリッド電極清掃部材14は放電ワイヤ清掃部材15とともに往復動する構成となっている。
【0053】
従って、グリッド電極清掃部材14による清掃処理を行う際は、放電ワイヤ清掃部材15とともにグリッド電極清掃部材15をホームポジションH(図5)から帯電処理範囲W1よりも右方の反転位置へ移動する。そして、放電ワイヤ清掃部材15とともにグリッド電極清掃部材14が反転位置に到達すると、DCコントローラ32によりネジ軸17の回転方向を逆転させ、放電ワイヤ清掃部材15とともにグリッド電極清掃部材14の移動方向を反転させる。その結果、グリッド電極清掃部材14は放電ワイヤ清掃部材15とともにホームポジションHに戻り、グリッド電極清掃部材14による清掃処理が完了する。
【0054】
このように、グリッド電極清掃部材14による清掃処理が放電ワイヤ清掃部材15による清掃処理と同時に行われる。
【0055】
(清掃ブラシの絶縁機構)
本例では、グリッド電極13を清掃ブラシ22で清掃処理する構成を採用していることから、通常の帯電処理時においては、高電圧の帯電バイアスが印加されるグリッド電極13と清掃ブラシ22を電気的に絶縁状態にしている。具体的には、本例では、グリッド電極13から導電性ブラシ22を離間状態にさせる絶縁機構を採用している。
【0056】
具体的には、図5に示すように、ホームポジションHにおいて、ガイドレール21がグリッド電極13側から遠ざかるように配置されている。従って、グリッド電極清掃部材14がホームポジションHに到達するのに伴って伸縮部材19が縮むことで、清掃ブラシ22がグリッド電極13から離間するようになっている。また、絶縁支持部11では、ガイドレール21も含めて絶縁体で構成されているので、グリッド電極清掃部材14の清掃ブラシ22は、グリッド電極13から電気的に絶縁された状態となる。
【0057】
なお、本例のように、清掃ブラシ22をグリッド電極13から離間させる構成を採用した場合、グリッド電極13と感光体1間のギャップが変動してしまうのを防止できるという利点もある。なぜなら、ホームポジションHにおいてグリッド電極13に清掃ブラシ22が接触したままであると、グリッド電極13が清掃ブラシ22により感光体1側に押圧されて感光体1に近づいてしまう傾向となるからである。
【0058】
このようなギャップ変動が発生すると、感光体の帯電電位がホームポジションH付近において所望の電位とすることができず、帯電不良につながってしまう。
【0059】
(帯電装置の清掃シーケンス)
図6に、帯電装置2の放電ワイヤ12とグリッド電極13を清掃する清掃装置を制御するための制御回路のブロック図を示す。
【0060】
カウンタ30は画像形成部での画像出力枚数のカウントを行う。CPU31は画像出力枚数が所定枚数(本例では5000枚)に達する毎に清掃処理が行われるようにDCコントローラ32を制御する。具体的には、清掃処理が行われるように、DCコントローラ32によって、スイッチ190、モータM1、電源S1、S2の動作が制御される。
【0061】
本例では、グリッド電極清掃部材14によってグリッド電極13の内面に付着している異物を除電処理しながら清掃処理(摺擦処理)する構成を採用している。
【0062】
次に、図7に示すフローチャートを用いて、帯電装置の清掃シーケンスについて説明する。これらのステップ全体はCPU31によって制御される。
【0063】
画像形成装置に画像形成命令が入力されて画像形成処理がスタートすると(step1)、画像出力が行われる(step2)。そして、この画像出力の枚数(以下、出力枚数)がカウンタ30によりカウントされる(step3)。
【0064】
この出力枚数が、画像形成命令に基づく画像形成枚数(以下、予定枚数)に達したか否かを判断し(step4)、予定枚数に達すると、一連の画像形成処理の動作が終了する(step14)。また、この出力枚数が予定枚数に達しておらず、(step4)、帯電装置を清掃すべき所定の清掃枚数(5000枚)に達したか否かを判断する(step5)。清掃枚数に達していなければ、画像出力を継続する(step2)。
【0065】
一方、step5において、出力枚数が帯電装置の清掃枚数(5000枚)に達していると判定された場合、CPU31からDCコントローラ32に命令が送出され、DCコントローラ32により放電ワイヤ用の電源S1をオフさせる(step6)。
【0066】
そして、グリッド電極用の電源S2もオフされ(step7)、スイッチ190によって接地状態となる(step8)。
【0067】
次に、モータM1をオンし、ホームポジションHから反転位置に向けて、放電ワイヤ清掃部材15とグリッド電極清掃部材14を往動作させる(step9)。
【0068】
このとき、グリッド電極清掃部材14は、ガイドレール20に沿って移動し、帯電領域W1においてグリッド電極13を摺擦することで清掃処理が行われる。また、放電ワイヤ清掃部材15は放電ワイヤ12を摺擦することで同時に清掃処理が行われる。
【0069】
放電ワイヤ清掃部材15とグリッド電極清掃部材14が反転位置に到達すると、モータM1の回転方向を反転させて、放電ワイヤ清掃部材15とグリッド電極清掃部材14を復動作させる(step10)。すると、放電ワイヤ清掃部材15とグリッド電極清掃部材14はホームポジションHに向かって移動する。ここでも、放電ワイヤ12とグリッド電極13は清掃される。
【0070】
そして、グリッド電極清掃部材14は、帯電領域W1を過ぎると、ガイドレール20の離間機構(絶縁機構)によりグリッド電極13から離間される。そして、放電ワイヤ清掃部材15とグリッド電極清掃部材14が、ホームポジションHに到達すると、モータM1を停止させて、一連の清掃処理が終了する。
【0071】
その後、出力枚数が予定枚数に達するまで、残りの画像出力が再開される。つまり、スイッチ190によりグリッド電極用の電源S2に切替え(step11)、この電源S2をオンし(step12)、そして、放電ワイヤ用の電源S1をオンさせる(step13)。
【0072】
そして、画像出力の再開(step2)に伴い、出力枚数が予定枚数に達すると(step4)、一連の画像形成処理の動作が終了する(step14)。
【0073】
(検証実験)
まず、上述したように清掃処理時にグリッド電極13に付着した異物の除電処理を行うことによる、グリッド電極13の清掃効果を確認するため耐久実験を行った。
【0074】
この耐久実験では、画像形成部において10万枚のシートPに画像出力を連続して行い、グリッド電極13の汚れ具合、画像不良の発生の有無について確認を行った。なお、帯電装置2の清掃処理は、上述したように、画像出力を5000枚行う毎に実行した。
【0075】
本例のように、グリッド電極13に付着したトナー等の異物を除電処理しながらこれらを摺擦除去する構成であれば、10万枚の画像出力を経てもグリッド電極13の汚れ具合は軽微であり、画像不良の発生は無かった。
【0076】
一方、比較例として、上述した導電性の清掃ブラシ22の代わりに、アクリル繊維を導電化処理せずに形成された高抵抗の清掃ブラシを用いて、同様の耐久実験を行った。具体的には、比較例では、清掃ブラシは、その電気抵抗が1×1013Ω、植毛密度が200デニール/80フィラメント、1平方ミリメートルあたりの毛の本数が150本となっている。
【0077】
この比較例では、2万枚の画像出力を行った時点で、スジ状の濃度ムラが発生してしまった。この濃度ムラの発生したコロナ帯電器のグリッド電極を観察したところ、スジが現れる場所に対応する位置で、トナーやホコリなどが多く付着していた。これらの付着物は現像装置3やクリーニング装置5から飛散したトナーや、機外から入り込んだホコリが原因となったものと考えられる。また、一部にはトナーが固着している箇所もあった。これは、トナーがほとんど動かない状態で清掃ブラシによる清掃処理を繰り返した為と思われる。トナーがいったん固着してしまうと、除去がほぼ不可能になってしまう。
【0078】
次に、グリッド電極13の清掃処理時にグリッド電極13を除電する効果について述べる。そのため、グリッド電極清掃部材14による清掃能力を評価する検証実験を行った。
【0079】
この検証実験では、グリッド電極13の内面(感光体1と対面する側とは反対の面)にトナーを均一に付着させ、これをコロナ帯電器2にセットしグリッド電極清掃部材14によりグリッド電極13の清掃処理を行った。その後、グリッド電極13でのトナー被覆面積割合の変化率を求め、これを清掃能力の尺度とした。
【0080】
具体的には、「清掃後のトナー被覆面積割合」を「清掃前のトナー被覆面積割合」で除して100を乗じたものであり、以下、これを清掃効率Y(%)と表す。この尺度では変化率Yが大きいほど清掃能力が高いということになる。この値の再現性を高める為に、清掃前のトナー被覆面積割合が60(%)となるように調整されている。
【0081】
まず、この検証結果を説明する前に、グリッド電極に付着した異物が通常の画像形成時の条件下で帯電処理を受けた際に、清掃効果がどのように推移するかについて検証を行ったので、これを説明する。つまり、図8は放電時間(帯電時間)と清掃効率Y(%)の関係を示したものである。この検証では、上述した比較例で説明したものと同じ条件の清掃ブラシを用いている。
【0082】
グリッド電極13にトナーを付着させた後、コロナ帯電器2による放電時間を0秒、5秒、20秒、40秒と変えて、それぞれの条件での清掃効率Yを測定した。このときの帯電条件は、通常の帯電処理時と同じであり放電ワイヤ12に流れる電流値が−800μA、グリッド電極13に印加される電圧は−700Vとなっている。
【0083】
図8に示すように、放電時間が長くなるほど、清掃効率Yが急激に低下することが分かる。これは絶縁体であるトナーがコロナ放電を受けて過剰に帯電され、グリッド電極13に対する静電付着力が増加した為であると思われる。グリッド電極13に付着した異物が導電性であれば、電荷は蓄積されないので通常の帯電処理工程の際に付着力が増加することはない。
【0084】
しかし、比較例のように、絶縁性の清掃ブラシを用いた上記実験の結果は、異物が強く帯電されると清掃ブラシの掻き取り効果だけでは除去できなくなることを示しており、清掃ブラシの密度を高くしたりしても、清掃効率の向上は望めない。
【0085】
一方、本例のように、清掃ブラシとして導電性のものを用いると、トナー等の異物(付着物)を除電することができるので、異物のグリッド電極13への静電付着力が減少し、清掃効率を向上することができる。つまり、本例の構成であれば、接地された清掃ブラシが異物に接触することで、その蓄積電荷が清掃ブラシを通じて除去される。
【0086】
また、清掃ブラシの電気抵抗値を低くした方が、清掃処理時の除電効率を高めることができる。
【0087】
そこで、清掃効率と清掃ブラシの電気抵抗値との関係について述べる。
【0088】
清掃ブラシを構成するアクリル繊維の導電化処理の程度を調節することによって、電気抵抗値が、1×10Ω、1×10Ω、1×10Ω、1×10Ωのブラシを作成し、それぞれの清掃効率について検証実験を行った。この検証結果を図9に示す。
【0089】
この検証実験の条件は、図8を用いて説明した検証実験と同様である。但し、放電時間(帯電時間)は60秒となっている。
【0090】
図9に示すように、清掃ブラシの電気抵抗値が1×10Ωよりも大きいと清掃効率が急激に低下することがわかる。これは清掃ブラシの電気抵抗値が1×10Ωよりも大きい場合、グリッド電極13に付着したトナー等の異物の除電処理がほとんど行われない為であると考えられる。このように、電気抵抗値が1×10Ωよりも大きい清掃ブラシの場合、本例では「除電処理する」とは言えない。従って、グリッド電極13に付着したトナー等の異物を適切に除電するには、1×10Ω以下の清掃ブラシを用いるのが好ましい。
【0091】
なお、本例では、グリッド電極の外面(感光体と対面する側の面)を清掃していないが、これについては問題ないと考えられる。なぜならば、コロナ帯電器による感光体の帯電電位ムラに影響する汚れはグリッド電極の外面よりも内面に付着した場合の方が顕著であるからである。これは、コロナ帯電器内での電位分布が、グリッド電極の外面に付着した異物にはほとんど影響されない為である。
【0092】
一方で、グリッド電極は、構造上、その内面が受け皿のような形態となってしまいそこに異物が堆積し易い。さらに、グリッド電極の内面に付着した異物は、コロナ帯電器内での電位分布を乱す要因となるので、放電電流の分布が不均一になり易く、感光体の帯電電位ムラを生じさせ易い。
【0093】
このようなことから、本例のような、グリッド電極の内面を清掃する構成は感光体の帯電電位ムラの発生を防止する上で有効である。もちろん、必要であれば、グリッド電極の外面を清掃する清掃装置を更に設ける構成としても構わない。
【0094】
なお、本例では、グリッド電極清掃部材として、全てのブラシ(繊維)が導電性である清掃ブラシ22を用いているが、このような形態だけに限られない。例えば、清掃ブラシ22を構成するブラシ(繊維)の8割程度を導電性とし、残りの2割程度を中抵抗の非導電性とするハイブリッドタイプの構成であっても構わない。このとき、このような清掃ブラシの電気抵抗値が、1×10Ω以下となっているのが望ましい。
【0095】
また、グリッド電極清掃部材としてはブラシに限るものではなく、例えば導電性(電気抵抗値が1×10Ω以下)のスポンジ等の弾性体を用いても構わない。このようにスポンジを用いた場合、スポンジの電気抵抗値は上述したブラシの電気抵抗値の測定方法と同様に行うことができる。
【0096】
以上のように、本例の構成によれば、コロナ帯電器のグリッド電極を適切に清掃することが可能となり、帯電不良による画像濃度ムラを防止することができる。
【実施例2】
【0097】
次に、図10、11を用いて実施例2について説明する。図10は帯電装置2をその長手側から見た概略断面図であり、図11は帯電装置をその短手側から見た概略断面図である。
【0098】
本例では、ホームポジションHに位置しているグリッド電極清掃部材14を絶縁状態にさせる絶縁機構が異なる。従って、この構成以外は上述した実施例1と同様であるので、同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0099】
本例では、実施例1のように、清掃ブラシ22がグリッド電極13から離れるように移動させることで、清掃ブラシ22をグリッド電極13に対し電気的に絶縁状態とするのではなく、次のような絶縁機構を採用している。
【0100】
つまり、清掃ブラシ22がホームポジションHに位置しているとき、絶縁シート(絶縁機構)40が清掃ブラシ22とグリッド電極13との間に位置することにより絶縁状態とするように構成している。
【0101】
具体的には、ホームポジションHにおいてグリッド電極13の内面を覆うように絶縁シート40がグリッド電極13の内面に接着されている。この絶縁シート40は、厚さが0.5mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)シートである。
【0102】
また、ブラシ基台24のシールド電極10に対向した面には導電ブラシ41が設けられており、導電ブラシ41はブラシ基布24と電気的に導通している。そして、本例のグリッド電極清掃部材14では、清掃ブラシ22が固定されたブラシ基台24が剛体の支持アーム42によりホルダ16に取り付けられている。従って、本例では、実施例1とは異なり、清掃ブラシ22の移動方向がホームポジションHの付近においても直線状のままとなっている。
【0103】
このような構成とすることにより、清掃処理時に、清掃ブラシ22が接地されたシールド電極10と導通し、清掃ブラシ22による除電効果を発生させることができる。
【0104】
本例の構成であれば、実施例1のような離間機構が不要となるので、絶縁機構を簡略化でき、帯電装置をコンパクトにできるというメリットがある。
【0105】
反面、ホームポジションHでグリッド電極13が清掃ブラシ22に押圧された状態となるので、それを考慮してグリッド電極13と感光体1とのギャップが均一となるように構成するのが望ましい。また、リークが生じない範囲でグリッド電極13の印加電圧を制御することが望ましい。
【0106】
なお、絶縁機構として用いる絶縁シートの材質としては、上述したPET以外の他の公知の絶縁性の素材を用いても構わない。
【0107】
このように、本例の構成によれば、実施例1と同様に、コロナ帯電器のグリッド電極を適切に清掃することができ、さらに、グリッド電極清掃部材をグリッド電極に対して絶縁状態にさせる絶縁機構の構成を簡易化することができる。
【0108】
なお、以上の実施例1、2では、感光体を一様に帯電処理するための帯電処理工程に帯電装置(コロナ帯電器)を用いる例について説明したが、この例だけに限らず、以下のような構成であっても構わない。
【0109】
例えば、実施例1、2と同様な帯電装置(コロナ帯電器)が、感光体に形成されたトナー像を、シートに転写する前に、帯電処理する用途に用いられる場合である。
【0110】
また、転写装置4で用いられている転写ローラの代わりに、実施例1、2と同様な帯電装置(コロナ帯電器)を採用する構成としても構わない。つまり、この例では、帯電装置が転写工程に用いられることになる。
【0111】
また、以上の実施例1、2では、被帯電体として感光体を例に説明したが、この例だけに限らず、以下のような構成であっても構わない。
【0112】
例えば、被帯電体が中間転写体である場合でも構わない。この中間転写体とは、公知のものであり、感光体に形成されたトナー像が1次転写されるとともに1次転写されたトナー像をシートへ2次転写するために用いられるものである。この場合、帯電装置(コロナ帯電器)は、感光体から中間転写体に1次転写されたトナー像を、2次転写前に、帯電処理する装置として用いられ得る。また、帯電装置(コロナ帯電器)は、感光体から中間転写体への1次転写工程や中間転写体からシートへの2次転写工程にも用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】画像形成装置の概略断面図である。
【図2】コロナ帯電器を正面から見た概略断面図である。
【図3】コロナ帯電器を側面から見た概略断面図である。
【図4】コロナ帯電器を正面から見た概略断面図である。
【図5】コロナ帯電器を側面から見た概略断面図である。
【図6】コロナ帯電器の清掃装置を制御するためのブロック図である。
【図7】コロナ帯電器の清掃処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】帯電時間と清掃効率の関係を示す図である。
【図9】清掃ブラシの電気抵抗と清掃効率の関係を示す図である。
【図10】コロナ帯電器を正面から見た概略断面図である。
【図11】コロナ帯電器を側面から見た概略断面図である。
【符号の説明】
【0114】
1 感光体
2 帯電装置(コロナ帯電器)
3 現像装置
4 転写装置
5 クリーニング装置
6 光除電装置
7 画像露光装置
12 放電ワイヤ
13 グリッド電極
14 グリッド電極清掃部材
15 放電ワイヤ清掃部材
16 ホルダ
17 ネジ軸
20 導電性の突起
21 ガイドレール
22 清掃ブラシ
30 カウンタ
31 CPU
32 DCコントローラ
40 絶縁シート
41 導電ブラシ
190 スイッチ(SW)
H ホームポジション
M1 モータ
S1 放電ワイヤ用の電源
S2 グリッド電極用の電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体を帯電するコロナ帯電器と、前記コロナ帯電器のグリッド電極を清掃する清掃機構と、を有する帯電装置において、
前記清掃機構は前記グリッド電極に付着した付着物を除電しながら清掃処理を行う導電性部材を有することを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記導電性部材が前記コロナ帯電器の帯電領域から外れた退避位置にあるとき前記導電性部材を前記グリッド電極に対し電気的に絶縁状態にさせる絶縁機構を有することを特徴とする請求項1の帯電装置。
【請求項3】
前記絶縁機構は、前記導電性部材が前記コロナ帯電器の帯電領域から外れた退避位置にあるとき前記導電性部材を前記グリッド電極に対して離間状態にする離間機構を有することを特徴とする請求項2の帯電装置。
【請求項4】
前記導電性部材はブラシであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの帯電装置。
【請求項5】
前記被帯電体は電子写真感光体であり、前記コロナ帯電器は前記電子写真感光体を一様に帯電処理するために用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−113144(P2010−113144A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285503(P2008−285503)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】