説明

帯電装置

【課題】 長期に亘る使用によっても、帯電器シャッタ上に付着した放電生成物に起因する感光体の劣化、電子写真画像への画像流れ現象の発生を抑えることができる帯電装置を提供する。
【解決手段】 画像を担持する像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材と、該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材を有し、該遮蔽部材が、公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維を含むことを特徴とする帯電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いた画像形成装置に用いる帯電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、帯電器シャッタに光触媒物質を含有させ、光触媒反応を発生させる光を放電生成物が付着した帯電器シャッタに照射することにより放電生成物を分解することで付着量の増加を抑えることを開示している。特許文献2は、帯電器シャッタにニッケル(Ni)を2〜20重量%以上含有させたステンレス鋼を用いた帯電器シャッタを開示している。そして、これによって、放電生成物である硝酸又は硝酸イオンとNiを結合させて金属塩を形成させ、硝酸に対して不動態を形成させることにより、放電生成物が付着しても画像流れ現象を改善できることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−072212号公報
【特許文献2】特開平07−104564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る構成においては、光触媒反応を発生させる光を放電生成物が付着した帯電器シャッタに照射するために、帯電器シャッタをコロナ帯電器の下から退避させるスペースと、そこに設けられた、光触媒物質を励起させる波長成分を有した光源とが必要となる。通常、副走査方向に板状の帯電器シャッタを移動した場合、コロナ帯電器の上流側には前露光(除電部材)領域があり、下流側には像露光領域がある。そのため、それらの領域を避ける構成とするために装置の配置が複雑化し、コストアップを招来することがある。
【0005】
特許文献2に係る構成に関して、不動態となったNiは硝酸又は硝酸イオンと金属塩を形成し難いため、帯電器シャッタ上に生成した硝酸は徐々に金属塩に変換されにくくなる。
【0006】
本発明者等の検討によると、特許文献2に係る帯電器シャッタにおいては、当該帯電器シャッタ上に、金属塩に変換されなくなった硝酸が長期に残留してしまい、硝酸が感光体に移行し、あるいは画像流れを生じさせ、放電生成物に起因する電子写真画像への画像流れ現象の発生という課題の改善効果が十分には得られなくなることがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、帯電器シャッタ上に付着した放電生成物が、感光体に与える影響を長期に亘って抑制でき、その結果として、感光体の劣化や、電子写真画像への画像流れ現象の発生を長期間に亘って抑えることができる帯電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、画像を担持する像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材と、該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材を有し、該遮蔽部材が公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維を含む帯電装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、画像を担持する像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材と、該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材を有し、該遮蔽部材が下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる何れかの材料を含む帯電装置が提供される:
(i)硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属または合金;
(ii)金属水酸化物;
(iii)金属硫化物;
(iv)リン又はリン酸エステル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期に渡り使用しても、帯電器シャッタ上に付着した放電生成物が、感光体へ移行するのを防止し、感光体の劣化、画像流れ現象の発生を低減もしくは防止することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実験例1に係る帯電器シャッタ材質の公定水分率と放電生成物由来のイオン量との関係を示したグラフである。
【図2】画像形成装置の概略断面図である。
【図3】本発明に係る帯電器シャッタの開状態を示す図である。
【図4】本発明に係る帯電器シャッタが閉状態を示す図である。
【図5】帯電器シャッタの開閉機構の説明図である。
【図6】巻取り装置の概略断面図である。
【図7】巻取り装置をガイド部材にセットした状態を示す概略斜視図である。
【図8】シャッタ固定部材の状態を示した図である。
【図9】帯電器の位置決め部材を示した斜視図である。
【図10】本発明に係る帯電装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る帯電装置について詳細に説明する。
本発明の一態様に係る帯電装置は、画像を担持する像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材との間に、遮蔽部材として帯電器シャッタを有する。そして、帯電器シャッタは、公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維を含む。公定水分率とは、日本工業規格(JIS)L 0105:2006(繊維製品の物理試験方法通則)の規定に基づくものである。
【0013】
放電生成物である窒素酸化物(NOx)、特に二酸化窒素(NO)や五酸化二窒素(N)は水に溶けやすい。帯電器シャッタに公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維を含有させることによって、帯電器シャッタが含む水分の量は増加する。その結果、窒素酸化物(NOx)は帯電器シャッタの表面だけでなく内部に浸透した水分とも反応し硝酸を生成する。その結果、帯電器シャッタの表面に生成する硝酸が減少し、感光体への移行を低減することができると考えられる。
【0014】
また、公定水分率が15.0%以下の繊維は、内部の水分量が増加した場合にも繊維の膨潤、変形が少ない。そして、帯電器シャッタに上記の公定水分率の繊維を含有させることで、帯電器シャッタの表面積が増加する。その結果、水分吸着量が増加すると同時に、窒素酸化物(NOx)との接触面積も増加する。そのため、帯電器シャッタ内部における硝酸の生成を長期に亘り持続させることができる。
【0015】
公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維としてセルロースは特に好適に用い得る。セルロースは高い吸湿性を有し、かつ、多孔質構造を有している。すなわち、セルロースは、その表面のみならず内部にも水分を含有しており、この水分と窒素酸化物(NOx)とが反応して、セルロース内部においても硝酸を生成しやすい。そのため、セルロースを含む帯電器シャッタにおいては、放電生成物の吸着作用が長期に亘って持続する。
【0016】
また、セルロースは、化学的な安定性が、他の合成樹脂と比較して相対的に低い。具体的には、セルロースは、他の合成樹脂と比較して、相対的に耐酸性が弱く、硝酸に溶解しやすい。そのため、セルロースを含む帯電器シャッタにおいては、帯電器シャッタに生成した硝酸が、セルロースの分解に消費されるため、帯電器シャッタ上に残留する硝酸の量が少なくなるものと考えられる。これらの作用の重畳により、本態様に係る帯電器シャッタは、本発明に係る効果を奏するものと考えられる。
【0017】
ところで、本発明に係るセルロースの中でも、綿、アセテート繊維及びビスコースレーヨンを特に好適に用い得る。これらは、内部の水分量が増加しても膨潤、変形し難く、また強度も変化し難いため、帯電器シャッタの遮蔽領域を長期にわたり安定させることができる。
【0018】
次に、本発明の他の態様に係る帯電装置は、画像を担持する像担持体と、該像担持体を帯電する帯電部材とを有し、さらに、該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材として、下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる何れかの材料を含む帯電器シャッタを有する。
(i)硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属または合金;
(ii)金属水酸化物;
(iii)金属硫化物;
(iv)リン又はリン酸エステル。
【0019】
以下、順に説明する。
(i)硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属または合金を含む帯電器シャッタの表面に生成した硝酸は、すぐに金属や合金と結合して金属塩となる。そのため、帯電器シャッタの表面には硝酸として長期に残留しにくい。このため、硝酸の感光体への移行や、それに起因する電子写真画像への画像流れの発生を長期に亘って有効に抑制することができると考えられる。
【0020】
上記、硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属又は合金の具体例としては、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、銅、黄銅および青銅を挙げられる。
【0021】
ところで、硝酸と結合して金属塩を形成可能な金属の中には、硝酸に対して不動態を形成するものがある。このような金属としては、鉄、ニッケル、アルミニウムおよびクロムが挙げられる。かかる金属は硝酸に対して実質的に不溶と認められるところ、上記(i)に係る金属または合金としては基本的には不適である。
【0022】
但し、アルミニウムは、本発明者等の検討によれば、上記不動態を形成する金属の中でも、特に高湿度の環境では不動態を形成し難く、長期に亘って、硝酸と反応することにより金属塩を形成可能であることが判明した。不動態化とは、濃硝酸とアルミニウムが反応してできた硝酸アルミニウムがその表面に不動態を形成し、その不動態が濃硝酸に溶けないために新しい表面が現れず溶解が止まる状態をいう。硝酸アルミニウムは水に非常によく溶ける物質であるため、高湿度の環境では空気中から供給される水分が常に介在することとなり、不動態を形成し難い状態となり、水に溶解すると考えられる。他の不動態を形成する金属(鉄、ニッケル、クロム)も、高湿度の環境では比較的不動態を形成し難い状態となるが、アルミニウムはその傾向が特に顕著である。そのためアルミニウムは、本発明における上記(i)に係る金属に包含される。
【0023】
(ii)金属水酸化物は一般的に水に難溶だが硝酸には溶解する。すなわち、帯電器シャッタに含まれる金属水酸化物は、高湿度環境下で空気中から供給される水分によっても酸化されにくいため、硝酸との反応性が長期に亘って維持される。つまり、当該帯電器シャッタ中の金属水酸化物は、当該帯電器シャッタ上に生成した硝酸と長期に亘って金属塩を形成することができる。そのため、金属水酸化物を含む帯電器シャッタは、放電生成物である硝酸の感光体への移行を長期に亘って効果的に抑制できると考えられる。
金属水酸化物として特に好適な材料としては、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化錫、水酸化鉛、水酸化銅を挙げられる。これらの金属水酸化物は硝酸とは、より効率的に反応して金属塩を生成する。これは、上記の金属水酸化物が、上記した性質を有することに加えて、硝酸イオンと結合して金属塩を形成しやすい金属組成を有する為であると考えられる。すなわち、上記の金属水酸化物を含む帯電器シャッタは、当該帯電器シャッタ上に生成した硝酸を、より効率的に金属塩に変換することができる。そのため、当該帯電器シャッタは、硝酸が感光体に与える影響の、より一層の緩和を図ることができる。
【0024】
(iii)金属硫化物は一般的に水に難溶だが硝酸には溶解する。すなわち、帯電器シャッタに含まれる金属硫化物は、高湿度環境下で空気中から供給される水分によっても酸化されにくいため、硝酸との反応性が長期に亘って維持される。つまり、当該帯電器シャッタ中の金属硫化物は、当該帯電器シャッタ上に生成した硝酸と長期に亘って金属塩を生成することができる。そのため、金属硫化物を含む帯電器シャッタは硝酸の感光体への移行を長期に亘って効果的に抑制できると考えられる。
【0025】
金属硫化物として特に好適な材料としては、硫化アルミニウム、硫化亜鉛、硫化錫、硫化鉛、硫化銅を挙げられる。
【0026】
上記した金属硫化物のうち、硫化亜鉛、硫化錫、硫化鉛および硫化銅は、硝酸と、より効率的に反応して金属塩を生成する。これらの金属硫化物は、上記した金属硫化物としての性質を有することに加えて、硝酸イオンと結合して金属塩を形成しやすい為であると考えられる。すなわち、上記の金属硫化物を含む帯電器シャッタは、当該帯電器シャッタ上に生成した硝酸を、より効率的に金属塩に変換させることができる。
【0027】
一方、上記の金属硫化物のうち、硫化アルミニウムは、金属硫化物の一般的な性質と異なり、高湿度の環境において加水分解することで水酸化アルミニウムに変化する。その結果、上記(ii)で述べた金属水酸化物と同様の理由により、感光体に対して硝酸が与える種々の影響を緩和する効果を奏するものと考えられる。
【0028】
(iv)リン又はリン酸エステルは、硝酸と反応してリン酸やポリメタリン酸等が生成すると考えられる。そのため、これらの材料を含む帯電器シャッタにおいては、分子鎖との脱水反応により水が発生し、窒素酸化物(NOx)が当該帯電器シャッタの表面だけでなく内部にまで浸透して硝酸を生成すると考えられる。その結果、長期に亘って硝酸を吸収する能力が持続し、硝酸が感光体に与える種々の影響を緩和することができるものと考えられる。上記リンとしては硝酸との反応性が高い赤リンを特に好適に用い得る。
【0029】
<画像形成装置の全体構成>
次に、本発明に係る画像形成装置として電子写真方式を採用したレーザビームプリンタを例に全体構成を図2を用いて説明する。その後、帯電装置について詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、感光体(像担持体)1の周囲に、その回転方向(矢印R1方向)に沿って順に、帯電装置2、露光装置3、電位測定装置7、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置8、光除電装置9が配設されている。また、転写装置5よりも記録材Pの搬送方向下流側に、定着装置6が配設されている。次に、画像形成に関与する個々の画像形成機器について順に詳述する。
【0031】
(感光体)
像担持体として感光体1は、負帯電特性の有機光半導体である感光層を有した円筒状(ドラム型)の電子写真感光体である。この感光体1は、直径が84mmであり、中心軸(不図示)を中心に500mm/secのプロセススピード(周速度)で矢印R1で示した方向に回転駆動される。
【0032】
(帯電装置)
帯電装置2は、放電ワイヤ2hと、これを囲むように設けられたコの字状の導電性シールド2bと、このシールド2bの開口部に設置されたグリッド電極2aとを有するスコロトロン・タイプのコロナ帯電器である。また、画像形成の高速化に対応するため、放電ワイヤ2hを2本設置するとともにこれに対応してシールド2bが放電ワイヤ2h間を遮るように仕切りが設けられたコロナ帯電器を用いている。コロナ帯電器2は感光体1の母線に沿って設置されており、コロナ帯電器2の長手方向は感光体1の軸線方向と平行な関係にある。
【0033】
また、図10に示すように、グリッド電極2aは感光体の周面に沿ってその短手方向(感光体の移動方向)の中央部が両端部よりも感光体から離れるように設置されている。従って、コロナ帯電器2を従来以上に感光体1に近接して設けることができ、帯電効率を向上させることができる。また、コロナ帯電器2は、帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1が接続されており、印加電源S1から印加された帯電バイアスにより、感光体1の表面を帯電位置aにおいて負極性の電位に一様に帯電処理を行う機能を担っている。
【0034】
具体的には、直流電圧の帯電バイアスが、放電ワイヤ2h及びグリッド電極2aに印加される構成となっている。更に、本例のコロナ帯電器2は、帯電により発生する放電生成物が感光体1に付着するのを防止するための帯電器シャッタが設けられている。この帯電器シャッタの構成については後で詳述する。
【0035】
(露光装置)
露光装置3は、コロナ帯電器2により帯電処理された感光体1にレーザ光Lを照射する半導体レーザを備えたレーザビームスキャナである。このレーザ光Lは、帯電処理済みの感光体1表面を、露光位置bにおいて主走査方向に沿って露光する。
【0036】
感光体が回転している間にこの主走査方向に沿った露光を繰り返すことにより、感光体1表面の帯電面のうち、レーザ光Lが照射された部分の電位が低下し、画像情報に対応した静電潜像が形成される。ここで、主走査方向とは感光体1の母線に平行な方向を意味しており、副走査方向は感光体1の回転方向に平行な方向を意味している。
【0037】
(現像装置)
現像装置4は、帯電装置2と露光装置3によって感光体1上に形成された静電潜像に、現像剤(トナー)を付着させることにより可視像化する。現像装置4は、二成分磁気ブラシ現像方式および反転現像方式を採用している。
【0038】
4aは現像容器、4bは非磁性の現像スリーブであり、現像スリーブ4bはその外周面の一部を外部に露呈させて現像容器4a内に回転可能に配置してある。4cは非回転に固定して現像スリーブ4b内に挿設したマグネットローラ、4dは現像剤コーティングブレード、4eは現像容器4aに収容した二成分現像剤、4fは現像容器4a内の底部側に配設した現像剤攪拌部材、4gはトナーホッパーであり、補給用トナーを収容させてある。
【0039】
現像スリーブ4bは現像部cにおいて感光ドラム1の進行方向とは逆方向(矢印R4方向)に回転駆動される。この現像スリーブ4bの外周面に該スリーブ内のマグネットローラ4cの磁力により現像容器4a内の二成分現像剤4eの一部が磁気ブラシ層として吸着保持され、該スリーブの回転に伴い回転搬送され、現像剤コーティングブレード4dにより所定の薄層に整層され、現像部cにおいて感光ドラム1の面に対して接触して感光ドラム面を適度に摺擦する。
【0040】
現像スリーブ4bには現像バイアス印加電源S2が接続されている。そして、現像スリーブ4b表面に担持された現像剤中のトナーは、現像バイアス印加電源S2により印加された現像バイアスによる電界によって、感光体1上の静電潜像に対応して選択的に付着される。こうして、回転する現像スリーブ4bの面に薄層としてコーティングされ、現像部cに搬送された現像剤中のトナーが現像バイアスによる電界によって感光ドラム1面に静電潜像に対応して選択的に付着し、静電潜像がトナー画像として現像される。本例の場合は感光ドラム1面の露光明部にトナーが付着して静電潜像が反転現像される。
【0041】
(転写装置)
転写装置(転写ローラ)5は感光体1表面に所定の押圧力をもって圧接されており、その圧接ニップ部が転写部dとなる。この転写部dには給紙カセットから所定の制御タイミングにて記録材P(例えば、紙、透明フィルム)が給送される。
【0042】
転写部dに給送されてきた記録材Pは感光体1と矢印R5方向に回転する転写ローラ5との間に挟持搬送されながら、感光体1上のトナー像が記録材Pに転写される。このとき、転写ローラ5には、転写バイアス印加電源S3からトナーの正規帯電極性(負極性)とは逆極性の転写バイアス(本例では、+2kV)が印加される。
【0043】
(定着装置)
定着装置6は、加圧ローラ6aと定着ローラ6bを有している。転写装置によりトナー像の転写を受けた記録材Pは、定着装置6へと搬送され、加圧ローラ6aと定着ローラ6bとによって加熱、加圧されて表面にトナー像が定着される。定着処理を受けた記録材Pは、その後、機外へと排出される。
【0044】
(クリーニング装置)
クリーニング装置8はクリーニングブレードを有している。転写装置により記録材Pにトナー像が転写された後、感光体1表面に残留している転写残トナーはクリーニングブレード8によって除去される。
【0045】
(光除電装置)
光除電装置9は除電露光ランプを有している。クリーニング装置8によりクリーニング処理された感光体1は、その表面に残留している電荷が、除電露光ランプ9による光照射により除電される。
【0046】
以上説明した各画像形成機器による一連の画像形成プロセスが終了し、次の画像形成動作に備えられる。
【0047】
<帯電装置の詳細構成について>
次に本発明に係る帯電装置の構成について詳細に説明する。
【0048】
(帯電器シャッタ)
コロナ帯電器2の開口を開閉するシート状部材としての帯電器シャッタ10について説明する。図3及び図4は各々、帯電器シャッタ10の開状態、閉状態を示したものである。コロナ帯電器2の開口とは、シールドに形成された開口のことを指し、コロナ帯電器2による帯電領域(図3のW)に対応している。従って、このコロナ帯電器による帯電領域Wは、感光体1が帯電され得る領域とほぼ一致する。
【0049】
図3は、シート状部材としての帯電器シャッタ10がX方向(開方向)へ移動するように巻取られたことにより帯電器シャッタ10が開いた状態を示したものである。図4はシート状部材としての帯電器シャッタ10がY方向(閉方向)へ移動するように引っ張られたことにより帯電器シャッタ10が閉じた状態を示したものである。
【0050】
図3及び図4に示すように、コロナ帯電器2の開口を開閉する帯電器シャッタ10として、巻取り装置11によりロール状に巻取ることが可能な有端状のシート状のシャッタ(以下、帯電器シャッタ)を採用している。これは、帯電器2から感光体1に向けて落下する放電生成物の通過を防止することの他に次の理由に依るものである。
【0051】
つまり、帯電器シャッタ10は感光体1とグリッド電極2aとの狭い隙間を移動するため、万一、帯電器シャッタが感光体1と接触した際にも画像劣化を生じさせるような損傷を感光体に与えるのを防止するためである。本実施例で用いた帯電器シャッタ10の具体的な材料は後に詳述する。また、画像形成動作中に帯電器2の長手方向(主走査方向)一端側にロール状に退避する構成となっているのは帯電器シャッタ10の退避時(開時)のスペースを小さくするためである。
【0052】
(帯電器シャッタ駆動機構)
次に、帯電器シャッタ10の開閉機構(移動機構)について説明する。
図5は開閉機構の詳細を示した斜視図であり、図10はコロナ帯電器の長手方向一端側から見た断面を示す。この開閉機構は、駆動モータM、巻取り装置11、帯電器シャッタ10を保持する第1の移動部材21a、清掃部材14を保持する第2の移動部材12a、回転部材13を有する。これらにより、帯電器シャッタ10はその長手方向(主走査方向)に沿って開閉移動させることができる。
【0053】
また、図3及び図10に示すように、帯電器シャッタ10の開動作完了を検知するシャッタ検知装置15が設けられている。このシャッタ検知装置15はフォトインタラプタを有している。第1の移動部材21aが開動作完了位置に到達すると、フォトインタラプタ15が遮光部材21cにより遮光されることを利用して、帯電器シャッタ10の開動作完了を検知する。つまり、シャッタ検知装置15により第1の移動部材21aの遮光部材21cを検知した時点で、駆動モータMの回転を停止させる構成となっている。
【0054】
図5及び図7に示すように、帯電器シャッタ10の閉方向先端側には、帯電器シャッタの短手方向中央部が両端部よりもコロナ帯電器側に突出するように帯電器シャッタの形状を規制する規制手段として機能するシャッタ固定部材17が設けられている。このシャッタ固定部材17は、第1の移動部材21aに一体で備えられた連結部材21bに係止固定されている。
【0055】
また、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aは、回転部材13に螺合するように設けられた駆動伝達部材22を有しており、この駆動伝達部材22を介して回転部材13に駆動連結されている。さらに、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aは、コロナ帯電器2上に設けられたレール2c上を主走査方向にのみ移動できるように螺合されており、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aが回転部材13と共に回転してしまうのを防止している。
【0056】
また、回転部材13はスパイラル状の溝が形成されており、その一端部にはギア18が接続されている。一方、駆動モータMの先端にはウォームギア19が接続されており、駆動モータMの駆動力をウォームギア19とギア18との噛み合い部を介して回転部材13へと伝達する。そして、回転部材13が駆動モータMにより回転駆動されると、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aがこのスパイラルの溝に沿って主走査方向(X、Y方向)へ移動する。従って、駆動モータMにより回転部材13が駆動されると、第1の移動部材21aと一体化されている連結部材21bを介して、帯電器シャッタ10に開閉方向への移動力が伝達される構成となっている。
【0057】
また、第2の移動部材12aには、放電ワイヤ2hを清掃する清掃部材14を保持する連結部材12bが一体で備えられている。従って、駆動モータMによって帯電器シャッタ10が上述のように主走査方向(X、Y方向)へ移動するのと同時に、清掃部材14も同一方向へと移動する。これにより、放電ワイヤ2hの清掃部材14と帯電器シャッタ10とを同一の駆動モータMで駆動することが可能となる。
【0058】
(帯電器シャッタ巻取り機構)
次に、帯電器シャッタ10の巻取り機構について説明する。
図6に巻取り手段としての巻取り装置11の構成を示す。また、図7に巻取り装置11をコロナ帯電器2に取り付けるためのガイド固定部材35に装着した状態を示す。
【0059】
巻取り装置11は、帯電器シャッタ10の一端側を固定するとともにこれを巻取る円筒状の巻取りローラ(巻取り部材)30、巻取りローラ30を軸支する軸部材32、巻取りローラ30の他方端を軸支する軸受部材31を有している。さらに、軸受部材31と軸部材32を固定する固定部材である平行ピン34、巻取りローラ30内に設置され、巻取りローラ30と軸受部材31に係合するバネ(付勢部材)33を有している。
【0060】
また、巻取り装置11は、図7に示すようにガイド固定部材35に取り付けられることで、軸受部材31の突起31aがガイド固定部材のリブ35aに突き当たる構成になっている。これにより、軸受部材31および軸部材32は回転不可に固定され、巻取りローラ30のみが回転可能に軸支される。取り付けの際には、軸受部材31にはA方向に回転力が生じるように、ガイド固定部材35に取り付ける前に、巻取りローラ30を固定した状態で軸受部材31をB方向に数回転巻いた状態で取り付けている。これにより、帯電器シャッタ10が開く方向(Y方向)に引っ張った際に、巻取りローラ30が帯電器シャッタ10を巻き取る方向にバネ33のねじり力が働く。この際、軸受部材31はA方向の力を受けるためガイド固定部材35に突き当たって回転不可に固定される。
【0061】
また、帯電器シャッタ10が開く方向に移動する際にたるむのを防止するために、予め、巻取り装置11に対し帯電器シャッタ10がたるまない巻取り力を付与する必要がある。
【0062】
本例においては、図3に示すように帯電器シャッタ10が動作完了位置に移動した位置での巻取り装置11の巻取り力が最も弱くなる。そのため、この位置での巻取り力を帯電器シャッタ10がたるまない巻取り力の下限値として、ガイド固定部材35に取り付ける前に軸受部材31をB方向に回す回数を決定している。従って、帯電器シャッタを開く際(図3)には、駆動モータMにより帯電器シャッタ10がX方向へ移動するに伴い、帯電器シャッタ10が下方に垂れ下がることなく帯電器シャッタ10を随時巻取りローラ30が巻き取っていく仕組みとなっている。
【0063】
一方、帯電器シャッタ10を閉める際(図4)には、駆動モータMが巻取りローラ30内のバネ33の付勢力に抗して帯電器シャッタ10を巻取りローラ30から引き出すことで、帯電器シャッタ10がY方向へ移動する仕組みとなっている。なお、帯電器シャッタ10が完全に閉まった状態のとき、巻取りローラ30内のバネ33によるX方向への付勢力が帯電器シャッタ10に作用しているので、帯電器シャッタ10が下方に垂れ下がることはない。従って、閉時において、帯電器シャッタ10とコロナ帯電器2との間に隙間ができ難い構成とした為、コロナ放電生成物が外側に漏れにくい状態を維持することが可能となる。
【0064】
(帯電器シャッタの移動範囲)
第1の移動部材21aと第2の移動部材12aを用いることで、帯電器シャッタ10と、清掃部材14の移動距離を変えている。図3に示すように、帯電器シャッタ10が開いた状態では、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aはそれぞれ開位置α1、β1で停止している。
【0065】
開位置α1、β1は帯電器シャッタ10の開動作完了を検知するシャッタ検知装置15が、第1の移動部材21aを検知して開動作を停止した位置である。また、αは帯電器シャッタ10の先端位置を示したものであり、βは清掃部材14の巻取り側端面を示したものであり、この開位置でのα1、β1は、放電領域Wよりも巻取り側になるように設けられている。
【0066】
更に、図3に示すように、第2の移動部材12aの停止位置β1は、清掃部材14全体が放電領域Wよりも巻取り側になる位置で停止している。それに対し、第1の移動部材21aの停止位置α1は、放電ワイヤ2hのワイヤ架け部材24よりも巻取り側となる位置で停止する。このようにα1をワイヤ架け部材24よりも巻取り側、すなわち、β1よりも巻取り側にすることで、帯電器シャッタ10を外さなくても放電ワイヤ2hが交換できるようになっている。
【0067】
更に、第1の移動部材21aの開位置α1は、感光体1の巻取り側端面よりも巻取り側に設定されており、通常動作時、感光体1が回転しても帯電器シャッタ10が感光体1に接触することがないようになっている。
【0068】
帯電器シャッタ10が閉じている時は、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aは開位置の間隔を保ったままY方向へ移動する。そして図4に示すように、奥側のブロック2eに突き当たって閉位置α2、β2で停止する。そして、移動開始から所定時間経過後、モータMの駆動が停止して帯電器シャッタ10の閉動作が終了する。帯電器シャッタ10開時は、第1の移動部材21aと第2の移動部材12aは閉時の状態を保ち、密着したままX方向へ移動する。
【0069】
そして、図3に示すように第2の移動部材12aは前側のブロック2dに、第1の移動部材21aはシールド板に突き当たって開位置α1、β1で停止する。この際に、シャッタ検知装置15が第1の移動部材21aを検知してモータMを停止して開動作を終了する。
【0070】
(帯電器シャッタ位置決め構成)
次に、帯電器シャッタ10の位置決め構成について説明する。
図9はコロナ帯電器2を装置本体に取り付けるための位置決め部材23を示す斜視図である。組立時、コロナ帯電器2はグリッド電極2aを張った際のテンションによりたわみが生じ、装置本体に取り付けた際に感光体1とグリッド電極2aの隙間が長手方向で異なる場合がある。その隙間の差が大きいと、出力された成果物の主走査方向での濃度差を生じる原因となる。
【0071】
このような主走査方向の濃度差を防止するために、本例ではグリッド電極2aを張った後のコロナ帯電器2は、グリッド電極2aの前奥高さを測定して、奥側に対する前側高さの差が50μm以下に調整する機構を設けている。具体的にはコロナ帯電器は、前側ブロック2dに対し位置決め部材23を調整組みすることで精度を保証する構成している。そして、位置決め部材23には帯電器シャッタ10を抱えるガイド固定部材35が取り付けられている。更に、ガイド固定部材35には、ガイド部材16と感光体1の位置精度を保証するための突起35bが設けられている。この突起35bおよび、位置決め部材23の位置決め穴23aは、不図示の装置本体の感光体1を位置決めする部材上に設けられた、各位置決め部材に対しそれぞれ位置決めされる構成となっている。それにより、感光体1、コロナ帯電器2(グリッド電極2a)、ガイド固定部材35(ガイド部材16)が同一部材に精度良く位置決めできる構成となっている。
【0072】
(帯電器シャッタの曲率形状付与機構)
本例のコロナ帯電器2は、先に述べたように、グリッド電極2aは、感光体1の周面に沿ってその短手方向(感光体の周方向)の中央部が両端部よりも感光体1から離れるように設置されている。そのため、本例では、帯電器シャッタ10も、帯電器シャッタ10の形状が感光体1の周面の曲率形状に実質倣う(対応する)ように、規制手段としての曲率形状付与機構を設けている。本例では、曲率形状付与機構として、帯電器シャッタ10の先端への曲率形状付与機構と、巻取り口側での帯電器シャッタ10への曲率形状付与機構と、を有しており、以下、順に説明する。
【0073】
(帯電器シャッタ10の先端への曲率形状付与機構)
まず、帯電器シャッタ10の先端への曲率形状付与機構について説明する。
図10はコロナ帯電器をその短手方向から見た断面図であり、図8は規制部材としてのシャッタ固定部材17を連結部材21bに対して取り付ける前の状態(A)と、取り付けた後の状態(B)を示した図である。図10に示すように、巻取り装置11による巻取り範囲外となる帯電器シャッタ10の長手方向一端側は、移動部材21aに帯電器シャッタ10を固定するためのシャッタ固定部材17が取り付けられている。このシャッタ固定部材17は、連結部材21bに取り付けられた際に、感光体1の周面の曲率形状に倣うよう、弾性を有した部材にて構成されている。具体的には、図8(A)に示すように、シャッタ固定部材17はバネ性を有した薄板の金属板金の幅L2(弾性変形前)は、連結部材21bの取り付け部の幅L1よりも小さい幅に設定されている。また、シャッタ固定部材17の連結部材21bへの取り付け部17aは、帯電器シャッタ10の裏面(コロナ帯電器側の面)を固定するための取り付け面17bとのなす角度αが90°以下に設定されている(本例では、45°)。これにより、シャッタ固定部材17を連結部材21bに取り付けると、図8(B)に示すように、シャッタ固定部材17は弾性変形し、感光体1から離れる方向の力F2を受ける。そのため、シャッタ取り付け面17bの短手方向中央部が両端部よりも突出する曲率形状となり、帯電器シャッタ10の先端に曲率形状を付与することができる。
【0074】
(巻取り口側での帯電器シャッタ10への曲率形状付与機構)
さらに、本例では、図9及び図10に示すように、2つ目の曲率形状付与機構として、帯電器シャッタ10の巻取り装置11への巻取り口側に、ガイド部材16である回転体、所謂、コロが設けられている。このガイド部材16はシャッタ固定部材17とは異なり、ガイド固定部材35に回転自在に支持され、帯電器シャッタ10の開閉移動に伴い、回転しながらガイドする構造となっている。従って、このガイド部材16は、帯電器シャッタ10が所望の曲率形状となるように規制するにあたって、帯電器シャッタ10の開閉移動に要する負荷が増大してしまうのを防止することができる。
【0075】
また、ガイド部材16は、巻取り部材11による巻取り範囲外となる位置で、かつ感光体1よりも巻取り部材11に近い位置に配置されている。また、ガイド部材16であるコロの最上部は、感光体1のコロナ帯電器2との最近接位置(感光体1外周面)よりもコロナ帯電器2側に位置しており、帯電器シャッタ10は開閉動作中にガイド部材16と摺動する関係となっている。また、ガイド部材16は、コロナ帯電器2の短手方向中央部にのみ配置され、シャッタ固定部材17と同様に、帯電器シャッタ10に対し曲率形状を付与する構成になっている。さらに、ガイド部材16は、グリッド電極2aと感光体1間の微小な隙間に、帯電器シャッタ10を導くシャッタ挿入ガイドとしての機能も併せ持っている。従って、帯電器シャッタ10が巻取り装置11により巻き取られる側においても、帯電器シャッタ10の短手方向中央部が両端部よりもコロナ帯電器2側に突出した形状を維持することができる。このような形状を帯電器シャッタ10に付与したことで、コロナ帯電器2(グリッド電極2b)と感光体1間のギャップを可能な限り小さくすることに貢献している。なお、帯電器シャッタの開閉動作に支障を来たさない範囲内であれば、必ずしも、帯電器シャッタ10の曲率形状を感光体1の周面の曲率形状に一致させる必要はない。
【0076】
(帯電器シャッタの先端保護部材)
次に、帯電器シャッタ10の先端を保護する部材である保護シート25について説明する。図7は本例の帯電器シャッタ先端側を示した概略図、図3、図4は本例の帯電器シャッタ10の開状態、閉状態を示したものである。
【0077】
本例では、前述のようにコロナ帯電器2は曲率を有しており、帯電器シャッタ10の先端には弾性部材からなるシャッタ固定部材17が設けられている。このシャッタ固定部材17を連結部材21bに取り付けると、図8(B)に示すように、シャッタ固定部材17は弾性変形し、感光体1から離れる方向の付勢力Fを発生させる。付勢力Fは曲率を保つため、常に帯電器シャッタ10を帯電ブロック2dやグリッド電極2aに押し付けるように働いている。そのため、帯電器シャッタ10のシャッタ固定部材17に取り付けられている部分は常に帯電ブロック2dやグリッド電極2aと摺擦する関係にある。それにより、帯電器シャッタ10が摺擦により磨耗してしまう。それを防止するために本例では、図1に示すように、シャッタ固定部材の対向側(グリッド電極2a側)に薄いシート状の保護シート25を設けている。この保護シート25は、シャッタ固定部材17が曲率を有するのを阻害しないように、50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム部材からなっている。この保護シート25によって、シャッタ固定部材17の付勢力Fによって帯電器シャッタ10が直接グリッド電極2a、あるいは、帯電ブロック2dと摺擦することが無くなり、帯電器シャッタ10の磨耗を防止することができる。また、保護シート25は図3に示すシャッタ開状態において、帯電器シャッタ10が巻取り部材11に巻き取られている範囲外に設けられている(図5の状態)。そのため、保護シート25を帯電器シャッタ10に設けても、帯電器シャッタ10の巻取り性を損なうことがないようになっている。
【0078】
また、本例では保護シート25の材質として弾性を有したPETフィルムを例に挙げたが、シャッタ固定部材17が曲率を作り出すのに必要な付勢力Fを阻害せず、かつ摺擦に強い材質であれば保護シート25の材質は樹脂シートに限られない。
【0079】
なお、以上の例では、コロナ帯電器が、感光体に静電像を形成する前工程において、感光体を実質一様に帯電処理するために用いられる場合について説明した。これ以外に、コロナ帯電器が、感光体に形成されたトナー像を帯電処理するために用いられる場合にも本発明を同様に適用することが可能である。また、以上の例では、コロナ帯電器の開口にグリッド電極が設けられている場合について説明したが、コロナ帯電器にグリッド電極が設けられていない場合にも本発明を同様に適用することが可能である。
【0080】
(実験例1)
(放電生成物由来の物質の帯電器シャッタへの吸着量の評価方法)
上記画像形成装置の帯電装置内の帯電器シャッタとして、下記表1に示した材料からなる厚さ250μmの帯電器シャッタ部材を装着した。
【0081】
そして、図3の状態を保ったまま、A4サイズの紙5000枚分の画像を温度30℃、相対湿度80%の環境下で8時間かけて出力した。その後、図4の状態で16時間静置した。このような画像出力と静置とを、出力した画像の総枚数が100万枚になるまで繰り返した。
【0082】
本実験例におけるコロナ帯電器2による帯電領域は、長手方向(図3のW)が322mm、回転方向が44mmであり、この帯電領域下の遮蔽部材への放電生成物の吸着量を測定した。帯電器シャッタが放電生成物を吸着した量は以下のようにして測定した。すなわち、上記帯電領域下の帯電器シャッタの141.7cmを50mlの純水に入れ、温度30℃、相対湿度80%の環境下に12時間静置し、当該純水中に溶け出した放電生成物由来のイオン(NO、NO)をイオンクロマトグラフィーにより測定した。
【0083】
また、各種材質からなる帯電器シャッタを装着してなる画像形成装置による画像流れの評価及び帯電器シャッタを構成する繊維の膨潤、変形を評価した。画像流れの評価および繊維の膨潤、変形の評価方法を以下に示す。結果を表1及び表2に示す。
【0084】
<画像流れの評価方法>
上記画像出力耐久が25万枚、50万枚、100万枚に到達した時点において、図4の状態で、遮蔽部材を温度30℃、相対湿度80%の環境下に16時間静置した。その後、図3の状態にして文字チャート及びハーフトーンチャートを画像出力した。得られた画像を評価し以下の基準にて評価した。
【0085】
A:文字が判別でき、ハーフトーンにも画像流れが発生しない
B:文字は判別できるが、ハーフトーンは画像流れが発生する
C:文字が判別できず、ハーフトーンも画像流れが発生する。
【0086】
<繊維の膨潤、変形の評価方法>
上記画像出力耐久が100万枚に到達した時点において、図4の状態で、遮蔽部材を30℃80%の環境下に16時間放置した後、その変形量を評価し以下の基準にて評価した。
A:繊維の膨潤、変形による遮蔽領域の変化量が、耐久前に対して10%以下。
B:繊維の膨潤、変形による遮蔽領域の変化量が、耐久前に対して20%以下。
C:繊維の膨潤、変形による遮蔽領域の変化量が、耐久前に対して20%より大きい。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より、公定水分率が増加するほど検出される放電生成物由来のイオン量が減少していることが分かる。また、図1は、100万枚の画像出力後に帯電器シャッタから測定された放電生成物由来のイオン量と、帯電器シャッタ材質の公定水分率との関係を示すグラフである。
【0089】
図1から、帯電器シャッタの材質の公定水分率が2.0(%)を下回ると、放電生成物由来のイオン量が急激に上昇し、また、電子写真画像に画像流れが発生することが分かる。このことから、帯電器シャッタとして公定水分率が2%以上の、吸湿性の高い繊維を用いることの技術的な意義を理解できる。他方、公定水分率が15.0(%)を上回ると、繊維の膨潤、変形が発生した。
【0090】
(実験例2)
表2に示した材料および形態からなる遮蔽部材を用いた画像形成装置を用いて実験例1と同じ評価(但し、「繊維の膨潤、変形」の評価を除く)を行なった。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2に示したように、帯電器シャッタを構成する材質の素材形態を不織布及び織布とした実験例2−2、2−4、2−6及び2−8は、フィルムとした実験例2−1、2−3、2−5及び2−7と比較して検出される放電生成物の量が減少していることが分かる。
【0093】
また、PET不織布(実験例2−4)の25万枚時とナイロンフィルム(実験例2−7)の50万枚時における放電生成物由来のイオンの量は共に2.6ppmである。しかし、繊維状のPETではハーフトーンに対して画像流れが発生せず、フィルム素材のナイロンでは電子写真画像に画像流れが発生した。これは素材形態の差によるものと考えられる。すなわち、フィルム素材と比較して繊維状のものは感光体に密着されない。そのため、繊維に付着した放電生成物由来の物質(硝酸など)は接触面に介在した空気により徐々に分解され、シャッタから転移する放電生成物由来の物質又は感光体上に残存する放電生成物由来の物質の量が減少したものと考えられる。
【0094】
(実験例3)
表3に示した各種金属を蒸着或いはメッキした厚さ250μmのPETフィルムを帯電器シャッタとして用いた画像形成装置を用いて実験例2と同じ評価を行なった。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
表3に示したように、実験例3−2〜3−10は、実験例3−1及び3−11〜3−13と比較して、検出される放電生成物由来のイオンの量が減少していることがわかる。
【0097】
なお、実験例3−11〜3−13においては帯電器シャッタに用いた材料上、帯電器シャッタの構成における巻取りが困難である。そのため、帯電器シャッタを閉じる時は、画像形成終了後に帯電器を一度取り外した後、それらを帯電器下に位置する感光体上を覆うように設置し、帯電器を元に戻す、また、開ける時は、その逆の動作を行うといった作業を繰り返して評価した。
【0098】
また、実験例3−2〜3−7は、実験例3−9〜3−10と比較して検出される放電生成物の検出量が減少していることがわかる。このことから、遮蔽部材に用いる金属または合金として、硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能であり、かつ、硝酸に対して不動態を形成しないものを用いることの優位性が理解できる。
【0099】
なお、アルミニウムは、一般に硝酸に対して不動態を形成すると言われているが、鉄、ニッケルと比較して検出される放電生成物の検出量が少ない。これは、不動態を形成する金属であっても、高湿度の環境では空気中から供給される水分が常に介在することで、不動態を形成し難い状態になると考えられる。そして、アルミニウムは中でも金属のイオン化傾向が大きく、鉄、ニッケルと比較して硝酸と結合しやすいためであると考えられる。
【0100】
以上の結果から、遮蔽部材に硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属又は合金を含有させることで、フィルム材質のものであっても、100万枚の画像出力を行った後において、電子写真画像に生じる画像流れが軽微になり、文字が判別できるまで改善されることが分かる。
【0101】
(実験例4)
表4に示した金属水酸化物を塗布した厚さ250μmのPET不織布を帯電器シャッタとして用いた画像形成装置を用いて実験例2と同じ評価を行なった。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
表4に示した通り、実験例4−2〜4−5は、実験例4−1と比較して、検出される放電生成物由来のイオンの量が減少していた。これは、金属水酸化物は一般的に水に難溶だが硝酸には溶解する性質によると考えられる。すなわち、空気中の水分により帯電器シャッタの金属水酸化物が酸化され、当該金属水酸化物中の金属が、帯電器シャッタ上に生成した硝酸と反応して金属塩を生成する。そのため、長期に亘って金属硝酸塩を形成可能となり、硝酸の感光体への移行が長期に亘って抑制できるものと考えられる。
【0104】
また、実験例4−2〜4−6に用いた金属水酸化物は、硝酸イオンとより効率的に反応して金属塩を形成可能である。その為、帯電器シャッタ上に生成した硝酸をより効率的に金属塩に変換させることができたと考えられる。
【0105】
これらの結果より、遮蔽部材に対して、金属水酸化物を含有させることで、それを塗布する基材に放電生成物の吸着効果がない場合であっても、100万枚の画像出力後において電子写真画像に生じる画像流れが軽微になり、文字が判別できるまで改善されることが分かる。
【0106】
(実験例5)
表5に示した金属硫化物を塗布した厚さ250μmのPET不織布を帯電器シャッタとして用いた画像形成装置を用いて実験例2と同じ評価を行なった。結果を表5に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
表5に示した通り、実験例5−2〜5−6は、実験例5−1と比較して、検出される放電生成物由来のイオンの量が減少していた。これは、金属硫化物は一般的に水に難溶だが硝酸には溶解する性質によると考えられる。すなわち、空気中の水分により金属硫化物が酸化され、当該金属硫化物中の金属が、帯電器シャッタ上で生成した硝酸とよく反応して金属塩を生成する。そのため、長期に亘って硝酸を金属塩に変換することができ、硝酸の感光体への影響を緩和できたものと考えられる。
【0109】
また、実験例5−3〜5−6に用いた金属硫化物は、上記金属硫化物の性質に加えて、硝酸イオンとより効率よく結合して金属塩を形成する為、遮蔽部材上に生成した硝酸を、より効率的に金属塩に変換させることができたと考えられる。
【0110】
さらに、実験例5−2に用いた硫化アルミニウムは、金属硫化物の一般的な性質と異なり、高湿度の環境において加水分解することで水酸化アルミニウムに変化する。その結果、上記金属水酸化物の性質と同様の効果が得られると考えられる。
【0111】
これらの結果から、遮蔽部材に対して、金属硫化物を含有させることで、それを塗布する基材に放電生成物の吸着効果が無い場合であっても、100万枚の画像出力後において電子写真画像に生じる画像流れが軽微になり、文字が判別できるまで改善されることが分かる。
【0112】
(実験例6)
表6に示した材料を塗布した厚さ250μmのPET不織布を帯電器シャッタに用いた画像形成装置を用いて実験例2と同じ評価を行なった。結果を表6に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
表6に示した通り、実験例6−2及び6−3は、実験例6−1と比較して、検出される放電生成物の検出量が減少していることがわかる。これは以下のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、赤リン又はリン酸エステルが硝酸と反応することで酸化し、水分と結合することによりリン酸やポリメタリン酸等が生成する。そして、帯電シャッタ中のこれらの材料の分子鎖との脱水反応により水が発生し、窒素酸化物(NOx)が帯電器シャッタの表面だけでなく内部にまで浸透して硝酸を生成する。その結果、帯電器シャッタの硝酸の吸着能が長期に亘って維持され、感光体への硝酸の影響を長期に亘って抑制することができたためと考えられる。
【0115】
これらの結果より、遮蔽部材に対して、リン又はリン酸エステルを含有させることで、それを塗布する基材に放電生成物の吸着効果が無い場合であっても、100万枚の画像出力後においても電子写真画像には画像流れが生じないか、あるいは生じたとしても軽微であり、また、文字が判別できるまで改善されることが分かる。
【符号の説明】
【0116】
1 感光体
2 帯電装置
10 帯電器シャッタ
11 巻取り装置
12a 第2の移動部材
12b 連結部材
13 回転部材
14 清掃部材
15 シャッタ検知装置
16 ガイド部材
17 シャッタ固定部材
21a 第1の移動部材
21b 連結部材
21c 遮光部材
22 駆動伝達部材
23 位置決め部材
24 ワイヤ架け部材
25 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持する像担持体と、
該像担持体を帯電する帯電部材と、
該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材を有し、
該遮蔽部材が、公定水分率が2.0%以上15.0%以下の繊維を含むことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記繊維がセルロースを含む請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記セルロースが綿、アセテート繊維およびビスコースレーヨンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
画像を担持する像担持体と、
該像担持体を帯電する帯電部材と、
該帯電部材と該像担持体との間を遮蔽する遮蔽部材を有し、
該遮蔽部材が、下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる何れかの材料を含むことを特徴とする帯電装置:
(i)硝酸イオンと結合して金属塩を形成可能な金属または合金;
(ii)金属水酸化物;
(iii)金属硫化物;
(iv)リン又はリン酸エステル。
【請求項5】
前記遮蔽部材が前記(i)の材料を含み、該材料がアルミニウム、亜鉛、錫、銅、黄銅および青銅からなる群から選択される少なくとも1つである請求項4に記載の帯電装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材が前記(ii)の材料を含み、該材料が水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化錫、水酸化鉛及び水酸化銅からなる群から選択される少なくとも一つである請求項4に記載の帯電装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材が前記(iii)の材料を含み、該材料が硫化アルミニウム、硫化亜鉛、硫化錫、硫化鉛および硫化銅からなる群から選択される少なくとも一つである請求項4に記載の帯電装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材が前記(iv)の材料を含み、該材料が赤リンである請求項4に記載の帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−209698(P2011−209698A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33691(P2011−33691)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】