説明

帯電部材用被覆チューブの製造方法及び帯電部材用被覆チューブ、帯電部材、電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置

【課題】 本発明の目的は、チューブ使用部に触れずに引き取る手段を用いることにより、抵抗ムラや形状ムラに起因した画像不良が生じない帯電部材、また該帯電部材を搭載した電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置を提供することである。
【解決手段】 帯電部材用被覆チューブの引き取り装置が2本の上下するチャック機構から成り、それらが交互にチューブを掴みながら下方へ引き取る搬送手段を用いる帯電部材用被覆チューブの製造方法とそのチューブであり、これにより作製された帯電部材であり、また、応用展開した電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被帯電体に接触配置され、電圧を印加されることにより該被帯電体を帯電する帯電部材及びその被覆チューブの製造方法に関する。また、該帯電部材を有する電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に用いられる帯電手段として、接触帯電方式の帯電手段の採用が進められている。
【0003】
接触帯電は、被帯電体に接触配置された帯電部材に電圧を印加することによって被帯電体を所定の極性及び電位に帯電させるものである。
【0004】
そのため、電源の電圧を低くすることができる、オゾン等のコロナ生成物の発生を少なくすることができる及び構造が簡単で低コスト化を図ることができる等の利点がある。
【0005】
帯電部材に印加する電圧は直流のみを印加する方式(DC印加方式)がある。これ以外には、直流電圧を接触帯電部材に印加したときの被帯電体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する振動電界を接触帯電部材と被帯電体との間に形成して被帯電体面を帯電処理する手法(AC印加方式)がある。振動電界とは、時間とともに電圧値が周期的に変化する電界のことをいう。
【0006】
DC印加方式よりもAC印加方式のほうがより均一な帯電をすることが可能である。
【0007】
また、接触帯電装置は、被帯電体に接触させる帯電部材の形状や形態から以下の三つのものに大別される。
【0008】
帯電部材をローラ状部材(帯電ローラ)としたローラ型帯電器と、ブレード状部材(帯電ブレード)としたブレード型帯電器と、ブラシ状部材(帯電ブラシ)としたブラシ型帯電器と等である(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0009】
帯電ローラは回転自由に軸受支持されて被帯電体に所定の圧力で圧接され、被帯電体の移動に伴い回転する。
【0010】
上記帯電ローラは通常、基体として中心に設けた芯金と、該芯金の外周にローラ状に設けた導電性の弾性層と、さらにその外周に設けた表面層等を有する多層構造体である。
【0011】
上記各層のうち、芯金(金属層)はローラの形状を維持するための剛体であるとともに、給電電極としての役割を有している。
【0012】
また、上記弾性層は通常、10〜10Ω・cmの体積固有抵抗を有すること及び弾性変形することにより被帯電体との均一な接触を確保する機能が要求される。そのため、通常導電性が付与されたゴム硬度(JIS A)70度以下の柔軟性を有する加硫ゴムが使用される。
【0013】
そして、従来の帯電ローラには、弾性層としてゴム発泡体(又はスポンジ状ゴム)を使用した発泡タイプとゴム発泡体を使用しないソリッドタイプがあった。
【0014】
また、上記表面層は被帯電体の帯電均一性を向上させ、被帯電体表面のピンホール等に起因するリークの発生を防止するとともに、トナー粒子や紙粉等の固着を防止する機能を有している。
【0015】
また、弾性層の硬度を低下させるために用いられるオイルや可塑剤等の軟化剤のブリードを防止する機能等も有している。
【0016】
表面層の体積固有抵抗は通常、10〜1013Ω・cmであり、従来、導電性塗料を塗布すること、又はシームレスチューブを被覆すること等により形成されていた(例えば、特許文献5参照)。
【0017】
シームレスチューブの成形時において、チューブ引き取り工程でチューブの外径よりも小さい引き取りベルト隙間幅でないとスリップしてしまうため、シームレスチューブを潰して引き取っていた。
【0018】
そのため、チューブの断面形状が楕円形になってしまい周方向の外径ムラがあったり(真円度 悪い)、また、周方向でかかる応力が異なるために周方向に抵抗ムラが発生してしまったり(周抵抗ムラ 悪い)していた。
【0019】
また、引き取りベルトはピンと張られた状態では動きが悪くなるため、少したるみを持たせて張られている。
【0020】
そのタルミが原因でベルトに波うちが生じるために、チューブは引き取りベルトとの間で接触離間を繰り返す(図3(a))。
【0021】
そのため、シームレスチューブの長手方向に外径の微妙な差異が生ずる(真直度 悪い)。
【0022】
これらのチューブの真円度や周抵抗ムラ、真直度は、被覆後の帯電ローラの性能に影響してしまう。
【0023】
つまり、チューブの真円度や周抵抗ムラ、真直度が悪いと、被覆後の帯電ローラの抵抗ムラや形状ムラとなり、結果として、画像に濃度ムラとして現れるという画像不良の原因の一つとなってしまうという問題があった。
【0024】
そこで、ベルト式の引き取り装置ではなく、ロール式(図3(b))の引き取り装置に改良がなされた(例えば、特許文献6参照)。
【0025】
ロール式にすることで常にチューブと一点で接し、接触離間を繰り返すことがなくなったため、チューブの真直度は良化された。
【0026】
しかし、引き取りロールとモーターとの間のギアにある微妙なガタのためバックラッシュが起こったりしていた。また、それだけでなく、チューブの表面性によっては引き取りロール表面を滑り防止のためにゴムで覆わなければならずその形状精度が低かったりもしていた。そのため、若干の速度ムラは依然として残っていた。
【0027】
さらに、チューブと一点でしか接していないため、その後の切断工程の振動が水冷サイジング工程前のチューブに伝わりやすく、チューブの長手方向の脈動を引き起こすといった新たな問題もあった。
【0028】
また、チューブの潰されている時間が短くなるため周抵抗ムラは良化するが、スリップ防止のため多少は潰して引き取るため、依然として若干の周抵抗ムラが問題としてあった。
【特許文献1】特開昭56−91253号公報
【特許文献2】特開昭64−24264号公報
【特許文献3】特開昭56−194349号公報
【特許文献4】特開昭64−24264号公報
【特許文献5】特開平11−125952号公報
【特許文献6】特開2003−39523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
そこで、本発明は、チューブ使用部に触れずに引き取る手段を用いることにより、抵抗ムラ及び外径ムラが抑えられた帯電部材用被覆チューブの製造方法及び該チューブを提供することを目的とする。
【0030】
また、さらに該チューブを弾性体層に被覆することにより、抵抗ムラや形状ムラに起因した画像不良が生じない帯電部材又は該帯電部材を搭載した電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置を提供することもある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、略重力方向にチューブを押し出す工程と、空冷工程と、水冷サイジング工程と、チューブ引き取り工程と、チューブ切断工程とを有する、芯金外周上の弾性体層に複数層のシームレスなチューブを被覆して帯電部材とする帯電部材用被覆チューブの製造方法において、前記チューブ引き取り工程は、前記チューブの着脱手段として交互に上下移動を繰り返す2本のチャック機構の1方のチャック機構によって、上位の定位置にてチューブをチャックし設定の引き取り速度で下方へチューブを引き取る工程と、前記1方のチャック機構が下位にてチューブをアンチャックし、適当な速度で上位の定位置に戻る工程と、当該アンチャックのタイミングで他方のチャック機構が上位の定位置にてチューブをチャックし設定の引き取り速度で引き取る工程と、前記他方のチャック機構が下位にてチューブをアンチャックし、任意の速度で上位の定位置に戻る工程と、を繰り返す工程を有し、前記チューブ切断工程では、前記チャック機構のチャック位置にてチューブを切断することを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、請求項1記載の帯電部材用被覆チューブの製造方法により製造された帯電部材用被覆チューブにおいて、前記チューブ引き取り工程前後におけるチューブの真円度及び周方向の抵抗ムラの変化率が1.1以下で、かつ、真直度Δ/Da×100において0.3%以下であることを特徴とする。
(Δは、前記チューブ長手方向の少なくとも5箇所の外径測定位置での少なくとも周方向3箇所の外径平均値の最大値と最小値の差異 Daは、全外径測定値の平均値)
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、チューブの使用部分は引き取り手段と触れることがなく潰されることがないので、真円度や周抵抗ムラが引き取り前後で悪化することを防げるようになる。
【0034】
また、引き取り速度精度が上がり、切断時の振動もチャック部で止まるので、優れた真直度の帯電部材用被覆チューブの製造方法とそのチューブを提供することが可能となる。
【0035】
さらに、チューブを弾性体層に被覆することにより、形状ムラや抵抗ムラに起因した画像不良が生じない帯電部材、帯電部材を搭載した電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0037】
本発明は、帯電部材用被覆チューブの引き取り装置が2本の上下するチャック機構から成り、それらが交互にチューブを掴みながら下方へ引き取る搬送手段を用いる帯電部材用被覆チューブの製造方法とそのチューブである。
【0038】
また、これにより作製された帯電部材であり、また、応用展開した電子写真装置用カートリッジ及び電子写真装置である。
【0039】
以下、本発明の実施の形態につき詳しく説明する。
【0040】
図1は、本発明に係る帯電部材1’である帯電ローラの一例を示すもので、電子写真装置の帯電器として使用するものである。
【0041】
この帯電ローラは、芯金1の外周に導電性の弾性材料からなる発泡弾性体層2を設け、発泡弾性体層2の外周にチューブ状の機能性複層膜(機能性複数層チューブ)3を被覆したものである。なお、芯金1は、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅及び導電性プラスチック等の良導電性材料からなる。
【0042】
図1の場合、機能性複数層チューブは内部層3(i)と外部層3(o)からなる。
【0043】
本実施形態における芯金(金属層)としては、例えばアルミニウム、銅、鉄、又はこれらを含む合金等の良導体が好適に用いられる。
【0044】
本実施形態に用いられる芯金は、0.1〜1.5mm程度の厚さを有する金属管であっても、また棒状であってもよい。
【0045】
発泡弾性体層2を構成する導電性を有する弾性材料としては、導電材を配合した発泡導電性ゴム組成物又は導電性ポリウレタンフォームを用いることができる。
【0046】
この場合、発泡導電性ゴム組成物を構成するゴム成分としては、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)や、クロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン等に導電材を配合したものの発泡体を使用することができる。
【0047】
また、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合ゴムの発泡体や、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合ゴムに導電材を配合したものの発泡体も好適に使用することができる。
【0048】
発泡導電性ゴム組成物を構成するゴム成分は、上記のものに特に制限されるものではない。
【0049】
ゴム組成物に配合する導電材としては、カーボンブラック、黒鉛、金属及び導電性の各種金属酸化物(酸化錫及び酸化チタン等)等の導電性粉体や、カーボンファイバー及び金属酸化物の短繊維等の各種導電性繊維を使用可能である。
【0050】
その配合量は、全ゴム成分100質量部に対して好ましくは3〜100質量部、特に好ましくは5〜50質量部であり、これにより発泡弾性体層2の体積抵抗を10〜10Ω・cm程度に調整することが好ましい。
【0051】
なお、この発泡弾性体層2の形成は、公知の加硫成形法により行うことができ、その厚さは帯電ローラの用途等に応じて適宜設定されるが、通常1〜20mmが好ましい。
【0052】
本実施形態においては、この発泡弾性体層2上に機能性複層膜(機能性複数層チューブ)3をチューブの形態で被覆する。
この場合、この機能性複数層チューブ3を構成する熱可塑性樹脂、エラストマーとしては、押し出し成形可能な熱可塑性樹脂、エラストマーであればいずれのものでもよい。具体的には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、スチレンブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びその他の共重合ナイロン等のポリアミド、スチレンエチレンブチル、エチレンブチル、ニトリルブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、イソプレンゴム及びポリノルボルネンゴム等の通常のゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)及びスチレン−ブタジエン−スチレンの水添加物(SEBS)等の熱可塑性ゴムを使用することができ、特に制限されるものではない。
【0053】
あるいは、上記の各樹脂や共重合体よりなるエラストマー及び変性体等のエラストマーと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等の飽和ポリエステル;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル−エチレン/プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS)等のスチレン系樹脂及びアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の各樹脂及び共重合体からなる材料の組み合わせが好ましい。
【0054】
さらに、上記ゴム、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれた2種以上の重合体からなるポリマーアロイ又はポリマーブレンドも使用できる。
【0055】
機能性複数層チューブに使用される樹脂、エラストマー及び共重合体等は前記したものであり、導電材等を適宜配合することにより、所望の特性を有するチューブ構成が得られる。
【0056】
上記導電材としては、公知の素材が使用できる。
例えば、下記にあげる通りである。
カーボンブラック及びグラファイト等の炭素微粒子;
ニッケル、銀、アルミニウム及び銅等の金属微粒子;
酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及びシリカ等を主成分とし、これに原子価の異なる不純物イオンをドーピングした導電性金属酸化物微粒子;
炭素繊維等の導電性繊維;
ステンレス繊維等の金属繊維;
炭素ウィスカやチタン酸カリウムウィスカの表面を金属酸化物や炭素等により導電化処理した導電性チタン酸カリウムウィスカ等の導電性ウィスカ;
及びポリアニリンやポリピロール等の導電性重合体微粒子;
等である。
【0057】
本実施形態に用いられる機能性複数層チューブは、上記各種重合体と、上記導電材及び必要ならばその他の添加剤からなる導電性重合体組成物を押し出し成形法で形成する。
【0058】
さらに、形成するチューブの各薄膜層の膜厚均一性、また導電材等の分散性がより均一であるものを得るために、本実施形態では図2に示されるような縦型のチューブ押し出し機を使用する。
【0059】
本実施形態に用いられる機能性複数層チューブは単に成形するならば、押し出し成形法、射出成形法又はブロー成形法等によりチューブ状に成膜することにより得ることができる。
【0060】
また、例えばより優れた耐久性や耐環境性等を得ることを目的として、上記各種成形法により得られたシームレスチューブをさらに架橋させて導電性架橋重合体とすることもできる。
【0061】
チューブ状に成膜された導電性重合体を架橋させる方法としては、重合体の種類に応じて架橋剤を予め添加しておき、化学的架橋法や放射線架橋法等が有効である。
【0062】
化学的架橋法とは高温下に架橋結合を生成させる方法であり、放射線架橋法とは電子線やγ線等の放射線を照射することにより架橋させる方法である。
【0063】
架橋剤としては、硫黄、有機過酸化物及びアミン類等があげられる。
【0064】
上記各種架橋法のうちでは電子線架橋法が架橋剤又はその分解生成物の移行による被帯電体の汚染の恐れがなく、さらに、高温処理の必要がない点及び安全性の点で好ましい。
【0065】
本実施形態に用いられる機能性複数層チューブの体積抵抗値は、10〜1010Ω・cmであることが好ましく、特には10〜10Ω・cmであることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態においては、適切に機能分離した極薄層のチューブが一体的に同時に形成されているので、各層を必要以上に厚い膜とすることがない。それだけでなく、全体構成の中で、発泡弾性体層の柔軟性を効果的に引き出すことが可能となっている。
【0067】
本実施形態に用いられる機能性複数層チューブは種々の方法で成膜することができるが、前記のように押し出し法が好適である。
【0068】
即ち、予め重合体と導電材及び必要に応じて、架橋剤、安定剤及びその他の添加剤を混合したコンパウンドを製造する。
【0069】
その後、コンパウンドを押し出し機によりリング状スリットを形成するニップルとダイスより押し出し、冷却することによって連続的にシームレスチューブを製造することができる(図2)。
【0070】
冷却の途中で又は冷却後再加熱して空気加圧等の手段を用いてチューブ径を拡大すれば熱収縮チューブが得られ、拡大処理をしなければ非熱収縮チューブが得られる。
【0071】
本実施形態に用いられる機能性複数層チューブは、非熱収縮性と熱収縮性のいずれであってもよいが、実施例では非熱収縮性のものを採用している。
【0072】
非熱収縮チューブである場合、発泡弾性体層と機能性複数層チューブの密着性を確保するためにはチューブ内径は、発泡弾性体層外径以下であることが必要である。
【0073】
圧縮空気を吹き込むことによりチューブ径を拡大させた状態で芯金を有する発泡弾性体層を挿入し、空気圧を解除すれば外嵌処理が完了する。
【0074】
本実施形態は、重力方向にチューブを押し出す工程と、空冷工程と、水冷サイジング工程と、チューブ引き取り工程と、チューブ切断工程とを有する帯電部材用被覆チューブの製造方法である。これは、芯金外周上の弾性体層に複数層のシームレスなチューブを被覆して帯電部材とするものである。
【0075】
次に、本発明に用いられる縦型押し出し装置を図2により説明する。
【0076】
成形に用いるダイス4には、空気導入用の中央通孔5の周囲に内外二重の環状の押し出し流路6及び7が設けられている。
【0077】
成形に際しては内側流路6に第1押し出し機8から機能性複数層チューブを構成する内部層用エラストマーを、また外側流路7に第2押し出し機9から機能性複数層チューブを構成する外部層用エラストマーをそれぞれ加圧注入する。
【0078】
その後、内部層3(i)と外部層3(o)を重ね合わせ一体化して押し出し、空冷して得られた機能性複数層チューブ3の外周に設けた水冷リング10により冷却する。
【0079】
これをチューブ引き取り装置21により送り、切断装置23により所定長さに順次切断し、帯電ローラ用の機能性複数層チューブとして、次工程にて、芯金1を有する発泡弾性体層に被覆する。
【0080】
24は金型、22はニップルである。
【0081】
ここで、本実施形態の技術の要点について、さらに詳細に説明を行う。
【0082】
図3は従来の引き取り機であるベルト式(a)とロール式(b)の装置図を示す。また、図4は本発明に用いたチャック式の引き取り手段によるチューブの引き取り方を説明した模式図を示す。
【0083】
図4に示すチューブ引き取り装置はNCにより上下する2本のチャック機構A、Bから成る。まず、上位の定位置にてチャック機構Aがチューブをチャックし設定の引き取り速度で下方へチューブを引き取る。
【0084】
次に、チャック機構Bが上位の定位置にてチューブをチャックしチャック機構Aと同じ速度で引き取り始める。チャック機構Bが引き取り始めると同時に、チャック機構Aは下位にてチューブをアンチャックして上位の定位置に戻る。
【0085】
この時、チャック機構Aが上位の定位置に戻る速度は、チューブの引き取り速度とチューブの必要長さによって決まる。
【0086】
これらをAとBが交互に繰り返し、チューブを引き取っていく。このようなチャック式の引き取り装置ではロール式の引き取り装置で問題となったバックラッシュや引き取りロールの形状精度による速度ムラの問題は解決する。
【0087】
さらに、本実施形態のもう一つのポイントとして、チューブ切断工程がチャック機構A及びチャック機構Bのチャック位置でチューブを切断することが挙げられる。
【0088】
チャック位置を切断することにより、チャックによって真円度や周抵抗ムラに影響を受けた部分を切断部としてしまう。
【0089】
その切断部付近のチューブは被覆後突っ切られて捨てられるので、製品として使用される部分は引き取り装置と一切触れることなく引き取り工程前後で真直度や周抵抗ムラが変わらないものが得られる。
【0090】
つまり、引き取り工程前後のチューブの間での真円度及び周方向の抵抗ムラの変化率は、従来手段では達成が困難であった1.1以下になる。
【0091】
また、切断工程の振動が水冷サイジング工程前のチューブに伝わることによりチューブの長手方向の外径ムラを引き起こしていたロール式の問題も、本チャック方式ではしっかりとチャックしてしまうために解決する。
【0092】
また、従来手段では達成が困難であった、真直度Δ/Da×100のより良いチューブ(0.3%以下)が得られた。
【0093】
真直度Δ/Da×100は、チューブ長手方向の少なくとも5箇所の外径測定位置での少なくとも周方向3箇所の外径平均値の最大値と最小値の差異Δの、全外径測定値の平均値Daとの100分率値(図5)を示す。
【0094】
図6に本発明の帯電ローラを有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0095】
図6において、12は電子写真感光体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動され回転過程において、帯電部材1’によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光13を受ける。
【0096】
11は帯電部材1’の電源である。こうして感光体12の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0097】
形成された静電潜像は、次いで現像手段14によりトナー現像される。その後、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体12と転写手段15との間に感光体12の回転と同期取りされて給紙された転写材16に、転写手段15により順次転写されていく。
【0098】
像転写を受けた転写材16は、感光体面から分離されて定着手段17へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0099】
像転写後の感光体12の表面は、クリーニング手段18によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0100】
本実施形態においては、上述の電子写真感光体12、帯電部材1’、現像手段14及びクリーニング手段18等の構成要素のうち複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成する。
【0101】
このプロセスカートリッジは複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成可能である。
【0102】
例えば、現像手段14及びクリーニング手段18を感光体12及び帯電部材1’とともに一体に支持してカートリッジ化して、案内手段を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ20とすることができる。案内手段としては、装置本体のレール19等が利用できる。
【0103】
また、露光光13は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光又はセンサーで原稿を読取り信号化する。
【0104】
その後、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【実施例】
【0105】
より具体的に、実施例、比較例をもって以下に説明する。
【0106】
「機能性複数層チューブの構成を抵抗調整層/導電性制御層とした場合」
抵抗調整層は材料そのものが適切な抵抗値を有する樹脂を用いてもよく、又はカーボンを混合して抵抗値を調整した樹脂でもよい。
【0107】
この例の各層材料を同時押し出しにより一体となった複数層の機能性チューブを形成することができる。本発明においては、縦型押し出し装置を用いてチューブの形成を行う。
【0108】
<芯金>
芯金は、鉄材を押し出し成形により、直径約5mmの棒材に押し出し、長さ260mmに切断後、これに化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。
【0109】
<発泡弾性体層の形成>
エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)に、加硫剤と発泡剤を配合し、混合したものを押し出し成形機により内径4.5mm、外径11.5mmのホース状に成形する。加硫缶内で発泡させた発泡弾性体層を長さ225mmに切り、その中心孔に、上記の直径5mm、長さ260mmの芯金を挿入した。
【0110】
<機能性複数層チューブの形成>
機能性複数層チューブの外部層の材料として、スチレン系の樹脂(スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合樹脂、商品名:ダイナロン、JSR社製、融点100℃)100質量部(61.3質量%)、ポリエチレン20質量部(12.3質量%)、カーボンブラックとして、商品名:ケッチェンブラックEC(ライオンアクゾ社製)12質量部(7.4質量%)及び商品名:Special Black 250(デグザ社製)20質量部(12.3質量%)、酸化マグネシウム10質量部(6.1質量%)、ステアリン酸カルシウム1質量部(0.6質量%)をV型ブレンダーで数分間混合した。
【0111】
これをさらに加圧式ニーダーを用いて190℃で10分間溶融混練した。さらに、冷却後、粉砕機で粉砕し、単軸押し出し機でペレット化した。
【0112】
内部層の材料として、ポリウレタンエラストマー(融点120℃)100質量部(76.3質量%)、カーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC)20質量部(15.3質量%)、酸化マグネシウム10質量部(7.6質量%)及びステアリン酸カルシウム1質量部(0.8質量%)を、外部層の材料と同様の工程でペレット化した。
【0113】
(実施例1)
縦型押し出し機(プラ技研社製の特注品、図2参照)を用いて、これら内部層・外部層の材料を一つのクロスヘッド(温度150℃)で2重層となるように合流させ、適温の冷水10中に押し出した。
【0114】
さらに冷却した後、チャック式(図2又は図4)のチューブ引き取り装置にて引き取り、切断機でチューブ長300mmに切断した。
【0115】
また、引き取り工程前のチューブ約300mmもハサミでカットし採取した。
【0116】
このようにして、外径約12.0mm、膜厚500μm、チューブ長300mmの引き取り工程前後の機能性複数層チューブ2本を得た。
【0117】
(比較例1)
チューブ引き取り装置としてロール式(図3(b))を用いた以外は実施例1と同様にして、外径約12.0mm、膜厚500μm、チューブ長300mmの引き取り工程前後の機能性複数層チューブ2本を得た。
【0118】
(比較例2)
チューブ引き取り装置としてベルト式(図3(a))を用いた以外は実施例1と同様にして、外径約12.0mm、膜厚500μm、チューブ長300mmの引き取り工程前後の機能性複数層チューブ2本を得た。
【0119】
得られた機能性複数層チューブの真円度及び周抵抗ムラを測定した。
【0120】
真円度測定は、チューブ長手方向のある1箇所の測定位置で、チューブ周方向8箇所の外径の最大値と最小値の差異Δと、8箇所の外径測定値の平均値D0との100分率値(Δ/D×100)を求めた。
【0121】
また、周抵抗ムラ測定は、チューブ径より若干小さめの径を持つSUS棒にチューブを通し、チューブ1周中のDC電流値max/DC電流値minの比で示した。
【0122】
これらより、引き取り工程前後のチューブの真円度及び周抵抗ムラの変化率(真円度引き取り工程後/真円度引き取り工程前及び周抵抗ムラ引き取り工程後/周抵抗ムラ引き取り工程前)を求めた。
【0123】
さらに、得られた引き取り工程後の機能性複数層チューブの真直度を測定した。
【0124】
チューブ内径より若干小さめの径を持つSUS棒にチューブを通し、チューブ長手方向の5箇所の外径測定位置で、回転しながら周方向3箇所の外径平均値の最大値と最小値の差異Δの、全外径測定値の平均値Daとの100分率値(Δ/Da×100)を求めた(図5)。
【0125】
<帯電ローラの作製>
上記方法により得られた引き取り工程後の機能性複数層チューブに、チューブ被覆装置(不図示)により発泡弾性体層外周を嵌め込み、圧密着させた。
【0126】
この帯電ローラをLBP(レーザービームプリンター;ヒューレットパッカード社製レーザージェット2−P)の一次帯電器に用いて画像形成を行った。その結果、機能性複数層チューブ3と発泡弾性体層2の間に隙間が発生することなく、機能性複数層チューブ3に皺が寄ることもなく、画像ムラ等のない良好な画像が得られた。
【0127】
【表1】

【0128】
このように、実施例1及び比較例1、2の帯電部材が組み込まれたプロセスカートリッジを用いた電子写真装置による画像評価も行っている。ただし、比較例1は画像NGとまではいかないので△、それより良いとして○、悪いとして×とした。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、電子写真装置用カートリッジや電子写真装置の帯電部材に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施形態としての帯電部材の一例の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いる帯電部材用被覆チューブの縦型押し出し機の一例の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いる従来のベルト式の引き取り手段とロール式の引き取り手段の装置図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いるチャック式の引き取り手段によるチューブの引き取り方を説明した模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いる外径ムラの測定方法の解説図である。
【図6】本発明の一実施形態としての帯電ローラを有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0131】
1 芯金(金属層)
1’ 帯電部材
2 発泡弾性体層
3 機能性複層膜(機能性複数層)
3(i) 内部層
3(o) 外部層
4 ダイス
5 中央通孔
6 押し出し流路
7 押し出し流路
8 第1押し出機
9 第2押し出機
10 水冷リング
11 電源
12 感光体
13 露光光
14 現像手段
15 転写手段
16 転写材
17 定着手段
18 クリーニング手段
19 レール
20 プロセスカートリッジ
21 タイミングプーリー(引き取り工程)
22 ニップル
23 切断工程
24 引き取りベルト(引き取り工程)
25 チャック機構(A,B)(引き取り工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略重力方向にチューブを押し出す工程と、空冷工程と、水冷サイジング工程と、チューブ引き取り工程と、チューブ切断工程とを有する、芯金外周上の弾性体層に複数層のシームレスなチューブを被覆して帯電部材とする帯電部材用被覆チューブの製造方法において、
前記チューブ引き取り工程は、前記チューブの着脱手段として交互に上下移動を繰り返す2本のチャック機構の1方のチャック機構によって、上位の定位置にてチューブをチャックし設定の引き取り速度で下方へチューブを引き取る工程と、
前記1方のチャック機構が下位にてチューブをアンチャックし、適当な速度で上位の定位置に戻る工程と、
当該アンチャックのタイミングで他方のチャック機構が上位の定位置にてチューブをチャックし設定の引き取り速度で引き取る工程と、
前記他方のチャック機構が下位にてチューブをアンチャックし、任意の速度で上位の定位置に戻る工程と、を繰り返す工程を有し、
前記チューブ切断工程では、前記チャック機構のチャック位置にてチューブを切断することを特徴とする帯電部材用被覆チューブの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の帯電部材用被覆チューブの製造方法により製造された帯電部材用被覆チューブにおいて、
前記チューブ引き取り工程前後におけるチューブの真円度及び周方向の抵抗ムラの変化率が1.1以下で、かつ、真直度Δ/Da×100において0.3%以下であることを特徴とする帯電部材用被覆チューブ。
(Δは、前記チューブ長手方向の少なくとも5箇所の外径測定位置での少なくとも周方向3箇所の外径平均値の最大値と最小値の差異
Daは、全外径測定値の平均値)
【請求項3】
電子写真装置の帯電手段として用いる帯電部材が、請求項2に記載の帯電部材用被覆チューブを、芯金外周上の弾性体層に被覆して作製されたことを特徴とする帯電部材。
【請求項4】
電子写真装置の着脱自在な電子写真装置用カートリッジが、請求項3に記載の帯電部材を有することを特徴とする電子写真装置用カートリッジ。
【請求項5】
請求項4記載の電子写真装置用カートリッジを有することを特徴とする電子写真装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−101614(P2007−101614A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287859(P2005−287859)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】