説明

常温収縮型ゴムユニット

【課題】外部半導電層の形成が容易で形成に要する時間を短縮し、外部半導電層の肉厚変動を生じ難くすることにより、製造納期が短く、製造コストが安く、良品質の常温収縮型ゴムユニットを提供する。
【解決手段】解体可能な拡径部材上に拡径支持されており、エチレンプロピレンゴム(EPR)、シリコーンゴム(SR)等のゴム材を主体として形成される内部半導電層1と、補強絶縁層3と、外部半導電層11と、補強絶縁層3の両端側のストレスコーン部7、7と、外部半導電層11の両ストレスコーン部7、7の近傍に設けられ、外部半導電層11を長手方向に縁切りする縁切り部9、9とを備え、内部半導電層1、補強絶縁層3、外部半導電層11及びストレスコーン部7、7を略円筒状にモールド成形してワンピースに形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧CVケーブル等の電力ケーブルの絶縁接続部(IJ)に用いられる常温収縮型ゴムユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧CVケーブル等の絶縁接続部には、押出モールド型、プレハブ型、テープ巻きモールド型、テープ巻き型と様々な種類の構造が適用されている。これらに加えて、近年、ゴムモールド技術の著しい進歩により、ワンピースの常温収縮型ゴムユニットを用いる施工性に優れたワンピースジョイントが開発され、この適用が拡大されつつある。このジョイントに用いられる常温収縮型ゴムユニットは、図2に示すように、ゴム材を主体として形成される内部半導電層1と、補強絶縁層3と、外部半導電層5と、補強絶縁層3の両端側のストレスコーン部7、7と、補強絶縁層3の一方のストレスコーン部7(図示例は右側のストレスコーン部7)の近傍に設けられ、外部半導電層5を長手方向に縁切りする縁切り部(遮蔽部)9とを備え、内部半導電層1、補強絶縁層3、外部半導電層5及びストレスコーン部7、7を略円筒状にモールド成形してワンピースに形成されるものである。なお、補強絶縁層3の他方のストレスコーン部7は外部半導電層7の端部に一体に接続されている。
【0003】
この常温収縮型ゴムユニットは弾性を有し、その内径は、これが装着されるケーブル接続部分(図示せず)の外径よりも小さく形成され、予め工場等において解体可能な拡径部材(図示せず)上に拡径支持される。このゴムユニットを用いてケーブル絶縁接続部を形成する場合には、これを現場でケーブル接続部分の上に位置させ、拡径部材を解体して取り除くことにより縮径させてケーブル接続部分の上に装着することにより行う(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−324643号公報(発明の詳細な説明の項段落0018乃至段落0025、図1乃至図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の常温収縮型ゴムユニットでは、外部半導電層5の最もストレスが低くなる一方のストレスコーン部7(図示例は右側のストレスコーン部7)の近傍に縁切り部9が設けられるので、補強絶縁層3の外周面に形成される外部半導電層5の形状が縁切り部9側では薄肉になり、他方のストレスコーン部7側では厚肉になって複雑化する。
【0006】
このため、金型内に半導電性のゴム材を注入して補強絶縁層3の外周面に外部半導電層5をモールド成形する場合、金型内を流れるゴム材の速度が不均等(アンバランス)になって、ゴム材の流れの悪くなる部分が生じ、ゴム材の成形圧力の制御が複雑になり、外部半導電層5の成形が面倒になるほか、外部半導電層5の肉厚が変動する恐れがある。また、外部半導電層5の他方のストレスコーン部7側が厚肉になり、縁切り部9側よりも硬化し難くなるので、外部半導電層5の硬化に要する時間が長くなる。よって、ゴムユニットの製造コストが高くなるほか、品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、外部半導電層の形成が容易で形成に要する時間を短縮し、外部半導電層の肉厚変動を生じ難くすることにより、製造納期が短く、製造コストが安く、良品質の常温収縮型ゴムユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の常温収縮型ゴムユニットは、ゴム材を主体として形成される内部半導電層と、補強絶縁層と、外部半導電層と、ストレスコーン部とが一体化され、前記内部半導電層は補強絶縁層の中央部位の内周面に設けられ、前記ストレスコーン部は補強絶縁層の両端内周側に設けられ、前記外部半導電層は補強絶縁層の外周面に設けられてなる筒状の常温収縮型ゴムユニットであり、
さらに、装着されるケーブル接続部分の外径よりも小さい内径を有し、解体可能な拡径部材上に拡径支持された状態でケーブル接続部分の上に配置された後、拡径部材を解体して取り除くことにより縮径されてケーブル接続部分に装着される常温収縮型ゴムユニットであって、
両ストレスコーン部の近傍の補強絶縁層外周面を両端まで露出させることでストレスコーン部と外部半導電層を縁切りする縁切り部が設けられており、
これら両縁切り部において外部半導電層端側から補強絶縁層の外周面が当該常温収縮型ゴムユニットの軸線方向に平行に伸びており、かつ補強絶縁層の端が垂直に立ち上がっていることを特徴とするものである。
【0009】
このように、前記縁切り部が外部半導電層の両ストレスコーン部の近傍に設けられることにより、外部半導電層が補強絶縁層の外周面に薄肉、且つ、均一な厚さで筒状に形成され、外部半導電層の形状が単純化される。これにより、金型内に半導電性のゴム材を注入して補強絶縁層の外周面に外部半導電層をモールド成形する場合、金型内を流れるゴム材の速度がほぼ均一になり、ゴム材の流れが金型内で停滞するようなことがなく、ゴム材が金型内を円滑に流れ、ゴム材の成形圧力の制御が簡単になって、外部半導電層の形成が容易になるほか、外部半導電層の肉厚の変動が生じ難くなる。
【0010】
また、外部半導電層が薄肉で形状が単純化されることにより、外部半導電層が全周囲にわたり、均等、且つ、速やかに硬化して外部半導電層の硬化に要する時間が短縮される。よって、常温収縮型ゴムユニットを短納期で製造することが可能になり、その製造コストを低減させ、且つ、品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
電力ケーブルを絶縁接続するのに使用される常温収縮型ゴムユニットは、縁切り部の位置が線路条件等によってユーザから指定される場合があるが、本発明のように、縁切り部が外部半導電層の両ストレスコーン部の近傍に設けられている常温収縮型ゴムユニットを使用することにより、ユーザの指定に見合う常温収縮型ゴムユニットを新たに準備する必要がなく、手数が省けて、絶縁接続部形成の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の常温収縮型ゴムユニットの構成を示す断面図である。
【図2】従来の常温収縮型ゴムユニットの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1は本発明に係る常温収縮型ゴムユニットの構成を示す断面図である。なお、従来技術の常温収縮型ゴムユニットと同一構成のものには同一符号が付してある。
【0014】
本実施形態の常温収縮型ゴムユニットは、エチレンプロピレンゴム(EPR)、シリコーンゴム(SR)等のゴム材を主体として形成される内部半導電層1と、補強絶縁層3と、外部半導電層11と、補強絶縁層3の両端側のストレスコーン部7、7と、外部半導電層11の両ストレスコーン7部7、7の近傍に設けられ、外部半導電層5の両端側をストレスコーン部7、7と長手方向に縁切りする縁切り部9、9とを備え、内部半導電層1、補強絶縁層3、外部半導電層11及びストレスコーン部7、7を略円筒状にモールド成形してワンピースに形成されるものである。
【0015】
更に詳細に述べると、補強絶縁層3は、前記ゴム材をモールド成形することにより略円筒状に形成される。内部半導電層1は補強絶縁層3の中央部位の内周面に、カーボン等が混入された半導電性のゴム材をモールド成形することにより、内周面が露出するように埋設されて円筒状に形成される。外部半導電層11は補強絶縁層3の外周面に、カーボン等が混入された半導電性のゴム材をモールド成形することにより、薄肉円筒状に形成される。両ストレスコーン部7、7は補強絶縁層3の両端側に位置するように、カーボン等が混入された半導電性のゴム材をモールド成形することにより略円筒状に形成される。両縁切り部9、9は外部半導電層11の両ストレスコーン7部7、7の近傍に、ストレスコーン部7、7と長手方向に縁切りするように、補強絶縁層3の外周面に設けられる。
【0016】
これにより、外部半導電層11の形状が薄肉、且つ、均一な厚さになって単純化され、ゴム材の成形圧力の制御が簡単になって、外部半導電層11の形成が容易になるほか、外部半導電層11の肉厚の変動が生じ難くなる。また、外部半導電層11の硬化に要する時間が短縮される。
【0017】
この常温収縮型ゴムユニットは弾性を有し、その内径は、これが装着されるケーブル接続部分(図示せず)の外径よりも小さく形成され、予め工場等において解体可能な拡径部材(図示せず)上に拡径支持される。このゴムユニットを用いてケーブル絶縁接続部を形成する場合には、これを現場でケーブル接続部分の上に位置させ、拡径部材を解体して取り除くことにより縮径させてケーブル接続部分の上に装着することにより行う。ゴムユニットをケーブル接続部分に装着したときの嵌合面圧は、ゴムユニットを拡径することにより生じる弾性により確保される。
【0018】
この常温収縮型ゴムユニットを製造する場合には種々の方法があるが、一例を挙げると、内部半導電層1とストレスコーン部7、7は、予め、それぞれ専用の金型と芯金(マンドレル)を用い、モールド成形することにより形成する。
【0019】
次に、この内部半導電層1と両ストレスコーン部7、7を補強絶縁層3を形成する芯金に中央に内部半導電層1が、両側にストレスコーン部7、7が所定間隔を隔てて配置されるように挿着し、この芯金を補強絶縁層形成用の金型内に保持させ、内部半導電層1及び両ストレスコーン部7、7を覆うように補強絶縁層3をモールド成形して形成する。
【0020】
次に、上記補強絶縁層3が外周面に形成されたゴムユニットコアを該芯金と共に、又は、該芯金を外部半導電層形成用の芯金と交換してこれに挿着した後、外部半導電層形成用の金型内に保持させ、補強絶縁層3の外周面に、ストレスコーン部77の近傍に縁切り部9、9が設けられるように、外部半導電層11をモールド成形して形成する。この際、外部半導電層11を形成するための半導電性のゴム材がストレスコーン部7、7の方に流れ込んでストレスコーン部7、7の外周面に被覆されることがないように、例えば、図1に一点鎖線で示すように、該金型13の縁切り部9が設けられる部位に、内側に突出する環状ストッパ部材15を設けておくことが望ましい。
【0021】
以上説明したように、本発明は、ゴム材を主体として形成される内部半導電層と、補強絶縁層と、外部半導電層と、補強絶縁層の両端側のストレスコーン部と、外部半導電層のストレスコーン部の近傍に設けられ、外部半導電層を長手方向に縁切りする縁切り部とを備えた筒状の常温収縮型ゴムユニットにおいて、前記縁切り部が外部半導電層の両ストレスコーン部の近傍に設けられるので、外部半導電層が補強絶縁層の外周面に薄肉、且つ、均一な厚さで筒状に形成され、外部半導電層の形状が単純化される。
【0022】
これにより、金型内に半導電性のゴム材を注入して補強絶縁層の外周面に外部半導電層をモールド成形する場合、金型内を流れるゴム材の速度がほぼ均一になり、ゴム材の流れが金型内で停滞するようなことがなく、ゴム材が金型内を円滑に流れ、ゴム材の成形圧力の制御が簡単になって、外部半導電層の形成が容易になるほか、外部半導電層の肉厚の変動が生じ難くなる。
【0023】
また、外部半導電層が薄肉で形状が単純化されることにより、外部半導電層が全周囲にわたり、均等、且つ、速やかに硬化して外部半導電層の硬化に要する時間が短縮される。よって、常温収縮型ゴムユニットを短納期で製造することが可能になり、その製造コストを低減させ、且つ、品質を向上させることができる。
【0024】
更に、異径の電力ケーブルを絶縁接続するのに使用される常温収縮型ゴムユニットは、縁切り部の位置が線路条件等によってユーザから指定される場合があるが、本発明のように、縁切り部が外部半導電層の両ストレスコーン部の近傍に設けられている常温収縮型ゴムユニットを使用することにより、ユーザの指定に見合う常温収縮型ゴムユニットを新たに準備する必要がなく、手数が省けて、絶縁接続部形成の施工性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 内部半導電層
3 補強絶縁層
5 外部半導電層
7 ストレスコーン部
9 縁切り部
11 外部半導電層
13 金型
15 環状ストッパ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材を主体として形成される内部半導電層と、補強絶縁層と、外部半導電層と、ストレスコーン部とが一体化され、前記内部半導電層は補強絶縁層の中央部位の内周面に設けられ、前記ストレスコーン部は補強絶縁層の両端内周側に設けられ、前記外部半導電層は補強絶縁層の外周面に設けられてなる筒状の常温収縮型ゴムユニットであり、
さらに、装着されるケーブル接続部分の外径よりも小さい内径を有し、解体可能な拡径部材上に拡径支持された状態でケーブル接続部分の上に配置された後、拡径部材を解体して取り除くことにより縮径されてケーブル接続部分に装着される常温収縮型ゴムユニットであって、
両ストレスコーン部の近傍の補強絶縁層外周面を両端まで露出させることでストレスコーン部と外部半導電層を縁切りする縁切り部が設けられており、
これら両縁切り部において外部半導電層端側から補強絶縁層の外周面が当該常温収縮型ゴムユニットの軸線方向に平行に伸びており、かつ補強絶縁層の端が垂直に立ち上がっていることを特徴とする常温収縮型ゴムユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−119291(P2010−119291A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29905(P2010−29905)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2006−146832(P2006−146832)の分割
【原出願日】平成15年4月18日(2003.4.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】