説明

平版印刷インキおよび印刷物

【課題】長時間の印刷においても紙剥けの低減が出来、光沢感のある高品質の印刷物を得ることが出来る、平版印刷インキ用樹脂およびそれを含有させた平版印刷インキの提供。
【解決手段】ロジン類(a)、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)および再生処理した植物油(c)を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする平版印刷インキであり、好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂(A)が、重量固形分比で、ロジン類(a)5〜75重量%、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)15〜85重量%および再生処理した植物油(c)5〜30重量%を反応させてなることを特徴する平版印刷インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍、チラシ、カタログ、新聞等の印刷物に使用される平版印刷インキ(以下、「インキ」と略す。)に使用する樹脂に関することであり、特に長時間の印刷において紙剥けを低減させ、高光沢な印刷物が得られることを特徴とするロジン変性フェノール樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平版印刷インキは5〜100Pa・sの比較的粘度の高いインキである。平版印刷機の機構は、インキが印刷機のインキ壺から複数のローラーを経由して版面の画線部に供給され、湿し水を使用する平版印刷では非画線部に湿し水が供給され、湿し水無し平版印刷では非画線部がシリコン層でできておりインキを反発し紙上に画像が形成される。
【0003】
特に、湿し水を使用した平版印刷においてはインキと湿し水との乳化バランスが重要であり、インキの乳化量が高過ぎると非画線部にもインキが着肉し易くなり汚れが発生し、乳化量が少ないと絵柄の少ない印刷時には、インキ表面に湿し水が吐き出される為、ロール間のインキ転移や用紙へのインキ着肉性が悪くなり、安定して印刷する事が難しくなる。
【0004】
さらに近年では、印刷時の省人、省力化、自動化、高速化の要求が高まってきており、特に印刷スピードは益々高速化してきている。そして、様々な印刷条件下に於いてトラブルレスで長時間安定して高品位な印刷物が得られる印刷用インキが望まれており、高品位印刷物の条件として高光沢インキの要望がある。
【0005】
従来、印刷物の光沢を向上させる方法としては、石油系溶剤や植物油などを増やし、インキの粘度を下げて印刷表面の平滑性を向上させたり、低分子高溶解樹脂や石油樹脂などを使用してインキ系内の樹脂成分を増やすことによって、印刷紙へのインキの浸透を極力抑制してインキ被膜厚を維持させるなどの方法が用いられてきた。
【0006】
しかしながら、インキ粘度を下げるために石油系溶剤や植物油を増やすと、インキのタック値が低下し、印刷機上でのローラー間転移が悪化する傾向にある。また、低分子高溶解樹脂や石油樹脂などを使用してインキ系内の樹脂成分を増やす処方は、インキのタック値が上がりすぎ、紙剥けが発生したり、乳化の制御が困難となりインキの印刷適性が阻害され、印刷適性を維持しながら印刷物の光沢を向上させるには限界があった。
【0007】
上記の方法以外に、インキ系内の樹脂成分に対する溶解性が高い部類の石油系溶剤を用いることでインキ系内の相溶性を上げてインキの低粘度化や樹脂成分の高濃度化を図る方法もある。しかしながら、上記の石油系溶剤の樹脂に対する溶解性では光沢効果が十分に得られない。また、上記の石油系溶剤の多くは、人体への悪影響の大きい芳香族炭化水素が主成分であり、印刷において、印刷作業環境や大気汚染などの環境負荷の要因となることから、最近では使用を見合わせている。
【0008】
また、インキ中に脂肪酸エステルを含有させることで、光沢の優れたオフセットインキ組成物が開発されている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの方法では、脂肪酸エステルの紙への浸透制御が困難であり、印刷時に使用される用紙に制限が加えられたり、インキの乾燥性の点で十分満足できない状況がある。
【0009】
インキに使用されるロジン変性フェノール樹脂についての改良も行われてきた。特許文献3では、ロジンと動植物油脂肪酸との混合物をモノアルコールで部分エステル化したモノエステル体に、多価アルコールおよびフェノールホルムアルデヒド初期縮合物を反応させる方法が公開されている。しかしながら、この方法では、エステル化にモノアルコールを使用することで、ロジンおよび動植物油脂肪酸とのエステル結合による架橋が行われず、分子量制御が困難となる。
【0010】
また、特許文献4では、レゾ−ル型フェノール類・ホルムアルデヒド初期縮合物、ヨウ素価100以上の植物油、ロジン、多価アルコ−ルなどを反応させて得られる油変性ロジンフェノール樹脂が開示されており、特許文献5では、フェノール類、ホルムアルデヒド、ヨウ素価100以上の動植物油、ロジン、1価アルコ−ルおよび/または多価アルコ−ルなどを反応させて得られる油変性ロジンフェノール樹脂が開示されている。しかしながら、食用に用いられるバージンの植物油を用いることは、環境対応の観点から好ましくない。
【0011】
また、近年の印刷スピードの高速化に伴い、インキのタック値が上昇し、新聞紙・コミック・週刊誌等の紙の強度が弱い低級紙を用いたオフセット印刷では、用紙から紙繊維が脱落(紙剥け)しやすい状況にある。用紙から脱落した紙繊維は、ブランケット、インキローラー、水付けローラーに堆積し、インキ転移の阻害や汚れの発生といった問題を引き起こす。
【0012】
従来、平版印刷用インキにおいて、紙剥けを防ぐ方法として、主としてタック値の低減が行われてきた。タック値低減の方法として様々な改良がされており、炭酸カルシウム、有機ベントナイト、二酸化珪素等の体質顔料を通常量より多く練りこみ、タック値を下げる検討がされているが、低タック化には効果があるものの、インキの流動性の低下、転移性の劣化による濃度ムラを招くおそれがある。また、体質顔料は一般に硬くて微分散が難しく、インキ中に粗大粒子が残る場合があり、粗大粒子が、印刷機の版、ブランケット厚胴、ガイドロール等に悪影響を与え、版磨耗の促進、堆積することによる画線かすれ、こすれ汚れ等の印刷不良の原因となる。
【0013】
ロジン変性フェノール樹脂に用いられるフェノール樹脂は、レゾール型とノボラック型の2つの種類がある。アルカリ性触媒を用いることにより、ロジンへの反応性のメチロール基を有するレゾール型フェノール樹脂が得られ、酸性触媒を用いることにより、反応性基を有しないノボラック型フェノール樹脂が得られるものである。ロジン変性フェノール樹脂の石油系溶剤への溶解性を向上させる試みとして、フェノール類のノボラック化を先ず行ない、次いでレゾール化する方法で製造されたノボラック・レゾール型フェノール樹脂を用いてロジン変性フェノール樹脂を製造する方法が、特許文献5に開示されている。当該特許文献の実施例では、ロジン100重量部に対して、フェノール樹脂150から162.5重量部のフェノール樹脂を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−313482公報
【特許文献2】特開2007−169574号公報
【特許文献3】特許4142470号公報
【特許文献4】特開昭57−2319号公報
【特許文献5】特公昭57−9730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
高速印刷時においても、紙剥けを低減させ、光沢感のある高品質の印刷物を得ることが出来る、平版印刷インキ用樹脂およびそれを含有させた平版印刷インキの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために誠意研究した結果、以下に定める素材により作製したロジン変性フェノール樹脂を含有させた平版印刷インキは、インキの流動性および印刷物の光沢性に優れており、さらに紙剥けを低減可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第1の発明は、
ロジン類(a)、
フェノール類およびアルデヒド類を、酸性触媒下でノボラック化反応させた後に、さ らに、塩基性触媒下でレゾール化反応させたノボラック・レゾール型フェノール樹脂 (b)
ならびに
再生処理した植物油(c)
を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする平版印刷インキに関するものである。
【0018】
さらに、本発明の第2の発明は、
ロジン変性フェノール樹脂(A)が、固形分重量比で、
ロジン類(a)5〜75重量%、
ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)15〜85重量%、
および
再生処理した植物油(c)5〜30重量%
を反応させてなることを特徴とする請求項1記載の平版印刷インキに関するものである。
【0019】
また、本発明の第3の発明は、
ノボラック・レゾール樹脂(b)が、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類を0.2〜1モルを酸性触媒下でノボラック化反応させた後に、さらにアルデヒド類0.2〜3モルを塩基性触媒下でレゾール化反応させたノボラック・レゾール樹脂(b)であることを特徴とする請求項1または2記載の平版印刷インキに関するものである。
【0020】
さらに、本発明の第4の発明は、
ロジン変性フェノール樹脂(A)が、さらに石油樹脂(d)を5〜30重量%反応させてなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の平版印刷インキに関するものである。
【0021】
また、本発明の第5の発明は、
再生処理した植物油(c)が、飲食物の製造に用いた植物油を再生処理した植物油であることを特徴とする1ないし4いずれか記載の平版印刷インキに関するものである。
【0022】
また、本発明の第6の発明は、
請求項1ないし5いずれか記載の平版印刷インキを印刷して得られた印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、再生処理した植物油およびノボラック・レゾール型樹脂を反応してなるロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキを使用することで、環境対策がなされ、且つ、紙向けを低減した光沢感のある高品質の印刷物を得ることを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明のロジン類(a)について説明する。
【0025】
本発明のロジン類(a)としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン、該天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどが上げられる。なお、不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、またはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)とは、フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒下でノボラック化反応させた後に、さらに、塩基性触媒下でレゾール化反応させて得られるフェノール樹脂である。通常、ロジン変性フェノール樹脂は、フェノール樹脂を多用することにより、樹脂の溶解性が向上するが、レゾール型のフェノール樹脂は反応性が高いため、分子量の制御が困難となりやすい。一方、ノボラック型フェノール樹脂は反応性基が残存しないため、ロジン類との反応による樹脂化が困難である。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の両末端に反応性のメチロール基を導入した構造であるため、高溶解性を維持しながら高分子量の樹脂を得ることが可能となるものである。そのため乳化特性等の印刷適性、および印刷物の光沢等の皮膜特性に優れたインキが得られやすくなるものである。さらに、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂に比べ、ベンゼン環密度が高く、樹脂の凝集力が向上し、印刷時に用紙からの紙の離脱を抑制できる。ノボラック化反応で用いられる酸性触媒としては、硫酸、塩酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。フェノール類1モルに対してアルデヒド類0.2〜1モルをノボラック反応させることが好ましい。次いで、レゾール化反応させるときの塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物触媒、および有機アミン等を用いることができる。フェノール類1モルに対して、追加するアルデヒド類は0.2〜3モルが好ましい。ノボラック化およびレゾール化反応は、常圧または加圧下、60〜120℃で行なわれる。フェノール類としては、フェノール水酸基を持つすべての芳香族化合物が使用でき、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等が挙げられるが、p−アルキル置換したフェノール類が好ましい。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0027】
本発明における再生処理した植物油(c)とは、回収、再生処理された植物油のことである。再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3重量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
再生植物油に用いられるバージンの植物油とは、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリライドである。例として、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が挙げられる。本発明において、さらに好適な植物油を挙げるとすれば、そのヨウ素価が少なくとも90以上である植物油が好ましく、さらにヨウ素価が100以上の植物油がより好ましい。ヨウ素価を100以上とすることで、植物油分子中の反応点が増し、高分子量化に有利となる。
【0029】
本発明において使用される石油樹脂(d)の成分としては、ナフサを分解した際の炭素数の多い不飽和化合物を重合したものであり、C5留分を原料とする脂肪族系、C9留分を原料とする芳香族系、シクロペンタジエン(ジシクロペンタジエン)を原料とする脂環族系、さらにC5留分とC9留分を原料とした共重合系があり、重量平均分子量が500〜100000 程度のものが一般的である。C5留分としては、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ペンテン類、ペンタン類等、C9留分としては、ビニルトルエン、インデン、ジシクロペンタジエン等が挙げられ、それぞれ触媒の存在下あるいは無触媒で熱重合して得られるものである。触媒としてはフリーデルクラフト型のルイス酸触媒、例えば三フッ化ホウ素およびそのフェノール、エーテル、酢酸等との錯体が通常使用される。アリルアルコール、酢酸ビニルエステル等を共重合して得ることも可能であるし、得られた石油樹脂に無水マレイン酸、アクリル酸等を付加することも可能である。
【0030】
上記石油樹脂は市販のものを適宜使用することが可能であり、脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンA100、クイントンB170、クイントンK100、クイントンM100、クイントンR100、クイントンC200S、丸善石油化学社製マルカレッツT−100AS、マルカレッツR−100AS、芳香族系石油樹脂としては、JX日鉱日石エネルギー社製ネオポリマーL−90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマーE−100、ネオポリマーE−130、ネオポリマー130S、ネオポリマーS、東ソー社製ペトコールLX、ペトコールLX−HS、ペトコール100T、ペトコール120、ペトコール120HS、ペトコール130、ペトコール140、ペトコール140HM、ペトコール140HM5、ペトコール150、ペトコール150AS、共重合系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンD100、クイントンN180、クイントンP195N、クイントンS100、クイントンS195、クイントンU185、クイントンG100B、クイントンG115、クイントンD200、クイントンE200SN、クイントンN295、東ソー社製ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック90、ペトロタック100、ペトロタック100V、ペトロタック90HM、DCPD系石油樹脂としては、丸善石油化学社製マルカレッツM−890A、マルカレッツM−845A、日本ゼオン社製クイントン1325、クイントン1345、クイントン1500、クイントン1525L、クイントン1700等が挙げられる。
【0031】
また、本発明では、ロジン変性フェノール樹脂(A)の分子量を大きくするために、ポリオールを使用することが出来る。ポリオールの水酸基はロジン類(a)のカルボン酸とエステル化反応し、高分子量化する。ポリオールはポリオール中の水酸基がロジン類(a)中のカルボン酸基1モルに対して0.1〜1.5モル、好ましくは0.3〜1.2モルの範囲が反応制御上好ましい。
【0032】
ポリオールとしては、特に限定されないが、2価アルコールとして、直鎖状アルキレン2価アルコールである1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール等が、分岐状アルキレン2価アルコールである2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ジメチルペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等が、環状アルキレン2価アルコールである1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等、さらにポリエチレングリコール(n=2〜20)、ポリプロピレングリコール(n=2〜20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2〜20)等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を例示することができる。
【0033】
さらに、3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロ−ルプロパン、ジペンタエリスリト−ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等が例示される。
【0034】
上記エステル化反応は、常法に従って行うことができる。通常150℃から300℃の範囲で行われるが、使用する化合物の沸点および反応性を考慮して決定することができる。また、これらの反応においては、必要に応じて触媒を用いることが可能である。触媒としてはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、硫酸、塩酸等の鉱酸、トリフルオロメチル硫酸、トリフルオロメチル酢酸等が例示できる。さらに、テトラブチルジルコネート、テトライソブチルチタネート等の金属錯体、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属塩触媒等も使用可能である。これら触媒は、全樹脂中0.01〜5重量%の範囲で通常使用される。触媒使用による樹脂の着色を抑制するために、次亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィン等を併用することもある。
【0035】
本発明でのロジン変性フェノール樹脂(A)は、重量固形分比で、ロジン類(a)5〜75重量%が好ましく、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)15〜85重量%が好ましい。ロジン類(a)が5重量%未満で、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)が85重量%を上回ると、合成樹脂がゲル化し易くなり反応制御が困難となる。また、ロジン類(a)が75重量%を上回り、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)が15重量%未満であると、インキに必要な粘度および弾性を得られなくなる。また、さらにより好ましくはロジン類(a)が20〜40重量%で、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)が40〜70重量%である。ロジンの重量固形分比率を低くすることで、ロジンの産地による樹脂、インキ性状のブレが少なく、より効果を発現し易い。
【0036】
再生処理した植物油(c)については、重量固形分比で5〜30重量%が好ましく、より好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満であると、印刷物の光沢向上の効果が得られず、30重量%を上回ると、インキに必要な粘度および弾性を得ることができない。
【0037】
本発明では、インキの流動性を向上させるため、石油樹脂(d)を使用することができる。本発明で使用される石油樹脂(d)は、重量固形分比で5〜30重量%が好ましく、より好ましくは7〜30重量%である。5重量%未満であると、インキに十分な流動性が得られなくなり、30重量%を上回ると、インキに必要な粘度および弾性を得ることができない。
【0038】
本発明のロジン変性フェノール樹脂の製造方法としては、例えば反応釜にロジン類(a)、再生処理した植物油(c)、石油樹脂(d)を120〜260℃で加熱溶融し、そこにノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)を添加し、180〜300℃で1〜30時間反応させる。その後必要に応じてポリオール、触媒を添加し、150〜300℃で1〜30時間ロジン類とエステル化反応させる方法や、ロジン類(a)、再生処理した植物油(c)、石油樹脂(d)を120〜260℃で加熱溶融し、ポリオール、触媒を添加し、150〜300℃で1〜30時間ロジン類とエステル化反応させ、180〜260℃でノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)を添加し、180〜300℃で1〜20時間反応させる方法がある。
【0039】
上記の方法によって得られたロジン変性フェノール樹脂(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)は5,000〜300,000程度のものが好ましく、より好ましくは10,000〜150,000である。5,000未満であるとインキの粘度が低く、ミスチング等が発生し易くなり、300,000以上であると樹脂の溶解性が悪くなる為、インキの流動性が劣化し、光沢等が悪くなる。樹脂の溶解性については、0号ソルベントH(JX日鉱日石エネルギー社)を用い、樹脂/0号ソルベントH=2g/18gを200℃で加熱溶解させ、温度を徐々に下げ、白濁する温度を測定する。白濁する温度が低い方が樹脂と溶剤の相溶性が良好であり、30〜170℃程度のものが好ましい。
【0040】
こうして得られたロジン変性フェノール樹脂(A)に、必要に応じて植物油類、インキ用石油系溶剤、ゲル化剤を加えて加熱溶解させて平版印刷インキ用ワニスを製造することができる。
【0041】
平版印刷インキ用ワニスに用いられる植物油類としては、各種公知のものを限定無く使用することができる。具体的には例えば、亜麻仁油、桐油、大豆油、サフラワー油、脱水ひまし油、または、これら植物油の熱重合油、酸化重合油がある。また、亜麻仁油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、亜麻仁油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、亜麻仁油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、亜麻仁油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチル、亜麻仁油脂肪酸イソブチル、大豆油脂肪酸イソブチル等といった、前述の植物油類のモノエステルが上げられる。これらは単独で用いても2種類以上を適宜併用しても良い。さらに、前述の再生処理した植物油(c)を植物油類として使用することができる。
【0042】
平版印刷インキ用ワニスに用いられる平版印刷インキ用石油系溶剤としては、従来公知の印刷インキ用溶剤を特に限定無く使用することができる。具体的には例えば、JX日鉱日石エネルギー社製の0号ソルベント、4号ソルベント、5号ソルベント、6号ソルベント、7号ソルベント、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号等があげられる。これらは単独で用いても、2種類以上を適宜併用しても良い。特に環境対策として、芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下であるアロマフリーソルベントを使用することが好ましい。
【0043】
前記ゲル化剤としては、例えば、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムトリアセチルアセテートなどの各種公知な物を使用できる。
【0044】
平版印刷インキ用ワニスのロジン変性フェノール樹脂(A)、植物油類、石油系溶剤、ゲル化剤の組成比率としては、用途に応じて適宜それぞれ適宜決定すればよいが、通常ロジン変性フェノール樹脂の割合は5〜60重量%程度、植物油類の割合は、0〜80重量%程度、石油系溶剤の割合は、0〜80重量%程度、ゲル化剤の割合は0〜4重量%程度、好ましくは0〜3%程度である。また、ロジン変性フェノール樹脂(A)と、一般的に平版印刷インキに用いられるロジン変性フェノール樹脂(本発明以外の方法により製造したものあるいは上記重量平均分子量以外のもの)や、石油樹脂等を併用することもできる。
【0045】
この平版印刷インキワニス、顔料、石油系溶剤および添加剤により平版印刷インキが製造される。本発明で使用される顔料としては、酸化チタンなどの白顔料、ミネラルファーネスイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS,ハンザイエローG,キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG,タートラジンレーキなどの黄顔料、インダスレンブリリアントオレンジRK、ピラゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどの橙色顔料、パーマネントレッド4R、リオノールレッド、ピラロゾンレッド、ウオッチングレッツドカルシウム塩、レーキレッドD,ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどの赤色顔料、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどの紫色顔料、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどの青色顔料、ピグメントグリーンB、マラカイドグリーンレーキ、ファイナスイエリーグリーンGなどの緑色顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラックなどの黒色顔料などが挙げられる。
【0046】
また、平版印刷インキ中への、その他添加剤として、耐摩擦、ブロッキング防止、スベリ、スリキズ防止を目的とする各種添加剤を使用することができ、必要に応じて、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、等を添加してもよい。
【0047】
本発明の平版印刷インキの組成の一例としては、
・本発明により製造されるロジン変性フェノール樹脂(A) 5〜60重量%
・植物油類(再生処理した植物油(c)を含む) 0〜80重量%
・石油系溶剤 0〜80重量%
・ゲル化剤 0〜4重量%
・顔料 5〜40重量% ・その他の樹脂 0〜40重量%
・その他添加剤 1〜5重量%
などが好ましい組成として挙げられる。その他の樹脂とは、一般的に平版印刷インキ組成物に用いられるロジン変性フェノール樹脂あるいは石油系樹脂あるいはアルキッド樹脂を表す。VOCフリータイプのインキとして使用する際には、上記組成において、石油形溶剤を0重量%とする。この際、必要に応じて脂肪酸モノエステル化合物を0〜60重量%含有しても差し支えない。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明において、特に断らない限り、「部」は、「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
また、本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミネイションクロマトグラフィ(HLC−8220。)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
さらに、本発明において、特に断らない限り、「分子量」とは、重量平均分子量を示す。
【0049】
(フェノール樹脂製造例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラt-ブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド65部、p−トルエンスルホン酸0.5部、キシレン392部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、80℃5時間反応させた。50℃に冷却後、92%パラホルムアルデヒド391部、水酸化カルシウム10部を仕込み、再度昇温し、90℃5時間反応させた。その後キシレン404部、水道水230部を加え、硫酸10.6部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のノボラック・レゾール型フェノール樹脂Aを得た。
【0050】
(フェノール樹脂製造例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラt-ブチルフェノール425部、パラオクチルフェノール584部、92%パラホルムアルデヒド92部、p−トルエンスルホン酸0.5部、キシレン405部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、80℃5時間反応させた。50℃に冷却後、92%パラホルムアルデヒド370部、水酸化カルシウム10部を仕込み、再度昇温し、90℃5時間反応させた。その後キシレン400部、水道水250部を加え、硫酸10.7部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のノボラック・レゾール型フェノール樹脂Bを得た。
【0051】
(フェノール樹脂製造例3)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラオクチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド127部、p−トルエンスルホン酸0.5部、キシレン413部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、80℃5時間反応させた。50℃に冷却後、92%パラホルムアルデヒド316部、水酸化カルシウム10部を仕込み、再度昇温し、90℃5時間反応させた。その後キシレン383部、水道水230部を加え、硫酸10.6部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のノボラック・レゾール型フェノール樹脂Cを得た。
【0052】
(フェノール樹脂製造例4)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラオクチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド48部、p−トルエンスルホン酸0.5部、キシレン386部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、80℃5時間反応させた。50℃に冷却後、92%パラホルムアルデヒド396部、水酸化カルシウム10部を仕込み、再度昇温し、80℃3時間反応させた。その後キシレン405部、水道水230部を加え、硫酸10.6部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のノボラック・レゾール型フェノール樹脂Dを得た。
【0053】
(フェノール樹脂の製造例5)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラt-ブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド391部、水酸化カルシウム10部、キシレン503部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、90℃5時間反応させた。その後キシレン404部、水道水250部を加え、硫酸10.6部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のレゾール型フェノール樹脂Eを得た。
【0054】
(フェノール樹脂の製造例6)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラt-ブチルフェノール425部、パラオクチルフェノール584部、92%パラホルムアルデヒド370部、水酸化カルシウム10部、キシレン500部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、90℃5時間反応させた。その後キシレン400部、水道水250部を加え、硫酸10.7部を添加した。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分60%のレゾール型フェノール樹脂Fを得た。
【0055】
(樹脂合成の実施例1)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン100部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油50部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)240部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂A1000部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン10部を仕込み9時間反応させた。重量平均分子量(Mw)60000、酸価8の樹脂1を得た。
【0056】
(樹脂合成の実施例2)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン500部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂B583部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み8時間反応させた。重量平均分子量(Mw)85000、酸価14の樹脂2を得た。
【0057】
(樹脂合成の実施例3)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン400部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油250部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂A500部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み10時間反応させた。重量平均分子量(Mw)98000、酸価12の樹脂3を得た。
【0058】
(樹脂合成の実施例4)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン500部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)50部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂C500部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み12時間反応させた。重量平均分子量(Mw)45000、酸価16の樹脂4を得た。
【0059】
(樹脂合成の実施例5)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン500部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)150部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂D333部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み14時間反応させた。重量平均分子量(Mw)54000、酸価14の樹脂5を得た。
【0060】
(樹脂合成の実施例6)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン360部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)300部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂C333部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン40部を仕込み14時間反応させた。重量平均分子量(Mw)36000、酸価15の樹脂6を得た。
【0061】
(樹脂合成の実施例7)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン700部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油50部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂D333部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み13時間反応させた。重量平均分子量(Mw)28000、酸価13の樹脂7を得た。
【0062】
(樹脂合成の実施例8)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン500部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)150部を添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂A333部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でペンタエリスリトール50部を仕込み13時間反応させた。重量平均分子量(Mw)68000、酸価12の樹脂8を得た。
【0063】
(樹脂合成の比較例A)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン640部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂B500部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン60部を仕込み17時間反応させた。重量平均分子量(Mw)64000、酸価10の樹脂Aを得た。
【0064】
(樹脂合成の比較例B)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン580部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂C600部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン60部を仕込み15時間反応させた。重量平均分子量(Mw)70000、酸価16の樹脂Bを得た。
【0065】
(樹脂合成の比較例C)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン520部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)を100部添加した。ノボラック・レゾール型フェノール樹脂D533部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン60部を仕込み13時間反応させた。重量平均分子量(Mw)46000、酸価17の樹脂Cを得た。
【0066】
(樹脂合成の比較例D)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン500部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油100部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)を100部添加した。レゾール型フェノール樹脂E417部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン50部を仕込み15時間反応させた。重量平均分子量(Mw)78000、酸価12の樹脂D得た。
【0067】
(樹脂合成の比較例E)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン400部を窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、(株)丸正製再生植物油150部、石油樹脂「ペトコール120(商品名)」(東ソー(株)製:重量平均分子量1700)を90部添加した。レゾール型フェノール樹脂F500部(固形分60%)を200℃で5時間かけて滴下後、キシレンを除去しながら250℃に昇温させ、250℃でグリセリン60部を仕込み17時間反応させた。重量平均分子量(Mw)90000、酸価12の樹脂E得た。
【0068】
樹脂合成の樹脂1〜8、樹脂A〜Eのロジン変性フェノール樹脂の固形分重量%での配合組成、並びに樹脂の性状である重量平均分子量および酸価を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
<ワニスの実施例、比較例>
撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き4つ口フラスコに、それぞれ、樹脂合成の実施例1〜8および比較例A〜Eで得られたロジン変性フェノール樹脂(樹脂1〜8、樹脂A〜E)、大豆油、石油系溶剤(JX日鉱日石エネルギー社製AFソルベント7)、ゲル化剤(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を表2のような配合組成で仕込み、窒素ガスを吹き込みながら190℃にて1時間加熱撹拌してワニス(ワニス1〜8、ワニスA〜E)を製造した。
【0071】
【表2】

【0072】
<平版印刷インキの実施例、比較例>
前記方法で得られたワニス1〜8、ワニスA〜Eのそれぞれと、カーボン顔料三菱カーボンMA7(三菱化学製)と、石油系溶剤(JX日鉱日石エネルギー社製AFソルベント7)とを、表3の配合組成にて、常法に従い三本ロールを用いて練肉分散し、実施例1〜8、比較例A〜Eのインキを得た。
【0073】
【表3】

【0074】
実施例および比較例で得られた平版印刷インキについて、下記の方法で光沢値と流動性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0075】
<光沢値の評価>
光沢値は、プルーフバウ展色機にて、三菱製紙社製パールコートに同一濃度に展色し、光沢計グロスメーターモデルGM−26((株)村上色彩技術研究所製)にて60°光沢を測定した。数値が高い程、光沢が良いことを表す。
(評価基準) ◎:60以上、○:50以上〜60未満、×:50未満
【0076】
<流動性の測定方法>
2.1ccを半球状の窪みのついた金属板にインキを入れ、15分間静置させた後、60度に傾け10分間で流れた長さを測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。値が高いほどインキのしまりが少なく、流動性が良好であることを示す。
(評価基準)◎:80mm以上、○:70mm以上〜80mm未満、×:70mm未満
【0077】
<オフ輪印刷紙剥け試験評価>
三菱BT2−800NEOオフ輪印刷機(三菱重工社製)にて800rpmで用紙をNPIコート紙66.5kg(日本製紙社製)として各インキ2万枚の印刷試験を行い、ブランケット上への用紙繊維の堆積状況を比較した。評価確認は、印刷終了後のブランケットにセロハンテープを貼り付け、剥がした時の用紙繊維のセロハンテープへの付着の有無を比較した。湿し水はアクワマジックNS(東洋インキ製)1.5%の水道水を用いて行った。
(評価基準)○:用紙繊維付着なし、×:用紙繊維付着あり
【0078】
【表4】

【0079】
表4が示すように、ロジン類(a)、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)および再生植物油(c)を反応させて得られたロジン変性フェノール樹脂を含有する実施例1〜8の平版印刷インキは、紙剥けが発生せず、光沢が良好であった。さらに、石油樹脂を5〜30重量%反応させたロジン変性フェノール樹脂を含有する実施例1、4〜6、8は流動性が良好であった。一方、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)を含有し、且つ、再生植物油を含有しない比較例A〜Cは、紙剥けは発生しなかったが、光沢が不良であった。また、ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)の替わりにレゾール型フェノール樹脂を含有した比較例D、Eは、紙剥けが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係わる、平版印刷インキ用樹脂は、インキに含有させることで、印刷時の紙剥けを低減でき、光沢に優れた印刷物を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(a)、
フェノール類およびアルデヒド類を、酸性触媒下でノボラック化反応させた後に、さ らに、塩基性触媒下でレゾール化反応させたノボラック・レゾール型フェノール樹 脂(b)
ならびに
再生処理した植物油(c)
を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする平版印刷インキ。
【請求項2】
ロジン変性フェノール樹脂(A)が、固形分重量比で、
ロジン類(a)5〜75重量%、
ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)15〜85重量%、
および
再生処理した植物油(c)5〜30重量%
を反応させてなることを特徴とする請求項1記載の平版印刷インキ。
【請求項3】
ノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)が、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類を0.2〜1モルを酸性触媒下でノボラック化反応させた後に、さらにアルデヒド類0.2〜3モルを塩基性触媒下でレゾール化反応させたノボラック・レゾール型フェノール樹脂(b)であることを特徴とする請求項1または2記載の平版印刷インキ。
【請求項4】
ロジン変性フェノール樹脂(A)が、さらに石油樹脂(d)を5〜30重量%反応させてなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の平版印刷インキ。
【請求項5】
再生処理した植物油(c)が、飲食物の製造に用いた植物油を再生処理した植物油であることを特徴とする1ないし4いずれか記載の平版印刷インキ。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の平版印刷インキを印刷して得られた印刷物。

【公開番号】特開2013−23617(P2013−23617A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160951(P2011−160951)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】