説明

平版印刷版の作製方法

【課題】比較的低pHのアルカリ現像液を使用した場合であっても、現像性に優れ、経時的な現像カスの発生が抑制された平版印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、および(B)赤外線吸収剤を含む下層と、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂、および(D)ポリオルガノシロキサンを含む上層と、を有する画像記録層を備えるポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、画像露光したポジ型平版印刷版原版を、アニオン性界面活性剤を含有するpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を、この順で含む平版印刷版の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の作製方法に関するものであり、特に、処理性に優れた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と印刷インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(感光層、画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を介して画像様の露光を行う露光工程の後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解除去する現像工程を実施し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
このように、従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する現像工程を必要とするが、環境および安全上の観点から、現像に用いるアルカリ水溶液として、より中性域に近い水溶液を用いたり、現像工程における廃液を減少させたりすることが望まれている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザ光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。特に、赤外線レーザ対応の画像記録材料は、白灯下でも取り扱いが可能であるため普及してきている。このような画像記録材料として、光熱変換作用のある赤外線吸収染料とフェノール樹脂により発現する現像液に対する溶解抑止効果を利用したポジ型の画像記録材料が挙げられ、注目されている。
【0005】
通常、このようなポジ型の画像記録材料は、赤外線レーザ露光と、光熱変換剤により発生した熱により、露光領域において溶解抑制作用を解消して画像記録層の溶解性を向上させ、現像工程により当該領域を除去して平版印刷版を製版する。現像の後は、一般的には、水洗処理を行って余分なアルカリ現像液を除去し、その後、ガム引きを行って平版印刷版を印刷に供する。
現像処理は、通常、自動現像機中で行われるが、現像液中に溶解した画像記録層が増加すると析出し、現像カスとなる。現像カスの発生が著しい場合、製版後の平版印刷版に付着して画像故障を生じる懸念がある。特に、赤外線レーザ対応の画像記録層には、比較的高分子量の光熱変換剤が用いられていることから、現像カスが発生しやすい傾向にある。
【0006】
さらに、現像工程において使用されるアルカリ現像液としては、環境の観点からpHを中性に近づけることが好ましく、種々の試みがなされている。例えば、重層構造のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版をpH6〜11の現像液で処理する製版方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、アルカリ現像液のpHを低く抑えるのみでは、自動現像機により繰り返し製版した場合、現像性、言い換えれば、画像記録層の可溶性の低下に起因して現像カスが増えるという問題があり、製版後の版面に現像カスが付着して画像故障を生じる懸念が生じることがわかった。
さらに、平版印刷版においては、非画像部の親水性を高め、版面を保護するため、通常、現像、水洗後の版面にガム引き処理と呼ばれる親水化処理を施すことが好ましいが、このガム引き処理も湿式処理であるため、現像工程と同様に廃液の問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/094120A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、比較的低pHのアルカリ現像液を使用した場合であっても、現像性に優れ、経時的な現像カスの発生が抑制された平版印刷版の作製方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的では、アルカリ水溶液による現像工程の後、水洗工程やガム引き工程を必要とせず、1浴処理にて製版可能な平版印刷版の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、下記に示す手段によって達成される。
<1> 支持体上に、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、および(B)赤外線吸収剤を含む下層と、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂、および(D)ポリオルガノシロキサンを含む上層と、を有する画像記録層を備えるポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、
画像露光したポジ型平版印刷版原版を、アニオン性界面活性剤を含有するpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程
を、この順で含む平版印刷版の作製方法。
【0010】
<2> 前記(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、および活性イミド基からなる群から選ばれる1種以上を含有する樹脂である<1>に記載の平版印刷版の作製方法。
<3> 前記(B)赤外線吸収剤が、シアニン染料である<1>または<2>に記載の平版印刷版の作製方法。
【0011】
<4> 前記(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂が、ポリマー主鎖にカルボキシ基を有するポリウレタン樹脂である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
<5> 前記上層が、さらに(B)赤外線吸収剤を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【0012】
<6> 前記アルカリ水溶液における水溶性高分子化合物の含有量が、10ppm以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
<7> 前記現像工程が、前記アルカリ水溶液による1浴処理である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的低pHのアルカリ現像液を使用した場合であっても、現像性に優れ、経時的な現像カスの発生が抑制された平版印刷版の作製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、アルカリ水溶液による現像工程の後、水洗工程やガム引き工程を必要とせず、1浴処理にて製版可能な平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の平版印刷版の作製方法に用いうる自動現像処理機の構造の一態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の平版印刷版の作製方法について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版の作製方法は、支持体上に、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、および(B)赤外線吸収剤を含む下層と、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂、および(D)ポリオルガノシロキサンを含む上層と、を有する画像記録層を備えるポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、画像露光したポジ型平版印刷版原版を、アニオン性界面活性剤を含有するpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を、この順で含む。
以下、本発明の作製方法を適用しうる平版印刷版原版の構成、露光工程、現像工程について順次説明する。
【0016】
<平版印刷版原版>
本発明の作製方法に用いられる平版印刷版原版は、支持体上に、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、および(B)赤外線吸収剤を含む下層と、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂、および(D)ポリオルガノシロキサンを含む上層と、を有する画像記録層を備えるポジ型平版印刷版原版である。
【0017】
以下、本発明における画像記録層について説明する。本発明の画像記録層は下層、および上層を有する。
まず、順に下層、および上層に含まれる成分について説明する。
【0018】
<(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂>
本発明における下層に使用可能な(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂としては、水に不溶性で、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば、特に制限はないが、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、またはこれらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、−COOH、−SOH、−OSOH、−PO、−OPO、−CONHSO、−SONHSO−、フェノール性水酸基、活性イミド基であり、−COOH、−SOH、−OPO、−SONHSO−等の官能基を有することが好ましく、特に好ましくは−COOHである。
【0019】
従って、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー(以下、「アルカリ可溶性を付与するモノマー」とも称する。)を含む混合物を重合することによって好適に得ることができる。前記アルカリ可溶性を付与するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物およびその混合物が含まれる。下式における各Rは、水素原子またはCHである。
なお、本明細書において、アクリレート及びメタクリレートのいずれか或いは双方を指す場合、(メタ)アクリレートと、アクリル及びメタクリルのいずれか或いは双方を指す場合、(メタ)アクリルと、それぞれ記載することがある。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
本発明の下層における(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性を付与するモノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、アルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上70モル%以下含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分がこの範囲にあると水に不溶性で且つアルカリ現像液に可溶性となり、現像性が良好となる。
【0024】
ここで(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の調製に使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和コモノマー単量体のうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
【0025】
下記に(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の共重合体の具体例を示す。下記の具体例の重量平均分子量はいずれも20000〜50000の範囲である。但し、本発明は下記の具体例によって制限されるものではない。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
また、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の他の形態としては、フェノール性水酸基を有する樹脂も好ましいものである。フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂等が挙げられる。
【0029】
また、米国特許第4123279号明細書に記載されているt−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂や、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用してもよい。
これらのフェノール性水酸基を有する樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明における画像記録層の下層に用いる(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものがより好ましい。これら分子量の値は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトフラフィー)測定によりポリスチレン標品の分子量換算で算出した値を用いている。
【0031】
本発明における画像記録層の下層に用いる(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、1種でもよいが、2種以上を用いてもよい。
画像記録層の下層の全固形分中に対する(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の含有量は、50〜98質量%が好ましく、65〜95質量%がより好ましい。(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の含有量がこの範囲にあると画像記録層の感度が高く、また耐久性が良好である。
【0032】
<(B)赤外線吸収剤>
本発明における画像記録層の下層には、(B)赤外線吸収剤を含む。(B)赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料、または顔料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料または顔料を用いることができる。
【0033】
そのような赤外線吸収剤としての染料は、例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0034】
また、赤外線吸収剤としての染料は、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が、特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0035】
本発明における画像記録層の下層に好ましい赤外線吸収剤としては、下記のような化合物が好ましい。
これらのうちで、特に好ましい赤外線吸収剤染料は、シアニン染料A、およびFである。
【0036】
【化6】

【0037】
【化7】


シアニン染料F
【0038】
また、顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている顔料が挙げられ、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、特に、カーボンブラックが好適に用いられる。
【0039】
赤外線吸収剤は、画像記録層の下層に含むことによって、感度と画像記録時の耐アブレーション性のバランスが向上する。
赤外線吸収剤の添加量としては、下層における全固形分に対し0.01〜50質量%
、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1.0〜30質量%の割合で添加することができる。この範囲の含有量とすることで画像記録時の上層の到達温度を低くしアブレーションを抑えながら充分な感度が得られる。
画像記録層の下層には、さらに後述するその他の添加剤を含有することができる。
【0040】
<(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂>
本発明における画像記録層の上層には、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂を含む。
上層に含むポリウレタン樹脂としては、水に不溶性であり、且つ、アルカリ水溶液に可溶であれば特に制限はないが、中でも、ポリマー主鎖にカルボキシ基を有するものが好ましく、具体的には、下記一般式(I)で表わされるジイソシアナート化合物と、下記一般式(II)または一般式(III)で表されるカルボキシ基を有するジオール化合物の少なくとも1種と、の反応生成物を基本骨格とするポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0041】
【化8】

【0042】
一般式(I)中、Rは二価の連結基を表す。
がとりうる二価の連結基としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基である。
また、Rはイソシアナート基と反応しない他の官能基を有していてもよい。
【0043】
一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリーロキシ基を表す。ここで、Rは置換基を有していてもよい。
好ましいRとしては水素原子、炭素数1〜8個の無置換のアルキル基、炭素数6〜15個の無置換のアリール基が挙げられる。
一般式(II)または(III)中、R、R、およびRはそれぞれ同一でも相異していてもよく、単結合、または二価の連結基を表す。
、R、およびRがとりうる二価の連結基としては、脂肪族炭化水素、または芳香族炭化水素が挙げられる。ここで、R、R、およびRは置換基を有していてもよい。好ましいR、R、およびRとしては、炭素数1〜20個の無置換のアルキレン基、炭素数6〜15個の無置換のアリーレン基が挙げられ、更に好ましいものとしては炭素数1〜8個の無置換のアルキレン基が挙げられる。
また、R、R、およびRはイソシアナート基と反応しない他の官能基を有していてもよい。
一般式(III)中、Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、好ましくは炭素数6〜15個のアリーレン基を示す。
【0044】
上記一般式(I)で示されるジイソシアナート化合物の具体例としては以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2,4−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートの二量体、2,6−トリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート、メタキシリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート等の如き芳香族ジイソシアナート化合物;ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート、ダイマー酸ジイソシアナート等の如き脂肪族ジイソシアナート化合物;イソホロンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアナート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環族ジイソシアナート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアナート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアナートとの反応物であるジイソシアナート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートのような芳香族環を有するものが、耐刷性の観点より好ましい。
【0045】
また、上記一般式(II)又は(III)で示されるカルボキシ基を有するジオール化合物の具体例としては以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸がイソシアナートとの反応性の観点より好ましい。
【0046】
本発明に係る(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂は、上記ジイソシアナート化合物およびジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性を有する公知の触媒を添加し、加熱することにより合成することができる。
使用するジイソシアナートとジオール化合物とのモル比は、好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアナート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアナート基が残存しない形で合成される。
また、本発明に係る(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂は芳香族骨格を有するものが、耐薬品性の観点より好ましい。
【0047】
本発明における(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂の具体例としては、以下のイソシアナート化合物及びジオール化合物の反応物が挙げられる。組成比は、合成可能でアルカリ可溶性を維持できる範囲内で自由に設定可能である。
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
これらのうちで特に好ましいものは、1、3、4、7、8、9、11、13、15、18、20、21である。
【0051】
本発明に係る(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂の分子量は、好ましくは重量平均分子量で1,000以上であり、更に好ましくは5,000〜10万の範囲である。これらの(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
本発明に係る上層成分中に含まれるこれらのポリウレタン樹脂の含有量は、上層の全固形分中、好ましくは2〜99.5質量%、さらに好ましくは5〜99質量%、特に好ましくは10〜98質量%である。この範囲とすることで経時的な現像カスの抑制効果と画像形成性および耐刷性のバランスが良好となる。
【0053】
<(D)ポリオルガノシロキサン>
本発明に用いる画像記録層の上層は、(D)ポリオルガノシロキサンを含む。
(D)ポリオルガノシロキサンとしては、シロキサンからなる非極性部と、酸素原子などを有する極性部とを含有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、アルコール変性ポリオルガノシロキサン、カルボキシル変性ポリオルガノシロキサンなどを用いることができる。
【0054】
このようなポリオルガノシロキサンの具体例としては、下記一般式で表される化合物におけるアルコキシシランを加水分解縮合させることによって作られたものが好ましい。
RSi(OR’)
[上記式中、Rはアルキル基またはアリール基を表し、R’はアルキル基を表す。]
上記一般式のRのうち好ましいものはフェニル基である。R’の好ましいものはメチル基、エチル基、およびプロピル基であり、R’が同じものでも異なるものであってもよい。
また、以下の式(1)で示されるグラフトブロックポリシロキサンや式(2)で示されるブロックポリシロキサンも好ましく用いられる。
下記式(1)および式(2)中、n、p、及びqは、それぞれ独立に1以上の整数である。
【0055】
【化11】

【0056】
オルガノポリシロキサン樹脂の具体的な製造方法は、WO2000/035994号明細書に記載されている。
またポリオルガノシロキサンの市販品としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであるBYK−333(BYKケミー社製)や、ポリシロキサンポリエーテルコポリマーであるTEGO GLIDE 410(TegoChemie Service GmbHから入手可能)などが挙げられる。
【0057】
本発明に係る画像記録層の上層に含まれる(D)ポリオルガノシロキサンの含有量は、上層の全固形分中、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.03〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%である。
この範囲とすることによって、低摩擦係数による耐傷性向上、分散剤としてポリウレタン樹脂の現像液中での分散を促進し経時的な現像カスの抑制効果が得られる。
【0058】
さらに、本発明に係る上層成分中には、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂を併用することができる。上層自体は、特に非画像部領域において、アルカリ可溶性を発現することを要するため、この特性を損なわない樹脂を選択する必要がある。この観点から、併用可能な樹脂としては、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
上層に添加してもよい水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂は、下層で必須成分として記載した(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。下層と同一の構造でもよいし、異なっていてもよい。
また、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の含有量としては、前記(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂に対して、質量換算で50%以下であることが好ましい。
【0059】
さらに、本発明に係る上層成分中には、本発明の効果を損なわない範囲で赤外線吸収剤を添加することができる。上層に添加することで、露光時に熱伝導性の高い金属基板への熱拡散を抑制することができ、高感度となる。(B)赤外線吸収剤で述べたものが同様に使用できる。
【0060】
〔その他の成分〕
本発明における画像記録層の上層および下層には、所望により、目的に応じてその他の添加剤を含有させることができる。
その他の成分としては、種々の添加剤が挙げられ、例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態では(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質が挙げられる。前記添加剤を用いることで、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができる。
【0061】
前記オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等が挙げられる。
オニウム塩としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al, Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、
【0062】
J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V. Crivelloet al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivelloet al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem. Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が好適に挙げられる。
これらのなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましく、該ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載のものが好ましい。
【0063】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適に挙げられる。
【0064】
前記o−キノンジアジド化合物としては、1以上のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであれば、種々の構造の化合物が好適に挙げられる。前記o−キノンジアジドは、熱分解により結着剤の溶解抑制能を失わせる効果と、o−キノンジアジド自体が、アルカリ可溶性の物質に変化する効果との双方の効果を有するため、結着剤の溶解促進剤として作用することができる。
【0065】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の画像記録層の上層または下層に対する添加量としては、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。前記添加剤と結着剤とは、同一層へ含有させることが好ましい。
【0066】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物、フェノール類、有機酸類を添加することもできる。前記環状酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。
前記フェノール類としては、ビスフェノールA、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0067】
前記酸類としては、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
前記環状酸無水物、フェノール類又は有機酸類の画像記録層の上層または下層に占める割合としては、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0068】
画像記録層には、塗布性を向上させるために、界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤等を含有させることができる。該界面活性剤の含有量としては、画像記録層の上層または下層、又は両層の塗布液組成の0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を含有させることができる。
【0069】
非イオン界面活性剤としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。前記両面活性剤としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型等が挙げられる。
非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像記録層の上層または下層、又は両層の塗布液組成における含有量としては、0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0070】
また、画像記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を含有させることができる。焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209 号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223 号、同54−74728 号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440 号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0071】
また、画像部の視認性を向上させるため用いられる着色剤としては、種々の染料を用いることができる。好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的には、ブリリアントグリーン、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
これらの染料の含有量としては、画像記録層の上層または下層、又は両層の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0072】
さらに、画像記録層の上層または下層、又は両層には、必要に応じ、画像記録層の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0073】
〔平版印刷版原版の形成〕
本発明の作製方法に用いるポジ型平版印刷版原版は、前記上層及び下層の各成分を溶媒に溶解させて調製した上層及び下層の画像記録層塗布液を、後述する支持体上に下層次いで上層の順に塗布することで形成される。
【0074】
〔支持体〕
平版印刷版原版に用いる支持体としては、寸度的に安定な板状物が好ましく、例えば、紙、プラスチックがラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。前記アルミニウム板の厚みとしては、およそ0.1〜0.6mm程度が好ましく、0.15〜0.4mmがより好ましく、0.2〜0.3mmが特に好ましい。
【0075】
アルミニウム板は、粗面化、陽極酸化処理などの種々の表面処理を施される。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0076】
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0077】
前記陽極酸化処理の条件としては、用いる電解質によって異なるため、一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温が5〜70℃、電流密度が5〜60A/dm、電圧が1〜100V、電解時間が10秒〜5分であるのが好ましい。前記陽極酸化による、陽極酸化皮膜の量は、1.0g/m以上が好ましい。前記陽極酸化皮膜の量が、1.0g/m未満の場合には、耐刷性が不十分であったり、平版印刷版として用いた場合に、非画像部に傷が付き易くなったりして、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなることがある。
【0078】
前記陽極酸化処理を施された後、前記アルミニウムの表面は、必要により親水化処理が施される。該親水化処理の方法としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法が挙げられる。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
【0079】
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知の溶媒、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0080】
上層及び下層の画像記録層塗布液の各成分(添加剤を含む全固形分)の前記溶媒中の濃度としては、下層の画像記録層塗布液は1〜50質量%が好ましく、上層の画像記録層塗布液は1〜50質量%が好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版の画像記録層は、その塗布量としては、支持体に近い側に設けられる下部画像記録層の乾燥後の塗布量は、耐刷性確保と現像時における残膜発生抑制の観点から、0.5〜1.5g/mの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.7〜1.2g/mの範囲である。
また、上部画像記録層の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.07〜1.0g/mの範囲である。
塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
【0081】
前記上層及び下層の画像記録層の塗布の方法としては、特に制限はなく、公知の塗布方法、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
【0082】
本発明に係る平版印刷版原版においては、支持体と画像記録層の下層との間に、所望により、下塗層を設けることができる。下塗層の成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
下塗層は以下のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法や、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して前記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して設ける方法等である。
【0084】
前者の方法においては、前記有機化合物を溶解させた溶液中の該有機化合物の濃度は、0.005〜10質量%が好ましい。また後者の方法においては、前記有機化合物を溶解させた溶液中の該有機化合物の濃度は、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、また、前記浸漬の温度は、20〜90℃が好ましく、25〜50℃がより好ましく、前記浸漬の時間は、0.1秒〜20分が好ましく、2秒〜1分がより好ましい。
【0085】
前記有機化合物を溶解させた溶液には、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質を含有させて、pHを1〜12に調整することもできる。また、画像形成材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量としては、2〜200mg/mが好ましく、5〜100mg/mがより好ましい。前記被覆量が、前記数値範囲外である場合には、十分な耐刷性能が得られないことがある。
【0086】
本発明に係る平版印刷版原版においては、前記画像記録層の上層の上に、所望により、オーバーコートを設けることができる。前記オーバーコートの成分としては、アルカリ可溶性のポリウレタン樹脂が好ましく、中でもイソシアナート化合物とカルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であるポリマー主鎖にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂が挙げられる。上記ポリウレタン樹脂を作成するイソシアナートとしてはトリレンジイソシアナートのような芳香族ジイソシアナートが、ジオールとしては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、が好ましい。
このようにして、本発明の平版印刷版の作製方法に用いられる平版印刷版原版が得られる。
【0087】
<平版印刷版の作製方法>
前記の如くして得られた平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施されて平版印刷版が作製される。即ち、所望の画像様に露光されたネガ型平版印刷版原版では、露光領域のアルカリ現像液に対する溶解性が向上し、現像により除去されて非画像部を形成し、残存した未露光部の画像記録層が平版印刷版の画像部となる。
〔露光工程〕
露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。
画像様露光は、リスフィルム等のマスクを介する露光により行われてもよく、走査露光により行われてもよい。
本発明においては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0088】
〔現像工程〕
次に、現像工程について詳述する。
(特定現像液)
現像工程に使用される処理液(以下、特定現像液とも称する)は、アニオン系界面活性剤を含有するpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液である。アニオン系界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
【0089】
本発明における特定現像液に用いられるアニオン性界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。
これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0090】
本発明の処理液に用いられるアニオン性界面活性剤としては、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤は単独もしくは組み合わせて使用することができる。
現像液中におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜10質量%が最も好ましい。
【0091】
本発明に係る特定現像液はpHが8.5以上10.8以下であることを要する。現像液のpHを上記範囲に保つには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することが好ましい。炭酸イオン、炭酸水素イオンの機能により、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できるものと考えられる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。
pHの調製に用いうる炭酸塩及び炭酸水素塩としては、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、緩衝作用を生じるpHであればよく、具体的には、pH8.5〜10.8の範囲であることを要する。pH8.5を下回ると非画像部の現像性が低下し、pH10.8を上回ると空気中の炭酸ガスの影響により処理能力が低下する。
【0092】
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、アルカリ水溶液の質量に対して0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0093】
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。無機塩としては、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらの他のアルカリ剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。本発明の処理液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0094】
但し、特定現像液に水溶性高分子化合物を含有すると、特に処理液が疲労した際に版面がベトツキやすくなる懸念があるため、本発明に係る特定現像液における水溶性高分子化合物の含有量は10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、最も好ましくは含有しないことである。ここでいう「水溶性高分子化合物」とは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等の親水性基を有するものが挙げられる。
【0095】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60mol%以上、好ましくは80mol%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテルなどが挙げられる。
【0096】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。一般に、湿潤剤は処理液の全質量に基づいて0.1〜5質量%の量で使用される。
【0097】
防腐剤としては、フェノールまたはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、処理液に対して0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
【0098】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。キレート剤は処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は処理液に対して0.001〜1.0質量%が好適である。
【0099】
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型および可溶化等がいずれも使用できる。消泡剤の含有量は、処理液に対して0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0100】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は処理液に対して0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0101】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0102】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は処理液の全質量に基づいて0.01〜0.5質量%の量が好ましい。
【0103】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0104】
(現像条件)
現像の温度は、通常60℃以下、好ましくは15〜40℃程度である。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
通常の現像処理工程においては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥するのに対して、本発明においては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及びアニオン性界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行うことを特徴としている。よって前水洗工程は特に必要とせず、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことができる。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の処理液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0105】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0106】
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチックまたは金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属またはプラスチックの溝型材を芯となるプラスチックまたは金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
【0107】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。さらに、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0108】
現像工程のあと、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
【0109】
本発明の平版印刷版の作製方法において好適に用いられる自動処理機の構造の1例を図1に模式的に示す。図1の自動処理機は、基本的に現像部6と乾燥部10からなり、平版印刷版原版4は現像槽20で、現像とガム引きを行い、乾燥部10で乾燥される。
【0110】
以上のようにして得られた平版印刷版は印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062 号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。整面液が塗布された平版印刷版は、必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の温度で1〜20分間程度行われるのが好ましい。
温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
[ポリウレタン樹脂の合成]
<合成例1>
500mlの3つ口フラスコに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート125gと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸67gをジオキサン290mlに溶解した。N,N−ジエチルアニリン1gを加えた後、ジオキサン還流下6時間攪拌した。反応後、水4L、酢酸40mlの溶液に少しずつ加えポリマーを析出させた。この固体を真空乾燥させることにより185gのポリウレタン樹脂(1)を得た。酸含有量は2.47meq/gであつた。GPCにて分子量を測定したところ重量平均分子量(ポリスチレン標準)は28,000であった。
【0113】
<合成例2〜7>
合成例1において、出発物質を下記に記載のジイソシアナート化合物及びジオール化合物に代えた以外は、合成例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(2)〜(7)を合成した。
【0114】
【化12】

【0115】
〔平版印刷版原版1〕
[支持体の作製]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し、以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0116】
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
【0117】
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/mであった。
【0118】
−下塗り液−
・β−アラニン 0.5g
・メタノール 95g
・水 5g
【0119】
[記録層の形成]
上記により得られた支持体に、下記組成の下層用塗布液1を塗布量が1.5g/mになるようバーコーターで塗布したのち、160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した。
−下層用塗布液1−
・N―フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミドコポリマー 1.0g
(モル比:45/20/35、Mw:50000)
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.017g
・クリスタルバイオレット(保土ヶ谷化学(株)製) 0.015g
・メガファックF−177(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤) 0.05g
・γ−ブチルラクトン 10g
・メチルエチルケトン 10g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8g
【0120】
【化13】

【0121】
その後、下記組成の上層用塗布液1を塗布量が0.5g/mになるようバーコーター塗布したのち、130℃で40秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、平版印刷版原版1を作製した。
−上層用塗布液1−
・合成例1のポリウレタン樹脂(1) 30.0g
・BYK−333(BYKケミー社製ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
0.3g
・エチルバイオレット 0.03g
・メガファックF−177(フッ素系界面活性剤) 0.05g
・3−ペンタノン 60g
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8g
【0122】
〔平版印刷版原版2〜7〕
平版印刷版原版1における上層用塗布液1で用いたポリウレタン樹脂(1)を、前記合成例で得られたポリウレタン樹脂(2)〜(7)に変更した以外は平版印刷版原版1と同様にしてそれぞれ平版印刷版原版2〜7を作製した。
【0123】
〔平版印刷版原版8〕
平版印刷版原版1における上層用塗布液1で用いたポリオルガノシロキサンを、TEGO GLIDE 410(TegoChemie Service GmbHから入手可能なポリシロキサンポリエーテルコポリマー)に変更した以外は平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版8を作製した。
〔平版印刷版原版9〕
平版印刷版原版1における上層用塗布液を以下の上層用塗布液2に変更した以外は平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版9を作成した。
−上層用塗布液2−
・合成例1のポリウレタン(1) 30.0g
・BYK−333(BYKケミー社製ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
0.3g
・下層塗布液1で使用したシアニン染料A 1.5g
・エチルバイオレット 0.03g
・メガファックF−177(フッ素系界面活性剤) 0.05g
・3−ペンタノン 60g
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8g
【0124】
〔平版印刷版原版10〕
平版印刷版原版1における上層用塗布液1の調製において、ポリオルガノシロキサンを添加せずに上層用塗布液を調製し、その他は平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版10を作製した。
【0125】
〔平版印刷版原版11〕
平版印刷版原版1における上層用塗布液1の調製において、ポリウレタン樹脂を下記構造のアルカリ可溶性ポリマーである比較樹脂(1)(重量平均分子量:50000)に変更して上層用塗布液を調製し、その他は平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版11を作製した。
【0126】
【化14】


比較樹脂(1)
【0127】
〔平版印刷版原版12〕
平版印刷版原版9における下層用塗布液1の調製において、シアニン染料Aを添加せずに下層用塗布液を調製し、その他は平版印刷版原版9と同様にして平版印刷版原版12を作製した。
【0128】
−評価−
(露光工程)
得られた平版印刷版原版1〜12を、露光器(トレンドセッターF、Kodak社製)を用いて、露光(レーザーパワー:8.5W、回転数:185rpm)した。
また、現像カス評価用としては、全面露光を行い、クリア画像を作製した。
(現像工程)
露光後の平版印刷版原版を、図1に示す自動現像処理機〔現像槽25L、版搬送速度100cm/min、ポリブチレンテレフタレート繊維(毛直径200μm、毛長17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロール1本が搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)、乾燥温度80℃〕を用い、表1に示す現像液の組合せで、温度30℃で、処理量が20m/Lとなるまで、現像処理を行った。
【0129】
(特定現像液1)
・水 8963.8g
・炭酸ナトリウム 200g
・炭酸水素ナトリウム 100g
・ニューコールB4SN(61%水溶液) 656g
(ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸塩、日本乳化剤(株)製アニオン系界面活性剤)
・EDTA 4Na 80g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
(pH:9.7)
【0130】
(特定現像液2)
・水 8665g
・炭酸ナトリウム 150g
・炭酸ナトリウム 80g
・エレミノールMON(47%水溶液) 745g
(ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤)
・燐酸第一アンモニウム 180g
・ヘキサメタリン酸ソーダ 180g
(pH:9.3)
【0131】
(特定現像液3)
・水 8150.8g
・炭酸ナトリウム 200g
・炭酸水素ナトリウム 80g
・ペレックスNBL(35%水溶液) 1429g
(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製アニオン系界面活性剤)
・クエン酸 40g
・燐酸第一アンモニウム 20g
・プロピレングリコール 80g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
(pH:9.8)
【0132】
(特定現像液4)
・水 8665g
・炭酸ナトリウム 242g
・炭酸水素ナトリウム 12g
・エレミノールMON(47%水溶液) 745g
(ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤)
・燐酸第一アンモニウム 180g
・ヘキサメタリン酸ソーダ 180g
(pH:8.8)
【0133】
(特定現像液5)
・水 8665g
・炭酸ナトリウム 12g
・炭酸水素ナトリウム 242g
・エレミノールMON(47%水溶液) 745g
(ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤)
・燐酸第一アンモニウム 180g
・ヘキサメタリン酸ソーダ 180g
(pH:10.3)
【0134】
(比較現像液1)
・水 9779.8g
・炭酸ナトリウム 130g
・炭酸水素ナトリウム 70g
・燐酸第一アンモニウム 20g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
(pH:9.7)
【0135】
(比較現像液2)
・水 8665g
・硼酸 74g
・水酸化ナトリウム 126g
・エレミノールMON(47%水溶液) 745g
(ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤)
・燐酸第一アンモニウム 180g
・ヘキサメタリン酸ソーダ 180g
(pH:8.4)
【0136】
〔評価〕
各平版印刷版原版、および各現像液を下記表1のように用いて、以下のように評価し、まとめて表1に結果を示す。
〔現像カスの評価〕
前記現像カス評価用の全面露光した平版印刷版原版を自動現像機により現像処理し、現像処理後に、平版印刷版原版に付着したカスの数を目視で計測した。単位は 個/mである。
【0137】
〔現像性の評価〕
画像様に露光し、その後、現像して得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とフュージョンG(N)墨インキ(DIC(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。この時に得られた印刷物の非画像部に地汚れが発生していないか、目視で確認した。
【0138】
【表1】

【0139】
表1の結果から、本発明の平版印刷版の作製方法によると、弱アルカリ性の現像液による一浴処理にも拘らず、現像槽中におけるカスの発生が抑制され、現像処理性に優れており、この作製方法により得られた平版印刷版によれば高画質の印刷物が得られた。他方、ポリオルガノシロキサンを含有しない比較例1、ポリウレタンを含有しない比較例2、下層に赤外線吸収剤を含まない比較例3、本発明の範囲外の現像液を用いた比較例4、5はいずれも、現像カスの発生や地汚れが観察された。
【符号の説明】
【0140】
4 平版印刷版原版
6 現像部
10 乾燥部
16 搬送ローラ
20 現像槽
22 搬送ローラ
24 ブラシローラ
26 スクイズローラ
28 バックアップローラ
36 ガイドローラ
38 串ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂、および(B)赤外線吸収剤を含む下層と、(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂、および(D)ポリオルガノシロキサンを含む上層と、を有する画像記録層を備えるポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、
画像露光したポジ型平版印刷版原版を、アニオン性界面活性剤を含有するpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程
を、この順で含む平版印刷版の作製方法。
【請求項2】
前記(A)水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂が、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、および活性イミド基からなる群から選ばれる1種以上を含有する樹脂である請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項3】
前記(B)赤外線吸収剤が、シアニン染料である請求項1または請求項2に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項4】
前記(C)水不溶性且つアルカリ可溶性のポリウレタン樹脂が、ポリマー主鎖にカルボキシ基を有するポリウレタン樹脂である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項5】
前記上層が、さらに(B)赤外線吸収剤を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項6】
前記アルカリ水溶液における水溶性高分子化合物の含有量が、10ppm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項7】
前記現像工程が、前記アルカリ水溶液による1浴処理である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−170035(P2011−170035A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32566(P2010−32566)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】