説明

平版印刷版の処理方法

【課題】エッジ処理を必要とする光重合性感光材料においても現像時に圧力カブリによる支持体端部、側面の溶出不良部が無く、安定な現像処理を行うことの出来る現像処理方法を提供する。
【解決手段】支持体上に感光層を有しその端面が面取加工(エッジ処理)された平版印刷版を少なくとも現像、水洗、ガム引き処理を行う処理方法であって、該処理方法に用いる処理装置の現像〜ガム引きまでの搬送パスライン上で、該平版印刷版の支持体面側から該平版印刷版の少なくとも側面の一部に接触するブラシ手段を有する現像処理装置を用いて処理する事を特徴とする平版印刷版の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支持体の側面部が面取加工(エッジ処理)されている平版印刷版の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外、可視、赤外などの各種レーザーを用いたダイレクト製版システムが実用化され、一般商業印刷の分野において広く普及している。このダイレクト製版システムはシステムをデジタル化する事によってスピード、コスト、安定性などの面で従来のフィルムを用いた製版システムに比べて有利であり、今日の一般商業印刷の市場では主流となりつつある。
【0003】
このダイレクト製版システムはこれらの利点から一般商業印刷市場のみならず、新聞印刷市場にも広く浸透しつつある。新聞印刷ではその印刷部数の多さと印刷速度の速さから一般商業印刷に比べて印刷条件が過酷であり、印刷版に対して高い耐刷性が要求される。このため、これまでのフィルム製版システムにおいてはポジ型感光材料よりも架橋反応により高い強度の画像を形成することの出来るネガ型の光重合性感光材料が用いられてきた。このことから新聞印刷市場へのダイレクト製版システムの導入には高い画像強度を持つ感光性材料が必要不可欠とされていた。
【0004】
これまでのネガ型感光材料を用いたフィルム製版システムでは水銀ランプなどの非常に高いエネルギーを持つ光源で長時間、密着露光を行なう事により感光層の架橋反応を起こすものであり、現像処理によって得られた画像は非常に強固なものであった。ダイレクト製版システムではこれらの光源に比べて低い露光エネルギーで露光処理を行うため、同等の強度を持つ画像の形成は当初、困難とされてきたが、近年では画像強度を改良するために多様な感光材料が開発されている。特に750nm以上の赤外光領域に発光する高出力半導体レーザーの小型化、高出力化が進み、ダイレクト製版システム用の露光用光源として非常に有用であることから、赤外光レーザーを用いたダイレクト製版システムにおいて感光性材料の開発はめざましい発展を遂げ、様々な提案がなされている。例えば特許文献1の感光性材料はレゾール樹脂、ノボラック樹脂および潜伏性ブロンステッド酸、赤外吸収剤を含む事を特徴とし、ポジ版にもネガ版にも利用出来る平版印刷版について記載されている。また、特許文献2には架橋性を有する化合物が独自の構造であり、バインダーがヒドロキシ基またはアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーで、かつ熱により酸を発生する化合物と赤外線吸収剤を含むネガ型画像記録材料について記載されている。
【0005】
中でも光重合開始剤としてホウ素塩を用いた光重合性感光性材料は高感度化することでこれまでのフィルム製版システムに用いられてきたネガ型感光材料と同等の高い画像強度を得ることが出来た。また、これまで画像強度の確保に必要とされてきた現像処理の前後の加熱処理を必要としないことから、処理装置にオーブン等の加熱機器が不要であり、エネルギー消費量、設置面積、処理安定性の面から有利である。例えば特許文献3にはボレート錯塩とトリハロアルキル置換化合物および近赤外光から赤外光領域の波長範囲において吸収を有する増感色素を併せて含むことを特徴とした感光材料について記載されている。
【0006】
しかしながらこれらのダイレクト製版に対応した光重合性感光材料では新聞印刷の分野において、一般商業印刷分野では見られなかった問題が出てきた。それは感光材料のエッジ処理による圧力カブリである。
【0007】
一般商業印刷と異なり、新聞印刷では印刷版の交換頻度が高いため、一つの版胴上に複数の印刷版を並べ、必要に応じて印刷版を交換しながら印刷を行うのが一般的である。ところが一つの版胴上に複数の印刷版を並べて印刷を行った場合、印刷版の裁断面にインキが乗る事で隣り合った印刷版の境目が印刷物紙面上に直線状に現れ、所謂額縁汚れと呼ばれる印刷故障となる。この印刷故障を防ぐため、新聞印刷に用いられる感光性材料は製造工程において感光層支持体にエッジ処理と呼ばれる加工が一般的に行われる。
【0008】
ここでいうエッジ処理とは感光材料の支持体端面を面取りする加工の事であり、感光材料をフライングシャー、ギロチンシャーなどの剪断機によって必要なサイズにカッティングする際、カッターのクリアランスの調整により、感光層が塗布されている面の端部を削り落とす事を意味する。図1に剪断機によってエッジ処理された感光材料の断面図を示す。図1中のaは感光材料の支持体を示し、bは感光層の端部を示す。また、cはエッジ処理により形成された支持体側面部を示す。さらに、Aはエッジ処理により削除された部分の支持体端面からの水平方向長さを表しており、Bは同じくエッジ処理により削除された部分の感光層表面からの垂直方向長さを表す。AとBの値はそれぞれ特に限定される事は無いが、50μmから200μmであることが一般的である。また、3の支持体側面の断面形状は直線でも曲線でも良い。このエッジ処理は支持体上に感光層を塗布後、剪断機を用いて行われるのが一般的である。
【0009】
このエッジ処理を行う際、感光層は剪断機のカッター等により局部的に大きな圧力がかかり、感光層が支持体に強く押しつけられる。圧迫された感光層は支持体中にめり込んだり、感光層中の構成成分が圧力によって変質する事で現像処理の際の溶出性に変化を生じる事がある。その結果、エッジ処理部に溶出不良部を生じる、所謂圧力カブリと呼ばれる現象が起こる。また、エッジ処理の際に感光層が支持体の側面部に回り込む事もあり、回り込んだ感光層は現像処理の際に溶解除去されにくくなるため、支持体側面から剥がれずに溶出不良部として版にそのまま残ることが多い。これらの溶出不良部は現像後の感光材料のエッジ処理部付近に針状、薄層状、粒状などの様々な形態で残膜として現れ、印刷用製版における製版故障の原因となる。
【0010】
この支持体側面部に溶出不良部が残った印刷版で印刷を行った場合、溶出不良部にインキが引き寄せられるため、印刷物上に筋状の画線部が出る、所謂、額縁汚れになる。また、溶出不良部を製版処理装置の現像部で完全に除去できなかった場合、その他の工程における処理液や搬送ロールに転写するなどの処理装置の汚染につながり、メンテナンス性の低下を引き起こす。
【0011】
また、前記溶出不良部は現像処理装置内に配置された搬送ロールや絞りロール等に転写し、搬送ロール上に転写した溶出不良部は再度製版物上に転写する場合があり、特に感光材料の進行方向先端部においてこの現象が顕著に見られる。この製版物上への転写汚れは製版品質を低下させるのみならず、印刷においてもインキを引きつけるため印刷物上でも筋状の再付着汚れとして現れ、同時に印刷物の品質を低下させる。
【0012】
非画像部の溶出性を改善する現像機構を持った製版装置に関してはこれまでに多数の検討がなされている。たとえば特許文献4には平版印刷版を現像液中に浸漬しながら液中でスプレーパイプで現像液を吹き付け、さらにブラシで版面を擦る事を特徴とする平版印刷版の現像処理装置について記載されている。特許文献5には現像液に満たされた、上下に擦り手段を持つスリットの中を通すことにより現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版現像処理装置について記載されている。また、特許文献6には搬送方向に対して正回転するブラシローラーと逆回転するブラシローラーを組み合わせることにより、版の処理におけるケラレと擦りムラの発生を防止つつ、非画像部の溶出性するを改善する平版印刷版現像装置について記載されている。しかしながら、いずれの方法においても平版印刷版側面部の膜を取れるほど強く圧着させて利用すると画像部となる感光層膜面を擦るため画像強度に対して悪影響を及ぼし、その結果、印刷において耐刷性の低下が認められていた。また、いずれの特許文献においてもエッジ処理を施した版及びその場合に生ずる圧力カブリにおける溶出不良部の改善効果については記載されていない。
【特許文献1】特開平7−20629号公報
【特許文献2】特開2000−089452号公報
【特許文献3】特開2001−272778号公報
【特許文献4】特開平02−250056号公報
【特許文献5】特開平02−52356号公報
【特許文献6】特開2003−98681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、エッジ処理された平版印刷版の処理方法において、画像部への悪影響が少ない安定な現像処理を行うことが可能であり、更に額縁汚れ、再付着汚れが無く、耐刷性の高い印刷版の現像処理方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は以下に記載の平版印刷版の処理方法によって達成できることを見いだした。
1.支持体上に感光層を有しその端面が面取加工(エッジ処理)された平版印刷版を少なくとも現像、水洗、ガム引き処理を行う処理方法であって、該処理方法に用いる処理装置の現像〜ガム引きまでの搬送パスライン上で、該平版印刷版の支持体面側から該平版印刷版の少なくとも側面の一部に接触するブラシ手段を有する現像処理装置を用いて処理する事を特徴とする平版印刷版の処理方法。
2.該平版印刷版の進行方向に対するブラシ部の設置角度θが1〜45°の範囲にある事を特徴とする1.記載の平版印刷版の処理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、エッジ処理された平版印刷版の処理方法において、画像部への悪影響が少ない安定な現像処理を行うことが可能であり、更に額縁汚れ、再付着汚れが無く、耐刷性の高い印刷版を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者が鋭意検討した結果、上記課題に対して平版印刷版の搬送パスライン上に平版印刷版の支持体面側から平版印刷版の少なくとも側面の一部に接触するブラシ手段を持つ現像処理装置を用いた処理方法が有用である事が明らかになった。
【0017】
以下に本発明における現像処理装置について図2を用いて説明する。図2は本発明の一例を示す自動現像機の断面図である。図2において露光処理された平版印刷版は感光層面を上側にして現像装置に挿入され、ロール1,2の搬送ローラーによって21の現像処理部内に搬送される。次に千鳥状に配置された搬送補助用串ロール3、4を経て平版印刷版は一定温度に温度管理された現像液中に浸漬される。
【0018】
現像液中に浸漬された平版印刷版の感光層は非画像部である未露光部が現像液によって膨潤し、溶出されやすい状態になりながら、液中搬送ロール9,10および搬送補助用串ロール6によって掻き取り部まで搬送される。なお、5は現像液撹拌用のシャワーパイプであり、平版印刷版には接触していない。膨潤した非画像部は掻き取りロール11によって擦られる事で溶出が促進される一方、露光によって架橋反応が起こった画像部は現像液中でもほとんど膨潤せず、溶出されにくくなるため支持体表面上に残り画像が形成される。
【0019】
次に平版印刷版は搬送ロール13、14により現像液中を搬送され、搬送補助ロール7、8のパスライン上のブラシ部15で掻き取りロール11では掻き取れないような裁断部、すなわちエッジ処理の際に支持体側面部に回り込んだ感光層の溶出、除去が行われる。
【0020】
非画像部の溶出により画像が形成された平版印刷版は現像液中から脱した後、ロール16,17の搬送ロール兼現像液絞りロールで版面上に残った現像液を絞り落とされて22の水洗処理部に搬送される。22の水洗処理部では平版印刷版の感光層面、支持体裏面の洗浄が行われ、その後、23のフィニッシング処理部に搬送される。フィニッシング処理部ではガム処理を行い、感光性材料の中和および画像部への保護膜の形成がなされ、最後に24の乾燥処理部で平版印刷版は乾燥される。
【0021】
図3は本発明の一例であるブラシ部の断面図である。図3を用いて本発明の特徴である搬送パスライン上のブラシ部15(以後本文内ではパスラインブラシと称する)の構成についてさらに詳しく説明する。図3の30は短繊維の集合体であり、31は短繊維が植毛される基体である。また、θは処理される平版印刷版の進行方向に対しての角度であり、Lはブラシ部の長さ、Mは短繊維の長さを表す。
【0022】
短繊維の長さとしては0.1mm以上、10mm以下であることが好ましく、搬送性および繊維同士の絡まりを防ぐ点から、さらに好ましくは0.5mm以上、5mm以下である。
【0023】
短繊維の材質としてはナイロンやポリエステル、塩化ビニル、アクリルおよびポリプロピレン等の人工繊維や綿、シダ、ブロン、パキン、馬毛等の天然繊維および鋼、ステンレス、真鍮、燐青銅等の金属線があげられるが、耐薬品性および耐摩耗性の点から人工繊維を用いることが望ましい。
【0024】
短繊維が植毛される基体の材質は特に限定されないが、剛性が高く、耐アルカリ性および耐溶剤性の高い事、また形成のしやすさからステンレスなどの金属、もしくは塩化ビニルなどのプラスチックが好ましい。
【0025】
図3におけるパスラインブラシの設置角度θは値が大きくなるにつれ平版印刷版の支持体側面部を擦りやすくなるが、同時に搬送方向への平版印刷版の進行を妨げようとする力が大きくなる。搬送性を考えた場合、θの値は1°から45°の範囲であり、好ましくは10°から20°である。
【0026】
パスラインブラシにおけるブラシ部の長さLは特に規定されないが、少なくとも5mm以上である事が好ましい。尚、図3においてパスラインブラシは直線上の形状を有するが本発明はこれに限定されるものではなく、前述のθの値及びブラシ部の長さLを満たすものであれば、本発明に利用することができる。例えば図3おいて、パスラインブラシが上方に弧を描くような形状、逆に下方に弧を描くような形状、直線上の基体31上に緩やかな凸凹部を設けた形状、直線上の基体31上に短繊維の長さを変えることによって凸凹部を設けた形状が挙げられ、またロール形状であってもよく更にはこれを回転させても良い。これらパスラインブラシの形状を、図4に示す。
【0027】
パスラインブラシの設置場所としては21の現像処理部のみに限定されることはなく、22の水洗処理部、23のフィニッシング処理部のいずれの場所にも設置は可能であるが、感光性材料の溶出不良部による現像処理装置や各工程における処理液の汚染を考えた場合、処理の上流側である現像処理部に設置されることが望ましい。また、現像処理部内においてもパスラインブラシの設置場所は特に限定されないが、支持体側面部に付着した感光層の膨潤が進行している現像部の下流側に設置されることが溶出性改善の点からも望ましい。
【0028】
次に本発明の作用機構について説明する。図2中の掻き取りロール11のみで現像処理した場合、掻き取りロールの毛先は版上面に対しては接触するものの、平版印刷版の進行方向の支持体側面部にはほとんど接触しない。この為、エッジ処理による圧力カブリの生じた平版印刷版では支持体側面部に溶出不良部が生じる。これに対し本発明のパスラインブラシでは平版印刷版が搬送される際に、感光層を有する面とは反対側よりブラシが支持体側面部に接触するため、掻き取りロールで取れなかった支持体側面部の溶出不良部を掻き取ることが出来る。このため、現像槽内で溶出不良部の無い清浄な支持体側面部を得ることが出来、その結果現像槽以降の処理液や現像処理装置自体の汚染や版面への溶出不良部の再付着を防ぐことができる。また、画像強度に対して悪影響を及ぼす事が無く、印刷においても額縁汚れや再付着物による筋汚れのない良好な印刷物を得ることが出来る。
【0029】
次に本発明に使用される平版印刷版について説明する。本発明に使用される平版印刷版は、従来公知の平版印刷版を用いることができ、特に新聞印刷用に用いられる面取り処理を施したもので十分に効果を発揮する。また新聞印刷に用いられるCTP版はPS版に比べて高感度であり、面取り処理による圧力カブリの発生がより顕著となるのでさらに有効に使用することができる。これらの印刷版の例としては特開平7−20629号公報に記載のレゾール樹脂、ノボラック樹脂および潜伏性ブロンステッド酸、赤外吸収剤を含む事を特徴とする平版印刷版や、特開2000−089452号公報に記載の架橋性を有する化合物が独自の構造であり、バインダーがヒドロキシ基またはアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーで、かつ熱により酸を発生する化合物と赤外線吸収剤を含む平版印刷版、また、特開2001−272778号公報に記載のボレート錯塩とトリハロアルキル置換化合物および近赤外光から赤外光領域の波長範囲において吸収を有する増感色素を併せて含むことを特徴とした平版印刷版等が挙げられる。中でも、平版印刷版の感光層が重合性ポリマーとして側鎖に重合性二重結合を有するモノマーとカルボキシル基含有モノマーの共重合体を有しかつ、光重合開始剤として有機ホウ素塩を有する平版印刷版であればさらに有効に適用できる。
【0030】
次に本発明の現像液について説明する。pH8以上のアルカリ性液体であり、用いる平版印刷版に対して所定時間で溶解可能なものであれば任意のアルカリ水溶液を使用することができる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等の有機アルカリ剤、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびケイ酸リチウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩やケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。また溶出性の調整及び溶解後の洗浄性などを勘案して、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤などを単独もしくは併用して添加することができる。
【0031】
この様な組成の現像液で現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明の印刷版の後処理はこれらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理がリンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。この様な自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することが出来る。また、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【実施例1】
【0032】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
市販の新聞印刷用CTP印刷版(三菱製紙製PD−News300、1100mm×398mm)を、市販のシャーリングマシン(アマダ社製 M−1245)を用いて面取り処理を行った。このときに刃先のクリアランスを調整することにより以下の感光材料1と実質的に面取り処理部が形成されていない感光材料2を作製した。この時のエッジ処理部の形状は図1中のAである支持体端面からの水平方向長さが50μmであり、図1中のBである感光層表面からの垂直方向長さが50μmであった。
【0034】
上記のようにして作製した感光材料について、830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター(大日本スクリーン製造株式会社製PT−R4000)を使用して、ドラム回転速度1000rpmでレーザー照射エネルギーを50mJ/cm2に固定し露光処理を行った。
【0035】
自動現像機としては図2の構造を持つプロセッサ(大日本スクリーン製造株式会社製PS版現像処理装置PD−912)を用いた。掻き取り部のロール11にはモルトンカバー(テクノロール製カラマンボ)を35φのゴムロールに巻き付けたものを使用し、線速度は2.0m/minとした。現像液として三菱製紙製PD−News DVを使用し、30℃の液温で1.6m/minの搬送速度で感光材料1,2の現像処理を行ない、試料1および試料2を作製した。
【0036】
次に同じプロセッサで現像部の搬送ロール13,14と現像液絞りロール16、17の間にパスラインブラシ15を設置した。エッジ処理を行った感光材料2をパスラインブラシの設置角度を1°、5°、20°に変化させて現像処理を行い、本発明の試料3〜5を作製した。尚パスラインブラシとしては、長さLは80mmとし、基体31として厚さ0.5mmのステンレス板上に、繊維長Mが4mmとなるようにアクリル繊維を植毛して形成された図3に示す形状を有するパスラインブラシを用いた。
【0037】
試験1(圧力カブリ試験)
現像処理を行った試料1〜5の支持体側面部をルーペ(100倍)で観察して溶出不良部の有無と版面への再付着汚れについて目視評価し、結果を表1にまとめた。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から明らかなように、エッジ処理を行っていない感光材料で作製した試料1には溶出不良部は認められない。これに対しエッジ処理を行った感光材料で作製した試料2では端面および支持対側面部に明らかな溶出不良部が認められ、エッジ処理による圧力カブリが起こっていることが分かる。これに対して本発明のパスラインブラシを用いて作製した試料3、4および5ではエッジ処理による平版印刷版の支持体側面部の溶出不良部が改善されており、特に設置角度が20°のものは大きな改善が認められる。この結果からパスラインブラシを用いることでエッジ処理による圧力カブリに対しての改善効果が認められる事が分かる。
【0040】
試験2(印刷試験)
試料1〜5をオフ輪印刷機(三菱重工業製、リソピアL−600)に取り付け、インキ(東京インキ製、NEWS MAJOR BKP HC−S NEW 紅)および湿し水(サカタインクス製、エコセブンN−10.5%水溶液)を用いて、50000部まで印刷を行った。この印刷物上の額縁汚れと再付着物による筋汚れについて評価し、結果をそれぞれ表2および表3まとめた。
【0041】
【表2】

【0042】
表2は印刷物上の額縁汚れの評価であり、この結果から明らかなように、エッジ処理を行っていない感光材料で作製した試料1は印刷物上に額縁汚れが見られる事から、新聞印刷においては感光材料のエッジ処理が必要であることが分かる。また、エッジ処理を行った感光材料で作製した試料2においても支持体側面部の溶出不良部が額縁汚れとして印刷物上に認められる。これらに対し、現像槽中にパスラインブラシを設置した現像処理装置で作製した試料3,4および5においては印刷物上での額縁汚れに対する改善が認められ、特に設置角度が20°である試料5は改善効果が大きい。このことからエッジ処理が必要な感光材料においてもパスラインブラシを有する現像処理装置により、圧力カブリによる額縁汚れを解消する事が出来る。
【0043】
【表3】

【0044】
表3は溶出不良部の再付着による印刷物上の筋汚れの評価結果を示す。この結果から分かるように、エッジ処理を行っていない感光材料で作製した試料1は再付着による印刷物上の筋汚れは認められないのに対し、エッジ処理を行った感光材料で作製した試料2では筋汚れが認められる。しかしながら、同じエッジ処理を行った感光材料をパスラインブラシを設置したプロセッサで処理した試料3,4、5では印刷物上での筋汚れに対する改善が認めら、特に設置角度が20°の試料5で大きな改善が認められる。このことから額縁汚れと同様にパスラインブラシの設置によって筋汚れを解消することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の活用例として、エッジ処理された平版印刷版の処理方法において、画像部への悪影響が少ない安定な現像処理を行うことが可能であり、更に額縁汚れ、再付着汚れが無く、耐刷性の高い印刷版を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】エッジ処理した感光材料の断面図である。
【図2】プロセッサの断面図である。
【図3】ブラシ部の断面図である。
【図4】本発明のブラシ部の形状例。
【符号の説明】
【0047】
b 感光材料の端面部
c 感光材料支持体の側面部
15 ブラシ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感光層を有しその端面が面取加工(エッジ処理)された平版印刷版を少なくとも現像、水洗、ガム引き処理を行う処理方法であって、該処理方法に用いる処理装置の現像〜ガム引きまでの搬送パスライン上で、該平版印刷版の支持体面側から該平版印刷版の少なくとも側面の一部に接触するブラシ手段を有する現像処理装置を用いて処理する事を特徴とする平版印刷版の処理方法。
【請求項2】
該平版印刷版の進行方向に対するブラシ部の設置角度θが1〜45°の範囲にある事を特徴とする請求項1記載の平版印刷版の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−256446(P2007−256446A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78608(P2006−78608)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】