説明

平版印刷版材料の作製方法、平版印刷版材料及び画像記録方法

【課題】 塗布欠陥の個数が少なく、印刷ムラの発生率が改善され、検版性にも優れた優れた平版印刷版材料の作製方法、平版印刷版材料及び画像記録方法を提供する。
【解決手段】 ダイレクト製版可能な感熱性の画像形成層を有する平版印刷版材料の作製方法において、該画像形成層が誘電率15〜65の非水溶媒を0.01〜5質量%含有した塗布液を塗布することにより形成されたものであることを特徴とする平版印刷版材料の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版材料の作製方法、平版印刷版材料及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適正を有したCTP(コンピュータ トゥ プレート)による平版印刷版材料が求められている。特に近年、赤外線レーザー記録による種々の方式のCTPが提案されている。
【0003】
これらCTPのひとつとして、露光により印刷版材料の画像形成層の現像液への溶解性を変化させて、液現像により画像を形成する方式、一般にウェットタイプのCTPと呼ばれている方式が挙げられる。
【0004】
しかしながら、この方式では従来のPS版と同様に現像に専用のアルカリ現像液が必要であったり、現像液の状態(温度、疲労度)によって現像性が変化し、安定した画像再現性が得られなかったり、明室での取扱い性に制限があったりと、種々の問題を有している。
【0005】
これに対して特別な現像処理を必要としない、いわゆるドライCTP(印刷機ないし装置上での現像を含む)の開発も進められている。ドライCTPは印刷装置上で直接画像記録を行い、そのまま印刷を行う、ダイレクトイメージング(DI)方式の印刷装置に適用することが可能であることからも大きな注目を集めている。
【0006】
ドライCTPのひとつの方式として、アブレーションタイプのCTP(例えば、特許文献1〜5参照。)が挙げられる。
【0007】
これらは、例えば、支持体上に親水性層または親油性層のいずれかの層を表面層として積層したものである。表面層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレーションを生じさせるためには大きなエネルギーが必要であるため感度が低く、また層の物理的破壊による画像形成であるため解像度が低く点質が不良であるといった問題点がある。また、アブレートした表面層の飛散物による露光装置内部の汚染がより大きな問題であり、装置に特別な吸引装置やその他クリーニング装置を組込む必要となったり、あるいは露光時に印刷版材料にカバーシートをかける等の汚染防止措置が必要となる場合がある等の問題があり、更に、印刷版表面に残存するアブレート残滓を何らかの手段(拭き取る、専用の装置でリンス処理する等)で除去する必要があり、完全なドライ処理とは言ないなどの問題点も残っており、このように、アブレーションタイプのCTPとしても、より性能が良好で取扱い性に優れたものが望まれている。
【0008】
一方、アブレーションを生じることなく画像形成が可能であり、かつ特別な現像液による現像処理や拭き取り処理の不要な印刷版材料の開発も進められている。例えば、画像形成層に熱融着性微粒子と水溶性の結合剤とを用いた湿し水現像(機上現像)可能なCTP(例えば、特許文献6参照。)が挙げられる。
【0009】
しかし、熱融着性微粒子同士が凝集してしまい、塗布過程において塗布欠陥となってしまい、その版で印刷した印刷物は印刷ムラが発生し、印刷欠陥となってしまう問題が生じている。
【特許文献1】特開平6−186750号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−199064号公報 (実施例)
【特許文献3】特開平7−314934号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−58636号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平10−244773号公報 (第3頁)
【特許文献6】特許第2938397号明細書 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記問題を解消するためになされたものである。つまり、塗布欠陥の個数が少なく、印刷ムラの発生率が改善され、検版性にも優れた平版印刷版材料の作製方法、平版印刷版材料及び画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
(請求項1)
ダイレクト製版可能な感熱性の画像形成層を有する平版印刷版材料の作製方法において、該画像形成層が誘電率15〜65の非水溶媒を0.01〜5質量%含有した塗布液を塗布することにより形成されたものであることを特徴とする平版印刷版材料の作製方法。
【0013】
(請求項2)
非水溶媒がプロトン性溶媒であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料の作製方法。
【0014】
(請求項3)
プロトン性溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項2記載の平版印刷版材料の作製方法。
【0015】
(請求項4)
平版印刷版材料の支持体がプラスチックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版材料の作製方法。
【0016】
(請求項5)
請求項1〜4のいずれか1項記載の作製方法により作製した平版印刷版材料が、機上現像可能であることを特徴とする平版印刷版材料。
【0017】
(請求項6)
請求項5記載の平版印刷版材料に露光波長が700〜1500nmの範囲にあるレーザー光を照射し、吸収したレーザー光を熱に変換し画像を形成することを特徴とする画像記録方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、塗布欠陥の個数が少なく、印刷ムラの発生率が改善され、検版性にも優れた平版印刷版材料の作製方法、平版印刷版材料及び画像記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を更に詳しく説明する。本発明において、誘電率15〜65の非水溶媒として、アルコール、ケトン、エステル、アミド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭化水素カーボネート類、アミン、ラクトンが挙げられる。好ましくは、プロトン性溶媒が良く、さらに好ましくはアルコールが良い。アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0020】
非水溶媒の含有量としては、画像形成層塗布液に対し0.01〜5質量%がよく、さらに好ましくは0.1〜3質量%が良い。0.01質量%より少ないと効果がなく、5質量%を超えると乾燥時のフカレや液寄が発生する。
【0021】
本発明で用いるプラスチック支持体は、印刷版作製装置内での安定搬送性と印刷版としての取り扱い易さから基材の厚みとしては100〜300μmが好ましく、特に好ましくは150〜200μmである。また延伸工程を表裏の延伸温度の温度差が5℃以下、好ましくは3℃以下、より好ましくは同一で行う。さらに支持体の含水率を0.5質量%以下とする。支持体含水率Dとは、下記式で表される。
【0022】
D(含水率%)=(w/W)×100
式中、Wは25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある支持体の質量、wは25℃、60%RHの雰囲気下で調湿平衡にある該支持体の水分含有量を表す。
【0023】
支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることがより好ましく、0.01〜0.3質量%であることが特に好ましい。
【0024】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0025】
支持体の画像形成層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層としては、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層が使用できる。帯電防止層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO、MoO3、V25及びこれらの複合酸化物、及び/又はこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al23、TiO2、In23、MgOである。帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0026】
これらプラスチックフィルムの表面は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていても良い。又、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に基材表面を粗面化することもできる。更に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けることも好ましい態様である。
【0027】
本発明に係る画像形成方法は公知に知られているどの方法を用いても良く、光重合タイプや光熱変換タイプ等が挙げられ、画像形成層には各タイプに用いられる組成物が含まれる。
【0028】
しかし画像形成方法としては、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による湿式現像処理が不要な、印刷版材料を機上現像するタイプが好ましい。機上現像タイプとして、アブレーションタイプと機上現像タイプに分かれるが、装置コスト等の観点より機上現像タイプの方が好ましい。その代表的な方法として、感熱性の熱溶融性及び/または熱融着性微粒子を用いた光熱変換画像形成法がある。
【0029】
熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0030】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0031】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0032】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0033】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0034】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0035】
熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0036】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0037】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0038】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0039】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0040】
構成層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0041】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0042】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0043】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0044】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0045】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0046】
裏面層用バインダーとしては特に制限なく、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ゼラチン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセテートなどのポリマー、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。裏面層の被覆量は0.1〜10g/m2であり、好ましくは0.5〜8.0g/m2であり、より好ましくは1.0〜7.0g/m2である。
【0047】
さらに裏面層にマット材を含有させる。マット剤としては、多孔質、無孔質、有機樹脂粒子、無機微粒子を問わず用いても良く、無機マット剤としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、カーボンブラック、グラファイト、TiO2、BaSO4、ZnS、MgCO3、CaCO3、ZnO、CaO、WS2、MoS2、MgO、SnO2、Al23、α−Fe23、α−FeOOH、SiC、CeO2、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイアモンド、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、トリボリ、ケイソウ土、ドロマイト等、有機マット剤としてはポリエチレン微粒子、フッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等を挙げることが出来る。また無機被服マット剤としてはたとえばPMMAやポリスチレン、メラミンといった有機粒子の芯剤を芯剤粒子よりも小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるのもではない。
【0049】
実施例
《支持体の作製》:プラスチックフィルムの作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定した未延伸フィルムを2軸で熱延伸し作製した。
【0050】
《支持体の下引き処理》
上記で得られた基材の一方の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗設した(下引き面A)。また反対側の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗設(下引き面B)して下引き済み基材を得た。
【0051】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) 6.3%(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.6%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1%
水 92.0%
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05%
硬膜剤H−1 0.02%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02%
防黴剤F−1 0.01%
水 98.9%
【0052】
【化1】

【0053】
《下引き塗布液c》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 0.4%(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1%
水 91.9%
《下引き塗布液d》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
6.4%
硬膜剤H−2 0.7%
アニオン系界面活性剤S−1 0.07%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.03%
水 93.4%
成分d−11:スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12:スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13:スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0054】
【化2】

【0055】
《平版印刷版材料の作製》
下記に示す親水性層1塗布液(調製方法は下記に示す)、親水性層2塗布液(調製方法は下記に示す)をその順で、下引き済み支持体のA面上にワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。さらに、画像形成層塗布液(調製方法は下記に示す)をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、50℃で72時間のシーズニング処理を施した。また、裏面層塗布液(調製方法は下記に示す)を下引き済み支持体のB面上にワイヤーバーを用いて乾燥付量が2.5g/m2になるように塗布して平版印刷版材料を作製した。
【0056】
《親水性層1塗布液の調製》
コロイダルシリカ(アルカリ系)、スノーテックス−XS(日産化学社製、
固形分20質量%) 48質量%
コロイダルシリカ(アルカリ系)、スノーテックス−ZL(日産化学社製、
固形分40質量%) 4質量%
日産化学STM−6500S(平均粒径6.5μm、コアがメラミン樹脂で
シェルがシリカからなる凹凸表面の真球状粒子) 15質量%
多孔質金属酸化物粒子シルトンJC−40(水澤化学社製、
多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径4μm) 11.1質量%
Cu−Fe−Mn系金属酸化物黒色顔料 TM−3550ブラック粉体
(大日精化工業社製、粒径0.1μm程度)の固形分40質量%
(うち0.2質量%は分散剤)水分散物 20質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製)の4質量%の水溶液
0.56質量%
層状鉱物粒子モンモリロナイト、ミネラルコロイドMO(Southern Clay Products社製、平均粒径0.1μm程度)をホモジナイザで強攪拌して5質量%の水膨潤ゲルとしたもの 1.11質量%
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学社製)の10質量%の水溶液
0.28質量%
《親水性層2塗布液の調製》
コロイダルシリカ(アルカリ系)、スノーテックス−S(日産化学社製、
固形分30質量%) 30質量%
ネックレス状コロイダルシリカ(アルカリ系)、スノーテックス−PSM
(日産化学社製、固形分20質量%) 45質量%
多孔質金属酸化物粒子シルトンJC−20(水澤化学社製、
多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径2μm) 10質量%
Cu−Fe−Mn系金属酸化物黒色顔料 TM−3550ブラック粉体
(大日精化工業社製、粒径0.1μm程度)の固形分40質量%
(うち0.2質量%は分散剤)水分散物 9質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製)の4質量%の水溶液
1質量%
層状鉱物粒子モンモリロナイト、ミネラルコロイドMO(Southern Clay Products社製、平均粒径0.1μm程度)をホモジナイザで強攪拌して5質量%の水膨潤ゲルとしたもの 2質量%
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学社製)の10質量%の水溶液 0.5質量%
多孔質金属酸化物粒子シルトンAMT08(水澤化学社製、
多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径0.6μm) 12.5質量%
《画像形成層塗布液の調製》
カルナバワックスエマルジョンA118(岐阜セラック社製)平均粒径0.3μm、
固形分40% 55質量%
マイクロクリスタリンワックスA−206(岐阜セラック社製) 35質量%
ポリアクリル酸ナトリウム30質量%水溶液DL−522(日本触媒社製)
10質量%
表1記載の非水溶媒 1質量%
《裏面層塗布液の調製》
岐阜セラツク社製 DK−05 80質量%
日産化学社製 スノーテックスーXS 40質量%
ポリメチルメタクリレート(平均粒径5.5μm) 1質量%
水 600質量%
<印刷方法>
印刷装置としては、小森コーポレーション製のLITHRONE26を用いて、上記印刷版の切り込みを印刷機のピンに差し込み、くわえ、印刷機シリンダーに固定した後に、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量部%水溶液、インキとして東洋インキ社製のトーヨーキングハイエコ−を使用して印刷を行った。
【0057】
<塗布性評価>
上記方法で作製した平版印刷版材料の塗布面を1m2目視評価し、塗布欠陥の個数を評価した。
【0058】
<印刷ムラ発生率>
印刷ムラ発生率は、上記記載の方法で印刷版を版胴へ取り付け、東洋インキ社製のトーヨーキングハイエコー黄、藍、紅、墨の4色のインキを使用して印刷を行った。印刷紙面で印刷ムラがどのくらい発生しているかを目視で評価した。印刷回数に対し、印刷ムラ発生率が1%以上は実用上問題であり、1%未満は実用上許容しうる。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、本発明の試料は、塗布欠陥の個数が少なく、印刷ムラの発生率が改善され、検版性にも優れた平版印刷版材料であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクト製版可能な感熱性の画像形成層を有する平版印刷版材料の作製方法において、該画像形成層が誘電率15〜65の非水溶媒を0.01〜5質量%含有した塗布液を塗布することにより形成されたものであることを特徴とする平版印刷版材料の作製方法。
【請求項2】
非水溶媒がプロトン性溶媒であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料の作製方法。
【請求項3】
プロトン性溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項2記載の平版印刷版材料の作製方法。
【請求項4】
平版印刷版材料の支持体がプラスチックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版材料の作製方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の作製方法により作製した平版印刷版材料が、機上現像可能であることを特徴とする平版印刷版材料。
【請求項6】
請求項5記載の平版印刷版材料に露光波長が700〜1500nmの範囲にあるレーザー光を照射し、吸収したレーザー光を熱に変換し画像を形成することを特徴とする画像記録方法。

【公開番号】特開2006−43980(P2006−43980A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226522(P2004−226522)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】