説明

平版印刷版用の修正液および平版印刷版の不要画線部の消去修正方法

【課題】不要画線部、傷の上に塗設して印刷汚れを修正する平版印刷版用の修正液を提供する。特に、親水性層が破壊され、支持体が露出した場合に発生する傷を修正することが可能な平版印刷版用の修正液、ドライヤー等による乾燥を必要としない短時間で作業が終了する平版印刷版用の修正液、フリンジ汚れ(周辺部汚れ)の発生のない平版印刷版用の修正液を提供する。
【解決手段】平版印刷版に塗布定着させて、印刷汚れの修正を行う平版印刷版用の修正液であって、該平版印刷版用の修正液が少なくとも1種の疎水性樹脂、および少なくとも1種の親水性樹脂を含有することを特徴とする平版印刷版用の修正液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用の修正液および平版印刷版の不要画線部の消去修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータで形成されたデジタル画像データからPS版に直接レーザで走査露光を行い、平版印刷版を作製するCTP(Computer to Plate)システムの普及にともない、安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適正を有するCTPシステムによる平版印刷版の作製技術が求められている。
【0003】
特に近年、レーザ、サーマルヘッド、インクジェット記録による種々の方式のCTPシステムによる平版印刷版の作製技術が提案されている。たとえば、特開平8−507727号、特開平6−186750号、特開平6−199064号、特開平7−314934号各公報には、基体上に形成したいずれかの層をレーザでアブレーションさせて除去して平版印刷版の画線部を形成する技術が記載されている。
【0004】
また、たとえば特開平7−1849号、特開平7−1850号、特開平9−311443号、特開平10−6468号、特開平10−114168号には、支持体上に親油成分のマイクロカプセルと親水性バインダーを含有する三次元架橋された親水性層を設け加熱部を親油性に変える技術、特公平8−2701号、特開平2−307787号には、支持体上に無機顔料、熱可塑性樹脂、熱溶融性物資を含む感熱記録層を設け、レーザやサーマルヘッドの熱により親水性、疎水性の相変化を生じさせて画線部を形成する技術が記載されている。
【0005】
さらに、たとえば特開平9−123387号、特開平9−131850号には、平版支持体の親水性表面上に熱で合体可能で、親水性結合剤中に分散された疎水性熱可塑性重合体粒子を含有する像形成層等を設け、印刷機上で現像処理する方法、特開平11−21485号、特開平11−100537号には親水性の印刷用基材にワックスや脂肪酸エステル等のホットメルト型インクをインクジェット法により画線部として供給し、平版印刷版を作製する技術が記載されている。
【0006】
ところで、これらの方法で作製された平版印刷版は、画線部の一部(トンボ等)や、物理的な応力等で発生した傷に起因する汚れを削除したい場合がある。PS版の場合は、不要画線部の修正は、画線部を溶出、または酸等でエッチングする消去液で修正する方法が知られているが、上述したようなCTPシステムに適用される技術により得られた平版印刷版の場合は、PS版用の消去液で消去することが困難であった。
【0007】
このため、ゾルゲル反応による親水性皮膜を作製し、不要画像を消去する方法(特許文献1、2、3参照)が提案されている。これらの方法は、不要画線部上に親水性被膜を作製することを目的としている。昨今の印刷業界においては、少ロット、短納期化が進んでおり、不要画線の消去においても、作業時間の短縮が求められている。
【0008】
さらに、迅速に作業する為には、印刷機にセットされたままの印刷版上に修正液を塗設する必要がある。最近の印刷機は、設置スペースを節約するために、特に多色機では版胴と版胴の距離が短くなる傾向があり、修正作業は、かなり狭いスペースで、無理な体勢で行う必要がある。このため、不要画線を修正する際も、正確に不要画線部上に修正液を塗設するのは事実上困難であり、不要画線部およびその周辺まで塗設することが多かった。
【0009】
一般のPS版の消去液では、画像部を溶解(エッチング)して消去するため、多少周辺まで広がっても殆ど問題にならなかったが、親水性被膜を作製する修正液の場合、塗膜表面および周辺部の両方から乾燥が始まる為、特に周辺部の乾燥が早く、先に乾燥した周辺部に修正液がよることにより、周辺部が厚くなり、中央部が薄くなる傾向がある。この場合、厚くなった周辺部は、表面が親水性であっても、他よりも突出しているため湿し水が乗りにくく(インクが付きやすく)、汚れを発生してしまうことが多かった(以降、フリンジ汚れまたは周辺部汚れと称する)。修正液の粘度を高くすることにより、液よりを防止することは可能であるが、塗膜自身を薄く塗設することが難しく、シリカゾルが析出しすい傾向があり、高粘度化するのは困難であった。
【特許文献1】特開2001−350274号公報
【特許文献2】特開2002−307646号公報
【特許文献3】特開2003−287908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、不要画線部、傷の上に塗設して印刷汚れを修正する平版印刷版用の修正液を提供することにある。特に、親水性層が破壊され、支持体が露出した場合に発生する傷を修正することが可能な平版印刷版用の修正液を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、ドライヤー等による乾燥を必要としない短時間で作業が終了する平版印刷版用の修正液を提供することにある。本発明の第3の目的は、フリンジ汚れ(周辺部汚れ)の発生のない平版印刷版用の修正液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0012】
(1)平版印刷版に塗布定着させて、印刷汚れの修正を行う平版印刷版用の修正液であって、該平版印刷版用の修正液が少なくとも1種の疎水性樹脂、および少なくとも1種の親水性樹脂を含有することを特徴とする平版印刷版用の修正液。
【0013】
(2)前記平版印刷版用の修正液が、更に、ゾルゲル反応性を有するオルガノシリカゾルあるいはアルコキシシランを含有することを特徴とする前記(1)項記載の平版印刷版用の修正液。
【0014】
(3)前記平版印刷版用の修正液の固形分濃度が10%以上30%以下であり、溶媒の50%以上が少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする前記(1)または(2)項記載の平版印刷版用の修正液。
【0015】
(4)前記疎水性樹脂の含有量が、全固形分の0.5%以上10%以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【0016】
(5)前記平版印刷版用の修正液に含まれる有機溶媒が、少なくとも1種のアルコール類であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【0017】
(6)前記平版印刷版用の修正液に含まれる該有機溶媒が、少なくとも1種のアルコール類および沸点が110℃以上の有機溶媒を併用することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【0018】
(7)平版印刷版材料に画像記録した後、水現像または印刷機上で湿し水現像して得られた平版印刷版の不要画線部を消去することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【0019】
(8)平版印刷版材料に画像記録した後、水現像または印刷機上で湿し水現像して得られた平版印刷版の不要画線部を、前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液を平版印刷版に塗布定着させて消去することを特徴とする平版印刷版の不要画線部の消去修正方法。
【0020】
(9)前記平版印刷版の支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする前記(8)項記載の平版印刷版の不要画線部の消去修正方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、不要画線部、傷の上に塗設して印刷汚れを修正する平版印刷版用の修正液を提供することができる。特に、親水性層が破壊され、支持体が露出した場合に発生する傷を修正することが可能な平版印刷版用の修正液を提供することができる。また、本発明の第2の効果は、ドライヤー等による乾燥を必要としない短時間で作業が終了する平版印刷版用の修正液を提供することができる。本発明の第3の効果は、フリンジ汚れ(周辺部汚れ)の発生のない平版印刷版用の修正液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0023】
本発明に使用できるオルガノシリカゾルとは、溶媒に分散された平均粒径10〜100nmの球状、針状、羽毛状のシリカ粒子である。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。市販の製品としても日産化学社製のPA−ST、IPA−ST−UP、IPA−ST−ZL、EG−ST、NPC−ST−30、DMAC−ST、MEK−ST、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST等、触媒化成工業株式会社製のOSCALシリーズとして入手することができるもの、を挙げることが出来る。
【0024】
本発明におけるアルコキシシランとは、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などの珪素のアルコキシド化合物およびこれらの置換物を使用することができる。具体的には、Si(OCH34、CH3Si(OCH33、(CH32Si(OCH32、C65Si(OCH33、(C652Si(OCH32、Si(OC254、CH3Si(OC253、(CH32Si(OC252、C65Si(OC253、(C652Si(OCH2CH32、CH3(CH25Si(OCH33、CH3(CH25Si(OCH2CH33、CH3(CH29Si(OCH33、CH3(CH29Si(OCH33、CF3CH2CH2Si(OCH33。市販の製品としても、信越化学社製機能性シランのKBM04、KBE4等、多摩化学工業株式会社製アルコキシシラン類として入手することができるもの、を挙げることが出来る。
【0025】
本発明における疎水性樹脂は、単独で造膜した際の、水との接触角が60度以上になる樹脂である。例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などがある。本発明における疎水性樹脂の添加量は、全固形分の0.5質量%以上10質量%以下である。添加量が0.5質量%未満の場合、特にプラスチック支持体への接着性の改良効果が少なく、また、10質量%を越えると、修正後の塗膜の親油性が高まり、逆に印刷汚れが発生してしまう。
【0026】
また、本発明における親水性樹脂とは、単独で造膜した際の、水との接触角が40度以下になる樹脂である。例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン類およびこれらの誘導体等が挙げられる。本発明における親水性樹脂の添加量は、全固形分の0.5質量%以上10質量%以下、好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。添加量が0.5質量%未満の場合、修正液が分離しやすくなることがある。また、10質量%を越えると、修正部分の膜強度が劣化し、充分な耐刷性が得られないことがある。
【0027】
本発明における修正液の固形分濃度は、10質量%以上40質量%以下である。10質量%未満であると、塗布、乾燥後の塗膜の厚みが少なくなり、耐刷性が劣化することがある。また、40質量%を越えると、低温で析出してしまう等の問題が発生ことがある。
【0028】
本発明において使用できる有機溶媒としては、本発明の構成要素である、ゾルゲル反応性を有する結合剤、疎水性樹脂、親水性樹脂を分散することができる有機溶媒より適宜選択することができる。作業環境への影響、塗膜後の乾燥時間を考慮すると、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類を使用することが好ましく、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールが特に好ましい。また、同様な理由から、溶媒に占める割合は、50質量%以上であることが好ましい。50%未満では、修正後の乾燥時間が長く、塗膜形成後にすぐに刷り出すと、修正部分に汚れが発生することがある。
【0029】
また、本発明においては、高沸点の有機溶媒を併用することが好ましい。高沸点の溶媒を併用することにより、塗布時の液よりを防止することができ、フリンジ汚れの発生を低減することが可能になる。本発明に使用できる高沸点溶媒としては、沸点が110度以上のものが好ましい。
【0030】
(プラスチックフィルム支持体)
本発明に用いられるプラスチックフィルム支持体としては、特に大きな制限無く、金属、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、更にこれら材料を適宜貼り合わせた複合基材等も用いることができる。
【0031】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アセテート、ナイロン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、セルロースエステル類、シンジオタクチック−ポリスチレン、アタクチック−ポリスチレン、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリメチルメタクリレート等を挙げることができる。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
実施例1
(1)フィルム支持体の作製
シンジオタクチック−ポリスチレン支持体の作製
反応溶媒としてトルエン6リットルを用い、触媒としてテトラエトキシチタン5ミリモルおよびメチルアルミノキサンをアルミニウム原子として500ミリモル添加し、50℃においてモル比でスチレン48.94:p−メチルスチレン1.06とを加え、2時間重合反応を行った。反応終了後、生成物を塩酸とメタノールとの混合液で洗浄して、触媒成分を分解除去した。次いで乾燥することにより共重合体640gを得た。
【0034】
この共重合体の重量平均分子量(Mw)が44万であり、数平均分子量(Mn)が24万であった。この共重合体中のp−メチルスチレン単位の含有割合は5質量%であった。また、この共重合体は13C−NMRによる分析から、145.11ppm、145.22ppm、142.09ppmに吸収が認められ、そのピーク面積から算出したスチレン単位のラセミペンタッドでのシンジオタクティシティーは72%であった。
【0035】
これを150℃5時間減圧下で乾燥後280℃で押し出し、50℃の冷却ドラムの上で未延伸シートを得た。これを115℃で3.3倍に縦延伸を行った後、120℃で3.5倍に横延伸を行い、さらに180℃で30秒熱固定を実施した後、横方向に3%緩和しながら220℃で熱弛緩を行った。このようにして120μmの2軸延伸s−PSフィルムを得た。
【0036】
(2)下塗、バック層の塗設
上記で得られたフィルム支持体の両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また、反対側の面に、下記下引き塗布液c乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の
3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) 6.3質量%
(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40
の3元系共重合ラテックス 1.6質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1質量%
水 92.0質量%
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05質量%
硬膜剤H−1 0.02質量%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02質量%
防黴剤F−1 0.01質量%
水 98.9質量%
【0037】
【化1】

【0038】
《下引き塗布液c》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40
の3元系共重合ラテックス 0.4質量%
(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス
7.6質量%
ポリ塩化ビニリデン樹脂 0.5質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1質量%
水 91.4質量%
《下引き塗布液d》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
6.4質量%
硬膜剤H−2 0.7質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.07質量%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.03質量%
水 93.4質量%
成分d−11;
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0039】
【化2】

【0040】
次いで、前記支持体の各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0041】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒およびガス条件としてアルゴン、窒素および水素の体積比をそれぞれ90%および5%で、プラズマ処理を行い、2.2m幅にスリットした。
【0042】
下引き済み支持体のA面上に、下記第一親水層塗布液を乾燥膜3.0μm、塗布幅2mになるようにワイヤーバーを用いで塗布を行った。なお、支持体の搬送速度を50m/分、塗布液の供給量を450g/分とした。
【0043】
・第一親水層塗布液
スノーテックス−XS〔日産化学工業株式会社〕 9.62質量部
スノーテックス−ZL〔日産化学工業株式会社〕 0.6質量部
シルトンJC−40〔水澤化学工業株式会社〕 2.22質量部
STM−6500S〔日産化学工業株式会社〕 3質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム〔関東化学株式会社〕 0.12質量部
ミネラルコロイドMO〔ウイルバ−エリス株式会社〕 0.22質量部
MF−4500ブラック〔大日精化工業株式会社〕光熱変換素材 4質量部
リン酸三ナトリウム・12水〔関東化学株式会社〕 0.06質量部
FZ−2161〔日本ユニカー株式会社〕 0.16質量部
純水 80質量部
更に下記内容の第二親水層塗布液を設けた。
【0044】
下記親水層を乾燥膜厚0.6μm、塗布幅1.95mになるようにワイヤーバーを用い塗布を行った。
【0045】
・第二親水層塗布液
スノーテックス−S〔日産化学工業株式会社〕 1.56質量部
スノーテックス−PSM〔日産化学工業株式会社〕 2.34質量部
シルトンJC−20〔水澤化学工業株式会社〕 1.2質量部
AMT−08〔水澤化学工業株式会社〕 3.6質量部
MP−4540〔日産化学工業株式会社〕 1.8質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム〔関東化学株式会社〕 0.12質量部
ミネラルコロイドMO〔ウイルバ−エリス株式会社〕 0.24質量部
MF−4500ブラック〔大日精化工業株式会社〕光熱変換素材 1.08質量部
リン酸三ナトリウム・12水〔関東化学株式会社〕 0.06質量部
純水 88質量部
上記で得られた親水層積層品に乾燥膜厚0.60(g/m2)、塗布幅1.9mになるようにバー塗布装置を用いて下記画像形成層塗布を行った。
【0046】
・画像形成層
HI−DISPER A−206〔株式会社岐阜セラック製造所〕熱溶融性粒子平均粒径0.5μm 2.375質量部
DL−522〔株式会社日本触媒、平均分子量170.000〕
0.7125質量部
HI−DISPER A118〔株式会社岐阜セラック製造所〕熱溶融性粒子平均粒径0.3μm 6.4125質量部
ペノンJE−66〔日澱化学株式会社〕変性澱粉 質量部
トクソーIPA〔株式会社トクヤマ〕 質量部
純水 90.5質量部
《露光》
上記によって得られた平版印刷板材料の、塗布幅手方向の中心部、および両端部(右、左)を露光サイズに合わせて断裁した後に、平版印刷板材料の短辺側に露光基準用の2つの穴と印刷機の基準用に2つの切り込みを開けた。図1〜3に示す構成の露光装置を用いて、開けた穴を露光装置のピンに取り付けながら、露光ドラムに巻き付け固定した。露光には、波長808nm、スポット経約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを200mJ/cm2、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で、上下、天地にトンボを露光した。
【0047】
《評価方法》
上記で得られた試料に、印刷作業で発生すると思われる傷の代用として、爪、および金属製の定規の角で擦過した。爪で擦過した後は、画像層が親水性層にめり込んでおり、また金属製の定規で傷をつけた部分は、親水性層が破壊されて、プラスチック支持体が露出していた。
【0048】
印刷機を三菱重工業社製DAIYAF−1、湿し水をアストロマーク3(日研化学研究所)の2質量%溶液、インクを東洋インク社製のトーヨーハイエコー、用紙を上質紙、印刷開始のシークエンスを、水付けローラとインクローラとを実質的に同時に接触させて版胴を5回回転として、50枚印刷したところ、印刷物上に上下天地のトンボおよび、爪、金属製の定規で傷付けた部分が画像として現れた。これを不要画像部とする。
【0049】
印刷機を停止し、版面上の前記不要画線部およびその周辺の非画線部に、次に示す修正液を綿棒で塗設し、30秒後に再度印刷を開始した。刷り出し後30枚目の印刷物および、連続10,000枚印刷後の印刷物を目視観察した。
【0050】
結果を表1に示す。
【0051】
表中汚れは、下記基準によりランク評価した。
【0052】
○:まったく汚れが認められない
△:かすかに汚れている
×:明らかに汚れている
【0053】
【表1】

【0054】
表1から、本発明の場合には、刷りだし直後、耐刷後、ともに印刷汚れが発生しないことがわかる。
【0055】
実施例2
実施例1と同様に、ただし、下記処方の修正液を用いて修正を行った。
【0056】
結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2から、疎水性樹脂(エスレックBL−5Z)の比率が適性であると、刷り出し、耐刷後共に良好に消去できているが、該比率が少ないと(No.6)、耐刷性に劣り、該比率が多いと(No.9)、フリンジ部が汚れやすくなることがわかる。また、本発明の構成要素である親水性樹脂(ジュリマーAC−10SLP)が無いと、同様にフリンジ汚れが劣化することがわかる。
【0059】
実施例3
実施例1と同様に、ただし、下記処方の修正液を用いて修正を行った。
【0060】
結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3から、本発明において、沸点が110℃以上の有機溶媒(1−ブタノール;沸点117.7℃)を併用すると、フリンジ汚れが改良されることがわかる。また、溶媒中に占める有機溶媒量の割合が50%を下まわると、印刷汚れが劣化することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】印刷版材料を露光ドラムに巻きつけた状態を示す斜視図。
【図2】露光ドラムの基本的構成を示す断面図。
【図3】印刷版材料を露光部に繰り出すための繰出部と露光部を示す全体構成図。
【符号の説明】
【0064】
1 圧力ロール
2 吸引孔
3 印刷版材料
5 露光ドラム
8 光学的書込み手段
9 筐体
10 減圧孔弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷版に塗布定着させて、印刷汚れの修正を行う平版印刷版用の修正液であって、該平版印刷版用の修正液が少なくとも1種の疎水性樹脂、および少なくとも1種の親水性樹脂を含有することを特徴とする平版印刷版用の修正液。
【請求項2】
前記平版印刷版用の修正液が、更に、ゾルゲル反応性を有するオルガノシリカゾルあるいはアルコキシシランを含有することを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項3】
前記平版印刷版用の修正液の固形分濃度が10%以上30%以下であり、溶媒の50%以上が少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項1または2記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項4】
前記疎水性樹脂の含有量が、全固形分の0.5%以上10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項5】
前記平版印刷版用の修正液に含まれる有機溶媒が、少なくとも1種のアルコール類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項6】
前記平版印刷版用の修正液に含まれる該有機溶媒が、少なくとも1種のアルコール類および沸点が110℃以上の有機溶媒を併用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項7】
平版印刷版材料に画像記録した後、水現像または印刷機上で湿し水現像して得られた平版印刷版の不要画線部を消去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液。
【請求項8】
平版印刷版材料に画像記録した後、水現像または印刷機上で湿し水現像して得られた平版印刷版の不要画線部を、請求項1〜7のいずれか1項記載の平版印刷版用の修正液を平版印刷版に塗布定着させて消去することを特徴とする平版印刷版の不要画線部の消去修正方法。
【請求項9】
前記平版印刷版の支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする請求項8記載の平版印刷版の不要画線部の消去修正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−83416(P2007−83416A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271728(P2005−271728)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】