説明

平面光波回路素子の製造方法

【課題】平面光波回路素子を高精度で製造できる方法を提供する。
【解決手段】第1コア部を有する第1導波路回路部と、前記第1導波路回路部の第1コア部よりも最大厚さが厚い第2コア部を有する第2導波路回路部とを備えた平面光波回路素子の製造方法であって、下部クラッド層上に、前記第1コア部の厚さに対応する厚さを有する第1コア層と前記第2コア部の最大厚さに対応する厚さを有する第2コア層とを形成するコア層形成工程と、前記第1コア層を少なくとも該第1コア層の厚さだけ前記第1コア部のパターンにエッチングするとともに、前記第2コア層を少なくとも前記第1コア層の厚さだけ前記第2コア部のパターンにエッチングする第1エッチング工程と、前記第2コア層の残りの厚さの部分を選択的に前記第2コア部のパターンにエッチングする第2エッチング工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光波回路素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石英系ガラスを材料とする導波路回路である平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)により構成したマッハツェンダー光干渉計(Mach-Zehnder interferometer:MZI)やアレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating:AWG)などの光干渉計素子が、波長合分波器として用いられている。これらの波長合分波器は、光干渉計素子を構成する石英系ガラスの屈折率の温度依存性のため、波長合分波特性の温度依存性を有している。例えば、石英系ガラスの屈折率の温度係数が約1×10−5(1/℃)であるときに、波長合分波器の透過中心波長λcの温度係数が約0.01(nm/℃)であることが知られている。
【0003】
この温度依存性を解消するために、波長合分波器をヒータやペルチェ素子等の温度制御手段に実装することで一定の温度に保ち、温度に依存しない一定の透過中心波長λcを得る方法がある。あるいは、逆に波長合分波器を温度制御して、透過中心波長λcを任意に変化させることにより、波長可変特性を有する波長合分波器を実現する技術が開示されている。
【0004】
一方、電力消費量の削減などを目的として、上記の温度制御手段を用いずに一定のまたは可変のλcを得ることが求められている。特許文献1には、MZIのアーム部にコア部を横切る溝を形成し、この溝に屈折率の温度係数が石英系ガラスとは異なる樹脂からなる温度補償材料(たとえば、ポリシロキサン)を挿入する技術が開示されている。特許文献1によれば、MZIを構成する材料の屈折率の温度依存性を相殺するような温度補償材料・溝設計を適用することによって、波長合分波器の透過中心波長λcの温度依存性をほぼ無くした温度無依存型波長合分波器が実現される。また、特許文献2では、温度補償材料を温度制御することによって透過中心波長λcを任意に変化させることができる波長可変型波長合分波器が開示されている。
【0005】
特許文献3では、温度補償材料を挿入する溝によってコア部に間隙ができることにより発生する放射損失を抑制するために、溝を複数に分割している。これによって、1つあたりの溝の幅(光導波方向での幅)を小さくできるので、放射損失を抑制することができる。さらに特許文献3では、溝を形成するコア部の、基板面に対して水平方向の幅を変化させて、テーパ形状を設けている。これによって、溝の前後でのコア部のサイズを拡大し、コア部を導波する光の、溝内の端面におけるスポットサイズを拡大することによって、放射損失を抑制している。また、特許文献3では、溝を形成するコア部の、基板面に対して垂直方向の高さを変化させることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3436937号公報
【特許文献2】特開2010−054624号公報
【特許文献3】特許第4058402号公報
【特許文献4】特開2010−128109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は、特許文献3に記載の波長合分波器において、溝を形成するコア部の、基板面に対して水平方向の幅および垂直方向の高さを変化させた場合の構成を模式的に示す平面図である。図13は、図12に示す波長合分波器のC−C線断面図である。また、図14は、図12に示す波長合分波器のD−D線断面図である。
【0008】
図12に示すように、この波長合分波器200は、光入力ポート201、202と、光入力ポート201、202に接続したMZI206と、MZI206に接続した光出力ポート208、209とを備えている。MZI206は、方向性結合器203と、方向性結合器203に接続したアーム部204、205と、アーム部204、205に接続した方向性結合器207とを備えている。
【0009】
方向性結合器203は、図13に示すように、シリコン(Si)からなる基板221上に形成され、コア部203a、203bと、コア部203a、203bの外周に形成されたクラッド部222とを備えている。コア部203a、203bは、屈折率を高めるドーパントである酸化ゲルマニウム(GeO)が添加された石英ガラスからなり、コア部203a、203bを導波する光が干渉するように、所定の長さだけ互いに平行に近接して配置されている。また、クラッド部222は、たとえば屈折率調整用のドーパントが添加されていない純石英ガラスからなり、コア部203a、203bよりも屈折率が低く設定されている。
【0010】
方向性結合器207は、方向性結合器203と同様に、基板221上に形成され、コア部207a、207bと、コア部207a、207bの外周に形成されたクラッド部222とを備えている。
【0011】
図12に示すように、MZI206のアーム部204は、基板221上に形成され、順次接続したコア部204a、幅テーパコア部204b、厚さと幅とが一定の水平方向スポットサイズ拡大コア部204c、厚さテーパコア部204d、厚さと幅とが一定のスポットサイズ拡大コア部204e、厚さテーパコア部204d、水平方向スポットサイズ拡大コア部204c、幅テーパコア部204b、およびコア部204aと、これらのコア部の外周に形成されたクラッド部222とを備えている。また、アーム部205は、基板221上に形成され、順次接続したコア部205a、幅テーパコア部205b、厚さと幅とが一定の水平方向スポットサイズ拡大コア部205c、厚さテーパコア部205d、厚さと幅とが一定のスポットサイズ拡大コア部205e、厚さテーパコア部205d、水平方向スポットサイズ拡大コア部205c、幅テーパコア部205b、およびコア部205aと、これらのコア部の外周に形成されたクラッド部222とを備えている。また、アーム部204は、アーム部205よりも光路長が長くなるように設定されている。
【0012】
アーム部204、205には、スポットサイズ拡大コア部204e、205eを横切るように複数の溝206a、206bが形成されている。これらの溝206a、206b内には温度補償材料210が挿入されている。なお、アーム部204の光路長は、アーム部205より長いため、その割合に応じて溝206aの幅は溝206bの幅より広くなっている。すなわち、溝206aの幅は溝206bの幅よりも広くなっており、温度補償材料の幅も広くなっている。
【0013】
図15は、アーム部204の要部の上面および側断面を示す図である。また、図16は、図12のE−E線断面、F−F線断面、G−G線断面、H−H線断面、I−I線断面、J−J線断面におけるコア部または温度補償材料の断面形状を示す図である。図15、16に示すように、アーム部204では、幅テーパコア部204bにおいてはスポットサイズ拡大コア部204eに向かってコア部の幅が拡大し、厚さテーパコア部204dにおいてはスポットサイズ拡大コア部204eに向かってコア部の厚さが拡大することによって、コア部を導波する光の、溝206a内の端面におけるスポットサイズを幅および厚さの両方向に拡大するようにしている。また、アーム部205もアーム部204と同様の構造を有している。
【0014】
図12に示すような幅方向と厚さ方向とにテーパ形状を有する光導波路を含む波長合分波器200を製造する方法として、たとえば以下のような方法がある(特許文献4参照)。図17〜19は、幅方向と厚さ方向とにテーパ形状を有する光導波路を含む波長合分波器の製造方法を説明する図である。
【0015】
本製造方法では、はじめに、図17に示すように、火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition、FHD)法により、基板221上に石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、下部クラッド層222aを形成する。つぎに、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、下部クラッド層222a上にGeOを含む石英系ガラス微粒子を堆積し、第1コア層223を形成する。
【0016】
つぎに、図18に示すように、図17に示す第1コア層223上に、開口部M21aを有するシャドウマスクM21を配置する。2箇所の開口部M21aは繋がっていてもよい。なお、図18には、形成すべき波長合分波器200の導波路構造を示す想像線L21を示している。このように、シャドウマスクM21は、幅テーパコア部を形成すべき領域上に開口部M21aが位置するように配置する。
【0017】
つぎに、図19を参照して本製造方法を説明するが、図12のC−C線断面、D−D線断面、図18のK−K線断面を用いて説明する。まず、図19(a)に示すように、シャドウマスクM21の上から第1コア層223上に、GeOを含む石英系ガラス微粒子を堆積するためのプラズマ状態になった原料ガスG21を供給する。すると、原料ガスG21はシャドウマスクM21がある領域では遮断される。また、原料ガスG21は、開口部M21aの中央領域ではそのまま第1コア層223上に到達する。また、開口部M21aの周縁領域では原料ガスG21がシャドウマスクM21の下側に回りこんで第1コア層223上に到達するが、その回り込む原料ガスG21の量は開口部M21aから遠ざかるにつれて少なくなる。その結果、図19(b)に示すように、開口部M21aの下の領域には、中央部が平坦であり、周辺部には外側に向かって厚さがテーパ状に薄くなっている上部コア層224が形成される。なお、図19(b)に示したK−K線断面におけるテーパ状の部分が、図15に示したアーム部204の厚さテーパコア部204dにおけるテーパ状の部分となる。アーム部205の厚さテーパコア部205dにおけるテーパ状の部分についても同様である。ここで、第1コア層223と上部コア層224とが堆積した層を第2コア層225とする。
【0018】
つぎに、第2コア層225をアニールした後、図19(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1コア層223と第2コア層225との上にレジストパターンR21、R22を形成する。このレジストパターンR21、R22は、波長合分波器200の対応する光導波路(コア部)の形状に形成する。
【0019】
つぎに、図19(d)に示すように、ドライエッチングによって第1コア層223と第2コア層225とを同時にエッチングし、波長合分波器200の光導波路(コア部)の形状にし、その後レジストパターンR21、R22を除去する。このとき、コア部203a、203b、スポットサイズ拡大コア部204e、205eをはじめとするコア部が形成される。
【0020】
つぎに、図19(e)に示すように、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、上部および側部クラッド層222bを形成する。
【0021】
その後、溝206a、206bを形成し、溝206a、206b内に温度補償材料210を挿入する。さらに、素子分離等の必要な処理を行うことによって、波長合分波器200を製造することができる。
【0022】
しかしながら、上記製造方法で波長合分波器200の製造を行う場合、厚さテーパコア部204c、205cおよびスポットサイズ拡大コア部204d、205dのような厚いコア部をエッチングにより形成するために、レジストパターンを厚く形成しなければならない。その結果、コア部203a、203bがたとえば数μm程度の間隔で近接した方向性結合器203を精度良く製造することが困難であり、その結果波長合分波器200を高精度で製造することが困難になるという問題が生じる。
【0023】
たとえば、図20は、方向性結合器のコア部のパターンを形成するためのレジストを形成する様子を示した図である。図20では、基板221上に下部クラッド層222aを介して形成された第1コア層223にネガ型のレジストR22を塗布し、その後現像光LLを露光してレジストパターンR21を形成している。このとき、現像光LLが完全に平行光でなく拡散または収束しながら露光されると、レジストR22が厚いために、レジストR22の上面と下面とで現像光LLのビームのサイズの差が顕著になる。その結果、レジストパターンR21の近接したパターン同士が接触したり、パターン幅やパターンの間隔が所望の値にならない等の問題が生じ、その結果形成するコア部203a、203bの位置精度が低下するという問題が生じる。
【0024】
また、レジストパターンR21が精度よく形成できた場合でも、その後のエッチング工程において、厚さテーパコア部204d、205dおよびスポットサイズ拡大コア部204e、205eに合わせた深さをエッチングすると、コア部203a、203bに対するサイドエッチング量が多くなり、コア部203a、203bの仕上がり幅や導波路間隔が設計値から外れ、また断面形状も精度がよい矩形とならず、たとえば台形状になるために光学特性が設計値よりも劣化するという問題が生じる。
【0025】
また、図21は、方向性結合器を形成する領域に上部および側部クラッド層222bを形成する様子を示した図である。図21に示すように、上記製造方法では、ドライエッチングの際に厚さテーパコア部204c、205cおよびスポットサイズ拡大コア部204e、205eのような厚いコア部をエッチングする必要があるので、方向性結合器203を形成する領域では、下部クラッド層222aまで深くエッチングされる。その結果、近接した第1コア層223の間の深い間隙にガラス微粒子Pが入りにくくなり、ガラス微粒子Pの密度が、2つの第1コア層223の外側の領域に供給されるガラス微粒子Pの密度よりも少なくなる。このガラス微粒子Pの密度の違いによって第1コア層223には外側から内側に向かって応力が働く。その結果、ガラス化の際にコア部203a、203bが互いに内側に倒れ込むので、コア部203a、203bの位置精度が低下するという問題が生じる。
【0026】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、平面光波回路素子を高精度で製造できる平面光波回路素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、第1コア部を有する第1導波路回路部と、前記第1導波路回路部の第1コア部よりも最大厚さが厚い第2コア部を有する第2導波路回路部とを備えた平面光波回路素子の製造方法であって、下部クラッド層上に、前記第1コア部の厚さに対応する厚さを有する第1コア層と前記第2コア部の最大厚さに対応する厚さを有する第2コア層とを形成するコア層形成工程と、前記第1コア層を少なくとも該第1コア層の厚さだけ前記第1コア部のパターンにエッチングするとともに、前記第2コア層を少なくとも前記第1コア層の厚さだけ前記第2コア部のパターンにエッチングする第1エッチング工程と、前記第2コア層の残りの厚さの部分を選択的に前記第2コア部のパターンにエッチングする第2エッチング工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第2エッチング工程は、開口部を有するシャドウマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第2エッチング工程は、メタルマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第2エッチング工程は、レジストマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記コア層形成工程は、前記下部クラッド層に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部に前記第2コア層の一部を形成する一部コア層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記コア層形成工程は、前記第2コア層の少なくとも一部が厚さ方向にテーパ形状を有するように該第2コア層を形成することを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第1導波路回路部は、近接して配置された2つの前記第1コア部を有することを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第1導波路回路部は方向性結合器であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第1導波路回路部はY分岐光導波路であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第1導波路回路部は通過型スターカプラであることを特徴とする。
【0037】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第1導波路回路部は多モード干渉カプラであることを特徴とする。
【0038】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第2導波路回路部はマッハツェンダー光干渉計の一部を構成することを特徴とする。
【0039】
また、本発明に係る平面光波回路素子の製造方法は、上記の発明において、前記第2導波路回路部はアレイ導波路回折格子の一部を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、平面光波回路素子を高精度で製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、実施の形態1に係る製造方法によって製造する平面光波回路素子である波長合分波器の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す波長合分波器のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す波長合分波器のB−B線断面図である。
【図4−1】図4−1は、実施の形態1に係る製造方法を説明する図である。
【図4−2】図4−2は、実施の形態1に係る製造方法を説明する図である。
【図5−1】図5−1は、実施の形態2に係る製造方法を説明する図である。
【図5−2】図5−2は、実施の形態2に係る製造方法を説明する図である。
【図6−1】図6−1は、実施の形態3に係る製造方法を説明する図である。
【図6−2】図6−2は、実施の形態3に係る製造方法を説明する図である。
【図7】図7は、上部コア層と下部コア層とを形成して第2コア層を形成した場合の方向性結合器とMZIとの模式的な断面図である。
【図8】図8は、実施の形態4に係る製造方法を説明する図である。
【図9】図9は、実施の形態に係る製造方法によって製造できるその他の平面光波回路素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は、実施の形態に係る製造方法によって製造できるその他の平面光波回路素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図11】図11は、実施の形態に係る製造方法によって製造できるその他の平面光波回路素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図12】図12は、特許文献3に記載の波長合分波器において、溝を形成するコア部の、基板面に対して水平方向の幅および垂直方向の高さを変化させた場合の構成を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は、図12に示す波長合分波器のC−C線断面図である。
【図14】図14は、図12に示す波長合分波器のD−D線断面図である。
【図15】図15は、アーム部の要部の上面および側断面を示す図である。
【図16】図16は、図15のE−E線断面、F−F線断面、G−G線断面、H−H線断面、I−I線断面、J−J線断面におけるコア部または温度補償材料の断面形状を示す図である。
【図17】図17は、幅方向と厚さ方向とにテーパ形状を有する光導波路を含む波長合分波器の製造方法を説明する図である。
【図18】図18は、幅方向と厚さ方向とにテーパ形状を有する光導波路を含む波長合分波器の製造方法を説明する図である。
【図19】図19は、幅方向と厚さ方向とにテーパ形状を有する光導波路を含む波長合分波器の製造方法を説明する図である。
【図20】図20は、方向性結合器のコア部のパターンを形成するためのレジストを形成する様子を示した図である。
【図21】図21は、方向性結合器を形成する領域に上部および側部クラッド層を形成する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、図面を参照して本発明に係る平面光波回路素子の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合がことに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0043】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る平面光波回路素子の製造方法について説明する。図1は、本実施の形態1に係る製造方法によって製造する平面光波回路素子である波長合分波器の構成を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す波長合分波器のA−A線断面図である。また、図3は、図1に示す波長合分波器のB−B線断面図である。
【0044】
図1に示すように、この波長合分波器100は、光入力ポート101、102と、光入力ポート101、102に接続したMZI106と、MZI106に接続した光出力ポート108、109とを備えている。MZI106は、第1導波路回路部としての方向性結合器103と、方向性結合器103に接続し、第2導波路回路部を有するアーム部104、105と、アーム部104、105に接続した第1導波路回路部としての方向性結合器107とを備えている。
【0045】
方向性結合器103は、図2に示すように、Siからなる基板121上に形成され、第1コア部としてのコア部103a、103bと、コア部103a、103bの外周に形成されたクラッド部122とを備えている。コア部103a、103bは、GeOが添加された石英ガラスからなり、コア部103a、103bを導波する光が干渉するように、所定の長さだけ互いに平行に近接して配置されている。また、クラッド部122は、たとえばB、Pなどを添加した石英系ガラスからなり、コア部103a、103bよりも屈折率が低く設定されている。
【0046】
方向性結合器107は、方向性結合器103と同様に、基板121上に形成され、第1コア部としてのコア部107a、107bと、コア部107a、107bの外周に形成されたクラッド部122とを備えている。コア部107a、107bは、GeOが添加された石英ガラスからなり、コア部107a、107bを導波する光が干渉するように互いに平行に近接して配置されている。
【0047】
MZI106のアーム部104は、方向性結合器103、107と同一の基板121上に形成され、順次接続したコア部104a、幅テーパコア部104b、厚さと幅とが一定の水平方向スポットサイズ拡大コア部104c、第2コア部としての厚さテーパコア部104d、厚さと幅とが一定のスポットサイズ拡大コア部104e、厚さテーパコア部104d、水平方向スポットサイズ拡大コア部104c、幅テーパコア部104b、およびコア部104aと、これらのコア部の外周に形成されたクラッド部122とを備えている。また、アーム部105は、同一の基板121上に形成され、順次接続したコア部105a、幅テーパコア部105b、厚さと幅とが一定の水平方向スポットサイズ拡大コア部105c、第2コア部としての厚さテーパコア部105d、厚さと幅とが一定のスポットサイズ拡大コア部105e、厚さテーパコア部105d、水平方向スポットサイズ拡大コア部105c、幅テーパコア部105b、およびコア部105aと、これらのコア部の外周に形成されたクラッド部122とを備えている。アーム部104、105のコア部は、いずれもGeOが添加された石英ガラスからなる。また、アーム部104は、アーム部105よりも光路長が長くなるように設定されている。
【0048】
アーム部104、105には、スポットサイズ拡大コア部104e、105eを横切るように複数の溝106a、106bが形成されている。これらの溝106a、106b内には温度補償材料110が挿入されている。なお、アーム部104の光路長は、アーム部105より長いため、その割合に応じて溝106aの幅は溝106bの幅より広くなっている。すなわち、溝106aの幅は溝106bの幅よりも広くなっているため、温度補償材料の幅も広くなっている。なお、放射損失に影響が小さい範囲においては、溝106a、106bは厚さテーパコア部104d、105dに形成しても良い。
【0049】
また、アーム部104は、図15に示すアーム部204と同様に、幅テーパコア部104bにおいてはスポットサイズ拡大コア部104eに向かってコア部の幅が拡大し、厚さテーパコア部104dにおいてはスポットサイズ拡大コア部104eに向かってコア部の厚さが拡大している。これによって、アーム部104は、コア部を導波する光の、溝106a内の端面におけるスポットサイズを幅および厚さの両方向に拡大するようにしている。また、アーム部105もアーム部104と同様の構造を有している。
【0050】
各コア部のサイズについて例示すると、コア部103a、103b、104a、105a、107a、107bのサイズは、いずれも6μm×6μmである。また、スポットサイズ拡大コア部104e、105eのサイズは、最大の部分でいずれも12μm×12μmである。また、各コア部とクラッド部122との比屈折率差はたとえば1%である。
【0051】
この波長合分波器100では、MZI106の方向性結合器103が、光入力ポート101または光入力ポート102から入力した光を所定の光強度比(たとえば1:1)で分岐し、アーム部104、105に入力させる。アーム部104、105は、2分岐された光を、アーム部104、105の光路長差に応じた位相差をつけた状態で方向性結合器107に出力する。方向性結合器107は、位相差がつけられた2つの光を結合し、光出力ポート108または光出力ポート109に出力する。その結果、この波長合分波器100は、光入力ポート101、102と光出力ポート108、109との間で、MZI106のアーム部104、105の光路長差に応じた透過波長特性を有しており、波長合分波器として機能する。
【0052】
また、アーム部104と、アーム部と105の光路長差をΔL、アーム部104に挿入された温度補償材料110と、アーム部105に挿入された温度補償材料110との幅の総和の差をΔL、アーム部104、105の屈折率の温度係数を(dn/dT)、温度補償材料110の屈折率の温度係数を(dn/dT)とすると、下記の式(1)を満足するように設定すると、波長合分波器100の温度無依存化が実現される。
【0053】
ΔL×(dn/dT)+ΔL×[(dn/dT)−(dn/dT)]=0 ・・・ (1)
【0054】
なお、温度補償材料110としては、特許文献1に開示されるような、ポリシロキサン等の屈折率の温度係数が石英系ガラスとは異なる材料を使用することができる。
【0055】
(製造方法)
つぎに、本実施の形態1に係る製造方法について説明する。はじめに、図17に示す工程と同様に、FHD法により、基板121上に石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、下部クラッド層を形成する。つぎに、プラズマCVD法によって、下部クラッド層上にGeOを含む石英系ガラス微粒子を堆積し、第1コア層を形成する。
【0056】
つぎに、第1コア層上に、図18に示す工程と同様の、開口部を有するシャドウマスクを配置する。このとき、幅テーパコア部を形成すべき領域上に開口部が位置するようにシャドウマスクを配置する。
【0057】
つぎに、図4−1、図4−2を参照して本実施の形態1に係る製造方法を説明するが、図1のA−A線断面、B−B線断面を用いて説明する。まず、図4−1(a)に示すように、プラズマCVD法によって、シャドウマスクM11の上から、基板121上に下部クラッド層122aを介して形成した第1コア層123上に、GeOを含む石英系ガラス微粒子を堆積するためのプラズマ状態になった原料ガスG11を供給する。すると、原料ガスG11はシャドウマスクM11がある領域では遮断される。また、原料ガスG11は、開口部M11aの中央領域ではそのまま第1コア層123上に到達する。また、開口部M11aの周縁領域では原料ガスG11がシャドウマスクM11の下側に回りこんで第1コア層123上に到達するが、その回り込む原料ガスG11の量は開口部M11aから遠ざかるにつれて少なくなる。その結果、図4−1(b)に示すように、開口部M11aの下の領域には、中央部が平坦であり、周辺部には外側に向かって厚さがテーパ状に薄くなっている上部コア層124が形成される。なお、図19(b)に示した場合と同様に、B−B線断面と垂直な断面におけるテーパ状の部分が、アーム部104、105の厚さテーパコア部104d、105dにおけるテーパ状の部分となる。ここで、第1コア層123と上部コア層124とが堆積した層を第2コア層125とする。
【0058】
つぎに、図4−1(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1コア層123と第2コア層125との上にそれぞれレジストパターンR11、R12を形成する。このレジストパターンR11、R12は、波長合分波器100の光導波路(コア部)の形状に形成する。ここで、レジストパターンR11、R12は、第1コア層123をその厚さだけ完全にエッチングすることができる程度の厚さにする。なお、レジストパターンR11、R12の材料は特に限定されない。
【0059】
つぎに、図4−1(d)に示すように、ハロゲン系ガスを用いた反応性イオンエッチング等のドライエッチングによって第1コア層123と第2コア層125とを同時にエッチングする(第1エッチング工程)。このとき、第1コア層123は完全にエッチングされ、対応するコア部(コア部103a、103b等)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第1コア層123が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。一方、第2コア層125については、第1コア層123の厚さ(また、たとえばこれに加えて2μm弱)だけエッチングされて、そのエッチングされた厚さの部分125aだけが対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。その後レジストパターンR11、R12を除去する。なお、上記のように深めにエッチングを行う場合は、追加のエッチングの深さは2μm弱に限られず、製造精度を勘案してたとえば0.1μm〜3μmに適宜設定すればよい。
【0060】
つぎに、図4−2(e)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1エッチング工程によってパターンが形成された第2コア層125の部分125a上にレジストパターンR13を形成する。このレジストパターンR13は、第1エッチング工程においてエッチングしなかった第2コア層125の残りの厚さの部分を完全にエッチングすることができる程度の厚さにする。なお、レジストパターンR13の材料は特に限定されない。
【0061】
つぎに、図4−2(f)に示すように、図4−1(a)の工程で用いたものと同じシャドウマスクM11を配置し、シャドウマスクM11の上からエッチングガスG12を供給して反応性イオンエッチング等のドライエッチングを行う(第2エッチング工程)。その結果、図4−2(g)に示すように、第2コア層125は選択的に完全にエッチングされて、対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第2コア層125が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。一方、第1コア層123はシャドウマスクM11で覆われているため、エッチングされない。その結果、図21で示したような深い間隙は、2つの第1コア層123の間には形成されず、第1エッチング工程で形成された高精度な導波路のパターンが維持される。したがって、各コア部の仕上がり幅や断面形状も良好なものとなる。
【0062】
つぎに、図4−2(h)に示すように、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、上部および側部クラッド層122bを形成する。ここで、上述したように、2つの第1コア層123の間には深い間隙が形成されていない。したがって、近接した2つの第1コア層123の間に供給されるガラス微粒子Pの密度と、2つの第1コア層123の外側の領域に供給されるガラス微粒子Pの密度とに差が生じても、ガラス化の際にコア部103a、103bが互いに内側に倒れ込むことが抑制される。その結果、コア部103a、103bの位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができる。なお、方向性結合器107のコア部107a、107bについても同様に、位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができる。また、コア部103a、103b、107a、107bの光学主軸が傾くことが抑制されるので、方向性結合器103、107において偏波クロストーク光の発生が抑制され、偏波モード結合が抑えられる。これにより、方向性結合器103、107における偏波モード結合に起因する偏波依存周波数シフト(Polarization Dependent Frequency Shift:PDFS)を低減することができる。
【0063】
その後、溝106a、106bを形成し、溝106a、106b内に温度補償材料110を挿入する。さらに、素子分離等の必要な処理を行うことによって、波長合分波器100を製造することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、方向性結合器103、107を導波路の幅や間隔の精度を高く、また導波路形状も良く形成することができるので、波長合分波器100を高精度で製造することができる。
【0065】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る波長合分波器100の製造方法について説明する。本実施の形態2は、実施の形態1の第1エッチング工程と第2エッチング工程とを、第2エッチング工程、第1エッチング工程の順に行うものである。
【0066】
以下、図5−1、図5−2を参照して本実施の形態2に係る製造方法を説明する。はじめに、図5−1(a)に示すように、実施の形態1と同様にして、基板121上に下部クラッド層122a、第1コア層123、第2コア層125を形成したものを準備する。そして、フォトリソグラフィ技術によって、第2コア層125の上にレジストパターンR13を形成する。このレジストパターンR13は、厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105eのパターンに形成する。レジストパターンR13の厚さについては後述する。
【0067】
つぎに、図5−1(b)に示すように、図4−1(a)の工程で用いたものと同じシャドウマスクM11を配置し、その上からエッチングガスG12を供給してドライエッチングを行う(第2エッチング工程)。その結果、図5−1(c)に示すように、第2コア層125は所定の厚さだけ選択的にエッチングされて、そのエッチングされた厚さの部分125bだけが対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。一方、第1コア層123はシャドウマスクM11で覆われているため、エッチングされない。
【0068】
つぎに、図5−1(d)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1コア層123と第2コア層125のパターンが形成された部分125bとの上にそれぞれレジストパターンR11、R12を形成する。このレジストパターンR11、R12は、波長合分波器100の光導波路(コア部)の形状に形成する。ここで、レジストパターンR11、R12は、第1コア層123をその厚さだけ完全にエッチングすることができる程度の厚さにする。
【0069】
つぎに、図5−2(e)に示すように、ドライエッチングによって第1コア層123と第2コア層125とを同時にエッチングする(第1エッチング工程)。このとき、第1コア層123および第2コア層125は完全にエッチングされ、対応するコア部(コア部103a、103b、スポットサイズ拡大コア部104e、105eをはじめとするすべてのコア部)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第1コア層123や第2コア層125が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。その結果、図21で示したような深い間隙は、2つの第1コア層123の間には形成されない。その後レジストパターンR11、R12を除去する。
【0070】
なお、図5−1(a)の工程で形成するレジストパターンR13の厚さは、第1エッチング工程を行った後に第2コア層125を完全にエッチングすることができる程度の厚さにしておく。
【0071】
つぎに、図5−2(f)に示すように、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、上部および側部クラッド層122bを形成する。ここで、上述したように、2つの第1コア層123の間には深い間隙が形成されていない。したがって、実施の形態1の場合と同様に、コア部103a、103bの位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができる。なお、方向性結合器107のコア部107a、107bについても同様に、位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができる。また、方向性結合器103、107における偏波モード結合に起因するPDFSを低減することができる。
【0072】
その後、溝106a、106bを形成し、溝106a、106b内に温度補償材料110を挿入する。さらに、素子分離等の必要な処理を行うことによって、波長合分波器100を製造することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、方向性結合器103、107を導波路の幅や間隔の精度を高く、また導波路形状も良く形成することができるので、波長合分波器100を高精度で製造することができる。
【0074】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る波長合分波器100の製造方法について説明する。本実施の形態3は、下部クラッド層に凹部を形成し、この凹部に第2コア層の一部を形成するものである。
【0075】
以下、図6−1、6−2を参照して本実施の形態3に係る製造方法を説明する。はじめに、図6−1(a)に示すように、基板121上に石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、下部クラッド層122aを形成する。つぎに、図4−1(a)の工程で用いたものと同じシャドウマスクM11を配置し、その上からエッチングガスG12を供給して下部クラッド層122aのドライエッチングを行う(凹部形成工程)。これによって、開口部M11aに対応する、厚さテーパコア部104c、105cを形成すべき領域の下部クラッド層122aに凹部122aaを形成する。このとき、開口部M11aの周辺領域におけるエッチングガスG12の回り込みによって、凹部122aaは、中央部が平坦であり、周辺部には外側に向かって深さがテーパ状に浅くなる形状となる。
【0076】
つぎに、図6−1(b)に示すように、図6−1(a)の工程で用いたものと同じシャドウマスクM11を配置し、プラズマCVD法によって、シャドウマスクM11の上から下部クラッド層122a上に原料ガスG11を供給し、凹部122aaに下部コア層126を形成する(一部コア層形成工程)。なお、図19(b)に示した場合と同様に、B−B線断面と垂直な断面における下部コア層126のテーパ状の部分が、アーム部104、105の厚さテーパコア部104d、105dにおけるテーパ状の部分となる。
【0077】
つぎに、図6−1(c)に示すように、プラズマCVD法によってGeOを含む石英系ガラス微粒子を堆積し、第1コア層123を形成する。ここで、第1コア層123と下部コア層126とが堆積した層を第2コア層127とする。
【0078】
その後は、図4−1(c)〜図4−2(h)と同様の工程を行う。すなわち、はじめに、図6−1(d)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1コア層123と第2コア層127との上にそれぞれレジストパターンR11、R12を形成する。
【0079】
つぎに、図6−1(e)に示すように、ドライエッチングによって第1コア層123と第2コア層127とを同時にエッチングする(第1エッチング工程)。このとき、第1コア層123は完全にエッチングされ、対応するコア部(コア部103a、103b等)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第1コア層123が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。一方、第2コア層127については、第1コア層123の厚さ(また、たとえばこれに加えて2μm弱)だけエッチングされて、そのエッチングされた厚さの部分127aだけが対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。その後レジストパターンR11、R12を除去する。
【0080】
つぎに、図6−2(f)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1エッチング工程によってパターンが形成された第2コア層127の部分127a上にレジストパターンR13を形成する。このレジストパターンR13は、第1エッチング工程においてエッチングしなかった第2コア層127の残りの厚さの部分を完全にエッチングすることができる程度の厚さにする。
【0081】
つぎに、図6−2(g)に示すように、図6−1(a)の工程で用いたものと同じシャドウマスクM11を配置し、シャドウマスクM11の上からエッチングガスG12を供給して反応性イオンエッチング等のドライエッチングを行う(第2エッチング工程)。その結果、図6−2(h)に示すように、第2コア層127は選択的に完全にエッチングされて、対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第2コア層125が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。一方、第1コア層123はシャドウマスクM11で覆われているため、深い間隙が2つの第1コア層123の間には形成されない。
【0082】
つぎに、図6−2(i)に示すように、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、上部および側部クラッド層122bを形成する。このようにして、実施の形態1、2と同様に、コア部103a、103b、方向性結合器107のコア部107a、107bの位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができ、かつPDFSを低減することができる。
【0083】
その後、溝106a、106bを形成し、溝106a、106b内に温度補償材料110を挿入する。さらに、素子分離等の必要な処理を行うことによって、波長合分波器100を製造することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、実施の形態1、2と同様に、方向性結合器103、107を導波路の幅や間隔の精度を高く、また導波路形状も良く形成することができるので、波長合分波器100を高精度で製造することができる。
【0085】
なお、上記実施の形態1と2では、第1コア層123の上に上部コア層124を形成し、実施の形態3では、第1コア層123の下に下部コア層126を形成している。これに対して、実施の形態1と実施の形態3とを組み合わせて、第1コア層123の上下にそれぞれ上部コア層と下部コア層とを形成して、第2コア層を形成してもよい。
【0086】
図7は、上部コア層と下部コア層とを形成して第2コア層を形成した場合のMZI106の模式的な断面図である。図7に示すように、上部コア層と下部コア層とを形成した場合は、方向性結合器103のコア部103a、103bと、アーム導波路104、105のスポットサイズ拡大コア部104e、105eとの厚さ方向の位置(すなわち、基板121に対する高さ位置)の中心を一致させることができる。
【0087】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係る波長合分波器100の製造方法について説明する。実施の形態1〜3では、シャドウマスクを用いて第2コア層を選択的にエッチングしている。これに対して、本実施の形態4は、メタルマスクを用いて第2コア層を選択的にエッチングするものである。
【0088】
以下、図8を用いて本実施の形態4に係る製造方法を説明する。まず、基板121に下部クラッド層122a、第1コア層123、第2コア層125を形成したものに、図4−1(c)、(d)に示す工程と同様に、フォトリソグラフィ技術によって、第1コア層123と第2コア層125との上にそれぞれレジストパターンR11、R12を形成し(図8(a)参照)、さらにドライエッチングによって第1コア層123と第2コア層125とを同時にエッチングする(第1エッチング工程)。これによって、第1コア層123は完全にエッチングされ、第2コア層125は所定の厚さの部分125aだけが所定のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第1コア層123が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。その後レジストパターンR11、R12を除去する(図8(b)参照)。
【0089】
つぎに、図8(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術によって、第1エッチング工程によってパターンが形成された第2コア層125の部分125a上、および、部分125aの周辺を除いた、厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e以外のコア部を形成すべき領域にレジストパターンR14を形成する。このレジストパターンR14は、第1エッチング工程においてエッチングしなかった第2コア層125の残りの厚さ部分を完全にエッチングすることができる程度の厚さにする。さらに、部分125a上以外のレジストパターンR14上にスパッタ法などを用いて金属材料を成膜し、メタルマスクM12を形成する。メタルマスクM12を構成する金属材料は特に限定はされない。ここでは、一例として第2コア層125のみを遮蔽するようなシャドウマスクを用いて、部分125a上を除くレジストパターンR14上にスパッタ法でメタルマスクM12を形成した。
【0090】
つぎにドライエッチングを行い(第2エッチング工程)、その後にリフトオフ法によってメタルマスクM12とレジストパターンR14とを除去する(図8(d)参照)。その結果、第2コア層125は完全にエッチングされて、対応するコア部(厚さテーパコア部104d、105dおよびスポットサイズ拡大コア部104e、105e)のパターンに形成される。但し、製造の精度のばらつきにより第2コア層125が完全にエッチングされない事態を防止するため、2μm弱だけ下部クラッド層122aにかかるよう深めにエッチングを行ってもよい。一方、第1コア層123はレジストパターンR14およびメタルマスクM12で覆われているため、エッチングされない。その結果、図21で示したような深い間隙は、第1コア層123の間には形成されない。
【0091】
つぎに、図8(e)に示すように、FHD法により、石英系ガラスの微粒子を堆積し、これを加熱してガラス微粒子を透明ガラス化し、上部および側部クラッド層122bを形成する。本実施の形態4においても、コア部103a、103b、方向性結合器107のコア部107a、107bの位置精度が高くなり、その間隔を所望の値とすることができる。また、方向性結合器103、107のPDFSを低減することができる。
【0092】
その後、溝106a、106bを形成し、溝106a、106b内に温度補償材料110を挿入する。さらに、素子分離等の必要な処理を行うことによって、波長合分波器100を製造することができる。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様に、波長合分波器100を高精度で製造することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態4では、メタルマスクM12を形成し、第2エッチング工程において第1コア層123が確実にエッチングされないようにしている。これに対して、第2エッチング工程において第1コア層123がエッチングされないような厚さにレジストパターンR14を形成し、これをマスクとすれば、メタルマスクM12を形成しなくてもよい。また、実施の形態4において、部分125a上のレジストパターンR14にもメタルマスクM12を形成してもよい。これによって、レジストパターンR14を厚くしなくても、第2エッチング工程において部分125aがエッチングされないようにすることができる。
【0095】
また、第1、第2エッチング工程を行うエッチング装置によってはシャドウマスクM11を使用するのが困難な構造のものがある(たとえば枚葉式のエッチング装置)。これに対して、メタルマスクM12を用いる場合やレジストパターンR14をマスクとする場合のようにシャドウマスクM11を使用しない製造方法は、エッチング装置の構造にかかわらず実施できる点で好ましい。
【0096】
また、上記実施の形態1に係るアーム部104、105では、幅テーパコア部104b、105bから厚さテーパコア部104d、105dにかけて、コア部が一旦幅方向へ拡大してから厚さ方向上向きへ拡大する構造になっている。しかしながら、図6に示す実施の形態3のように、コア部の厚さ方向への拡大は下向きに拡大してもよいし、図7に示すように上下に対して対称に拡大してもよい。さらには、コア部は、先に厚さ方向に拡大してから幅方向を拡大しても、幅方向と厚さ方向とが同時に拡大する構造でもよい。
【0097】
また、上記実施の形態に係る平面光波回路素子では、第1導波路回路部が方向性結合器であるが、第1導波路回路部が、たとえば0.1μmから10μm程度の距離に近接して配置された2つの第1コア部を有するものであれば、特に有効である。
【0098】
また、上記実施の形態に係る平面光波回路素子では、第2導波路回路部がマッハツェンダー光干渉計のアーム部を構成するが、たとえばスポットサイズ変換器でもよい。また、第2導波路回路部が、第1導波路回路部のコア部よりも最大厚さが厚い第2コア部を有するものであれば、本発明を適用できる。したがって、第2導波路回路部の第2コア部は少なくとも一部が厚さ方向にテーパ形状を有するものに限られず、一定の厚さを有するものでもよい。
【0099】
図9〜図11は、実施の形態に係る製造方法によって製造できるその他の平面光波回路素子の構成を模式的に示す平面図である。
【0100】
図9は、MZI型の波長合分波器100Aであり、第1導波路回路部としてのY分岐光導波路103A、107Aとの間に、第2導波路回路部を有するアーム部104Aa、104Abが接続されている。アーム部104Aa、104Abは、図1に示す波長合分波器100のアーム部104と同様の構成を有している。すなわち、アーム部104Aa、104Abは、順次接続したコア部、幅テーパコア部、水平方向スポットサイズ拡大コア部、厚さテーパコア部、スポットサイズ拡大コア部、厚さテーパコア部、水平方向スポットサイズ拡大コア部、幅テーパコア部、およびコア部を備えており、かつ、スポットサイズ拡大コア部を横切るように形成された溝内に温度補償材料110が挿入されたものである。なお、温度補償材料110の幅は、アーム部104Aa、104Abの光路長に応じて設定されている。
【0101】
図10は、AWG100Bであり、第1導波路回路部としての通過型スターカプラ103B、107Bとの間に、第2導波路回路部を有するアーム部104Ba、104Bb、104Bc、104Bdが接続されている。アーム部104Ba、104Bb、104Bc、104Bdは、図1に示す波長合分波器100のアーム部104と同様の構成を有している。温度補償材料110の幅は、アーム部104Ba、104Bb、104Bc、104Bdの光路長に応じて設定されている。
【0102】
図11は、MZI型の波長合分波器100Cであり、第1導波路回路部としての多モード干渉(Multi-Mode Interference:MMI)カプラ103C、107Cとの間に、第2導波路回路部を有するアーム部104Ca、104Cb、104Cc、104Cdが接続されている。アーム部104Ca、104Cb、104Cc、104Cdは、図1に示す波長合分波器100のアーム部104と同様の構成を有している。温度補償材料110の幅は、アーム部104Ca、104Cb、104Cc、104Cdの光路長に応じて設定されている。
【0103】
また、上記実施の形態に係る平面光波回路素子の温度補償材料を温度制御して、波長可変型の平面光波回路素子を実現してもよい。
【0104】
また、上記各実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態3、4において、第1エッチング工程と第2エッチング工程との順番を入れ替えたものも本発明に含まれる。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100、100A、100C 波長合分波器
100B AWG
101、102 光入力ポート
103、107 方向性結合器
103A、107A Y分岐光導波路
103B、107B 通過型スターカプラ
103C、107C MMIカプラ
103a、103b、104a、105a、107a、107b コア部
104、105、104Aa、104Ab、104Ba、104Bb、104Bc、104Bd、104Ca、104Cb、104Cc、104Cd アーム部
104b、105b 幅テーパコア部
104c、105c 水平方向スポットサイズ拡大コア部
104d、105d 厚さテーパコア部
104e、105e スポットサイズ拡大コア部
106 MZI
106a、106b 溝
108、109 光出力ポート
110 温度補償材料
121 基板
122 クラッド部
122a 下部クラッド層
122aa 凹部
122b 上部および側部クラッド層
123 第1コア層
124 上部コア層
125 第2コア層
125a、125b、127a 部分
126 下部コア層
127 第2コア層
G11 原料ガス
G12 エッチングガス
M11 シャドウマスク
M11a 開口部
M12 メタルマスク
R11〜R14 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コア部を有する第1導波路回路部と、前記第1導波路回路部の第1コア部よりも最大厚さが厚い第2コア部を有する第2導波路回路部とを備えた平面光波回路素子の製造方法であって、
下部クラッド層上に、前記第1コア部の厚さに対応する厚さを有する第1コア層と前記第2コア部の最大厚さに対応する厚さを有する第2コア層とを形成するコア層形成工程と、
前記第1コア層を少なくとも該第1コア層の厚さだけ前記第1コア部のパターンにエッチングするとともに、前記第2コア層を少なくとも前記第1コア層の厚さだけ前記第2コア部のパターンにエッチングする第1エッチング工程と、
前記第2コア層の残りの厚さの部分を選択的に前記第2コア部のパターンにエッチングする第2エッチング工程と、
を含むことを特徴とする平面光波回路素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2エッチング工程は、開口部を有するシャドウマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2エッチング工程は、メタルマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2エッチング工程は、レジストマスクを用いて前記第2コア層を選択的にエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項5】
前記コア層形成工程は、前記下部クラッド層に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部に前記第2コア層の一部を形成する一部コア層形成工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項6】
前記コア層形成工程は、前記第2コア層の少なくとも一部が厚さ方向にテーパ形状を有するように該第2コア層を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1導波路回路部は、近接して配置された2つの前記第1コア部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1導波路回路部は方向性結合器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1導波路回路部はY分岐光導波路であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1導波路回路部は通過型スターカプラであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1導波路回路部は多モード干渉カプラであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項12】
前記第2導波路回路部はマッハツェンダー光干渉計の一部を構成することを特徴とする請求項1〜9、11のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。
【請求項13】
前記第2導波路回路部はアレイ導波路回折格子の一部を構成することを特徴とする請求項1〜7、10のいずれか一つに記載の平面光波回路素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−44805(P2013−44805A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180888(P2011−180888)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】