説明

平面型画像表示装置、高圧電源

【課題】アーク放電の発生を抑制し、且つ、平面型画像表示装置の薄型化に寄与する高圧電源を提供する。
【解決手段】平面型画像表示装置は、平面型の表示パネルと、表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、表示パネルに高電圧を印加する高圧電源と、を備える。ここで、高圧電源は、各ケースが1つ以上のトランスと整流回路を内蔵する複数のケースを備え、該複数のケースを直列接続することにより高電圧を得るものであり、前記複数のケースは、前記フレームと前記カバーの間に形成される空間に、前記表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型画像表示装置に関し、特に平面型画像表示装置の高圧電源の回路構成及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型画像表示装置として、FED(Field Emission Display)などの電子線表示装置、プラズマ表示装置、液晶表示装置などが知られている。このような平面型画像表示装置では、表示パネルに電圧を印加するための高圧電源が用いられることがある。例えば、特許文献1には、冷陰極型電子放出素子を用いた表示パネルの背面側に、アノード電圧を供給するための高圧電源を配置する構成が開示されている。
【0003】
画像表示装置の薄型化の要求に伴い、高圧電源の小型化及び薄型化も求められている。しかしながら、所望の高電圧を安定生成するための昇圧回路が必要なことから、高圧電源の小型化は容易ではない。しかも、装置全体の薄型化は、高圧電源と周囲の構造体との間のアーク放電の発生リスクを高めるという課題も招来する。なお特許文献2には、CRTの高圧電源において、フライバックトランスを内蔵するケース(外かく)と周囲の構造体との間に所定の空間距離を確保することで、アーク放電を防止する構成が開示されている。ただし、特許文献2の構造をそのまま平面型画像表示装置に適用しても、装置の薄型化の要求は満足できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2008−4323号公報
【特許文献2】特開平4−167409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アーク放電の発生を抑制し、且つ、平面型画像表示装置の薄型化に寄与する高圧電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る平面型画像表示装置は、平面型の表示パネルと、前記表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、前記フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、前記表示パネルに高電圧を印加する高圧電源と、を備える平面型画像表示装置であって、前記高圧電源は、各ケースが1つ以上のトランスと整流回路を内蔵する複数のケースを備え、該複数のケースを直列接続することにより前記高電圧を得るものであり、前記複数のケースは、前記フレームと前記カバーの間に形成される空間に、前記表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている。
【0007】
本発明に係る高圧電源は、平面型の表示パネルと、前記表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、前記フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、を備える平面型画像表示装置において、前記表示パネルに高電圧を印加するための高圧電源であって、各ケースが1つ以上のトランスと整流回路を内蔵する複数のケースを備え、該複数のケースを直列接続することにより前記高電圧を得るものであり、前記複数のケースは、前記フレームと前記カバーの間に形成される空間に、前記表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アーク放電の発生を抑制し、且つ、平面型画像表示装置の薄型化に寄与する高圧電源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の高圧電源の主要部分の回路図を模式的に示す図。
【図2】第1の実施形態の高圧電源の実装形態を模式的に示す図。
【図3】第2の実施形態の高圧電源の実装形態を模式的に示す図。
【図4】平面型画像表示装置の構成を示す図。
【図5】平面型画像表示装置の高圧電源の実装形態と空間距離を示す断面図。
【図6】空間距離を検討するための実験装置の構成を示す図。
【図7】空間距離の実験結果を示すグラフ。
【図8】高圧電源の主要部分の回路図と実装形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、平面型の表示パネルと、表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、表示パネルに高電圧を印加する高圧電源と、を備える平面型画像表示装置に適用される。平面型画像表示装置としては、電子線表示装置、プラズマ表示装置、液晶表示装置などが知られているが、本発明は、高圧電源を必要とするものであれば、いずれの方式の画像表示装置にも適用可能である。特に、電子線表示装置は、電子を加速するためにキロボルトオーダーのアノード電圧を用いることから、本発明が適用される好ましい形態である。電子線表示装置の表示パネルは、一般に、複数の電子放出素子がマトリクス状に配置されたリアプレートと、蛍光体が配置されたフェースプレートとを有し、フェースプレートに対しアノード電圧が供給される。電子放出素子としては、表面導電型電子放出素子、電界放出型電子放出素子、MIM型電子放出素子などがある。電界放出型としては、Spindt型、GNF(グラファイトナノファイバー)型、CNT(カーボンナノチューブ)型などがある。
【0011】
(画像表示装置の構成)
本発明が適用される平面型画像表示装置の一例として、表面導電型電子放出素子を用いた画像表示装置について説明する。
【0012】
図4は、画像表示装置の構成を模式的に示す図である。この画像表示装置は、概略、表示パネル100、変調ドライバ110、走査ドライバ120、高圧電源1を備える。表示パネル100は、リアプレート101とフェースプレート105を有する。リアプレート101上には、複数の表面導電型電子放出素子102、複数の変調配線103、複数の走査配線104が形成されている。各電子放出素子102は、変調配線103と走査配線104の交点近傍に形成され、変調配線103と走査配線104に電気的に接続されている。変調配線103と走査配線104は不図示の絶縁層により絶縁されている。この構造を単純マトリクス構造とよぶ。フェースプレート105上には、不図示ではあるが、ブラックマトリクス、蛍光体、メタルバック(アノード電極)が形成されている。図4では、説明の便宜のため、フェースプレート105を部分的に透過して図示している。マトリクスパネル100は気密容器となっており、リアプレート101とフェースプレート105の間は放出された電子が移動可能なように真空に保持されている。このフェースプレート105の表面が、画像が表示される表示面となる。
【0013】
高圧電源1は、フェースプレート105のメタルバックに不図示の高圧端子を経由して高電圧を供給する。高圧端子の構造については公知のもの(例えば特開2006−156092号公報参照)を利用することができる。
【0014】
図4において、走査配線104は画像信号の水平同期信号に対応して順次選択される。その選択期間には、所定の選択電位(選択信号)が走査ドライバ120から供給される。一方、変調配線103には、画像信号の輝度データに対応した変調信号が変調ドライバ110から供給される。これにより、選択行の電子放出素子102のそれぞれに、選択信号と変調信号の電位差である駆動電圧が印加され、電子が放出される。そして、対応する1行分の蛍光体が、輝度データに応じた輝度で発光する。これを全ての行に対して行うことにより、1画面の画像が形成される。変調ドライバ110の変調方式は、パルス幅変調、振幅変調、パルス幅変調と振幅変調を組み合わせた変調のいずれでもよい。
【0015】
高圧電源1は、所望の輝度を得るために、電子放出素子102が放出した電子を加速するための電圧(アノード電圧)を、フェースプレート105のメタルバックに印加する。本発明者らが開発をしている画像表示装置においては、高圧電源1の電圧は12kV程度が良好であった。高圧電源1の電圧は、要求される輝度、電子放出素子が放出する電流値、表示画素数等により決まるものであり、12kV以外の電圧であってもかまわない。
【0016】
(高圧電源の実装)
図5を参照して、平面型画像表示装置の高圧電源の実装方法について示す。
図5は画像表示装置の高圧電源の実装形態と空間距離を示す断面図である。図5の水平方向が画像表示装置の厚み方向(表示面に垂直な方向)を示しており、図5の左側が前面側、右側が背面側である。平面型の表示パネル100の背面側には、金属等の導電性部材で形成されたフレーム200が取り付けられる。このフレーム200は、表示パネル100を支持するとともに、装置全体に剛性強度を付与するための支持部材である。フレーム200には、不図示の駆動回路や高圧電源1をはじめとする回路基板も取り付けられる。符号201は、画像表示装置のカバーである。カバー201は、表示パネル100の周囲(表示面を除いた部分)からフレーム200の背面側にかけて覆っている。このカバー201も金属等の導電性部材で形成される。フレーム200とカバー201は接地電位に保たれている。
【0017】
高圧電源1は、フレーム200とカバー201の間に形成される空間に配置される。高圧電源1は、高圧部ケース2とプリント基板3から構成される。高圧部ケース2は高圧電源1の高電圧回路部分を内蔵しており、ケース(外かく)内部は絶縁性の含浸材が充填されている。プリント基板3には、高圧電源1の高電圧回路部分以外の回路が実装されている。プリント基板3は、フレーム200に対しスペーサ210を介して取り付けられる。211は、プリント基板3を固定するネジである。高圧電源1のアーク放電を抑制するため、所望の空間距離Ld、Luが形成されるよう、スペーサ210の高さ及びカバー201の形状が設計される。Ldは、高圧部ケース2とフレーム200の間の空間距離であり、Luは、高圧部ケース2とカバー201の間の空間距離である。
【0018】
(空間距離の検討)
次に、高圧電源に必要な所望の空間距離Ld、Luについて説明する。
【0019】
図6は空間距離を検討するための実験装置の構成を示す図である。図6において、300は直流電源、301は交流電源、302は高圧電極、303は高圧電極302を内部にもつ絶縁ケースである。絶縁ケース303の外かく内部は絶縁性の含浸材が充填されており、これにより必要な直流絶縁耐圧を実現している。304は接地電位であるテスト針である。310は高圧電極302と絶縁ケース303の外かく表面の等価静電容量、311は絶縁ケース303の外かく表面とテスト針304間の等価静電容量を示している。
【0020】
図6の実験装置を使用して、コロナ放電が持続的に開始する交流電源301のピークツーピーク電圧(放電開始電圧p−p)と、テスト針304と絶縁ケース303の間の距離
(ギャップ)を測定する。図7は、直流電源300の電圧(オフセット電圧)を変化させたときの実験結果のグラフを示す。図7を見てわかるように、コロナ放電が持続的に開始する電圧は直流電圧(オフセット電圧)によらず、交流電圧(放電開始電圧p−p)のみにより決まる。
【0021】
直流電圧によるコロナ放電は、含浸材の充填により完全に防止することができる。しかし、交流電圧に関しては、図6に示した等価静電容量310、311により電流が流れる。ここで空間距離が小さいほど、等価静電容量311が大きくなるのでインピーダンスが下がり、交流電圧によるコロナ放電が持続する可能性が高まる。
【0022】
コロナ放電が開始する空間距離についてまとめると、以下の通りである。
(1)直流絶縁耐圧が確保されているのなら、交流電圧によりコロナ放電が開始する空間距離が決まる(直流電圧は無関係)。
(2)絶縁体は空間(空気)より比誘電率が高いので、ケースと他の部材(フレーム200、カバー201)の間の空間に絶縁体を入れると、等価静電容量311が大きくなる。したがって、ケースと他の部材の間の距離(絶縁体の厚みと空間距離の合計)を、絶縁体が介在しない場合の空間距離よりも、長くする必要がある。
【0023】
コロナ放電が持続すると絶縁ケース303等の界面が劣化し、劣化が進行した場合、アーク放電に移行する可能性があると考えられる。そのため、等価静電容量310、311を小さくしコロナ放電を防止する必要がある。ここで、等価静電容量310については、要求される直流絶縁耐圧に応じて含浸材を選択・設計すればよい。コロナ放電を抑制するには、空間の等価静電容量311を小さくする必要がある。すなわち、ケースと他の部材の間の空間距離を確保し、コロナ放電を防止する。
【0024】
以上説明したように、信頼性を確保するためには、コロナ放電が起きないような空間距離を確保する必要がある。実際の製品では、コロナ放電が起きない距離に設計マージンを加え、所望の空間距離Ld、Luを決定し、その空間距離Ld、Luを確保できるように高圧電源を実装する。
【0025】
(高圧電源の空間距離)
次に高圧電源に必要な空間距離を考察する。
【0026】
図8Aは高圧電源の主要部分の回路図である。図8Bは高圧電源の回路部品の実装を示す模式図である。一次側電源入力端子11には、例えば150Vの直流電圧が印加される。12はFET等のトランジスタである。トランジスタ12は、例えば数10kHzの高周波で、一次側電源をON/OFFする。20はフライバックトランスである。フライバックトランス20は、トランジスタ12がONの時に蓄積されたエネルギーを、トランジスタ12がOFFの時に二次巻線から出力する。高圧ダイオード21は、フライバックトランス20の出力を整流する。コンデンサ22は、高圧ダイオード21で整流された出力を平滑する。低電位側端子23は、接地電位に接続されている。高電位側端子24は、昇圧された直流電圧を出力する端子である。トランス及び整流回路などの高電圧回路部分は、高圧部ケース2の外かくに覆われている。高圧部ケース2の内部は、直流電圧に対して十分な耐圧を有する含浸材が充填されている。高圧部ケース2は、接地電位に保たれている導電性のカバー201から所定の空間距離をあけて配置されている。
【0027】
前述したように、コロナ放電は交流電圧により決定される。図8A、図8Bに図示した高圧電源においては、ノードA点の交流電圧が大きく、高圧電源の高電位側端子24に出力する直流電圧と同等のピークツーピーク電圧を有する。
【0028】
交流電圧が大きいノードA点における含浸材の等価静電容量310と、その近傍の空間の等価静電容量311により、コロナ放電の開始電圧が決まる。そして、コロナ放電が起きない空間距離(すなわち空間の等価静電容量311)に設計マージンを加え、所望の空間距離が決定される。図8Bでは、わかり易いように、カバー201との空間距離について示したが、フレーム200に対する空間距離も同様に決定する。
【0029】
図5に示すように、単一の高圧部ケース2からなる高圧電源1で表示パネル100に印加する高電圧を得ようとした場合、高圧部ケース2内の交流電圧が非常に大きくなる。よって、高圧部ケース2とフレーム200の間、及び、高圧部ケース2とカバー201の間に、十分な大きさの空間距離Ld、Luが必要とされ、画像表示装置の薄型化が困難である。
【0030】
本発明者らは、画像表示装置の薄型化のために、空間距離も含めた高圧電源の薄型化について検討した結果、以下に示す構成が好適であることを見出した。すなわち、
・複数のトランスを用いて、目的の高電圧(表示パネルに印加する電圧)より低い電圧に各々昇圧する。トランスごとに整流を行い、各トランスから直流電圧を得る。
・複数のトランス及び整流回路を(1個の高圧部ケースでなく)複数の高圧部ケースに分けてパッケージする。
・トランスごとに整流された直流電圧を直列接続し、目的の高電圧を得る。
・複数の高圧部ケースを、表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置する。
【0031】
以上の構成が高圧電源及び画像表示装置の薄型化に好適であった。本構成は、高圧電源とフレームやカバーとの間の空間距離を短くできるばかりでなく、複数のトランスを使用したことによりトランス1つ当たりの電力が小さくなる。その結果、トランスのコア断面積を小さくすることができ、結果として高圧部ケース自体を小さく・薄くすることができる。この点も画像表示装置の薄型化に寄与する。
【0032】
次に、本発明の好ましい実施の形態について詳しく説明する。ただし、以下の説明では、本発明の実施形態に特有の構成部分については詳しく述べるが、前述の構成と同じ部分(例えば画像表示装置の基本構成など)については説明を省略する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の高圧電源の主要部分の回路図を示す。この高圧電源は、3つの高圧部ケース2a、2b、2cを備えている。3つの高圧部ケースの回路構成は基本的に同じである。
【0034】
高圧部ケース2a(2b、2c)は、一次側電源入力端子11a(11b、11c)を備える。一次側電源入力端子11a(11b、11c)には、例えば150Vの直流電圧が印加される。12a(12b、12c)は、プリント基板3上に実装されるFET等のトランジスタである。トランジスタ12a(12b、12c)は、例えば数10kHzの高周波で一次側電源をON/OFFするスイッチである。20a(20b、20c)はフライバックトランスである。フライバックトランス20a(20b、20c)は、トランジスタ12a(12b、12c)がONの時に蓄積されたエネルギーを、トランジスタ12a(12b、12c)がOFFの時に二次巻線から出力する。高圧ダイオード21a(21b、21c)は、フライバックトランス20a(20b、20c)の出力を整流する。コンデンサ22a(22b、22c)は、高圧ダイオード21a(21b、21c)で整流された出力を平滑する。この高圧ダイオードとコンデンサで構成される回路を整流回路とよぶ。23a(23b、23c)は二次回路の低電位側端子であり、24a(24b、24c)は二次回路の高電位側端子である。
【0035】
トランス及び整流回路などの高電圧回路部分は、高圧部ケース2a(2b、2c)の外かくに覆われている。その内部は、直流電圧に対して十分な耐圧を有する絶縁性の含浸材(モールド材、封止材、充填材ともよばれる)が充填されている。含浸材としては、エポキシ樹脂等が好適である。25は高圧電源の出力端子であり、この出力端子25から表示パネル100のフェースプレートへ高電圧が供給される。
【0036】
3つの高圧部ケース2a、2b、2cは直列接続される。すなわち、高圧部ケース2aの低電位側端子23aは接地電位に接続され、高電位側端子24aは高圧部ケース2bの低電位側端子23bに接続される。また、高圧部ケース2bの高電位側端子24bは高圧部ケース2cの低電位側端子23cに接続され、さらに、高圧部ケース2cの高電位側端子24cは出力端子25に接続されている。これにより、各高圧部ケースの出力電圧が合成され、目的とする高電圧を得ることができる。
【0037】
分圧抵抗26、27は、出力端子25の電圧を所望の割合で分圧するためのものである。分圧により得られた電位は、出力ノード28を経由して不図示の制御回路にフィードバック(負帰還)される。制御回路は、出力ノード28の電位が不図示の基準電位と等しくなるように、トランジスタ12a(12b、12c)のゲートを制御する。この構成は、トランス個々に負帰還をかける構成と比べて、トランスの一次回路と二次回路の絶縁の必要がなくなるという利点がある。また、負帰還が1系統ですむので回路構成が簡略化されるという利点も有する。なお、フィードバック制御のための制御回路は、オペアンプ等を用いて構成可能である。また、分圧抵抗26、27は、3つの高圧部ケース2a、2b、2cとは別のケースに入れ、その外かくの内部は、直流電圧に対して十分な耐圧を有する絶縁性の含浸材が充填されている構成が好適である。またこの別のケースに必要に応じてリプル電圧を減少させる目的でフィルムコンデンサ等の平滑コンデンサを並列に実装しても好適である。
【0038】
この実施形態では、トランスを3個使用した例を示したが、トランスの数は2個であっても4個以上であっても本発明の効果は期待できる。製作コストを考慮すれば、トランスの数は10個以下が好適であった。フェースプレートに供給する電圧、電流、要求される厚みから、好適なトランスの数が決まる。本発明者らが開発している表面導電型電子放出素子を用いた画像表示装置では、高圧電源の出力電圧が12kVであり、トランスの数は3個から6個が好適であった。例えば、図1のように3個のトランスを用いる構成では、目的とする出力電圧が12kVの場合、トランス1つ当たりの出力電圧が4kVとなるように設計すればよい。
【0039】
図1で示した構成で、交流電圧が大きいノードはノードAa点、ノードAb点、ノードAc点である。これらの点における交流電圧は、単一のトランスで昇圧する場合に比べ1/3の電圧である。すなわちコロナ放電の開始を決定する交流電圧が小さくなるため、空間距離Ld、Luを単一トランスの構成に比べ短くできる。
【0040】
図2に本発明の第1の実施形態の高圧電源の実装形態を模式的に示す。図2の上下方向が画像表示装置の厚み方向(表示面に垂直な方向)を示しており、図2の下側が前面側、上側が背面側である。高圧電源は、フレーム200とカバー201の間に形成される空間に配置される。高圧電源は、プリント基板3と、プリント基板3に実装された3個の高圧部ケース2a、2b、2cとから構成されている。プリント基板3は、スペーサ210を介してフレーム200にネジ211で固定される。ここで、3個の高圧部ケース2a、2b、2cは、表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている。言い換えると、3個の高圧部ケース2a、2b、2cの厚み方向の位置が同一(若しくは実質的に同一)になるように配置される。このとき、高圧部ケース2a、2b、2cとフレーム200及びカバー201との間に所望の空間距離Ld、Luが形成されるように、スペーサ2
10の高さ及びカバー201の形状が設計されている。なお、プリント基板3において、高圧部ケース2a、2b、2cとフレーム200の間の領域には、配線などの導電部材を設けないほうがよい。なお、スペーサ210はフレーム200と別部材できている例を示したが、フレーム200の板金が部分的に折り曲げられ形成されていても良い。プリント基板3を空間距離Ld、Luが確保できる規定の位置に固定できる部材であればどのような構造であってもかまわない。
【0041】
以上述べた本実施形態の構成によれば、各高圧部ケース内の交流電圧を小さくしたことで、高圧部ケースの周囲に確保すべき空間距離Ld、Luを従来よりも短くすることができる。加えて、トランスのコア断面積を小さくできるので、結果として高圧部ケース自体の小型化・薄型化も実現できる。したがって、画像表示装置の大幅な薄型化が可能となる。
【0042】
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態の高圧電源の実装形態を模式的に示す。
第2の実施形態の高圧電源の回路構成は、図1に示した第1の実施形態のものと同じである。また、図3では、第1の実施形態のものと同じ構成部分に同一の符号を付している。
【0043】
第2の実施形態の高圧電源は、プリント基板3に複数の開口部が設けられ、各高圧部ケースが開口部内に配置されている点で、第1の実施形態と異なっている。それ以外の点では、第1の実施形態と第2の実施形態は同じである。
【0044】
本実施形態の構成によれば、高圧部ケース2a、2b、2cとケース200の間において、比誘電率の高いプリント基板3の厚みが空間距離から除かれる。よって、第1の実施形態に比べ、さらに空間距離Ldを小さくでき、画像表示装置の一層の薄型化を図ることができる。
【0045】
本実施形態では、トランスを分割することにより高圧部ケースを小型化・軽量化している。これにより、図3に示すような実装形態が可能となった。すなわち、高圧部ケースが1個の場合は、必要な電力を得るため、高圧部ケースのサイズは大きく、重量は重くなる。それゆえ、強度や振動試験等の点から、プリント基板に開口部を設けるのが困難であった。これに対し、本実施形態においては、高圧部ケースが小さく且つ軽いため、プリント基板に開口部を設ける実装形態が可能となった。
【0046】
なお、プリント基板の開口部は、プリント基板の外周から切り込み部を設けた形状でも良い。すなわち、高圧部ケースとフレームの間にプリント基板が存在しない構造であれば、開口部の形状はどのようなものでもかまわない。
【0047】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、フライバック型のDC/DCコンバータで昇圧を行う例を示したが、本発明はフォワード型や他の方式の回路構成にも適用可能である。整流回路として倍電圧整流回路を用いることが好ましい。高圧電源の出力電圧に対して交流電圧を小さくでき、空間距離を小さくできるからである。
【0048】
上記実施形態では、各高圧部ケースの中に1つずつトランスを実装しているが、各高圧部ケースの中に、直列接続した2つ以上のトランスを実装することも可能である。高圧部ケースの数を少なくすれば、コストを下げる効果がある。
【0049】
上記実施形態では、導電性材料からなるカバー201を用いたが、樹脂製のカバーを用
いることもできる。その場合、樹脂製のカバーと高圧電源の間に、導体のシールド板を設けると良い。このとき、高圧部ケースとシールド板の間の距離が所望の空間距離Luを満足するように設計する。
【0050】
上記実施形態では、複数の高圧部ケースが1次元的に配列されているが、表示パネルの表示面と平行な面内に2次元的に配列してもよい。ここで「表示面と平行な面」とは、厳密に(数学的、幾何学的に)平行な面だけでなく、実質的に平行な面をも含む。例えば、物理的な制約や意匠的な制約から、フレーム200に凹凸があったり、フレーム200と表示面とが若干傾斜していたりすると、高圧部ケースを表示面に対して厳密に平行に配置することが難しい場合がある。しかし、複数の高圧部ケースが概ね表示面に平行に並んでいれば、本発明の目的である薄型化の要求は達成できる。したがって、「表示面と平行な面」は「表示面に沿った面」を意味するものということができる。
【0051】
上記実施形態では、表面導電型電子放出素子を使用した画像表示装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、高電圧を必要とするあらゆる平面型画像表示装置に適用可能である。
【0052】
また、本発明の別の効果として、同じ構成の高圧部ケースを複数使用するため、量産効果でコストを下げることが期待できる。また高圧部ケース等のメンテナンス用部品も小さなものになり管理費用も安くなる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・高圧電源、2a,2b,2c・・・高圧部ケース、100・・・表示パネル、200・・・フレーム、201・・・カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型の表示パネルと、
前記表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、
前記フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、
前記表示パネルに高電圧を印加する高圧電源と、を備える平面型画像表示装置であって、
前記高圧電源は、各ケースが1つ以上のトランスと整流回路を内蔵する複数のケースを備え、該複数のケースを直列接続することにより前記高電圧を得るものであり、
前記複数のケースは、前記フレームと前記カバーの間に形成される空間に、前記表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている
ことを特徴とする平面型画像表示装置。
【請求項2】
前記各ケースは、前記フレーム及び前記カバーから所定の空間距離をあけて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型画像表示装置。
【請求項3】
前記高圧電源は、前記高圧電源から出力される前記高電圧を分圧する分圧抵抗と、分圧により得られた電位をフィードバックすることにより前記各ケースの出力電圧を制御する制御回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の平面型画像表示装置。
【請求項4】
前記高圧電源は、前記フレームに対しスペーサを介して取り付けられるプリント基板を有しており、
前記プリント基板は、開口部を有しており、
前記各ケースは、前記開口部内に配置されて、前記プリント基板に実装される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平面型画像表示装置。
【請求項5】
前記ケースの内部は、絶縁性の含浸材が充填されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の平面型画像表示装置。
【請求項6】
平面型の表示パネルと、前記表示パネルの背面側に取り付けられるフレームと、前記フレームの背面側を少なくとも覆うカバーと、を備える平面型画像表示装置において、前記表示パネルに高電圧を印加するための高圧電源であって、
各ケースが1つ以上のトランスと整流回路を内蔵する複数のケースを備え、該複数のケースを直列接続することにより前記高電圧を得るものであり、
前記複数のケースは、前記フレームと前記カバーの間に形成される空間に、前記表示パネルの表示面と平行な面内に並ぶように配置されている
ことを特徴とする高圧電源。
【請求項7】
前記各ケースは、前記フレーム及び前記カバーから所定の空間距離をあけて配置されていることを特徴とする請求項6に記載の高圧電源。
【請求項8】
前記高圧電源から出力される前記高電圧を分圧する分圧抵抗と、分圧により得られた電位をフィードバックすることにより前記各ケースの出力電圧を制御する制御回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の高圧電源。
【請求項9】
前記フレームに対しスペーサを介して取り付けられるプリント基板を有しており、
前記プリント基板は、開口部を有しており、
前記各ケースは、前記開口部内に配置されて、前記プリント基板に実装される
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の高圧電源。
【請求項10】
前記ケースの内部は、絶縁性の含浸材が充填されている
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の高圧電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−28109(P2011−28109A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175626(P2009−175626)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】