説明

幹細胞マーカー

幹細胞の遺伝子マーカーであって、典型的には、前立腺幹細胞、及び特に前立腺癌幹細胞など、癌幹細胞の遺伝子マーカー;該幹細胞遺伝子に基づいた治療剤及び診断アッセイ;及び治療剤を同定するためのスクリーニングアッセイを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は幹細胞、典型的には、前立腺幹細胞、特に、例えば前立腺癌幹細胞などの癌幹細胞の遺伝子マーカー;治療剤及、並びに該幹細胞遺伝子及び発現産物に基づく診断アッセイ;及び治療剤を同定するためのスクリーニングアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の病態の効果的な治療に内在する問題は、腫瘍中における、腫瘍の生育を維持する能力を有する細胞集団の同定である。腫瘍は、クローン化しているため、単一細胞に由来することが証拠により示唆される。しかし、腫瘍細胞の生育を維持する要因となる細胞のタイプを同定し、特徴付けする研究はほとんど行われていない。このために、いわゆる「癌幹細胞」に関し調査が進められてきた。
発明者らは、原始造血幹細胞、及び前立腺上皮のさらなる幹細胞マーカーとして成育中の上皮により発現されるCD133を同定した。CD133細胞はαβhi集団(タイプIコラーゲンに対するレセプター)に限定され、基底層、しばしば、発芽領域又は分岐ポイントの基底部に局在する(図1A)。αβhi/CD133細胞は、上皮ステム細胞の2つの重要な特性を発揮する:それらは、インビトロにおいて、高い増殖能力を示し(図1B)、免疫無防備状態の雄のヌードマウスに前立腺様腺房を再構築することができる(図1C)。
【0003】
継続中の出願(WO2005/089043)において、発明者らは、リンパ節から直接単離した前立腺幹細胞の単離、及び一連の患者サンプルに由来する前立腺について記載している。これらの幹細胞は幹細胞の特性を持つ細胞を特徴付けるマーカーを発現している。以下のマーカーは、典型的には、前立腺幹細胞として発現される;ヒト上皮抗原(HEA)、CD44、αβhi及びCD133である。形態的に、ファイブロブラストイド(形質転換された細胞に典型的なビメンチンを発現する)又は上皮の範囲に含まれ、前立腺上皮の分化に関係する前駆細胞の生産を可能にしている。侵入アッセイにおいて、Matrigel−coatedフィルターを使用して、これらの細胞は、PC3M(PC3細胞の高い転移性サブライン)よりも2−3倍高いマトリゲル(Matrigel)侵入能力を有していることが示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明らは、CD133ポジティブな前立腺幹細胞のアレイ解析を行い、CD133ポジティブ幹細胞とCD133ポジティブ癌幹細胞間で遺伝子発現を比較した。
【0005】
成長因子/レセプター
アレイ解析により、細胞成長及び/又は細胞増殖の促進をもたらす情報伝達パスウェイに関与する成長因子/レセプター又はタンパク質のいずれかのタンパク質をコードする、多くの遺伝子が同定されてきた。サイトカインなどの成長因子のグループは、多くの広範な細胞内機能に関与している。これらには、例えば、限定はしないが、免疫系の調節、エネルギー代謝の制御及び成長及び発育のコントロールなどが含まれる。サイトカインは標的細胞の細胞表面上に発現するレセプターを介してその効果を媒介する。サイトカインレセプターは3つのサブグループに分けることができる。タイプ1(例えば、成長ホルモン(GH)ファミリー)レセプターは細胞外ドメインのアミノ末端部分の保存された4つのシステイン残基及びC末端部分のトリプシン−セリン−Xaa−トリプシン−セリンのモチーフの存在によって特徴づけられる。繰り返されるCysモチーフもタイプ2(インターフェロンファミリー)及びタイプIII(腫瘍壊死因子ファミリー)には、存在する。
【0006】
成長因子のさらなるグループは、脈管形成に関与する。脈管形成は、既存の血管床からの新しい血管の生育のことで、細胞外マトリックスの構成成分の分解、その後の管を形成する上皮細胞の移動、細胞分裂及び分化、最終的な新しい血管形成に関与する複雑な複数のステップの工程である。脈管形成は、腫瘍細胞成長などの病態に関与する。脈管形成に関与する遺伝子には、例えば、限定はしないが、血管内皮成長因子(VEGF、VEGF B、VEGF C、VEGF D)、トランスフォーミング成長因子(TGFb)、及び塩基性線維芽細胞成長因子(aFGF及びbFGF)、及び血小板由来成長因子(PDGF)などが含まれる。成長因子に対する多くのレセプターなどは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)を介して膜と結合している。GPI−アンカーは、タンパク質の翻訳後修飾であり、細胞膜の細胞外サイドへこれらのタンパク質を留めておくグリコシルホスファチジルイノシトールを付加する修飾である。典型的には、GPIアンカーを有する細胞外タンパク質は、膜貫通又は細胞質ドメインを持っていない。GPIアンカータンパク質は、全ての真核細胞に存在し、例えば、膜結合酵素及び接着分子などを含む広範で多様なタンパク質を形成する。
【0007】
情報伝達に関与する遺伝子は、しばしば、細胞膜に局在するレセプターと一体となって、転写及び細胞増殖の活性化を導く情報伝達カスケードの活性化が引き起こされる。例えば、PTEN遺伝子産物は、フォーカル接着キナーゼ(FAK)などのある範囲の標的タンパク質を脱リン酸化する能力に加えて、ホスホイノシチド(PI)(3,4,5)P3を分解してPI(4,5)P2に戻すことにより、ホスホイノシチド脂質キナーゼ(以下PI3K)をアンタゴナイズすることができる複数特異的ホスファターゼである。ホスホイノシチドは空胞タンパク質のソーティング、細胞骨格のリモデリング、及び、それを通じて成長因子、ホルモン及び神経伝達物質が細胞内活性、増殖及び分化に対して生理学的効果を及ぼす細胞内シグナルの媒介など多様な種々の細胞内過程に関与している。
【0008】
関連する細胞外マトリックス
アレイ解析により、細胞外マトリックスタンパク質であるタンパク質をコードする多くの遺伝子が同定された。細胞外マトリックス(ECM)は、多細胞生物の細胞を取り巻く非生命物質の複雑な混合物である。脊椎動物において、ECMはタンパク質と炭水化物(及びミネラル(骨の例として))の混合物を含む。タンパク質構成要素には、コラーゲン(コラーゲンI−XII);上皮細胞が結合している構造である基底ラミナ中に見出されるラミニン;細胞をECMに結合させるために機能するフィブロネクチン;及びフレキシブルな皮膚を提供するエラスチンなどのタンパク質、及び糖タンパク質(糖鎖の付加によって修飾されるタンパク質)が含まれる。また、プロテオグリカンもECM中に見出され、これらの糖タンパク質は、タンパク質の他さらに炭水化物を含む。幾つかの糖がプロテオグリカンに付加されるが、その中で最も豊富に存在するのがアセチルグルコサミンである。多くのプロテオグリカンは、例えば、コンドロイチン硫酸塩、ヘパラン硫酸塩、ケラチン硫酸塩及びヒラルロン酸などの硫酸塩化されている。
【0009】
多くの脊椎動物細胞は、ECMに結合しなければ生存することができず、ECMとの結合性が失われると、癌への細胞のトランスフォーメーションと結びつく。細胞は、コラーゲン、ラミニン及びフィブロネクチンを介してECMと結合するインテグリンと呼ばれ、細胞によって発現されるアンカー分子によってECMと結合する。インテグリンは、細胞表面から突き出ている細胞外ドメインを介して、細胞外マトリックスと結合する細胞膜タンパク質である。インテグリンの細胞内ドメインは、細胞骨格のアクチンフィラメントと接触している。癌の転移において、原発癌細胞は、運動性を有し、第2次癌を形成するために他の組織へと転移(移動)することができる。最終的に罹患対象を死に至らしめるのは第2次癌である。転移するためには、癌細胞は体中に癌細胞を輸送する血液及びリンパ系にアクセスするための組織の基底膜を貫通しなくてはならない。腫瘍周囲のECMの分解は、主として、腫瘍細胞を取り巻くストロマ細胞から分泌されるメタロプロテアーゼ(MMP)によって触媒される。ホルモンの傍分泌により、癌細胞が線維芽細胞によるMMPの生産を促進するとの証拠が蓄積されつつある。
【0010】
MMP(s)は、3つのグループに分類されるプロテアーゼの拡張グループである。グループ1には、結合組織コラーゲンを分解するコラゲナーゼ、例えば、MMP−1、MMP−8及びMMP−13が含まれ;グループ2には、基底膜コラーゲンを分解するセラチナーゼ、及びMMP−2及びMMP−9が含まれる;3番目のグループには、ECMプロテオグリカン、ラミニン及びフィブロネクチンを分解するストロメリシン及びMMP−10及びMMP−11が含まれる。MMP(s)の活性は、IL−1及びTNFαなどの前炎症性サイトカインによって促進される。
【0011】
転写因子/転写関連因子
アレイ解析により、転写因子タンパク質又は転写関連蛋白質をコードする多くの遺伝子が同定された。
転写因子はDNAのエンハンサー又はプロモターエレメントと結合するタンパク質である。これらは、遺伝子の転写開始領域近辺に存在することが多い。転写因子は、RNAポリメラーゼ転写開始、また、活性な転写複合体の維持も阻害又は促進する。転写因子には、2つの塩基性機能ドメインが含まれる。RNAポリメラーゼ又は他の転写因子などの転写装置の他の部分と相互作用するタンパク質領域である転写活性化ドメイン;遺伝子のプロモーター領域内にある特異的な塩基を認識するアミノ酸が含まれるDNA結合ドメインである。ある例においては、エンハンサーエレメントは転写開始領域から離れた場所に位置し、又はイントロン内にさえ存在する、Lewin B,1994.Genes V,Oxford University Press,Oxford。しばしば、DNA結合ドメインは、転写因子が転写を活性化又は抑制するために結合する部位であるヌクレオチド配列又はモチーフと相互作用する。
【0012】
転写因子の重要なファミリーには、ホメオドメインタンパク質が含まれる。この転写因子のファミリーは、へリックス−ターン−へリックス立体構造中に配置された16アミノ酸からなる、いわゆる、ホメオドメイン領域によって特徴づけられる。いくつかの転写因子は、ホメオドメインと第二のDNA結合領域の両方を持つ。ある例では、ホメオドメインと第二のDNA結合領域を含む領域はPOUドメインと呼ばれる。
保存された結合ドメインを含む転写因子ファミリーのさらなる例は、へリックス−ループ−へリックスドメインである。筋肉特異的な転写因子であるMyoDは、D.melanogasterの末梢神経系において細胞の運命を決定するいくつかのD.melanogasterタンパク質などのように、このモチーフを持つ。
転写因子関連ファミリーは、塩基性ロイシンジッパー転写因子ファミリー又はbZipと称されている。bZipタンパク質は二量体であり、各サブユニットはカルボキシ末端に塩基性DNA結合ドメイン、それに近接して続くいくつかのロイシン残基を含むへリックスを含んでいる。bZipファミリーメンバーの例には、C/EBP、Ap1及び酵母の転写因子GCN4がある。
【0013】
転写因子の大きなグループは、核内ホルモンレセプターである。ステロイドホルモンは遺伝子の特定グループの転写を増大させることが知られている。ホルモンが細胞内に入ると、それと特異的なレセプタータンパク質と結合し、レセプターが核内に入って特定のDNA配列モチーフに結合できるようにその立体構造を変換する。ステロイドホルモンレセプターのファミリーにはエストロゲン、プロゲステロン、テストステロン及びコルチゾン並びにレチノイン酸及びビタミンDなどの非ステロイド脂質が含まれる。
DNAがクロマチンとしてパッケージングされる過程が遺伝子発現に影響を与えることが知られている。二本鎖へリックスから有糸分裂染色体へと進むDNAの構造的なパッケージングには幾つかのレベルが存在するが、その後、DNAは伸長した長さより、およそ〜50,000倍短くなる。二本鎖へリックスDNAは、4タイプのヒストン;各2つのH2A、H2B、H3及びH4タンパク質から構成されるオクタマーコアを含む、ヌクレオソームの構造的ユニットの周囲に巻き付いている。およそ166塩基対が、DNAバックボーンの負に帯電したリン酸基とヒストンタンパク質中の正に帯電したアミノ酸(例えば、リジンとアルギニン)との間の静電気力を通じて、ヌクレオソームに結合する。
ヌクレオソームは、次の構造レベルのクロマチンファイバーへ構成され、ソレノイドとも呼ばれている。クロマチン構造は固定的ではなく、構造中における制御された変化は「クロマチンリモデリング」と称される。この過程は、クロマチン領域のヌクレアーゼ感受性を変化させ、転写過程と独立に、又は協同して生じる事象であると定義されてきた。
【0014】
コアヒストンタンパク質中の進化的に保存されたリジン残基の可逆的なアセチル化は、転写制御、細胞周期の進行、及び発生において重要な役割を担っている。ヒストンアセチル化の定常状態は、複数のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)及びヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)の酵素活性によってコントロールされている。ヒストンの高アセチル化状態は転写活性化に関連しており、一方、低アセチル化状態は転写静止状態と相互に関連するため、ヒストン脱アセチル化酵素は酵素的転写抑制因子と考えられている。
一般に、ヒストン脱アセチル化酵素は、特異的なDNA結合サイトを通じて直接遺伝子をターゲットにすることはない。むしろ、脱アセチル化酵素はタンパク質複合地の一部として抑制のために標的される遺伝子に局在している。この複合体の一部である他のタンパク質は、コリプレッサーと呼ばれるが、抑制される遺伝子を標的する原因となっている。ヒトにおいて、高度に保存されたクラスIHDAC酵素(HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8)がこれまでに同定されており、HDAC1、HDAC2及びHDAC3は多くの異なる細胞タイプにユビキタスに発現されている(Yangら,1997及び2002)。HDAC1及びHDAC2は、酵母の転写因子であるRPD3のヒトオルソログである。HDAC3の予想アミノ酸配列の解析から、予想分子量49kDaの428アミノ酸からなるオープンリーディングフレームが明らかになった。
【0015】
DNA複製及び修復
アレイ解析により、DNA複製又はDNA修復に関与するタンパク質をコードする多くの遺伝子が同定されてきた。DNA傷害は多くの薬剤によって生じる。例えば、放射線のある波長(例えば、γ線又はX線)、紫外線、特にDNAによって強く吸収されるUV−C;呼吸及び他の代謝過程において生成される高度に反応性に富む酸素ラジカル;及び人工又は天然に生じる環境に見出される化学変異原などである。
DNAは種々の方法で傷害を受ける。例えば、DNAを形成する4つの塩基は色々な位置において共有結合的に修飾を受ける;アミノ基の脱アミノ化はシトシンからウラシルへの変異を生じさせる共通の修飾である。その他の修飾には、例えば、チミジンからウラシルへの変換のようなミスマッチ、DNA分子のリン酸バックボーン中の一本鎖切断及び鎖内又は鎖間の塩基間における共有結合的なクロスリンクが含まれる。癌治療に用いられる幾つかの化学療法的薬剤はクロスリンク剤として作用する。
ヒトDNAの完全なDNA配列を推定してきたヒトゲノムプロジェクトによって、DNA修復及び複製に関与すると考えられるおよそ130遺伝子が同定された。塩基の傷害又は不適切な取り込みは幾つかのメカニズムを通じて修正される。これらには、直接的化学的逆転又は切除修復が含まれる。切除修復によると、傷害を受けた塩基が除去され正常な塩基と置換される。DNA傷害を修復するために細胞によって使用される切除修復メカニズムは3つ存在する。
【0016】
塩基切除修復は、DNAグリコシラーゼによる傷害を受けた塩基の除去;ギャップDNAを生じさたデオキシリボースリン酸の除去;DNAポリメラーゼβによる正しい塩基の置換及びDNAリガーゼによる一本鎖切断のライゲーション、を伴うものである。ヌクレオチド切除修復は、1又は複数のタンパク質因子によるエラーの認識、転写因子IIHと呼ばれる酵素による「バブル」を形成するためのDNA鎖の分離;傷害を受けた領域の5’及び3’側の切断;DNAポリメラーゼε及びδによる傷害領域の置換的合成;及びDNAリガーゼによる一本鎖切断のライゲーション、を伴うものである。
ミスマッチ修復は正常な塩基中のミスマッチを修正する。ミスマッチ修復は、塩基切除修復に関与する酵素、及びMSH2によってコードされるタンパク質などのミスマッチを認識するタンパク質、及びMLH1や他のタンパク質によるミスマッチ周囲の切除を利用する。これらの遺伝子のいずれかにおける変異は大腸癌の遺伝形態と関連している。ミスマッチの修復は、DNAポリメラーゼε及びδによって完成される。
さらに、DNA中の一本鎖及び二本鎖切断の修復には、多くのタンパク質が必要とされる。一本鎖切断修復は、塩基切除修復に関与する多くのタンパク質を利用する。二本鎖切断は切断されたフリーな末端の直接的なライゲーション又は相同組換えのいずれかによって修復される。直接的なライゲーションにおけるエラーは、ある種の癌、例えば、バーキットリンパ腫やB細胞白血病などに関係している。BRCA−1及びBRCA−2遺伝子は相同組換えにおいて機能し、これらの遺伝子の変異は胸部及び卵巣の癌と関係する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明者らは、正常又は良性の幹細胞集団と比較した場合、上方制御を示す癌幹細胞に特徴的な遺伝子を同定するために遺伝しアレイ解析を行った。発明者らは、ここに、これらの遺伝子、及び癌、特に前立腺癌における治療に有用な治療剤の同定、腫瘍細胞の成長の初期段階の検出のための診断アッセイの開発におけるそれらの使用について開示する。当該開示は、癌幹細胞特異的遺伝子の同定に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の記述
本発明の第1の態様によると、癌幹細胞特異的な核酸分子、又は癌ステム核酸分子によってコードされるポリペプチドの活性を調節する薬剤であって、該癌細胞特異的核酸分子が、
i)配列番号1−452に示される核酸配列からなる核酸分子;
ii)Genbankのアクセッション番号により表1によって示されるれる核酸配列からなる核酸分子、
iii)上記(i)又は(ii)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、幹細胞特異的で、該薬剤が医薬としての使用のためである点で特徴づけられるポリペプチドコードする核酸分子:
からなるグループより選択されるものである薬剤が提供される。
【0019】
核酸分子のハイブリダイゼーションは2つの相補的核酸分子が互いにある量の水素結合を行う場合に生じる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸を取り巻く周囲の環境条件、ハイブリダイゼーション方法の性質、及び使用する核酸分子の組成と長さにより変動する。ある程度のストリンジェンシーを達成するのに必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算については、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001);及びTijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I,Chapter 2(Elsevier,New York,1993)に詳述されている。Tは核酸分子の任意の鎖の50%がその相補鎖とハイブリダイズする温度である。以下に示すのは、ハイブリダイゼーション条件の例であるが、これに限定されるものではない:
非常に高いストリンジェンシー(少なくとも90%の同一性を共有する配列のハイブリダイズが可能)
ハイブリダイゼーション:5×SSC 65℃ 16時間
洗浄2回 :2×SSC 室温 15分間 各回
洗浄2回 :0.5×SSC 65℃ 20分間 各回
高いストリンジェンシー(少なくとも80%の同一性を共有する配列のハイブリダイズが可能)
ハイブリダイゼーション:5×−6×SSC 65℃−70℃ 16時間−20時間
洗浄2回 :2×SSC 室温 5−20分間 各回
洗浄2回 :1×SSC 55℃−70℃ 30分間 各回
低いストリンジェンシー(少なくとも50%の同一性を共有する配列のハイブリダイズが可能)
ハイブリダイゼーション:6×SSC 55℃ 16時間−20時間
洗浄、少なくとも2回 :2×−3×SSC 室温−55℃ 20−30分間 各回

本発明の好ましい実施態様において、該薬剤はアンタゴニストである。あるいは、該薬剤はアゴニストである。
【0020】
本発明のさらなる態様によると、以下のグループから選択される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性を調節する薬剤が提供される:
i)配列番号1−452に示される核酸分子;
ii)配列番号1−452からなるグループより選択される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって修飾される変異ポリペプチドをコードし、該ポリペプチドが幹細胞特異的である核酸分子;
iii)Genbankアクセッション番号により表1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸分子であって、該薬剤が医薬としての使用のために特徴づけられる核酸分子
変異ポリペプチドは、任意の組合せとして存在してもよい、1又は複数の置換、付加、欠失、切断によってアミノ酸配列が相違している。そのうち好ましい変異体は、保存的アミノ酸置換によって対照のポリペプチと相違するものである。そのような置換は任意のアミノ酸を類似の特性の他のアミノ酸と置換するものである。以下に示すアミノ酸の非限定的なリストは、保存的(類似の)置換と考えられる:a)アラニン、セリン及びスレオニン;b)グルタミン酸及びアスパラギン酸;c)アスパラギン及びグルタミンd)アルギニン及びリジン;e)イソロイシン、ロイシン、メチオニン及びバリン及びf)フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン
さらに、本発明はここで開示されるポリペプチド配列と少なくとも75%の同一性を保持するポリペプチド配列、又は断片及びそれらの機能的等価物も対象としている。ある実施態様において、該ポリペプチドはここで開示されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、またより好ましくは少なくとも97%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0021】
本発明の好ましい実施態様において、該薬剤はポリペプチドである。好ましくは、該ポリペプチドは抗体又は抗体の活性な結合部分である。
本発明の好ましい実施態様において、該抗体はモノクローナル抗体又はその活性な結合部分である。
本発明の好ましい実施態様において、該抗体は、ヒト抗体の不変又は定常領域を持った該抗体の可変領域を含むように組換法によって製造されたキメラ抗体又はヒト化抗体である。
キメラ抗体はマウス又はラット抗体のV領域の全てがヒト抗体C領域と結合した組換抗体である。ヒト化抗体は、齧歯類抗体V領域に由来する相補性決定領域をヒト抗体V領域由来のフレームワーク領域と融合させた組換えハイブリッド抗体である。相補性決定領域(CDRs)はV領域の多様性の大部分が限局する、抗体の重鎖及び軽鎖のN末端ドメイン内の領域である。これらの領域は抗体分子の表面においてループを形成する。これらのループは、抗体抗原間の結合表面を提供する。非ヒト動物由来の抗体は、外来抗体に対する免疫反応と血流中からのその除去を誘発する。キメラ及びヒト化両抗体は、組換えハイブリッド抗体内におけるの齧歯類(即ち、外来の)抗体部分の量が減少するため、ヒト患者にインジェクトする場合も、抗原性が減少しており、ヒト抗体領域は免疫応答を誘導しない。この結果、免疫応答が弱くなり、抗体のクリアランスが減少する。このことは、ヒトの疾患を治療するために治療的抗体を使用する場合に明らかに望ましいことである。ヒト化抗体は「外来」の抗体領域をほとんど保持しないようにデザインされるため、キメラ抗体よりも免疫性が低いと考えられる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、該薬剤は抗体断片である。
免疫グロブリン又は抗体の種々の断片が当該技術分野において知られれている。即ち、Fab、Fab、F(ab’)、Fv、Fc、Fd、scFvsなどである。Fab断片は、免疫グロブリン重鎖可変領域と免疫グロブリン軽鎖可変領域とから構成され、それらが共有結合的に結合し、抗原と特異的に結合することができる多量体タンパク質である。Fab断片はインタクトな免疫グロブリン分子のタンパク分解性の切断(例えば、パパインなどりよる)により生成される。Fab断片は、結合した2つのFabを含んでいる。これら2つの断片が免疫グロブリンヒンジ領域によって結合されると、F(ab’)断片が生じる。Fv断片は、共有結合的に結合した免疫グロブリン重鎖可変領域と免疫グロブリン軽鎖可変領域の免疫的に活性な部分から構成され、抗原と特異的に結合することができる多量体タンパク質である。また、断片はだた1つの軽鎖可変領域を含む一本鎖ポリペプチドでもよく、又は重鎖可変領域とは結合しない軽鎖可変領域の3つのCDRsを含むその断片、又は、軽鎖部分とは結合しない重鎖可変領域の3つのCDRsを含むその断片でもよい;また、抗体断片から形成される複数特異的抗体でもよく、これについては、例えば、米国特許第6,248,516号に記載されている。Fv断片又は単一領域(ドメイン)断片は、典型的には、宿主細胞における、同定された関連領域の発現によって生産される。これら又は他の免疫グロブリン又は抗体断片は本発明の範囲に含まれ、Paul,Fundamental Immunology又はJanewayら,Immunobiology(前掲) などの標準的な免疫学のテキスト中に記載されている。現在、分子生物学的にこれらの断片の直接的な合成(細胞中での発現又は化学的に)、並びにそれらの組合せの合成が可能となっている。
【0023】
一本鎖可変領域、いわゆる一本鎖抗体可変領域断片(scFv’s)を作製することが可能である。特異的なモノクローナル抗体のためのハイブリドーマがある場合、RT PCRによって該ハイブリドーマから抽出されたmRNA由来のscFv’sを単離することは、当業者の知る範囲内のことである。あるいは、ファージディスプレイスクリーニングを、scFv’sを発現するクローンを同定するために行うことができる。あるいは、該断片は「ドメイン抗体断片」である。ドメイン抗体は抗体の最小の結合部分である(およそ13kDa)。本技術の例として、米国特許第6,248,516、米国特許第6,291,158、米国特許第6,127,197及びEP0368684中に開示されおり、これらは全て、その全文が出典としてここに取り込まれる。
本発明の好ましい方法において、該抗体断片は一本鎖抗体可変領域断片である。
抗体又は免疫グロブリンの断片は、2つの異なる抗原の2つの異なるエピトープと結合する二重特異的機能も有する。
好ましくは、本ポリペプチドに対する該キメラ/ヒト化モノクローナル抗体は原核細胞又は真核細胞の形質転換又は形質移入に安定に適合した発現ベクター中で、融合ポリペプチドとして製造される。
【0024】
本発明のさらにこのましい実施態様において、該抗体はオプソニン性抗体である。
ファゴサイトーシスはマクロファージ及び多形性白血球によって媒介され、微生物、傷害を受け又は死滅した細胞、細胞の破片、不溶性小片及び活性化された凝固因子の摂食及び消化に関与する。オプソニンは上述の外来物のファゴサイトーシスを促進する物質である。従って、オプソニン性抗体は同じ機能を提供する抗体である。オプソニンの例として、抗体のFc部分又は補体C3を挙げることができる。
好ましくは、該抗体は例えば放射活性及び/又は蛍光及び/又はエピトープラベル又はタグなどの従来のラベル又はタグを含むマーカーと共に提供される。
本発明の選択可能な好ましい実施態様において、該抗体又は抗体断片は治療剤と結合又はクロスリンクする。好ましくは、治療剤は化学療法剤である。
好ましくは該薬剤は以下のグループから選択される:シスプラチン、カルボプラチン、シクロスフォスファミド、メルファラン、カルムスリン(carmusline)、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、シタラビン、メルカプトプリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、タキソール、L−アスパラギナーゼ、G−CSF、エトポシド、コルヒチン、デフェロキサミンメシレート、及びカンプトテシン
【0025】
本発明の選択可能な好ましい実施態様において、該薬剤は核酸分子である。例えば、アンチセンス核酸;アプタマー;又は小分子干渉RNAである。
本発明の好ましい実施態様において、該核酸分子は小分子干渉RNAである。
遺伝子の機能と特異的に除去する技術は、小分子阻害又は干渉RNA(siRNA)とも称され、二重鎖RNAの細胞内への導入によるもので、その結果、siRNA分子に含まれる配列に対するmRNAの相補性を破壊する。siRNA分子は、二重鎖RNA分子を形成するために互いにアニールされたRNAの2つの相補鎖(センス鎖とアンチセンス鎖)を含む。siRNA分子は典型的には除去される遺伝子のエクソンに由来する。
RNA干渉のメカニズムは解明されている。多くの生物が、siRNAの形成を誘導するカスケードを活性化することによって、二重鎖RNAの存在に応答する。二重鎖RNAの存在が、リボ核タンパク質複合体の一部であり、二重鎖RNAを小断片(siRNAs、およぼ21−29ヌクレオチド長)に処理するRNaseIIIを含むタンパク質複合体を活性化する。siRNAは、siRNAのアンチセンスと相補的なmRNAを切断するためのRNase複合体に対するガイドとして作用し、その結果、mRNAが破壊される。
【0026】
本発明のさらなる態様によると、本発明の薬剤を含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらなる態様によると、以下のグループから選択される核酸分子を含む組成物が提供される:
i)配列番号1−452に示される核酸配列からなる核酸分子;
ii)Genbankアクセッション番号により表1に示される核酸配列からなる核酸分子;
iii)上記(i)又は(ii)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子
【0027】
本発明のさらなる態様によると、以下のグループから選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む組成物が提供される:
i)Genbankアクセッション番号による表1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又はGenbankアクセッション番号による表1に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって修飾される変異ポリペプチド、
ii)配列番号1−452に示される核酸配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチド、
iii)上記(ii)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、該ポリペプチドが幹細胞と特異的であり、該組成物がワクチンとしての使用のためのものであるポリペプチド
【0028】
本発明のより好ましい実施態様において、該組成物はアジュバント及び/又は担体を含む。
アジュバントは免疫細胞の活性を調節することにより抗原に対する特異的な免疫応答を増大させる物質又は手段である。アジュバントの例には、単なる例としてのみ示すが、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソームなどが含まれる。担体は免疫原性分子で、第二の分子に結合すると、後者に対する免疫応答を増大させる。幾つかの抗原は本来的には免疫原性がなくても、キーホールリンペットヘモシアニン又は破傷風毒素などの外来タンパク質分子と結合すると抗体応答性を発揮する能力を持ち得る。そのような抗原は、B細胞エピトープを含むがT細胞エピトープは含まない。そのような結合体のタンパク質部分(「担体」タンパク質)は、順次抗原特異的なB細胞をプラズマ細胞へ分化させるヘルパーT細胞を刺激するT細胞エピトープを提供し、抗原に対する抗体を産生させる。ヘルパーT細胞は細胞障害性T細胞などの他の免疫細胞も刺激し、担体は抗体と同様に細胞媒介性免疫を生じさせることにおいて、類似の役割を果たすことができる。
本発明治療用組成物を投与する場合、薬剤的に許容な調製物として投与される。そのような調製物は、通常、薬剤的に許容な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合する担体、アジュバント、サイトカインなどの免疫性を高める補助剤、及び必要に応じて他の治療剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、シクロスフォスファミド、メルファラン、カルムスリン(carmusline)、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、シタラビン、メルカプトプリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、タキソール、L−アスパラギナーゼ、G−CSF、エトポシド、コルヒチン、デフェロキサミンメシレート、及びカンプトテシン)を含む。
【0029】
本発明の治療剤は、インジェクションを含む任意常套的な経路、又は時間をかけて徐々に注入することにより投与することができる。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、口腔内、皮下又は経皮的である。抗体を治療に使用する場合、好ましい投与経路は肺へのエアゾールによる。抗体を含むエアゾール供給系を調製する技術は当業者にとって周知である。一般に、そのような系は、抗原結合部位結合能力などの抗体の生物学的性質をあまり害さない構成要素を利用する必要がある(例えば、Sciarra and Cutie,“Aerosols,”in Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp1694−1712を参照のこと;出典としてここに取り込む)。当業者は、過度の実験を行うことなく抗体エアゾールを製造するために種々のパラメーター及び条件を容易に決定することができる。
【0030】
本発明の組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独で又は他の投与量と共に所望の反応を産み出す組成物量のことである。癌などの特定の疾患を治療する場合、所望の応答が疾患の進行を阻害する。このようなことは、疾患の進行を一時的に遅らせることにのみ関与するかもしれないが、より好ましくは、疾患の進行を永久に停止することに関与するものである。この点は、通常の方法によってモニターすることができ、又はここで述べられる発明の診断方法によりモニターすることもできる。
そのような有効量は、勿論、治療される特定の状態、状態の重篤性、年齢、身体状況、サイズ及び体重を含む各患者のパラメーター、治療の持続時間、同時に行われる治療の性質(もしあれば)、投与の特定の経路など、開業医の専門的知識及び技術の範囲内の要因に依存するであろう。これらの要因は当業者にとって周知であり、通常の実験程度で対応することができる。一般に、使用される各構成要素又はそれらの組合せの最大投与量、つまり、安全な投与最大量は、医学的判断を調査することが望ましい。しかし、当業者は、患者がより低い投与量又は医学的理由、心理的理由又はその他実質的な理由に対して耐え得る用量を主張することを理解するであろう。
【0031】
前述の方法で使用される医薬組成物は、好ましくは、滅菌され、所望の反応を発揮させるために、患者への投与に対して適切な重量又は容量の単位で抗体又は核酸の有効量を含んでいる。反応は、例えば、レポーター系を介して、組成物により促進又は阻害される情報伝達を決定すること、遺伝子発現などの下流の効果を測定すること、又は組成物の生理学的効果を測定することにより評価することができる。同様に、アンチセンス/siRNA分子の効果はアンチセンス/siRNA組成物が添加された細胞中での個々の遺伝子発現を測定することによって容易に決定することができる。その他のアッセイは、当業者には既知であり、反応レベルの測定に用いることができるであろう。
被検対象に投与される抗体又は核酸は、種々のパラメーターに従って、特に、使用される投与態様及び被検対象の状態に従って選択することができる。他の要因には、所望の治療期間が含まれる。被検対象における反応が適用された初期の容量で不十分な場合、被検対象の許容範囲が許す程度にまで、より高い分量(又は異なる、より局所的輸送経路による効果的なより高い分量)を用いることになる。
【0032】
一般に、抗体の分量は1ngと1mgの間の分量、好ましくは10ngと100mμgの間の分量で、当該技術分野における標準的手法に従って製剤化され投与される。核酸又はその変異体が使用される場合、通常、1ngと0.1mgの間の分量が、標準的手法に従って製剤化され投与される。組成物の投与に関するその他のプロトコールは当業者にとって既知であり、用量、インジェクションのスケジュール、インジェクションする部位、投与様式(例えば、骨内など)などは、前述とは異なる。ヒト以外の哺乳動物への組成物の投与(例えば、試験目的又は獣医の治療目的)は、本質的には、上述と同様の条件で実施される。ここで用いられる被検対象は、哺乳動物、好ましくは、ヒト、及び非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ又は齧歯類を含む。
投与される場合、本発明の医薬調製物は薬剤的に許容な量及び薬剤的に許容な組成で適用される。「薬剤的に許容な」とは、活性成分の生物学的活性の効果を妨害しない無毒な物質を意味する。そのような調製物には、通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合する担体、及び必要に応じて他の治療剤が含まれる。医薬に使用される場合、塩は薬理的に許容なものであるが、非薬剤的に許容な塩はその薬理的に許容な塩を調製するために都合よく用いることができ、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的及び薬剤的に許容な塩には、限定はしないが、以下の酸から調製された者が含まれる;塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬剤的に許容な塩は、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩として調製することもできる。
【0033】
医薬組成物は、望ましい場合には、薬剤的に許容な担体と組み合わせてもよい。ここで用いられる「薬剤的に許容な担体」という用語は、1又は複数のヒトへの投与に適した適合性のある個体又は液体充填物、希釈剤又はカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、治療を促進するために活性成分と組み合わせる有機的又は無機的成分、天然又は合成成分を意味する。医薬組成物の構成要素は、互いに、所望の薬剤的効果を本質的に損なうような相互作用を行わない様式で、本発明の分子と混合することもできる。
医薬組成物には、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩及びリン酸塩を含む、適切な緩衝剤が含まれる。
また、医薬組成物には、必要に応じて、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールなどの適切な防腐剤が含まれる。
医薬組成物は、単位投与量注に都合よく存在し、医薬分野で周知のいずれかの方法により調製される。全ての方法には、1又は複数のアクセサリー成分を構成する担体と活性成分を結合させる工程が含まれる。一般に、組成物は、均一及び緊密に活性化合物を液体担体と結合させ、最終的に固体担体又はその両方に分配し、必要ならば、産物を成形することによって調製される。
経口投与に適した組成物は、予め決められた量の活性化合物を含んだカプセル、タブレット、トローチ剤などの個別単位である。他の組成物には、水溶液又はシロップなどの非水溶液、エリキシル又はエマルジョン中のサスペンジョンが含まれる。
非経口投与に適した組成物は、抗体又は核酸の滅菌水溶液又は非水溶液調製物を都合 よく含み、好ましくは、受容対象の血液とアイソトニックである。この調製物は適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いた既知の方法により製剤化することができる。また、滅菌したインジェクション可能な調製物は、滅菌したインジェクション可能溶液又は無毒性の非径口的に許容される希釈剤又は溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液中への懸濁液などである。この中で使用される利用可能なビークル及び溶媒は水、リンガー液及びアイソトニック塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌した、固定オイルは溶媒又は懸濁培地として都合よく使用される。この目的に対し、合成モノ−又はジ−グリセリドを含む任意の無菌的固定オイルが使用される。さらに、オレイン酸などの脂肪酸がインジェクション可能な調製物中に使用される。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に適した担体形成は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA中に見出すことができる。
【0034】
本発明のさらなる態様によると、本発明のヒト化又はキメラ抗体の発現に適合したベクターが提供される。
本発明の態様によると、本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードするベクターで形質転換又は形質移入された細胞が提供される。
本発明のさらなる態様によると、
i)本発明のヒト化又はキメラ抗体をコードする核酸分子を含むベクターで、形質転換又は形質移入した細胞を提供し、
ii)該抗体の製造を導く条件下で該細胞を生育させ、
iii)該細胞、又はその生育環境から該抗体を精製する、
ことを含む本発明のヒト化又はキメラ抗体の製造方法が提供される。
【0035】
また、さらなる本発明の態様において、前述のモノクローナル個体を生産するハイブリドーマ細胞株が提供される。
本発明のさらなる態様において、本発明のハイブリドーマ細胞株を用いた本発明のモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
本発明のさらなる態様において、
i)Genbankアクセッション番号の表1に示されたアミノ酸配列を持つ少なくとも1つのポリペプチド又はその断片、又は配列番号1−452に示される核酸分子によってコードされる少なくとも1つのポリペプチド含む抗原で、免疫応答性哺乳動物を免疫し、
ii)ハイブリドーマ細胞を作製するために免疫した免疫応答性哺乳動物のリンパ球とミエローマ細胞とを融合させ、
iii)(i)のポリペプチドに対する結合活性について、工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体をスクリーニングし、
iv)該ハイブリドーマ細胞を増殖させるため、及び/又は該モノクローナル抗体を分泌させるために培養し、
v)培養上清からモノクローナル抗体を回収する、
工程を含む本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の調製方法が提供される。
好ましくは、該免疫応答性哺乳動物はマウスである。あるいは、該免疫応答性哺乳動物はラットである。
ハイブリドーマ細胞を用いたモノクローナル抗体の製造は、当該技術分野において周知である。モノクローナル抗体を製造するために使用される方法は、Kohler and Milstein in Nature 256,495−497(1975)、また、Donillard and Hoffmanによる,”Basic Facts about Hybridomas” in Compendium of Immunology V.π ed. by Schwartz, 1981、中に開示されており、ここに、出典として取り込まれる。
【0036】
本発明のさらなる態様によると、
i)単離した細胞サンプルを提供し、
ii)(i)のサンプルを、配列番号1−452の核酸配列によって示される核酸分子と結合する結合薬剤と接触させ、
iii)同一の正常なコントロールサンプルと比較して、該サンプル中での該核酸分子の発現を決定する、
工程を含む、被検対象中の癌検出のための診断アッセイが提供される。
本発明の好ましい実施態様において、該結合薬剤はオリゴヌクレオチドプライマーである。好ましくは該アッセイはポリメラーゼ連鎖反応である。
本発明の選択し得るより好ましい実施態様において、該結合薬剤は、配列番号1−452に示される核酸分子によってコードされる該ポリペプチド、又は少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって対照のアミノ酸配列から変異するアミノ酸配列を含むポリペプチド変異体と特異的に結合する抗体である。
本発明の好ましい実施態様において、該癌は前立腺癌である。
【0037】
本発明のさらなる態様によると、配列番号1−452の核酸配列によって示される核酸分子と特異的に反応する結合薬剤、又は配列番号1−452で示される核酸配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に反応する薬剤を含むキットが提供される。
本発明の好ましい実施態様において、該キットはさらに該核酸分子又は該ポリペプチドと特異的に反応するオリゴヌクレオチド又は抗体を含む。
好ましくは、該キットは、熱安定性DNAポリメラーゼ及び核酸の増幅を行うのに必要な構成要素を含む。好ましくは、該キットはポリメラーゼ連鎖反応を行うための1セットの指示書とコントロールの核酸を含む。
本発明の選択し得る好ましい実施態様において、該キットは配列番号1−452に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に反応する抗体を含む。
好ましくは該キットは、該ポリペプチドと特異的に結合する一次抗体と特異的に反応する二次抗体及び該一次抗体と該二次抗体の結合を検出するために必要が酵素試薬を含む、免疫アッセイを行うために必要な構成要素を含む。
【0038】
本発明のさらなる態様によると、
i)ポリペプチド又はその配列変異体、及び少なくとも1つの試験薬剤を含む調製物を作製し、
ii)該ポリペプチドの活性に対する該薬剤の活性を決定し、
a)配列番号1−452に示された核酸配列を含む核酸分子;
a)Genbankアクセッション番号の表1で示される核酸配列からなる核酸分子;
b)上記(i)又は(ii)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子;
からなるグループより選択される核酸分子によってコードされるポリペプチド活性を調節する薬剤のスクリーニング方法が提供される。
【0039】
本発明の好ましい方法において、該薬剤はアンタゴニストである。本発明の選択し得る好ましい方法において、該薬剤はアゴニストである。
本発明のスクリーニング方法によって同定される薬剤には、抗体、siRNA、アプタマー、小分子有機分子(例えば、ペプチド、環状ペプチド)、ここで開示されるポリペプチドのドミナントネガティブ変異体が含まれる。
上述したように、本発明には、ある実施態様において、ここで開示されるポリペプチド由来の「ドミナントネガティブ」ポリペプチドも含まれる。ドミナントネガティブポリペプチドは不活性なタンパク質変異体であり、細胞内装置と相互作用することにより、活性タンパク質を細胞内装置との相互作用から移動させ、又はその活性タンパク質と競合し、その結果、活性タンパク質の効果を低減させる。例えば、リガンドと結合はするがリガンドの結合に応答したシグナルを伝達しないドミナントネガティブレセプターは、リガンドの示す生物学的効果を低減させる。同様に、標的タンパク質と正常に相互作用するが標的タンパク質をリン酸化しない触媒的に不活性なドミナントネガティブキナーゼは、細胞内シグナルに応答した標的タンパク質のリン酸化を減少させる。同様に、他の転写因子又は遺伝子のコントロール領域中のプロモーター部位には結合するが、遺伝子の転写を増大させないドミナントネガティブ転写因子は転写を増大させることなくプロモーター結合部位を塞ぎ、正常な転写因子の効果を減少させる。
【0040】
当業者にとって、ペプチド薬剤のアミノ酸配列に対する修飾は、標的配列に対するペプチドの結合及び/又は安定性を促進し得ることが明らかである。さらに、ペプチドの修飾はここで開示されるポリペプチドの活性を阻害するのに必要な有効量のペプチドを減少させることにより、ペプチドのインビボにおける安定性を増大させることもできる。この点は、インビボで生じ得る望ましくない副作用を有利に減少させる。修飾には、例として、限定はしないが、アセチル化及びアミド化が含まれる。あるいは、又は好ましくは、該修飾には組換体又はペプチドの合成型の調製における修飾されたアミノ酸の使用が含まれる。当業者において、修飾されたアミノ酸には、例えば、限定はしないが、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、N−アセチルリジン、N−メチルリジン、N,N−ジメチルリジン、N,N,N−トリメチルリジン、シクロヘキシアラニン、D−アミノ酸、オルニチンが含まれる。他の修飾には、C,C又はCアルキルRグループをハロ(例えば、F、Br、I)、ヒドロキシ又はC−Cアルコキシから選択される1,2又は3置換体によって任意に置換されたアミノ酸が含まれる。また、当業者にとって、p53結合活性を保持するペプチドは、環化により修飾され得ることは、明らかであろう。環化は当該技術分野において周知である(Scottら Chem Biol(2001),8:801−815;Gellermanら J.Peptide Res(2001),57:277−291;Duttaら J.Peptide Res(2000),8:398−412;Ngoka及びGross J Amer Soc Mass Spec(1999),10:360−363を参照のこと)。
【0041】
本発明のさらなる態様によると、本発明の薬剤の有効量を投与することを含む癌に対する被検対象の治療方法が提供される。
本発明の好ましい方法において、該被検対象はヒトである。
本発明の好ましい方法において、該癌は前立腺癌である。
本発明のさらなる態様によると、本発明によるものからなるグループより選択される核酸分子又は、該核酸分子によってコードされるポリペプチドの有効量を投与することを含む、癌の病態に対して、動物を免疫する方法が提供される。
本発明の好ましい方法において、該動物はヒトである。
本発明の好ましい実施態様において、該癌は前立腺癌である。
ここで使用される場合、「癌」という用語は、すなわち、急速に増殖する細胞成長によって特徴づけられる異常な状況又は状態である、自律的成長を行うことができる細胞のことを指す。この用語には、病理組織学的タイプ又侵襲性の段階に関わらず、全てのタイプの癌性成長又は発癌性過程、転移組織又は悪性にトランスフォームした細胞、組織、又は器官が含まれる。「癌」という用語には、例えば、肺、胸部、甲状腺、リンパ、胃腸、及び尿生殖器路などに影響を与えるような種々の器官系の悪性腫瘍、並びに、多くの大腸癌、腎臓細胞カルチノーマ、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞カルチノーマ、小腸の癌及び食道の癌などの悪性腫瘍を含むカルチノーマが含まれる。「カルチノーマ」という用語は、当該分野において、呼吸器系カルチノーマ、胃腸系カルチノーマ、尿生殖器カルチノーマ、精巣カルチノーマ、胸部カルチノーマ、前立腺カルチノーマ、内分泌系カルチノーマ及びメラノーマを含む上皮又は内分泌組織の腫瘍として理解され、また、それらを意味する。カルチノーマの例には、子宮頸部、肺、前立腺、胸部、手及び首、大腸及び卵巣の組織に由来する形成するものが含まれる。また、「カルチノーマ」という用語には、例えば、癌及び肉腫組織によって構成される悪性腫瘍を含む、癌肉腫も含まれる。「アデノカルチノーマ」とは、腺組織に由来するカルチノーマ、又は認識可能な腺構造を形成する腫瘍細胞を意味する。「サルコーマ」という用語は、当該分野において、間葉組織由来の悪性腫瘍と理解され、また、それを意味する。
【0042】
本明細書の詳細な説明及び請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」及び「包含する(contain)」なる語句及び該語句のバリエーション、例えば、「含んでいる(comprising)」、及び「含む(comprises)」は、「限定はしないで含む」ことを意味し、また、他の部分、付加物、成分、完全なもの又は段階を排除(しない)することを意図しない。
本明細書の詳細な説明及び請求の範囲を通じて、別途前後関係で要求されなければ、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、別途前後関係で要求されなければ、本明細書は、単数と同様に複数をも意図するものとして理解される。
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例に関連して記載される特徴、完全体、性質、化合物、化学成分、化学基は不整合がない限り、ここで記載される全ての他の態様、実施態様、実施例に適用できると理解される。
本発明の実施例は、以下の物質、材料、方法及び図を参照しながら、例示としてのみ、ここに記載される。
【実施例】
【0043】
材料と方法
単離された腫瘍幹細胞の遺伝子型
散発性前立腺癌(8p10q16p)と関連するマイクロサテライトマーカーの組合せを使用して、単離されたHEA/CD44/αβhi/CD133細胞が、同一の患者に由来する血液リンパ球DNAと比較して、前立腺腫瘍の異型接合性パターンの特徴の喪失を示すかどうか検討することができる。この解析は、マイクロサンプリングされた培養に対し、3MM紙と蛍光標識されたPCRプライマーを用いて行われる(MacIntoshら,1998)。これにより、正常細胞と癌細胞とを区別し、幹細胞がトランスフォーミングにおける実際の標的であるかどうか決定することができるようになる。
推定上の幹細胞の増殖、分化及び悪性の潜在性
腫瘍細胞の明確な集団を単離し、それらの増殖、分化及び悪性の潜在性について、インビトロ及びインビボにおいて決定される。以下の集団、HEA/CD44(管腔の細胞)、HEA/CD44(基底細胞)、HEA/CD44/αβlow/CD133(移行細胞)、HEA/CD44/αβhi/CD133(幹細胞)が単離され、選別されていない腫瘍手段と比較される。
【0044】
コロニー形成効果(CFE):足場非依存的及び足場依存的成長
癌細胞(足場非依存的)の明確な集団(上述)のトランスフォーミング能力をソフトアガー中でコロニーを形成する能力により測定する。個々のコロニーは倒立型顕微鏡を用いて21日後に数える。比較はCFEとコロニーのサイズにより行う。
再構成した基底膜マトリックスゲル中における形態形成
腫瘍幹細胞とそれらの前駆細胞が再構成した基底膜(例えば、Matrigel)中で受ける腺形態形成能力を測定した。正常な基底細胞は、コラーゲンベースの基質(例えば、Matrigel)を備えたマトリックス中、アンドロゲンの存在下で生育させると、腺形態形成を行うことを示した。構造的及び表現型的にインビボの腺房に類似の球状体が生じ、しばしば、肺胞及びダクト様に枝分かれする(Langら,2001)。これに対し、癌細胞は、しばしば、明確な組織を形成することなくスピンドル形の細胞の大きな凝集を形成する。にも関わらず、その構造には、しばしば、ある程度分化を示し、元の腫瘍と比較できる細胞が含まれている。
浸潤アッセイ
これらの幹細胞のMatrigelを横切って移動する能力は、修正Boyden−chamber法によって測定される(Albiniら,1987)。移動の割合は、経時的共焦点顕微鏡、EGFPでラベルした細胞を用いて評価される。発明者らは、低いレベルのEGFPを発現している前立腺上皮を調製した。pLNCX−EGFP(2)によって産生されたリコンビナントレトロウィルスは細胞集団への感染に使用され、G418耐性コロニーは運動性アッセイに使用される。低いレベルのGFPの発現 はリアルタイムでの浸潤及び運動を追跡するのに使用される。
【0045】
インビボにおける腫瘍形成
腫瘍幹細胞は正常幹細胞を定義づける重要な基準が存在する:移植後、増殖し、分化及び自己再生しなければならない。明らかな腫瘍表現型の能力を決定し、インビボにおいて移植するために、幹細胞、移行細胞、基底細胞、管腔細胞及び選別されていない細胞を6から8週齢の免疫に欠陥のある雄のマウスの前立腺に導入する。マウスは移植時に徐放性テストステロンペレットの皮下移植によりホルモン処理される。首尾良く移植され、腫瘍増殖を開始した各集団由来の細胞数を移植細胞の数を変えることにより決定した。個々の集団の自己再生能力は連続的に第二のレシピエントへ移植することにより決定した。
【0046】
アレイサンプル及びデータのプロセッシング
総RNA抽出
αhigh/CD133cells
総RNAはQIAgenRNeasyマイクロカラムを使用して、1×10にまで選択された細胞から抽出した。細胞は100μlRLTバッファー+1%β−メルカプトエタノール中で溶解させた。「totalRNA isoation from animal cells」に対する製造プロトコールは以下のものである(RNeasy_Micro0403.pdf,pages 39−44、出典として取り込む)。
αlow細胞
総RNAは1×10〜1×10のQIAgenRNeasyミニカラムを使用して選択された細胞から抽出する。細胞を350μlRLTバッファー+1%β−メルカプトエタノール中で溶解させた。「totalRNA isoation from animal cells」に対する製造プロトコールは以下のものである(RNeasy_Mini0601.pdf,pages 31−35、出典として取り込む)。
RNAの収量は269nmで分光光度法により測定し、RNAの完全性はAgilent2100バイオアナライザーを用いて、キャピラリー電気泳動によってチェックする。
【0047】
断片化された標識cRNAの製造
総RNAは2ラウンドのcDNA合成及びIVT(インビトロ転写)により増幅し、以下のAffymetrix small scale labellingプロトコールvII(smallv2_technote.pdf、出典として取り込む)に以下の修正を加えてビオチン標識する:
1.10−50ngの総RNAをサンプルあたりに使用する(ステップ1)
2.2回の第二鎖cDNA合成反応におけるT4DNAポリメラーゼのステップを省略する(ステップ2及び7)
3.この段階では、第2サイクル、cRNA増幅ためのIVT及び標識(ステップ9)は、ENZO BioArray HighYield RNA転写標識キットの代わりにAffymetrix GeneChip IVT標識キットとAffymetrix eukaryotic sample and array processing standard protocol(expression_s2_manual_0604.pdf、セクション2.1.34−2.1.35、出典として取り込む)に従う。
第1及び第2ラウンドのcRNA産物及び断片化cRNAの品質は、Agilent2100バイオアナライザーを用いて、キャピラリー電気泳動によってチェックする。
【0048】
アレイハイブリダイゼーション
標識された断片化cRNA(15μg)はAffymetrix HG−U133plus2 GeneChip上のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション、洗浄、染色及びスキャンについては、Affymetrix eukaryotic sample and array processing standard protocol(expression_s2_manual_0604.pdf、セクション2.2.3−2.3.17、出典として取り込む)に従う。
1.ハイブリダイゼーションはAffymetrix Hybridization Oven 640を使用して行る。
2.EukGE−WS2v5 protocolを使用し、Affymetrix Fluidics Station 450を用いて行う。
3.アレイのスキャンはAffymetrix Gene Scanner 3000で行う。
【0049】
データのプロセッシング
スキャンしたGeneChipのイメージは、強度値及びフラッグ(存在、不存在又はマージナル)を各プローブに関し導き出すAffymetrix GCOSソフトウェアを使用してプロセッシングを行う。プローブの強度は、MAS5アルゴリズムを用いて導き出される。異なるデータセット間の比較は、Agilent GeneSpring GXソフトウェアを用いて行なわれる。 比較されるデータセットは、まず、3つのステップを使用して標準化される(以下の順序に従い連続して行われる):
1.トランスフォームバリュー<0.01 to 0.01
2.該チップに対して導かれた測定の50%までチップを標準化する
3.該プローブに対する測定の中央値まで各プローブを標準化する。
データ解析の目的には、以下のパラメーターが適用される:
1.前立腺癌種由来の全ての細胞は悪性に分類され、BPH種由来の細胞は良性に分類される(「腫瘍タイプ」パラメーター)
2.高インテグリンαβ発現及びCD133に関する選択により得られた全ての細胞は、幹細胞に分類され、低インテグリンαβ発現に関し選択された全ての細胞は明確な基底細胞に分類される(「細胞形」パラメーター)。
3.データにのさらなる説明により、上記パラメーターの組合せから以下の状態を導き出される:悪性幹細胞、悪性コミッテッド基底細胞、両生幹細胞及びコミッテッド基底細胞
低質及び情報価値の無いデータは、3つの選択を使用して除去される(以下の順序に従い連続して行われる):
1.全てのサンプル中において、「不存在」とフラッグされたプローブの除去
2.少なくとも3又は4つの条件において>1のパラメータクラスの範囲の標準偏差を持つプローブの除去
3.全ての4つの条件間の標準化された発現値が、2倍未満の変化であるプローブの除去
【0050】
表1は前立腺間細胞及び前立腺癌幹細胞のアレイアッセイを要約したものである。遺伝子/核酸及びアミノ酸配列は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.でアクセス可能なGenbankアクセッション番号により識別される。また、遺伝子は慣用名によっても識別される。各アクセッションエントリーの内容は、出典としてここに取り込まれ、各遺伝子のアミノ酸配列を含む。
【0051】
〔表1〕
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】


【表1−6】


【表1−7】


【表1−8】


【表1−9】


【表1−10】


【表1−11】


【表1−12】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】前立腺上皮マーカーとしてのCD133の確認:1A:核染色DAPI(青)及びPEに直接結合した抗CD133(赤)で標識した前立腺腺房のパラフィンセクション。1B:αβhi/CD133の表現型を持つ基底細胞は、αβlow/CD133よりも高度なコロニー形成効果(CFE)を示す。(CFE)は、形成されたコロニー数/選択した細胞 × 100% として計算した。CFEsはコントロールのCFEに対する割合として表示した。結果は4回の実感の平均±標準誤差で示す。1C、(A)ヘマトキシリン及びエオシン、(B)34βE12、(C)抗−K18、(D)抗−PAP(E)抗−アンドロゲンレセプターで染色したαβhi/CD133基底細胞の、移植により形成される前立腺腺房の異種移植。バーは40μm
【図2】前立腺のリンパ節転移(LNMP)に由来する腫瘍「幹」細胞の特徴づけ。2A、□/CD133に基づき選択された腫瘍細胞は、培養中で分化する。2B、PC3Mと不死化前立腺上皮細胞株、PNT1aとの比較によるLNMPの浸潤アッセイ活性。
【図3】図3aはα2hi/CD133細胞(PE434細胞;Gleason9)からのNFkB発現を示す。;図3bはNFkBとCD133発現のFACSドットプロットを示す;84%の細胞はNFkBのみに対しポジティブで、0.21%がNFkB及びCD133に対しポジティブである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌幹細胞特異的な核酸分子、又は癌ステム核酸分子によってコードされるポリペプチドの活性を調節する薬剤であって、該癌細胞特異的核酸分子が、
i)配列番号1−452に示される核酸配列からなる核酸分子;
ii)上記(i)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、医薬としての使用に関し、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子:
からなるグループより選択されるものである薬剤。
【請求項2】
該薬剤がアンタゴニストである請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
該薬剤がアゴニストである請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
以下のグループから選択される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性を調節する薬剤:
i)配列番号1−452に示される核酸分子によってコードされるポリペプチド;
ii)配列番号1−452からなるグループより選択される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって修飾される変異ポリペプチドをコードし、該薬剤が医薬の使用に関し幹細胞特異的な特徴を持つポリペプチド
【請求項5】
該薬剤がポリペプチドである請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
該ポリペプチドが抗体又は抗体の活性な結合部位である請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
該抗体がモノクローナル抗体又はその活性な結合部位である請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
該抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である請求項6又は7に記載の薬剤。
【請求項9】
該薬剤が抗体断片である請求項6から8のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
該断片が、Fab、Fab、F(ab’)、Fv、Fc、Fd又はscFvsからなるグループより選択される請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
該抗体断片が一本鎖抗体可変領域断片である請求項10に記載の薬剤。
【請求項12】
該抗体が2つの異なる抗原の2つの異なるエピトープに二重特異的に結合する請求項10又は11に記載の薬剤。
【請求項13】
該抗体がオプソニン性抗体である請求項6から12のいずれに記載の薬剤。
【請求項14】
抗体がマーカー又はタグと共に提供される請求項6から13のいずれかに記載の薬剤。
【請求項15】
該抗体又は抗体断片が治療剤と結合し、又は治療剤とクロスリンクしている請求項6から14に記載の薬剤。
【請求項16】
該治療剤が化学療法剤である請求項15に記載の薬剤。
【請求項17】
該薬剤が、シスプラチン、カルボプラチン、シクロスフォスファミド、メルファラン、カルムスリン(carmusline)、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、シタラビン、メルカプトプリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、タキソール、L−アスパラギナーゼ、G−CSF、エトポシド、コルヒチン、デフェロキサミンメシレート、及びカンプトテシンからなるグループより選択される、請求項15又は16に記載の薬剤。
【請求項18】
該薬剤が核酸分子である請求項1から3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項19】
該核酸分子が、アンチセンス核酸、アプタマー又は小分子干渉RNAからなるグループより選択される請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
該核酸分子が小分子干渉RNAである請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
該小分子干渉RNAが21−19ヌクレオチド長である請求項19又は20に記載の薬剤。
【請求項22】
請求項1から21のいずれかに記載の薬剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
i)配列番号1−452に示される核酸配列からなる核酸分子;
ii)上記(i)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ワクチンとしての使用に関し、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子:
からなるグループより選択される核酸分子を含む組成物。
【請求項24】
配列番号1−452に示される核酸分子によってコードされるポリペプチド、又は配列番号1−452からなるグループより選択される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって修飾される変異ポリペプチドをコードする、ワクチンとしての使用のための組成物。
【請求項25】
該組成物がアジュバント及び/又は担体を含む請求項23又は24に記載の組成物。
【請求項26】
請求項8から14のいずれかに記載されるヒト化又はキメラ抗体又は抗体断片の発現に適合したベクター。
【請求項27】
ヒト化又はキメラ抗体又は抗体断片をコードする請求項26に記載のベクターで形質転換又は形質移入した細胞。
【請求項28】
i)請求項8から14のいずれかに記載されるヒト化又はキメラ抗体又は抗体断片をコードする核酸分子を含むベクターで、形質転換又は形質移入した細胞を提供し、
ii)該抗体又は断片の製造に導く条件下で該細胞を生育させ、
iii)該細胞、又はその生育環境から該抗体又は断片を精製する、
ことを含んでなるヒト化又はキメラ抗体又は抗体断片の製造方法。
【請求項29】
請求項7に記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞株。
【請求項30】
請求項29に記載のハイブリドーマ細胞株を使用することを含む請求項7に記載のモノクローナル抗体を製造する方法。
【請求項31】
i)配列番号1−452に示される核酸配列を含む核酸分子によってコードされる少なくとも1つのポリペプチド、又はその断片を含む抗原で、免疫応答性哺乳動物を免疫し、
ii)ハイブリドーマ細胞を作製するために免疫した免疫応答性哺乳動物のリンパ球とミエローマ細胞とを融合させ、
iii)(i)のポリペプチドに対する結合活性について、工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体をスクリーニングし、
iv)該ハイブリドーマ細胞を増殖させるため、及び/又は該モノクローナル抗体を分泌させるために培養し、
v)培養上清からモノクローナル抗体を回収する、
工程を含むモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の調製方法。
【請求項32】
i)単離した細胞サンプルを提供し、
ii)(i)のサンプルを、配列番号1−452の核酸配列によって示される核酸分子、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で該核酸分子とハイブリダイズし、変異ポリペプチドをコードする核酸分子と結合する結合薬剤と接触させ、
iv)同一の正常なコントロールサンプルと比較して、該サンプル中での該核酸分子の発現を決定する、
工程を含む、被検対象中の癌検出のための診断アッセイ。
【請求項33】
該結合薬剤がオリゴヌクレオチドプライマーである請求項32に記載のアッセイ。
【請求項34】
該アッセイがポリメラーゼ連鎖反応である請求項33に記載のアッセイ。
【請求項35】
該結合薬剤は、配列番号1−452の核酸配列によって示される核酸分子によってコードされる該ポリペプチド、又は少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換によって対照のアミノ酸配列から変異するアミノ酸配列を含むポリペプチド変異体と特異的に結合する抗体である、請求項32に記載のアッセイ。
【請求項36】
該癌が前立腺癌である請求項32から35のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項37】
配列番号1−452で示される核酸分子と特異的に反応する結合薬剤、又は配列番号1−452で示される核酸配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に反応する薬剤を含むキット。
【請求項38】
該キットが、さらに、該核酸分子又は該ポリペプチドと特異的に反応するオリゴヌクレオチド又は抗体を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
該キットが熱安定性DNAポリメラーゼ及び核酸の増幅を行うのに必要な構成要素を含む、請求項37又は38に記載のキット。
【請求項40】
該キットが該ポリメラーゼ連鎖反応を行うための指示書及びコントロールの核酸のセットを含む、請求項37から39のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
該キットが該ポリペプチドと特異的に反応する抗体を含む、請求項37から40のいずれかに記載のキット。
【請求項42】
該キットが、例えば、該ポリペプチドと特異的に結合する一次抗体と特異的に反応する二次抗体及び該一次抗体と該二次抗体の結合を検出するために必要が酵素試薬を含む、免疫アッセイを行うために必要な構成要素を含む、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
i)ポリペプチド又はその配列変異体、及び少なくとも1つの試験薬剤を含む調製物を作製し、
ii)該ポリペプチドの活性に対する該薬剤の活性を決定し、
a)配列番号1−452に示される核酸配列を含む核酸分子;
b)上記(i)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子;
からなるグループより選択される核酸分子によってコードされるポリペプチド活性を調節する薬剤のスクリーニング方法。
【請求項44】
該薬剤がアンタゴニストである請求項43に記載の方法。
【請求項45】
該薬剤がアゴニストである請求項43に記載の方法。
【請求項46】
請求項1−21のいずれかに記載の薬剤の有効量を投与することを含む癌の罹患対象を処置する方法。
【請求項47】
該癌の罹患対象がヒトである請求項46に記載の方法。
【請求項48】
癌が前立腺癌である請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
i)配列番号1−452に示される核酸配列からなる核酸分子;
ii)上記(i)の核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、幹細胞特異的なポリペプチドをコードする核酸分子:
からなるグループより選択される核酸分子又は、該核酸分子によってコードされるポリペプチドの有効量を投与することを含む、癌の病態に対して、動物を免疫する方法。
【請求項50】
該動物がヒトである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
該癌が前立腺癌である請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−502156(P2009−502156A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523431(P2008−523431)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002658
【国際公開番号】WO2007/012811
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(504051548)プロキュア・セラピューティクス・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PROCURE THERAPEUTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Innovation Centre, York Science Park, York YO10 5DG, United Kingdom
【Fターム(参考)】