説明

床パン

【課題】床パンの表面のどの部分に残水があるかが一見して分かる床パンを提供する。
【解決手段】浴室の床スラブ上に設置される床パン1である。少なくとも洗い場床面となる部分の表面に、粒径2mm以上のシリカゲル2を20重量部以上及び水分を吸収すると色が変化する呈色材を混入させた合成樹脂からなる最表樹脂層3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室の床スラブ上に設置される床パンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴室の床スラブ上に床パンを設置して入浴スペースを形成している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図2に示すように、床パン1の表面、特に、洗い場床面となる表面には、微細な凹凸5を設ける等の処理を行い、排水性や残水の乾燥性の確保を図ったものが多数開発されている。
【0004】
しかしながら、床パン1の表面に残水が全く残らないようにするのは無理である。また、床パン1の表面に残水がある状態で、床パン1上を歩いたり床パン1上で作業したりすることがあるが、従来の床パン1にあっては、床パン1のどの部分に残水があるかが一見して分かり難く、残水のある部分を踏むと足の裏が濡れて不快に感じ、特に靴下を履いていると残水を吸収してしまい、不快に感じる上に乾かさなければならないものであった。
【特許文献1】特開2004−251095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであり、その目的とするところは、床パンの表面のどの部分に残水があるかが一見して分かる床パンを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、浴室の床スラブ上に設置される床パン1であって、少なくとも洗い場床面となる部分の表面に、粒径2mm以上のシリカゲル2を20重量部以上及び水分を吸収すると色が変化する呈色材を混入させた合成樹脂からなる最表樹脂層3を形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、シリカゲル2により床パン1の表面の残水が吸収されると共に呈色材により色の変化が生じるため、床パン1の表面のどの部分に残水があるかが一見して分かる。
【0008】
また請求項2に係る床パン1にあっては、請求項1において、基材樹脂層4となる合成樹脂に、不織布に合成樹脂を含浸させた最表樹脂層3となるシートを重ねてプレス成形して成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、最表樹脂層3をSMCとして容易にプレス成形により形成することが可能となる。
【0010】
また請求項3に係る床パン1にあっては、請求項1において、基材樹脂層4となる合成樹脂に、最表樹脂層3となるシリカゲル2及び呈色材を混入させたアクリルゲルコート層をハンドレイアップ成形により積層して成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、最表樹脂層3をプレス成形によらずに形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、床パンの表面のどの部分に残水があるかが一見して分かるようになるため、残水のある部分を踏んで足の裏が濡れて不快に感じたり、特に靴下を履いている時に不快に感じる上に靴下を乾かさなければならない、といったことを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。床パン1は、浴室の床スラブ上に設置されて入浴スペースとなるもので、上面の一部が浴槽設置部となると共に残りの部分が洗い場床面となるか、あるいは、洗い場床面となる部分にのみ設置される。いずれにしても、少なくとも洗い場床面を備えている。
【0014】
本発明では床パン1は、基材樹脂層4となる合成樹脂の表面側(上面側)に、最表樹脂層3となる合成樹脂を積層して形成される。基材樹脂層4は、FRPをはじめ種々の合成樹脂で成形される。最表樹脂層3は、基材樹脂層4の少なくとも洗い場床面となる部分の表面に形成され、浴槽設置部となる部分の表面に形成してもよい。
【0015】
最表樹脂層3は、主体をなす合成樹脂に、粒径2mm以上のシリカゲル2を20重量部以上及び呈色材を混入させたものである。ここで、重量部とは総重量に対する重量%とする。
主体をなす合成樹脂としては、FRPやアクリル樹脂が好適に用いられるもので、アクリル樹脂は耐薬品性に優れている。
【0016】
シリカゲル2は、広く知られているため詳細には説明しないが、SiO・nHOで表される多孔質の物質で、乾燥剤・吸着剤として機能すると共に、加熱することにより吸着した水や臭い成分等の物質を放出する。
【0017】
呈色材は、水分を吸収すると色が変化するもので、例えば塩化コバルトが好適に用いられる。塩化コバルトは、乾燥していると青くなり、水分を吸収すると赤くなる。
【0018】
床パン1の製造は、基材樹脂層4及び最表樹脂層3をプレス成形する方法か、基材樹脂層4をプレス成形等により成形した後、最表樹脂層3をハンドレイアップ成形により積層する方法が主に採られている。
【0019】
プレス成形する場合には、最表樹脂層3となる、不織布に合成樹脂を含浸させてなるシート(すなわちSMC(シートモールディングコンパウンド))を、基材樹脂層4となる合成樹脂に重ねてプレスすればよく、プレス成形により容易に最表樹脂層3を形成することができる。
【0020】
ハンドレイアップ成形により積層する場合には、予め形成した基材樹脂層4となる合成樹脂に、最表樹脂層3をハンドレイアップ成形により積層するもので、この場合には最表樹脂層3の主体をなす合成樹脂としてアクリル樹脂が好適に用いられる。これにより、最表樹脂層3となるアクリルゲルコート層をプレス成形によらずに形成することが可能となり、最表樹脂層3をプレス成形にて形成するための金型が不要となり、初期費用を抑えることができる。
【0021】
本発明では、床パン1の表面に残水があると、シリカゲル2により床パン1の表面の残水が吸収されると共に、呈色材により色の変化が生じる。このため、床パン1の表面のどの部分に残水があるかが一見して分かるようになり、色が変化した部分を避けて床パン1の表面を踏むことで、足の裏が濡れて不快に感じたり、特に靴下を履いている時に、不快に感じる上に靴下を乾かさなければならない、といったことを回避することができるものである。
【0022】
また、床パン1の内部又は下面に暖房手段を設けてもよい。暖房手段としては特に限定されず、電熱ヒータや温水床暖房等が用いられる。暖房手段により床パン1を加熱することにより、シリカゲル2が吸収した水分を放出させることが可能となる。
【0023】
また、最表樹脂層3にエンボスや微細凹凸等の凹凸を設けてもよい。エンボスの凹凸により、床パン1の表面を滑り難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の床パンの要部断面図である。
【図2】従来の床パンの要部断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 床パン
2 シリカゲル
3 最表樹脂層
4 基材樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床スラブ上に設置される床パンであって、少なくとも洗い場床面となる部分の表面に、粒径2mm以上のシリカゲル20重量部以上及び水分を吸収すると色が変化する呈色材を混入させた合成樹脂からなる最表樹脂層を形成して成ることを特徴とする床パン。
【請求項2】
基材樹脂層となる合成樹脂に、不織布に合成樹脂を含浸させた最表樹脂層となるシートを重ねてプレス成形して成ることを特徴とする請求項1記載の床パン。
【請求項3】
基材樹脂層となる合成樹脂に、最表樹脂層となるアクリルゲルコート層をハンドレイアップ成形により積層して成ることを特徴とする請求項1記載の床パン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144489(P2010−144489A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326410(P2008−326410)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】