説明

床用板材の乾燥方法及び床板の製造方法

【課題】製材で供給される溝つき板材を用いて、反り出しや、割れだしなどの生じ難い床板を効率良く作り出す。
【解決手段】板材10を製材によって得る工程と、得られた板材10の一方の面10aに対して複数本の溝11を当該面10aの長手方向にわたるように設ける工程と、板材10’を含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、天然乾燥された板材10’を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程と、乾燥された板材10’を加工して床板20を得る工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾湿に伴う反り出しなどの不具合の生じにくい床板を効率よく提供しうる床用板材の乾燥方法及び床板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フローリング処理は、それぞれの趣味や目的などの各種のニーズに対応しうるように各種の床材を用いてなされている。
【0003】
例えば、合板を用いてフローリング処理をしたり、構造合板上に薄手の無垢の床板を敷き並べてフローリング処理をしたものなどがある。
しかしながら、合板を用いたフローリングにあっては、合板に用いられている接着剤による影響を受けやすく、しかも、歩行などに際して無垢材特有の感触を得にくいなどの点から無垢の床板によるフローリングが試みられている。
【0004】
しかしながら、無垢材を用いたフローリングにあっては、張り込まれた床板が乾湿の影響を受けやすく、多湿状態におかれる床面にあっては当該張り込み床面に反り出しなどの不具合を生ずることがあり、また、乾燥状態におかれる床面にあっては当該張り込み床板間に隙間を生ずるなどの不具合が懸念された。
【0005】
かかる点から、木質板の背面に復数本の溝を切欠形成し、この溝内に金属板を差し込んで接着固定した木質建材を形成することによって、木質板の水分の移動を溝と金属板とで低減して反りを抑制すると共に、木質板に反りが発生することを金属板の剛性で押さえ込むようにしたものがある。(特許文献1)
【0006】
また、床板部を無垢の木材を加工して形成すると共に、その外周に雌雄をなす嵌合部を設け、さらに、その裏面に幅方向に沿って複数の凹溝を設けると共に当該裏面にクッション材を設けたフローリング材とすることによって、フローリング施工後の湿度や温度の差等の環境の変化による反りの発生を防ぐようにしたものがある。(特許文献2)
【特許文献1】特開平6−134902号公報
【特許文献2】実用新案登録第3071836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、製材した板材を従来手法に基づいて乾燥し、この乾燥して得られた板材に実はぎ加工等を施して床板を得る方法にあっては、当該板材の乾燥に多くの期間を必要とし、また、当該板材の乾燥に際して反りだしや、割れだし等の不具合を生じ易く、このため、短期間で、しかも、効率良く床板を得ることができなかった。
【0008】
この発明は、かかる従来の床板における乾燥方法及び製造方法における不具合を解消し、製材によって得られた板材を反りや割れ等の少ない状態で比較的短期間で乾燥させると共に、所定寸法の床板を得るために必要とされる製材板材を必要最小限の大きさにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、第1の発明は、フローリングに用いられる板材を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材の一方の面に対して複数本の溝を当該面の長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝の設けられた板材を当該板材の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程とを備えていることを特徴とする床用板材の乾燥方法としてある。
【0010】
なお、本明細書において含水率とは、絶乾重量に対する含水量の百分率であって、含水木材の重量を測定後、この含水木材を乾燥によって完全に水分を除去して一定重量とした際の重量(絶乾重量)を測定して次の式によって算出される。
【0011】
【数1】

【0012】
このように構成される床用板材の乾燥方法は、フローリングに用いられる板材における長手方向にわたるように複数の溝を設けた後に、天然乾燥と除湿乾燥手段を用いた乾燥を施しており、この天然乾燥並びに除湿乾燥手段による乾燥処理に伴う反り、割れの比率が少なく、当該乾燥に伴う反りや、割れ等の少ない床用板材を短期間で効率良く得ることができる。
【0013】
また、前記課題を解決するために、第2の発明は、フローリングに用いられる板材を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材の一方の面に対して複数本の溝を当該面の長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝の設けられた板材を当該板材の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程と、
この除湿乾燥手段によって乾燥された床用板材を加工して床板を得る工程とを備えていることを特徴とする床板の製造方法としてある。
【0014】
このように構成される床板の製造方法は、フローリングに用いられる板材における長手方向にわたるように複数の溝を設けた後に、天然乾燥と除湿乾燥手段を用いた乾燥を施しており、この天然乾燥並びに除湿乾燥手段による乾燥処理に伴う反り、割れの比率が少なく、所定寸法の床板に仕上げるための製材板材の厚さ及び板幅を必要最小限にすることができる。
【0015】
また、このように構成される床板の製造方法にあっては、製材によって提供される板材における長手方向にわたるように溝が設けられた状態で天然乾燥と除湿乾燥手段による乾燥が施されていることから、仕上がった床板における曲げ強度に殆ど遜色が認められない。
【0016】
また、前記構成からなる床用板材の乾燥方法または前記構成からなる床板の製造方法にあって、前記板材が、直径30cm〜50cmの丸太から製材によって得られる針葉樹材であることを特徴とする床用板材の乾燥方法または床板の製造方法では、前記板材を得る丸太の調達が容易であり、しかも、当該丸太からの当該板材の木取りを効率良くなすことができる。
【0017】
また、前記構成に係る床板の製造方法において、前記床板が25mm〜35mmの厚さの針葉樹材であることを特徴とする床板の製造方法にあっては、歩行感の良好な厚手の床板を容易に提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る床用板材の乾燥方法及び床板の製造方法によれば、製材で得られた板材を、反り、割れ等の生ずる比率の少ない状態で短期間で乾燥させ、所定寸法の床板を得るために必要とされる製材板材の寸法を必要最小限にとどめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図7に基づいて、この発明を実施するための最良の一形態について説明する。 なお、ここで図1は、製材して得られた板材10を、図2は、この板材10に溝11を設けて乾燥処理をする前の板材10’をそれぞれその一方の木口側から見て示している。図3は、この図2で示された溝11つきの板材10’に天然乾燥と除湿乾燥手段による乾燥とを施して当該板材10’における含有水分を15%以下とした状態の床用板材20’を一方の木口側から見て示している。図4は、この図3に示される床用板材20’に実はぎ加工等の加工を施して床板20とした状態を一方の木口側から見て示している。
図5は、このようにして得られた各床板20を継ぎあわせた一例を、当該各床板20における一方の木口側から見て示している。
図6は、かかる床板20を斜め上方から見て示しており、図7は、床板20を斜め下方から見て示している。
【0020】
この第1の発明を実施するための最良の形態に係る典型的な床用板材の乾燥方法は、フローリングに用いられる板材10を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材10の一方の面10aに対して複数本の溝11を当該面10aの長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝11の設けられた板材10’を当該板材10’の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材10’を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程とを備えていることを特徴とする床用板材20’の乾燥方法としてある。
【0021】
このように構成される床用板材20’の乾燥方法は、フローリングに用いられる板材10における長手方向にわたるように複数の溝11を設けた後に、天然乾燥と除湿乾燥手段を用いた乾燥を施しており、この天然乾燥並びに除湿乾燥手段による乾燥処理に伴う反り、割れの比率が少なく、当該乾燥に伴う反りや、割れ等の少ない床用板材20’を短期間で効率良く得ることができる。
【0022】
ついで、この第2の発明を実施するための最良の形態に係る典型的な床板の製造方法は、フローリングに用いられる板材10を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材10の一方の面10aに対して複数本の溝11を当該面10aの長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝11の設けられた板材10’を当該板材10’の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材10’を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程と、
この除湿乾燥手段によって乾燥された床用板材20’を加工して床板20を得る工程とを備えている製造方法としてある。
【0023】
このように構成される床板20の製造方法は、フローリングに用いられる板材10における長手方向にわたるように複数の溝11を設けた後に、天然乾燥と除湿乾燥手段を用いた乾燥を施していることから、この天然乾燥並びに除湿乾燥手段による乾燥処理に伴う反り、割れの比率が少なく、所定寸法の床板20に仕上げるための製材板材10の厚さ及び板幅を必要最小限にできる特長を有している。
【0024】
また、このように構成される床板20の製造方法にあっては、製材によって提供される板材10における長手方向にわたるように溝11が設けられた状態で天然乾燥と除湿乾燥手段による乾燥が施されていることから、仕上がった床板20における曲げ強度に殆ど遜色が認められない特長を有している。
【0025】
また、前記構成からなる床用板材の乾燥方法または前記構成からなる床板の製造方法にあって、前記板材10が、直径30cm〜50cmの丸太から製材によって得られる針葉樹材とした当該乾燥方法または製造方法にあっては、前記板材10を得る丸太の調達が容易であり、しかも、当該丸太からの当該板材10の木取りを効率良くなすことができる。
【0026】
また、前記構成に係る床板の製造方法において、前記床板20が25mm〜35mmの厚さの針葉樹材とした製造方法にあっては、歩行感の良好な厚手の床板20を容易に提供することができる。
【0027】
かかる典型的な床用板材の乾燥方法及び床板の製造方法を、さらに具体的に説明する。
【0028】
乾燥処理対象とされる板材10は、製材によって、所定寸法のものとして用意される。
かかる板材10は、いかなる種類の原木から得られたものであっても良い。
また、かかる板材10は、いかなる木取りによって得られたものであっても良い。
また、かかる板材10は、フローリング材として用いうる各種形態の床板20を、以下の条件で乾燥処理した後の加工処理によって得ることのできる寸法を備えたものとして用意される。
【0029】
かかる板材10は、典型的には、直径が30cm以上、より典型的には、直径が30cm〜50cmの杉や檜などの針葉樹の丸太を製材することによって提供される。
【0030】
このような直径が30cm〜50cmの杉や檜などの針葉樹の丸太は板厚の厚い床板20の効率的な提供に適しており、針葉樹特有の快適な歩行感を備えた無垢材からなる板厚の厚い床板20を提供することができる。
【0031】
また、かかる床板20の製造に用いられる直径が30cm〜50cmの杉や檜の丸太は国内において比較的容易に入手することができ、当該床板20の製造方法は、かかる国産林の有効活用の一手段として位置づけられる。
【0032】
まず、かかる原料となる丸太を、乾燥に伴う縮み量や、反りだし量などを予測して、目的とするフローリングに用いられる床板20を加工成形して得るのに適した寸法の板材10に製材する。
【0033】
ついで、この製材によって得られた板材10に対して溝11を施し、溝11つきの板材10’とする。
この板材10に対する溝つけ加工は、例えば、円盤状鋸を所定間隔を離して配置した溝つけ機を用いてなすことができる。
【0034】
この板材10に設けられる溝11は、当該溝11つき板材10’を乾燥して床板20に加工した際に、この床板20に要求される曲げ強度等を損なうことが無く、しかも、当該乾燥処理に際して生ずる当該板材10’における縮み量、反り出し量、割れだし量などを極力抑え得る構成を備えたものとして用意される。
【0035】
すなわち、前記効果を引き出し得る溝幅、溝深さ、溝間隔を備えたものとして当該板材10に切削加工等によって施される溝11は、その後の乾燥処理に際して、当該溝つき板材10’を確実に、しかも、短期間に乾燥させると共に、当該乾燥処理に際して板材10’にもたらされる反り出し、割れ出しを少なくする機能を備えている。
【0036】
かかる板材10’に備えられる溝11は、板材10’における一方の面10aに、その長手方向にわたるように、すなわち、木目方向にわたって設けられている。なお、この溝11の備えられる板材10’の面10aは、典型的には、木裏側の面である。また、本柾目の場合にあっては、任意のいずれか一方側の面に当該溝11が設けられる。
【0037】
このように溝11の施された板材10’は、天然乾燥によって2〜3ヶ月の期間乾燥し、当該板材10’における含水率が15%〜20%となるようにする。
【0038】
ついで、この天然乾燥によって、その含水率が15%〜20%とされた板材10’を除湿乾燥手段、例えば、乾燥機内温度を50℃以下に設定した除湿乾燥機に2〜3日間入れることによって含水率が15%以下になるように乾燥させる。
【0039】
このように天然乾燥と除湿乾燥手段とによる乾燥によって、前記製材によって得られた板材10は、効率よく乾燥され、その含水率が15%以下の床用板材20’とされる。
【0040】
また、前記条件を備えた溝11を設けると共に、この溝11つきの板材10’を前記条件によって乾燥することで、反り出し量や、割れだし量の少ない床用板材20’を比較的短期間で得ることができる。
【0041】
また、前記板材10における溝11により構成される溝21を備えている床用板材20’は、その含水率が15%以下とされていることから、概ね、平衡含水率の状態で、当該床用板材20’に実はぎ加工等を施すことによって好適に用い得る床板20とすることができる。
【0042】
このように乾燥して得られた床用板材20’を適宜の木材加工機を用いて、床板20の下面側に溝21を備えるように目的とする寸法、形状の床板20に加工してフローリングに用いる。
【0043】
得られた床板20は、ほぼ平衡含水率の状態とされていると共に下面側に溝21が備えられていることから、フローリング施工後における浮きだしや接合縁の離れだしを生ずることがない。また、溝21を備えた床板20における曲げ強度に問題を生ずることもなかった。
【0044】
なお、この床用板材20’に対する加工は、各種フローリングの目的に対応するように、例えば、突付け、実はぎ、やとい実、合じゃくり、合じゃくり実はぎなど各種の継ぎあわせの態様に適合するように加工される。
【0045】
また、このように板材10’に溝11を施した後に乾燥して床用板材20’を得ると共に、この床用板材20’を床板20に加工する床板の製造方法にあっては、溝11を設けずに板材10を乾燥した後に床板20に加工する床板の製造方法に比較して、製材によって用意される板材10が小さな寸法のものでよく、また、乾燥に要する期間も短縮される特長を有している。
【0046】
前記製造方法によって、下面側に溝21を備えると共に小端面20bに実はぎ22を備えた床板20を効率よく得ることができた。
ここで得られた床板20は、
(1)板厚Aが25mm〜35mm、
(2)実はぎを含む板幅Bが188mm〜198mm、
(3)その踏面20aにおける板幅Baが184mm〜186mm、
(4)実はぎ22の雄実をなす実22aの突き出し寸法Cが7.5mm〜8.5mm、
(5)当該実はぎ22の実22aの密に嵌り合う雌実をなす実溝22bの溝 幅Eが9.5〜10.5mm、その深さDが8.5〜9.5mm、
(6)当該床板20の下面をなす面10aに備えられる溝21の溝幅Fが3mm〜4mm、その深さGが10mm〜20mm、各溝21、21間の間隔Hが19mm〜21mmで、実溝22b側の小端面20bから最初の溝21までの間隔Iが24mm〜26mm、実22aの突き出し基部側の小端面20bから当該側にある最初の溝21までの間隔Jが18mm〜20mmであって、
(7)長さKが200cm、300cm、400cmの各床板20であった。
【0047】
このようにして得られた7本の溝21を備えて構成される床板20を用いて、この7本の溝21を残すように各実はぎ22部分を含む両側をカットして下記寸法の各試験体を構成し、その各試験体における含水率と曲げ破壊荷重とを測定した。
(1)板厚:30mm
(2)板幅:160mm
(3)板の長さ:990mm
(4)溝数:7本
(5)溝幅:3mm
の試験体であって、
溝の深さを10mmとした試験体A01、溝の深さを15mmとした試験体A02、溝の深さを20mmとした試験体A03とを用意した。
【0048】
各試験体A01〜A03を用いて図9に示す方法によって、溝の無い側を上面にして3点曲げ試験を各4回行った。試験速度は10mm/minとした。
【0049】
ついで、前記曲げ試験終了後、長さ方向の両端から約200mmの内側から長さ50mmの含水率試験体を切り出して、全乾法によって測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
上記の曲げ破壊荷重測定及び含水率測定において、試験体A01〜A03はいずれも、これを床板20として用いるのに十分な曲げ破壊荷重値を示しており、いずれも床板20を構成するのに十分な強度を備え、しかも、含水率においても問題が無く、いずれも床板として効果的に用い得るものであることが確認された。
【0052】
また前記床板20の製造方法において前記寸法を備えた板厚の厚い床板20を、杉材、檜材などの針葉樹材を用いることによって効率よく製造することができた。
【0053】
このようにして得られた床板20は、溝21の備えられている面10aを下面とするように定法に基づいて根太上に張り込むことによって目的とするフローリング処理をなすことができる。
また、このようにして得られた床板20は、同様にこれをコンクリート造の建築物における床スラブに直接張り込むようにして用いることができる。
また、このようにして得られた床板20は、同様にこれを2枚重ねの状態にして、床梁上に直接張り込むようにして用いることができる。
かかる無垢の床板20を2枚重ねの状態にして床を構成する場合にあっては、床面における断熱効果が特に良好とされる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
図4〜図7に示される床板20Aを、製材によって得られる板材10Aを乾燥して床用板材20’とし、この床用板材20’を加工することによって得ようとした。
ここで得ようとする床板20Aは、小端面20bに各床板20A相互の継ぎあわせのための雄実をなす実22aと雌実をなす実溝22bとを有する実はぎ22を備えており、
1−1、板厚寸法A’を30mm、
1−2、 実はぎ22を含む板幅B’を193mm、
1−3、その踏面20aにおける板幅Ba’を185mm、
1−4、一方の小端面20bの中央部に長手方向にわたって備えられる実22aの突き出し寸法C’を8mm、
1−5、他方の小端面20bの中央部に長手方向にわたって備えられる実22bの溝幅E’を10mm、その深さD’を9mm、
1−6、当該床板20Aの下面10aに備えられる溝21の溝幅F’を3mm、その深さG’を15mm、各溝21間の間隔H’を20mm、実溝22b側の小端面20bから最初の溝21までの間隔I’を25mm、実22aの突き出し基部側にある小端面20bから最初の溝21までの間隔J’を19mm、
としている。
【0055】
まず、直径が40cmの杉の丸太から、板厚寸法A”を35mm、板幅寸法B”を205mmとする板材10Aを製材によって得た。(図1参照)
【0056】
このようにして用意された図1に示される板材10Aにおける木裏をなす面10aに、その長手方向にわたるように、すなわち、木目方向にわたるように7本の溝11を丸鋸を用いて設けた。
【0057】
このようにして溝11を設けられた板材10’A(図2参照)を、その含水率が15%〜20%になるまで天然乾燥した。
この天然乾燥は、前記板材10’Aを、この板材10’Aにおける木裏が上になるように、この図示例にあっては、溝11を備えている木裏側を上にした状態で桟積み等の方法で積み上げ、この積み上げた板材10’Aの上面に覆いをかけて概ね2〜3ヶ月の間放置することによってなした。
【0058】
このように板材10’Aの積み上げにおいて、木裏側、すなわち、溝11の備えられている側を上にして当該板材10’Aを積み重ねるようにして、木表側に生じ易いひび割れ等の発生を極力抑制する。
【0059】
ついで、この天然乾燥した板材10’Aを除湿乾燥手段としての除湿乾燥機内において、その含水率が15%以下になるように2〜3日間放置した。
この除湿乾燥機による乾燥は、その乾燥機内温度をほぼ40℃にしてなされた。
前記工程によって溝11からなる溝21を備えた床用板材20’Aが得られた。
【0060】
この含水率を15%以下に乾燥して得られた床用板材20’Aに対して実はぎ加工等の加工を施して、板厚寸法A’が30mm、実はぎ22を含む板幅B’が193mmで、各小端面20bに実はぎ22を備えた床板20Aを得た。(図4参照)
【0061】
前記床用板材20’の乾燥方法と前記床板20Aの製造方法によって、常に都合よく前記板材10から前記1−1〜1−6の条件を満足する床板20Aを得ることができた。
【0062】
(比較例1)
なお、前記の除湿乾燥機による乾燥をせずに当該板材10’Aを、80℃の雰囲気内において加熱乾燥したところ、板面に杉材特有の色合いをもたらすことができず、杉材特有の風合いが損ねられた。特に、杉材における白色風の風合い部分が褐色化する傾向が顕著に認められた。
【0063】
(比較例2)
ついで、直径が40cmの杉材から、板厚寸法A”を35mm、板幅寸法B”を205mmとする板材10Aを製材によって得た後、これに前記溝11を設けることなく乾燥し、当該乾燥された板材Aに溝11及び実はぎ22を加工して床板を得ようとしたところ、殆どが前記1−1乃至1−6の条件を満たす床板にできなかった。
かかる方法で前記1−1乃至1−6の条件を満たす床板20Aを得ようとしたところ、図8に示されるように製材によって得られる板材10Bを、少なくとも、その板厚寸法Nを38mm、板幅寸法Pを210mmとする必要があった。
【0064】
このように前記実施例1における溝11を設けず、しかも、当該板材10Bに対して当該実施例1における乾燥処理を施さないで床板を作成する場合、当該実施例1において用いられる板材10Aよりも大きい寸法の板材10B(図8参照)を用いる必要が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】典型的な床板20を得るために製材して用意された板材10の側面図
【図2】同板材10に溝11を設けた板材10’の側面図
【図3】板材10’を乾燥して得られた床用板材20’の側面図
【図4】典型的な床板20の側面図
【図5】典型的な床板20を敷き並べた状態の側面図
【図6】典型的な床板20の斜視図
【図7】典型的な床板20の下面側を示す斜視図
【図8】比較例の床板の製作に用いられる板材10Bを示す側面図
【図9】曲げ破壊荷重試験の方法を示す模式図
【符号の説明】
【0066】
10 板材
11 溝
20 床板
20’床用板材
21 溝
22 実はぎ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローリングに用いられる板材を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材の一方の面に対して複数本の溝を当該面の長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝の設けられた板材を当該板材の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程とを備えていることを特徴とする床用板材の乾燥方法。
【請求項2】
フローリングに用いられる板材を製材によって得る工程と、
この製材によって得られた板材の一方の面に対して複数本の溝を当該面の長手方向にわたるように設ける工程と、
この溝の設けられた板材を当該板材の含水率が15%〜20%となるまで天然乾燥する工程と、
この天然乾燥された板材を含水率が15%以下となるように除湿乾燥手段を用いて乾燥する工程と、
この除湿乾燥手段によって乾燥された床用板材を加工して床板を得る工程とを備えていることを特徴とする床板の製造方法。
【請求項3】
前記板材が、直径30cm〜50cmの丸太から製材によって得られる針葉樹材であることを特徴とする請求項1に記載の床用板材の乾燥方法または請求項2に記載の床板の製造方法。
【請求項4】
前記床板が25mm〜35mmの厚さの針葉樹材であることを特徴とする請求項2に記載の床板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−110781(P2006−110781A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298506(P2004−298506)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(500438312)住友林業フォレストサービス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】