説明

床荷重支持具

【課題】ロックを確実に行い長期間使用しても異音の発生が少ない床荷重支持具を提供する。
【解決手段】ベース部材10と、床荷重を支受する支受部材11とを備え、上記ベース部材10と支受部材11との間において支受部材11の高さ調節を可能となるように構成された床荷重支持具1であって、上記ベース部材10には上端部にナット受部12が一体的に設けられたポスト部材13が立設されるとともに、上記支受部材11には支受部材11の高さ調節を可能とするボルト14が垂設され、上記ポスト部材13のナット受部12には、上記ボルト14にら着してそれ自体が回転されることにより支受部材11の高さ変化を可能とする調節ナット15が回転可能に取り付けられ、上記ボルト14の調節ナット15よりも上側には、ナット受部12の外周面に形成された雄ねじ部16にら合することにより、上記調節ナット15をロックするロックナット17がら着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅や集合住宅等の建物の床下において床荷重を支持する床荷重支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、戸建住宅等の建物の床下で大引を支受する束としては、木製のものが用いられてきた。このような木製束は、基礎から大引までの高さを計測し、木材を切断場所に運んで上記計測寸法に合わせて切断し、この所定寸法の木材を基礎上に設置して大引を支受することが行われる。上記一連の作業が複数の作業員によって行われる場合も多く、高さの計測と木材の切断・取付が違う作業員によって行われ、取付場所が間違えられることもしばしばある。このような場合には、束の高さを大引の高さに調節するため、楔型に切断した木材を隙間に打ち込むことが行われている。
【0003】
上記のような木製束では、木材を所定寸法に切断する作業や、楔による高さ調節作業が極めて煩雑である。しかも、木材の吸水や乾燥等によってソリが生じ易く、荷重による変形も生じやすい。また、束材には主として端材が用いられるため材質もバラバラで、変形や狂いも材質によって差があるため、精度面に問題がある。
【0004】
そこで、最近では、木製束に代わって、下記の特許文献1に示すような鋼製の床荷重支持具が利用されるようになってきている。この床荷重支持具101は、パイプ胴110と、このパイプ胴110の一端に装着される床受け部材120と、パイプ胴110の他端に装着されたベースプレート130と、ロック袋ナット140とを備えている。
【0005】
上記パイプ胴110は、床受け部材120が接合される上部接合部112と、ベースプレート130が接合される下部接合部113とを有している。上記上部接合部112は、上部接合部材114をパイプ胴本体111上端に回転不能かつ離脱不自在に装着することにより形成されている。上記上部接合部材114は、上端部に鍔115aを有しかつ外周に所要数の環状溝112aを有してなる所定形状の筒状の外側部材115と、ナット116aと該ナット116a下面に一体的に形成された円筒体116cとを有する内側部材116とを備えている。
【0006】
上記円筒体116cは、外径が前記外側部材115に回転可能に嵌入される寸法に設定され、内径が前記ナット116aにら合されるボルト126の進退に支障のない寸法に設定され、長さが円筒体116cが外側部材115に嵌入された際に外側部材115の下面から所定量突出する寸法に設定されている。そして、上記円筒体116cの外側部材115の下面から突出している部分を外方に折り曲げて外側部材115の下面に当接させることにより、内側部材116が外側部材115に回転可能かつ離脱不能に装着されている。
【0007】
さらに、上記上部接合部材114の回転不能かつ離脱不自在の装着は、上部接合部材114をパイプ胴本体111上端部に嵌入させた状態で、前記環状溝112aにパイプ胴本体111が圧入されることによりなされている。
【0008】
上記ロック袋ナット140は、下部に収納空間141を有し、かつ上部にナット142が形成されている。上記収納空間141は、前記内側部材116のナット116aを若干の余裕をもって収納できる大きさに設定されることにより、上部接合部材114の内側部材116のナット116aの遊びが吸収される。このロック袋ナット140は、床受け部材120のボルト126にら着される。この状態で、ロック袋ナット140の下端面が外側部材115の上面115cを押圧して内側部材116のナット116aをロックするようになっている。
【特許文献1】特許第2977812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記床荷重支持具101では、外側部材115の外周部に環状溝112aを形成し、環状溝112aにパイプ胴本体111を圧入していることから、部品形状の複雑化を招いている。また、パイプ胴本体111と外側部材115の回転不能かつ離脱不自在の装着状態に緩みが生じやすいという問題がある。特に、施工後の住宅で生活を初めて床荷重が繰り返しかかったときに緩みが生じやすい。この接合部に緩みが生じると、床荷重がかかるたびに金属部品同士が擦れ合う時に生じる異音が発生し、床鳴りとなる不都合が生じる。
【0010】
また、上記床荷重支持具101では、ロック袋ナット140の下端面が外側部材115の上面115cを押圧して内側部材116のナット116aをロックしている。このため、外側部材115の上端外周に鍔115aを設けることを行なわねばならず、部品形状の複雑化を招いている。そして、ロック袋ナット140の下端面と外側部材115の上面115cとの摩擦だけでロックを行なっていることから、床荷重が繰り返しかかったときに、この部分に緩みが生じやすい。この接合部に緩みが生じると、床荷重がかかるたびに金属部品同士が擦れ合う時に生じる異音が発生し、床鳴りとなる不都合が生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ロックを確実に行い長期間使用しても異音の発生が少ない床荷重支持具の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の床荷重支持具は、ベース部材と、床荷重を支受する支受部材とを備え、上記ベース部材と支受部材との間において支受部材の高さ調節を可能となるように構成された床荷重支持具であって、上記ベース部材には上端部にナット受部が一体的に設けられた筒状のポスト部材が立設されるとともに、上記支受部材には支受部材の高さ調節を可能とするボルトが垂設され、上記ポスト部材のナット受部には、上記ボルトにら着してそれ自体が回転されることにより支受部材の高さ変化を可能とする調節ナットが回転可能に取り付けられ、上記ボルトの調節ナットよりも上側には、ナット受部および/またはポスト部材の外周面に形成された雄ねじ部にら合することにより、上記調節ナットをロックするロックナットがら着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明の床荷重支持具は、ベース部材に立設されたポスト部材にはナット受部が一体的に設けられている。このため、従来の床荷重支持具のように部品形状が複雑化しないうえ、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにもこの部分には緩みが一切生じない。したがって、長期間使用してもこの部分からの異音の発生は皆無である。また、本発明の床荷重支持具は、ロックナットは、ボルトの調節ナットよりも上側においてボルトにら着するとともに、ナット受部および/またはポスト部材の外周面に形成された雄ねじ部にら合することにより上記調節ナットをロックする。このため、従来の床荷重支持具のように部品形状が複雑化しない。そのうえ、従来品のように単純な面同士の摩擦だけでロックするのではなく、ナット受部および/またはポスト部材の外周面に形成された雄ねじ部とのら合によるら進を伴いながら調節ナットをロックし、ロックが飛躍的に確実に行なわれるようになる。したがって、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにも、緩みがほとんど生じることがなくなり、異音や床鳴りを大幅に低減することができる。
【0014】
本発明において、上記調節ナットは、工具が嵌着される工具嵌着部と、上記工具嵌着部に垂設された円筒部とを備えて構成され、上記円筒部がナット受部に形成された摺動穴に摺動回転可能に挿入され、工具嵌着部から円筒部までの全長に渡ってボルトにら着するための雌ねじ部が形成されている場合には、調節ナットがボルトにら着している接合長さが長くなり、ロックナットによるロックがかかったときに、ロックが一層確実に行なわれるようになる。したがって、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにも、緩みがほとんど生じることがなくなり、異音や床鳴りを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の床荷重支持具を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の床荷重支持具1の一実施形態を示す。この床荷重支持具1は、主要部材が鋼から形成され、ベース部材10と、床荷重を支受する支受部材11とを備え、上記ベース部材10と支受部材11との間において支受部材11の高さ調節を可能となるように構成されている。
【0017】
上記ベース部材10には、上端部にナット受部12が一体的に設けられた円筒状のポスト部材13が立設されている。
【0018】
上記ベース部材10は、中央部に上向きの膨らみ部22が形成されたプレート状であり、上記ポスト部材13は、ベース部材10の膨らみ部22に対して溶接等により回転および取り外し不可能に固定されている。
【0019】
上記ナット受部12は、ポスト部材13の上端部に溶接により回転および取り外し不可能に取り付けられている。上記ナット受部12は、やや厚みのあるリング状を呈しており、中央部に上下に貫通する摺動穴20が穿設されている。また、上記ナット受部12はポスト部材13の外形よりも少し大きな外形寸法に設定され、その外径部に雄ねじ部16が形成されている。
【0020】
一方、上記支受部材11には、支受部材11の高さ調節を可能とするボルト14が垂設されている。上記支受部材11は、中央部に下向きの膨らみ部23が形成されたプレート状であり、上記ボルト14は、支受部材11の膨らみ部23に対して溶接等により回転および取り外し不可能に固定されている。また、上記支受部材11の上面には、床材や大引け等を支受する際に、クッションとして機能するポリエチレン樹脂製の弾性板24が取り付けられている。
【0021】
上記ポスト部材13のナット受部12には、上記ボルト14にら着してそれ自体が回転されることにより支受部材11の高さ変化を可能とする調節ナット15が回転可能に取り付けられている。上記調節ナット15は、外周が六角形に形成されてスパナ等の工具が嵌着される工具嵌着部18と、上記工具嵌着部18に垂設された円筒部19とを備えて構成されている。
【0022】
上記円筒部19は、ナット受部12に形成された上記摺動穴20に摺動回転可能に挿入され、下端部に外側に張り出すフランジ部25が形成されている。これにより、上記調節ナット15は、ナット受部12に対して回転可能かつ取り外し不可能に取り付けられている。そして、上記調節ナット15には、工具嵌着部18から円筒部19まで縦方向に貫通するねじ穴26が形成され、工具嵌着部18から円筒部19までの全長に渡ってボルト14にら着するための雌ねじ部21が形成されている。
【0023】
これにより、上記ねじ穴26にボルト14がねじ込まれた状態で、スパナ等の工具を調節ナット15の工具嵌着部18に嵌着させて調節ナット15を回転させることにより、ボルト14を上下させて支受部材11の高さ調整を行ない得るようになっている。
【0024】
上記ボルト14の調節ナット15よりも上側には、ナット受部12の外周面に形成された雄ねじ部16にら合することにより、上記調節ナット15をロックするロックナット17がら着している。
【0025】
上記ロックナット17は、外周が六角形に形成されてスパナ等の工具が嵌着される工具嵌着部27が形成された上側ナット部29と、上記上側ナット部29の下端外周部から少し外側に拡がるように設けられた袋ナット部28とから構成されている。上記上側ナット部29は支受部材11に垂設されたボルト14にら着し、上記袋ナット部28はナット受部12の外周面に形成された雄ねじ部16にら合している。
【0026】
上記床荷重支持具1は、例えば、つぎのようにして用いることができる。
【0027】
まず、ロックナット17の上側ナット部29を支受部材11に取り付けられたボルト14にねじ込んでら着させる。このとき、袋ナット部28がボルト14の先端側に位置するようにねじ込むことが行われる。ロックナット17を支受部材11近傍までねじ込んでボルト14の先端側を大きく露出させる。
【0028】
ついで、ロックナット17がねじ込まれたボルト14の先端を調節ナット15のねじ穴26にねじ込んでら着させ、ベース部材10から支受部材11上面までの高さが所望の寸法近くなるまでねじ込む。このとき、支受部材11側を回転させてもよいし、調節ナット15を回転させてもよい。
【0029】
そして、支受部材11の上面に大引け等の床構成部材を固定し、その状態でベース部材10を基礎等の上に載置して固定する。支受部材11への床構成部材の固定は、釘、ねじ、接着剤等を用いて行なうことができる。また、基礎等へのベース部材10の固定は、釘、ねじ、接着剤、アンカーボルト等を用いて行なうことができる。
【0030】
そして、この状態で、スパナ等の工具を調節ナット15の工具嵌着部18に嵌合させて回転させ、支受部材11上面の高さ調節を行なう。所定の高さに調節できたところで、ロックナット17を回転させて下向きにら進させ、ナット受部12外周の雄ねじ部16に袋ナット部28をら合させ、スパナ等の工具を工具嵌着部27に嵌合させてしっかりとねじ込む。このねじ込みにより、ボルト14が上向きに引っ張られて調節ナット15がロックされる。
【0031】
以上のように、上記床荷重支持具1によれば、ベース部材10に立設されたポスト部材13にはナット受部12が一体的に設けられている。このため、従来の床荷重支持具のように部品形状が複雑化しないうえ、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにもこの部分には緩みが一切生じない。したがって、長期間使用してもこの部分からの異音の発生は皆無である。また、上記床荷重支持具1は、ロックナット17は、ボルト14の調節ナット15よりも上側においてボルト14にら着するとともに、ナット受部12の外周面に形成された雄ねじ部16にら合することにより上記調節ナット15をロックする。このため、従来の床荷重支持具のように部品形状が複雑化しない。そのうえ、従来品のように単純な面同士の摩擦だけでロックするのではなく、ナット受部12の外周面に形成された雄ねじ部16とのら合によるら進を伴いながら調節ナット15をロックし、ロックが飛躍的に確実に行なわれるようになる。したがって、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにも、緩みがほとんど生じることがなくなり、異音や床鳴りを大幅に低減することができる。
【0032】
また、上記調節ナット15は、工具が嵌着される工具嵌着部18と、上記工具嵌着部18に垂設された円筒部19とを備えて構成され、上記円筒部19がナット受部12に形成された摺動穴20に摺動回転可能に挿入され、工具嵌着部18から円筒部19までの全長に渡ってボルト14にら着するための雌ねじ部21が形成されているため、調節ナット15がボルト14にら着している接合長さが長くなり、ロックナット17によるロックがかかったときに、ロックが一層確実に行なわれるようになる。したがって、施工後の住宅で生活を始めて床荷重が繰り返しかかったときにも、緩みがほとんど生じることがなくなり、異音や床鳴りを大幅に低減することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、ナット受部12の外周部に形成した雄ねじ部16にロックナット17をら合させて調節ナット15のロックを行なうようにしたが、上記雄ねじ部16はポスト部材13の外周部に形成することもできるし、ナット受部12とポスト部材13双方の外周部に渡って設けるようにすることもできる。
【0034】
また、上記実施の形態では、弾性板24をポリエチレン樹脂で形成したが、これに限定されるものではなく、天然ゴム,合成ゴム等の各種ゴム材料や、ウレタン系樹脂,シリコーン系樹脂等の各種樹脂材料等各種の材料を用いることができる。
【0035】
また、上記実施の形態では、支受部材11としてプレート状のものを用いた例を示したが、これに限定するものではなく、L型やコ字状に形成することもできる。さらに、本実施形態の床荷重支持具1は、戸建て住宅やマンションや集合住宅等において使用することができるが、これらに限定するものではなく、ベランダや庭,公園等屋外で床材等を張る場合にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の1実施形態床荷重支持具を示す側面図である。
【図2】上記床荷重支持具の断面図である。
【図3】従来品の床荷重支持具の断面図である。
【図4】上記従来品の要部断面図である。
【図5】上記従来品のロック袋ナットを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 床荷重支持具
10 ベース部材
11 支受部材
12 ナット受部
13 ポスト部材
14 ボルト
15 調節ナット
16 雄ねじ部
17 ロックナット
18 工具嵌着部
19 円筒部
20 摺動穴
21 雌ねじ部
22 膨らみ部
23 膨らみ部
24 弾性板
25 フランジ部
26 ねじ穴
27 工具嵌着部
28 袋ナット部
29 上側ナット部
101 床荷重支持具
110 パイプ胴
111 パイプ胴本体
112 上部接合部
112a 環状溝
113 下部接合部
114 上部接合部材
115 外側部材
115a 鍔
115c 上面
116 内側部材
116a ナット
116c 円筒体
120 床受け部材
126 ボルト
130 ベースプレート
140 ロック袋ナット
141 収納空間
142 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、床荷重を支受する支受部材とを備え、上記ベース部材と支受部材との間において支受部材の高さ調節を可能となるように構成された床荷重支持具であって、
上記ベース部材には上端部にナット受部が一体的に設けられた筒状のポスト部材が立設されるとともに、上記支受部材には支受部材の高さ調節を可能とするボルトが垂設され、
上記ポスト部材のナット受部には、上記ボルトにら着してそれ自体が回転されることにより支受部材の高さ変化を可能とする調節ナットが回転可能に取り付けられ、
上記ボルトの調節ナットよりも上側には、ナット受部および/またはポスト部材の外周面に形成された雄ねじ部にら合することにより、上記調節ナットをロックするロックナットがら着していることを特徴とする床荷重支持具。
【請求項2】
上記調節ナットは、工具が嵌着される工具嵌着部と、上記工具嵌着部に垂設された円筒部とを備えて構成され、上記円筒部がナット受部に形成された摺動穴に摺動回転可能に挿入され、工具嵌着部から円筒部までの全長に渡ってボルトにら着するための雌ねじ部が形成されている請求項1記載の床荷重支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−35969(P2009−35969A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202651(P2007−202651)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(594102452)株式会社マイヅル (5)
【Fターム(参考)】