説明

廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法及び処理設備

【課題】pHが低くなった封水へアルカリの中和剤を添加して中和処理することにより、封水タンクの封水の入れ替えを不要とし、廃水量を低減させることができる水封式真空ポンプ封水処理方法及び処理設備を提供する。
【解決手段】廃プラスチックの減容成形機1から加熱により排出される気体を、トラップ5を介して水封式真空ポンプ6にて抜き取り、抜き取られた気体を封水タンク7から排出し、水封式真空ポンプ6の封水は水封式真空ポンプ6と封水タンク7との間で循環させる廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法において、封水タンク7中の封水のpHが低下すると、封水タンク7中へ封水を中和するのに必要な量の中和剤を供給し、封水タンク7内の封水の一部をブロー弁12より排水して封水タンク内の水質を一定に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック減容成形機で発生する排ガスを抜き取るのに使用する真空ポンプの封水処理方法及び処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装リサイクル法によって自治体より排出される廃プラスチックをコークス原料としてリサイクルする設備において、廃プラスチックは粗破砕・選別・二次破砕によりペレット化に適した成分および形状のフラフとなり、減容成形機により減容されペレットとなる。減容成形機で発生する排ガスは水封式真空ポンプを使用して抜き取られて集じん機へ送られる。
【0003】
図2は従来の封水処理設備の概略を示す概略図である。
【0004】
シリンダー1a内に回転するスクリュー1bが配置された減容成形機1はフラフが供給される。フラフは、スクリュー1bの回転により移動しながらヒータによる加熱とフラフの自己の摩擦熱により溶融、混練されてダイス1cから押し出される。押し出された混練物は回転刃2により切断されてペレットとなる。減容成形機1ではヒータによる加熱とフラフの自己の摩擦熱により180〜220℃に昇温し、水分を脱揮することにより、ペレット単体比重を0.8以上に向上する。
【0005】
減容成形機1には発生した気体を排出するベント3,4が設けられ、フラフに同伴される空気、付着した水分の蒸発による水蒸気、フラフから揮発する塩化水素などの気体が排出される。ベント4から排出された気体は、トラップ5を介して水封式真空ポンプ6を使用して抜き取る。抜き取られた気体は封水タンク7を経て後流のガス処理ラインの集じん機へ送られる。水封式真空ポンプ6の封水は循環ポンプ8により封水タンク7から供給される。
【0006】
水封式真空ポンプ6では、封水中に気体中の塩化水素分が溶出することがあり、pH計9で封水のpHを計測し、pHが低下すると、封水タンク7から封水を抜いて新たに補給水と入れ替える。抜かれた封水は廃水処理される。
【0007】
なお、pH中和剤を添加して中和処理を行うこと自体は知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−136186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のpHが低下すると封水タンクから封水を抜いて補給水と入れ替えで対応する場合、短時間(3時間程度)毎に水の入れ替えが必要になり、1回あたり多量の水の補給を必要し、同時に廃水も多量に発生するために多量の廃水が発生し、廃水の処理に多額の費用を必要としていた。
【0009】
そこで、本発明は、廃プラスチック減容成形機の水封式真空ポンプの、pHが低くなった封水へアルカリの中和剤を添加して中和処理する際に、封水タンクの封水の入れ替えを不要とし、廃水量を低減させることができる水封式真空ポンプ封水処理方法及び処理設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、廃プラスチックの減容成形機で発生する気体を、トラップを介して水封式真空ポンプにて抜き取り、抜き取られた気体を封水タンクから排出し、水封式真空ポンプの封水は水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法において、封水タンク中の封水のpHが低下すると、封水タンク中へ封水を中和するのに必要な量の中和剤を供給し、封水タンク内の封水量が増加すると、封水を真空ポンプへ送りながら増加した量の封水をブロー弁より排水して封水タンク内のレベルを一定に維持することをことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、廃プラスチックの減容成形機で発生し、水封式真空ポンプにて抜き取られた気体を、封水タンクを経て排出し、水封式真空ポンプの封水を水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水の処理設備において、廃プラスチックの減容成形機から排出される気体を、トラップを介して抜き取る水封式真空ポンプと、水封式真空ポンプで抜き取られた気体が導入される、水封式真空ポンプの封水を収容する封水タンクと、水封式真空ポンプの封水を水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる循環ポンプと、封水タンク中の封水のpHを計測するpH計と、pH計で計測されたpHが低下すると、封水タンク中へ封水を中和するのに必要な量の中和剤を供給する中和剤タンクと、循環ポンプと真空ポンプとの間の循環配管に、封水タンク内の封水量が増加すると増加した封水を排水して封水タンク内のレベルを一定に維持するブロー弁を設けたことことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明はブロー弁により、中和処理により封水中の塩素イオン濃度が増加しても増加分を排水するので、封水の入れ替えが不要となって、廃水は塩素イオン濃度を維持するためのブロー水のみとなり、従来の封水入れ替えに比べて大幅に廃水量を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の封水処理設備の概略を示す図で、図2に示す従来の封水処理設備と同一の構成については同一符号を付してその説明は省略する。
【0014】
図2に示す従来例と同様に、減容成形機1で発生した、フラフに同伴される空気、フラフヘ付着した水分の蒸発による水蒸気は主としてベント3から排出され、フラフ中の塩化水素などの気体はベント4から排出される。ベント4から排出された気体は、トラップ5を介して水封式真空ポンプ6を使用して抜き取る。抜き取られた気体は封水タンク7を経て後流のガス処理ラインの集じん機へ送られる。封水は循環ポンプ8により封水タンク7から供給される。封水タンク7の封水は、pH計9でpHを計測する。
【0015】
本発明は、排出される気体に含まれる塩化水素により封水タンク7中の封水が酸性となって、pH計9で計測されたpHが規定値より低くなると、中和剤タンク10からポンプ11により封水タンク7中の封水を中和するのに必要な量の中和剤が供給される。中和剤にはアンモニア水を使用することにより、封水に微量混入している油分の影響を受けずに、中和剤投入によりpHが高くなることを防止できるとともに、安定的にpHを8〜9に回復させることができる。
【0016】
封水タンク7から封水を送る循環ポンプ8と真空ポンプ6との間の配管にはブロー弁12を備えた分岐管を設ける。分岐管のレベルは、封水タンク7内の封水の設定水位より高く位置させる。装置が稼働していないときは循環ポンプ8を停止させているので、ブロー弁12から排水されない。装置が稼働し循環ポンプ8を運転させると、ポンプの吐出圧により封水の一部がブロー弁12により排水される。これにより弁の開閉操作なしに封水タンク7内の塩素イオン濃度が基準値以下に維持される。ブロー弁12の排水は排水処理へ送られる。ブローにより封水タンク7内の封水量が減少すると、補給水弁13が開き、封水が補給される。これにより封水タンク7内のレベルが一定に維持される。ブロー弁12を配置することにより、廃水は塩素イオン濃度を維持するためのブロー水のみとなり、従来の封水入れ替えに比べて廃水量を1/10以下に低減できる。
【実施例1】
【0017】
フラフ投入量:4.2t/hで減容成形機で処理し、水封式真空ポンプへ封水を循環させた場合について、図2に示す従来技術と図1に示す本発明の実施例について排水発生量について比較した。
【0018】
〈従来技術〉
廃水発生量 頻度:約200L/回、3時間毎、1日あたり約1.5m
〈実施例〉
中和剤使用量:1L/回、3時間毎、1日あたり約8L(10%アンモニア水)
廃水発生量:1日あたり約0.1m(塩素イオン濃度維持のためのブロー水)
以上の結果を比較すると明らかなとおり、本発明の実施例の廃水発生量が従来技術のそれに比べて約1/15と大幅に低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の封水処理設備の概略を示す図である。
【図2】従来の封水処理設備の概略を示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1:減容成形機
1a:シリンダー
1b:スクリュー
1c:ダイス
2:回転刃
3,4:ベント
5:トラップ
6:水封式真空ポンプ
7:封水タンク
8:循環ポンプ
9:pH計
10:中和剤タンク
11:ポンプ
12:ブロー弁
13:補給水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックの減容成形機で発生する気体を、トラップを介して水封式真空ポンプにて抜き取り、抜き取られた気体を封水タンクから排出し、水封式真空ポンプの封水は水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法において、
封水タンク中の封水のpHが低下すると、封水タンク中へ封水を中和するのに必要な量の中和剤を供給し、封水タンク内の封水量が増加すると、封水を真空ポンプへ送りながら増加した量の封水をブロー弁より排水して封水タンク内のレベルを一定に維持することを特徴とする廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法。
【請求項2】
中和剤がアンモニア水であることを特徴とする廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水処理方法。
【請求項3】
廃プラスチックの減容成形機で発生し、水封式真空ポンプにて抜き取られた気体を、封水タンクを経て排出し、水封式真空ポンプの封水を水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水の処理設備において、
廃プラスチックの減容成形機から排出される気体を、トラップを介して抜き取る水封式真空ポンプと、
水封式真空ポンプで抜き取られた気体が導入される、水封式真空ポンプの封水を収容する封水タンクと、
水封式真空ポンプの封水を水封式真空ポンプと封水タンクとの間で循環させる循環ポンプと、
封水タンク中の封水のpHを計測するpH計と、
pH計で計測されたpHが低下すると、封水タンク中へ封水を中和するのに必要な量の中和剤を供給する中和剤タンクと、
循環ポンプと真空ポンプとの間の循環配管に、封水タンク内の封水の水質を一定に維持するブロー弁と、
封水タンク内の封水量が減少すると、減少した封水を補給して封水タンク内のレベルを一定に維持する補給水弁を設けたことを特徴とする廃プラスチック減容成形機の真空ポンプ封水の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−190706(P2007−190706A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8621(P2006−8621)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】