説明

廃ペットボトル分離回収システム及びその方法

【課題】システムのイニシャルコストやランニングコストを低減し、リサイクルの採算性を改善する。
【解決手段】本発明は、廃ペットボトル11を粉砕するための粉砕手段12と、粉砕した廃ペットボトル11を貯留した水との比重差によって浮遊材と沈降材とに分離する分離手段13と、浮遊材を分離手段13の水面浮上流れにより排出させる浮遊材排出手段17と、沈降材を水と共に分離手段13の上方に移送する沈降材移送手段14と、沈降材移送手段14から落下した沈降材及び水を受け止める受け止め手段15と、受け止め手段15内の沈降材及び水を攪拌してラベルを分離するラベル分離手段29と、受け止め手段15内のペット樹脂7を排出させるペット樹脂排出手段16と、受け止め手段15内で浮遊するラベル4を水面浮上流れにより分離手段13へ排出させるラベル排出手段22,23とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃ペットボトルからキャップ及びラベルを分離させ、ペット樹脂を回収するための廃ペットボトル分離回収システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ミネラルウォータやジュース等の清涼飲料水の容器として、合成樹脂の一種であるエチレンテレフタレート(PET)製の容器(以下、「ペットボトル」と言う。)が広く使用されている。これにより、使用済みペットボトル(以下、「廃ペットボトル」)が大量に廃棄されるようになり、近年における環境問題に対する関心の高まりに連れて、このように大量に廃棄される廃ペットボトルを分離回収してリサイクルするための廃ペットボトル分離回収システム及びその方法が各種提案されている。
【0003】
図2に示されているように、廃ペットボトル1は、主に、水より比重の軽いキャップ2と、水より比重の重いペット樹脂から成るペットボトル本体3と、水より比重の軽いものの多いラベル4により構成されている。
【0004】
そこで、従来の廃ペットボトル分離回収システム及びその方法としては、例えば、図3に示すように、粉砕機5により粉砕した廃ペットボトル1を、水を貯留した分離槽6に投入し、水との比重差を利用して、水面上に浮遊した廃ペットボトル1のキャップ2やラベル4を水面浮上流れにより排出すると共に、水中に沈降した廃ペットボトル1のペット樹脂7をコンベア8により移送することにより、キャップ2やラベル4とペット樹脂7とを分離、回収し、リサイクル処理の次工程に移送するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、最近では、ペットボトル本体3全体を覆うフルラベルや金属塗料を含む質量の大きいラベルの使用が増加する傾向にあるため、ラベル4が分離槽1内で水中浮遊物として存在し、ペット樹脂と分離されずにリサイクル処理され、リサイクル製品の品質低下を招くといった問題が生じている。そのため、従来のこの種の廃ペットボトル分離回収システムやその方法により水との比重差を利用してペット樹脂をラベル4から分離させて回収することが難しくなってきている。
【0006】
そこで、最近では、上記した分離処理に加えて乾燥処理や風力による選別処理を行ってラベル4からペット樹脂を分離させて回収し、リサイクル製品の純度を高めるようにしている。
【特許文献1】特開2002−292630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように乾燥処理や風力による選別処理を行ってラベル4からペット樹脂を分離させて回収する場合には、廃ペットボトル分離回収システムを構築するためのイニシャルコストや該システムを運用するためのランニングコストが増大し、リサイクル製品の採算性を悪化させるといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、イニシャルコストやランニングコストを低減し、リサイクル製品の採算性を改善することのできる廃ペットボトル分離回収システム及びその方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る廃ペットボトル分離回収システムは、廃ペットボトルを粉砕するための粉砕手段と、前記粉砕した廃ペットボトルを貯留した水との比重差によって水面上に浮遊する浮遊材と水中に沈降する沈降材とに分離するための分離手段と、前記浮遊材を前記分離手段の水面浮上流れにより排出させるための浮遊材排出手段と、前記沈降材を前記水と共に前記分離手段の上方に移送して該上方から落下させるための沈降材移送手段と、該沈降材移送手段から落下した沈降材及び水を受け止めるための受け止め手段と、該受け止め手段内の沈降材及び水を攪拌し、該沈降材中のラベルを浮遊させて分離するためのラベル分離手段と、前記受け止め手段内の沈降材中のペット樹脂を排出させるためのペット樹脂排出手段と、前記受け止め手段内で浮遊するラベルを水面浮上流れにより前記分離手段へ排出させるためのラベル排出手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
そして、前記ペット樹脂排出手段は、スクリューコンベアを備えており、該スクリューコンベアは前記ラベル分離手段を兼用しているのが好ましい。
【0011】
また、前記ラベル排出手段は、前記ラベルを前記分離手段に排出させるための排出口と、該排出口の周りに設けられる仕切板とを備え、該仕切板には前記沈降材中のキャップの通過を阻止可能な大きさの開口部が設けられているのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る廃ペットボトル分離回収方法は、廃ペットボトルを粉砕するステップと、前記粉砕した廃ペットボトルを分離手段に貯留した水との比重差によって水面上に浮遊する浮遊材と水中に沈降する沈降材とに分離するステップと、前記浮遊材を前記分離手段の水面浮上流れにより排出させるステップと、前記沈降材を前記水と共に前記分離手段の上方に移送して該上方から落下させるステップと、該落下した沈降材及び水を受け止め手段により受け止めるステップと、該受け止め手段内の沈降材及び水を攪拌し、該沈降材中のラベルを浮遊させて分離するステップと、前記受け止め手段内の沈降材中のペット樹脂を排出させるステップと、前記受け止め手段内で浮遊するラベルを水面浮上流れにより前記分離手段へ排出させるステップとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水との比重差を利用してキャップとラベルとペット樹脂を確実に分離させて回収することができるため、純度の高いリサイクル製品を容易且つ確実に製造することができる。
【0014】
また、ラベルからペット樹脂を分離させて回収するために、乾燥処理や風力による選別処理等の処理工程を追加する必要がないため、イニシャルコストやランニングコストの低減化を図ることができ、リサイクル製品の採算性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る廃ペットボトル分離回収システム及びその方法を示す模式図である。
【0016】
本発明の実施の形態に係る分離回収システム10は、廃ペットボトル11を粉砕するための粉砕手段である粉砕機12と、粉砕した廃ペットボトル11を貯留した水との比重差によって水面上に浮遊する浮遊材と水中に沈降する沈降材とに分離するための分離手段である分離槽13と、沈降材を水と共に分離槽13の上方に移送して該上方から落下させるための沈降材移送手段である移送コンベア14と、移送コンベア14から落下した沈降材及び水を受け止めるための受け止め手段である受け止め槽15と、受け止め槽15内の沈降材中のペット樹脂を排出させるためのペット樹脂排出手段である排出コンベア16とを備えて構成されている。
【0017】
分離槽13の上部側面には、オーバーフロー管17が接続されており、このオーバーフロー管17は分離槽13の水面上に浮遊する浮遊材を水面浮上流れにより分離槽13外に排出させる浮遊材排出手段として機能する。また、分離槽13の底部には、電動モータ18により駆動されるスクリューコンベア19が設けられていると共に、他の部分より深くなるように釜場20が形成されている。
【0018】
移送コンベア14は、例えばスネコン(登録商標)等の密閉型バケットコンベアであり、分離槽13の釜場20から分離槽13の上方に掛けて設けられており、上端部下側には沈降材落下口21が形成されている。
【0019】
受け止め槽15は、逆円錐状を成し、排出コンベア16の受入槽としての機能を有し、内容量の80%程度に貯水可能な構造を有している。受け止め槽15の上部側面には排出口22が開口されており、この排出口22は分離槽13の上方に配置されている。また、排出口22の周りには沈降材中のペット樹脂7の通過を阻止可能な大きさの開口部(図示省略)を有するメッシュ状の仕切板23が設けられており、排出口22と仕切板23によりラベル排出手段が構成されている。
【0020】
受け止め槽15の上部には給水管24が接続され、給水管24には給水弁25が取り付けられており、この給水弁25を常時開放することにより、分離槽13の水がリサイクル水として受け止め槽15に連続給水されるようになっている。また、受け止め槽15の底部には排出管26が接続され、この排出管26には排出弁27が取り付けられており、定期的にこの排出弁27を開放することにより、受け止め槽15の底部に滞留した異物が排出されるようになっている。
【0021】
排出コンベア16は、受け止め槽15の底部から斜め上方に掛けて設けられ、電動モータ28によって駆動されるスクリューコンベア29によって構成されており、このスクリューコンベア29はラベル分離手段としても機能するようになっている。そして、排出コンベア16の上端部下側にはペット樹脂落下口30が開口されている。
【0022】
次に、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る廃ペットボトル分離回収システム10の作用について説明する。
【0023】
廃ペットボトル11が、粉砕機12によって、キャップ2と、ラベル4と、ペットボトル本体3を構成するペット樹脂7とに粉砕されて分離槽13に投入されると、分離槽13では、キャップ2、ラベル4、及びペット樹脂7が、分離槽13に貯留された水との比重差によって分離され、水より比重の軽いキャップ2及びラベル4は水面上に浮遊する浮遊材となる一方、水より比重の重いラベル4及びペット樹脂7は水中に沈降する沈降材となる。
【0024】
そして、浮遊材となったキャップ2及びラベル4は分離槽13の水面浮上流れによりオーバーフロー管17を介してリサイクル処理の次工程に移送され、所定の二次製品となる。一方、沈降材となったラベル4及びペット樹脂7は、水と共にスクリューコンベア19によって分離槽13の釜場20に移送され、さらに移送コンベア14によって釜場20から受け止め槽15の上方に移送され、沈降材落下口21から受け止め槽15に落下される。
【0025】
このようにして受け止め槽15に落下された沈降材は、受け止め槽15中を沈降し、沈降材中のラベル4は移送コンベア14から払い落とされる際の水撃と、スクリューコンベア29の攪拌によって米磨ぎ状態となり、自然に水面上に浮上する。さらに、受け止め槽15には給水管24を介して分離槽13の水がリサイクル水となって給水されており、水面上に浮上したラベル4は、仕切板23を通過し、排出口22を通って分離槽13に落下する。
【0026】
一方、ラベル4が分離された沈降材中のペット樹脂7は、受け止め槽15中を沈降した後、排出コンベア16により、上方に移送され、ペット樹脂落下口30から落下され、リサイクル処理の次工程に移送され、所定のリサイクル製品となる。なお、ペット樹脂7は、仕切板23の通過を阻止されるため、移送コンベア16から払い落とされた際に水の流れの勢いにより排出口22から分離槽13に落下するおそれはない。したがって、ラベル4とペット樹脂7は確実に分離され、回収される。
【0027】
また、沈降材は受け止め槽15中を沈降又は浮上する間に洗浄され、沈降材に付着していた砂や泥等の異物は受け止め槽15の底部に滞留し、この異物は、排出弁27を定期的に開放することにより排出管26を介して外部に排出され、廃棄物として処理される。
【0028】
上記したように本発明の実施の形態に係る廃ペットボトル分離回収システム10によれば、水との比重差を利用してキャップ2とラベル4とペット樹脂7を確実に分離させて回収することができるため、純度の高いリサイクル製品を容易且つ確実に製造することができる。
【0029】
また、ラベル4を分離、回収するために、乾燥処理や風力による選別処理等の処理工程を追加する必要がないため、廃ペットボトル分離回収システムのイニシャルコストやランニングコストの低減化を図ることができ、リサイクル製品の採算性を改善することが可能となる。
【0030】
さらに、受け止め槽15において廃ペットボトル1に付着している砂や泥等の異物を確実に排出することができ、清浄なリサイクル水を分離槽13や受け止め槽15のオーバーフロー水として利用することができるため、ランニングコストのさらなる低減化を図ることもできる。
【0031】
さらにまた、受け止め槽15内の水を攪拌してラベル4を分離、回収する際に、排出コンベア16のスクリューコンベア29を兼用しているため、イニシャルコストをさらに低減させることができ、効率の良いシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る廃ペットボトル分離回収システム及びその方法を示す模式図である。
【図2】ペットボトルの構成を示す模式図である。
【図3】従来例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
4 ラベル
7 ペット樹脂
10 廃ペットボトル分離回収システム
11 廃ペットボトル
12 粉砕機(粉砕手段)
13 分離槽(分離手段)
14 移送コンベア(沈降材移送手段)
15 受け止め槽(受け止め手段)
16 排出コンベア(ペット樹脂排出手段)
17 排出管(浮遊材排出手段)
22 排出口(ラベル排出手段)
23 仕切板(ラベル排出手段)
29 スクリューコンベア(ラベル分離手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ペットボトルを粉砕するための粉砕手段と、
前記粉砕した廃ペットボトルを貯留した水との比重差によって水面上に浮遊する浮遊材と水中に沈降する沈降材とに分離するための分離手段と、
前記浮遊材を前記分離手段の水面浮上流れにより排出させるための浮遊材排出手段と、
前記沈降材を前記水と共に前記分離手段の上方に移送して該上方から落下させるための沈降材移送手段と、
該沈降材移送手段から落下した沈降材及び水を受け止めるための受け止め手段と、
該受け止め手段内の沈降材及び水を攪拌し、該沈降材中のラベルを浮遊させて分離するためのラベル分離手段と、
前記受け止め手段内の沈降材中のペット樹脂を排出させるためのペット樹脂排出手段と、
前記受け止め手段内で浮遊するラベルを水面浮上流れにより前記分離手段へ排出させるためのラベル排出手段と、
を備えていることを特徴とする廃ペットボトル分離回収システム。
【請求項2】
前記ペット樹脂排出手段は、スクリューコンベアを備えており、該スクリューコンベアは前記ラベル分離手段を兼用している請求項1に記載の廃ペットボトル分離回収システム。
【請求項3】
前記ラベル排出手段は、前記ラベルを前記分離手段に排出させるための排出口と、該排出口の周りに設けられる仕切板とを備え、該仕切板には前記沈降材中のペット樹脂の通過を阻止可能な大きさの開口部が設けられている請求項1又は2に記載の廃ペットボトル分離回収システム。
【請求項4】
廃ペットボトルを粉砕するステップと、
前記粉砕した廃ペットボトルを分離手段に貯留した水との比重差によって水面上に浮遊する浮遊材と水中に沈降する沈降材とに分離するステップと、
前記浮遊材を前記分離手段の水面浮上流れにより排出させるステップと、
前記沈降材を前記水と共に前記分離手段の上方に移送して該上方から落下させるステップと、
該落下した沈降材及び水を受け止め手段により受け止めるステップと、
該受け止め手段内の沈降材及び水を攪拌し、該沈降材中のラベルを浮遊させて分離するステップと、
前記受け止め手段内の沈降材中のペット樹脂を排出させるステップと、
前記受け止め手段内で浮遊するラベルを水面浮上流れにより前記分離手段へ排出させるステップと、
を備えていることを特徴とする廃ペットボトル分離回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−105223(P2010−105223A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277681(P2008−277681)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】