説明

廃棄物の焼却装置及び焼却方法

【課題】溶融炉と二次燃焼室とを有し二段階以上に亘って燃焼を行う廃棄物の焼却装置において、ごみの性質や量の瞬間的な変動を受けても安定した低空気比燃焼を続け、一酸化炭素の排出量を抑制した廃棄物の焼却を行う。
【解決手段】平常時には二次燃焼室から排出される排ガスの酸素濃度又は温度を測定して、その値に従って二次燃焼室に供給する燃焼用空気の供給量を調整し、溶融炉出口におけるガスの酸素濃度が定められた切替設定値以下となった場合には、排ガスの酸素濃度又は温度を基準とせず、弁を十分に開放して十分な量の燃焼用空気を二次燃焼室に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次燃焼室を備える溶融炉で廃棄物をガス化して焼却するにあたって、一酸化炭素の排出量を抑える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミや家庭ゴミなどの廃棄物を処理する焼却炉では、ガス化炉で廃棄物を熱分解ガスと、炭素質や灰分を含む固形分とに分解し、熱分解ガスを燃焼させるとともに灰分を溶融させる溶融炉が用いられている。灰分を熱溶融するために1200℃以上の高温が必要となるが、省エネルギーのために、自己熱溶融できるように、助燃無しで十分な高温にすることが検討されている。一方で、高温の溶融炉では、酸素濃度が高いほど、燃焼用空気中の窒素と酸素が反応して、所謂サーマルNOxと呼ばれる窒素酸化物が生じやすくなるため、燃焼条件を適切に調整する必要がある。
【0003】
その一つとして、低空気比燃焼技術の検討が行われている。これは空気供給による熱損失を抑えて、外部から供給する空気により炉内が冷却されることを抑え、炉内の高温化を図るものである。また、使用する燃焼用空気を減らすため、最終的に排ガスとなるガス量を削減することもできる。さらに、空気量を減らすことでサーマルNOxの生成を抑制することができる。
【0004】
ただし、低空気比燃焼とすることは、燃焼空気の供給を抑えることとなり、熱分解ガスと燃焼空気との混合、攪拌が不十分になりやすく、結果として完全燃焼を阻害することになってしまい、一酸化炭素が生成しやすくなってしまうことがある。このため、排ガスを環流させて、空気の代わりに熱分解ガスと空気との混合、攪拌を促進させる方法が検討されている(特許文献1)。
【0005】
具体的には、溶融炉での空気比を1.0以下とすることが望ましいとされている。この空気比は、熱分解ガスや助燃剤を完全燃焼させることができる理論空気量に対する、実際の空気供給量の比である。しかし、焼却される廃棄物の性質は一定ではなく、ガス化炉で生じる熱分解ガス及びチャーの発生量には変動が生じる。このため、溶融炉を実際に運転すると、空気比が1.0を上回ることがしばしば発生する。こうなると、高温燃焼であるために空気中の窒素と酸素が反応するサーマルNOxの発生が著しく、窒素酸化物の発生を抑制することが難しい。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献2に挙げられるように、溶融を主燃焼室と二次燃焼室との二段階、あるいはそれ以上の段階で行い、それぞれ段階的に燃焼用空気を供給する方法が検討されている。このようにすることで、溶融炉で生じた一酸化炭素を二次燃焼室で完全燃焼させて、最終的に排出される一酸化炭素の量を抑制することができるとともに、主燃焼室を低空気比にすることで窒素酸化物の生成量自体を抑制できる。
【0007】
また別の方法として、燃焼用空気の供給量を状況に応じて調整するという方法が挙げられる。廃棄物の焼却は定常的ではなく、焼却する廃棄物の内容に応じて時々刻々と状況が変化するが、燃焼により生じる排ガス中の気体成分濃度や温度を測定し、この濃度や温度が予め定めた設定値に近づくように、燃焼用空気の供給量を調整するフィードバック制御を行うものである。例えば、特許文献3には、二次燃焼室から排出されたガスの酸素濃度やNOx濃度、二次燃焼室の温度を測定して、それらの測定条件に優先順をつけて、二次燃焼室に供給する燃焼用空気の量を制御する条件として用いる例が記載されている。
【0008】
さらにこれ以外にも、溶融炉や二次燃焼室の反応を、その排出されるガスの成分を調べ、その値から、それより上流に供給される成分の供給量を制御するフィードバック制御をして、一酸化炭素や窒素酸化物の発生量を抑える方法は一般的に行われており、例えば特許文献4には、測定されるガスの酸素濃度に応じて、熱分解ガスの元になる廃棄物の投入量を制御する方法が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−201621号公報
【特許文献2】特開2002−031312号公報
【特許文献3】特開2006−194516号公報
【特許文献4】特開2006−97916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、低空気比で燃焼用空気の供給量を調整しようとすると、ガス化炉から供給される熱分解ガスの増加によっては、極端に酸素不足の状態に陥りやすく、一酸化炭素が発生しやすくなる。さらに、供給量を制御することで、攪拌にも用いる燃焼用空気の量が一時的に減少すると、燃焼室内での熱分解ガスと燃焼用空気との混合が不十分になり、一酸化炭素が生じやすくなる場合がある。
【0011】
また、酸素濃度計で濃度測定をして測定値を出すにも時間がかかるので、測定値が判明してからフィードバック機構により弁を調整して供給する空気量の制御を行うまでの間のタイムラグがあり、その間に不完全燃焼で生じて通過した一酸化炭素は排出することになってしまっていた。
【0012】
そこでこの発明は、溶融炉と二次燃焼室とを有し二段階以上に亘って燃焼を行う廃棄物の焼却装置において、ごみの性質や量の瞬間的な変動を受けても安定した低空気比燃焼を続け、一酸化炭素の排出量を抑制した廃棄物の焼却を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、平常時には二次燃焼室から排出される排ガスの酸素濃度又は温度を測定して、その値に従って二次燃焼室に供給する燃焼用空気の供給量を調整するフィードバック機構による制御を行い、溶融炉出口におけるガスの酸素濃度が予め定められた切替設定値を下回ると、前記フィードバック機構による制御から前記温度計又は前記排ガスの酸素濃度から独立した制御装置による制御値に従って二次燃焼室に供給する燃焼用空気の供給量を調整する制御の切り替えを行い、溶融炉出口におけるガスの酸素濃度が予め定められた切替設定値を上回ると、前記フィードバック機構による制御に戻すことで、上記の課題を解決したのである。
【0014】
すなわち、溶融炉から二次燃焼室に送られてくるガスに含まれる酸素の濃度が極端に低くなった場合には、二次燃焼室出口からのフィードバック制御では、二次燃焼室で確実に酸素不足による不完全燃焼で一酸化炭素が発生し、溶融炉で発生した一酸化炭素はそのまま残留して、排ガスに含まれることになってしまう。これに対して、二次燃焼室から排出された排ガスの成分や温度を分析して変化を検出した上で対処しようとしても、既に一酸化炭素が二次燃焼室から排出されてしまっているので対処が間に合わない。そこで、二次燃焼室に入る前の段階で気体の成分を調べ、確実に不完全燃焼が起こると判断された状態では、燃焼用空気の供給量制御を、一時的に二次燃焼室の出口での測定値から切り替えて、速やかに燃焼用空気を補充し、二次燃焼室内で完全燃焼が行われるようにして、一酸化炭素の排出量を抑制したのである。
【0015】
その方法を実現させるための焼却装置は、二次燃焼室の出口に酸素濃度計又は温度計を設け、これらの測定器と、これら測定器で検出される値を予め設定した設定値と比較して、その値を設定値に近づくように二次燃焼室燃焼用空気調整弁を調整する制御機構を設けるとともに、溶融炉の気体出口にも溶融炉出口酸素濃度計を設け、この溶融炉出口酸素濃度計を前記の制御機構に接続させた。普段は二次燃焼室の出口に繋がる制御機構を基準に二次燃焼室燃焼用空気調整弁を調整し、溶融炉出口酸素濃度計の測定値が予め設定した切替設定値以下になったことをトリガーに、二次燃焼室燃焼用空気調整弁の調整を、前記の酸素濃度計及び温度計から独立した制御装置による制御値に従って行うように制御を切り替え、前記の測定値が予め設定した切替設定値以上となったら、二次燃焼室燃焼用空気調整弁の制御を元に戻すように切り替えることができる、切り替え機構を有するものとする。この独立した制御装置による制御値は、十分な量の燃焼用空気を二次燃焼室に供給出来るよう、十分に二次燃焼室燃焼用空気調整弁を開放するよう調整するものであり、固定値でもよい。
【0016】
また、溶融炉出口での酸素濃度の低下を速やかに検出できるように、従来酸素濃度計として一般に用いられている、応答速度が15〜20秒程度かかるジルコニア素子を用いた酸素濃度計ではなく、応答速度が2秒ほどである赤外線レーザー式酸素濃度計を使用すると、速やかに気体中の酸素濃度の低下を検知して、それに合わせて燃焼用空気の供給量を増加させることができ、不完全燃焼の抑制をより確実に行うことができるようになる。
【0017】
さらに、二次燃焼室から排出された排ガスを二次燃焼室に環流させて、内部の気体の攪拌や混合に用いることで、上記の制御によって空気供給量が一時的に低下した場合でも、未燃焼ガスと燃焼用空気とを十分に攪拌して完全燃焼させることができ、より完全燃焼を達成させやすくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる焼却方法により、処理する廃棄物の急激な質及び量の変化があっても、燃焼装置全体で不完全燃焼となることを抑制し、廃棄物焼却装置から排出される一酸化炭素の量を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明について、図1に示す実施形態により説明する。図1は、この発明にかかる廃棄物焼却装置の全体構成とフローを示す図である。
【0020】
この実施形態における構成とフローを説明する。まず、都市ゴミや家庭ゴミなどの廃棄物Aを、ガス化炉11で熱分解する。なお、図示していないが実際には空気を供給する。熱分解により、廃棄物Aは熱分解ガスBと固形分Cとに分離される。この固形分Cは、チャーと呼ばれる炭素残渣成分やタール、灰分からなる。これらを溶融炉12に供給し、溶融炉12内の主燃焼室13で供給される燃焼用空気Dにより熱分解ガスBを燃焼させて高温状態とし、固形分Cを熱溶融させる。熱溶融した固形分Cは主燃焼室13の壁面を伝って下の溶融池14に落下し、燃焼後のガスEも下方へ押し出される。固形分Cは出滓口15を経て、水槽16へ落とされてスラグFとなる。このスラグFは水槽で冷却された後、外部へ搬出される。なお、主燃焼室13では安定した燃焼のために助燃剤を用いたバーナによる点火も併用して行い、その燃焼のための燃焼用空気Dはバーナ供給空気調整弁41により調整する。
【0021】
一方、燃焼後のガスEは溶融炉12の気体出口12a(以下、「溶融炉出口12a」と略記する。)から、二次燃焼室21へ送られる。燃焼後のガスEは二酸化炭素や窒素だけでなく、未だ燃焼可能な成分である未燃焼ガスも含んでいる。また、不完全燃焼による一酸化炭素を含む場合もある。二次燃焼室21ではこの未燃焼ガスや一酸化炭素を、二次燃焼用送風機44から二次燃焼用空気D’を供給しつつ完全燃焼させる。完全燃焼されて生じた排ガスJは、誘引送風機31に繋がる一連の煙道24、24’を通じてガス冷却室25、空気予熱器26、減温塔29を通り、冷却される。なお、この空気予熱器26では、溶融炉燃焼用送風機27により外部から取り込まれた空気の予熱を行う。ここで予熱した空気を、空気供給配管28を通じて溶融炉12へ送り、燃焼用空気Dとして用いる。なお、二次燃焼用空気D’は、二次燃焼室の過熱を抑える冷却効果もあるため、特に予熱しなくてもよい。
【0022】
ここまで冷却された排ガスは、さらに減温塔29を出た段階で200℃程度以下まで冷却されている。これにより、排ガスJに含まれるものの高温で気体となっていた重金属を凝縮、凝固させ、固体のダスト成分にする。この冷却された排ガスを、誘引送風機31で吸引しつつ、濾材として織布や不織布を用いたバグフィルタ30を通し、排ガスに含まれるダスト成分を集塵する。これにより、ダスト成分を除去することができ、この浄化された排ガスJ’を装置外に排出する。ただし、この排ガスJ’の一部は、煙道24’から分岐させた排ガス溶融炉環流配管32を通じて、排ガス再循環用送風機33により溶融炉12の主燃焼室13へ環流される。また、排ガス二次燃焼室環流配管42を通じて、二次燃焼室21へも環流される。
【0023】
なお、排ガスJの冷却にあたっては、図1に示すガス冷却方式での冷却を行う実施形態に限らず、ガス冷却室25と空気予熱器26との代わりに廃熱ボイラにより熱回収を行って冷却してもよい。この場合、廃熱ボイラで水に熱を回収させて水蒸気を得、その水蒸気を燃焼用空気Dの加熱に利用する。また、それにより冷却された排ガスを減温塔29に送り、バグフィルタ30を通して得られた浄化された排ガスJ’の一部を、図1の実施形態と同様に主燃焼室13と二次燃焼室21とに環流する。
【0024】
この発明にかかる焼却方法を実施する焼却装置では、溶融炉12の、二次燃焼室21へ繋がる出口12aにおける酸素濃度を測定する溶融炉出口酸素濃度計17を取り付ける。具体的には、溶融炉12で燃焼された気体を、二次燃焼室21の気体入口へ送り込む間の経路上である。この溶融炉出口酸素濃度計17は、図2に示すような、赤外線レーザーを発信する発信器51と、測定対象を通過した赤外線を受光する受信器52と、吸収された赤外線のスペクトルから測定対象の酸素濃度を演算する制御器53からなる赤外線レーザー式酸素濃度計であると好ましい。この赤外線レーザー式酸素濃度計の原理は以下の通りである。全ての分子は特有の振動、回転運動をしており、それぞれの運動状態は量子化されている。このため、全ての分子は、それぞれ固有の量子化された運動状態間のエネルギー差に対応する特定の波長域の光を吸収して、高エネルギーの運動状態に励起することができる。従って、発信器から酸素分子が吸収可能なエネルギーに対応する波長域の光を照射して、測定対象を通過させたものを受信器で受信し、制御器でどの程度までその波長域の光が減少しているかを測定することで、測定対象である気体中の酸素分子の量を算出することができる。
【0025】
このような赤外線レーザー式酸素濃度計を用いて酸素濃度を測定することで、従来用いていたジルコニア素子を用いた酸素濃度計よりも十分に速い、2秒程度の時間で応答を得ることができる。なお、従来のジルコニア素子を用いた場合、応答速度は15〜20秒程度であり、赤外線レーザー式酸素濃度計の方が、十分に応答速度が速い。ジルコニア素子を用いた酸素濃度計の場合、酸素濃度の値の実際の値が測定されるまでの時間に、溶融炉出口12aを通過した気体が、二次燃焼室21まで通過してしまう可能性があるが、赤外線レーザー式酸素濃度計ならば、酸素濃度を測定し終わるまでに、その酸素濃度の気体が二次燃焼室21を通過してしまう可能性はほとんどなくなり、一酸化炭素の排出を抑えることができる。
【0026】
また、上記の赤外線レーザー式酸素濃度計は、1000℃を超える高温環境や、細かな灰分などのダストが多い環境でも測定が可能である。さらに、レーザーが通過している線区間での平均濃度を検出する方式であるため、一点で吸引して測定する吸引方式のジルコニア素子酸素濃度計よりも測定値の信頼性が高い。このため、溶融炉出口12aの酸素濃度の変動する値を正確かつ速やかに検出することができる。また、可動部を有さず、試薬も使用しないため、メンテナンスがほとんど不要であり、長期間に亘って安定した運用が可能であるという利点も有する。この赤外線レーザー式酸素濃度計の制御器53は、こうして測定された酸素濃度の値を、電流値又は電子的情報として外部出力可能なものである。
【0027】
さらに、この発明にかかる焼却方法を実施する焼却装置では、二次燃焼室21から排ガスJを排出する煙道24に、温度計、又は酸素濃度計を取り付ける。以下、それぞれを二次燃焼室出口温度計46、二次燃焼室出口酸素濃度計46’と表記する。これらはいずれも、測定値を電流値又は電子的情報として外部出力可能なものである。二次燃焼室出口酸素濃度計46’としては、上記した赤外線レーザー式である酸素濃度計を用いると、応答速度が速く、運用しやすいため好ましい。
【0028】
これらの温度計及び酸素濃度計で測定した値を、それぞれについて予め設定した設定値に近づけるように、溶融炉12及び二次燃焼室21に供給する燃焼用空気D及び二次燃焼用空気D’の量を調整する。このうち、二次燃焼室出口温度計46を用いた機構の例を図3に示す。
【0029】
図1及び図3に記載の実施形態では、溶融炉12に供給される燃焼用空気Dの供給量は、以下のように制御される。溶融炉出口12aに設けられた赤外線レーザー式酸素濃度計である溶融炉出口酸素濃度計17の制御器53から、酸素濃度の測定値が溶融炉出口酸素濃度調節計18に送信される。溶融炉出口酸素濃度調節計18では、予め定めた設定値と、送られてきた酸素濃度の測定値とを比較する。この比較により求められた値の差に応じた制御信号を、信号ケーブル20を通じて溶融炉供給空気調整弁19へ伝達する。この制御信号は、前記の設定値よりも測定値の方が大きい場合には、溶融炉供給空気調整弁19を通る空気供給量を低下させ、逆に前記の設定値よりも測定値の方が小さい場合には、溶融炉供給空気調整弁19を通る空気供給量を増加させるように命令する信号となる。この信号は単純な開閉のみを指示するのではなく、調整量を指示可能な数値情報を有する。設定値と測定値との差が大きいほど、それに応じて溶融炉供給空気調整弁19の調整量も大きくしなければならないためである。この数値情報はケーブルを通じて電子信号として送られるものでもよいし、電流値の高低により指示するものでもよい。
【0030】
一方、二次燃焼室21に供給される二次燃焼用空気D’の供給量は、以下のように制御される。二次燃焼用空気D’の供給量を調整する二次燃焼室燃焼用空気調整弁48は、制御装置を切り替える切り替え機構となるスイッチ58と繋がっており、スイッチ58の選択可能な二つの端子は、それぞれ、二次燃焼室出口温度計46と、溶融炉出口酸素濃度計17とに繋がっており、通常時は二次燃焼室出口温度計46に繋がるように設定されている。
【0031】
通常時には二次燃焼室出口温度計46の測定値に従って動作するフィードバック機構による制御を行う。その制御内容は以下の通りである。まず二次燃焼室出口温度計46から二次燃焼室出口温度調節計47に温度の情報が送られ、予め設定された適温の設定値と測定された温度の値とを比較する。設定値より測定値が低いと、二次燃焼用空気D’による冷却を抑えて温度を上げるために、二次燃焼室出口温度調節計47から、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48へ、弁をより閉める指令を発信する。逆に設定値より測定値が高いと、冷却させる二次燃焼用空気D’が不十分であるので、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48をより開く指令を発信する。このように、測定値が設定値に近づくように調整しつつ、通常時としては十分な量の二次燃焼用空気D’を供給して二次燃焼室21内で完全燃焼を起こさせるようにし、一酸化炭素及び窒素酸化物の排出を抑制する。
【0032】
一方、溶融炉出口酸素濃度調節計18には、上記の溶融炉供給空気調整弁19の調整を行う設定値とは別に、極端に酸素濃度が低下した場合に、二次燃焼室21へ供給される燃焼用空気D’量を制御する制御装置を、上記フィードバック機構から切り替えるための切替設定値が定められている。すなわち、極端に酸素濃度が低下すると、二次燃焼室21から排出されたガスの温度を検出してから制御していたのでは、その間に不完全燃焼が進行しすぎてしまうので、緊急時用の制御に切り替えることができるようにする。緊急時であると判断する基準となる前記の切替設定値は、上記の溶融炉出口酸素濃度計17を調整する目標値である設定値と同じでもよいが、制御装置の切り替えを行うのは、極端に酸素濃度が減少した緊急の場合のみとすることが好ましいため、信号切り替えのための切替設定値は、弁の調整のための設定値よりも低くすることが好ましい。溶融炉出口酸素濃度計17での測定値が、この切替設定値を下回ると、溶融炉出口酸素濃度調節計18は、信号切替器56に対して、スイッチ58を切り替える命令を送るよう指示する。
【0033】
スイッチ58が切り替えられることにより、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48の制御は、一時的に、二次燃焼室出口温度計46から独立した制御装置による制御値である、信号発生器57が指示する値に従うことになる。この切り替えを行う際には、溶融炉出口12aの酸素濃度、すなわち、二次燃焼室21に入る気体中の酸素濃度が極端に低下しているので、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を開放して、二次燃焼室21内で完全燃焼が出来るように十分な量の二次燃焼用空気D’を供給させる。このため、信号発生器57が指示する値は、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を、最大流量の空気が通過するか、又は、燃焼装置の条件上可能な範囲で最大流量に準じる量の空気が通過するような固定値を予め設定しておくと好ましい。
【0034】
なお、上記の独立した制御装置による制御値を示す制御装置は、固定値を指示する信号発生器57に限定されるものではなく、例えば、溶融炉出口酸素濃度計17の値に応じて、十分な量の二次燃焼用空気D’の供給量を供給するのであれば、それが可能な範囲で二次燃焼室燃焼用空気調整弁48の開放度を細かく調整できるようにしてもよい。また、上記の「独立した」とは、その制御装置による制御値が二次燃焼室出口温度計46の値から独立していればよく、二次燃焼室出口温度計46に繋がる二次燃焼室出口温度調節計47などの装置に物理的に一体として組み込まれた装置が示す制御値であっても、値が独立していて十分な量の酸素を供給できればよい。
【0035】
上記の切り替えを行った後、測定される溶融炉出口12aの酸素濃度が、制御を戻すための切替設定値を上回ると、緊急的に二次燃焼用空気D’の供給量を増加させる必要は無くなり、通常の制御に戻して構わないので、溶融炉出口酸素濃度調節計18は、信号切替器56に対して、スイッチ58を切り替える命令を送るよう指示する。これにより、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48の制御は、二次燃焼室出口温度計46の値に従うフィードバック機構による制御に戻る。なお、切替設定値を上回る場合、下回る場合とは、必ずしもその閾値を経過した場合に限るものではなく、切替設定値になった時点で切り替える場合も含む。
【0036】
また、スイッチ58を信号発生器57側に切り替える際の切替設定値と、信号発生器57側から二次燃焼室出口温度計46側に戻す際の切替設定値は、同一の値を設定してもよいが、戻す際の切替設定値の方をパーセントの値にして0.05〜0.10%分程度高くしておくと好ましい。切り替える際の切替設定値と戻す際の切替設定値が同じであると、測定された酸素濃度がその切替設定値を超えてスイッチ58を戻した途端に、僅かの状況変動でまた切り替えるための条件を満たして、スイッチ58を信号発生器57側に戻す必要が生じてしまう場合がある。このようにスイッチ58の切り替えが頻発するようになると、正確な制御がほとんど不可能になってしまう。これに対して、切り替える際の切替設定値よりも戻す際の切替設定値を高くしておけば、その条件を満たしてスイッチ58を戻した後で、少々酸素濃度が低下しても、切り替える際の切替設定値以下にはなりにくく、すぐにスイッチ58を再度切り替えたりしなくても済むようになる。
【0037】
このような切り替え機構による制御の切り替えは、図3の機構において、二次燃焼室出口温度計46を二次燃焼室出口酸素濃度計46’に、二次燃焼室出口温度調節計47を二次燃焼室出口酸素濃度調節計47’に変更した、図4のような機構を用いた場合でも、同様に行われる。すなわち、通常時には二次燃焼室の出口における測定値に従うフィードバック機構により二次燃焼用空気D’の供給量を調整し、溶融炉出口12aでの酸素濃度が極端に少なくなった緊急時には、二次燃焼室出口酸素濃度計46’から独立した制御装置による制御値に従って二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を制御するものとする。
【0038】
上記の調整を行う設定値のうち、溶融炉供給空気調整弁19を調整する設定値は、主燃焼室13内の空気比を0.8以上1.0以下に調整する値であると好ましい。基本的に空気比が1.0を超えると、酸素濃度が高くなりすぎて主燃焼室13での窒素酸化物の生成が無視できなくなってくるためである。一方、空気比が小さすぎて0.8未満となると、今度は酸素が不十分すぎて不完全燃焼を起こしてしまうために、一酸化炭素が生じやすくなってしまう。なお、後述する二次燃焼室21での二段燃焼を行うため、主燃焼室13では空気量が不十分な方が好ましいので、0.9以下であるとより好ましい。なお、主燃焼室13での空気比は、主燃焼室13に直接供給される空気だけではなく、ガス化炉11で供給される空気も含めた値である。
【0039】
主燃焼室13内の空気比1.0以下の状態で完全燃焼すると、溶融炉出口12aにおける酸素濃度は理論上0%になるため、そのままでは酸素を検出できなくなる。もっとも、実際には熱分解ガスBの全てが燃焼するわけではなく、未燃焼ガスが残るため、溶融炉出口12aにおいても酸素が残存し、この残存量が主燃焼室13内の空気比により変化することとなる。ただしそれでもその残存量は少ないため、その値を制御の目標値とすると、事実上、溶融炉供給空気調整弁19は全閉かそれに近い状態となってしまい、燃焼用空気Dの実質的制御は難しくなる。そのため、溶融炉出口12aの、溶融炉出口酸素濃度計17を設けた箇所よりも上流の箇所に、燃焼用空気Dか排ガスJ’かのどちらかを供給して、溶融炉出口12aを通過する気体中の酸素濃度を底上げして、この底上げした値を測定し、目標値を設定することで、溶融炉に供給する燃焼用空気Dの量を制御すると好ましい。特に、酸素濃度を過度に上昇させないようにするため、排ガスJ’を供給することが好ましい。このため、図1の実施形態では、煙道24’、又は排ガス溶融炉環流配管32から分岐させて、溶融炉出口12aに排ガスを供給する排ガス溶融炉出口環流配管43を設けている。なお、ここで底上げとは、酸素濃度がより高いガスを加えることで、本来のガスの酸素濃度より高い値にし、測定や制御をし易い状態にすることをいう。
【0040】
上記の溶融炉出口酸素濃度計17で測定される酸素濃度は、主燃焼室13内の空気比に応じて変化するが、その対応する数値の関係は、燃焼装置の規模や構造、さらに、排ガスJ’の環流量などにより決定される。従って、上記の設定値は燃焼装置やその他の条件により変わるが、溶融炉出口12aにおける酸素濃度が1.0vol%以上、2.0vol%以下で、空気比が0.8〜1.0に対応するような条件で排ガスJ’の供給量等を設定しておくと、燃焼用空気Dの供給量が制御しやすいので好ましい。
【0041】
一方、二次燃焼室21内の望ましい空気比は、単独で決定するのではなく、主燃焼室13と二次燃焼室21との両方に供給される空気量の合計により決定することが好ましい。主燃焼室13で不完全燃焼が起きた場合には、一酸化炭素などが多く発生しているため、それを補うために多くの空気が二次燃焼室21に供給される必要があるからである。この、主燃焼室13と二次燃焼室21とに供給される空気を合わせた空気比は、1.3以下であると好ましい。この範囲であれば、主燃焼室13で一酸化炭素が発生したとしても、十分に完全燃焼させることができ、一方で、主燃焼室13よりも低温である二次燃焼室21では、この程度の空気比であっても、窒素酸化物が発生しにくい環境とすることができるためである。ただし、1.3を上回ると必要以上に排ガス量が増加してしまう。
【0042】
上記の全体の空気比を上記の範囲に調整するための、目標としてあらかじめ定める設定値は、燃焼装置の規模や構成、その他の条件により変わるが、概ね好ましいと想定される値はそれぞれ以下の通りである。まず、二次燃焼室21の出口である煙道24に二次燃焼室出口温度計46を設けた場合の、二次燃焼室出口温度調節計47に目標として予め定める設定値は、温度が900℃以上、1000℃以下であると好ましい。
【0043】
一方、二次燃焼室21の出口煙道24に、酸素濃度計46’を設けた場合の、二次燃焼室出口酸素濃度調節計47’に目標として予め定める設定値は、3.5vol%以上、7.0vol%以下であると好ましい。7.0vol%を超えていると、設定値の状態でも余分に酸素を供給しすぎている状態であり、熱効率を低下させてしまう。一方で、3.5vol%未満であると、二次燃焼室21内でも不完全燃焼が起きやすくなってしまう。
【0044】
また、溶融炉出口酸素濃度計17により測定される測定値の、スイッチ58により制御の切り替えを行う切替設定値は、1.0vol%以上、2.0vol%以下であると好ましい。なお、この値は、溶融炉出口酸素濃度計17よりも上流の箇所に、排ガス溶融炉出口環流配管43を繋げて、排ガスJ’を供給した場合の、排ガスJ’に含まれる酸素によって底上げされた酸素濃度に対する切替設定値である。排ガスJ’を供給しない場合は、ここで測定される酸素濃度が極端に低いものとなるため、切り替え制御を行うための判断を行うことが難しくなるため、このように底上げした酸素濃度を基準として切り替えることが好ましい。
【0045】
この発明にかかる焼却装置で上記のように二次燃焼用空気D’の供給量の調整を、上記の切り替え機構で切り替えつつ制御するにあたっては、二次燃焼室21には排ガスJ’が環流される。この排ガスJ’は、図1に記載のように、バグフィルタ30でダスト成分を除去した後の煙道24’から分岐させ、排ガス再循環用送風機33により排ガス二次燃焼室環流配管42を通じて、二次燃焼室21に環流されるものである。これは、供給量が変動する二次燃焼用空気D’を、溶融炉12から送られてきた気体中に含まれる未燃焼ガスと十分に攪拌、混合するための気流を生じさせるとともに、二次燃焼室21が過度に高温になってサーマルNOxと呼ばれる高温環境で生じる窒素酸化物の生成を抑制するためである。
【0046】
上記の二次燃焼室21に、二次燃焼用空気D’及び排ガスJ’を供給するための具体的な構成としては、二次燃焼室21に、図5(a)に記載のようなノズル81乃至83を上下方向に複数段に亘って、一部の段のノズルを二次燃焼用空気D’の供給に、残りの段のノズルを排ガスJ’の供給に割り当て、それぞれを通じて二次燃焼室21内に噴射する。これらのノズルは、水平方向を向くのではなく、下方向に15°±5°程度傾いていると、二次燃焼室21に入ってきたガスの流れと対向して混合されやすいので好ましい。また、それぞれの段のノズルは、図5(b)〜(d)の水平断面図に示すように、導入される気体が対向するようになっている。また、それぞれの段(b)と(c)、(c)と(d)とは、互いにノズルの角度が90度異なるように設けてあり、供給された気体が互いに混合しやすくなるようにしてある。例えば図5の例では、上段ノズル81と中段ノズル82を排ガス二次燃焼室環流配管42に接続して排ガスJ’を供給し、下段ノズル83を外部から二次燃焼用送風機44により空気を吹き込む二次燃焼室空気導入配管45と接続して二次燃焼用空気D’を供給する。二次燃焼用空気D’の供給量は変化するが、排ガスJ’の供給量は一定であり、この排ガスJ’により、下段ノズル83より下方にある溶融炉12と繋がる入口から入ってきた未燃焼ガスと、下段ノズル83から供給される空気を巻き込んで常時気流を発生させ続けて、攪拌、混合を十分に行うようにする。
【0047】
また、二次燃焼用空気D’の量は上記の制御により変化するが、この変化に関係なく、二次燃焼室21に供給された気体を常に十分に攪拌するため、排ガスJ’は二次燃焼室21に常時供給されると好ましい。
【0048】
なお、上記の二次燃焼用空気D’は、二次燃焼室21内で局所的に固まるのではなく、二次燃焼室21中に行き渡って燃焼を助けることが望ましい。一方で、排ガスJ’も攪拌のため、十分に勢いを持って二次燃焼室21内に供給されることが望ましい。このため、二次燃焼用空気D’及び排ガスJ’を供給するにあたってノズルから噴射される際の風速は、適切な混合のため、いずれも30m/s以上であると好ましい。なお、この風速は速いほど好ましいが、50m/sを超えることは現実的でなく、40m/s以下が好適である。
【0049】
上記の二次燃焼室21に供給される排ガスJ’の温度は、200℃以上であると好ましい。200℃未満であると、結露により腐食が発生するおそれがあるため、200℃未満の場合はヒータで加温して200℃以上とする。なお、元の排出温度以上に加熱しておく利点は無い。
【0050】
また、主燃焼室13から二次燃焼室21へ送られる気体の温度は、950℃以上、1050℃以下であることが好ましい。二次燃焼室21が低温すぎると燃焼が進まないが、高温すぎると窒素酸化物が発生しやすいため、二次燃焼室21自体は、主燃焼室13よりも低温であることが望ましい。ただし、主燃焼室13から出た気体は高温であるため、排ガス溶融炉出口環流配管43を通して、溶融炉出口12aに、排ガスJ’を供給することで、前記の温度に冷却させる。
【0051】
なお、上記の排ガス溶融炉出口環流配管43を通じて排ガスJ’を溶融炉出口12aに供給すると、溶融炉出口酸素濃度計17で検知される酸素濃度の値は、この排ガスJ’に含まれる酸素と合わせた値となるので、上記した溶融炉出口酸素濃度調節計18における溶融炉供給空気調整弁19を調整するための設定値は、上記の切り替え機構に指示を出す閾値である切替設定値と同様に、この排ガスJ’の供給による値の変化を考慮した値とすると好ましい。実際に空気比1.0以下で低空気比燃焼を行うと、溶融炉出口12aにおける酸素濃度は0に近づいてしまい、測定された酸素濃度から制御を行うことが難しくなってしまうが、排ガスJ’を供給して酸素濃度を底上げすることで、制御がしやすくなるという効果を得ることもできる。
【0052】
ただしこの場合、溶融炉出口酸素濃度計17は、溶融炉出口12aから二次燃焼室21の間の、排ガス溶融炉出口環流配管43から排ガスJ’が供給される箇所よりも下流に設ける必要がある。また、供給される排ガスJ’と、主燃焼室13から送られてきたガスとが十分に混合されるように、排ガスJ’を供給するにあたっては、主燃焼室13から送られてきたガスの流れに対して、エアーカーテン状になるように送気すると好ましい。具体的には、溶融炉出口12aの管内上面部に、排ガス溶融炉出口環流配管43に接続された筒状部を設け、筒状部の下方にはガスの噴出口が複数並べて設けてあり、それぞれから斜め下方へ噴出される排ガスJ’がエアーカーテンを形成して、溶融炉出口12aを通るガスを遮るようにする。これにより、燃焼後のガスがそのまま流入することを防ぎ、ダストはエアーカーテンの気流によって水槽16へ落とされ、低沸点ガス状物質も流れ経路が迂回されることで、管壁やダストに捕捉されやすくすることができ、下流の機器への固形分の付着を抑制することができる。また、これにより、ガスの冷却も効率良く行うことができる。
【0053】
また、この発明により、溶融炉12においてある程度の不完全燃焼が起きて一酸化炭素が発生しても、二次燃焼室21で完全燃焼させて排出を抑制できるが、過度の不完全燃焼が起きると対応しきれなくなるため、溶融炉12では上記のような空気比であるとともに、1200℃〜1350℃程度の温度で燃焼を行っていると好ましい。そのため、図1の実施形態では溶融炉12に供給される燃焼用空気Dは、空気供給配管28の途中で空気予熱器26により予熱する。
【実施例】
【0054】
この発明にかかる焼却方法を実際に実行した実施例について、以下に説明する。
【0055】
(実施例)
燃焼装置全体の構成及びフローは図1のように行った。すなわち、主燃焼室と二次燃焼室のそれぞれで二段燃焼を行うため、それぞれに燃焼用空気と攪拌用の排ガスを供給して、熱分解ガス、及びその未燃焼ガスを燃焼させた。また、溶融炉の出口に排ガスを供給することで二次燃焼室に供給される気体を冷却した。排ガスは、二次燃焼室から排出されたガスを、燃焼用空気と熱交換して冷却した後、バグフィルタで集塵してダストを除去したものを環流させた。主燃焼室では助燃剤として灯油を使用して助燃を行なった。
【0056】
また、二次燃焼室は図5に記載の構成とし、主燃焼室13から送られてきた未燃焼ガスを、二次燃焼用空気とともに燃焼させた。二次燃焼室の滞留時間は2.0秒であり、上段ノズルとして50Aのノズルを互いに対向する位置に3本と4本との計7本、中段ノズルとして50Aのノズルを互いに対向する位置に3本ずつ計6本、設けてあり、これらを排ガス二次燃焼室環流配管と接続して、排ガスを定常的に供給させた。また、下段ノズルとして50Aのノズルを互いに対向する位置に3本と4本との計7本設け、これを二次燃焼室空気導入配管と接続して、二次燃焼用空気を供給可能とした。それぞれの導入時の風速は30m/sとした。また、上段、中段、下段のノズルが対向する向きは、それぞれ90度ずつずらしたものとした。
【0057】
また、二次燃焼室空気導入配管の空気供給量を調整する二次燃焼室燃焼用空気調整弁は、図3の構成からなる切り替え機構と接続し、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計、及び、二次燃焼室出口に設けた二次燃焼室出口温度計と接続した。また、赤外線レーザー式酸素濃度計と溶融炉供給空気調整弁を接続した。
【0058】
二次燃焼室出口温度計の値により制御するための目標値となる設定値は980℃とし、温度計の値がこの設定値を超える場合には、二次燃焼室燃焼用空気調整弁をより開き、設定値未満である場合には、二次燃焼室燃焼用空気調整弁をより絞るようにするフィードバック機構とする。また、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計の測定値が、切替のための切替設定値として定めた1.5vol%以下になると、溶融炉出口酸素濃度調節計が信号切替器にスイッチの切り替えを指示し、二次燃焼室出口温度計と独立した固定値を示す信号発生器からの指示により二次燃焼室燃焼用空気調整弁を全開にする。また、赤外線レーザー式酸素濃度計の測定値が、戻すための切替設定値として定めた1.55vol%以上になると、再びスイッチの切り替えを指示して、二次燃焼室出口温度調節計による制御に戻す。また、溶融炉出口酸素濃度調節計に設定値1.5%を予め定め、赤外線レーザー式酸素濃度計の値がこの設定値未満の場合は溶融炉供給空気調整弁を緩め、逆に赤外線レーザー式酸素濃度計の値がこの設定値を超える場合は溶融炉供給空気調整弁を絞るようにする。
【0059】
また、主燃焼室では、熱分解ガス以外に助燃剤として灯油を供給し、主燃焼室上部に設けたバーナにより燃焼させて、熱分解ガスの燃焼を補助するものとした。
【0060】
なお、装置のそれぞれの箇所に環流する排ガスの平均成分は水分45.9%であり、酸素濃度が13.0vol%であった。
【0061】
運転を行った際に、装置のそれぞれの箇所に供給される空気量、排ガス量、ごみ処理量、酸素濃度、助燃剤供給量は図6の通りであり、設計時の値と、実際の試験運転の値を表1にまとめる。流動用空気量は、ガス化炉で流動媒体を流動化させる際に用い、熱分解ガスとともに溶融炉に送られる空気の量である。理論空気量は、生成する熱分解ガスの全量を完全燃焼させるのに必要な理論上の空気量2798mN/hと、主燃焼室用バーナに供給する助燃剤を燃焼させるのに必要な空気の量142mN/hとの合計量である。溶融炉空気量は、バーナ燃焼用空気口に供給する溶融炉上部空気量と、上段ノズル及び下段ノズルから溶融炉の主燃焼室に供給される溶融炉空気量との合計量を示し、調整弁により供給される量の1時間あたりの平均値を示す。溶融炉空気比は、(流動用空気量+溶融炉空気量)を理論空気量で割った値である。溶融炉循環排ガス吹込み量は、主燃焼室に中段ノズルを通して定常的に供給される排ガスの量(溶融炉吹込量)200mN/hと、溶融炉出口に供給されて冷却に用いられる排ガスの量(溶融炉出口冷却量)540mN/hの合計量である。二次燃焼室循環排ガス吹込み量は排ガス二次燃焼室環流配管から導入される排ガスの量であり、二次燃焼室空気量は二次燃焼室空気導入配管から導入される燃焼用空気の量である。助燃剤使用量は、バーナに供給される助燃剤の量であり、助燃剤燃焼空気量は助燃剤の燃焼のためにバーナに直接導入される燃焼用空気の量である。総空気比は、理論空気量に対する、(流動用空気量+溶融炉空気量+二次燃焼室空気量)の比である。なお、mN/hは、標準状態に換算した気体体積を示し、実施例中の全ての体積は標準状態換算で示す。また、DB(DryBase)は乾きガスを示し、WB(WetBase)は湿りガスであることを示す。
【0062】
【表1】

【0063】
なお、図6中、溶融炉上部空気量は、主燃焼室上部に設けたバーナの周囲に設けた空気口から供給する空気であり、溶融炉空気量は、主燃焼室に供給する空気量である。また、助燃剤には灯油を使用した。二次燃焼室へ供給する空気は、通常時は温度計に従って調整し、最低供給量が1450mN/hとなる。ただし、酸素濃度が減少して、制御の切り替えを行ったときは、弁を開放していた時間は、これよりも供給量が高くなる。
【0064】
上記の切替を行う設定値は、図6に記載の量から仮想的に算出する。すなわち、図6に記載の量で運用した場合の、溶融炉空気比0.82における燃焼後のガスの成分と、供給される排ガスの成分及び量から、溶融炉出口における供給された排ガスを含めたガスの仮定上の酸素濃度は、排ガス中の酸素が燃焼していないと仮定した場合、2.4vol%と算出される。なお、この実施例で用いる燃料等の元素組成は表2に示す通りである。酸素濃度が低下して二次燃焼室への酸素供給量を増やさねばならない値はこれよりもさらに低くなると考えられるので、制御を切り替える設定値を1.5vol%とし、制御を戻す設定値を、それよりも0.05%高い1.55vol%とした。
【0065】
【表2】

【0066】
上記の条件で運用した際の、二次燃焼室から排出された排ガス中の一酸化炭素(CO)濃度、酸素(O)濃度、窒素酸化物(NOx)濃度と、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計により測定された酸素濃度(溶融炉出口O濃度)とを図7に示す。なお、CO濃度とNOx濃度はいずれも12%酸素換算値である。一酸化炭素の排出量は、6時から7時の間に一度だけピークが現れた以外は全ての時間帯に亘ってグラフ上に現れない程度の量しか検出されず、溶融炉と二次燃焼室とを合わせて十分に完全燃焼を達成して一酸化炭素の排出を抑えられたことがわかった。また、NOx濃度は乾きガス酸素濃度12%換算で80ppm以下程度を推移しており、飛び抜けて高い値となることはなかった。
【0067】
(比較例)
実施例において、赤外線レーザー式酸素濃度計での測定値が1.5vol%以下になっても制御の切り替えを行わずに、そのまま温度計による制御を続けて運用を行った。この場合の二次燃焼室から排出された排ガス中のCO濃度、O濃度、NOx濃度と、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計により測定された酸素濃度とを図8に示す。O濃度とNOx濃度は実施例と比べてほとんど差が無かったが、CO濃度が飛び抜けて高くなることが何度もあり、二次燃焼室で十分な燃焼が出来ていないことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明にかかる焼却方法を実施する焼却装置の構成例を示す図
【図2】赤外線レーザー式酸素濃度計の構成図
【図3】二次燃焼室出口温度計を用いた場合の切り替え機構の構成図
【図4】二次燃焼室出口酸素濃度計を用いた場合の切り替え機構の構成図
【図5】(a)二次燃焼室の縦断面図、(b)(a)のA−A断面図、(c)(a)のB−B断面図、(d)(a)のC−C断面図
【図6】実施例における試験運転の際の空気等の供給量を示す図
【図7】実施例におけるCO,O,NOxの濃度の変遷を示すグラフ
【図8】比較例におけるCO,O,NOxの濃度の変遷を示すグラフ
【符号の説明】
【0069】
A 廃棄物
B 熱分解ガス
C 固形分
D 燃焼用空気
D’ 二次燃焼用空気
E 燃焼後のガス
F スラグ
J、J’ 排ガス
11 ガス化炉
12 溶融炉
12a (溶融炉の)出口
13 主燃焼室
14 溶融池
15 出滓口
16 水槽
17 溶融炉出口酸素濃度計
18 溶融炉出口酸素濃度調節計
19 溶融炉供給空気調整弁
20,20’ 信号ケーブル
21 二次燃焼室
24、24’ 煙道
25 ガス冷却室
26 空気予熱器
27 溶融炉燃焼用送風機
28 空気供給配管
29 減温塔
30 バグフィルタ
31 誘引送風機
32 排ガス溶融炉環流配管
33 排ガス再循環用送風機
41 バーナ供給空気調整弁
42 排ガス二次燃焼室環流配管
43 排ガス溶融炉出口環流配管
44 二次燃焼用送風機
45 二次燃焼室空気導入配管
46 二次燃焼室出口温度計
46’ 二次燃焼室出口酸素濃度計
47 二次燃焼室出口温度調節計
47’ 二次燃焼室出口酸素濃度調節計
48 二次燃焼室燃焼用空気調整弁
51 発信器
52 受信器
53 制御器
56 信号切替器
57 信号発生器
58 スイッチ
81 上段ノズル
82 中段ノズル
83 下段ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解させて熱分解ガスと固形分とにするガス化炉と、
前記の熱分解ガスと固形分とを燃焼溶融させる溶融炉と、
前記溶融炉の気体出口と連結し、上記熱分解ガスのうち上記溶融炉で燃焼しなかった未燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼室と、
前記二次燃焼室で生じた排ガスを外部に排出する煙道と、
前記二次燃焼室に外部から燃焼用空気を供給する二次燃焼室空気供給配管と、
前記二次燃焼室空気供給配管を通して前記二次燃焼室に供給する燃焼用空気の量を調整する二次燃焼室燃焼用空気調整弁と、
前記二次燃焼室から出た前記排ガスの温度を測定する温度計、前記排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計又はそれらの両方と、
前記温度計又は前記酸素濃度計の値が、予め設定した設定値に近づくように、前記二次燃焼室燃焼用空気調整弁を制御するフィードバック機構と、
を有する廃棄物焼却装置であって、
前記溶融炉の前記二次燃焼室へ繋がる気体出口における酸素濃度を測定する溶融炉出口酸素濃度計を有し、
通常時は前記フィードバック機構により前記二次燃焼室燃焼用空気調整弁を制御し、前記溶融炉出口酸素濃度計の測定値が予め設定した切替設定値を下回ると、前記フィードバック機構による制御から、前記温度計及び前記酸素濃度計から独立した制御装置による制御値に従って前記二次燃焼室燃焼用空気調整弁を制御するように制御の切り替えを行い、かつ、前記測定値が予め設定した切替設定値を上回ると、前記フィードバック機構による制御に戻す、切り替え機構を有することを特徴とする廃棄物焼却装置。
【請求項2】
上記の温度計及び酸素濃度計から独立した制御装置が、上記二次燃焼室燃焼用空気調整弁の開放度を予め設定された固定値である制御値に合わせるよう指示する信号発生器である、請求項1に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項3】
上記制御の切り替えを行う際の切替設定値よりも、上記フィードバック機構による制御に戻す際の切替設定値の方を高くした、請求項1又は2に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項4】
上記の溶融炉出口酸素濃度計が赤外線レーザー式酸素濃度計である、請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物焼却装置。
【請求項5】
上記煙道から分岐して、二次燃焼室に上記排ガスを供給する排ガス二次燃焼室環流配管を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物焼却装置。
【請求項6】
上記煙道から分岐して、溶融炉出口の、上記溶融炉出口酸素濃度計を設けた箇所よりも上流の箇所に上記排ガスを供給する、排ガス溶融炉出口環流配管を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の廃棄物焼却装置。
【請求項7】
廃棄物を熱分解して熱分解ガスと固形分とにし、これらを溶融炉で溶融燃焼させ、溶融炉出口から排出された未燃焼ガスを二次燃焼室で燃焼させ、排ガスを排出する廃棄物の焼却方法であって、
通常時は前記排ガスの温度を測定する温度計、又は前記排ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計の値が、予め設定した設定値に近づくように、前記二次燃焼室へ供給する燃焼用空気の量を制御し、
前記溶融炉出口における酸素濃度を測定する溶融炉出口酸素濃度計の測定値が予め設定した切替設定値以下である場合は、前記二次燃焼室へ供給する燃焼用空気の量の制御を、前記温度計及び前記酸素濃度計から独立した制御装置による制御値に従って行うように切り替え、その後、前記測定値が予め設定した切替設定値を上回った場合には、前記調整を、前記温度計又は前記酸素濃度計の値による制御に戻すことを特徴とする、廃棄物の焼却方法。
【請求項8】
上記の温度計及び酸素濃度計から独立した制御装置による制御値が、予め設定された固定値であることを特徴とする、請求項7に記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項9】
上記制御を切り替える際の切替設定値よりも、上記温度計又は上記酸素濃度計による制御に戻す際の切替設定値の方を高くした、請求項7又は8に記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項10】
上記排ガスを二次燃焼室に常時供給することで、二次燃焼室内の気体を混合、攪拌する請求項7乃至9のいずれかに記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項11】
上記二次燃焼室内へ供給される上記排ガスの風速が、常時30m/s以上40m/s以下である、請求項10に記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項12】
上記排ガスを、溶融炉出口の、上記溶融炉出口酸素濃度計を設けた箇所よりも上流の箇所に供給する、請求項7乃至11のいずれかに記載の廃棄物焼却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−224143(P2008−224143A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63754(P2007−63754)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人全国都市清掃会議 刊行物名 第28回全国都市清掃研究・事例発表会 講演論文集 発行年月日 平成18年12月27日
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】