説明

廃棄物処理システム及びその方法並びにバイオエタノール製造設備

【課題】廃棄物中の食品廃棄物から油分を回収し、これを外部過熱器の燃料として有効利用する廃棄物処理システム及びその方法並びにバイオエタノール製造設備を提供する。
【解決手段】ごみを焼却処理又は溶融処理するごみ処理設備11と、ごみ処理設備11にて発生した廃熱を利用して蒸気を発生するボイラ31、蒸気の過熱度を更に上げて過熱蒸気を生成する外部過熱器32、及び過熱蒸気により駆動されるタービン33を有する発電設備12と、食品廃棄物からエタノールを製造するバイオエタノール製造設備13とを備えた廃棄物処理システム10において、バイオエタノール製造設備13は、食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化装置42と、糖化液を油分、水溶液分、及び固形分に分離する分離装置43とを備え、油分が、外部過熱器32の燃料として外部過熱器32に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物を含む廃棄物を処理する廃棄物処理システム及びその方法並びに食品廃棄物を原料としたバイオエタノール製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品廃棄物からバイオエタノールを製造する種々の方法が知られている。その中で、食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化工程の後に、糖化液を三相遠心分離して油分、水溶液分、固形分に分離する三相遠心分離工程を設け、分離した油分を回収する技術が存在する。この技術においては、回収した油分は、エステル交換反応、亜臨界処理及び熱処理等からなる燃料化処理によって脂肪酸メチルエステルを含むバイオディーゼル燃料(BDF)の原料として利用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、回収した油分は植物油と動物脂の混合物であり、分子量が大きい。そのため、回収した油分(脂分)は30℃未満で凝固し、取扱いが困難であった。従って、回収した油分は燃料油としての利用価値が低く、そのまま焼却される場合もあった。また、回収した油分には、食品を調理する過程で酸化した油が含まれている。そのため、酸化した油が含まれていない場合に比べ、BDF化に必要な触媒等の副資材や工程が多く必要である。即ち、回収した油分をBDF化して有効活用するためには、コストや手間の観点から問題があった。
本発明は、食品廃棄物を含む廃棄物から油分を回収し、これを発電設備に設けられた外部過熱器の燃料として有効利用する廃棄物処理システム及びその方法並びにバイオエタノール製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る廃棄物処理システムは、ごみを焼却処理又は溶融処理するごみ処理設備と、前記ごみ処理設備にて発生した廃熱を利用して蒸気を発生するボイラ、前記蒸気の過熱度を更に上げて過熱蒸気を生成する外部過熱器、及び前記過熱蒸気により駆動されるタービンを有する発電設備と、食品廃棄物からエタノールを製造するバイオエタノール製造設備とを備えた廃棄物処理システムであって、
前記バイオエタノール製造設備は、前記食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化装置と、
前記糖化液を油分、水溶液分、及び固形分に分離する分離装置とを備え、
前記油分が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給される。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係る廃棄物処理システムは、ごみを焼却処理又は溶融処理するごみ処理設備と、前記ごみ処理設備にて発生した廃熱を利用して蒸気を発生するボイラ、前記蒸気の過熱度を更に上げて過熱蒸気を生成する外部過熱器、及び前記過熱蒸気により駆動されるタービンを有する発電設備と、食品廃棄物からエタノールを製造するバイオエタノール製造設備とを備えた廃棄物処理システムであって、
前記バイオエタノール製造設備は、前記食品廃棄物を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、
前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備え、
前記エタノール液が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給される。
【0007】
第1の発明に係る廃棄物処理システムにおいて、前記バイオエタノール製造設備は、更に前記水溶液分を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、
前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備え、
前記エタノール液が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給されてもよい。
【0008】
また、第1、第2の発明に係る廃棄物処理システムにおいて、前記エタノール液のエタノール濃度が85〜95wt%であってもよい。
【0009】
第1、第2の発明に係る廃棄物処理システムにおいて、前記ごみ処理設備は前記ごみを焼却又は溶融する炉を有し、前記固形分を前記炉にて処理することができる。
【0010】
第1、第2の発明に係る廃棄物処理システムにおいて、前記外部過熱器から出た排ガスを前記ボイラに送出し、廃熱を回収してもよい。
【0011】
また、第1発明に係る廃棄物処理システムにおいて、電力の売電料金が予め決められた金額よりも高い時間帯に前記油分及び前記エタノール液のうち少なくとも一方を熱源として前記外部過熱器を稼動させることも可能である。
【0012】
第1発明に係る廃棄物処理システムにおいて、前記油分はその温度が30℃以上60℃未満に維持された状態で、前記外部過熱器まで移送されることが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第3の発明に係る廃棄物処理方法は、ごみを焼却処理又は溶融処理する工程Aと、前記工程Aにより発生した熱を利用して蒸気を発生させる工程Bと、廃棄物中の食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する工程Cと、前記糖化液から油分を分離する工程Dとを含む廃棄物の処理方法であって、
前記油分を熱源として前記工程Bにて発生した前記蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程Eと、
前記過熱蒸気を利用して発電機を駆動する工程Fとを含む。
【0014】
前記目的に沿う第4の発明に係る廃棄物処理方法は、ごみを焼却処理又は溶融処理する工程Aと、前記工程Aにより発生した熱を利用して蒸気を発生させる工程Bと、廃棄物中の食品廃棄物を発酵させてエタノール発酵液を生成する工程Gと、前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する工程Hとを含む廃棄物の処理方法であって、
前記エタノール液を熱源として前記工程Bにて発生した前記蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程Iと、
前記過熱蒸気を利用して発電機を駆動する工程Fとを含む。
【0015】
前記目的に沿う第5の発明に係るバイオエタノール製造設備は、廃棄物中の食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化装置と、前記糖化液から油分及び水溶液分を分離する分離装置と、前記水溶液分を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備えたバイオエタノール製造設備であって、
前記油分及び前記エタノール液のうち少なくとも一方が、発電設備のタービンを回転させる過熱蒸気を生成する外部過熱器の燃料として使用される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、及び請求項1に従属する請求項3〜8記載の廃棄物処理システムにおいては、バイオエタノール製造設備にて生成された油分を利用して過熱蒸気を生成することにより、本発明の構成をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【0017】
請求項2、及び請求項2に従属する請求項4〜6記載の廃棄物処理システムにおいては、バイオエタノール製造設備にて生成されたエタノールを利用して過熱蒸気を生成することにより、本発明の構成をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【0018】
特に、請求項3記載の廃棄物処理システムにおいては、バイオエタノール製造設備にて生成されたエタノールを利用して過熱蒸気を生成することにより、本発明の構成をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【0019】
請求項4記載の廃棄物処理システムにおいては、エタノール濃度85〜95wt%のエタノール液が外部過熱器にて使用され、無水化装置を必ずしも必要としないので、設備に必要なコスト及びランニングコストが低減される。
【0020】
請求項5記載の廃棄物処理システムにおいては、バイオエタノール製造設備にて排出される固形分を焼却処理又は溶融処理することが可能である。
【0021】
請求項6記載の廃棄物処理システムにおいては、外部過熱器の廃熱がボイラにて回収されるので、熱の有効利用を図ることが可能である。
【0022】
請求項7記載の廃棄物処理システムにおいては、売電料金の高い時間帯に、回収した油分及び生成したエタノールのうち少なくとも一方を熱源として外部過熱器を稼動させるため、ランニングコストをより低減させることが可能である。
【0023】
請求項8記載の廃棄物処理システムにおいては、油分が保温された状態で移送されるため、油分を凝固させることなく移送することが可能である。
【0024】
請求項9記載の廃棄物処理方法においては、食品廃棄物から得られた油分を熱源として過熱蒸気を生成し、この過熱蒸気を利用して発電機を駆動することにより、本発明の方法をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【0025】
請求項10記載の廃棄物処理方法においては、食品廃棄物から得られたエタノール液を熱源として過熱蒸気を生成し、この過熱蒸気を利用して発電機を駆動することにより、本発明の方法をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【0026】
請求項11記載のバイオエタノール製造設備においては、回収した油分又は生成したエタノール液を熱源として過熱蒸気が生成され、この過熱蒸気によりタービンが回転するので、本発明の構成をとらない場合よりも発電効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る廃棄物処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係る廃棄物処理システム10は、図1に示すように、大きく分けてごみ処理設備11、発電設備12、及びバイオエタノール製造設備13を備えている。
【0029】
ごみ処理設備11は、溶融炉(又は焼却炉、いずれも炉の一例)21及び燃焼装置22を備え、可燃ごみを焼却する。
【0030】
溶融炉21では、可燃ごみが処理される。この処理過程においては、乾燥及び熱分解の過程で可燃性ガス(一酸化炭素、水素、及びメタン等)が発生する。
燃焼装置22は、溶融炉21で発生した可燃性ガスを燃焼させる。なお、燃焼装置22の燃焼室に着火するための燃料として、パイロット灯油が使用される。
【0031】
発電設備12は、ボイラ31、外部過熱器32、タービン33、及び復水器34を備えている。
ボイラ31は、燃焼装置22から出る高温の排ガス(廃熱)を利用して蒸気を発生させる。ボイラ31の配管の材質は、炭素鋼である。なお、この排ガスは、硫黄分や塩素分を含み、ボイラ31の配管に使用される炭素鋼を高温腐食させることが知られている。従って、蒸気温度は、例えば400℃よりも高い温度に加熱することができない。ボイラ31にて熱源として利用された排ガスは、排ガス洗浄装置35にて浄化され、大気に放出される。
【0032】
外部過熱器32は、ボイラ31で発生した蒸気を加熱する。外部過熱器32が蒸気の過熱度を更に上げることにより、より高い過熱度(熱量)を持った蒸気(過熱蒸気)が生成される。外部過熱器32は、食品廃棄物から得られる回収油(後述)を燃焼させて熱源とする第1のバーナ(不図示)及びエタノール(後述)を燃焼させて熱源とする第2のバーナ(不図示)を有している。外部過熱器32のケーシング部分には本体を冷却するための水管が通されている。
【0033】
タービン33は、タービン33の回転シャフトに接続された発電機(不図示)を駆動する。タービン33は外部過熱器32にて生成された過熱蒸気によって回転する。
復水器34は、タービン33から出た蒸気を凝縮させる。
【0034】
バイオエタノール製造設備13は、前処理装置41、糖化装置42、三相遠心分離装置(分離装置の一例)43、発酵装置44、蒸留装置45を備え、食品廃棄物を原料としてバイオエタノールを製造する。ここで、食品廃棄物には、家庭から出る生ゴミ(家庭系生ごみ)、食品工場から出る食品系産業廃棄物、流通段階で廃棄される廃食品(廃菓子、コンビニ等から回収された賞味期限切れの食材、レストラン等から排出される食べ残し)、給食や病院等での廃食材、需給調整や生産の段階で糖度を上げる為に除去された果実(事業系生ごみ)など、人間が食用に生産、加工、調理及び飲食する段階で発生したあらゆる廃棄物が含まれる。
【0035】
前処理装置41は、食品廃棄物を破砕すると共に選別し、プラスチックやビニール等の夾雑物を取り除く。
【0036】
糖化装置42は、夾雑物が取り除かれた食品廃棄物にグリコールアミラーゼなどの酵素を添加して約60℃に保持することにより、食品廃棄物中のデンプンをブドウ糖にして水に溶ける状態にして糖化液を生成する。糖化装置42には、図示しない振動篩機又はスクリュープレス等のスクリーンが設けられており、糖化液に含まれた繊維分、プラスチック、紙、袋、割り箸、金属及び甲殻類などの夾雑物が残さとして取り除かれる。
このように、糖化装置42にて処理することによって、食品廃棄物中の油分の回収量を増やすことができる。例えば、天ぷら衣に付着した油分は、天ぷら衣のデンプン質が加水分解され、糖化液中に液状の形態で放出されるため、油分の回収量が増える。
【0037】
三相遠心分離装置43は、糖化液を油分、水溶液分、及び固形分の3相に分離する。分離された油分は外部過熱器32に燃料として供給される。ここで、分離直後の油分の温度は60℃である。ところが油分は、移送途中で温度が低下し、30℃未満になると凝固するため、移送管での移送は困難となる。そのため、三相遠心分離装置43の後段に油分を一時的に貯留するバッファ槽(不図示)を設け、そのバッファ槽にて油分の温度を維持し、蒸気トレース等で保温された移送管を介して外部過熱器32へ移送する。この蒸気度トレースは、例えば、移送管の外周にスチーム管を巻くことによって実現できる。このようにして、三相遠心分離装置43から外部過熱器32へ移送される間、流動性を保つため、油分の温度は30℃以上60℃未満、好ましくは30℃以上35℃未満に維持される。分離された油分は、低硫黄及び低塩化物のA重油相当の品質である。
一方、分離された水溶液分は、糖液として発酵装置44に送出される。固形分は、残さとして溶融炉21に送出され、処理される。
【0038】
発酵装置44は、三相遠心分離装置43で得られた糖液に酵母を添加し、例えば連続発酵によりエタノール発酵液を生成する。
【0039】
蒸留装置45は、発酵装置44にて生成されたエタノール発酵液のエタノールを蒸留する。蒸留されたエタノールのエタノール濃度は、例えば85〜95wt%である。この蒸留されたエタノールは、外部過熱器32に燃料として供給される。なお、蒸留の過程で蒸留廃液が生成される。この蒸留廃液は、一部は糖化装置42において使用する水として再利用され、残りは燃焼装置22で焼却される。或いは、蒸留廃液は、廃水処理装置(不図示)にて無害化処理された後、下水等に放流される。
【0040】
次に、廃棄物処理システム10を使用した廃棄物処理方法について説明する。
ごみ処理設備11では、例えば溶融炉21に廃棄物(可燃ごみ)が投入されると、可燃性ガスが発生する。このガスは燃焼装置22で燃焼され、その際に生成される高温のガスは、ボイラ31の熱源となる(以上、工程A)。なお、焼却炉に廃棄物が投入される場合は、廃棄物が直接燃焼され、この燃焼の際に生成される高温ガスが、ボイラ31の熱源となる。
【0041】
バイオエタノール製造設備13では、廃棄物中の食品廃棄物が前処理装置41にて前処理される。前処理装置41では食品廃棄物からプラスチックを主体とする夾雑物が除去される。この夾雑物は、溶融炉21へ送られる。夾雑物が取り除かれた食品廃棄物は、糖化装置42にて酵素により糖化され、糖化液が生成される(工程C)。生成された糖化液は、三相遠心分離装置43にて油分、水溶液分、及び固形分の三相に分離される(工程D)。このうち、油分は回収油として外部過熱器32へ燃料として送出される。水溶液分は発酵装置44に送出される。固形分は、溶融炉21にて溶融処理(又は焼却炉にて焼却処理)される。発酵装置44では、酵母によりエタノール発酵液が生成される(工程G)。エタノール発酵液は、蒸留装置45で蒸留され、エタノール液が生成される(工程H)。生成されたエタノール液は、外部過熱器32へ燃料として送出される。
なお、バイオエタノール製造設備13では、更に無水化装置(不図示)を設け、この無水化装置に蒸留装置45で生成されたエタノール液の一部を導入してもよい。無水化装置は、膜分離、共沸、及びPSA法等により蒸留装置45で濃縮されたエタノール液から水分を分離し、無水エタノールを生成する(無水化工程)。精製した無水エタノールは、ETBEやE3ガソリンとして利用することができる。
【0042】
発電設備12では、燃焼装置22から発生した熱が利用されて、ボイラ31にて蒸気が発生する(工程B)。なお、一般に、燃焼装置22から出る排ガスには、硫黄や塩化物、重金属等の腐食性ダストが多く含まれる。そこで、ボイラ31の腐食を回避するために、ボイラ31にて熱回収するための排ガスの温度は、400℃以下に抑える必要がある。
本実施の形態においては、ボイラ31にて発生した蒸気は、外部過熱器32に導入されて加熱され、更に過熱度が大きくなった過熱蒸気が生成される(油分を熱源として工程Bにて発生した蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程を工程Eという。エタノール液を熱源として工程Bにて発生した蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程を工程Iという。)。この過熱蒸気の温度は、例えば430℃である。
ここで、外部過熱器32の熱源は、三相遠心分離装置43にて分離された回収油、及び蒸留装置45で蒸留されたエタノールである。このように、従来は有効利用されていなかった回収油をそのまま外部過熱器32の燃料として使用することができる。
特に、回収油及びエタノールは、燃焼装置22から出る排ガスと比べて硫黄や塩化物の含有量が少ない。そのため外部過熱器32内部の配管の材質をステンレス鋼に比べて安価な炭素鋼としても、この配管が高温腐食により劣化する心配はなく、400℃を超えて蒸気を加熱することが可能である。従って、ボイラ31より送られる蒸気(例えば400℃、40ata)を加熱して昇温することができる。その結果、より高い過熱度(熱量)を持った過熱蒸気が生成され、これをタービン33に送ることで、発電効率が例えば1〜3%向上することが見込まれる。
【0043】
なお、外部過熱器32からは、例えば600℃の排ガスが出る。この排ガスをボイラ31へ送出し、廃熱回収することで熱の有効利用を図ることができる。また、この排ガスを排ガス洗浄装置35で処理することもできる。
【0044】
その後、外部過熱器32で生成された過熱蒸気は、タービン33を回転させる。これにより図示しない発電機が駆動され、電力が生成される(工程F)。タービン33から出た蒸気は復水器34にて凝縮し、ボイラ31に送出されて循環する。
【0045】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述のそれぞれ実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
特に、外部過熱器32は、第1及び第2のバーナを有していたが、一方のみを有していてもよい。即ち、回収油及びエタノールのうち少なくとも一方が熱源であればよい。
【0046】
また、発電設備12は、電力会社に対する売電料金が予め決められた金額よりも高い時間帯(例えば、深夜よりも売電料金の高い8時から22時)に、回収した油分及び生成したエタノールのうち少なくとも一方を熱源として外部過熱器32を稼動させ、発電効率を向上させてもよい。このような運転方法にすることで、より売電による収入を増大させることができ、廃棄物処理システム10のランニングコストをより低減させることができる。この場合において、バイオエタノール製造設備は常時稼動させ、外部過熱器32を稼動させない時間帯に生成されたバイオエタノール及び回収油は、単位容積当たりの熱量が大きい液体燃料であり、バッファ槽に貯留しておけばよい。なお、売電料金が予め決められた金額よりも高い時間帯にのみ、回収した油分及び生成したエタノールのうち少なくとも一方を熱源として外部過熱器32を稼動させてもよい。
また、炉として、溶融炉の代わりに焼却炉を用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
10:廃棄物処理システム、11:ごみ処理設備、12:発電設備、13:バイオエタノール製造設備、21:溶融炉、22:燃焼装置、31:ボイラ、32:外部過熱器、33:タービン、34:復水器、35:排ガス洗浄装置、41:前処理装置、42:糖化装置、43:三相遠心分離装置、44:発酵装置、45:蒸留装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを焼却処理又は溶融処理するごみ処理設備と、前記ごみ処理設備にて発生した廃熱を利用して蒸気を発生するボイラ、前記蒸気の過熱度を更に上げて過熱蒸気を生成する外部過熱器、及び前記過熱蒸気により駆動されるタービンを有する発電設備と、食品廃棄物からエタノールを製造するバイオエタノール製造設備とを備えた廃棄物処理システムであって、
前記バイオエタノール製造設備は、前記食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化装置と、
前記糖化液を油分、水溶液分、及び固形分に分離する分離装置とを備え、
前記油分が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項2】
ごみを焼却処理又は溶融処理するごみ処理設備と、前記ごみ処理設備にて発生した廃熱を利用して蒸気を発生するボイラ、前記蒸気の過熱度を更に上げて過熱蒸気を生成する外部過熱器、及び前記過熱蒸気により駆動されるタービンを有する発電設備と、食品廃棄物からエタノールを製造するバイオエタノール製造設備とを備えた廃棄物処理システムであって、
前記バイオエタノール製造設備は、前記食品廃棄物を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、
前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備え、
前記エタノール液が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項3】
請求項1記載の廃棄物処理システムにおいて、前記バイオエタノール製造設備は、更に前記水溶液分を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、
前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備え、
前記エタノール液が、前記外部過熱器の燃料として該外部過熱器に供給されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の廃棄物処理システムにおいて、前記エタノール液のエタノール濃度が85〜95wt%であることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃棄物処理システムにおいて、前記ごみ処理設備は前記ごみを焼却又は溶融する炉を有し、
前記固形分が前記炉にて処理されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃棄物処理システムにおいて、前記外部過熱器から出た排ガスが前記ボイラに送出され、廃熱回収されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項7】
請求項3記載の廃棄物処理システムにおいて、電力の売電料金が予め決められた金額よりも高い時間帯に前記油分及び前記エタノール液のうち少なくとも一方を熱源として前記外部過熱器を稼動させることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項8】
請求項1、3、7のいずれか1項に記載の廃棄物処理システムにおいて、前記油分はその温度が30℃以上60℃未満に維持された状態で、前記外部過熱器まで移送されることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項9】
ごみを焼却処理又は溶融処理する工程Aと、前記工程Aにより発生した熱を利用して蒸気を発生させる工程Bと、廃棄物中の食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する工程Cと、前記糖化液から油分を分離する工程Dとを含む廃棄物の処理方法であって、
前記油分を熱源として前記工程Bにて発生した前記蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程Eと、
前記過熱蒸気を利用して発電機を駆動する工程Fとを含むことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項10】
ごみを焼却処理又は溶融処理する工程Aと、前記工程Aにより発生した熱を利用して蒸気を発生させる工程Bと、廃棄物中の食品廃棄物を発酵させてエタノール発酵液を生成する工程Gと、前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する工程Hとを含む廃棄物の処理方法であって、
前記エタノール液を熱源として前記工程Bにて発生した前記蒸気の過熱度を更に上げ、過熱蒸気を生成する工程Iと、
前記過熱蒸気を利用して発電機を駆動する工程Fとを含むことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項11】
廃棄物中の食品廃棄物を糖化して糖化液を生成する糖化装置と、前記糖化液から油分及び水溶液分を分離する分離装置と、前記水溶液分を発酵させてエタノール発酵液を生成する発酵装置と、前記エタノール発酵液を蒸留してエタノール液を生成する蒸留装置とを備えたバイオエタノール製造設備であって、
前記油分及び前記エタノール液のうち少なくとも一方が、発電設備のタービンを回転させる過熱蒸気を生成する外部過熱器の燃料として使用されることを特徴とするバイオエタノール製造設備。


【図1】
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【公開番号】特開2012−2424(P2012−2424A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137387(P2010−137387)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BDF
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】