説明

廃棄物運搬車両の位置監視システム

【課題】
廃棄物を運搬する車両の走行位置を監視し、所定の走行可能領域を逸脱して走行した場合には、予め定められた者に対してその通知を行う、廃棄物運搬車両の位置監視システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
車両の走行可能領域を算出する領域算出手段と、走行可能領域を記憶する領域記憶手段と、車両の位置情報を受信する位置情報受信手段と、走行可能領域を車両が逸脱しているか否かを判定する位置情報比較手段と、車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、管理者端末と排出事業者端末とに少なくとも通知を送信する異常通知手段と、を有しており、領域算出手段は、所定の2地点の座標に基づいてその2地点間の直線式Aを算出し、直線式Aからの許容可能範囲ddにより構成される範囲を走行可能領域として設定する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を運搬する車両の走行位置を監視し、所定の走行可能領域を逸脱して走行した場合には、予め定められた者に対してその通知を行う、廃棄物運搬車両の位置監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物などの廃棄物は、環境保護などの目的から収集場所から処分場まで適正な管理が求められている。適正管理を実現する為には、収集場所、処分場などにおける適正な処分が求められる他、運搬途中においても適正な管理が求められ、例えば運搬途中で不法投棄したりしないように管理しなければならない。
【0003】
その為、下記特許文献1乃至特許文献3には、廃棄物を運搬する車両などの位置情報をGPS等により取得し、その位置を、予め定められた走行経路と比較し、予め定められた走行経路又は所定領域を逸脱した場合に、警告などがなされる発明が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−142609号公報
【特許文献2】特開2003−44576号公報
【特許文献3】特開2003−312808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1乃至特許文献3に開示されたような従来の走行経路の監視システムでは、予め定められた走行経路又は所定領域を逸脱した場合に警告が行われる点では有用である。特に走行経路に限定せずに、予め定められた範囲を逸脱した場合に警告を行う特許文献1に開示のシステムでは、走行経路に縛られることがないので、廃棄物を運搬する車両の運転者の自由度が高まるので、有用である。
【0006】
しかし特許文献1に開示のシステムでは、単に所定領域を定めているだけであって、その所定領域は固定範囲であると考えられる。即ち、走行しても良い領域は、場所や地域、道路事情、交通渋滞の状況など様々な地域特性によって変化するべきなのに、単に最初から定めた固定領域とするのでは、地域特性を反映していない。
【0007】
また仮に車両が所定範囲を逸脱した場合には、管理者(運搬事業者)のみに通知が行われるだけである。これでは管理者(運搬事業者)から不法投棄等の指示を受けたことによって、走行経路が所定範囲を逸脱した場合には、従来の特許文献1に記載の発明を用いたシステムでは何らの有益性を発揮しない。つまり、管理者が主体的に不法投棄に関与している場合には、特許文献1の発明は効果があまりない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑み、廃棄物を運搬する車両の位置をGPSにより監視し、所定の走行可能領域を逸脱した場合には予め定められた者に対して通知を行うと共に、その所定の走行可能領域を固定とするのではなく、より効率的な所定範囲とした、廃棄物運搬車両の位置監視システムを発明した。
【0009】
また所定範囲を逸脱した場合の警告も、管理者のみならず、排出事業者にも通知を行う廃棄物運搬車両の位置監視システムを発明した。
【0010】
請求項1の発明は、廃棄物を運搬する車両の位置を監視する廃棄物運搬車両の位置監視システムであって、前記廃棄物運搬車両の位置監視システムは、前記車両の走行可能領域を算出する領域算出手段と、前記算出した走行可能領域を記憶する領域記憶手段と、前記車両の位置情報を受信する位置情報受信手段と、前記受信した位置情報に基づいて、前記領域記憶手段に記憶した走行可能領域を前記車両が逸脱しているか否かを判定する位置情報比較手段と、前記位置情報比較手段において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、前記監視を行っている管理者が利用する管理者端末と、前記廃棄物の排出事業者が利用する排出事業者端末とに少なくとも通知を送信する異常通知手段と、を有しており、前記領域算出手段は、所定の2地点の座標に基づいてその2地点間の直線式Aを算出し、前記直線式Aからの許容可能範囲ddにより構成される範囲を走行可能領域として設定する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0011】
本発明のように構成することで、走行可能領域が単純に固定値として定められた従来技術とは異なり、効率的な走行可能領域を定めることが出来る。2地点間の最短距離はその直線であって、そこから許容可能範囲によって構成される領域が最も効率的な走行可能領域となるからである。
【0012】
更に、車両が走行可能領域を逸脱した場合に、従来のように車両を監視している管理者だけに通知を行うのではなく、廃棄物の排出事業者にも通知を行うことで、管理者と運転者が共謀して行う不法投棄などを防ぐことが出来る。これは廃棄物の排出事業者にも管理責任が求められることに対して、非常に有益である。なぜならば排出事業者にも通知が行われることによって、運転者が走行可能領域を逸脱して不法投棄を行うことを防止することになるし、運転者と管理者と共謀した場合であっても排出事業者が走行可能領域を逸脱したことを把握しているのでその説明を管理者や運転者に求めることが出来るからである。
【0013】
請求項2の発明は、前記走行可能領域は、前記直線式Aから前記許容可能範囲の距離ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、前記2地点の各々を中心とする半径ddの半円と、によって構成される領域である、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0014】
上述における走行可能領域は、本発明のように構成するのが最も良い。単に直線式A’及び直線式A’’によって構成される矩形領域とせずに、2地点を中心として半径ddの半円の領域も走行可能領域としたのは、実際の道路では、一時的に逆方面に走行することもあり得るからである。
【0015】
請求項3の発明は、前記位置情報比較手段は、前記受信した車両の位置情報を所定の座標系の座標Tに変換し、変換後の座標が、前記走行可能領域の範囲内に存在しない場合には前記車両が逸脱していると判定する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0016】
GPSによって得られる位置情報は緯度経度の情報である。そのままだと上述の座標系における走行可能領域と比較することが困難である。そこで本発明のように車両の位置情報を上述の座標系の座標に変換した後に比較を行うと良い。
【0017】
請求項4の発明は、前記領域算出手段は、前記所定の2地点間の運搬が初めての場合には、前記許容可能範囲の初期値として入力を受け付けた値を前記許容可能範囲ddの値として設定し、前記所定の2地点間の運搬が2度目以降の場合には、それ以前の運搬において、前記領域算出手段が算出した直線式Aからの前記車両位置の距離dgのうち、前記許容可能範囲dd以下の値で最も大きいdgを、前記許容可能範囲ddとして設定する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0018】
許容可能範囲は、一番最初に2地点間を走行する場合には初期値として入力を受け付けると良いが、2度目以降の走行の場合には、過去にその2地点間を走行した際に、直線式Aから最も離れた距離を許容可能範囲とすると良い。初期値は通常は、想定される値よりも大きい値を取ることが一般的であるので、実際の走行によって、それを修正し、適切な許容可能範囲を設定することが出来る。尚、この新たに設定される許容可能範囲は、従来の許容可能範囲ddよりも小さいことが好ましい。許容可能範囲は出来るだけ狭い方が不法投棄の防止に繋がるからである。
【0019】
請求項5の発明は、前記異常通知手段は、前記位置情報比較手段において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、更に、前記車両の運転者が利用する運転者端末に対しても通知を送信する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0020】
管理者、排出事業者のみならず運転者に対しても、走行可能領域を逸脱していることを通知することで、運転者に対して監視されていることの自覚を促すことが出来、不法投棄の抑止力となる。
【0021】
請求項6の発明は、前記異常通知手段は、前記異常通知を行った場合に、車両の位置、時刻を少なくとも記憶しておき、前記廃棄物運搬車両の位置監視システムは、更に、前記車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する運搬完了報告手段を有しており、前記運搬完了報告手段は、前記異常通知手段で記憶した、前記異常通知を行った場合の車両の位置、時刻を前記報告書に記載する、廃棄物運搬車両の位置監視システムである。
【0022】
このように運搬完了の報告書には異常通知があったことを証拠として記載しておくと、報告書の信頼性を向上させることが出来る。
【0023】
請求項7の発明は、情報を記憶する記憶装置とプログラムの演算処理を実行する演算装置とを少なくとも有するコンピュータ端末で実行する廃棄物運搬車両の位置監視プログラムであって、前記廃物運搬車両の位置監視プログラムは、前記演算装置に読み込まれる領域算出機能と位置情報受信機能と位置情報比較機能と異常通知機能とを少なくとも有しており、前記領域算出機能は、所定の2地点の座標に基づいてその2地点間の直線式Aを算出し、前記直線式Aからの許容可能範囲ddにより構成される範囲を、前記車両の走行可能領域として算出して前記記憶装置に記憶させ、前記位置情報受信機能は、前記車両の位置情報を受信し、前記位置情報比較機能は、前記受信した位置情報に基づいて、前記記憶装置に記憶した走行可能領域を前記車両が逸脱しているか否かを判定し、前記異常通知機能は、前記位置情報比較機能において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、前記監視を行っている管理者が利用する管理者端末と、前記廃棄物の排出事業者が利用する排出事業者端末とに少なくとも通知を送信する、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0024】
上述の廃棄物運搬車両の位置監視システムをコンピュータ端末で実現するプログラムは、本発明のように構成することが出来る。
【0025】
請求項8の発明は、前記走行可能領域は、前記直線式Aから前記許容可能範囲の距離ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、前記2地点の各々を中心とする半径ddの半円と、によって構成される領域である、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0026】
上述における走行可能領域は、本発明のように構成するのが最も良い。単に直線式A’及び直線式A’’によって構成される矩形領域とせずに、2地点を中心として半径ddの半円の領域も走行可能領域としたのは、実際の道路では、一時的に逆方面に走行することもあり得るからである。
【0027】
請求項9の発明は、前記位置情報比較機能は、前記受信した車両の位置情報を所定の座標系の座標Tに変換し、変換後の座標が、前記走行可能領域の範囲内に存在しない場合には前記車両が逸脱していると判定する、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0028】
GPSによって得られる位置情報は緯度経度の情報である。そのままだと上述の座標系における走行可能領域と比較することが困難である。そこで本発明のように車両の位置情報を上述の座標系の座標に変換した後に比較を行うと良い。
【0029】
請求項10の発明は、前記領域算出機能は、前記所定の2地点間の運搬が初めての場合には、前記許容可能範囲の初期値として入力を受け付けた値を前記許容可能範囲ddの値として設定し、前記所定の2地点間の運搬が2度目以降の場合には、それ以前の運搬において、前記領域算出手段が算出した直線式Aからの前記車両位置の距離dgのうち、前記許容可能範囲dd以下の値で最も大きいdgを、前記許容可能範囲ddとして設定する、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0030】
許容可能範囲は、一番最初に2地点間を走行する場合には初期値として入力を受け付けると良いが、2度目以降の走行の場合には、過去にその2地点間を走行した際に、直線式Aから最も離れた距離を許容可能範囲とすると良い。初期値は通常は、想定される値よりも大きい値を取ることが一般的であるので、実際の走行によって、それを修正し、適切な許容可能範囲を設定することが出来る。尚、この新たに設定される許容可能範囲は、従来の許容可能範囲ddよりも小さいことが好ましい。許容可能範囲は出来るだけ狭い方が不法投棄の防止に繋がるからである。
【0031】
請求項11の発明は、前記異常通知機能は、前記位置情報比較機能において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、更に、前記車両の運転者が利用する運転者端末に対しても通知を送信する、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0032】
管理者、排出事業者のみならず運転者に対しても、走行可能領域を逸脱していることを通知することで、運転者に対して監視されていることの自覚を促すことが出来、不法投棄の抑止力となる。
【0033】
請求項12の発明は、前記異常通知機能は、前記異常通知を行った場合に、少なくとも車両の位置、時刻を前記記憶装置に記憶しておき、前記廃棄物運搬車両の位置監視プログラムは、更に、前記車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する運搬完了報告機能を有しており、前記運搬完了報告機能は、前記記憶装置に記憶した、前記異常通知を行った場合の車両の位置、時刻を前記報告書に記載する、廃棄物運搬車両の位置監視プログラムである。
【0034】
このように運搬完了の報告書には異常通知があったことを証拠として記載しておくと、報告書の信頼性を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0035】
本発明のような構成とすることによって、単に固定化された走行可能領域とするのではなく、効率的な走行可能領域を設定することが出来る。また通知が管理者のみならず、排出事業者や運転者にも行われるので、管理者からの指示に基づいた車両の運転者による不法投棄を防止することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の概念図を図1に示す。図1では、排出事業者から収集した廃棄物を運搬する車両の位置情報を逐次、センターサーバに送信し、処理業者まで運搬し、運搬終了後、運搬完了報告を排出事業者に渡すことを示している。
【0037】
本発明のシステム構成の一例を図2のシステム構成図に、本発明の廃棄物運搬車両の位置監視システム1(以下、「位置監視システム1」と呼ぶ)を実行するセンターサーバ(以下、コンピュータ端末と呼ぶ。尚、サーバの他、通常のコンピュータも含まれる)のハードウェア構成図を図3に示す。
【0038】
図3に示すコンピュータ端末では、CPUなどの演算装置21、RAMやハードディスクなどの記憶措置22を少なくとも有する。またこのコンピュータ端末には、更にキーボードやマウスなどの入力装置20、ディスプレイなどの表示装置24、プリンタなどの印刷装置25、他のコンピュータ端末や携帯端末とインターネット等のネットワークを介して情報の送受信を行う通信装置23を備えている。
【0039】
位置監視システム1を実現するプログラムは、当該コンピュータ端末のハードディスクなどの記憶措置22に記憶されており、所定の操作が行われることによってそれがRAMなどに読み込まれ、その機能(手段)を演算装置21で実行することで、位置監視システム1の処理が行われる。これらの処理に用いる情報は、データベースやデータファイルなどの各種の保存形式でRAMやハードディスクなどの記憶措置22に記憶され、その処理の際に適宜読み出されることで処理が行われる。また処理結果もRAMやハードディスクなどの記憶措置22に書き出され、適宜記憶される。本発明における各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上或いは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0040】
位置監視システム1は、領域算出手段2と領域記憶手段3と位置情報受信手段4と位置情報比較手段5と異常通知手段6と運搬完了報告作成手段7と地図情報記憶手段8とを有している。
【0041】
領域算出手段2は、所定の2地点間の走行可能領域を算出する手段であって、ここで算出した領域を車両が逸脱した場合には、異常通知が行われる。走行可能領域を算出する2地点は任意の2地点であって構わないが、好適には排出事業者の位置と処理業者の位置を含む2地点である。
【0042】
この領域は以下のように算出することが出来る。排出事業者の座標上の位置Sを(x1,y1)、処理業者の座標上の位置Eを(x2,y2)とした場合、SE間の直線式Aを算出する。これが2地点間の最短距離となる。そして直線式Aを中心として、車両が直線式Aから逸脱して移動することを許容する許容可能範囲ddにより構成される範囲が、車両の走行可能領域となる。尚、直線式Aを数式で示すと数1のようになる。またこのようにして設定された領域の概念図を図6に示す。
【0043】
つまり走行可能領域は、数1によって示される直線式Aから許容範囲ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、位置S及び位置Eを中心として半径ddの半円によって構成される領域となる。この領域は、地図上の予め定められた地点、例えば沖縄の最南端を原点O(0,0)として表される座標系である。尚、単に直線式A’及び直線式A’’によって構成される矩形領域としなかったのは、位置Sから位置Eに向かう際に、実際の道路では、走行ルートとして一時的に逆方面に向かうこともあり得るからである。その為に、位置S及び位置Eを中心とした半径ddの半円の領域も走行可能領域としている。
【数1】


(但しx1≦x≦x2,y1≦y≦y2)
【0044】
尚、直線式Aからの許容範囲ddは、SE間の運搬が初めての場合には予め定められた値(例えば、1km、3km、5km、10km、30km、50km)の入力を入力装置20から受け付けてその値とするが、2度目以降の場合には、それ以前にSE間を走行した際の、後述する値dgの最大値dgmaxをddとする。
【0045】
領域記憶手段3は、領域算出手段2で算出した領域(直線式A、許容範囲ddにより構成される走行可能領域の情報)を記憶する手段である。
【0046】
位置情報受信手段4は、廃棄物を運搬する車両の位置情報を受信する手段である。車両の位置情報は、車両に設置されたGPS受信機から受信したものであっても良いし、車両の運転者が利用する携帯端末(運転者端末11)から受信したものであっても良い。以下の説明では、これらを総称して車両の位置情報と称する。
【0047】
位置情報比較手段5は、位置情報受信手段4で受信した車両の位置情報(緯度、経度の情報)を、上述の座標系の座標に変換し、変換された座標が、領域記憶手段3に記憶する走行可能領域内に位置するか否かを判定する手段である。
【0048】
異常通知手段6は、位置情報比較手段5における判定の結果、車両の位置が当該領域の外に位置すると判定した場合には、管理者端末9、排出事業者端末10、運転者端末11に対して領域外走行を行っていることを通知する手段である。この通知は、予め設定された管理者が利用する電子メールアドレス、排出事業者が利用する電子メールアドレス、運転者が利用する電子メールアドレスに対して電子メールにより行われることが好ましい。また異常通知があった場合には、その位置、時刻、通知先を記憶しておく。
【0049】
運搬完了報告作成手段7は、車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する手段である。運搬が完了したことは、所定の操作により行われても良いし、位置情報受信手段4で受信した位置情報が処分業者の位置情報と一致した、或いは所定範囲内になったことをもって自動的に判定しても良い。また運搬途中に異常通知が行われた場合には、その位置、時刻、通知先を併せて記載すると良い。またこの報告書は、電子メールなどによって排出事業者宛に送信されても良いし、印刷装置25により紙媒体に印刷され、排出事業者に郵送されても良い。
【0050】
地図情報記憶手段8は、車両が走行する周辺の地図情報と、当該座標系における主要地点(例えば排出事業者、処分業者)の座標とを記憶する手段である。
【実施例1】
【0051】
次に本発明の位置監視システム1の処理プロセスの一例を図4及び図5のフローチャートを用いて説明する。まず管理者は、管理者端末9から、廃棄物を運搬する車両の作業指示、つまりどの排出事業者で廃棄物を収集し、どの処分業者へ廃棄物を運搬するかを入力しておく。この廃棄物事業者、処分業者に関する情報(位置情報、座標情報など)は予め登録されているとする。
【0052】
このようにして入力された排出事業者から処分業者までの領域を、領域算出手段2が算出する(S100)。この際に、排出事業者から処分業者までの運搬が初めての場合には、領域算出手段2で算出するのに用いる許容可能範囲ddを任意の値で設定し、初めてでない場合には、過去に走行した際の、後述する値dgの最大値dgmaxをddとする。
【0053】
この領域は以下のように算出することが出来る。排出事業者の座標上の位置Sを(x1,y1)、処理業者の座標上の位置Eを(x2,y2)とした場合、SE間の直線式Aを算出する。これが2地点間の最短距離となる。そして直線式Aを中心として、車両が直線式Aから逸脱して移動することを許容する範囲ddにより構成される範囲が、車両の移動可能領域となる。尚、直線式Aを数式で示すと数2のようになる。またこのようにして設定された領域の概念図を図6に示す。
【0054】
つまり走行可能領域は、数2によって示される直線式Aから許容範囲ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、位置S及び位置Eを中心として半径ddの半円によって構成される領域となる。この領域は、地図上の予め定められた地点、例えば沖縄の最南端を原点O(0,0)として表される座標系である。また所定の地域しか車両が走行しないことが事前に判明している場合には、その走行する範囲のうちの最大領域を地図上の座標系とし、そのうち左隅を原点O(0,0)として座標系で表しても良い。
【数2】


(但しx1≦x≦x2,y1≦y≦y2)
【0055】
S100で算出した走行可能領域は、領域記憶手段3に記憶される。
【0056】
このようにして、車両の走行可能領域を算出後、車両は排出事業者に赴いて廃棄物を収集し、処分業者までの運搬を開始する(S110)。この運搬の間、定期的に車両の位置情報を位置情報受信手段4が受信する(S120)。
【0057】
S120で車両の位置情報を受信すると、位置情報比較手段5は、当該車両が走行可能領域を逸脱していないかを判定する(S130)。位置情報比較手段5における、この判定は以下のように行われる。
【0058】
まず位置情報比較手段5は、位置情報受信手段4で受信した車両の位置情報(緯度、経度の情報)を、上述の座標系の座標に変換する(S200)。変換後の車両の座標Tを(xg,yg)とする。そしてこの座標TがS100で算出した走行可能領域内に存在するか否かを判定する。
【0059】
具体的には、座標Tを通る直線式Aの垂線(直線式B)を位置情報比較手段5が算出する(S210)。この直線式Bは、数3のように表される。尚、直線式Aと直線式Bとの交点Cの座標を(xn,yn)とする。この状態を図7に示す。
【数3】

【0060】
次に交点Cの座標(xn,yn)を位置情報比較手段5は算出する(S220)。これは直線式Aと直線式Bとの交点を算出すればよいので、交点の座標Cは数4のように表される。
【数4】

【0061】
また座標Tと交点Cとの間の最短距離をdgとして、三角法によりdgを位置情報比較手段5は算出する(S230)。
【0062】
そしてS200で変換した座標Tが、S100で算出した走行可能領域内(直線式A’と、直線式A’’と、直線式A’及び直線式A’’と交わり、位置S及び位置Eを中心とする半径ddの半円と、によって構成される領域)に存在するか否かを判定する(S240)。領域内に存在する場合には走行可能領域を逸脱していないのでそのまま次の処理に進み、領域外に存在する場合には走行可能領域を逸脱しているとして判定する(S250)。
【0063】
更に、SE間におけるdgの最高値dgmax(但しdgmax≦dd)とS230で算出したdgとを比較し(S260)、dgmax<dgならばdgmaxをS230で算出したdgの値に置き換える(S270)。このような比較をすることで、領域可能範囲を超えないで、実際に走行したときの効率的な走行可能領域を算出することが出来る。そしてそのdgmaxを次回走行時のddとして設定すれば、次回以降の領域を最適なものとして算出することが出来る。
【0064】
このように位置情報比較手段5がS200からS250の処理の実行により判定した結果(S140)、領域の逸脱があることを判定した場合には、異常通知手段6が、管理者端末9、排出事業者端末10、運転者端末11に対して領域外走行を行っていることを通知する(S150)。この通知は、予め設定された管理者が利用する電子メールアドレス、排出事業者が利用する電子メールアドレス、運転者が利用する電子メールアドレスに対して電子メールにより行われることが好ましい。また異常通知があった場合には、その位置、時刻、通知先を記憶しておく。
【0065】
このように車両が廃棄物を運搬している間、位置情報を受信する毎に位置情報と走行可能領域とを比較する(S160)。そして車両が、車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する(S170)。運搬が完了したことは、所定の操作入力を受け付けたことにより行われても良いし、位置情報受信手段4で受信した位置情報が処分業者の位置情報と一致した、或いは所定範囲内になったことをもって自動的に判定しても良い。また運搬途中に異常通知が行われた場合には、その位置、時刻、通知先を併せて記載すると良い。またこの報告書は、電子メールなどによって排出事業者宛に送信されても良いし、印刷装置25により紙媒体に印刷され、排出事業者に郵送されても良い。
【実施例2】
【0066】
上述の実施例1では1つの排出事業者から1つの処分業者までの場合を説明したが、これらが複数あっても同様に実現できる。即ち2地点間の領域を各々算出し、その領域と位置情報との比較を行えばよい。この場合の概念図を図8に示す。
【0067】
図8の場合、排出事業者Aで廃棄物を収集した後、排出事業者B及び排出事業者Cで順次、廃棄物を収集後、処分業者Dで廃棄物を処分する場合を示す図である。この場合においても上述の実施例1の2地点間の処理を組み合わせればよい。具体的には、まず排出事業者Aを始点S1、排出事業者Bを終点E1として領域を領域可能範囲dd1で設定し、次に排出事業者Bを始点S2、排出事業者Cを終点E2として領域を領域可能範囲dd2で設定し、更に排出事業者Cを始点S3、処分業者Dを終点E3として領域を領域可能範囲dd3で設定する。このようにして設定された走行可能領域に対して、各々の地点間を運搬中の車両の位置情報と比較することで複数の地点が存在しても、運搬状況の監視を行うことが出来る。この際の領域可能範囲dd1、dd2、dd3は同じ値であっても良いし、異なる値としても良い。
【0068】
例えば運転者が排出事業者Aから排出事業者Bに移動し、排出事業者Bから排出事業者Cに更に移動する場合には、走行可能領域を変えなければならない。これは、車両の運転者から排出事業者Bについての作業が終了したことを運転者端末11から受信することで、位置情報比較手段5が比較対象とする走行可能領域を、排出事業者Aから排出事業者Bの走行可能領域から、排出事業者Bから排出事業者Cの走行可能領域に変更すればよい。尚、このように運転者端末11から作業が終了したことを受信する他、車両の位置情報が排出事業者Bと同一又は所定範囲内に位置したことによって、当該車両が排出事業者Bに到達したことを判定し、その判定によって走行可能領域を、排出事業者Aから排出事業者Bの走行可能領域から、排出事業者Bから排出事業者Cの走行可能領域に変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上述のような構成とすることによって、単に固定化された走行可能領域とするのではなく、効率的な走行可能領域を設定することが出来る。また通知が管理者のみならず、排出事業者や運転者にも行われるので、管理者からの指示に基づいた車両の運転者による不法投棄を防止することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の概念図である。
【図2】本発明の廃棄物運搬車両の位置監視システムのシステム構成図である。
【図3】本発明を実行するコンピュータ端末のハードウェア構成図である。
【図4】本発明の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【図5】位置情報と走行可能領域の比較の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【図6】2地点間の走行可能領域が設定された場合の概念図である。
【図7】走行可能領域と車両の位置情報の関係を示す概念図である。
【図8】複数地点間の走行可能領域が設定された場合の概念図である。
【符号の説明】
【0071】
1:廃棄物運搬車両の位置監視システム
2:領域算出手段
3:領域記憶手段
4:位置情報受信手段
5:位置情報比較手段
6:異常通知手段
7:運搬完了報告作成手段
8:地図情報記憶手段
9:管理者端末
10:排出事業者端末
11:運転者端末
20:入力装置
21:演算装置
22:記憶措置
23:通信装置
24:表示装置
25:印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を運搬する車両の位置を監視する廃棄物運搬車両の位置監視システムであって、
前記廃棄物運搬車両の位置監視システムは、
前記車両の走行可能領域を算出する領域算出手段と、
前記算出した走行可能領域を記憶する領域記憶手段と、
前記車両の位置情報を受信する位置情報受信手段と、
前記受信した位置情報に基づいて、前記領域記憶手段に記憶した走行可能領域を前記車両が逸脱しているか否かを判定する位置情報比較手段と、
前記位置情報比較手段において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、前記監視を行っている管理者が利用する管理者端末と、前記廃棄物の排出事業者が利用する排出事業者端末とに少なくとも通知を送信する異常通知手段と、
を有しており、
前記領域算出手段は、
所定の2地点の座標に基づいてその2地点間の直線式Aを算出し、前記直線式Aからの許容可能範囲ddにより構成される範囲を走行可能領域として設定する、
ことを特徴とする廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項2】
前記走行可能領域は、
前記直線式Aから前記許容可能範囲の距離ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、前記2地点の各々を中心とする半径ddの半円と、によって構成される領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項3】
前記位置情報比較手段は、
前記受信した車両の位置情報を所定の座標系の座標Tに変換し、変換後の座標が、前記走行可能領域の範囲内に存在しない場合には前記車両が逸脱していると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項4】
前記領域算出手段は、
前記所定の2地点間の運搬が初めての場合には、前記許容可能範囲の初期値として入力を受け付けた値を前記許容可能範囲ddの値として設定し、前記所定の2地点間の運搬が2度目以降の場合には、それ以前の運搬において、前記領域算出手段が算出した直線式Aからの前記車両位置の距離dgのうち、前記許容可能範囲dd以下の値で最も大きいdgを、前記許容可能範囲ddとして設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項5】
前記異常通知手段は、
前記位置情報比較手段において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、更に、前記車両の運転者が利用する運転者端末に対しても通知を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項6】
前記異常通知手段は、前記異常通知を行った場合に、車両の位置、時刻を少なくとも記憶しておき、
前記廃棄物運搬車両の位置監視システムは、更に、
前記車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する運搬完了報告手段を有しており、
前記運搬完了報告手段は、
前記異常通知手段で記憶した、前記異常通知を行った場合の車両の位置、時刻を前記報告書に記載する、
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物運搬車両の位置監視システム。
【請求項7】
情報を記憶する記憶装置とプログラムの演算処理を実行する演算装置とを少なくとも有するコンピュータ端末で実行する廃棄物運搬車両の位置監視プログラムであって、
前記廃物運搬車両の位置監視プログラムは、前記演算装置に読み込まれる領域算出機能と位置情報受信機能と位置情報比較機能と異常通知機能とを少なくとも有しており、
前記領域算出機能は、所定の2地点の座標に基づいてその2地点間の直線式Aを算出し、前記直線式Aからの許容可能範囲ddにより構成される範囲を、前記車両の走行可能領域として算出して前記記憶装置に記憶させ、
前記位置情報受信機能は、前記車両の位置情報を受信し、
前記位置情報比較機能は、前記受信した位置情報に基づいて、前記記憶装置に記憶した走行可能領域を前記車両が逸脱しているか否かを判定し、
前記異常通知機能は、前記位置情報比較機能において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、前記監視を行っている管理者が利用する管理者端末と、前記廃棄物の排出事業者が利用する排出事業者端末とに少なくとも通知を送信する、
ことを特徴とする廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。
【請求項8】
前記走行可能領域は、
前記直線式Aから前記許容可能範囲の距離ddだけ直線式Aを平行移動した直線式A’及び直線式A’’と、前記2地点の各々を中心とする半径ddの半円と、によって構成される領域である、
ことを特徴とする請求項7に記載の廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。
【請求項9】
前記位置情報比較機能は、
前記受信した車両の位置情報を所定の座標系の座標Tに変換し、変換後の座標が、前記走行可能領域の範囲内に存在しない場合には前記車両が逸脱していると判定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。
【請求項10】
前記領域算出機能は、
前記所定の2地点間の運搬が初めての場合には、前記許容可能範囲の初期値として入力を受け付けた値を前記許容可能範囲ddの値として設定し、前記所定の2地点間の運搬が2度目以降の場合には、それ以前の運搬において、前記領域算出手段が算出した直線式Aからの前記車両位置の距離dgのうち、前記許容可能範囲dd以下の値で最も大きいdgを、前記許容可能範囲ddとして設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。
【請求項11】
前記異常通知機能は、
前記位置情報比較機能において、前記車両が走行可能領域を逸脱していると判定した場合には、更に、前記車両の運転者が利用する運転者端末に対しても通知を送信する、
ことを特徴とする請求項7に記載の廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。
【請求項12】
前記異常通知機能は、前記異常通知を行った場合に、少なくとも車両の位置、時刻を前記記憶装置に記憶しておき、
前記廃棄物運搬車両の位置監視プログラムは、更に、
前記車両が廃棄物を処分業者まで運搬し、運搬が完了した場合に運搬が完了した報告書を作成する運搬完了報告機能を有しており、
前記運搬完了報告機能は、
前記記憶装置に記憶した、前記異常通知を行った場合の車両の位置、時刻を前記報告書に記載する、
ことを特徴とする請求項7に記載の廃棄物運搬車両の位置監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−58698(P2007−58698A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245193(P2005−245193)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(504261000)白井グループ株式会社 (3)
【出願人】(597119954)株式会社アイティフォー (5)
【Fターム(参考)】