説明

廃水処理システム、及び廃水処理方法

【課題】 水量の変動に対応できる廃水処理システム及び廃水処理方法を提供する。
【解決手段】
廃水処理システム10は、最初沈殿池12A−12Eと、反応タンク14A−14Eと、最終沈殿池16A−16Eと、流路24A−24Eと、流路26A−26Eを含む反応系列を複数備え、反応タンク14D,14Eは担体と膜ユニットと活性汚泥とを備えた処理槽、MLSS濃度が500mg/L〜7000mg/Lに調整された膜分離槽を備え、反応タンク14D,14Eの処理能力を超える廃水が流路26D,26Eを介して最終沈殿池16D,16Eに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理システム、及び廃水処理方法に関し、膜分離を利用した廃水処理システム、及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、最初沈殿池、反応タンク(生物処理槽)、最終沈殿池を備えた廃水処理システムが知られている。近年、既設の廃水処理システムに膜分離活性汚泥法(MBR:メンブレンバイオリアクター)の適用が進められている。非特許文献1には、図7に示す、既設の下水処理場にMBRを適用した場合の一例が示されている。廃水処理システム100は、複数の最初沈殿池102と、最初沈殿池102に接続された反応タンク104,106を備える。反応タンク104では、従来の活性汚泥法による生物反応処理が行われ、反応タンク106では、MBRにより反応処理が行われる。つまり、図7のシステムは従来の活性汚泥法系列とMBR系列が並列に運転される。反応タンク104で処理された廃水が最終沈殿池108に供給される。最終沈殿池108では廃水が処理水と活性汚泥に固液分離される。最終沈殿池108からの処理水は砂ろ過池110や消毒施設112に供給される。砂ろ過池110や消毒施設112を経た処理水は場内用水や放流等に利用される。
【0003】
一方、反応タンク106からの処理水は最終沈殿池108を経由することなく、再利用の水質によりNF(ナノフィルタ)/RO(逆浸透圧)設備114に供給され、工業用水等に再利用されたり、そのままで雑用水として利用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン(第1版)」、下水道膜処理技術会議、p36、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非特許文献1に記載された廃水処理システムでは、反応タンク106で膜分離する場合、膜のろ過能力を超えた流量には対応できない。膜のろ過能力以上の流入がある場合には、反応タンク106の水位が上昇し、上流側設備への逆流や反応タンク106からの溢水が懸念される。
【0006】
例えば、ろ過能力を超えた水量が流入した場合、MBRの反応タンク106以外の反応タンク104に分散して処理することになる。しかしながら、大雨などのピーク水量によっては過負荷になり処理が困難になることが想定される。また、反応タンク106の膜が目詰まりした場合も同様に処理困難になることが予想される。
【0007】
このため、雨天時や日最大時の水量変動に対して、(1)流量調整槽を設置する、(2)反応タンクの水位を変えて変動を吸収する、(3)時間最大流量に対応可能な面積の膜を設置する等の対応策が必要となる。しかしながら、運転管理が複雑になることや、膜分離装置が大きくなり設備費が高くなるなどの課題がある。特に、MBR法の反応タンク106において、MLSS濃度を10000mg/L〜15000mg/Lと高くして運転している。そのため、反応タンク106への流入水量がMBRのろ過能力を超えた場合であっても廃水を最終沈殿池108で処理できないことが、MBR法の適用を難しくしている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、上記の問題を解決しつつ、MBR法を適用した廃水処理システム、及び廃水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の廃水処理システムは、最初沈殿池と、反応タンクと、最終沈殿池と、前記最初沈殿池と前記反応タンクを接続する第1の流路と、前記反応タンクと前記最終沈殿池を接続する第2の流路を含む反応系列を複数備える廃水処理システムであって、前記複数の反応系列中の一種の反応系列は、前記反応タンクが担体と膜ユニットと活性汚泥とを有し、MLSS濃度が500mg/L〜7000mg/Lに調整された膜分離槽を備え、前記第1の流路を介して該反応タンクに廃水が供給され、該反応タンクの処理能力を超える廃水が前記第2の流路を介して前記最終沈殿池に供給されることを特徴とする。
【0010】
本発明の廃水処理システムは、前記発明において、前記複数の反応系列が前記一種の反応系列のみで構成されることが好ましい。
【0011】
本発明の廃水処理システムは、前記発明において、前記一種の反応系列以外の反応系列は、前記反応タンクが活性汚泥処理を実施する処理槽を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の廃水処理システムは、前記発明において、前記一種の反応系列の反応タンクは、さらに、無酸素槽と好気槽を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の廃水処理システムは、前記発明において、前記担体がかさ容積で5vol%〜40vol%添加されたことが好ましい。
【0014】
本発明の廃水処理システムは、前記発明において、前記膜分離槽、前記無酸素槽、及び前記好気槽が担体分離スクリーンを備えることが好ましい。
【0015】
本発明の廃水処理システムは、前記担体分離スクリーンを備える発明において、前記無酸素槽に結合固定化担体が添加され、前記好気槽及び前記膜分離槽に包括固定化担体が添加されることが好ましい。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の廃水処理方法は、前記廃水処理システムを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水量の変動に対応できるMBR適用の廃水処理システム及び廃水処理方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】廃水処理システムの概要図。
【図2】MLSS濃度とFluxの関係を示すグラフ。
【図3】反応タンクの構成を示す概略図。
【図4】他の反応タンクの構成を示す概略図。
【図5】他の反応タンクの構成を示す概略図。
【図6】他の反応タンクの構成を示す概略図。
【図7】従来の廃水処理システムの概要図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行なうことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る廃水処理装置の全体構成を示す概略図である。廃水処理システム10は、複数の最初沈殿池12(12A−12E)と、最初沈殿池12A−12Cと接続され活性汚泥法が実施される反応タンク14A−14C、最初沈殿池12D,12Eと接続され担体添加され膜分離活性汚泥法が実施される反応タンク14D,14Eと、反応タンク14(14A−14E)と接続された最終沈殿池16(16A−16E)、砂ろ過池18、消毒施設20、NF/RO設備22を含む。
【0021】
最初沈殿池12(12A−12E)は、廃水に含まれる比較的大きな固形物を分離する。最初沈殿池12(12A−12E)は、流路24(24A−24E)により反応タンク14(14A−14E)と接続される。
【0022】
反応タンク14Aは、標準の活性汚泥法が実施される処理槽を少なくとも一つ含んでいる。反応タンク14B,14Cは、反応タンク14Aと同様の構成を備える。反応タンク14Dは、膜分離装置が設置され、担体が投入された膜分離槽を一つ含んでいる。膜分離槽内のMLSS濃度(活性汚泥浮遊物濃度)は、500mg/L〜7000mg/Lに調整される。
【0023】
最終沈殿池16(16A−16E)は、反応タンク14(14A−14E)からの廃水を処理水と活性汚泥に分離する。分離装置としては、傾斜板型分離装置等を用いることこができる。
【0024】
反応タンク14A、14B、14Cは、流路26A,26B,26Cにより最終沈殿池16A、16B、16Cと接続される。反応タンク14D、14Eは、流路26D,26Eにより最終沈殿池16D、16Eと接続される。流路26D,26Eには、弁V1、V2が設けられている。弁V1、V2は、廃水を反応タンク14D、14Eから最終沈殿池16D、16Eに供給するかどうかを制御する。
【0025】
晴天時に計画水量の廃水が供給される場合の廃水処理システム10による廃水の処理方法を説明する。計画水量の廃水が最初沈殿池12(12A−12E)に供給される。最初沈殿池12(12A−12E)では、沈降分離により、廃水に含まれる比較的大きな固形物が分離される。最初沈殿池12(12A−12E)で固液分離された廃水が、反応タンク14(14A−14E)に送られる。
【0026】
反応タンク14A−14Cでは、標準の活性汚泥法により廃水が生物反応処理される。反応タンク14A−14Cで処理された廃水は、最終沈殿池16A−16Cに供給される。最終沈殿池16A−16Cでは、廃水が処理水と活性汚泥に固液分離される。最終沈殿池16A−16Cからの処理水は砂ろ過池18や消毒施設20に供給される。砂ろ過池18や消毒施設20を経た処理水は場内用水や放流等に利用される。
【0027】
反応タンク14D、14Eでは、包括固定化担体が添加されたMBR法により廃水が生物反応処理される。包括固定化担体の添加により生物処理性能が補完されるため膜分離槽のMLSS濃度は500mg/L〜7000mg/Lに調整される。従来、膜分離装置が設置され、生物反応処理が行われる膜分離槽は、MLSS濃度は10000mg/L〜15000mg/Lに調整されるが、本実施の形態では、MLSS濃度は低い濃度に調整される。包括固定化担体を反応タンクに添加することにより、MLSS濃度を500mg/L〜7000mg/Lと低くしても、従来のようにMLSS濃度を10000mg/L〜15000mg/Lに高くした場合と同等の処理能力を得ることができる。
【0028】
反応タンク14D、14Eで処理された廃水はMBRでろ過された後、最終沈殿池16D、16Eを経由することなく、NF(ナノフィルタ)/RO(逆浸透圧)設備22に供給され、工業用水等に再利用される。また、一部はそのまま再利用されるか、公共水域に放流される。
【0029】
次に、雨天時等に設計計画水量(日最大水量)を超える(例えば、2倍)廃水が供給される場合(時間最大水量)の廃水処理システム10による廃水の処理方法を説明する。計画水量を超える廃水が最初沈殿池12(12A−12E)に供給され、最初沈殿池12(12A−12E)で固液分離された廃水が、反応タンク14(14A−14E)に送られる。
【0030】
標準の活性汚泥法が適用された反応タンク14A−14Cは、計画水量に対し通常約2倍の時間最大処理水量に対応できる。したがって、雨天時に計画水量を超える場合でも、時間最大処理水量の範囲内で、晴天時と同様の処理を行なうことができる。反応タンク14A−14Cで処理された廃水は、最終沈殿池16A−16Cに供給される。最終沈殿池16A−16Cからの処理水は砂ろ過池18や消毒施設20に供給される。砂ろ過池18や消毒施設20を経た処理水は場内用水や放流等に利用される。
【0031】
反応タンク14D、14Eでは、MBRが計画水量(日最大水量)で設計されていた場合、約2倍の廃水が流入すると、膜能力を超える廃水を処理することはできないため、超過した廃水を最終沈殿池16D,16Eに供給する。反応タンク14D、14Eでは膜分離槽のMLSS濃度は500mg/L〜7000mg/Lに調整されているので、廃水を膜透過することなく最終沈殿池16D,16Eに供給しても、最終沈殿池16D,16Eで固液分離することができる。これにより、最終沈殿池16A−16Cと同様に処理水を得ることができる。得られた処理水は砂ろ過池18や消毒施設20に供給される。
【0032】
さらに、反応タンク14D、14Eでは、MBRにより廃水の生物反応処理と膜分離が実施され、処理水はNF(ナノフィルタ)/RO(逆浸透圧)設備22に供給され、工業用水等に再利用される。
【0033】
本実施の形態によれば、反応タンク14D、14Eを、包括固定化担体を添加することでMLSS濃度を500mg/L〜7000mg/Lと低くできるので、超過した廃水を最終沈殿池16D,16Eで処理することができる。廃水処理システムへのMBRの適用を容易にする。
【0034】
さらに、包括固定化担体を適用することで、反応タンク14D、14EのMLSS濃度を低下させることができるので、内生呼吸量に必要な供給空気量を削減でき、散気装置の曝気動力を低減することができる。また、MLSS濃度を低下させることで、反応槽内の処理水の粘性を低下でき、散気装置の曝気効率を改善することができる。
【0035】
包括固定化担体を適用して曝気することで、反応タンク14D、14Eに浸漬された膜ユニットの膜面を効率よく洗浄でき、膜の目詰まりを防止することができる。膜ユニットの洗浄間隔を延ばすことができ、安定した運転が可能となる。また、担体により洗浄されるので、散気装置の曝気動力を低減することができる。膜ユニットとして、平膜型、中空糸型、チューブラ型等の公知の膜ユニットを使用することができる。
【0036】
図2は、処理槽内のMLSS濃度と膜ユニットのFlux(透過流速)の関係を示している。活性汚泥は、反応タンク内に膜ユニット(平膜)を浸漬し、MLSS濃度を変化させたときのFlux(透過流速)の値をプロットしたものである。一方、活性汚泥+担体は、反応タンク内に膜ユニット(平膜)を浸漬し、かつ担体を10%添加し、MLSS濃度を変化させたときのFlux(透過流速)の値をプロットしたものである。
【0037】
活性汚泥のグラフによれば、MLSS濃度が10000mg/L〜11000mg/Lのとき、Fluxは0.8(m/日)と最も高い。MLSS濃度が11000mg/Lを超えるとFluxの値は低くなる。その理由は、膜表面でMLSSや細胞外ポリマーが厚密化するからである。一方、MLSS濃度を10000mg/Lより小さくすると、理論的にはFluxの値は大きくなると考えられるが、活性汚泥のグラフによれば、Fluxの値は低くなっている。これは、MLSSが10000mg/Lより小さくなるとMLSSによる膜面の洗浄作用が小さくなるためと考えられる。
【0038】
一方、活性汚泥+担体のグラフによれば、担体を添加することにより、Fluxの値を活性汚泥のFluxの値より大きくすることができる。さらに、MLSS濃度を低濃度(500mg/L〜7000mg/L)にした場合でも、Fluxの値は、10000mg/L〜11000mg/Lと同等又は微増させることができる。つまり、反応タンク内のMLSS濃度を下げた場合でも、膜ユニットの能力が低下しないので、低MLSS濃度でのMBR法の適用を容易にする。活性汚泥、担体と膜ユニットを備える反応タンクにより、膜ユニットの効率を下げず、かつ最終沈殿池で分離可能なMLSS濃度での運転が可能となる。この反応タンクによれば、計画水量を超えた廃水を最終沈殿池で固液分離することができる。
【0039】
次に、図1に示すMBR法適用システムの構成装置の処理能力を計算した。1系列の日最大処理水量:2000m/日、1系列の時間最大処理水量:4000m/日、系列数を5系列(内MBR適用系列を2系列)とした場合、各反応タンク及び最終沈殿池の処理能力は以下となる。
【0040】
(1)反応タンク14A、14B、14Cの時間最大処理水量:4000m/日・系列。(2)最終沈殿池16A、16B、16Cの時間最大処理水量:4000m/日・系列。(3)反応タンク14D、14Eの時間最大処理水量:4000m/日・系列。内訳は、反応タンク14D、14EのMBRによるろ過:2000m/日・系列、最終沈殿池16D、16E:2000m/日・系列、となる。
【0041】
上記の計算にしたがえば、本実施の形態のMBR系列は、雨天時等計画水量を超える場合(4000m/日・系列)でも十分に対応することができる。
【0042】
本実施の形態のMBR系列を何系列にするかについて、再利用される工業用水の量を基準に決めることができる。反応タンクをMBR系列とすることで、従来の活性汚泥系列に比較して、設置面積を小さく(3分の2程度)することができる。MBR系列の反応タンクに担体が添加されている。担体が生物処理能力を補完するので、反応タンクの容積を小さくできる。その結果、設置面積を3分の2程度にできる。同じ敷地面積である場合、従来の活性汚泥系列に比べて多くのMBR系列を設置することができる。したがって、設置面積縮小や、処理能力向上等の目的に応じて、MBR系列の数を決定することができる。
【0043】
本実施の形態の廃水処理システムは、既設の下水処理場の更新に好適である。MBR系列は既設設備より小さな設置面積に設置可能である。したがって、MBR系列は既設設備と同一の処理能力を有するだけでなく、既設設備より大きな処理能力を有することができる。また、MBR系列でろ過された水は種々の用途に再利用することができる。再利用する水の需要量に合わせて、MBR適用系列の数を決定するのが好適である。
【0044】
図3は、包括固定化担体を添加したMBR法を適用した反応タンクの一例を示す。反応タンク30は、無酸素槽32、好気槽34、膜分離槽36、処理水槽38を備える。各槽は仕切壁40により区分けされる。但し、最初沈殿池42から供給された廃水は無酸素槽32、好気槽34、膜分離槽36間を、移動することができる。無酸素槽32は嫌気状態に維持される。無酸素槽32には水中攪拌機44が設置される。好気槽34は、好気槽34に設置された散気装置46により、好気状態に維持される。散気装置46はブロアBに接続される。膜分離槽36には、散気装置46と膜ユニット48が設置される。各槽に包括固定化担体50が5vol%〜40vol%添加されている。より好ましくは、5vol%〜15vol%反応タンク30は、循環流路52とポンプP1を備え、包括固定化担体50及び廃水が膜分離槽36から無酸素槽32へ返送される。包括固定化担体50により無酸素槽32、好気槽34、及び膜分離槽36内のMLSS濃度が500mg/L〜7000mg/Lに維持される。図3では全ての槽に包括固定化担体を添加した例で説明したが、少なくとも膜分離槽36内に包括固定化担体が添加されていればよい。膜ユニット48で分離された処理水が、ポンプP2により処理水槽38に送水される。処理水槽38から処理水が引き抜かれる。晴天時の運転では流路54に設けられたバルブVが閉じられている。したがって、最初沈殿池42から供給された廃水は基本的に膜ユニット48により固液分離される。
【0045】
一方、雨天時等、最初沈殿池42に供給される廃水が増加した場合、バルブVが開けられる。反応タンク30に供給された廃水の一部が膜分離槽36から流路54を通して最終沈殿池56に供給される。最初沈殿池42、および最終沈殿池56から余剰汚泥が引き抜かれる。
【0046】
図4は、他の包括固定化担体を添加したMBR法を適用した反応タンクの一例を示す。図3と同様の構成には同じ符号を付して説明省略する場合がある。図4に示す反応タンク30は、無酸素槽32、好気槽34、及び膜分離槽36に担体分離スクリーン58が設けられている。担体分離スクリーン58により、無酸素槽32、好気槽34、及び膜分離槽36に添加された包括固定化担体50が混合しないようにすることができる。これにより、無酸素槽32、好気槽34、及び膜分離槽36の各槽の生物反応処理に応じた包括固定化担体50を添加することができる。各槽の生物反応処理を効率よく行なうことができる。
【0047】
図3及び図4に示す反応タンクでは、計画水量を超える廃水が膜分離槽36内から流路54を介して最終沈殿池56に供給されるが、これに限定されない。例えば、膜分離槽をオーバーフローする廃水を最終沈殿池に供給することもできる。
【0048】
図5及び図6は、超過した廃水を最終沈殿池にオーバーフローさせる構成の反応タンクを示す。図5の反応タンクは、図3と同様に担体分離スクリーンを備えていない。図3と同様の構成には同じ符号を付して説明省略する場合がある。
【0049】
図3の反応タンクと異なり、処理水槽38が膜分離槽36と分離して設置される。膜分離槽36の膜ユニット48により分離された処理水が、ポンプP2により処理水槽38に送水される。処理水槽38から処理水が引き抜かれる。
【0050】
一方、雨天時等、最初沈殿池42に供給される廃水が増加した場合、反応タンク30に供給された廃水の一部が膜分離槽36からオーバーフローし、流路54を通して最終沈殿池56に供給される。残りの廃水は、膜ユニット48で固液分離され、処理水槽38に送水される。
【0051】
図6の反応タンクは、図4と同様に担体分離スクリーンを備えている。図4、図5と同様の構成には同じ符号を付して説明省略する場合がある。図6に示す反応タンク30は、無酸素槽32、好気槽34、及び膜分離槽36に担体分離スクリーン58が設けられている。
【0052】
雨天時等、最初沈殿池42に供給される廃水が増加した場合、反応タンク30に供給された廃水の一部が膜分離槽36からオーバーフローし、流路54を通して最終沈殿池56に供給される。残りの廃水は、膜ユニット48で固液分離され、処理水槽38に送水される。
【0053】
本実施の形態の包括固定化担体に包括固定される微生物は、各反応槽の種類に応じて、窒素除去を目的とした硝化細菌又は硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群等の複合微生物や、ダイオキシン類などの特定の有害化学物質を分解する能力をもった微生物(例えば、アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌等の純粋微生物等)が好適な例として挙げられる。また微生物としては、培養等により濃縮分離された微生物の他に、下水処理場の活性汚泥、湖沼、河川や海の汚泥、土壌などの各種の微生物を含む微生物含有物も含まれる。
【0054】
固定化材料としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、等を用いることができる。その他、固定化材料のプレポリマーとして、以下のものを用いることができる。
(モノメタクリレート類)
ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート等。
(モノアクリレート類)
2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
(ジメタクリレート類)
1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
(ジアクリレート類)
エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
(トリメタクリレート類)
トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
(トリアクリレート類)
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等。
(テトラアクリレート類)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
(ウレタンアクリレート類)
ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
(その他)
アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド等。
なお、上記固定化材料のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
包括固定化担体の重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25質量%とし、アミン系の重合促進剤の添加量を0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。アミン系の重合促進剤としては、βジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン等を好ましく使用することができる。
【0056】
粒子径0.3mm〜1.5mmの包括固定化担体は、例えば、以下の方法により製造することができる。最初に、使用サイズより大きなサイズの担体ブロックを製造する。次いで、担体ブロックを、格子状の切断刃を備える切断装置にセットする。担体ブロックを所定の搬送速度で搬送しながら、切断刃を通過させて格子状に切断する。最後に、格子状に切断された担体ブロックを、回転する切断刃で切断することで、粒子径0.3mm〜1.5mmの包括固定化担体を製造することができる。
【0057】
結合固定化担体としては、プラスチック、セラミックス、活性炭、ケイ砂など種々な物質を用いることができる。また、ポリビニルアルコールや吸水ゲルなどの高分子吸水ゲルを用いてもよい。プラスチックについて、スポンジ状、中空にした円柱状、さらには紐状のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10…廃水処理システム、12…最初沈殿池、14…反応タンク、16…最終沈殿池、18…砂ろ過池、20…消毒施設、22…NF/MO設備、24,26…流路、30…反応タンク、32…無酸素槽、34…好気槽、36…膜分離槽、38…処理水槽、40…最初沈殿池、56…最終沈殿池、58…担体分離スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初沈殿池と、反応タンクと、最終沈殿池と、前記最初沈殿池と前記反応タンクを接続する第1の流路と、前記反応タンクと前記最終沈殿池を接続する第2の流路を含む反応系列を複数備える廃水処理システムであって、
前記複数の反応系列中の一種の反応系列は、前記反応タンクが担体と膜ユニットと活性汚泥とを有し、MLSS濃度が500mg/L〜7000mg/Lに調整された膜分離槽を備え、
前記第1の流路を介して該反応タンクに廃水が供給され、該反応タンクの処理能力を超える廃水が前記第2の流路を介して前記最終沈殿池に供給される廃水処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の廃水処理システムであって、前記複数の反応系列が前記一種の反応系列のみで構成される廃水処理システム。
【請求項3】
請求項1記載の廃水処理システムであって、前記一種の反応系列以外の反応系列は、前記反応タンクが活性汚泥処理を実施する処理槽を備える廃水処理システム。
【請求項4】
請求項1〜3記載の廃水処理システムであって、前記一種の反応系列の反応タンクは、さらに、無酸素槽と好気槽を備える廃水処理システム。
【請求項5】
請求項1〜4記載の廃水処理システムであって、前記担体がかさ容積で5vol%〜40vol%添加された廃水処理システム。
【請求項6】
請求項4記載の廃水処理システムであって、前記膜分離槽、前記無酸素槽、及び前記好気槽が担体分離スクリーンを備える廃水処理システム。
【請求項7】
請求項6記載の廃水処理システムであって、前記無酸素槽に結合固定化担体が添加され、前記膜分離槽、及び前記好気槽に包括固定化担体が添加された廃水処理システム。
【請求項8】
請求項1〜7記載の廃水処理システムを用いた廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147868(P2011−147868A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10241(P2010−10241)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、省水型・環境調和型水循環プロジェクト 水循環要素技術研究開発 省エネ型膜分離活性汚泥法(MBR)技術の開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】