説明

廃水処理システムおよび廃水処理方法

【課題】電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを課題とする。
【解決手段】活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、廃水を浄化するための廃水処理システム3において、前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、生物処理槽33において該廃水に混合させ、廃水に混合された前記汚泥および前記活性汚泥を、沈殿槽36において該廃水から分離することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水を浄化するための廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水内に溶出させた金属イオンと不純物とを反応させることにより、不純物を凝集させる技術がある(特許文献1を参照)。その他、溶出させた鉄イオンまたはアルミニウムイオンを生物膜濾過槽へ供給する汚水処理技術等がある(特許文献2から7を参照)。
【特許文献1】特開2006−122840号公報
【特許文献2】特許第3948779号公報
【特許文献3】特開2006−110482号公報
【特許文献4】特開2008−194631号公報
【特許文献5】特開2007−203233号公報
【特許文献6】特開2005−246328号公報
【特許文献7】特開2007−237027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、水に溶解しているシリカや鉄、コロイド物質などの不純物を除去する技術として電気分解法がある。電気分解法は、鉄やアルミニウムなどでできた溶性電極を用いた電気分解により凝集作用に有効な金属イオン(鉄イオンやアルミニウムイオン等)を電極から溶出させることで、負電荷を持つ除去対象物(シリカイオン等)と反応させることで、除去対象物を凝集させ分離除去する技術である。更に、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによる、コロイド物質の吸着が促進される。
【0004】
図4は、電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。図4に示す装置は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に、処理原水に対して電気分解処理が行われる電気分解反応槽と、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる沈殿槽と、を有する。
【0005】
電気分解法では、処理生成物としての凝集物を含む余剰汚泥(比較的粘度の低いスラリー状の汚泥)が発生する。本生成物の組成はシリカ等の除去対象物質と鉄やアルミニウムの化合物であり、このため電気分解法によって発生する余剰汚泥は土壌成分に似た無害な物質である。しかし、電気分解法によって発生する余剰汚泥は、従来産業廃棄物として処理されているため、余剰汚泥の処理コストは、電気分解処理コストの半分近くを占める。また、電気分解法によって発生する余剰汚泥は、そのままでは含水率が高く、搬出および埋め立て処理が困難であるため、脱水および乾燥処理が必要となる。ここで、電気分解法によって発生する余剰汚泥は脱水性が非常に悪いため、通常の脱水処理で脱水することは難しく、加熱による乾燥処理に非常に多くのエネルギーが必要となる。更に、加熱による乾燥処理では、二酸化炭素が発生するため、環境への配慮という点からも、好ましいものではなかった。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑み、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、有機性廃水(処理原水)を生物処理によって浄化する生物処理プロセスにおいて、別途不純物含有水の電気分解処理による不純物除去プロセスで発生した余剰汚泥を生物処理プロセス中に投入することで、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを可能にした。
【0008】
詳細には、活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、廃水を浄化するための廃水処理システムであって、前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水に混合させる混合手段と、前記混合手段によって前記廃水に混合された前記汚泥、および前記活性汚泥を、該廃水から分離する分離手段と、を備える廃水処理システムである。
【0009】
本発明に係る廃水処理システムは、処理の対象となる有機性廃水を、活性汚泥を用いた生物処理によって浄化するためのシステムである。例えば、処理の対象となる廃水は、食品加工廃水、機械加工廃水、化学工場廃水、厨房廃水、生活廃水の何れかまたはこれら廃水の複合水であってよい。活性汚泥とは、主に微生物の集合体(フロック)で構成された汚泥であり、活性汚泥を用いた廃水の生物処理では、廃水に対して例えば曝気処理を行うことで、活性汚泥による汚濁物質(有機物など)の分解が促進され、廃水の浄化が行われる。
【0010】
一方、本発明に係る廃水処理システムにおける廃水処理とは別途行われる水処理(一般的には、地下水等から水溶性シリカ等の不純物を除去する処理)において、電気分解処理が用いられた場合、処理生成物としての凝集物を含む余剰汚泥(比較的粘度の低いスラリー状の汚泥)が発生する。ここで、本願発明者は、電気分解処理によって発生した凝集物を含む汚泥に、廃水中の活性汚泥の沈降性を改善する能力が有ることを見出し、廃水処理システムを、電気分解処理において発生した余剰汚泥を沈降促進物質として用いる廃水処理システムとした。即ち、本発明によれば、余剰汚泥が廃水処理に有効利用されることで、電気分解処理において発生した余剰汚泥の乾燥・運搬・埋め立て等に係る処理コストを大きく削減することが出来る。
【0011】
また、本発明によれば、活性汚泥の沈降性が改善されるため、分離された汚泥の含水率(例えば、沈殿槽において汚泥の分離が行われる場合、沈殿槽からの引き抜き汚泥の含水率)が低減する。即ち、本発明によれば、電気分解処理において発生する汚泥の処理コストおよびエネルギーの削減に加えて、有機性廃水の廃水処理システムにおける汚泥処理コストおよびエネルギーについても削減することが可能である。
【0012】
また、本発明において、前記分離手段は、前記生物処理が行われた前記廃水が導入される沈殿槽において、前記汚泥および前記活性汚泥を含む混合処理汚泥を沈殿させることで、該汚泥および該活性汚泥を前記廃水から分離し、前記廃水処理システムは、前記分離手段によって分離された前記混合処理汚泥のうち少なくとも一部を、前記沈殿槽から、前記廃水に対して前記生物処理を行うための生物処理槽へ返送する返送手段を更に備えてもよい。
【0013】
ここで、混合処理汚泥とは、混合手段によって混合された、電気分解処理汚泥および活性汚泥を含む汚泥をいう。このような、分離された混合処理汚泥が返送されることで活性汚泥の少なくとも一部が返送される廃水処理システムにおいて、電気分解処理で発生した余剰汚泥を沈降促進物質として用いることで、活性汚泥の沈降性が改善し、より高濃度な活性汚泥を生物処理槽へ返送することが可能となる。即ち、本発明によれば、廃水処理システムにおいて、電気分解処理で発生した汚泥を沈降促進物質として用いることで、汚泥処理コストおよび汚泥処理に要するエネルギーの削減にとどまらず、有機性廃水の廃水処
理システムにおいて、汚泥濃度の向上による廃水浄化性能の向上の効果を得ることが出来る。
【0014】
また、本発明によれば、活性汚泥の沈降性が改善されるため、従来と同等の性能を得るために必要な沈殿槽のサイズをよりコンパクトにすることが出来る。
【0015】
また、前記混合手段は、前記生物処理槽内の廃水、該生物処理槽に導入される前の廃水、または前記沈殿槽内の廃水の何れかに対して、前記汚泥を混合させてもよいし、前記混合手段は、前記生物処理槽から送出された後、前記沈殿槽に導入される前の廃水が攪拌される攪拌槽において前記廃水に前記汚泥を混合させてもよい。
【0016】
前記生物処理槽から送出された後の廃水、即ち生物処理済の廃水に対して、電気分解処理で発生した余剰汚泥が混合されることで、生物処理中の生物処理槽へ余剰汚泥を混合する場合に比べて、沈殿槽における活性汚泥の沈降性改善効果をより高めることが出来る。
【0017】
また、本発明に係る廃水処理システムは、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該電気分解処理システムから導入するための配管を備え、前記混合手段は、前記配管を介して、前記電気分解処理システムにおいて発生した汚泥を、順次導入して前記廃水に混合させてもよい。
【0018】
このような配管を用いて、他系統の水処理システムから汚泥を直接導入するようにすることで、本発明によれば、汚泥の運搬等のコストを更に削減することが可能である。
【0019】
また、本発明に係る廃水処理システムは、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、一旦貯留するための貯留手段を更に備え、前記混合手段は、前記貯留手段によって貯留されている汚泥を、前記廃水に混合させてもよい。
【0020】
このようにして、他系統の水処理システムにおいて発生した汚泥を一旦貯留することで、本発明によれば、貯留された汚泥を必要に応じて生物処理槽等に投入し、廃水に混合させることが可能となる。
【0021】
また、本発明は、水処理方法の発明、または活性汚泥の沈降促進物質の発明としても把握することが可能である。例えば、本発明は、活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、廃水を浄化するための廃水処理方法であって、前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水に混合させる混合ステップと、前記混合ステップで前記廃水に混合された前記汚泥、および前記活性汚泥を、該廃水から分離する分離ステップと、が実行される廃水処理方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る廃水処理システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態に係る電気分解処理システム1および廃水処理システム3の構成を示す概略図である。電気分解処理システム1は、処理の対象となる水の流れにおいて
、上流から順に電気分解反応槽12および沈殿槽16を有する。また、電気分解反応槽12には、不純物含有水(被処理水)の導入のための配管11が接続されており、電気分解反応槽12と沈殿槽16とは配管15で接続されており、沈殿槽16には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管17が接続されている。
【0025】
更に、沈殿槽16には、沈殿槽16の下部に沈殿した沈殿物22を沈殿槽16内の水と共に送り出すための配管18およびポンプ23が接続されており、沈殿槽16から送り出された沈殿物を含む水は、配管18を通って外部へ送られる。以下、本実施形態において、沈殿槽16から送り出される、沈殿物を含む水を、余剰汚泥と称する。
【0026】
電気分解反応槽12は、配管11を介して処理の対象となる処理原水が導入され、処理原水に対して電気分解処理が行われる槽である。なお、電気分解処理の対象となる不純物含有水は、除去対象物を含む原水であり、除去対象物としては、例えば、不純物含有水に溶解した溶解性シリカが挙げられる。但し、除去対象物は溶解性シリカに限られず、本発明に係る電気分解処理システム1では、除去対象物として、シリカ、鉄、Mn(マンガン)、F(フッ素)、SS(Suspended Solids、浮遊物質)等、広範囲の物質を除去することが可能であり、除去対象物は特定の一物質に限定されるものではない。また、電気分解手段による電気分解処理は、不純物含有水に外部から電気エネルギーを与えることで電気分解反応を起こさせ、除去対象物を凝集させて分離する処理である。例えば、アルミニウムイオンなどの金属イオンを電極から溶出させることで、弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応効率を向上させることが出来る。このため、電気分解処理が行われることで生成された電気分解処理水には、除去対象物の凝集物が含まれる。
【0027】
本実施形態に係る電気分解処理では、電気分解反応槽12に設けられたアルミニウム電極(図示は省略する)から電気分解反応槽12内の水にアルミニウムイオンを溶出させることで、弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応を促進させる。また、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによる、コロイド物質の吸着が促進される。このような電気分解処理により、電気分解反応槽12において、凝集物が生成される。電気分解反応槽12において電気分解処理が施された、凝集物を含む水(以下、電気分解処理水と称する)は、配管15を経て沈殿槽16へ送られる。
【0028】
沈殿槽16は、電気分解反応槽12から送出された電気分解処理水が導入され、この電気分解処理水からの凝集物の分離が行われる槽である。本実施形態では、電気分解反応槽12から送出された電気分解処理水が、沈殿槽16内で所定時間滞留することで、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる。沈殿した凝集物は、沈殿槽16の下部に溜まることで汚泥となる。電気分解処理水が沈殿槽16内に所定時間滞留すると、凝集物は沈殿槽16の下部へ沈殿し、沈殿槽16の上部には、除去対象物(本実施形態では、シリカ等)が除去された処理水が残る。除去対象物が除去された処理水は、配管17を介して外部に送出され、様々な目的に用いることが可能である。また、汚泥が所定量以上沈殿した場合(余剰汚泥が発生した場合)には、ポンプ23を駆動することで、余剰汚泥を外部(本実施形態では、廃水処理システム3)へ排出することが出来る。
【0029】
次に、廃水処理システム3の構成について説明する。廃水処理システム3は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に生物処理槽33および沈殿槽36を有する。また、生物処理槽33には、有機性廃水(廃水処理システム3における処理原水)の導入のための配管32が接続されており、生物処理槽33と沈殿槽36とは配管35で接続されており、沈殿槽36には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管37が接続されている。
【0030】
更に、生物処理槽33には、電気分解処理システム1において発生した汚泥を生物処理槽33へ導入するための配管31が接続されており、電気分解処理システム1の沈殿槽16から送り出された汚泥は、配管31を介して生物処理槽33内の廃水に混合される。即ち、本実施形態において、配管31は、電気分解処理システム1の配管18と接続されている。
【0031】
また、沈殿槽36には、沈殿槽36の下部に沈殿した沈殿物40を沈殿槽36内の水と共に送り出すための配管39a、39bおよびポンプ38が接続されており、沈殿槽36から送り出された沈殿物を含む水(図1に示す余剰活性汚泥)は、配管39a、39bを通って生物処理槽33または外部へ送られる。以下、本実施形態において、沈殿槽36から送り出される、沈殿物40を含む水を、活性汚泥と称する。ここで、活性汚泥の送出先は、弁41および弁42が制御されることで制御される。具体的には、弁41が開弁している状態では、活性汚泥は生物処理槽33へ送出され、弁42が開弁している状態では、活性汚泥は外部へ送出される。
【0032】
生物処理槽33は、配管32を介して処理の対象となる有機性廃水が導入され、また、配管39aを介して活性汚泥が導入され、活性汚泥と混合された廃水に対して曝気処理が行われる槽である。活性汚泥中の微生物は、曝気処理によって廃水中に与えられた酸素を消費して、除去対象物である有機物を分解しながら増殖し、この結果、廃水中の活性汚泥が増加する。なお、本実施形態では、二段曝気が採用されており、生物処理槽33は、直列に接続された第一槽および第二槽を有する。第一槽および第二槽には、夫々、槽内の廃水に対して空気を送るための曝気装置34が設けられており、廃水は、はじめに第一槽に導入されて曝気処理され、第一槽で曝気処理された廃水は、続いて導入された第二槽においても曝気処理される。なお、本実施形態では、二段曝気を採用しているが、本発明は、二段曝気以外の曝気処理方法を採用した廃水処理システムにも適用可能である。
【0033】
また、本実施形態に係る廃水処理システムでは、生物処理槽33中の廃水に対して、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥が混合される。電気分解処理システム1の沈殿槽16から送出された余剰汚泥は、配管18および配管31を経て生物処理槽33の第一槽内の廃水に混合される。生物処理槽33において曝気処理が施され、且つ電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥が混合された廃水(以下、曝気処理済廃水と称する)は、配管35を経て沈殿槽36へ送られる。
【0034】
沈殿槽36は、生物処理槽33から送出された曝気処理済廃水が導入され、この曝気処理済廃水からの活性汚泥の分離が行われる槽である。本実施形態では、生物処理槽33から送出された曝気処理済廃水が、沈殿槽36内で所定時間滞留することで、活性汚泥の沈殿による分離が行われる。曝気処理済廃水が沈殿槽36内に所定時間滞留すると、活性汚泥は沈殿槽36の下部へ沈殿し、沈殿槽36の上部には、除去対象物が除去された処理水が残る。ここで、本実施形態に係る分離処理では、廃水中に電気分解処理システム1で発生した余剰汚泥が混合されているため、この余剰汚泥が廃水中の活性汚泥と結びつくことで、活性汚泥の沈殿が促進される。なお、余剰汚泥が廃水中の活性汚泥と結びつく要因の一つとして、電気分解処理システム1で発生した余剰汚泥が、アルミイオンと被処理水中のシリカ等の不純物とが結合した凝集物であるために、正の電荷を帯びていることが挙げられる。電気分解処理システム1で発生した余剰汚泥は、正の電荷を帯びているために、廃水中の負の電荷を帯びる活性汚泥と結びついて凝集し、結果的に活性汚泥の沈降性を改善する。但し、電気分解処理システム1で発生した余剰汚泥の、活性汚泥に対する沈降促進効果は、実験によってその効果が確認されたものであり、本発明でいう沈降促進効果は、上記したような要因から得られるものに限定されない。
【0035】
除去対象物が除去された処理水は、配管37を介して外部に送出される。また、沈殿槽
36の下部へ沈殿した汚泥は活性汚泥であるため、弁41を開弁した状態でポンプ38を駆動することで、生物処理槽33へ返送し、再び曝気処理に使用することが出来る。ここで、本実施形態では、電気分解処理で発生した汚泥を沈降促進物質として用いているため、活性汚泥の沈降性が改善し、より高濃度な活性汚泥を生物処理槽へ返送することが可能となる。即ち、本実施形態に係る廃水処理システムによれば、電気分解処理で発生した汚泥を沈降促進物質として用いることで、余剰汚泥の処理に要したコストとエネルギーの削減にとどまらず、有機性廃水の廃水処理システムにおいて、汚泥濃度の向上による廃水浄化性能の向上の効果を得ることが出来る。
【0036】
また、沈殿槽36の下部に汚泥が所定量以上沈殿した場合には、弁42を開弁した状態でポンプ38を駆動することで、余剰活性汚泥を外部へ排出することが出来る。
【0037】
<第二の実施形態>
図2は、第二の実施形態に係る電気分解処理システム1および廃水処理システム3bの構成を示す概略図である。ここで、本実施形態に係る電気分解処理システム1の構成は、第一の実施形態と概略同様であるため、詳細な説明を省略する。但し、第一の実施形態および第二の実施形態において示した電気分解処理システム1の構成は例示であり、本実施形態に示された廃水処理システムに導入される汚泥が発生する電気分解処理システムには、その他の構成の電気分解処理システムが採用されてもよい。以降、廃水処理システム3bにおいて、廃水処理システム3と同様の構成には、同様の符号を付して説明する。
【0038】
廃水処理システム3bは、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に生物処理槽33、攪拌槽43、および沈殿槽36を有する。また、生物処理槽33には、有機性廃水(廃水処理システム3bにおける処理原水)の導入のための配管32が接続されており、生物処理槽33と攪拌槽43とは配管35aで接続されており、攪拌槽43と沈殿槽36とは配管35bで接続されており、沈殿槽36には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管37が接続されている。生物処理槽33において行われる曝気処理、および沈殿槽36において行われる分離処理については、上記第一の実施形態において説明したものと概略同様であるため、説明を省略する。
【0039】
攪拌槽43は、生物処理槽33における曝気処理を経た曝気処理済廃水が導入され、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥が混合される槽である。このため、攪拌槽43には、電気分解処理システム1において発生した汚泥を攪拌槽43へ導入するための配管31bが接続されており、電気分解処理システム1の沈殿槽16から送り出された汚泥は、配管31bを介して攪拌槽43内の曝気処理済廃水に混合される。即ち、本実施形態に係る廃水処理システム3bは、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥が、生物処理槽33ではなく、生物処理槽33と沈殿槽36との間に設けられた攪拌槽43において廃水に混合される点で、第一の実施形態に示した廃水処理システム3と異なる。
【0040】
また、攪拌槽43には、攪拌装置(図示は省略する)が設けられ、導入された曝気処理済廃水と、投入された余剰汚泥との混合が促進される。攪拌装置によって曝気処理済廃水と余剰汚泥との混合が促進されることで、後段に接続された沈殿槽において、余剰汚泥による沈降性の改善効果を高めることが出来る。
【0041】
本実施形態に係る廃水処理システム3bでは、活性汚泥により処理された後の曝気処理済廃水に余剰汚泥が混合されるため、生物処理槽33へ余剰汚泥を混合する第一の実施形態に係る廃水処理システム3に比べて、活性汚泥(曝気処理済廃水中の懸濁物質)への沈降性改善効果をより高めることが出来る。
【0042】
<その他の実施形態>
従来、有機性廃水の廃水処理の流れは、廃水(処理原水)のスクリーン処理、生物処理(曝気処理)、活性汚泥の分離処理が順に施され、これらの処理が施されることで得られた処理水が放流されるプロセスが一般的である。本発明における、電気分解処理で発生した汚泥は、上記例示した廃水処理のプロセスにおいて、活性汚泥の沈降性を改善するための沈降促進物質として用いることが出来る。
【0043】
即ち、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥は、上記第一および第二の実施形態で説明した、生物処理槽33、攪拌槽43以外の箇所で有機性廃水に混合されてもよい。例えば、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥は、生物処理槽に導入される前の廃水に対して混合されてもよい。より具体的には、生物処理槽に導入される廃水の流量を調整するために生物処理槽の前段に設けられる流量調整槽において、余剰汚泥を廃水に混合することが出来る(図示は省略する)。また、例えば、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥は、沈殿槽直前の流入配管35、沈殿槽への流入部、沈殿槽、または沈殿槽からの返送汚泥配管39aにおいて廃水に混合されてもよい(図示は省略する)。
【0044】
また、上記第一の実施形態、および第二の実施形態に示した廃水処理システム3、3bでは、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥を、配管18、31を介して順次、有機性廃水に混合する場合について説明したが、電気分解処理システム1において発生した余剰汚泥は、沈殿槽16から引き抜かれて一旦貯留された後、必要に応じて廃水処理システムの廃水に対して混合されてもよい。
【0045】
図3は、電気分解処理システム1および汚泥貯留槽45を有する廃水処理システム3cの構成を示す概略図である。廃水処理システム3cは、電気分解処理システム1から配管18を介して送られた汚泥を貯留するための汚泥貯留槽45を有する。汚泥貯留槽45に貯留された汚泥は、必要に応じて稼動するポンプ44によって、配管31cを介して生物処理槽33へ送られる。即ち、本実施形態に係る廃水処理システム3cは、電気分解処理で発生する汚泥が一旦、汚泥貯留槽45に貯留されてから、必要に応じて生物処理槽33に供給される点で、電気分解処理システム1において発生した汚泥が連続して投入される上記第一の実施形態および第二の実施形態に係る廃水処理システム3、3b等と異なる。
【0046】
本発明は、電気分解処理によって発生した凝集物を含む汚泥に、廃水中の活性汚泥の沈降性を改善する能力が有ることが見出されたことに着目してなされたものである。そして、本実施形態に係る廃水処理システム3、3b、3cによれば、電気分解処理によって発生した汚泥を、廃水処理において沈降促進物質として用いることで、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【0047】
更に、本実施形態に係る廃水処理システム3、3b、3cによれば、活性汚泥の沈降性が改善されるため、沈殿槽36からの引き抜き汚泥の含水率が低減する。即ち、本発明によれば、電気分解処理において発生する汚泥の処理コストおよびエネルギーの削減に加えて、有機性廃水の廃水処理システムにおける汚泥処理コストおよびエネルギーについても削減することが可能である。
【実施例】
【0048】
従来技術に対する本発明の有効性を確認するため、本発明の試験システムを製作し、比較実験を行った。本実施例では、地下水に含まれるシリカ除去を主目的としたアルミニウム電極を用いた電気分解処理により発生した汚泥を、食品加工工場の有機性廃水処理における生物処理工程に利用した。また、本実施例では、本発明の試験システムとして、図1
を用いて説明した第一の実施形態に示した構成の廃水処理システム3を採用し、電気分解処理で発生した汚泥を生物処理槽33に連続的に供給した。
【0049】
本実施例では、試験システムにおいて、同等の水質の廃水(処理原水)に対して、汚泥の投入を行わずに廃水処理を行った場合と、沈降促進物質として汚泥を投入して廃水処理を行った場合とを比較し、得られた処理水の水質、および廃水処理システム3において発生した余剰活性汚泥の量を比較することで、本発明による余剰汚泥の投入による活性汚泥の沈降促進効果を確認した。上記説明した処理条件およびこの条件による評価結果の比較を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示されているように、本実施例の廃水処理システムでは、電気分解処理で発生する余剰汚泥を添加しない従来方式の処理に比べ、余剰汚泥を添加する本発明の方式で、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)、SSともに改善することが確認できた。これは、電気分解処理で発生した、シリカを含む余剰汚泥の添加によって活性汚泥の沈降性が向上したこと、および、生物処理槽33内での汚泥濃度が高い状態で運転できたことによって得られた効果である。
【0052】
また、本実施例では、沈殿槽からの汚泥返送率を同じ条件に設定して行ったが、生物処理槽内の汚泥濃度は、比較系が約4000mg/リットルに対して実験系では約5000mg/リットルと25%改善していることが確認できた。
【0053】
更に、廃水処理システム3において発生した余剰活性汚泥を、同様の脱水処理で処理した場合の脱水汚泥量についても、余剰汚泥の添加を行った方が20%近く削減できていることが分かる。これは、生物処理槽内の汚泥濃度向上により、流入有機物負荷(BOD+SS)の汚泥への転換率が削減され、更に汚泥の脱水性が向上したことによって得られた効果である。
【0054】
なお、本実施例の廃水処理では、従来方式の処理に比べ、脱水汚泥の乾燥質量が約3%増加しているが、これは、加えた電気分解処理汚泥(乾燥質量14g/日)の成分は全て無機成分であるため乾燥質量的には不変であり、この分が加えられた結果、有機物負荷について削減できた質量との差し引きで2g/日の微増となったことによる。なお、汚泥の処理コストに関係するのは乾燥質量ではなく脱水汚泥量であるため、混合された電気分解処理汚泥を加えても、全体的な脱水汚泥量は減少しており、汚泥の処理コストについては削減されている。
【0055】
表2は、実験結果(表1)を元に、実規模(500平方メートル/日)の廃水処理におけるコストメリットを試算した試算結果を示す表である。この試算は、汚泥処理単価を1t(トン)あたり10,000円として算出したものである。この試算によれば、1日当たり27,300円、1年間で996万円の削減が見込まれる。
【0056】
【表2】

【0057】
以上のように、電気分解処理により発生する余剰汚泥を有機系廃水の生物処理工程に投入することで水質面、運転コスト面共に大きなメリットがあることが確認でき、本発明技術の有効性が実証された。
【0058】
なお、本発明の試験システムとして、図2を用いて説明した第二の実施形態に示した廃水処理システム3bを採用した実施例では、実験の結果、処理水のSS濃度は4〜5mg/リットルとなった。即ち、第二の実施形態に示した廃水処理システム3bを採用した実施例では、第一の実施形態に示した廃水処理システム3を採用した実施例(処理水のSS濃度7mg/リットル)に比べて、処理水質(SS濃度)が更に改善されることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一の実施形態に係る電気分解処理システムおよび廃水処理システムの構成を示す概略図である。
【図2】第二の実施形態に係る電気分解処理システムおよび廃水処理システムの構成を示す概略図である。
【図3】実施形態に係る電気分解処理システムおよび汚泥貯留槽を有する廃水処理システムの構成を示す概略図である。
【図4】電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 電気分解処理システム
3 廃水処理システム
12 電気分解反応槽
33 生物処理槽
36 沈殿槽
43 攪拌槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、廃水を浄化するための廃水処理システムであって、
前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水に混合させる混合手段と、
前記混合手段によって前記廃水に混合された前記汚泥、および前記活性汚泥を、該廃水から分離する分離手段と、
を備える廃水処理システム。
【請求項2】
前記分離手段は、前記生物処理が行われた前記廃水が導入される沈殿槽において、前記汚泥および前記活性汚泥を含む混合処理汚泥を沈殿させることで、該汚泥および該活性汚泥を前記廃水から分離し、
前記分離手段によって分離された前記混合処理汚泥のうち少なくとも一部を、前記沈殿槽から、前記廃水に対して前記生物処理を行うための生物処理槽へ返送する返送手段を更に備える、
請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記混合手段は、前記生物処理槽内の廃水、該生物処理槽に導入される前の廃水、または前記沈殿槽内の廃水の何れかに対して、前記汚泥を混合させる、
請求項2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記混合手段は、前記生物処理槽から送出された後、前記沈殿槽に導入される前の廃水が攪拌される攪拌槽において前記廃水に前記汚泥を混合させる、
請求項2に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該電気分解処理システムから導入するための配管を備え、
前記混合手段は、前記配管を介して、前記電気分解処理システムにおいて発生した汚泥を、順次導入して前記廃水に混合させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、一旦貯留するための貯留手段を更に備え、
前記混合手段は、前記貯留手段によって貯留されている汚泥を、前記廃水に混合させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
活性汚泥を用いた生物処理を行うことで、廃水を浄化するための廃水処理方法であって、
前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水に混合させる混合ステップと、
前記混合ステップで前記廃水に混合された前記汚泥、および前記活性汚泥を、該廃水から分離する分離ステップと、
が実行される廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−142681(P2010−142681A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319524(P2008−319524)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】