説明

廃水処理方法及び廃水処理装置

【課題】廃水に無機凝集剤、磁性粒子、及び高分子ポリマー(高分子凝集剤)を添加することにより形成した磁性フロックを除去する廃水処理装置において、回収した磁性フロックの分解に要するエネルギーを削減することができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供する。
【解決手段】廃水に無機凝集剤を添加してマイクロフロックを形成させ、ここにあらかじめ作成した磁性マイクロフロックを添加した後、マイクロフロックと磁性マイクロフロックを高分子ポリマー(高分子凝集剤)により合体させて巨大フロックを形成し、巨大フロックを磁気分離装置8によって分離して回収することにより廃水を処理する。そして、回収した巨大フロックを水熱反応により分解するとともに磁気分離装置26によって磁性粒子のみを回収し、磁性粒子を再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理方法及び廃水処理装置に係り、特に廃水に凝集剤や磁性粒子を添加し、凝集磁気分離によって前記廃水を処理する廃水処理方法及び廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集磁気分離方式による水処理法とは、被処理対象である廃水に凝集剤と磁性粒子を添加して、攪拌することにより形成させた凝集フロック(以下、磁性フロックと称する)を磁気分離装置の磁力によって回収することにより処理水を得る方式である。
【0003】
この方式では磁性粒子を含む磁性フロックが回収されるが、回収した磁性フロックは産業廃棄物として廃棄する必要があり、磁性粒子供給コストと産業廃棄物としての回収フロック処分費用がランニングコストの上昇を招いている。
【0004】
この課題を解決するための技術として、磁性粒子を含有する汚泥(磁性フロック)を水熱反応により分解し、汚泥を減容化する技術が特許文献1、2に開示されている。
【0005】
特許文献1、2に開示された廃水処理装置は、磁気分離装置による凝集磁気分離により汚水を浄化し、その際に発生する汚泥を高温高圧で水熱処理し、高温高圧ラインのなかで磁性粒子を磁気分離により回収する装置である。
【0006】
特許文献1、2の廃水処理装置における廃水の凝集過程は、まず磁性粒子とともに無機凝集剤を添加し、急速に攪拌することによりマイクロフロックを形成し、その後、高分子ポリマー(高分子凝集剤)を添加して緩く攪拌することによって、磁性フロックを大きく成長させている。つまり、まず、無機凝集剤によって水中の固形物の表面電荷を中和して凝集し易くし、急速に攪拌することにより各粒子の接触頻度を高めて凝集を促進させ、磁性粒子と固形物とが均一に混ざった小さな磁性フロックを形成する。この状態で表面は無機凝集剤が多く存在するため、多くが正の電荷に帯電している。
【0007】
そこでアニオン系(負に帯電)の高分子ポリマー(高分子凝集剤)を添加することにより、それぞれの磁性フロックを絡めて巨大な磁性フロックを形成し、その後段の磁気分離工程での分離性能を高めている。ここで高分子ポリマー(高分子凝集剤)を入れた後、攪拌強度を低下させているのは、高分子ポリマー(高分子凝集剤)による架橋をなるべく破壊しないようにするためである。このように形成された磁性フロックは、被除去対象であった固形物と磁性粒子とが、無機凝集剤によって特に強固に結びついているため、これを分解するためには水熱反応によるフロック分解工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−123399号公報
【特許文献2】特開平11−207399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2の廃水処理装置では、固形物と磁性粒子とが無機凝集剤によって強固に結合されているので、十分なフロック分解性能を得ようとすれば、かなりのエネルギーを投入しなければならず、また、フロック分解工程としての水熱反応装置の構造も複雑になる。
【0010】
特許文献1によれば、汚泥を10MPa以上に加圧して約350℃未満に加熱した後、磁性粒子分離装置に導くことが開示されている。また、特許文献2によれば、汚泥を2MPa程度に加圧して200℃前後に加熱した後、磁性粒子分離器に導くことが開示されている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回収した磁性フロックの分解に要するエネルギーを削減することができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、廃水に無機凝集剤、磁性粒子、及び高分子凝集剤である高分子ポリマーを添加することにより磁性フロックを形成し、該磁性フロックを磁力によって回収することにより、前記廃水から磁性フロックを取り除いた処理水を得る廃水処理方法において、前記廃水に前記無機凝集剤を添加して廃水中の浮遊物質を凝集した後、前記磁性粒子を前記廃水に添加し、この後、或いは前記磁性粒子の添加時とほぼ同時に前記高分子ポリマーを前記廃水に添加して、前記浮遊物質の凝集体と磁性粒子とを前記高分子ポリマーによって合体させて前記磁性フロックを得ることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、廃水に無機凝集剤、磁性粒子、及び高分子凝集剤である高分子ポリマーを添加することにより磁性フロックを形成し、該磁性フロックを磁力によって回収することにより、前記廃水から磁性フロックを取り除いた処理水を得る廃水処理装置において、前記無機凝集剤を前記廃水に添加する第1の添加手段と、前記無機凝集剤が添加された前記廃水に前記磁性粒子を添加する第2の添加手段、及び前記高分子ポリマーを添加する第3の添加手段と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、第1の添加手段によって、無機凝集剤を廃水に添加して攪拌することにより浮遊物質を凝集したフロックを形成する。次に、浮遊物質が凝集したフロックを含有する廃水に、第2の添加手段から磁性粒子を添加する。次いで、或いは前記磁性粒子の添加時とほぼ同時に、第3の添加手段から高分子ポリマー(高分子凝集剤)を前記廃水に添加して攪拌することにより、浮遊物質が凝集したフロックと磁性粒子とを合体させた磁性フロックを形成する。ここで、磁性粒子と浮遊物質が凝集したフロックとを結合している高分子ポリマー(高分子凝集剤)による結合力は、双方を凝集剤で結合したものよりも弱いので、磁性粒子と浮遊物質とは容易に分解される。よって、本発明によれば、回収した磁性フロックの分解に要するエネルギーを削減することができる。
【0015】
本発明の前記第2の添加手段は、前記磁性粒子と無機凝集剤とを水中で攪拌混合して形成されたフロックを添加することが好ましい。
【0016】
本発明の前記磁性粒子は四酸化三鉄を含有し、水中での沈降時の終速度が0.01〜1m/secであることが好ましい。
【0017】
また、本発明によれば、前記高分子ポリマーを添加して形成された前記磁性フロックを磁力により分離除去する磁気分離手段と、前記磁気分離手段によって分離された前記磁性フロックを回収するとともに、該回収した磁性フロックを分解して前記磁性粒子を回収する磁性粒子回収手段と、前記磁性粒子回収手段によって回収された前記磁性粒子を、前記第2の添加手段に返送する磁性粒子返送手段と、を備えたことが好ましい。
【0018】
本発明によれば、回収した磁性フロックから磁性粒子を簡素な装置構成で高効率に回収することができる。
【0019】
本発明の前記磁性粒子回収手段が、100〜200℃の水熱反応を利用したことが好ましい。
【0020】
また、本発明によれば、前記磁性粒子返送手段に磁性検知手段が備えられ、該磁性検知手段からの出力に応じて、前記磁性フロック形成手段に対する磁性粒子の投入量を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0021】
更に、本発明によれば、前記磁気分離手段は直列に複数段設けられ、前段の磁気分離手段と後段の磁気分離手段との間には検知手段が設けられ、該検知手段の出力に応じて磁性粒子の注入量を制御する制御手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回収した磁性フロックの分解に要するエネルギーを削減することができる。また、本発明では、磁性粒子を再利用することができるので、廃棄物の削減とランニングコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態の廃水処理装置を示した構成図
【図2】第2の実施の形態の廃水処理装置を示した構成図
【図3】第3の実施の形態の廃水処理装置を示した構成図
【図4】第4の実施の形態の廃水処理装置を示した構成図
【図5】第5の実施の形態の廃水処理装置を示した構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る廃水処理方法及び廃水処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0025】
〔実施例1〕
図1は、第1の実施の形態の廃水処理装置を示した構造図である。
【0026】
被処理水である廃水(小さな浮遊物質やエマルジョン化した油粒子を含む廃水)は廃水タンク1から、廃水ポンプ2によって廃水処理装置の急速攪拌槽6に送水される。急速攪拌槽6内の廃水には、無機凝集剤、例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム等が、無機凝集剤注入ポンプ(図示せず)によって凝集剤タンク3(第1の添加手段)から添加され、急速攪拌槽6内で急速に攪拌される。
【0027】
急速攪拌槽6において、表面が負に帯電していることによって廃水に分散していた浮遊物質又は油等のエマルジョンは、前記無機凝集剤が表面電荷を中和することにより凝集し易くなる。そして、急速攪拌槽6における急速の攪拌によって、浮遊物質又は油等のエマルジョンの衝突頻度が高まることにより、浮遊物質又は油等のエマルジョンは凝集されて、マイクロフロックと称される多数の小さな塊に形成される。
【0028】
次に、約1分程度の滞留時間を持った急速攪拌槽6を出たところで、この廃水に、磁性マイクロフロックタンク(第2の添加手段)4から磁性マイクロフロックが、不図示の磁性マイクロフロック注入ポンプによって添加される。磁性マイクロフロックは、マグネタイト等の強磁性粒子11を水中に分散させるとともに、水中に無機凝集剤12を添加して攪拌混合することによって形成される。磁性マイクロフロックの添加位置は、急速攪拌槽6と緩速攪拌槽7との連結路でもよく、緩速攪拌槽7内でもよい。これにより、前記マイクロフロックを含む水と磁性マイクロフロックを含む水とが、緩速攪拌槽7内で合流される。添加する無機凝集剤12は、急速攪拌槽6内の廃水に添加する無機凝集剤と同一でも異なっていてもよいが、同一である方が装置運転上容易であることが多い。
【0029】
磁性マイクロフロックタンク4から磁性マイクロフロックを緩速攪拌槽7内の廃水に添加した後、又はほとんど同時に高分子ポリマー(高分子凝集剤)を、不図示の高分子ポリマーポンプによって高分子ポリマータンク(第3の添加手段)5から緩速攪拌槽7に添加する。そして、緩速攪拌槽7内で低速で攪拌して磁性フロックを成長させる。高分子ポリマー(高分子凝集剤)としてはアニオン系が望ましく、例えばポリアクリルアミドが適している。ポリアクリルアミドの場合は粉末で保管しておき、フィーダで高分子ポリマータンク5に定量注入して攪拌する構造となっている。
【0030】
ところで、急速攪拌槽6で形成された前記マイクロフロックに、前記磁性マイクロフロックを添加すると、マイクロフロックと磁性マイクロフロックとが水中に分散した状態となる。この水中に前記高分子ポリマーを添加すると、高分子ポリマーが架橋しながら、マイクロフロックと磁性マイクロフロックとが合体した大きな磁性フロック(以下、巨大フロックと呼ぶ)が緩速攪拌槽7内で形成される。これにより、巨大フロックには、被除去対象である浮遊物質と磁性粒子の双方が含有されることになる。
【0031】
ここで、磁性粒子同士、廃水中の浮遊物質同士は無機凝集剤で強固に結合されているが、磁性粒子が結合された磁性体と、浮遊物質が結合された浮遊物とを結合しているのは弱い高分子ポリマー(高分子凝集剤)である。よって、磁性体と浮遊物との結合は、双方を凝集剤で結合したものよりも弱く、したがって、磁性体と浮遊物とは容易に分離される。このような磁性体と浮遊物とが含有された巨大フロックを含む凝集水が、磁気分離装置(磁気分離手段)8に送水される。
【0032】
磁気分離装置8には、例えばネオジウム磁石等の永久磁石を内蔵した磁気ドラム13が設置されている。この磁気ドラム13の近傍を前記凝集水が通過する際に、巨大フロックに含まれた磁性体が永久磁石の磁気力によって吸引されることにより、磁気ドラム13の表面に巨大フロックが磁性体を介して吸着される。吸着された巨大フロックは、磁気ドラム13の回転とともに空中に上げられ、スクレーパ14によって掻き取られる。掻き取られた巨大フロックは、回収フロックとして回収フロック分解装置(磁性粒子回収手段)15へ送られる。また、巨大フロックが回収された廃水は、処理水として装置の外部に排水される。
【0033】
回収フロック分解装置15として、図1では連続式の水熱反応装置が例示されている。
【0034】
回収フロックは、回収フロックタンク9に一旦溜められる。回収フロックタンク9には攪拌機が設けられており、攪拌機によってタンク9内を攪拌することにより回収フロックが沈殿することを防いでいる。回収フロックタンク9内の回収フロックは、プランジャ式、又はダイヤフラム式等の高圧ポンプ17によって反応容器36に圧送され、ヒータ34によって所定の熱が加えられる。回収フロックの主成分は水であるが、回収フロックは高圧なので100℃以上でも蒸発せず、反応容器36内で水熱反応が行われる。
【0035】
実施の形態では、回収フロックを100℃〜200℃の温度範囲で水熱反応させるのがさらなる特徴点である。回収フロックを200℃以上で水熱反応させると、無機凝集剤の凝集作用が急激に喪失することにより、分解が促進する。しかしながら、実施の形態では、磁性粒子をマイクロフロックのまま取り出すことを目的としているため、200℃以下で高分子ポリマー(高分子凝集剤)の架橋のみを切断することが好ましい。
【0036】
第1の実施の形態では、従来装置において、水熱反応を利用した回収フロックの分解には200℃以上の温度が必要と考えられていたものが、それよりも低温での分解が可能となる。これにより、廃水処理装置が大幅に簡素化するとともに、水熱反応に費やす消費エネルギーも削減できるという利点がある。
【0037】
例えば、250℃における水熱反応を行おうとすると、250℃の飽和圧力である約4MPa以上の圧力を想定して廃水処理装置を設計しなければならない。これに対して、200℃で水熱反応を行う場合は、200℃の飽和圧力である約1.6MPaの圧力を想定して廃水処理装置を設計すればよい。
【0038】
また、回収フロックの反応容器36への往路と反応容器36からの復路に、熱交換器35を設置することが好ましい。熱交換器35を設けることによって、反応容器36から戻る回収フロックの熱によって、反応容器36へ向う回収フロックを予備加熱することができるので、ヒータ34の省エネルギー化を図ることができる。
【0039】
熱交換器35によって温度が低下した分解後の回収フロックは、背圧弁37によって減圧されて大気圧となり小型磁気分離装置26に導かれる。
【0040】
小型磁気分離装置26は、磁気分離装置8と同様に磁気ドラム方式であり、ここで磁性粒子のみが浮遊物質から分離されてスクレーパ30で回収され、回収磁性粒子タンク31に溜められる。回収磁性粒子タンク31に溜められた回収磁性粒子は、回収磁性粒子ポンプ27により、磁性粒子再利用ライン(磁性粒子返送手段)28を介して、磁性マイクロフロックタンク4に返送されて再利用される。また、小型磁気分離装置26で分離された浮遊物質は、汚泥タンク25に溜められる。
【0041】
なお、実施の形態では、小型磁気分離装置26としてドラム式を例示したが、ディスク式、棒磁石式、磁気フィルタ式等、他の磁気分離構造でも同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、第1の実施の形態では、回収フロック分解装置15として、連続式の水熱反応装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、バッチ式の水熱反応装置を用いた場合でもよい。また、他の装置、例えば機械的な攪拌やせん断、pH調整、大気圧での加熱による温度上昇、超音波等の一つ、又は、それらを組み合わせた方式を用いた場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0043】
〔実施例2〕
図2は、第2の実施の形態の廃水処理装置を示した構造図である。
【0044】
第2の実施の形態の廃水処理装置と図1に示した第1の実施の形態の廃水処理装置との構成の相違点は、磁性マイクロフロックを用いるのではなく、予め適切な磁性粒子を用いたことにある。この磁性粒子は、磁性粒子タンク33に溜められており、この磁性粒子を廃水に添加する位置は、図1の廃水処理装置において磁性マイクロフロックを添加する位置と同一である。
【0045】
ここで適切な磁性粒子とは、磁性粒子タンク33の中や添加後の装置中で沈降や滞留がし難い密度と粒径の関係を有し、更に後段の磁気分離装置8において磁性フロックが磁気分離され易い磁化と粒径を持ったものが要求される。そして更に、後段の回収フロック分離装置15において、磁性粒子が分離され易い粒径を有するものが要求される。
【0046】
これらの要求を満たすためには、まず、含有する磁性体はなるべく安定で安価なものがよいため四酸化三鉄(Fe)が適しているが、磁気分離し易くするためにはなるべく大きな四酸化三鉄の含有量が求められる。
【0047】
一方、四酸化三鉄の含有量が大き過ぎると、水と比較して密度が大きいので沈降し易くなるため、装置内で容易に沈降、滞留するようになり、使用が困難となる。
【0048】
そこで、樹脂等で四酸化三鉄を固めることにより、ある程度、四酸化三鉄を含んだ状態で、かつ、粒子の見かけの密度を低くすることができる。ここで、四酸化三鉄の比重は5程度であるため水よりかなり重く、使用する樹脂はできるだけ軽い物質の方が適している。また、回収フロック分離装置15で分離し易くするためには、磁性粒子の粒径が大きいほど望ましいが、四酸化三鉄の含有量を多くし過ぎると取り扱い上の困難を招き、また、樹脂の含有量を多くし過ぎると磁気分離性能の低下を招く。
【0049】
つまり、第2の実施の形態に適した磁性粒子は、四酸化三鉄を含み、かつ密度と粒径の関係で表すことが可能であり、それはすなわち、密度と粒径によって決定される水中での沈降時の終速度で定義できる。
【0050】
磁性粒子の適切な水中での沈降時の終速度は、0.01〜1m/secである。これより終速度が大きい場合は、沈降滞留による取り扱い困難の問題が生じ、また、終速度が小さい場合は磁気分離性能を低下させる問題が生じる。
【0051】
なお、前述した実施の形態では、樹脂等と固めることによって磁性粒子を形成することを示したが、これに限定されるものではない。例えば、磁性体単体でも上記終速度を満たす粒子であれば、粒径が小さくなる分、回収フロック分離装置15での分離性能が樹脂等を含有する場合と比較して劣るものの、その他の効果は同様である。
【0052】
〔実施例3〕
図3は、第3の実施の形態の廃水処理装置を示した構造図である。
【0053】
図1、図2で示した廃水処理装置では、磁気分離装置8の構造として、磁気ドラム方式を示し、そのドラム回転方向と流体進行方向とが逆となる場合を示した。この構造では、スクレーパ14によって磁性フロックを回収してきれいな面となった磁気ドラム表面が、処理水出口近傍を通過することから、処理水の水質を安定的にきれいに保つ構造に適している。
【0054】
しかしその一方で、フロック濃度の高い水である流入口近傍に、磁性フロックが大量に堆積した磁気ドラム表面が通過することになる。このため、特に高濃度の廃水を扱う場合に、実施の形態の如く弱い力で結合した磁性体と浮遊物とを含む磁性フロックは、前記流入口近傍においてその結合が破壊される。この結果として、磁性体の含有率が比較的小さくなった磁性フロックが、磁気ドラムに吸引されずに処理水側に漏れるという問題点を有する。
【0055】
そこで、図3に示すように、ドラム回転方向と流体進行方向とを同一にさせる構造が適している。この構造を採用することにより、磁気ドラム13と流体41との相対速度を小さくすることができるため、実施の形態の如く高分子ポリマーの弱い力で磁性体と浮遊物とを結び付けている磁性フロックに対しても、磁性フロックが途中で破壊されることなく、磁気分離装置8によって効率的に回収される。
【0056】
また、流入口38は、図3に示したように水平配管39の側面に切込み40が形成され、その切込み40から流入するようにすると、磁性フロックが破壊されることなく、均一に、滞留等を生じさせずに流入させることが可能である。
【0057】
本構造により、磁性フロックを破壊することなく、磁気ドラム13に吸引させてスクレーパ14により連続的に回収部43で回収できるとともに、良好な処理水42を得ることができる。
【0058】
〔実施例4〕
図4は、第4の実施の形態の廃水処理装置の構造図である。
【0059】
この廃水処理装置は、図1及び図2に示した廃水処理装置に加え、磁性粒子再利用ライン28中を流れる磁性粒子の量をセンサ21によって測定し、その出力値に応じて磁性粒子注入ポンプ29の注入量を制御部44によって制御する。すなわち、制御部44は、緩速攪拌槽7に添加する単位時間当たりの磁性粒子添加量が予め記憶されており、その添加量からセンサ21によって測定された磁性粒子の量を減算し、この減算した量を磁性粒子注入ポンプ29から供給するように磁性粒子注入ポンプ29の駆動を制御する。
【0060】
本構造により、最適な磁性粒子添加量で運転することが可能となる。本実施の形態では、図2の廃水処理装置にセンサ21を用いた例を示したが、図1の廃水処理装置にセンサ21を用いた場合でも同様の効果を得ることができる。センサ21としては、ホール素子、SQUID(超伝導量子干渉素子)、又は渦電流を利用したものを例示できる。
【0061】
一方、図1、図2の廃水処理装置の如くセンサ21を利用しない場合は、過剰な量の磁性粒子を添加することにより、水処理性能を安定に保つことが可能である。この場合は、回収フロック量が多くなるため回収フロック分解装置15が大きくなるという欠点を有するが、センサや制御装置が不要になるという長所を有する。
【0062】
〔実施例5〕
図5は、第5の実施の形態の廃水処理装置を示した構造図である。
【0063】
この廃水処理装置は、図1及び図2で示した廃水処理装置に加え、磁気分離装置8を直列に複数台(図では2台)設け、その途中にセンサ23が設置されている。このセンサ23の出力値に基づいて、磁性粒子注入ポンプ29を制御部46によって制御する。すなわち、制御部44は、単位時間当たりに緩速攪拌槽7に添加する単位時間当たりの磁性粒子添加量が予め記憶されており、その添加量からセンサ23によって測定された磁性粒子の量を減算し、この減算した量を磁性粒子注入ポンプ29から供給するように磁性粒子注入ポンプ29の駆動を制御する。
【0064】
本構造の場合は、センサ23は例えばSS(浮遊物質)、濁度等を測定すればよいためセンサ構造が簡便となる。このセンサ23によって、前段の磁気分離装置8の処理水中の値を測定し、所定の上限値を越えたところで磁性粒子注入ポンプ29をON、所定の下限値を下回ったところで磁性粒子注入ポンプ29をOFFにする、或いはセンサ23の出力値に応じて磁性粒子注入ポンプ29の注入量を連続的に変化させる、等の制御を行えばよい。磁気分離装置8と磁気分離装置8との間にセンサ23を設置することにより、磁性粒子添加量が少なくなってきた場合でも、直ちに全体の処理水水質に大きな影響を及ぼすことは無い。
【0065】
なお、図5に示したように、磁気分離装置8を2台設置する場合は、隣接する2台のスクレーパ14、14を対向させるように位置させると、スクレーパ14、14によって回収される回収フロックが一箇所に集まるため、装置を小型化することが可能である。図5の廃水処理装置では、図2の廃水処理装置をベースにした例を示したが、図1をベースにした廃水処理装置でも同様の効果を得ることができる。また、図5の実施の形態において、図3に示した磁気分離構造を用いた場合でも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…廃水タンク、2…廃水ポンプ、3…凝集剤タンク、4…磁性マイクロフロックタンク、5…高分子ポリマータンク、6…急速攪拌槽、7…緩速攪拌槽、8…磁気分離装置、9…回収フロックタンク、11…強磁性粒子、12…無機凝集剤、13・・・磁気ドラム、14・・・スクレーパ、15・・・回収フロック分解装置、17…高圧ポンプ、21…センサ、23・・・センサ、25・・・汚泥タンク、26・・・小型磁気分離装置、28…磁性粒子再利用ライン、29・・・磁性粒子注入ポンプ、31…回収磁性粒子タンク、33…磁性粒子タンク、34…ヒータ、35…熱交換器、36・・・反応容器、37・・・背圧弁、38…流入口、39…水平配管、40…切込み、41…流体、42…処理水、43…回収部、44…制御部、46…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水に無機凝集剤、磁性粒子、及び高分子凝集剤である高分子ポリマーを添加することにより磁性フロックを形成し、該磁性フロックを磁力によって回収することにより、前記廃水から磁性フロックを取り除いた処理水を得る廃水処理方法において、
前記廃水に前記無機凝集剤を添加して廃水中の浮遊物質を凝集した後、前記磁性粒子を前記廃水に添加し、この後、或いは前記磁性粒子の添加時とほぼ同時に前記高分子ポリマーを前記廃水に添加して、前記浮遊物質の凝集体と磁性粒子とを前記高分子ポリマーによって合体させて前記磁性フロックを得ることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
廃水に無機凝集剤、磁性粒子、及び高分子凝集剤である高分子ポリマーを添加することにより磁性フロックを形成し、該磁性フロックを磁力によって回収することにより、前記廃水から磁性フロックを取り除いた処理水を得る廃水処理装置において、
前記無機凝集剤を前記廃水に添加する第1の添加手段と、
前記無機凝集剤が添加された前記廃水に前記磁性粒子を添加する第2の添加手段、及び前記高分子ポリマーを添加する第3の添加手段と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項3】
前記第2の添加手段は、前記磁性粒子と無機凝集剤とを水中で攪拌混合して形成されたフロックを添加する請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記磁性粒子は四酸化三鉄を含有し、水中での沈降時の終速度が0.01〜1m/secである請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記高分子ポリマーを添加して形成された前記磁性フロックを磁力により分離除去する磁気分離手段と、
前記磁気分離手段によって分離された前記磁性フロックを回収するとともに、該回収した磁性フロックを分解して前記磁性粒子を回収する磁性粒子回収手段と、
前記磁性粒子回収手段によって回収された前記磁性粒子を、前記第2の添加手段に返送する磁性粒子返送手段と、
を備えた請求項3又は4に記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記磁性粒子回収手段が、100〜200℃の水熱反応を利用した請求項5に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記磁性粒子返送手段に磁性検知手段が備えられ、該磁性検知手段からの出力に応じて、前記磁性フロック形成手段に対する磁性粒子の投入量を制御する制御手段を有する請求項5又は6に記載の廃水処理装置。
【請求項8】
前記磁気分離手段は直列に複数段設けられ、前段の磁気分離手段と後段の磁気分離手段との間には検知手段が設けられ、該検知手段の出力に応じて磁性粒子の注入量を制御する制御手段を有する請求項5、6又は7に記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143330(P2011−143330A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4098(P2010−4098)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】