説明

廃液晶表示装置の解体方法

【課題】液晶表示装置の輸送・解体作業が安全に行える方法を提供する。
【解決手段】解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れている廃液晶表示装置を密封して搬送する工程と、排気雰囲気で密封を開封後、バックライトが割れている廃液晶表示装置を解体する工程とを含む廃液晶表示装置の解体方法、ならびに、解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れていない廃液晶表示装置から、スタンドと裏キャビネットと制御基板と前キャビネットとを取り外して液晶モジュールにまで解体する工程と、排気雰囲気で液晶モジュールを解体し、材料または部品ごとに回収する、廃液晶表示装置の解体方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液晶表示装置を解体する前に、バックライト(蛍光管)の割れを判別し、バックライトの割れの有無に応じて、廃液晶表示装置を安全に輸送し、解体する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では所得水準の向上に伴い、エアコンディショナ(エアコン)、テレビジョン受信機(テレビ)、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電製品、パーソナルコンピュータ(パソコン)、ワードプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。その結果、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。
【0003】
加えて、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫などの地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0004】
上記のような状況を受け、2001年4月より家電リサイクル法が施行された。ここで、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目(以下、「家電4品目」と略記する)のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0005】
これら家電4品目においては、関係者の鋭意努力のもと、法律施行当初に比べリサイクルが格段に進んでいる。現在、家電4品目に使用されている鉄、銅、アルミニウムなどの金属はもとより、プラスチックについてもリサイクルが拡大しつつある。また、テレビにおいては、ブラウン管表示装置のブラウン管ガラスを切断して電子銃や蛍光体を除去した後、ガラスカレットとして元のブラウン管用ガラスに再生使用するリサイクル技術が既に実用化されている。
【0006】
家電製品に含まれる金属、プラスチックおよびガラスなどの素材のリサイクルに際しては、まず、様々な部品・材料から構成されている家電製品の廃棄物を手解体などで解体し、部品・材料ごとに回収し、素材ごとに分別した後、元の素材として再生利用する方法が一般的である。
【0007】
たとえば、廃ブラウン管テレビの場合には、主に、(1)後キャビネットの取り外し工程、(2)ワイヤーハーネスの取り外し工程、(3)制御基板の取り外し工程、(4)前キャビネットの取り外し工程、(5)電子銃の取り外し工程、(6)ブラウン管前後のガラスの分離工程、(7)ブラウン管ガラスの粉砕工程、という一連の工程により、手解体されている。回収された部品・材料は素材ごとに分別され、それぞれ適した方法で元の素材へ再生される。たとえば、キャビネット用プラスチック、ワイヤーハーネスおよび制御基板に含まれる金属、ブラウン管ガラスなどが再生利用されている。
【0008】
ところで、近年、表示部品として液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル、電解放出型ディスプレイパネルなどの薄型パネルを搭載した薄型表示装置の需要が、省電力、省スペース、軽量かつデジタル放送の受像に適するといった特性から、近年の地球環境問題への関心の高まり、ならびにテレビ放送のデジタル化と相俟って、急激に増加している。特に、大型の薄型パネルを搭載した大画面薄型表示装置の需要が劇的に増加している。これに伴い、薄型表示装置の廃棄量も今後急激に増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上などの要求が高くなってきている。
【0009】
ところが、このような薄型表示装置は比較的新しい製品であること、また、現状は比較的廃棄物の量が少ないこともあり、上述したブラウン管テレビのような適切なリサイクルは実用化されていない。廃棄された薄型テレビは、廃棄物の処理施設で破砕されて、シュレッダーダストなどとともに埋立処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0010】
加えて液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどを搭載した薄型表示装置においては、近い将来、家電リサイクル法の適用品目として追加される動きもある。このような背景から、液晶テレビや液晶モニタのリサイクル技術の開発は急務となっている。
【0011】
資源を有効利用するという観点から、素材を再生利用するためには、上述のように、薄型表示装置を部品・材料ごとに分離解体する方法が必要とされている。加えて、ブラウン管テレビには搭載されていなかった部品が搭載されている薄型パネルの適切なリサイクル方法が望まれている。
【0012】
さらに、非発光型の薄型パネルを用いた薄型表示装置にはバックライト光源として、水銀を含んだバックライト(蛍光管)を使用しているものがある。水銀は、人体に有毒な物質であり、リサイクルの際もバックライトの破損による大気中への漏洩などがないよう適切に搬送・回収・処理することが望ましい。
【0013】
液晶表示装置の解体を容易にする方法として、たとえば特開2004−342550号公報(特許文献1)には、バックライト、インバータ基板、ランプ支持枠などをユニット化し、容易に組立、解体できるバックライト構造が開示されている。
【0014】
さらに、特開平6−168253号公報(特許文献2)には、液晶表示装置を含む薄型表示装置の一部に解体方法や使用材料情報をバーコードで表示して、リサイクルプラントで解体される際に、解体ライン入口でバーコードなどを読み取り、解体作業を展開する方法およびシステムが開示されている。しかしながら、特許文献2には、具体的な製品の搬送方法、解体方法については記載されていない。
【特許文献1】特開2004−342550号公報
【特許文献2】特開平6−168253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
薄型表示装置は、省電力・省資源に貢献でき、デジタル放送の受像に適したテレビ受像機であるので、地球環境問題への注目が高まり、テレビ放送のデジタル化に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、廃棄される薄型テレビも、数・量ともに急激に増大すると予想される。
【0016】
薄型表示装置、中でも特に液晶表示装置は、プラスチックの他に、ガラス、液晶材料、希少金属であるインジウムなどの金属といった部品・材料から構成されている。液晶表示装置を適切に解体し、部品・材料ごとに回収した後、部品・材料を素材ごとに分別することにより元の素材へ再生利用し、資源の有効利用を図ることが可能である。
【0017】
今までは、液晶表示装置のリサイクルのための適切な搬送・解体方法が確立されておらず、ブラウン管テレビその他の家電製品や部品と比較して技術確立などが遅れているのが実情である。したがって、今後、廃棄される液晶表示装置の増加に備えたリサイクルのための搬送・解体方法の確立が早急に要求される。
【0018】
さらに、バックライト(蛍光管)を有する液晶表示装置は、有害物質である水銀を3mm直径程度の細いガラス管に封入しているため、バックライト(蛍光管)が割れやすく、水銀が大気中へ漏洩する危険性が高く、廃液晶表示装置の搬送や解体作業時に水銀を吸引する可能性が高い。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、液晶表示装置の輸送・解体作業が安全に行える方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の廃液晶表示装置の解体方法は、解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れている廃液晶表示装置を密封して搬送する工程と、排気雰囲気で密封を開封後、バックライトが割れている廃液晶表示装置を解体する工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の廃液晶表示装置の解体方法はまた、解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れていない廃液晶表示装置から、スタンドと裏キャビネットと制御基板と前キャビネットとを取り外して液晶モジュールにまで解体する工程と、排気雰囲気で液晶モジュールを解体し、材料または部品ごとに回収することを特徴とする。
【0022】
本発明の廃液晶表示装置の解体方法において、バックライト割れの判別に波長10-8〜10-6cmの軟エックス線を利用することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、廃家電集荷場所などで、廃液晶表示装置を解体する前に、バックライトの割れが判別でき、バックライトが割れている廃液晶表示装置については、密封あるいは包装することにより、大気中に水銀蒸気が漏出する可能性を低くすることができる。また、廃液晶テレビを解体するリサイクルプラントにおいては、バックライト割れのある廃液晶テレビを目視判別可能とし、密封された廃液晶テレビは排気設備のあるブースで解体することが可能となるので、運搬作業者、解体作業者が安心して、安全に作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の廃液晶表示装置の解体方法は、解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れている廃液晶表示装置を密封搬送する工程と、排気雰囲気で密封を開封後、バックライトが割れている廃液晶表示装置を解体する工程とを含むことを特徴とする。また、本発明の廃液晶表示装置の解体方法は、解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、バックライトが割れていない廃液晶表示装置から、スタンドと裏キャビネットと制御基板と前キャビネットとを取り外して液晶モジュールにまで解体する工程と、排気雰囲気で液晶モジュールを解体し、材料または部品ごとに回収することを特徴とする。
【0025】
図1は、本発明の廃液晶表示装置の解体方法の前半部分の好ましい一例を示すフローチャートである。図1に示すフローチャートでは、廃液晶表示装置を搬入する工程(消費者あるいは家電販売店から廃家電集荷場所に持ち込む場合)(ステップS1)と、バックライト(蛍光管)の割れを判別し、分別する工程(ステップS2)と、バックライトが割れている廃液晶表示装置を箱などに密封する工程(ステップS2−1)と、廃液晶表示装置(バックライトが割れていない廃液晶表示装置)あるいは密封した廃液晶表示装置(バックライトが割れている廃液晶表示装置)をコンテナなどに投入する工程(ステップS3)と、リサイクルプラントに搬送する工程(ステップS4)と、リサイクルプラントでバックライトの割れを判別する目印となる密封確認・分別をする工程(ステップS5)とを含む。このような本発明の廃液晶表示装置の解体方法の前半部分におけるステップS1〜S3は、通常、廃家電集荷場所などにおいて行われる。
【0026】
また図2は、本発明の廃液晶表示装置の解体方法の後半部分の好ましい一例を示すフローチャートである。図2に示すフローチャートでは、まず、リサイクルプラントに入ってきた段階でバックライト割れを示す密封有無を確認する(ステップS5)。密封していない廃液晶表示装置はバックライトが割れていない廃液晶表示装置であり、このような廃液晶表示装置は、通常の廃液晶表示装置の解体手順であるステップS6A、S7A、S8Aの解体手順に従い解体することとなる。また、密封された廃液晶表示装置は、まず、バックライトが割れているため、排気雰囲気でへ投入して密封を解除する(ステップS6B)。その後、排気雰囲気の下で、スタンド・後キャビネット、制御基板、前キャビネットを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程(ステップS7B)と、液晶モジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネル組品とに分離し、2つの組品をそれぞれ解体し、部品や材料ごとに回収する工程(ステップS8B)の作業を全て行う。
【0027】
なお、図2に示す例の解体手順には、廃液晶表示装置を解体ラインへ搬入する工程(ステップS6A)または廃液晶表示装置を排気雰囲気へ投入する工程(ステップS6B)と、スタンド・後キャビネット、制御基板、前キャビネットを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程(ステップS7A,S7B)と、液晶モジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネル組品とに分離し、2つの組品をそれぞれ解体し、部品や材料ごとに回収する工程(ステップS8A,S8B)とから構成された例が示されているが、廃液晶表示装置を解体する前に、リサイクルプラントにおいてバックライト割れを判別する工程を加え、割れているものについては排気下で全ての解体を行うようにすれば、さらに望ましい。
【0028】
上記各工程の具体的な説明に先立ち、本発明に供される液晶表示装置の典型的な構造について説明する。図3は、本発明に供される液晶表示装置の典型的な構造を模式的に示す分解斜視図である。液晶表示装置の場合、図3に示すように、後キャビネット1、スタンド2、前キャビネット3、ならびに、後キャビネット1と前キャビネット3との間に配置された制御基板4および液晶パネルモジュール5を基本的に備える。このうち、液晶パネルモジュール5は、バックライトシャーシ6、反射シート7、バックライトクリップ8、直線型のバックライト(蛍光管)9、光学系シート10(プリズムシート、拡散シートなどから構成)、液晶パネル組品11(液晶ドライバー基板11a、プラスチックケース11b、ベゼル11cおよびパネルガラス11dから構成)などから構成されている。液晶材料や透明電極などは2枚のパネルガラス11dの間に封入されている。以下、図1〜図3を参照しながら、本発明の廃液晶表示装置の解体方法について具体的に説明する。
【0029】
〔1〕廃液晶表示装置の搬入
まず、廃液晶表示装置を消費者が家電販売店や廃家電集荷場所に持ち込む(ステップS1)。廃液晶表示装置を廃棄したという証明は、リサイクル券、ICタグなどで、廃液晶表示装置に貼付あるいは入力される。
【0030】
〔2〕バックライト割れ判別工程
次に、家電販売店や廃家電集荷場所に搬入された廃液晶表示装置におけるバックライト(蛍光管)の割れの有無を判別する(ステップS2)。本発明の廃液晶表示装置の解体方法において、バックライトの割れの有無を判別する工程に用いられる手段が特に制限されないが、波長10-8〜10-6cmの軟エックス線を利用することが好ましい。この軟エックス線は磁界や電界により曲げられないとか、結晶に当たると回折し干渉するとか、波長が短いほどよく透過し、その透過力は物質の密度に反比例するという特性を有するため、液晶表示装置を解体せずとも、バックライトのガラスが割れているか否かを好適に観察することができるためである。
【0031】
図4は、本発明の廃液晶表示装置の解体方法におけるバックライト割れ判別工程において好適に用いられ得る軟X線装置21を模式的に示す図である。当該バックライト割れ判別工程は、たとえば図4に示すような軟X線装置21を用いることで好適に行うことができる。図4に示す例の軟X線装置21は、X線発生装置22と、測定対象を載置するためのステージ23と、X線カメラ24とを備えるように構成され、これらがX線が漏れないように筐体25により覆われた構成となっている。このような軟X線装置21を用い、ステージ23上に廃液晶表示装置26を載置した状態で、X線発生装置22のタングステンなどのフィラメントコイルに高電圧の電気(たとえば、100KeV、70mA)を印加して波長10-8〜10-6cmの軟エックス線を発生させ、ステージ23上の廃液晶表示装置26をX線カメラ24で撮像する。図5には、具体的に軟X線装置を用いて撮像した写真を示しているが、図5から、このような軟X線装置を用いることで、廃液晶表示装置を解体しないでも、バックライト(蛍光管)のガラスが割れている様子を観察することができることが分かる。
【0032】
また図6は、本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられ得る密封容器31に廃液晶表示装置32を収容した状態を模式的に示す斜視図である。バックライト割れ判別工程(ステップS2)においてしてバックライトが割れていると判別された廃液晶表示装置32については、図6に示すような密封できる密封容器31内に収容する(ステップS2−1)。バックライトが割れていると判別された廃液晶表示装置32を密封容器31に収容することで、割れたバックライト中の水銀が箱外に漏れる危険性を少なくできるとともに、密封していることでバックライトが割れていることが判別できるので、解体作業の安全が図れるという効果も併せ持つ。
【0033】
〔3〕廃液晶表示装置をコンテナなどに投入する工程
次に、密封した廃液晶表示装置(バックライトが割れたもの)と密封していない廃液晶表示装置(バックライトが割れていないもの)を、まとめてコンテナなどに投入する(ステップS3)。なお、この際、密封した廃液晶表示装置と密封していない廃液晶表示装置とを互いに異なるコンテナに別々に投入するようにしてもよい。
【0034】
〔4〕リサイクルプラントへ搬送する工程
次に、廃液晶表示装置を投入したコンテナをリサイクルプラントに搬送する(ステップS4)。これまでの工程(ステップS1〜S3)は、家電販売店や廃家電集荷場所で行われていたが、これ以降の工程はリサイクルプラントで行われる。
【0035】
〔5〕リサイクルプラントで密封を確認する工程
次に、リサイクルプラントにおいて、搬入されてきた廃液晶表示装置が、密封されているか否かを確認する(ステップS5)。この確認は、リサイクルプラントに搬送されてくる廃液晶表示装置の荷姿を目視にて判別することで行うことができる。密封されている廃液晶表示装置については、コンテナから取り出し、排気設備のある場所で解体する(ステップS6B,S7B,S8B)とともに、密封されていない廃液晶表示装置については、以下の手順にて解体する。
【0036】
〔6A〕解体ラインへ搬入する工程
密封されていない(すなわち、バックライトが割れていない)廃液晶表示装置については、まず、解体ラインへ搬入される(ステップS6A)。ここで、図7は、本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられる解体ライン41を模試的に示す斜視図である。廃液晶表示装置42は、たとえば図7に示すような標準的なコンテナ43に整然と収容されて、販売店または廃家電集荷場所からリサイクルプラントに搬送され、解体ライン41へ搬入される。図7に示す例の解体ライン41は、たとえば、搬入ストッカ44と、搬送装置45と、読み取り装置46とを基本的に備える。
【0037】
搬入ストッカ44には、パレット47が設置されており、搬入された廃液晶表示装置42は1台ずつパレット47上に載置される。この際、廃液晶表示装置42は、ディスプレイの面を下にし、パレット47上に載置される。パレット表面は弾性のある材料を使用することが好ましく、これにより、パレット47が衝撃を吸収するため、廃液晶表示装置42の破損を防ぐことができる。
【0038】
搬入ストッカ44に搬入された廃液晶表示装置42は、当該廃液晶表示装置42に予め施された標識が検知される。この標識は、たとえば図7に示す例のように、廃液晶表示装置42に予め添付されたラベル48(好適にはリサイクル券)を、読み取り装置46を用いて読み取ることで実現できる。読み取り装置46としては、たとえばバーコードリーダーなどの従来公知の適宜の読み取り機が挙げられる。
【0039】
読み取り機46で読み取られた情報は、解体に供される廃液晶表示装置の解体情報として、パーソナルコンピュータに転送される。パーソナルコンピュータには、読み取り装置46から転送された情報に基づいて、液晶表示装置の再商品化率などのデータ処理を行うことが可能なプログラムが格納されている。このような処理を施すことで、再資源化処理されるまでの液晶表示装置のリサイクルトレースが確認できるとともに、再商品化率などのデータ処理が確実に行える。
【0040】
搬入ストッカ44に搬入された廃液晶表示装置42は、パレット47の上に載置された状態でパレット47ごと搬送装置45へ移載される。ここで、搬送装置45としては、たとえば、ローラコンベアあるいはベルトコンベアを用いることができる。コンベアのローラおよびベルトは弾性のある材質を用いることが望ましい。コンテナから搬送装置45上に置かれたパレット47上に直接搬入された場合には、搬送装置45への移載は省略できる。
【0041】
〔7A〕スタンド・後キャビネット・制御基板・前キャビネットを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程
廃液晶表示装置がスタンド(図3に示す例ではスタンド2)を備える場合には、まず、このスタンドを取り外す。スタンドの取り外し方法としては、具体的には、液晶表示装置の本体とスタンドとを締結しているねじを電動ドライバなどを用い手作業で外して、スタンドを取り外す。このようにして、まず、廃液晶表示装置のスタンドが回収される。回収されたスタンドからは、含有されている金属およびプラスチックなどを再生し利用することができる。なお、スタンドを備えていない廃液晶表示装置を本発明の解体方法に供する場合には、当該工程は省略できる。
【0042】
次に、廃液晶表示装置42から、後キャビネット(図3に示す例では後キャビネット1)を取り外す。後キャビネットの取り外し方法としては、具体的には、廃液晶表示装置の本体の後キャビネットと前キャビネットとを留めているねじ、スナップフィットを手作業で外して、後キャビネットと取り外す。このようにして後キャビネットが回収される。回収された後キャビネットは、素材ごとに分別され、元の素材へと再生利用される。
【0043】
次に、制御基板(図3に示す例では制御基板4)を取り外す。制御基板の取り外し方法としては、具体的には、制御基板を固定している締結部品を手作業で外し、制御基板を取り外す。たとえば、ねじにより固定されている場合には、電動ドライバなどを用いて、手作業でねじを取り外し、制御基板を取り外す。このようにして制御基板が回収される。回収された制御基板からは、銅などの金属を再生し利用することができる。
【0044】
最後に、前キャビネット(図3に示す例では前キャビネット3)と液晶パネルモジュール(図3に示す例では液晶パネルモジュール5)とを分離する。分離の方法としては、前キャビネットと液晶パネルモジュールとを固定しているねじ、スナップフィットなどを手作業で外し、前キャビネットを取り外す。このようにして前キャビネットと液晶パネルモジュールが回収される。前キャビネットは、素材ごとに分別し、元の素材へ再生利用することができる。液晶パネルモジュールは、後の工程に流される。
【0045】
〔8A〕液晶パネルモジュールを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程
分離された液晶パネルモジュール(図3に示す例では液晶パネルモジュール5)を、バックライトシャーシ組品と液晶パネル組品(図3に示す例では液晶パネル組品11)とに分離する。分離の方法としては、液晶パネルモジュールのスナップフィットやねじを手作業で外すことで、分離を行う。このとき、同時に、液晶パネル組品を覆っているベゼル、プラスチックを手作業で取り外す。なお、「バックライトシャーシ組品」とは、バックライト、バックライトシャーシなどから構成される部品の組み合わせを指し、バックライトおよびバックライトシャーシ以外の構成部品としては、たとえば図3に示す例では反射シート7、バックライトクリップ8などが含まれる。回収されたバックライト組品と液晶パネル組品は、さらに部品単位まで解体する。具体的には、バックライトシャーシ組品のねじ、クリップ、コネクタを手作業で外すことによってバックライト(蛍光管)を取り外す。このようにして、バックライトおよびバックライトシャーシが回収される。
【0046】
なお、液晶パネルモジュールのバックライトは、省エネルギー・高効率の観点から、通常、ガラス管には直径3mm程度の細いガラス管が使用されている。その結果、バックライトは、廃液晶表示装置の解体作業中に余分な力が加わった場合などに割れやすくなっている。その上、水銀が封入されているので、解体作業中にバックライトが破損した場合には、解体に従事する作業者(解体作業者)が水銀を吸引する虞がある。水銀は、一度人体に取り込まれると、体外に排出されず、蓄積し、吐き気、下痢、不眠症、神経異常などの傷害を起こすことが確認されている。そのため、バックライトシャーシ組品を解体する工程は、排気雰囲気下で行うことが望ましい。
【0047】
ここで、図8は、バックライトの割れていない廃液晶表示装置の解体を模式的に示す図であり、図9は本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられ得る局所排気装置52を模式的に示す図である。図7に示した解体ライン41から供給された廃液晶表示装置を、コンベア51で搬送しながら、領域Aでは、上述のように前後キャビネット、制御基板、スタンドを取り外す作業を行い、また、領域Bでは、図9に示すような局所排気装置52で排気しながら、液晶モジュール53から、バックライトや液晶パネルガラスを回収する作業を行うようにする。このように液晶モジュール53を解体するときには、万一、バックライトが割れ、水銀が飛散しても排気することにより、液晶モジュールの解体を安全に行うことができる。
【0048】
〔6B〕排気雰囲気へ投入する工程
一方、ステップS5において、密封容器に収容されていることが確認された、バックライトが割れている廃液晶表示装置については、排気雰囲気へ投入する(ステップS6B)。この排気雰囲気としては、図9に示したような局所排気装置52を用いた排気雰囲気が好適に採用される。このように、本発明の廃液晶表示装置の解体方法では、排気雰囲気下で密封を開封して、全てを解体するようにする。これにより、割れたバックライトから水銀が飛散しても排気することにより、安全に廃液晶表示装置の解体を行うことができる。
【0049】
〔7B〕スタンド・後キャビネット・制御基板・前キャビネットを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程
バックライトが割れた廃液晶表示装置の解体は、排気雰囲気下で行うこと以外は、上述したバックライトが割れていない廃液晶表示装置の場合と同様にして、スタンド・後キャビネット・制御基板・前キャビネットを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程(ステップS7B)を行う。すなわち、まず、スタンドを取り外し、後キャビネットを取り外し、さらに制御基板を取り外した後、前キャビネットを取り外し、液晶パネルモジュールを分離して、後の工程に供する。この場合、図8に示した、局所排気装置52が設けられた領域Bで、当該工程の全ての作業を行うようにする。
【0050】
〔8B〕液晶パネルモジュールを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する工程
次に、液晶パネルモジュールを解体し、材料あるいは部品ごとに回収する(ステップS8B)。当該工程は、バックライトが割れていない廃液晶表示装置の場合と同様に排気雰囲気下で行われることが望ましいが、このバックライトが割れている廃液晶表示装置の場合には、廃液晶表示装置の解体を既に排気雰囲気下で行っているので、そのまま排気雰囲気下で液晶パネルモジュールの解体を行うようにすればよい。
【0051】
このような本発明の廃液晶表示装置の解体方法によれば、廃家電集荷場所などで、廃液晶表示装置を解体する前に、バックライトの割れが判別でき、バックライトが割れている廃液晶表示装置については、密封あるいは包装することにより、大気中に水銀蒸気が漏出する可能性を低くすることができる。また、廃液晶テレビを解体するリサイクルプラントにおいては、バックライト割れのある廃液晶テレビを目視判別可能とし、密封された廃液晶テレビは排気設備のあるブースで解体することが可能となるので、運搬作業者、解体作業者が安心して、安全に作業することができる。
【0052】
なお、本発明の廃液晶表示装置の解体方法は、廃液晶表示装置がリサイクルプラントへ搬入された時点でバックライトの割れを判別し、割れが検出した廃液晶表示装置について排気設備のあるブースで解体するようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の廃液晶表示装置の解体方法の前半部分の好ましい一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の廃液晶表示装置の解体方法の後半部分の好ましい一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に供される液晶表示装置の典型的な構造を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】本発明の廃液晶表示装置の解体方法におけるバックライト割れ判別工程において好適に用いられ得る軟X線装置21を模式的に示す図である。
【図5】具体的に軟X線装置を用いて撮像した写真である。
【図6】本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられ得る密封容器31に廃液晶表示装置32を収容した状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられる解体ライン41を模試的に示す斜視図である。
【図8】バックライトの割れていない廃液晶表示装置の解体を模式的に示す図である。
【図9】本発明の廃液晶表示装置の解体方法に好適に用いられ得る局所排気装置52を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 後キャビネット、2 スタンド、3 前キャビネット、4 制御基板、5 液晶パネルモジュール、6 バックライトシャーシ、7 反射シート、8 バックライトクリップ、9 バックライト、10 光学系シート、11 液晶パネル組品、11a 液晶ドライバー基板、11b プラスチックケース、11c ベゼル、11d パネルガラス、21 軟X線装置、22 X線発生装置、23 ステージ、24 X線カメラ、25 筐体、26 廃液晶表示装置、31 密封容器、32 廃液晶表示装置、41 解体ライン、42 廃液晶表示装置、43 コンテナ、44 搬入ストッカ、45 搬送装置、46 読み取り装置、47 パレット、48 ラベル、51 コンベア、52 局所排気装置、53 液晶モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、
バックライトが割れている廃液晶表示装置を密封して搬送する工程と、
排気雰囲気で密封を開封後、バックライトが割れている廃液晶表示装置を解体する工程とを含む、廃液晶表示装置の解体方法。
【請求項2】
解体に供する廃液晶表示装置のバックライト割れを判別する工程と、
バックライトが割れていない廃液晶表示装置から、スタンドと裏キャビネットと制御基板と前キャビネットとを取り外して液晶モジュールにまで解体する工程と、
排気雰囲気で液晶モジュールを解体し、材料または部品ごとに回収する、廃液晶表示装置の解体方法。
【請求項3】
バックライト割れの判別に波長10-8〜10-6cmの軟エックス線を利用する、請求項1または2に記載の廃液晶表示装置の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−112900(P2009−112900A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286386(P2007−286386)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】