説明

延伸装置、及び、シートを延伸させる方法

【課題】シートにおいて延伸量が異なる部位を設ける際に、部位間の境界において延伸不良や局所破断が発生するのを防止する。
【解決手段】吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置であって、シートの延伸方向に列状に並ぶ第1突起群13と、延伸方向に列状に並び、第1突起群と噛み合った第2突起群14とを備え、第1突起群と第2突起群の間にシートを噛み込み該シートを延伸方向に延伸させ、第1突起群13と第2突起群14とがシートを噛み込む空間中に、第1領域Ar1と、延伸方向に第1領域と隣接する第2領域Ar2と、延伸方向に第1領域とは反対側で第2領域と隣接する第3領域Ar3とを有し、第2領域Ar2に第1突起群13と第2突起群14とがシートを噛み込んだ際の該シートの延伸量は、第1領域Ar1における該延伸量より大きくなり、かつ、第3領域Ar3における該延伸量より小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸装置、及び、シートを延伸させる方法に関する。特に、本発明は、吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置、及び、該シートを延伸させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置は既に知られており、かかる延伸装置は、シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、延伸方向に沿って列状に並び前記第1突起群と噛み合った第2突起群とを備えている。この構成の下で第1突起群と第2突起群の間にシートを噛み込ませると、該シートのうち、各突起の先端と接触している部位に引張力(テンション)が掛かり、これによりシートが延伸方向に延伸される(例えば、図3A参照)。
【0003】
ところで、延伸方向において互いに隣接するシート中の2つの部位のうち、一方の部位での延伸量を他方の部位での延伸量よりも大きくする場合が考えられる(例えば、特許文献1参照)。換言すると、第1突起群と第2突起群とがシートを噛み込む空間において互いに隣接する2つの領域のうち、一方の領域でのシートの延伸量が、他方の領域での該延伸量よりも大きくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3516680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シートにおいて延伸量が異なる部位が設けられる場合、その部位間の境界では上記の引張力が変化する。そして、部位間で延伸量が大きく異なると、部位間の境界において引張力が急激に変化し、かかる引張力の急激な変化が上記境界での延伸不良や局所破断(破れ)を誘発する。
【0006】
そこで、本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートにおいて延伸量が異なる部位を設ける際に、部位間の境界において延伸不良や局所破断が発生するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置であって、(A)前記シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、(B)前記延伸方向に沿って列状に並び、前記第1突起群と噛み合った第2突起群とを備え、(C)前記第1突起群と前記第2突起群の間に前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させ、(D)前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込む空間中に、第1領域と、前記延伸方向において前記第1領域と隣接する第2領域と、前記延伸方向において前記第1領域とは反対側で前記第2領域と隣接する第3領域とを有し、(E)前記第2領域において前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込んだ際の該シートの延伸量は、前記第1領域における該延伸量よりも大きくなり、かつ、前記第3領域における該延伸量よりも小さくなることを特徴とする延伸装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
シートにおいて延伸量が異なる部位を設ける場合に、本発明を適用すれば、部位間の境界において延伸不良や局所破断が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】シートSを構成要素として製造されるおむつ1の外観図である。
【図2】延伸工程の実施態様を例示した図である。
【図3A】延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれたシートSを示す断面図である。
【図3B】延伸されたシートSを示す図である。
【図4】延伸装置10の構成例を示す図である。
【図5】一対の回転ローラ11、12と、その周面上に備えられた延伸パターン群G13、G14を示した図である。
【図6】ローラ間隙空間Arの拡大図である。
【図7】クリアランスPと延伸量との関係を示す図である。
【図8】第1変形例に係るローラ間隙空間Arの拡大図である。
【図9】重なり量Lと延伸量との関係を示す図である。
【図10】第2変形例に係るローラ間隙空間Arの拡大図である。
【図11】図11A〜図11Cは、第1延伸パターン13の先端部の形状と延伸量との関係を示す図である。
【図12】第2領域Ar2に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状を段階的に変化させた一例を示す図である。
【図13】延伸装置10の他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び図面により、少なくとも次の事項が開示されている。
【0011】
先ず、本発明は、吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置であって、(A)前記シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、(B)前記延伸方向に沿って列状に並び、前記第1突起群と噛み合った第2突起群とを備え、(C)前記第1突起群と前記第2突起群の間に前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させ、(D)前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込む空間中に、第1領域と、前記延伸方向において前記第1領域と隣接する第2領域と、前記延伸方向において前記第1領域とは反対側で前記第2領域と隣接する第3領域とを有し、(E)前記第2領域において前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込んだ際の該シートの延伸量は、前記第1領域における該延伸量よりも大きくなり、かつ、前記第3領域における該延伸量よりも小さくなることを特徴とする。
かかる延伸装置であれば、延伸量がより小さい部位、及び、延伸量がより大きい部位の双方をシートに備える際に、当該双方の間に、中間の延伸量となる部位を設けることにより、シートに掛かる引張力の変化を緩和させて、部位間の境界における延伸不良や局所破断の発生を防止することが可能である。
【0012】
また、上記に記載の延伸装置において、前記第1突起群が複数の第1突起からなり、前記第2突起群が複数の第2突起からなる場合に、下記3つの構成のうちの一を採用すれば、第2領域におけるシートの延伸量を、第1領域における該延伸量よりも大きくし、かつ、第3領域における該延伸量よりも小さくすることが確実に実現される。
(1)前記第1突起及び前記第2突起は、前記空間において前記延伸方向に沿って交互に並んでおり、前記第2領域における前記第1突起と前記第2突起との間の間隔は、前記第1領域における該間隔よりも長く、前記第3領域における該間隔よりも短い。
(2)前記第1突起及び前記第2突起は、前記空間において前記延伸方向に沿って交互に並んでおり、前記第1突起が突出する方向、及び、前記第2突起が突出する方向は、前記空間において前記延伸方向と交差する交差方向に沿っており、前記第1突起の先端部と前記第2突起の先端部は、前記空間において前記交差方向に沿って重なっており、前記第2領域における前記第1突起の先端部と前記第2突起の先端部との重なり量は、前記第1領域における該重なり量よりも大きく、前記第3領域における該重なり量よりも小さい。
(3)前記第1領域に位置する前記第1突起の先端部と、前記第2領域に位置する前記第1突起の先端部と、前記第3領域に位置する前記第1突起の先端部とは互いに異なる形状であり、前記第2領域に位置する前記第1突起の先端部の形状は、前記第1領域に位置する前記第1突起の先端部の形状よりも大きな延伸量を付与する形状であり、前記第3領域に位置する前記第1突起の先端部の形状よりも小さな延伸量を付与する形状である。
【0013】
また、上記に記載の延伸装置において、前記シートは連続方向に連続しており、互いに周面を対向させながら前記延伸方向に沿った軸を中心に回転する第1回転ローラと第2回転ローラとを有し、前記第1突起は、前記第1回転ローラの周面上に備えられ、該第1回転ローラの周方向に沿って連続した円盤状の第1延伸パターンであり、前記第2突起は、前記第2回転ローラの周面上に備えられ、該第2回転ローラの周方向に沿って連続した円盤状の第2延伸パターンであり、前記第1回転ローラ及び前記第2回転ローラのうち、いずれか一方の回転ローラは、前記第1延伸パターン及び前記第2延伸パターンのうち、当該いずれか一方の回転ローラの周面上に備えられた延伸パターンに前記シートを掛けながら回転し、前記いずれか一方の回転ローラの回転に伴って、前記シートが前記連続方向に沿って前記空間を通過することとしても良い。
かかる構成であれば、シートが掛けられている回転ローラを回転させることにより、シートの各部を順次空間内に投じて、該シートを徐々に延伸させることができる。
【0014】
また、上記に記載の延伸装置において、前記シートは熱可塑性を有する材質からなり、前記シートを加熱する加熱機構を備え、前記第1突起群と前記第2突起群の間に、前記加熱機構により加熱された前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させることとしても良い。
かかる構成であれば、部位間の境界における局所破断の発生をより効果的に防止することができる。
【0015】
また、上記に記載の延伸装置において、前記第2領域のうち、前記延伸方向において前記第1領域に隣接する側の端部における前記延伸量は、前記延伸方向において前記第3領域に隣接する側の端部における該延伸量よりも小さいこととしても良い。
かかる構成であれば、第2領域内でもシートの延伸量を段階的に変化させるので、第1領域と第3領域の間における引張力の変化をより緩和させることが可能になる。
【0016】
さらに、吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる方法であって、(A)前記シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、前記延伸方向に沿って列状に並び前記第1突起群と噛み合った第2突起群との間に前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させる工程を有し、(B)前記工程において、前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込む空間中に、第1領域と、前記延伸方向において前記第1領域と隣接する第2領域と、前記延伸方向において前記第1領域とは反対側で前記第2領域と隣接する第3領域とを設けた際に、(C)前記第2領域において前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込んだ際の該シートの延伸量が、前記第1領域における該延伸量よりも大きくなり、かつ、前記第3領域における該延伸量よりも小さくなることを特徴とするシートを延伸させる方法も実現可能である。
かかる方法であれば、延伸量がより小さい部位、及び、延伸量がより大きい部位をシートに備える場合に、当該部位間の境界における延伸不良や局所破断の発生を防止することが可能である。
【0017】
===本発明の延伸装置10について===
本発明に係る延伸装置(以下、延伸装置10)は、おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の製造に用いられるシートSを対象として該シートSを所定の延伸方向に延伸させるものである。すなわち、上記シートSを延伸する方法(以下、延伸方法)は、吸収性物品の製造ラインにて採用されている方法である。以下、延伸加工対象であるシートS、及び、延伸装置10による延伸加工についてそれぞれ概説する。
【0018】
<<シートSについて>>
シートSは、不織布、フィルムシート、あるいはこれらを貼り合わせた複合シートからなる資材であり、例えば図1に図示されたおむつ1の構成要素として用いられる。図1は、シートSを構成要素として製造されるおむつ1の外観図である。具体的に説明すると、延伸加工対象たるシートSは、おむつ1を構成する他の資材と組み合わせられ、おむつ1が着用される際に着用者の股間にあてがわれる部分の外装1aをなす。シートSの内側表面(着用者の肌に触れる側の面)には、尿等の体液を吸収する吸収体1bが固定されている。また、シートSにおいて吸収体1bの両脇に位置する部分には、体液や排泄物の漏れ(所謂横漏れ)を防ぐためのギャザー部(不図示)が形成される。
【0019】
本実施形態に係るシートSは、熱可塑性を有する材質からなる。具体的に説明すると、不織布からなるシートSに関しては、伸張性(非弾性的に伸張する性質)を有する熱可塑性繊維と、伸縮性(弾性的に伸張する性質)を有する熱可塑性繊維とを混繊することによって生成されるもの、または、伸張性を有する熱可塑性繊維単体で生成されるものが例示される。フィルムシートからなるシートSに関しては、熱可塑性のプラスチックフィルムを材料として生成されるものが例示される。不織布とフィルムシートとの複合シートからなるシートSに関しては、上記に例示した不織布及びフィルムシートを貼り合わせて生成されるものが例示される。
【0020】
そして、後述するように、延伸加工前のシートSに対して加熱処理を施し該シートSを適宜な温度(具体的には、シートSの構成材料の融点以下の範囲において適宜な温度)まで加温する。このようにシートSを加温する目的は、延伸加工時に、シートSが具備する可塑性を発揮させて該シートSを延伸させ易くすると共に、延伸加工中におけるシートSの破断を未然に防ぐことである。
【0021】
なお、シートSは、おむつ1の製造ラインにおいて連続方向に連続した連続シート(ウェブ)の状態で送り出される。つまり、本実施形態に係るおむつ1の製造ラインでは、シートSが連続方向に沿って搬送されて延伸加工の実施位置へ向かう。そして、連続状態のシートSは、延伸加工後に他の資材に貼り合わせられ、その後、製品形状に裁断される。以下、シートSが連続する方向(すなわち、シートSの搬送方向)をMD方向と呼び、MD方向と交差する方向(すなわち、シートSの幅方向が向く方向)をCD方向と呼ぶ。
【0022】
<<延伸加工について>>
本実施形態の延伸装置10は、シートSをCD方向、すなわち、シートSの幅方向に延伸させる。つまり、本実施形態ではCD方向が延伸方向に相当する。かかる延伸加工の実施態様を図2に例示する。図2は、延伸工程の実施態様を例示した図である。
【0023】
延伸加工は、図2に示すように、互いに周面を対向させながらCD方向に沿った軸を中心に回転する一対の回転ローラ11、12、の間をシートSが通過する間に行われる。つまり、一対の回転ローラ11、12の間(詳しくは、回転ローラ11、12の周方向において該回転ローラ11、12の周面同士が最も近接する箇所)にはローラ間隙空間Arが形成されており、シートSは該ローラ間隙空間ArをMD方向に沿って通過する。
【0024】
また、一対の回転ローラ11、12の周面上には、延伸パターン13、14が備えられている。この延伸パターン13、14は、各回転ローラ11、12の径方向に突出した突起であり、本実施形態では各回転ローラ11、12の周方向に沿って連続した円盤状のパターンである。なお、各延伸パターン13、14については、一枚(単体)で円盤形状をなすもの、あるいは、複数の分割片を組み合わせて円盤形状をなすもののいずれであっても良い。以降、一方の回転ローラ11を第1回転ローラ11と称し、他方の回転ローラ12を第2回転ローラ12と称する。
【0025】
第1回転ローラ11に備えられた延伸パターン13は、第1突起に相当し、以下、第1延伸パターン13と呼ぶ。第1延伸パターン13は、CD方向(すなわち、延伸方向)に沿って列状に複数並び、第1延伸パターン群G13(第1突起群に相当)を構成している。第2回転ローラ12に備えられた延伸パターン14は、第2突起に相当し、以下、第2延伸パターン14と呼ぶ。第2延伸パターン14は、第1延伸パターン13と同様に、CD方向に沿って列状に複数並び、第2延伸パターン群G14(第2突起群に相当)を構成している。
【0026】
そして、ローラ間隙空間Arにおいて、第1延伸パターン群G13と、第2延伸パターン群G14とが互いに噛み合う。したがって、シートSは上記ローラ間隙空間Arを通過する際に延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれることになる。
【0027】
延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれたシートSは、各延伸パターン13、14の先端と接触している部位に引張力(シートSを幅方向に引っ張る力)が作用する結果、図3Aに示すようにその幅方向に沿った波形状に歪み、該幅方向に引き伸ばされる。図3Aは、延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれたシートSを示す断面図である。上記の状態から引張力を除去すると、シートSにおいて延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれた部位が、元の状態に復元しようとしつつも、その幅方向に幾分引き伸ばされたためにプリーツを形成しながら弛むこととなる(図3B参照)。すなわち、延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれた部位は、弛んだ分だけCD方向に延伸されることになる。なお、図3Bは、延伸されたシートSを示す図である。
【0028】
以上のように、ローラ間隙空間Arを通過するシートSを延伸パターン群G13、G14の間に噛み込ませて該シートSを幅方向に引き伸ばす。換言すると、ローラ間隙空間Arは、互いに噛み合う延伸パターン群G13、G14がシートSを噛み込む空間に相当する。そして、シートSの各部は、該シートSの搬送に伴ってローラ間隙空間Arを順次通過して延伸されることとなる。
【0029】
ところで、延伸加工を行う目的は、シートSの平面サイズを幅方向に広げて該シートS中の有効利用できる範囲を拡大させることである。また、シートSの延伸加工が施された部位(延伸パターン群G13、G14の間に噛み込まれた部位)には延伸加工後に伸縮性が発現されると共に、形成されたプリーツの高さ分だけ隆起する。かかる状態を利用して、延伸加工が施された部位に上述のギャザー部を形成する場合もある。
【0030】
<<延伸装置10の構成例>>
次に、延伸装置10の構成例として、図4に図示された構成について説明する。図4は延伸装置10の構成例を示す図である。延伸装置10は、図4に示すように、シートSの搬送方向(すなわち、MD方向)上流側から、一次加熱ユニット18、シート投入ユニット20、二次加熱ユニット22、延伸ユニット16、及び、シート排出ユニット24を有する。
【0031】
一次加熱ユニット18は、延伸加工前のシートSを加熱する加熱機構の一例であり、図4に図示された2個の加熱ドラム18A、18Bを有する。各加熱ドラム18A、18Bのドラム本体は、その内周面に取り付けられた不図示のヒータによって加熱されている。そして、連続状態で搬送されてきたシートSは、一次加熱ユニット18に投じられると、加熱ドラム18A、18Bのドラム本体の外周面に掛け回されつつユニット18内を移動する。したがって、シートSは、加熱ドラム18A、18Bのドラム本体の外周面に掛け回されている間に、MD方向に移動しながら接触伝熱によって加熱(加温)されることになる。加熱されたシートSは、前述したように、可塑性を発揮してより延伸され易い状態となる。
【0032】
なお、加熱ドラム18A、18Bの数については2個に限定されるものではなく、おむつ1の生産速度等の条件に応じて適宜調整することにより、シートSを延伸し易くする上でより好適な加熱を実現することができる。
【0033】
シート投入ユニット20は、加熱されたシートSを延伸ユニット16に向けて順次送り出す機構であり、図4に示すように、CD方向に沿った軸を中心に回転する複数の搬送ローラ20Aと、延伸ユニット16の直前に配置された搬送コンベア20Bを有する。シートSの各部は、一次加熱ユニット18を出ると、各搬送ローラ20Aの外周面に掛け回された後に搬送コンベア20Bの載置面に載置される。そして、搬送コンベア20Bの駆動によって、シートSはローラ間隙空間Arに導かれる。
【0034】
二次加熱ユニット22は、搬送コンベア20Bに載置されているシートSと対向し、輻射熱や温風等により該シートSを加熱するものであり、加熱機構の一例に相当する。この二次加熱ユニット22による加熱は、一次加熱ユニット18による加熱を補完したり、あるいはシートSの温度を維持するために行われる。これにより、シートSを延伸ユニット16に投じる直前で該シートSの温度を所望の温度まで確実に加熱することができる。なお、二次加熱ユニット22が備えられていない構成であっても良い。
【0035】
延伸ユニット16は、延伸装置10の本体をなす機構であり、上述した延伸加工を実際に実施するものである。つまり、延伸装置10が実行する処理中では、延伸ユニット16による延伸工程が行われる(換言すると、本実施形態の延伸方法は、シートSをCD方向に延伸させる工程としての延伸工程を有することになる)。
【0036】
延伸ユニット16は、図5に示すように、前述した一対の回転ローラ11、12と、その周面上に備えられた延伸パターン群G13、G14とを有する。図5は、一対の回転ローラ11、12と、その周面上に備えられた延伸パターン群G13、G14を示した図であり、右側半分が正面図となっており、左側半分が断面図となっている。
【0037】
なお、本実施形態に係る各延伸パターン群G13、G14は、回転ローラ11、12のローラ本体と分割しており、該ローラ本体に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、各延伸パターン13、14の加工や寸法調整を簡便かつ精度良く行うことができると共に、装置メンテナンスの際には延伸パターン群G13、G14を単体で交換することができる。但し、これに限定されるものではなく、各回転ローラ11、12のローラ本体に掘り込みを設けて延伸パターン群G13、G14がローラ本体に直接固定されている(着脱不能に固定されている)こととしても良い。
【0038】
そして、搬送コンベア20Bによりローラ間隙空間Arに導かれたシートSを延伸パターン群G13、G14の間に噛み込ませることによって、該シートSをCD方向(延伸方向)に延伸させる。この際、シートSは、上流側で2つの加熱ユニット18、22によって十分に加熱されている。つまり、延伸ユニット16は、加熱ユニット18、22により加熱されたシートSを、延伸パターン群G13、G14の間に噛み込ませて延伸させる。
【0039】
なお、本実施形態では、シートSが搬送コンベア20Bから引き渡されてローラ間隙空間Arに導かれる際に、一対の回転ローラ11、12(すなわち、第1回転ローラ11及び第2回転ローラ12)のうち、いずれか一方の回転ローラが、第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14のうち、当該いずれか一方の回転ローラの周面上に備えられた延伸パターンにシートSを掛けながら回転する。そして、上記いずれか一方の回転ローラの回転に伴って、シートSがMD方向(すなわち、連続方向)に沿ってローラ間隙空間Arを通過する。
【0040】
具体的に説明すると、図4に示す構成例では、第2回転ローラ12の軸芯が第1回転ローラ11の軸芯よりも搬送コンベア20B側に位置しており、搬送コンベア20Bに載置されたシートSは第2回転ローラ12に引き渡されることになる(図4参照)。したがって、シートSは、第2回転ローラ12の周面上に備えられた延伸パターン(すなわち、第2延伸パターン14)に掛けられ、第2回転ローラ12の回転に伴って、シートSはローラ間隙空間Ar内に投じられ、当該空間Arを通過することになる。これにより、シートSの各部が順次ローラ間隙空間Ar内に投じられ、この結果、シートSがその連続方向に沿って徐々に延伸されることになる。
【0041】
そして、シートSにおいてローラ間隙空間Arを通過した部分(すなわち、延伸加工が施された部分)は、暫く第2延伸パターン12に掛けられた状態のまま第2回転ローラ12の周方向に沿って移動し、その後、延伸ユニット16から排出される(第2延伸パターン14に掛けられた状態を脱する)。
【0042】
シート排出ユニット24は、ローラ間隙空間Arを通過して延伸ユニット16から出たシートSを引き取り、後段の工程に向けて送り出す機構である。シート排出ユニット24は、延伸ユニット16よりも下流側でCD方向に沿った軸を中心に回転する排出ローラ24Aを有し、この排出ローラ24Aが延伸加工後のシートSを外周面に掛け回しながら回転することにより、該シートSが送り出されるようになる。
【0043】
なお、以上までに説明してきた構成例は、延伸装置10の構成の一例に過ぎず、図4に図示された構成と一部(例えば、シートSを第2延伸パターン14に掛け回す際の掛け回し方)異なる構成であっても良い。
【0044】
===本実施形態の延伸方法について===
次に、本実施形態の延伸方法について詳しく説明する。本実施形態では、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設けることができる。具体的には、シートS中、互いに延伸方向における位置が異なる2つの部位のうち、一方の部位での延伸量を他方の部位での延伸量よりも大きくすることが可能である。この結果、シートSの各部位に発揮させる機能に応じて、好適な延伸量を当該各部位に付与することができる。なお、延伸量とは、延伸工程によりその幅方向に引き伸ばされたシートSの延伸量であり、換言すると、シートSに掛かる引張力によって変形した(歪んだ)際の変形度合い(歪み度合い)である。延伸量が大きくなるほど、延伸加工が施された部位に形成される弛みの量、及び、当該部位に付与される伸縮性が大きくなる。
【0045】
そして、本実施形態では、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設けるために、第1延伸パターン群G13と第2延伸パターン群G14とがシートSを噛み込むローラ間隙空間Ar中、互いにCD方向における位置が異なる2つの領域のうち、一方の領域において上記延伸パターン群G13、G14がシートSを噛み込んだ際の該シートSの延伸量が、他方の領域における該延伸量よりも大きくなっている。つまり、本実施形態の延伸装置10は、ローラ間隙空間Ar内において延伸量の差異が形成されるように構成されている。
【0046】
ここで、ローラ間隙空間Ar内の構成について説明する。図6に示すように、ローラ間隙空間Arでは、第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14がCD方向(延伸方向)に沿って交互に並び、隣り合う第1延伸パターン13と第2延伸パターン14の間にはクリアランス(間隔に相当し、以下、クリアランスPと呼ぶ)が形成されている。図6は、ローラ間隙空間Arの拡大図である。
【0047】
また、図6に示すように、第1延伸パターン13が突出する方向、及び、第2延伸パターン14が突出する方向は、ローラ間隙空間ArにおいてCD方向と交差する交差方向に沿っている。ここで、交差方向とは、ローラ間隙空間ArをシートSが通過する際に該シートSの厚み方向が向く方向である(図6参照)。また、第1延伸パターン13の先端部と第2延伸パターン14の先端部は、ローラ間隙空間Arにおいて前述の交差方向に沿って重なっている。なお、第1延伸パターン13の幅(CD方向長さ)と第2延伸パターン14の幅とは、それぞれ一様に揃っており、延伸パターン13、14同士の間でも略等しくなっている。
【0048】
ところで、第1延伸パターン13と第2延伸パターン14の間のクリアランスPが変わると、シートS中、延伸加工時に当該クリアランスPに架かる部位について延伸量が変化する。このことについて図7を参照しながら説明する。図7は、クリアランスPと延伸量との関係を示す図である。
【0049】
クリアランスPが長くなるほど、該クリアランスPを介して隣り合う第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14の間隔が広がるので、シートSのうち、上記2つの延伸パターン13、14の間に位置する部分の長さ(図7中、記号dにて示す長さ)が長くなる。つまり、引き伸ばされる対象部分の長さが長くなり、その対象部分が長くなる分だけ、CD方向の単位長さ当たりに付与される延伸量は小さくなる。更に換言すると、延伸倍率は小さくなる。ここで、延伸倍率とは、延伸加工前のシートSの幅に対する、延伸加工中の該幅の拡大比率のことである。
【0050】
逆に、クリアランスPが短くなると、第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14の間隔が狭くなるので、上記2つの延伸パターン13、14の間に位置する部分の長さdが短くなる。つまり、引き伸ばされる対象部分の長さが短くなり、その対象部分が短くなる分だけ、CD方向の単位長さ当たりに付与される延伸量は大きくなる。
【0051】
以上の結果、他の延伸条件(例えば、第1延伸パターン13の先端部と第2延伸パターン14の先端部との重なり量L)が同じであっても、クリアランスPが短くなるほど延伸量が大きくなる(反対に、クリアランスPが長くなるほど延伸量が小さくなる)。
【0052】
以上のような性質を利用して、本実施形態では、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設けるために、ローラ間隙空間Ar中にクリアランスPが互いに異なる領域が備えられている。具体的に説明すると、図6に示すように、クリアランスPが互いに異なる3つの領域Ar1、Ar2、Ar3が備えられている。換言すると、延伸ユニット16による延伸工程では、ローラ間隙空間Ar中に3つの領域Ar1、Ar2、Ar3を設けることになる。以下、3つの領域Ar1、Ar2、Ar3を、それぞれ、第1領域Ar1、第2領域Ar2、第3領域Ar3と呼ぶ。
【0053】
第1領域Ar1は、3つに区分されたローラ間隙空間Ar中の一領域である。第2領域Ar2は、CD方向において第1領域Ar1と隣接する領域である。第3領域Ar3は、CD方向において第1領域Ar1とは反対側で第2領域Ar2と隣接する領域である。なお、本実施形態では、第2領域Ar2から見て第一領域Ar1がCD方向内側に位置し、第3領域Ar3がCD方向外側に位置しているが、反対に、第一領域Ar1がCD方向外側に位置し、第3領域Ar3がCD方向内側に位置していても良い。
【0054】
また、第1領域Ar1におけるクリアランスPは、第3領域Ar3におけるクリアランスPよりも幾分長く(広く)なっている(図6参照)。つまり、第1領域Ar1において第1延伸パターン群G13と第2延伸パターン群G14とがシートSを噛み込んだ際の該シートSの延伸量は、第3領域Ar3における該延伸量よりも幾分小さくなる。
【0055】
そして、本実施形態では、第1領域Ar1と第3領域Ar3の間に第2領域Ar2が配置されており、当該領域Ar2におけるクリアランスPが、第1領域Ar1よりも短く、かつ、第3領域Ar3におけるクリアランスPよりも長くなっている(図6参照)。つまり、第2領域Ar2において第1延伸パターン群G13と第2延伸パターン群G14とがシートSを噛み込んだ際の該シートSの延伸量は、第1領域Ar1における該延伸量よりも大きくなり、かつ、第3領域Ar3における該延伸量よりも小さくなる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、第1領域Ar1及び第3領域Ar3の双方の間に、当該双方の中間の延伸量をシートSに付与する第2領域Ar2が配置されている。これにより、シートSにおいて互いに位置(CD方向における位置)が異なる部位間で延伸量を異ならせる場合に、当該部位間の境界において引張力が急激に変化するのを防ぎ、引張力の急激な変化による上記境界での延伸不良や局所破断(破れ)の発生を防止することが可能になる。かかる効果については、本実施形態の有効性についての項で詳しく説明する。
【0057】
さらに、本実施形態では、第2領域Ar2のうち、CD方向において第1領域Ar1に隣接する側の端部(内側端部)におけるクリアランスPが、CD方向において第3領域Ar3に隣接する側の端部(外側端部)におけるクリアランスPよりも長くなっている。換言すると、第2領域Ar2の内側端部におけるシートSの延伸量は、外側端部における該延伸量よりも小さくなる。より詳しく説明すると、第2領域Ar2におけるシートSの延伸量(換言すると、クリアランスP)は、CD方向において内側端部から外側端部に向かって徐々に大きくなっている。
【0058】
===本実施形態の有効性について===
本実施形態に係る延伸装置10及び延伸方法により、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設ける場合に、部位間の境界において延伸不良や局所破断が発生するのを防止することが可能になる。以下、本実施形態の有効性について説明する。
【0059】
発明が解決しようとする課題の項で説明したように、シートS中、幅方向において互いに隣接し合う2つの部位のうち、一方の部位におけるシートSの延伸量を他方の部位における該延伸量と異ならせようとすると、部位間の境界ではシートSに掛かる引張力が変化する。ここで、部位間で延伸量が大きく異なる場合(例えば、上述の第1領域Ar1と第3領域Ar3が隣接する場合)には、部位間の境界において引張力の変化が急激に変化することになる。かかる状況では、部位間の境界位置に応力負荷が集中してしまうので、部位間の境界で、延伸パターン13、14同士の噛み合い不良による延伸不良あるいは穴開き等の局所破断(破れ)が発生してしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、延伸量がより小さい部位、及び、延伸量がより大きい部位の双方をシートSに備える際に、当該双方の間に中間の延伸量となる部位を設ける。すなわち、ローラ間隙空間Arにおいて、互いに延伸量が異なる第1領域Ar1及び第3領域Ar3の間に、中間の延伸量をシートSに付与する第2領域Ar2が配置されている。これにより、第1領域Ar1及び第3領域Ar3との間における引張力の変化が緩和される。この結果、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設ける場合であっても、部位間の境界において延伸不良や局所破断が発生するのを防止することが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、第2領域Ar2におけるシートSの延伸量を第1領域Ar1における該延伸量よりも大きくさせ、かつ、第3領域Ar3における該延伸量よりも小さくさせるために、第2領域Ar2におけるクリアランスPを、第1領域Ar1におけるクリアランスPよりも短くし、かつ、第3領域Ar3におけるクリアランスPよりも長くした。これにより、上述した領域Ar1、Ar2、Ar3間の延伸量の大小関係を確実に達成することが出来る。
【0062】
また、本実施形態では、既述のように、第2領域Ar2のうち、CD方向において第1領域Ar1に隣接する側の端部における延伸量が、第3領域Ar3に隣接する側の端部における延伸量よりも小さくなっている。このように第2領域Ar2内でも延伸量を段階的に変化させることにより、第1領域Ar1と第3領域Ar3との間における引張力の変化をより緩和させることが可能である。但し、これに限定されるものではなく、第2領域Ar2内におけるシートSの延伸量が一様であることとしても良い。
【0063】
また、本実施形態では、加熱ユニット18、22により加熱されたシートSに対して延伸加工を施すこととした。つまり、シートSが延伸され易い(引き伸ばされ易い)状態となってから該シートSを延伸させるので、部位間の境界における局所破断の発生をより効果的に防止することが可能になる。
【0064】
===他の延伸方法==
上述した延伸方法(以下、本件例)はあくまでも一例であり、他の方法も考えられる。以下では、他の延伸方法としての第1変形例及び第2変形例について説明する。
【0065】
<<第1変形例>>
第1変形例では、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設けるために、図8に示すように、ローラ間隙空間Ar中の各領域Ar1、Ar2、Ar3の間で、延伸パターン13、14の先端部同士の重なり量が互いに異なっている。図8は、第1変形例に係るローラ間隙空間Arの拡大図である。
【0066】
具体的に説明すると、ローラ間隙空間Arでは、第1延伸パターン13の先端部と第2延伸パターン14の先端部が前述の交差方向において幾分重なっている。そして、延伸パターン13、14の先端部同士の重なり量(以下、重なり量L)が変わると、シートS中、上記先端部の間に位置する部分の延伸量が変化する。ここで、重なり量とは、延伸パターン13、14の先端部同士が重なった部分の交差方向長さであり、換言すると、第1延伸パターン13が第2回転ローラ12の周面に向かって(あるいは、第2延伸パターン14が第1回転ローラ11の周面に向かって)交差方向にシートSを押し込む際の押込み量に相当する。
【0067】
以下、図9を参照しながら、重なり量Lと延伸量との関係について説明する。図9は、重なり量Lと延伸量との関係を示す図である。重なり量Lが大きくなるほど、シートS中、上記重なり量Lにて重なった延伸パターン13、14の先端部同士の間に位置する部分、の長さ(図9中、記号dにて示す長さ)が長くなる。つまり、上記延伸パターン13、14によって引き伸ばされる量が長くなる。この結果、他の延伸条件(例えば、クリアランスP)が同じであっても、重なり量Lが大きくなるほど延伸量が大きくなる(反対に、重なり量Lが小さくなるほど延伸量が小さくなる)。なお、第1変形例では、第2領域Ar2から見て第1領域Ar1がCD方向内側に位置し、第3領域Ar3がCD方向外側に位置している(図8参照)。
【0068】
以上のような性質を利用して、第1変形例では、第1領域Ar1における重なり量Lを、第3領域Ar3における重なり量Lよりも幾分小さくしている(図8参照)。そして、第1変形例では、第2領域Ar2における重なり量Lを、第1領域Ar1における重なり量Lよりも大きくし、かつ、第3領域Ar3における重なり量Lよりも小さくしている。
【0069】
また、第2領域Ar2における重なり量Lについては、CD方向において第1領域Ar1に隣接する側の端部から、第3領域Ar3に隣接する側の端部に向かって徐々に大きくなっている方が望ましい。これは、第1領域Ar1と第3領域Ar3との間における引張力の変化をより緩和させるためである。なお、重なり量Lを変化させるには、第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14のうち、少なくとも一方の延伸パターンの外径(突出量)を変化させれば良い。
【0070】
<<第2変形例>>
第2変形例では、シートSにおいて延伸量が異なる部位を設けるために、図10に示すように、ローラ間隙空間Ar中の各領域Ar1、Ar2、Ar3の間で、第1延伸パターン13の先端部の形状が互いに異なっている。図10は、第2変形例に係るローラ間隙空間Arの拡大図である。
【0071】
第1延伸パターン13の先端部の形状が変わると、該第1延伸パターン13によって延伸されるシートSの延伸量が変化する。以下、図11A〜図11Cを参照しながら、先端部の形状と延伸量との関係について説明する。図11A〜図11Cは、それぞれ、先端部の形状と延伸量との関係を示す図である。
【0072】
第1延伸パターン13の先端部が変化すると、該第1延伸パターン13と、その隣の第2延伸パターン14とに架けられた部分の長さ(図11A〜図11Cにおいて記号dにて示す長さ)が変化し、これに伴って延伸量が変化する。つまり、他の延伸条件(例えば、クリアランスPや重なり量L)が同じであっても、第1延伸パターン13の先端部の形状に依存して、シートSに付与される延伸量が変化する。そして、シートSに付与する延伸量については、概ね、角部に幾分丸みを帯びた略直方体状の形状(図11Aに図示された形状)、先細り状に尖った形状(図11Bに図示された形状)、先端が略円弧状(又は略球状)となった形状(図11Cに図示された形状)の順に小さくなる。
【0073】
以上のような性質を利用して、第2変形例では、第1領域Ar1に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状を、第3領域Ar3に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状よりも、小さな延伸量を付与する形状としている(図10参照)。具体的には、第1領域Ar1に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状が、図11Cに図示された形状となっており、第3領域Ar3に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状が、図11Aに図示された形状となっている。そして、第2変形例では、第2領域Ar2に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状を、第1領域Ar1に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状よりも大きな延伸量を付与する形状とし、かつ、第3領域Ar3に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状よりも小さな延伸量を付与する形状としている。
【0074】
第2領域Ar2に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状については、CD方向において第1領域Ar1に隣接する側の端部から、第3領域Ar3に隣接する側の端部に向かって、段階的にシートSに付与する延伸量が大きくなるように変化させる方が望ましい。これは、第1領域Ar1と第3領域Ar3との間における引張力の変化をより緩和させるためである。かかる構成の一例としては、図12に図示した例が考えられる。図12は、第2領域Ar2に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状を段階的に変化させた一例を示す図である。
【0075】
なお、以上のような観点で各領域Ar1、Ar2、Ar3に位置する第1延伸パターン13の先端部の形状を設計する際に、適宜な形状を選択すれば、シートSがローラ間隙空間Arを通過する際に該シートSの滑りを発生させることが可能になる。このようなシートSの滑りにより、スムーズな延伸加工が実現され、以って、延伸不良の発生をより効果的に抑制することができる。シートSの滑りを発生させる方法としては、各第1延伸パターン13の先端部の形状を適切に選択することの他、当該先端部の表面状態を適当な状態に仕上げる(例えば、表面処理を実施する)ことも考えられる。
【0076】
また、各領域Ar1、Ar2、Ar3の間で第1延伸パターン13の先端部の形状を変化させることに加えて、第2延伸パターン14の先端部の形状についても各領域Ar1、Ar2、Ar3の間で変化させることとしても良い。
【0077】
<<各変形例の作用効果について>>
以上までに説明した第1変形例及び第2変形例は、いずれも、延伸量を変化させるための構成において相違するものの、それ以外の点では本件例と同様の構成を有し、本件例と同様の作用効果を奏する。すなわち、ローラ間隙空間Arの各領域Ar1、Ar2、Ar3においてクリアランスPを変化させる構成、重なり量Lを変化させる構成、及び、第1延伸パターン13の先端部の形状を変化させる構成のいずれにおいても、第2領域Ar2におけるシートSの延伸量を、第1領域Ar1における該延伸量よりも大きくさせ、かつ、第3領域Ar3における該延伸量よりも小さくさせることが可能になる。換言すると、本件例、第1変形例、及び、第2変形例のうち、いずれか一の構成を採用すれば、上述した領域Ar1、Ar2、Ar3間の延伸量の大小関係を確実に達成することが出来る。
【0078】
また、本件例、第1変形例、及び、第2変形例の各々の構成を組み合わせた構成であっても良い。かかる組み合わせの構成であれば、延伸量を変化させる方法のバリエーションが増えるので、シートSの材質等によって変わり得る延伸条件に対して適切に対応することが可能になる。
【0079】
===その他の実施形態===
上記実施形態には、主として本発明に係る延伸装置10及び延伸方法について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した設定値、寸法値、及び、形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0080】
なお、上記実施形態において、第1回転ローラ11と第2回転ローラ12は、一対の回転ローラ11、12を区別するために便宜上用いた概念であり、いずれの回転ローラを第1回転ローラ11と呼ぶこととしても良い。したがって、第1延伸パターン13は、一対の回転ローラ11、12のうち、第1回転ローラ11として設定された回転ローラ、の周面に備えられた延伸パターンに該当する。
【0081】
また、上記実施形態の中で例示した延伸装置10の構成例(図4に図示した構成例)に限定されるものではなく、例えば、図13に図示した構成例であっても良い。図13は、延伸装置10の他の構成例を示した図である。図13に図示された構成例では、図4に図示された構成例と比較して、延伸ユニット16に備えられた回転ローラ11、12の外径が幾分大きくなっている。この結果、図13に図示された構成例では、処理速度(単位時間あたりに延伸加工を施すことができるシートSの分量)をより高速化することが可能になる。
【0082】
また、上記実施形態では、一対の回転ローラ11、12のうち、いずれか一方の回転ローラが、当該いずれか一方の回転ローラの周面上に備えられた延伸パターンにシートSを掛けながら回転することとした。すなわち、上記の説明では、シートSが延伸パターンに掛け回されながらローラ間隙空間Arを通過することとした。但し、これに限定されるものではなく、延伸パターンに掛け回されずにローラ間隙空間Arに向かって直進し、当該空間Arを通過する際にのみ延伸パターン上に載せ置かれることとしても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、熱可塑性を有する材質からなるシートSに対して延伸加工を施すこととしたが、非熱可塑性の材質からなるシートSに対して延伸加工を行う場合であっても本発明は適用可能である。
【0084】
また、上記実施形態では、互いに噛み合う第1突起群及び第2突起群が、それぞれ円盤状の第1延伸パターン13及び第2延伸パターン14から構成される第1延伸パターン群G13及び第2延伸パターン群G14であることとした。但し、第1突起群及び第2突起群は、シートSを噛み込んで該シートSを延伸方向に延伸させるものである限り、如何なる形状のものであっても良く、例えば、複数の凸状突起によって構成される第1突起群や第2突起群であっても良い。
【符号の説明】
【0085】
1 おむつ(吸収性物品) 1a 外装、1b 吸収体、10 延伸装置、11 第1回転ローラ、12 第2回転ローラ、13 第1延伸パターン(第1突起)、14 第2延伸パターン(第2突起)、16 延伸ユニット、18 一次加熱ユニット(加熱機構)、18A,18B 加熱ドラム、20 シート投入ユニット、20A 搬送ローラ、20B 搬送コンベア、22 二次加熱ユニット(加熱機構)、24 シート排出ユニット、24A 排出ローラ、Ar ローラ間隙空間(空間)、Ar1 第1領域、Ar2 第2領域、Ar3 第3領域、G13 第1延伸パターン群(第1突起群)、G14 第2延伸パターン群(第2突起群)、S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる延伸装置であって、
前記シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、
前記延伸方向に沿って列状に並び、前記第1突起群と噛み合った第2突起群とを備え、前記第1突起群と前記第2突起群の間に前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させ、
前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込む空間中に、第1領域と、前記延伸方向において前記第1領域と隣接する第2領域と、前記延伸方向において前記第1領域とは反対側で前記第2領域と隣接する第3領域とを有し、
前記第2領域において前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込んだ際の該シートの延伸量は、前記第1領域における該延伸量よりも大きくなり、かつ、前記第3領域における該延伸量よりも小さくなることを特徴とする延伸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の延伸装置において、
前記第1突起群は、複数の第1突起からなり、
前記第2突起群は、複数の第2突起からなり、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記空間において前記延伸方向に沿って交互に並んでおり、
前記第2領域における前記第1突起と前記第2突起との間の間隔は、前記第1領域における該間隔よりも長く、前記第3領域における該間隔よりも短いことを特徴とする延伸装置。
【請求項3】
請求項1に記載の延伸装置において、
前記第1突起群は、複数の第1突起からなり、
前記第2突起群は、複数の第2突起からなり、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記空間において前記延伸方向に沿って交互に並んでおり、
前記第1突起が突出する方向、及び、前記第2突起が突出する方向は、前記空間において前記延伸方向と交差する交差方向に沿っており、
前記第1突起の先端部と前記第2突起の先端部は、前記空間において前記交差方向に沿って重なっており、
前記第2領域における前記第1突起の先端部と前記第2突起の先端部との重なり量は、前記第1領域における該重なり量よりも大きく、前記第3領域における該重なり量よりも小さいことを特徴とする延伸装置。
【請求項4】
請求項1に記載の延伸装置において、
前記第1突起群は、複数の第1突起からなり、
前記第2突起群は、複数の第2突起からなり、
前記第1領域に位置する前記第1突起の先端部と、前記第2領域に位置する前記第1突起の先端部と、前記第3領域に位置する前記第1突起の先端部とは互いに異なる形状であり、
前記第2領域に位置する前記第1突起の先端部の形状は、前記第1領域に位置する前記第1突起の先端部の形状よりも大きな延伸量を付与する形状であり、前記第3領域に位置する前記第1突起の先端部の形状よりも小さな延伸量を付与する形状であることを特徴とする延伸装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の延伸装置において、
前記シートは連続方向に連続しており、
互いに周面を対向させながら前記延伸方向に沿った軸を中心に回転する第1回転ローラと第2回転ローラとを有し、
前記第1突起は、前記第1回転ローラの周面上に備えられ、該第1回転ローラの周方向に沿って連続した円盤状の第1延伸パターンであり、
前記第2突起は、前記第2回転ローラの周面上に備えられ、該第2回転ローラの周方向に沿って連続した円盤状の第2延伸パターンであり、
前記第1回転ローラ及び前記第2回転ローラのうち、いずれか一方の回転ローラは、前記第1延伸パターン及び前記第2延伸パターンのうち、当該いずれか一方の回転ローラの周面上に備えられた延伸パターンに前記シートを掛けながら回転し、
前記いずれか一方の回転ローラの回転に伴って、前記シートが前記連続方向に沿って前記空間を通過することを特徴とする延伸装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の延伸装置において、
前記シートは熱可塑性を有する材質からなり、
前記シートを加熱する加熱機構を備え、
前記第1突起群と前記第2突起群の間に、前記加熱機構により加熱された前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させることを特徴とする延伸装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の延伸装置において、
前記第2領域のうち、前記延伸方向において前記第1領域に隣接する側の端部における前記延伸量は、前記延伸方向において前記第3領域に隣接する側の端部における該延伸量よりも小さいことを特徴とする延伸装置。
【請求項8】
吸収性物品の製造に用いられるシートを延伸させる方法であって、
前記シートの延伸方向に沿って列状に並ぶ第1突起群と、前記延伸方向に沿って列状に並び前記第1突起群と噛み合った第2突起群との間に前記シートを噛み込ませて該シートを前記延伸方向に延伸させる工程を有し、
前記工程において、前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込む空間中に、第1領域と、前記延伸方向において前記第1領域と隣接する第2領域と、前記延伸方向において前記第1領域とは反対側で前記第2領域と隣接する第3領域とを設けた際に、
前記第2領域において前記第1突起群と前記第2突起群とが前記シートを噛み込んだ際の該シートの延伸量が、前記第1領域における該延伸量よりも大きくなり、かつ、前記第3領域における該延伸量よりも小さくなることを特徴とするシートを延伸させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−248647(P2010−248647A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97316(P2009−97316)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】