説明

建具

【課題】枠部材の寸法を増大することなく、外観品質及び十分な強度を確保した上で動力による開閉を行うこと。
【解決手段】ベース部材41に対して駒部材48を往復移動させるアクチュエータユニット40と、第1リンク部材62の基端部を駒部材48に支承させる一方、第2リンク部材63の基端部をベース部材41に対してスライド自在、かつ回動する態様で支承させ、第1リンク部材62から突設した連係ピン70を介してガラス窓20に連係するリンクユニット60と、リンクユニット60の係合ピン61に係合する案内溝81を有した案内部材80とを備え、アクチュエータユニット40の駆動によって駒部材48を往復移動させた場合に案内部材80の案内溝81に沿って係合ピン61を案内させ、一対のリンク部材62,63を伸長姿勢と屈曲姿勢とに変化させることにより、開口枠10に対してガラス窓20を開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横すべり出し窓や縦すべり出し窓あるいは内倒し窓や外倒し窓等、障子の一側縁を構成する框部材を開口枠の見込方向に移動させる態様で前記障子を前記開口枠に対して開閉自在に支持させた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開口枠に対してガラス窓等の障子を開閉自在に支持させた建具には、障子の開閉をアクチュエータユニットによって行うようにしたものが既に提供されている。例えば、特許文献1では、開口枠とガラス窓との間にリンクユニットを構成するとともに、このリンクユニットに回転駆動源を接続し、回転駆動源が駆動した場合にリンクユニットを動作させることにより、内倒し窓であるガラス窓を開閉するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−327675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の建具には、外観品質が高いことはもちろん、防犯性についても高いことが好ましいのはいうまでもない。上述した特許文献1の建具では、回転駆動源が開口枠を構成する枠部材の内部に収容され、かつリンク部材についても枠部材の見込み方向寸法内に収容されているため、いずれも外部から容易に視認できる構成になく、外観品質が損なわれることはない。
【0005】
しかしながら、防犯性を考慮した場合には、必ずしも好ましいものとはいえない。すなわち、特許文献1の建具では、リンクユニットを構成する複数のリンク部材に案内溝が形成されており、それぞれの案内溝にピンを挿通させる態様でリンク部材を連係させることによってリンクユニットが所望の動作を行うようにしている。こうした建具においては、同一の寸法に構成したリンク部材を比較した場合、案内溝の存在によって強度が劣るのは否めない。従って、防犯性を向上させるべくリンク部材に所望の強度を確保するためには、案内溝からの肉厚を十分に大きく設定する必要がある。この結果、リンクユニットを収容する枠部材の見込み方向寸法も増大せざるを得ず、その設置箇所に著しい制限が加えられることになる等の問題を招来する恐れがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、枠部材の寸法を増大することなく、外観品質及び十分な強度を確保した上で動力源を用いて開閉を行うことのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、障子の一側縁を構成する框部材を開口枠の見込方向に移動させて前記障子を前記開口枠に対して開閉させる建具において、ベース部材を介して前記開口枠を構成する枠部材の内部に収容し、駆動した場合に前記ベース部材に対して出力部材を前記枠部材の長手方向に沿って往復移動させるアクチュエータユニットと、互いの先端部を所定の支承軸を中心として回動自在となるように支承することにより互いに直線状に伸長する伸長姿勢と互いに屈曲状となる屈曲姿勢とに変位する一対のリンク部材を具備するとともに、前記一対のリンク部材のいずれか一方から前記支承軸に沿って突設した係合ピンを備え、一方のリンク部材の基端部を前記支承軸と平行な軸心を中心として回動自在となるように前記アクチュエータユニットの出力部材に支承し、他方のリンク部材の基端部を前記ベース部材に対して前記枠部材の長手方向に沿ってスライド自在、かつ前記支承軸と平行な軸心を中心として回動自在となるように支承し、前記リンク部材のいずれか一方から前記支承軸と平行となるように突設した連係ピンを介して前記障子の框部材に連係するリンクユニットと、前記アクチュエータユニットの前記出力部材が往復移動した場合に前記リンクユニットの係合ピンに係合し、前記一対のリンク部材を前記伸長姿勢と前記屈曲姿勢とに変化させることによって前記障子を前記開口枠に対して開閉させる案内溝を有した案内部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記アクチュエータユニットは、出力軸の軸心が前記枠部材の長手方向に沿うように前記ベース部材に配設した回転駆動源と、周面に螺旋溝を有し、自身の軸心が前記枠部材の長手方向に沿うように前記ベース部材に回転自在に配設したネジ軸部材と、前記ネジ軸部材に螺合し、前記出力部材として機能する駒部材とを備え、前記駒部材は、前記回転駆動源の駆動による前記ネジ軸部材の回転により、前記ネジ軸部材の軸心方向に沿って往復移動自在に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記案内部材の案内溝は、前記一対のリンク部材が伸長姿勢にある状態において前記係合ピンを前記枠部材の長手方向に沿って案内する第1案内部と、前記第1案内部の一方の端部からその延長域に向かうに従って漸次開口枠の面外方向に向けて傾斜する第2案内部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記他方のリンク部材の基端部と前記ベース部材との間には、前記係合ピンが前記案内部材の第1案内部に沿って移動する際に前記他方のリンク部材の回動を規制する回動規制手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リンクユニットのリンク部材から突設した係合ピンをベース部材に配設した案内部材の案内溝に沿って案内し、これにより一対のリンク部材を伸長姿勢と屈曲姿勢とに変化させるようにしているため、障子を開閉するリンクユニットのリンク部材に直接案内溝を形成する必要がない。従って、リンク部材に所望の強度を確保した場合にもその寸法を可及的に小さく構成することができ、これを枠部材に収容して外観品質を確保しても枠部材の寸法が増大する事態を招来する恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠10に対してガラス窓(障子)20を開閉自在に支持させたもので、特に、「横すべり出し窓」と称される建具を示している。横すべり出し窓は、上枠部材11、下枠部材12及び一対の縦枠部材13によって矩形の枠状に構成した開口枠10と、上框部材21、下框部材22及び一対の縦框部材23によって構成される矩形状の框の内部にガラス板24を保持したガラス窓20とを備え、上框部材21が上下にスライドし、かつ上框部材21を軸として下框部材22を室外側に向けて開口枠10の面外方向に押し出すように開放するものである。
【0014】
この横すべり出し窓には、ガラス窓20の下框部材22に連係プレート25が設けてある。連係プレート25は、下框部材22において室内側に位置する内表面の上端部から室内側に向けて突設した矩形の板状部材である。この連係プレート25には、スライド溝25aが設けてある。スライド溝25aは、両端が閉塞した狭幅の直線状を成す長孔であり、下框部材22の長手方向に沿って形成してある。
【0015】
一方、ガラス窓20を支持する開口枠10の下枠部材12には、図2に示すように、下框部材22の室内側面に対向する部位に室外側に開口した横断面が略コ字状の収容室30が設けてある。収容室30は、下枠部材12の上壁部12a、側壁部12b及び下壁部12cによって囲まれた直方状の空間であり、室外側に面した部分が開口している。開口枠10に対してガラス窓20を閉塞した場合、上述したガラス窓20の連係プレート25は、開口を介して下枠部材12の収容室30に収容されることになる。
【0016】
この収容室30には、アクチュエータユニット40が収容してある。アクチュエータユニット40は、開口枠10に対してガラス窓20を開閉する際の動力を出力するもので、図3及び図4に示すように、ベース部材41を備えている。
【0017】
ベース部材41は、アクチュエータユニット40の本体となるもので、図2〜図4に示すように、本体壁部41a及び縦壁部41bを有している。本体壁部41aは、下枠部材12の収容室30に収容することのできる大きさに形成した狭幅で全長の大きな平板状部材であり、下枠部材12の収容室30においてその長手方向に沿う態様で下枠部材12における下壁部12cの上面に取り付けてある。縦壁部41bは、本体壁部41aの上面から上方に向けて突設した平板状部分であり、収容室30において下枠部材12の側壁部12bに近接した部分に設けてある。
【0018】
このベース部材41には、縦壁部41bよりも収容室30の手前側に位置する部位の上面に電動モータ42、リンク支承部材43及びレール部材44が設けてある。電動モータ42は、駆動した場合にハウジング42aに対して出力軸42bが自身の軸心回りに回転する回転駆動源である。この電動モータ42は、出力軸42bの軸心が下枠部材12の長手方向に沿い、かつ出力軸42bの先端がベース部材41の一端部側に向いた状態でハウジング42aを介してベース部材41の一端部に保持させてある。
【0019】
リンク支承部材43は、図3〜図5に示すように、台状部材45を介してベース部材41の他端部側上面に設けた平板状部材である。このリンク支承部材43には、リンク支承溝43aが形成してあるとともに、リンク支承溝43aにリンク支承軸46が配設してある。
【0020】
リンク支承溝43aは、回転支承部43a1とスライド支承部43a2とを有して構成したものである。回転支承部43a1は、上下方向に沿って貫設した円形の穴であり、リンク支承部材43において電動モータ42から離隔した側の端部に形成してある。スライド支承部43a2は、回転支承部43a1の内径よりも小さい一定の幅を有した溝状の開口であり、電動モータ42における出力軸42bの軸心延長上となる部位に回転支承部43a1から電動モータ42に近接する方向に向けて形成してある。尚、スライド支承部43a2において電動モータ42に近接した側の端部に形成した円形の穴は、組み付けの際にネジを挿通させるためのものである。
【0021】
リンク支承軸46は、リンク支承溝43aの回転支承部43a1よりも太径に形成した軸頭部46aの上方に係合軸部46b及びリンク取付軸部46cを有している。係合軸部46bは、リンク支承溝43aのスライド支承部43a2に対してスライド自在、かつ軸心回りの回転を規制する二面幅を有するとともに、回転支承部43a1に対しては回転自在に嵌合される外径に形成した部分であり、互いの軸心を合致させた状態で軸頭部46aの上面に設けてある。リンク取付軸部46cは、係合軸部46bよりも細径の円柱状を成す部分であり、互いの軸心を合致させた状態で係合軸部46bの上面に設けてある。
【0022】
レール部材44は、ベース部材41の長手方向に沿う態様でベース部材41の上面に設けた直線状の突条であり、電動モータ42と台状部材45との間に設けてある。
【0023】
また、アクチュエータユニット40は、電動モータ42と台状部材45との間にネジ軸部材47及び駒部材(出力部材)48を備えている。ネジ軸部材47は、図3及び図4に示すように、周面に螺旋溝を有した細径の円柱状部材である。このネジ軸部材47は、自身の軸心が電動モータ42の出力軸42bに合致する態様で、その両端部に設けた軸受部材49を介してベース部材41の上面に保持してあり、ベース部材41に対して自身の軸心回りに回転することが可能である。このネジ軸部材47には、連結部材50を介して電動モータ42の出力軸42bが連結してある。
【0024】
駒部材48は、図3に示すように、ネジ穴48aを介してネジ軸部材47に螺合したブロック状部材である。この駒部材48は、ベース部材41の上面に設けたレール部材44に係合することによってネジ軸部材47に対する回転が規制されており、ネジ軸部材47が自身の軸心回りに回転した場合にネジの作用によりネジ軸部材47の軸心に沿って往復移動することが可能である。
【0025】
この駒部材48には、支承ブラケット51が取り付けてある。支承ブラケット51は、駒部材48の端部からその上方域を覆う態様で設けた板状部材であり、駒部材48の上方となる部位に回動支承軸52を備えている。回動支承軸52は、ネジ軸部材47の軸心に直交する態様で支承ブラケット51から上方向に向けて突設したものである。
【0026】
上述したアクチュエータユニット40とガラス窓20との間には、リンクユニット60が設けてある。リンクユニット60は、図1、図3及び図4に示すように、係合ピン(支承軸)61を介して互いの先端部を回動自在に接続した一対のリンク部材62,63を備えたもので、係合ピン61を中心として回動することにより、互いに直線状に伸長した伸長姿勢と互いに屈曲状となる屈曲姿勢とに変位することが可能である。図からも明らかなように、一対のリンク部材62,63を接続する係合ピン61は、回動支承軸52と平行となる態様でリンクユニット60から上方に向けて突出している。
【0027】
このリンクユニット60は、上方側に配置される一方のリンク部材(以下、「第1リンク部材62」という)の他端部が支承ブラケット51の回動支承軸52に接続してあり、支承ブラケット51に対して第1リンク部材62を回動支承軸52の軸心回りに回動することが可能である。一方、第1リンク部材62よりも下方側となる部位に配置される他方のリンク部材(以下、「第2リンク部材63」という)は、その他端部がリンク支承軸46のリンク取付軸部46cに接続してあり、図6において上方に示すように、リンク支承軸46がスライド支承部43a2にある場合、回動が規制された状態でリンク支承溝43aのスライド支承部43a2に沿ってスライド移動することが可能である。さらに、第2リンク部材63は、図6において下方に示すように、リンク支承軸46が回転支承部43a1に配置された場合、リンク支承軸46とともにリンク支承部材43に対してリンク支承軸46の軸心回りに回動することが可能である。
【0028】
また、リンクユニット60には、第1リンク部材62において第2リンク部材63との接続部よりもさらに先端側となる部位に連係ピン70が設けてある。連係ピン70は、係合ピン61と平行となる態様で第1リンク部材62の上面から上方に向けて突設した円柱状部材である。この連係ピン70は、係合ピン61よりも突出高さが大きく、かつ下枠部材12の収容室30に収容することのできる長さに構成したもので、その突出端部がガラス窓20に設けた連係プレート25のスライド溝25aにスライド自在に貫通させてある。
【0029】
上記のように構成したリンクユニット60は、図3及び図4に示すように、駒部材48がネジ軸部材47において最も電動モータ42に近接した位置に配置された場合、第1リンク部材62と第2リンク部材63とが互いに直線状となり、第2リンク部材63の他端部に接続したリンク支承軸46がリンク支承溝43aのスライド支承部43a2に配置され、さらに回動支承軸52、係合ピン61及びリンク支承軸46も一直線上に配置されることになる。この状態から駒部材48がネジ軸部材47に沿って電動モータ42から離隔する方向に移動すると、第2リンク部材63の他端部に接続したリンク支承軸46がリンク支承溝43aの回転支承部43a1に至る結果、第2リンク部材63の回動が許容されることになり、図1の右方側に示すように、第1リンク部材62と第2リンク部材63とが室外側に向けて開口枠10の面外方向に互いに屈曲することが可能となる。
【0030】
さらに、上記横すべり出し窓には、図2〜図4に示すように、アクチュエータユニット40のベース部材41に案内部材80が設けてある。案内部材80は、ベース部材41の縦壁部41bから室外側に向けて本体壁部41aにほぼ平行となるように突設した板状部材であり、リンクユニット60のリンク部材62,63が互いに直線状にある場合にその上方域を覆うように設けてある。この案内部材80には、案内溝81が形成してある。案内溝81は、リンクユニット60の係合ピン61に係合してこれを案内するためのもので、第1案内部81a及び第2案内部81bを有している。第1案内部81aは、ネジ軸部材47の軸心方向に沿って形成した直線状部分である。第2案内部81bは、第1案内部81aにおいて電動モータ42から離隔した端部からその延長域に向かうに従って漸次室外側に向けて傾斜する直線状部分であり、案内部材80において室外側に位置する縁部に開口している。
【0031】
図7の(a)〜(d)は、上述した横すべり出し窓のアクチュエータユニット40及びリンクユニット60の動作を示したものである。以下、これらの図を適宜参照しながら、開口枠10に対するガラス窓20の開閉動作について説明し、併せて本願発明の特徴部分について詳述する。
【0032】
まず、この横すべり出し窓では、図7の(a)に示すように、駒部材48がネジ軸部材47において最も電動モータ42に近接した位置に配置されて第1リンク部材62と第2リンク部材63とが互いに直線状となると、第1リンク部材62に設けた連係ピン70が開口枠10の下枠部材12において最も室内側に配置されることになる。これにより、連係ピン70に係合する連係プレート25も最も室内側に配置されることになり、ガラス窓20が開口枠10に対して閉塞された状態に維持される。
【0033】
この状態においては、係合ピン61が案内部材80の第1案内部81aに配置されるため、さらにはリンク支承軸46もスライド支承部43a2にあり、第2リンク部材63の回動が規制された状態にあるため、このままの状態から開口枠10に対してガラス窓20を室外方向に移動させることが困難となる。従って、開口枠10とガラス窓20との間に、別途両者を施錠するための専用の錠装置等を設けることなく施錠した状態に維持することができるようになる。しかも、回動支承軸52、係合ピン61及びリンク支承軸46がネジ軸部材47の軸心を含む一平面上に配置されるため、リンクユニット60の見込方向に沿った寸法を小さくできる。
【0034】
一方、上述した状態からガラス窓20を開放すべく電動モータ42を駆動し、ネジ軸部材47を自身の軸心回りに回転させると、これに螺合する駒部材48が漸次電動モータ42から離隔する方向に移動することになる。ここで、図7の(a)に示すように、回動支承軸52、係合ピン61及びリンク支承軸46がネジ軸部材47の軸心を含む一平面上に配置された場合には、駒部材48をネジ軸部材47の軸心方向に沿って移動させた場合にも、リンクユニット60のリンク部材62,63を互いに屈曲させることは困難である。
【0035】
しかしながら、上記横すべり出し窓においては、第2リンク部材63の他端部がリンク支承溝43aのスライド支承部43a2に沿ってスライド自在であるため、リンクユニット60全体がネジ軸部材47の軸心方向に沿ってスライドすることになる。リンクユニット60がネジ軸部材47の軸心方向に沿ってスライドすると、リンクユニット60に設けた係合ピン61が第1案内部81aからやがて第2案内部81bに至ることになり、図7の(b)に示すように、駒部材48がネジ軸部材47の軸心方向に移動すると、それ以降は係合ピン61が開口枠10の面外方向に案内されるようになる。この場合、係合ピン61が第2案内部81bに沿って移動するため、第2リンク部材63がリンク支承軸46の軸心回りに回動することになる。しかしながら、リンク支承軸46の二面幅がリンク支承溝43aのスライド支承部43a2と係合することによって第2リンク部材63の回動も制限されたものとなり、係合ピン61が不用意に案内溝81から逸脱することはない。
【0036】
上述の状態からさらにリンクユニット60全体がネジ軸部材47の軸心方向に沿ってスライドし、図7の(c)に示すように、第2リンク部材63の他端部に接続したリンク支承軸46がリンク支承溝43aの回転支承部43a1に至ると、第2リンク部材63の回動が許容されることになり、これと同時に係合ピン61が第2案内部81bの開口端に到達する。この結果、以降、電動モータ42の駆動によって駒部材48が電動モータ42から離隔する方向に移動すると、図7の(d)に示すように、第1リンク部材62の他端部と第2リンク部材63の他端部とが近接し、これら第1リンク部材62及び第2リンク部材63が開口枠10の面外方向に向けて回動するため、第1リンク部材62の連係ピン70を介して連係したガラス窓20が開口枠10に対して開放されることになる。
【0037】
一方、上述した状態から電動モータ42を先とは逆方向に回転させると、駒部材48がネジ軸部材47の軸心方向に沿って電動モータ42に近接する方向に移動することになる。従って、第1リンク部材62の他端部と第2リンク部材63の他端部とが離隔し、それぞれの先端部が室内側に向けて回動するようになる。この間、第2リンク部材63は、その他端部のリンク支承軸46がリンク支承溝43aの回転支承部43a1に配置されたままとなるため、図7の(c)に示すように、係合ピン61が確実に第2案内部81bの開口端に復帰し、以降、図7の(b)に示す状態を経て再び図7の(a)に示す状態となる。これにより、連係ピン70を介して連係したガラス窓20が開口枠10に対して閉塞されることとなる。
【0038】
上述したガラス窓20の閉塞動作の際、この横すべり出し窓によれば、係合ピン61が第2案内部81bによって漸次開口枠10に近接された後、第1案内部81aに引き込まれることになる。従って、開口枠10の枠部材11,12,13とガラス窓20の框部材21,22,23との間にウェザータイト(図示せず)が設けられている場合、これを確実に押し潰して気密性を確保することが可能となる。
【0039】
以降、電動モータ42を駆動すれば、都度上述した動作が行われ、開口枠10に対してガラス窓20を開閉させることができるようになる。
【0040】
電動モータ42によってガラス窓20を開閉させている間上記実施の形態によれば、リンクユニット60を構成するリンク部材62,63のいずれにも案内溝等の長孔を設ける必要が無く、ベース部材41に設けた案内部材80の案内溝81を介して開口枠10に対するガラス窓20の開閉移動を実現するようにしている。従って、リンク部材62,63に関しては、その寸法を大きくすることなく所望の強度を確保することが可能であり、これをアクチュエータユニット40とともに下枠部材12に収容して外観品質を確保したとしても、下枠部材12の寸法を著しく増大させる必要はない。これにより、設置場所が制限される事態を招来する恐れもなく、アクチュエータユニット40の駆動で開閉することのできる横すべり出し窓を任意の場所で具現化できるようになる。
【0041】
尚、上述した実施の形態では、上框部材21を軸として下框部材22を室外側に向けて開口する、横すべり出し窓を例示しているが、必ずしも横すべり出し窓に限定されず、障子の一側縁を構成する框部材を開口枠の面外方向に移動させる態様で障子を開口枠に対して開閉自在に支持させた建具であれば、縦すべり出し窓あるいは内倒し窓や外倒し窓等、その他の建具にも適用することが可能である。この場合、アクチュエータユニットやリンクユニットを収容させる枠部材は必ずしも下枠部材とはならず、開閉移動に伴って枠部材の面外方向に移動する框部材に対応した枠部材であれば良い。例えば、上述した横すべり出し窓においても縦枠部材にアクチュエータユニットやリンクユニットを設けるようにすることも可能である。
【0042】
また、上述した実施の形態では、アクチュエータユニット40として回転駆動源である電動モータ42を適用したものを例示したが、必ずしも回転駆動源である必要はなく、シリンダアクチュエータ等のような直動駆動源を適用することも可能である。
【0043】
さらに、上述した実施の形態では、ベース部材41にアクチュエータユニット40を構成するようにしているため、枠部材に取り付ける場合の作業を容易に行うことが可能であるが、必ずしもベース部材に構成する必要はなく、直接枠部材に構成するようにしても構わない。
【0044】
また、上述した実施の形態では、一対のリンク部材を互いに支承した支承軸と、案内部材の案内溝に係合する係合ピンとを同一の軸心上に設けるようにしているが、必ずしも支承軸と係合ピンとが同一の軸心上にある必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態である建具を示したもので、開口枠に対して障子を閉じた状態と開口枠に対して障子を開いた状態とを個別に示す斜視図である。
【図2】図1に示した建具の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示した建具に適用するアクチュエータユニット及びリンクユニットの外観を示す要部斜視図である。
【図4】図3に示したアクチュエータユニット及びリンクユニットの断面図である。
【図5】図1に示した建具に適用するリンクユニットの要部を示す分解斜視図である。
【図6】図1に示した建具に適用するリンクユニットの動作を示す要部概念図である。
【図7】図1に示した建具に適用するアクチュエータユニット及びリンクユニットの動作を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 開口枠
11,12,13 枠部材
20 ガラス窓
21,22,23 框部材
25 連係プレート
25a スライド溝
30 収容室
40 アクチュエータユニット
41 ベース部材
42 電動モータ
43 リンク支承部材
43a リンク支承溝
43a1 回転支承部
43a2 スライド支承部
46 リンク支承軸
46a 軸頭部
46b 係合軸部
46c リンク取付軸部
47 ネジ軸部材
48 駒部材
52 回動支承軸
60 リンクユニット
61 係合ピン
62,63 リンク部材
70 連係ピン
80 案内部材
81 案内溝
81a 第1案内部
81b 第2案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の一側縁を構成する框部材を開口枠の見込方向に移動させて前記障子を前記開口枠に対して開閉させる建具において、
ベース部材を介して前記開口枠を構成する枠部材の内部に収容し、駆動した場合に前記ベース部材に対して出力部材を前記枠部材の長手方向に沿って往復移動させるアクチュエータユニットと、
互いの先端部を所定の支承軸を中心として回動自在となるように支承することにより互いに直線状に伸長する伸長姿勢と互いに屈曲状となる屈曲姿勢とに変位する一対のリンク部材を具備するとともに、前記一対のリンク部材のいずれか一方から前記支承軸に沿って突設した係合ピンを備え、一方のリンク部材の基端部を前記支承軸と平行な軸心を中心として回動自在となるように前記アクチュエータユニットの出力部材に支承し、他方のリンク部材の基端部を前記ベース部材に対して前記枠部材の長手方向に沿ってスライド自在、かつ前記支承軸と平行な軸心を中心として回動自在となるように支承し、前記リンク部材のいずれか一方から前記支承軸と平行となるように突設した連係ピンを介して前記障子の框部材に連係するリンクユニットと、
前記アクチュエータユニットの前記出力部材が往復移動した場合に前記リンクユニットの係合ピンに係合し、前記一対のリンク部材を前記伸長姿勢と前記屈曲姿勢とに変化させることによって前記障子を前記開口枠に対して開閉させる案内溝を有した案内部材と
を備えたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記アクチュエータユニットは、
出力軸の軸心が前記枠部材の長手方向に沿うように前記ベース部材に配設した回転駆動源と、
周面に螺旋溝を有し、自身の軸心が前記枠部材の長手方向に沿うように前記ベース部材に回転自在に配設したネジ軸部材と、
前記ネジ軸部材に螺合し、前記出力部材として機能する駒部材と
を備え、前記駒部材は、前記回転駆動源の駆動による前記ネジ軸部材の回転により、前記ネジ軸部材の軸心方向に沿って往復移動自在に設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記案内部材の案内溝は、
前記一対のリンク部材が伸長姿勢にある状態において前記係合ピンを前記枠部材の長手方向に沿って案内する第1案内部と、
前記第1案内部の一方の端部からその延長域に向かうに従って漸次開口枠の面外方向に向けて傾斜する第2案内部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記他方のリンク部材の基端部と前記ベース部材との間には、前記係合ピンが前記案内部材の第1案内部に沿って移動する際に前記他方のリンク部材の回動を規制する回動規制手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101142(P2010−101142A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276088(P2008−276088)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】