説明

建物

【課題】省エネルギーを図りつつ、外観デザインの向上も図ることができる建物を提供する。
【解決手段】建物10内の人が居住する居室12の周囲を外壁躯体14が形成し、換気扇20がこの外壁躯体14に設置される。外壁躯体14に対しての建物10の外側に、所定の大きさの隙間を挟んで仕上材22が設けられ、空気が上下方向に沿って通過する空間とされる通気層24が、外壁躯体14と仕上材22との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギーを図りつつ、外観デザインの向上も図ることができる建物に関し、特に住宅に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの意識の高まりに伴って、住宅などの建物において、エアサイクル住宅や、地熱の利用が多く採用されている。その例として、下記の特許文献1などがある。この例においては、夏期において、外気を軒下から外壁と内壁との間の通気部内に取り込み、通気部を通して屋根部に流通させ、屋根部の空気を排気ファンにより、内壁、通気部及び外壁を貫通した排気通路を通して大気に放出するものである。
【0003】
この一方、夏期における居室内の空気は、一般に居室内を冷房していることから外気温よりも低く、また、冬期における居室内の空気は、一般に居室内を暖房していることから外気温よりも高い。
近年では、省エネルギー住宅に関する指向が強く、室内が室外と断熱化された、すなわち断熱材またはRC壁や二重サッシなどにより可能な限り熱の放散や侵入を防止した外断熱建物(なお、本発明において断熱化の程度が限定されるものではない)が多く採用される傾向にある。各対象室内領域は、適宜に位置に設けられた換気扇によって、建築基準法上、断熱に伴うホルムアルデヒドなどの化学物質の発散のために、排気可能となっている。
【特許文献1】特開2002−13219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、夏期には外気温よりも低い冷気が屋外に排出され、冬期には外気温よりも高い暖気が屋外に排出されることになるが、省エネルギーの観点からこれら冷気や暖気を利用できないかの課題に着目した。
他方、外壁に設置された換気扇等により居室内の空気を排気することになるので、その排気口から雨水の侵入防止のために換気扇用のベンドキャップが建物の外壁に設置することが必要であった。このため、建物の外壁面にベンドキャップが突出することに伴い、意匠(デザイン)的に好ましいものないばかりでなく、外壁の仕上げ工事の作業量が増大する問題もある。
【0005】
以上より、本発明の主たる課題は、省エネルギーを図りつつ、外観デザインの向上も図ることができる建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る建物は、室内と室外を区画する外壁の外側に間隔を置いて外面材を設け、前記外壁と外面材との間を通気層とし、この通気層の下部が外気取入口、上部が排気口とされ、
前記室内の換気用の換気扇が前記外壁に設けられ、前記換気扇による排気通路が前記外壁を通して前記通気層に連通していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る建物の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、室内と室外を区画する外壁の外側に間隔を置いて外面材を設け、これら外壁と外面材との間を通気層とし、この通気層の下部が外気取入口とされると共に、上部が排気口とされている。そして、室内の換気用の換気扇が外壁部に設けられ、この換気扇による排気通路が外壁を通して通気層に連通している為、排気が通気層内を通過してから屋外に放出されることになるが、この際に、外壁の外側に沿って排気が流れるので、外壁と排気との間で効率良く伝熱されることになる。
【0008】
つまり、本請求項による建物であれば、特別な設備を使用することなく、外壁と排気との間で効率良く伝熱されるのに合わせて、排気の持つ冷熱や温熱の利用が可能となることで、暖冷房に関する建物の省エネルギーの効果が高まるようになる。
【0009】
他方、換気扇が設置された外壁とは別に、この外壁の外側に外面材が設けられていることから、建物の外面を形成するこの外面材には換気扇が存在せず、これに伴って、換気扇用のベンドキャップが不要となる。従って、建物の外面にベンドキャップが不要となることから、単に意匠上の制限がなくなるだけでなく、外壁の仕上げ工事の作業量が低減されるようになる。
【0010】
請求項2に係る建物の作用を以下に説明する。
本請求項に係る送風ダクトは請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記外面材及び通気層は、実質的に建物の方角壁面全体に形成されているという構成を有している。
【0011】
つまり、本請求項によれば、上記のように実質的に建物の方角壁面全体に外面材及び通気層が形成されたことで、建物の各方角壁面のいずれかの全体に少なくとも通気層が存在するようになる。これに伴い、この方角壁面全体において外壁と排気との間で効率良く伝熱されることになる結果として、省エネルギーを図りつつ外観デザインの向上も図るという請求項1の作用効果がより確実に達成可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省エネルギーを図りつつ、外観デザインの向上も図ることができる建物を提供できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発明を実施するための最良の形態に係る建物10を図1及び図2に示し、この図に基づき本形態を説明する。
図2は2階建て建物全体の概要を図示したものであり、図2に1階部分が図示され、キッチンを含むリビング、和室、風呂、洗面・脱衣室、トイレが設けられ、2階は図示されていない。各部屋や領域は、室外と断熱化された、すなわち断熱材またはRC壁や二重サッシなどにより可能な限り熱の放散や侵入を防止した外断熱建物とされている。各対象室内領域は、適宜に位置に設けられた換気扇(本図には図示せず)によって、建築基準法上、断熱に伴うホルムアルデヒドなどの化学物質の発散のために、排気可能となっている。
【0014】
さらに、本実施の形態に係る住宅等の建物10内の人が居住する空間とされる居室12の周囲の四辺をそれぞれ外壁が区画するが、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、この外壁をコンクリート等の建材によって垂直方向に延びるように外壁躯体14がそれぞれ形成している。尚、この居室12内は、例えば夏期であればクーラー等により冷房され、また、冬期であればヒーター等により暖房されていて、居室12内の空気は、夏期であれば外気温より低く、冬期であれば外気温より高くなっている。
【0015】
そして、これら各外壁躯体14の内の少なくとも何れかの図1に示す屋外E側となる外側に、断熱材16が外壁躯体14に沿うように取り付けられている。また、この外壁躯体14には、外壁躯体14及び断熱材16を貫通する形で貫通穴18が設けられており、この貫通穴18に嵌り込む形で、居室12内の空気を矢印A1で示すように排気するための換気扇20が、外壁躯体14に設置されている。
【0016】
この外壁躯体14及び断熱材16に対しての建物10の外側となる図1の右側には、所定の大きさの隙間を挟んで板状に形成された外面材である仕上材22が設置されている。つまり、外壁躯体14に仕上材22の端部が図示しないものの固定されており、図1の上下方向に沿って空気が矢印A2で示すように通過する空間とされる通気層24が、これら外壁躯体14と仕上材22との間に配置されることで、実質的に建物10の方角壁面全体に仕上材22及び通気層24に形成されている。この為、換気扇20が居室12内の空気を排気すると、この通気層24内に入って上下方向に流れるようになる。
【0017】
さらに、仕上材22の下端側には、外気を案内する為の案内部材26が仕上材22より下部を外側に突出させる形で取り付けられており、これに伴って、この案内部材26と断熱材16側との部材との間には、矢印E1で示すように外気を通気層24内に取り入れる為の外気取入口28が設けられることになる。
【0018】
他方、この仕上材22の上端側に対応して、外壁躯体14及び断熱材16の上側にはブラケット32が設置されており、また、通気層24内を通過する空気を案内する為に、このブラケット32の先端には、下部を仕上材22の上端より下側に位置するように形成された上部カバー34が釘付け等されて、固定されている。尚、この上部カバー34は降雨が通気層24内に入らないように仕上材22より外側に突出した形とされている。これに伴って、この上部カバー34と仕上材22の上端との間には、矢印A3で示すように通気層24内から外部に空気を排気する為の排気口36が設けられることになる。
【0019】
次に、本実施の形態に係る建物10の作用を説明する。
本実施の形態によれば、居室12の周囲を区画する外壁躯体14の外側に、矢印A2で示す空気が通過する空間とされる通気層24を介するように間隔を置いて、板状に形成された仕上材22が設けられている。さらに、仕上材22及び通気層24は、実質的に建物10の方角壁面全体に形成されている。
【0020】
また、矢印E1で示す外気を取り入れる外気取入口28が、この通気層24の下部側に設けられており、通気層24内から外部に空気を矢印A3で示すように排気する排気口36が、この通気層24の上部側に設けられている。そして、外壁躯体14に設置された居室12内の換気用の換気扇20が居室12内の冷気や暖気である空気を矢印A1で示すようにこの通気層24内に排気するようになっている。
【0021】
この為、この居室12内からの排気が、外気取入口28から取り入れた外気と一体的に通気層24内を通過して排気口36から屋外Eに放出されることになるが、この際に、外壁躯体14の外側に沿って排気が流れるので、冷却され或いは加熱されている排気と外壁躯体14との間で効率良く伝熱されるのに伴い、夏期には外壁躯体14を冷やし、冬期には外壁躯体14を暖めることができるようになる。
【0022】
つまり、本実施の形態による建物10であれば、低コストとなるように特別な設備を使用することなく、外壁躯体14と排気との間で効率良く伝熱されるのに合わせて、排気の持つ冷熱や温熱の利用が可能となることで、暖冷房に関する建物10の省エネルギーの効果が高まるようになる。
【0023】
他方、換気扇20が設置された外壁躯体14とは別に、この外壁躯体14の外側に仕上材22が設けられていることから、建物10の外面を形成するこの仕上材22には換気扇20が存在せず、これに伴って、換気扇用のベンドキャップが不要となる。従って、建物10の外面にベンドキャップが不要となることから、単に意匠上の制限がなくなるだけでなく、外壁躯体14の仕上げ工事の作業量が低減されるようになる。
【0024】
尚、上記実施の形態では、仕上材22の下端側に外気取入口28が設けられ、仕上材22の上端側に排気口36が設けられているが、この逆としても良く、また、上記実施の形態では仕上材22を一枚としたが、仕上材22を複数枚重ねて設置することで、通気層24を複数層設けるような構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る建物の外壁躯体周辺の断面図である。
【図2】本発明の建物(住宅)の1階伏図である。
【符号の説明】
【0026】
10 建物
12 居室
14 外壁躯体(外壁)
16 断熱材
20 換気扇
22 仕上材(外面材)
28 外気取入口
36 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外を区画する外壁の外側に間隔を置いて外面材を設け、前記外壁と外面材との間を通気層とし、この通気層の下部が外気取入口、上部が排気口とされ、
前記室内の換気用の換気扇が前記外壁に設けられ、前記換気扇による排気通路が前記外壁を通して前記通気層に連通していることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記外面材及び通気層は、実質的に建物の方角壁面全体に形成されている請求項1記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−144392(P2009−144392A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322282(P2007−322282)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】