説明

建物

【課題】必要以上に集熱装置で加熱された空気を効率よく排出して建物の冷却効率を妨げない建物を提供する。
【解決手段】集熱装置3は、居室空気取り入れ口40及び空気排出口41を覆う金属製パネル32を備え、この金属製パネル32の内部空間43により空気流通路が形成され、この空気流通路は、下方の空気取り入れ口42、居室空気取り入れ口40、上方の空気排出口41と、を含んで構成されている。このため、必要以上に集熱装置で加熱された空気を効率よく排出して建物の冷却効率を妨げない建物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を集める集熱装置が取り付けられた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱を利用した暖房補助システムを建物に装着することが行われており、その一例として、アルミ製パネルの内部に空気を取り込み、この空気を集める太陽熱集熱装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、アルミパネルからなるソーラーウォールの内部に空気を取り込んで暖め、この暖められた空気を、パイプを通じて建物に供給する換気システムが開示されている。
特許文献2には、建物の外壁にアルミ製の太陽光集熱パネルを設置し、冬では、パネル内で暖められた空気を外壁に形成された孔を通じて室内に取り込み、夏では、パネル内で暖まった空気を週熱パネル正面上部に形成された換気口から外部に放出する太陽熱収集システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−221101
【特許文献2】特開2008−116176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、ソーラーウォールと建物との間でパイプを接続するので、ソーラーウォールで暖まった空気が冷めてしまうという課題がある。
特許文献2では、特許文献1の課題は解決できるが、夏季において、パネル内で必要以上に加熱された空気がパネルに形成された換気口から排出されるものの、その排出が迅速に行われるものではないから、パネルの内部に溜まっている状態となる。そのため、特許文献2では、集熱パネルが外部に取り付けられているので、夏季に必要以上に加熱された空気の熱が外部を伝わって建物内部に伝達されることになり、建物の内部の換気や冷房の妨げとなる。
本発明は、必要以上に集熱装置で加熱された空気を効率よく排出して建物の冷却効率を妨げない建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建物は、図面を参照して説明すると、居室12と外部とを遮る外壁(外壁パネル)123に太陽熱を集める集熱装置3が取り付けられ前記居室の上部に腰壁2Aが設けられた建物1であって、この集熱装置は、前記外壁と前記腰壁の少なくとも一部とを覆う金属製パネル32を備え、かつ、この金属製パネルより内側の内部空間43には、空気流通路が形成され、この空気流通路は、一端部が前記金属製パネルの下端部に開口された空気取り入れ口42とされ、その途中部分が前記居室に連通された居室空気取り入れ口40とされ、かつ、その他端部が前記腰壁に開口された空気排出口41とされていることを特徴とする。
この構成の発明では、空気流通路が外壁だけでなくその上部に配置される腰壁まで形成されているから、必要以上に暖まった空気は居室より離れた腰壁近傍から排出されるので、居室近傍に溜まることが少ない。
【0006】
この際、前記空気排出口は、前記腰壁の建物内側に開口されていることが好ましい。
この構成の発明では、建物正面から空気排出口が見えないので、外観が良好である。
【0007】
さらに、前記居室空気取り入れ口には、換気ファン14が設けられていることも好ましい。
この構成の発明では、冬季は、換気ファンを作動して暖かい空気を該居室に積極的に取り込むことができ、夏季は換気ファンを駆動させないことにより、必要以上に暖まった空気を居室に取り込むことを防止できる。
【0008】
また、前記空気排出口には、排気ファンが設けられていることも好ましい。
この構成の発明では、腰壁近傍に溜まった暖められた空気を効率的に排気することができる。
【0009】
そして、前記居室空気取り入れ口には、換気を調整する換気弁が設けられ、前記空気排出口には、排気量を調整する排気弁251が設けられていることも好ましい。
この構成の発明では、換気弁を調整することにより、居室内に流入する暖められた空気の量を調節することができる。そのため、例えば、春や秋では、暖められた空気が多量に居室に流入して、居室内が過剰に暖められることを防止できる。
また、排気弁を調整することにより、内部空間の空気の流出量を調整できる。例えば、空気の流出量を少なくすれば、内部空間の空気をより暖めることができ、居室により暖められた空気を流入させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の建物の一部を切り欠いて示す側面図である。図2は、冬季において、集熱装置の内部の空気が居室に取り込まれる状態を示す断面図である。図3は、夏季において、集熱装置の内部の空気がバルコニに排出される状態を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のユニット式建物1(以下「建物1」と略記する)は、工場で生産された複数の1階建物ユニット11Aを建築現場の基礎10上で水平方向に配置し、さらにいくつかの1階建物ユニット11A上に同様の2階建物ユニット11Bを配置し、さらに2階建物ユニット11B上に傾斜屋根11Cを配置することで建てられている。
1階建物ユニット11Bのうち南側に配置された1階建物ユニット11Aは、下屋を構成し、この下屋を構成する1階建物ユニット11Aの上部には、バルコニ20が配置されて、このバルコニ20を構成する床部2が設けられている。このバルコニ20の床部2の外周には、腰壁2Aが設けられ、この腰壁2Aと下屋を構成する1階建物ユニット11Aの外部には集熱装置3が取り付けられている。腰壁2Aの上部には、笠木部材2Bが取り付けられている。
【0012】
各建物ユニット11A,11Bは、略箱状に形成されており、図1、2に示すような四隅に立設された4本の柱111と、これら各柱111の上端間及び下端間に架設された天井梁112及び床梁113とを備えている。つまり、これら柱111、天井梁112、床梁113によって建物1の骨組みが構成されている。また、各建物ユニット11A,11Bの骨組みには、天井パネル121、床パネル122、外壁パネル123及び内壁パネル124が取り付けられて、内部に居室12を有する各建物ユニット11A,11Bが完成するようになっている。
【0013】
下屋を構成する1階建物ユニット11Aでは、外壁パネル123の上部及び内壁パネル124の上部に外部と居室12とを連通する連通孔123A、124Aが形成されている。そして、これら連通孔123A,124Aにはめ込むように筒状の連通部材13が取り付けられている。この連通部材13の内部は、居室空気取り入れ口40とされ、空気流通路を構成している。
連通部材13の居室12側には、換気ファン14が取り付けられている。この換気ファン14は、外部の空気を居室12に取り入れることができるとともに、居室12内の空気を外部に排出することもできる。
【0014】
図2に示すように、床部2は、枠状の四周の梁21と、この梁21間に配置される図示しない中間梁と、この中間梁及び梁21により支持されたALC22とにより構成されている。
梁21は、ALC22の図示しない一端部を支持し、図示しない中間梁は、ALC22の略中央を支持している。
ALC22の腰壁2A側の一端縁には、梁21の上端部に架け渡されるように、凹部23Aを有する溝部材23が取り付けられている。この溝部材23の凹部23Aには、溝カバー23Bが取り付けられている。
【0015】
また、腰壁2Aは、1階建物ユニット11Aの外壁パネル123の上部に固定された腰壁外壁パネル241を有し、この腰壁外壁パネル241のバルコニ20側には、順次腰壁中間パネル242と、腰壁内壁パネル243とが配置されている。この腰壁内壁パネル243の上端部は、腰壁中間パネル242の上端部に固定され、腰壁内壁パネル243の下端部は、溝部材23に固定されている。
腰壁外壁パネル241、腰壁中間パネル242及び腰壁内壁パネル243には、外部とバルコニ20とを連通するバルコニ連通孔241A,242A,243Aが形成されている。
腰壁内壁パネル243のバルコニ20側の上端部には、排気弁251を支持する弁支持部材252が取り付けられている。
また、排気弁251にはつまみ251Aが取り付けられており、このつまみ251Aが上下方向に移動可能となるように弁支持部材252につまみ移動孔252Aが形成されている。弁支持部材252にも外部とバルコニ20とを連通するバルコニ連通孔252Bが形成されている。
これらバルコニ連通孔241A,242A,243A、252Bは、空気排出口41となっている。この空気排出口41も空気流通経路を構成している。
つまみ251Aを上方に移動させることで、空気排出口41は開口し、つまみ251Aを下方に移動させることで、空気排出口41は閉口する。
なお、排気弁251は、シャッターのようなものであるが、排気弁251に変えて、空気排出口41に詰め物をして、空気排出口41を開閉するようにしてもよい。
【0016】
また、腰壁2Aと外壁パネル123との正面側には、集熱装置3が取り付けられている。集熱装置3は、腰壁外壁パネル241の上端部から突出した固定部31と、この固定部31の先端に連結され基礎10近傍まで下端部が延びた金属製パネル32とにより構成されている。この金属製パネル32は、空気排出口41の上方から居室空気取り入れ口40の下方に亘って設けられている。つまり、空気排出口41及び居室空気取り入れ口40は、金属製パネル32で覆われており、建物1外部から見えないようになっている。そして、金属製パネル32の下端部は、空気取り入れ口42となっている。
この金属製パネル32は、複数のアルミに板材から構成されており、現場で組み立ててもよい。
また、金属製パネル32は、外壁パネル123及び腰壁外壁パネル241と所定の間隔を有しており、この所定の間隔により内部空間43が形成され、この内部空間43は、空気流通路となっている。金属製パネル32は、太陽熱を受けて暖められ、この暖められた金属製パネル32と熱交換して、空気流通路を流れる空気が暖められる。
空気流通路を流れる暖められた空気は、居室空気取り入れ口40を介して居室12内に取り入れ可能であり、また、空気排出口41を介してバルコニ20に排出可能である。
【0017】
冬季と夏季において、上述の構成を適用した場合について説明する。
まず、図2を参照して冬季における構成について説明する。
金属製パネル32は太陽熱を受けて暖められており、図2の矢印で示すように、空気取り入れ口42から流入した空気は、加熱された金属製パネル32と熱交換して暖められる。この暖められた空気は、換気ファン14により居室空気取り入れ口40を介して居室12に取り入れられる。居室12では、加熱された空気により暖房効果が得られる。
外部の空気は、金属製パネル32の空気取り入れ口42から、内部空間43に取り入れられ、再度暖められる。
ここで、空気排出口41は、排気弁251により閉口されているので、バルコニ20側に排出が防止される。
冬季では、空気流通路は、空気取り入れ口42、内部空間43、居室空気取り入れ口40により構成されている。
次に、図3を参照して夏季における構成について説明する。
換気ファン14は停止しており、内部空間43の暖められた空気が居室12に取り込まれることを防止する。あるいは、換気ファン14により、居室12内の空気が内部空間43に排出される。
ここで、図3の矢印で示すように、空気排出口41は、排気弁251により開口されているので、内部空間43の空気がバルコニ20側に排出されるようになっている。
すなわち、夏季では、空気流通路は、空気取り入れ口42、内部空間43、空気排出口41により構成されている。
これにより、内部空間43に暖められた空気が溜まることがなく、居室12の換気や冷房の妨げとなるという不都合を防止できる。
なお、本実施形態では、春季、秋季でも、気候変動の大きい場合に換気ファン14、排気弁251を調整して、内部空間43に暖められた空気が溜まることを防止してもよい。
【0018】
上述のような本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)集熱装置3は、居室空気取り入れ口40及び空気排出口41を覆う金属製パネル32を備え、この金属製パネル32の内部空間43には空気流通路が形成され、この空気流通路は、下方の空気取り入れ口42、居室空気取り入れ口40、上方の空気排出口41とを含んで構成されている。
空気流通路が居室空気取り入れ口40の上部に配置される空気排出口41まで形成されているから、必要以上に暖まった空気は居室12より上方の空気排出口41から排出されるので、居室12近傍に溜まることが少ない。そのため、夏季では、内部空間43の空気により、居室12が暖められることを防止する。
【0019】
(2)また、空気排出口41は、バルコニ20側に開口されている。
そのため、建物1正面から空気排出口41が見えないので、外観が良好となる。
【0020】
(3)さらに、居室空気取り入れ口40には、換気ファン14が設けられている。
そのため、冬季は、換気ファン14を作動して暖かい空気が居室12に積極的に取り込まれるようにし、夏季は換気ファン14を駆動させないことにより、必要以上に暖まった空気が居室12に取り込まれることを防止できる。
【0021】
(4)そして、空気排気口には、排気を調整する排気弁251が設けられている。
この排気弁251を調整することにより、内部空間43の通気性を向上させることができ、内部空間43の空気の温度を調整することができる。例えば、春や秋では、排気弁251を調製することにより、快適な温度の空気を居室12内に取り込むことができる。
【0022】
(5)また、金属製パネル32の下端部は、空気取り入れ口42となっている。
つまり、空気取り入れ口42は下側に開口しているため、正面から空気取り入れ口42が見えない。したがって、建物1の意匠性を向上させることができる。
【0023】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、空気排出口41には、換気ファンが設けられていてもよい。
この場合、換気ファンにより、内部空間43の暖められた空気が空気排出口41からバルコニ20側に積極的に排出され、居室12近傍に溜まることを抑制できる。
また、居室空気取り入れ口40には、さらに、換気を調整する換気弁が設けられていてもよい。
この場合、換気弁を調整することにより、暖められた空気の取り入れ量を調整できるため、居室12内の温度の調整が容易になる。
さらに、空気取り入れ口42、居室空気取り入れ口40、換気ファン14及び空気排出口41は、それぞれ複数設けられていてもよい。
そして、空気排出口41は、腰壁2Aの上部に設けられた構成を示したが、腰壁2Aの下部に設けられていてもよい。
また、建物1は、ユニット式建物に限られない。パネル工法、在来工法により立てられた建物でも本発明を適用できる。
そして、集熱装置3は下屋の外側から腰壁2Aの上部に亘り設けられたものに限らず、下屋の外側から腰壁2Aの下部に亘り設けられていてもよい。すなわち、腰壁2Aの少なくとも一部に設けられていればよい。
また、空気取り入れ口42には、内部空間43への虫の侵入を防止する防虫フィルタが取り付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、太陽熱を利用して居室内を暖める暖房補助システムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態である建物を簡略化して示す一部を切り欠いた側面図である。
【図2】冬季において、集熱装置の内部空間の空気が居室に流入する状態を示す断面図である。
【図3】夏季において、集熱装置の内部空間の空気がベランダに流入する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニット式建物
2A 腰壁
3 集熱装置
11A 1階建物ユニット
11B 2階建物ユニット
12 居室
14 換気ファン
20 バルコニ
32 金属製パネル
40 居室空気取り入れ口
41 空気排出口
42 空気取り入れ口
43 内部空間
111 柱
112 天井梁
113 床梁
123 外壁パネル
251 排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室と外部とを遮る外壁に太陽熱を集める集熱装置が取り付けられ前記居室の上部に腰壁が設けられた建物であって、
この集熱装置は、前記外壁と前記腰壁の少なくとも一部とを覆う金属製パネルを備え、かつ、この金属製パネルより内側の内部空間には、空気流通路が形成され、
この空気流通路は、一端部が前記金属製パネルの下端部に開口された空気取り入れ口とされ、その途中部分が前記居室に連通された居室空気取り入れ口とされ、かつ、その他端部が前記腰壁に開口された空気排出口とされている
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物において、
前記空気排出口は、前記腰壁の建物内側に開口されている
ことを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の建物において、
前記居室空気取り入れ口には、換気ファンが設けられている
ことを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の建物において、
前記空気排出口には、排気ファンが設けられている
ことを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の建物において、
前記居室空気取り入れ口には、換気を調整する換気弁が設けられ、
前記空気排出口には、排気量を調整する排気弁が設けられている
ことを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−156181(P2010−156181A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144(P2009−144)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】