説明

建物

【課題】オープントラス構造とされたトラス梁の大スパン化を可能にすることを目的とする。
【解決手段】鉄骨柱32の間には、大スパンのトラス梁24が架設されている。また、桁行方向(矢印Y方向)に隣接する鉄骨柱32の間には、鉄骨柱38が設けられている。この鉄骨柱38の間には、トラス梁40が架設されている。これらのトラス梁24、40によってクリーンルーム16の床が支持される。従って、トラス梁24、40の負担荷重が低減され、トラス梁24、40の大スパン化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数階からなる建物では全階同じスパン割で構築されることが多い。しかしながら、階ごとに用途が異なる建物、即ち、階ごとに必要となる平面スペースが異なる建物では、全階同じスパン割にすると、用途に応じた平面スペースの確保が困難になる。例えば、重層化されたクリーンルームを有する半導体工場や食品・薬品研究所が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
クリーンルームは、通常、大スパンのトラス梁によって大平面スペースが確保され、トラス梁によって形成されたクリーンルームの天井裏に、空調ダクトやファンが設置されるプレナムチャンバ等のメンテナンススペースが設けられる。このようなクリーンルームを有する建物において、メンテナンススペースとは別に、設備機械や配線、配管等を集約する設備室を設けたいとの要望がある。この場合、設備室のスパン割をクリーンルームに合わせると、設備室に充分な平面スペースを確保することができず、逆に、クリーンルームのスパン割を設備室に合わせると、トラス梁の負担面積が増えて斜材等の補強部材が増加し、メンテナンススペースにおける設備用の有効スペースが狭くなってしまう。
【0004】
一方、特許文献2には、屋根梁材の端部と天井梁材の端部とを束材及び斜材で連結した屋根架構用のトラス梁が提案されている。このトラス梁は、当該トラス梁の端部に設けられた束材及び斜材で剛性を確保することにより、トラス梁の中間部の束材及び斜材を省略したオープントラス構造とされている。しかしながら、トラス梁の中間部では剛性が弱く、大スパン化には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−336381号公報
【特許文献2】特開2002−30760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、オープントラス構造とされたトラス梁の大スパン化を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の建物は、第1柱と該第1柱の間に架設された第1トラス梁とを有し、前記第1トラス梁と直交する方向に並べられた複数の架構と、前記第1トラス梁と直交する方向に隣接する前記1第柱をそれぞれ連結する連結梁と、前記第1トラス梁と直交する方向に隣接する前記1第柱の間にそれぞれ設けられ、前記連結梁から上方へ延びる第2柱と、隣接する前記第1トラス梁の間で、前記第2柱の間に架設される第2トラス梁と、前記第1柱と前記第2柱との間に架設された繋ぎ梁を備え、前記第1トラス梁及び第2トラス梁が上弦材及び下弦材を有し、前記上弦材及び前記下弦材の端部同士が束材及び斜材で連結され、前記上弦材及び前記下弦材の中央部には、斜材がない開口部が設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、架構は、第1柱と当該第1柱の間に架設された第1トラス梁とを有し、第1トラス梁と直交する方向に複数並べられている。第1トラス梁と直交する方向に隣接する第1柱は、連結梁によってそれぞれ連結されている。また、第1トラス梁と直交する方向に隣接する第1柱の間には、第2柱がそれぞれ設けられている。これらの第1柱と第2柱との間には、繋ぎ梁が架設されている。
【0009】
また、第2柱は、連結梁から上方へ延びている。即ち、連結梁より上の階では、第1トラス梁と直交する方向の柱本数(スパン割)が、連結梁より下の階よりも多くなっている。また、第2柱の間には、第2トラス梁が架設されている。
【0010】
第2トラス梁は、第1トラス梁の間に位置している。第1トラス梁及び第2トラス梁は、上弦材及び下弦材を有している。上弦材及び下弦材の端部は束材及び斜材で連結され、上弦材及び下弦材の中央部には、斜材がない開口部が設けられている。即ち、第1トラス梁及び第2トラス梁は、中央部の斜材が省略されたオープントラス構造とされている。
【0011】
なお、ここで云う第1トラス梁及び第2トラス梁の中央部とは、第1トラス梁及び第2トラス梁の中間部だけでなく、束材及び斜材で連結された第1トラス梁及び第2トラス梁の端部の間の部位を指す。
【0012】
ここで、第2柱が連結梁から上方へ延びており、連結梁の下の階には第2柱が存在しない。即ち、連結梁の下の階は柱抜けになるため、第2柱がある連結梁の上の階と比較して平面スペースが広くなっている。
【0013】
一方、第2柱がある連結梁の上の階では、第2柱がない下の階と比較して、第1トラス梁と直交する方向の柱本数が多くなっており、第1柱の間に架設された第1トラス梁、及び第2柱の間に架設された第2トラス梁によって床等が支持される。従って、第2柱がない連結梁の下の階と比較して、床等を支持する梁数が多くなるため、第1トラス梁及び第2トラス梁の負担荷重が低減される。
【0014】
よって、オープントラス構造とされた第1トラス梁及び第2トラス梁の大スパン化が可能となり、第1トラス梁及び第2トラス梁で形成された天井裏の設備(例えば、ダクト、配線、配管、フィルタ、ファン)用の有効スペースを広げることができる。
【0015】
請求項2に記載の建物は、請求項1に記載の建物において、前記第2柱がない前記連結梁の下の階には、耐震部材又は制振部材が設けられている。
【0016】
上記の構成によれば、第2柱がない連結梁の下の階は、第2柱がある連結梁の上の階と比較して、第1トラス梁と直交する方向のスパンが長くなっており、耐震性能が相対的に小さくなっている。従って、連結梁の下の階に耐震部材又は制振部材、例えば、鋼板耐震壁や鋼板制振壁、RC(鉄筋コンクリート)耐震壁、耐震ブレース、制振ブレース、各種ダンパ(オイルダンパ、摩擦ダンパ、粘弾性ダンパ等)を適宜設けることにより、建物全体の耐震性能を効率的に向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の建物は、請求項1又は請求項2に記載の建物において、前記第1柱が免震装置で支持されている。
【0018】
上記の構成によれば、連結梁の下の階は第2柱がなく、柱抜けになっている。従って、第2柱が連結梁の下の階にあり、この第2柱が基礎に達する場合と比較して、免震装置で支持する柱数が少なくなるため、免震装置の必要数量が減少する。また、基礎構造(杭、地盤改良等)が単純化されるため、施工コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記の構成としたので、オープントラス構造とされたトラス梁を大スパン化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る建物の骨組み構造を示す、概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る建物を示す、図1の矢印Y方向から見た概略立面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る建物を示す、図1の矢印X方向から見た概略立面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る建物を示す、平面図である。
【図5】(A)は本発明の実施形態に係るトラス梁を示す模式図であり、(B)〜(G)は本発明の実施形態に係るトラス梁の変形例を示す模式図である。
【図6】(A)は本発明の実施形態に係る建物の要部を示す斜視図であり、(B)は従来の建物を示す斜視図である。
【図7】(A)は本発明の実施形態に係る建物の要部を示す斜視図であり、(B)は従来の建物を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る建物の変形例を示す、図3に相当する立面図である。
【図9】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る繋ぎ梁の常時の応力状態を示す、モーメント図である。
【図10】本発明の実施形態に係る建物の変形例を示す、図3に相当する立面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る建物の変形例を示す、図3に相当する立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る建物について説明する。
【0022】
図1〜図4には、本実施形態に係る建物10が示されている。図1は、建物10の骨組み構造を示す概略斜視図である。図2は、図1の矢印Y方向から建物10を見た概略立面図であり、図3は、図1の矢印X方向から建物10を見た概略立面図であり、図4は、建物10の平面図である。なお、説明の便宜上、図1の矢印Xで表す方向を建物10の「張間方向」とし、矢印Xと直交する矢印Yで表す方向を建物10の「桁行方向」として説明する場合がある。
【0023】
本実施形態に係る建物10は、階によって用途が異なる建物、即ち、階によって必要平面スペース異なる建物に適している。例えば、工場、研究所、倉庫等の大スパン構造の建物、特に、重層化されたクリーンルームを有する半導体工場、食品・薬品研究所等に適している。以下、重層化されたクリーンルームを有する建物を例に本実施形態を説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、種々の建物に適用可能である。
【0024】
建物10は複数階(本実施形態では、4階)からなり、最下階(1階)は、張間方向(矢印X方向)及び桁行方向(矢印Y方向)の二方向大スパン構造とされ、上階(2階〜4階)は、張間方向が大スパンで、桁行方向が最下階(1階)の約半分のスパンとされた一方向大スパン構造とされている。
【0025】
建物10の最下階(1階)は、設備機械、配線、配管等が集約される設備室14とされ、建物10の上階(2階〜4階)は、重層化されたクリーンルーム16とされている。クリーンルーム16の天井裏は、空調ダクトやファンが設置されるプレナムチャンバやISS(インター・ステーシャル・スペース)等のメンテナンススペース18とされており、建物10の上階ではクリーンルーム16とメンテナンススペース18とが交互に設けられている。
【0026】
建物10は、桁行方向に併設された2つの骨組み構造20を有し、これらの骨組み構造20を中間梁22で連結して構成されている。各骨組み構造20は、大スパンのトラス梁24(第1トラス梁)を有する主架構26(第1架構)を、張間方向に複数(本実施形態では、3つ)備えている。これらの主架構26は、トラス梁24と直交する方向、即ち、桁行方向に略平行に並べられている。
【0027】
桁行方向に隣接する主架構26の間には、架構28がそれぞれ設けられている。つまり、桁行方向には、主架構26と架構28とが交互に並べられている。これらの主架構26と架構28は連結梁30、基礎梁46によって連結されている。
なお、基礎構造は、基礎梁46に替えてマットスラブ(べた基礎)でも良いし、杭等を適宜設けても良い。
【0028】
図2に示されるように、主架構26は、基礎Gに立設された一対の鉄骨柱32と、これらの鉄骨柱32の間に架設された複数のトラス梁24を有し、鉄骨柱32と各トラス梁24とを剛接合したラーメン構造(マルチメガオープントラス構造)とされている。複数のトラス梁24は上下方向に間隔を空けて架設され、各トラス梁24の下の空間がクリーンルーム16とされている。クリーンルーム16の天井裏は、トラス梁24の梁成を階高とするメンテナンススペース18とされている。
【0029】
なお、張間方向に隣接する鉄骨柱32の間には、設備室14の床を支持する基礎梁33、及び設備室14の直上階(2階のクリーンルーム16)の床を支持する鉄骨梁34が架設されている。
【0030】
トラス梁24は、平行又は略平行に配置された上弦材24A及び下弦材24Bと、上弦材24Aと下弦材24Bとを連結する束材24C及び斜材24Dを備え、当該トラス梁24の中央部に斜材24Dがない開口部36が設けられている。
【0031】
束材24Cは、トラス梁24の両端部及び中央部にそれぞれ設けられ、上弦材24Aと下弦材24Bの間に略垂直に立設されている。この束材24Cによって、上弦材24Aと下弦材24Bの端部同士、及び上弦材24Aと下弦材24Bの中央部同士が連結されている。
【0032】
一方、斜材24Dは、トラス梁24の両端部にそれぞれ設けられ、上弦材24Aと下弦材24Bの間に傾斜して設けられている。この斜材24Dによって、上弦材24Aと下弦材24Bの端部同士が連結されている。即ち、トラス梁24の中央部には斜材24Dが設けられておらず、隣接する束材24Cの間に開口部36が設けられている。この開口部36は、フィルタ、ファン、ダクト、配線、配管等の配設ルートとして使用される。
【0033】
なお、ここで云うトラス梁24の中央部とは、上弦材24A及び下弦材24Bの中間部だけでなく、束材24C及び斜材24Dで連結されたトラス梁24の端部の間の部位を指す。具体的には、図5(A)〜図5(D)に示される模式図のように、符号Rで示す部位がトラス梁24の中央部であり、符号Rで示す部位がトラス梁24の端部である。このようにトラス梁24の中央部Rとは、斜材24Dがない部位を指す。なお、束材24Cの有無は問わないが、トラス梁24が大スパンになる場合は、トラス梁24の中央部にも、束材24Cを設けることが望ましい。この場合、束材24Cを設ける位置は、図5(A)に示すように、上弦材24A及び下弦材24Bの中間部でも良いし、図5(B)に示されるように、上弦材24A及び下弦材24Bの中間部からずれた位置でも良い。また、前述した通り、トラス梁24の中央部Rには、図5(C)及び図5(D)に示されるように、束材24Cを設けてなくても良い。更に、図5(E)〜図5(G)に示されるように、斜材24Dの向きや斜材24Dの組み合せは適宜変更可能であり、プラットトラス、ハウトラス、ワーレントラス等の種々のトラス構造をベースにすることができる。
【0034】
図1及び図3に示されるように、桁行方向に隣接する主架構26の間に設けられた架構28は、隣接する鉄骨柱32の間にそれぞれ設けられた丘立ちの鉄骨柱38(第2柱)と、これらの鉄骨柱38の間に架設された複数のトラス梁40(第2トラス梁)を有し、鉄骨柱32とトラス梁40を剛接合したラーメン構造とされている。
【0035】
鉄骨柱38は、設備室14の直上階の床を支持する連結梁30の中間部に立設され、連結梁30から上方へ延びている。トラス梁40は、桁行方向に隣接するトラス梁24の間に設けられ、トラス梁40と共にメンテナンススペース18を構成している。なお、トラス梁40の構成は、トラス梁24の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0036】
鉄骨柱32と鉄骨柱38の間には、複数の繋ぎ梁44がそれぞれ架設されている。各繋ぎ梁44は上下方向に間隔を空け、トラス梁24、40の上弦材24A及び下弦材24Bと対応する位置にそれぞれ架設されている。繋ぎ梁44の両端部は、それぞれ鉄骨柱32及び鉄骨柱38と剛接合されている。
【0037】
ここで、鉄骨柱38は連結梁30から上方へ延びており、その下端部(柱脚部)が連結梁30で支持された丘立ち柱とされている。即ち、鉄骨柱38が基礎Gに達していない。これにより、鉄骨柱38がある連結梁30より上の階のクリーンルーム16及びメンテナンススペース18では、桁行方向の柱数(鉄骨柱32と鉄骨柱38の合計本数)が、鉄骨柱38がない連結梁30より下の階の設備室14よりも多くなっている。
【0038】
一方、鉄骨柱38がない連結梁30より下の階の設備室14では、桁行方向のスパンが、鉄骨柱38がある連結梁30より上階のクリーンルーム16及びメンテナンススペース18よりも長くなっている。これにより、設備室14では、張間方向及び桁行方向の二方向大スパンの大平面スペースが確保されている。
【0039】
また、設備室14には、鋼材ブレース(耐震部材)42(図2参照)が設けられている。この鋼材ブレース42によって設備室14の耐震性能の低下が補完されており、鉄骨柱32の断面積を抑えつつ、設備室の14の桁行方向の大スパン化、及び設備室の14の高階高化を実現している。
【0040】
なお、鋼材ブレース42に替えて、若しくは鋼材ブレース42に加えて鋼板耐震壁や鋼板制振壁、RC(鉄筋コンクリート)耐震壁、制振ブレース、各種ダンパ(オイルダンパ、摩擦ダンパ、粘弾性ダンパ等)の種々の耐震部材、制振部材を設けることができる。また、これらの耐震部材、制振部材を設けるのではなく、鉄骨柱32等の断面積を大きくして、耐震性能、制振性能を確保することも可能である。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0042】
図1に示されるように、建物10の桁行方向(矢印Y方向)に隣接する主架構26の間には架構28が設けられており、主架構26及び架構28を構成する大スパンのトラス梁24、40によって、張間方向(矢印X方向)の平面スペースが確保されている。
【0043】
ここで、図6(A)に示されるように、桁行方向に隣接する主架構26の間に架構28を設けたことにより、主架構26及び架構28のトラス梁24、40によって、クリーンルーム16の床72(図中の二点鎖線)が支持される。従って、図6(B)に示す比較例のように、架構28を設けない構成と比較して、トラス梁24、40が負担する床72の負担面積(支配面積)が減少する。更に、主架構26及び架構28が地震荷重を分担する。従って、トラス梁24、40の負担荷重が低減され、トラス梁24、40の中央部から斜材24Dを省略することができる。
【0044】
このように本実施形態では、メンテナンススペース18を構成するトラス梁24、40の中央部から斜材24Dを省略可能であるため、設備用の有効スペースを広げることができるとともに、トラス梁24、40の大スパン化が可能となる。これにより、例えば、図7(A)に示されるように、斜材24Dがない開口部36に幅広のダクト68を貫通させることが可能になり、ダクト68や配管等の配設ルートの確保が容易になる。一方、図7(B)に示される比較例では、トラス梁100の中央部にある斜材100Dが障害となるため、ダクトや配管等のサイズが制限され、配設ルートの確保が困難になる。なお、図7(B)中の符号100A、100B、100C、102は、それぞれ上弦材、下弦材、束材、配管である。
【0045】
また、本実施形態では、架構28を設けたことにより、床72(図6(A)参照)の床組みを構成する小梁、筋交い等の二次部材のスパンが短くなるため、図6(B)に示す構成よりも二次部材の必要数量が減少する。一方、図6(B)に示す比較例では、床72の床組みを構成する小梁、筋交い等の二次部材のスパンが長くなるため、本実施形態よりも二次部材の必要数量が増加する。従って、架構28を設けた本実形態の方が、建物10全体の部材数が少なくなり、コスト削減を図ることができる。
【0046】
更に、架構28は、主架構26の鉄骨柱32、架構28の鉄骨柱38に剛接された複数の繋ぎ梁44で支持されている。これらの繋ぎ梁44は、トラス梁24、40の上弦材24A及び下弦材24Bに対応する位置に架設されている。ここで、メンテナンススペース18には重量が大きい床スラブ等が存在しないため、下弦材24Bに対応する位置にある繋ぎ梁の負担荷重は、通常、上弦材24Aに対応する位置にある繋ぎ梁の負担荷重よりも小さくなる。本実施形態では、この下弦材24Bに対応する位置にある繋ぎ梁44を有効活用し、架構28の鉛直荷重を負担させている。これにより、上弦材24A及び下弦材24Bに対応する位置にある繋ぎ梁44が、架構28の鉛直荷重を分担するため、各繋ぎ梁44の負担荷重が減少する。従って、各繋ぎ梁44の梁成を小さくすることができ、丘立ち柱とされた鉄骨柱38を合理的に支持することができる。更に、各繋ぎ梁44は、地震荷重も分担するため、鉄骨柱32、38の負担が低減される。従って、鉄骨柱32、38の断面積を小さく抑えることができる。
【0047】
また、架構28の鉄骨柱38を丘立ち柱にし、設備室14で柱抜けにしたことにより、設備室14の平面スペースが大きくなっている。即ち、設備室14では、鉄骨柱38があるクリーンルーム16及びメンテナンススペース18と比較して、桁行方向のスパンが長くなっており、張間方向及び桁行方向の二方向大スパンの平面スペースが確保されている。従って、クリーンルーム16及びメンテナンススペース18よりも広く、使い易い設備室14を構築することができる。
【0048】
更に、二方向大スパンとされ、相対的に耐震性能、制振性能が小さくなった設備室14に鋼材ブレース42を設けたことにより、設備室14の耐震性能の低下を補完されるため、鉄骨柱32の断面積を抑えつつ、設備室の14の桁行方向の大スパン化、又は設備室14の高階高化を図ることができる。
【0049】
次に、本実施形態に係る建物の変形例について説明する。
【0050】
上記実施形態では、桁行方向に隣接する主架構26の間に1つの架構28を設けたが、図8に示されるように、主架構26の間に複数(本変形例では、2つ)の架構28を設けても良い。これにより、クリーンルーム16の床72(図6(A)参照)の鉛直荷重を負担するトラス梁24、40(図1参照)が増加するため、更に、トラス梁24及びトラス梁40の大スパン化が可能となる。また、トラス梁24及びトラス梁40を大スパン化することにより、設備室14の平面スペースを広くすることができる。
【0051】
ここで、図9(A)には、桁行方向に隣接する主架構26の中間部に1つの架構28を設けた場合のモーメント図が模式的に示されており、図9(B)には、桁行方向に隣接する主架構26に等間隔で2つの架構28を設けた場合のモーメント図が模式的に示されている。図9(B)から判るように、2つの架構28を設けた場合は、鉄骨柱32、38の曲げ戻し効果によって、中央の繋ぎ梁44に発生するモーメントが低減される。即ち、桁行方向に隣接する主架構26の間に複数の架構28を設けることにより、繋ぎ梁44の負担を低減することができる。なお、図9(A)及び図9(B)では、矢印で示す鉄骨柱38の鉛直荷重に起因するモーメント図である。
【0052】
更に、上記実施形態は、免震構造の建物にも適用可能である。具体的には、図10に示されるように、建物50は、基礎52と、基礎52の上に構築された上部構造体54と、基礎52と上部構造体54との間に設けられ、上部構造体54を支持する積層ゴム支承からなる免震装置56を備えている。上部構造体54は骨組み構造20を有し、主架構26を構成する鉄骨柱32が免震装置56の上に立てられている。
【0053】
ここで、架構28を構成する鉄骨柱38は、連結梁30から最上階の繋ぎ梁44へ延びており、連結梁30より下の階の設備室14には鉄骨柱38が存在しない。即ち、鉄骨柱38は、基礎Gに達していない。従って、鉄骨柱38が基礎Gに達する場合と比較して、免震装置56で支持する柱本数が減少する。従って、免震装置56の必要数量が減少する。また、基礎構造(杭、地盤改良等)が単純化されるため、施工コストを削減することができる。
【0054】
なお、免震装置56は、積層ゴム支承に限らず、滑り支承、弾性滑り支承、転がり支承等の種々の免震装置を用いることができる。
【0055】
更に、上記実施形態では、建物10の最下階に設備室14を設けたがこれに限らない。例えば、図11に示されるように、建物60の中階に設備室14を設けても良い。建物60は複数階(本変形例では、4階)からなり、最下階(1階)及び上階(3階及び4階)がクリーンルーム16及びメンテナンススペース18とされ、中階(2階)が設備室14とされている。
【0056】
建物60の下階では、桁行方向に隣接する鉄骨柱32の間に鉄骨柱62が設けられている。鉄骨柱32と鉄骨柱62との間には、繋ぎ梁64及び基礎梁66がそれぞれ架設されている。
【0057】
建物60の中階では、桁行方向に隣接する鉄骨柱32の間に、連結梁30が架設されている。連結梁30の中央部には、当該連結梁30から上方へ延びる鉄骨柱38が立設されている。また、鉄骨柱32と鉄骨柱38との間には、上下方向に間隔を空けて複数の繋ぎ梁44が架設され、クリーンルーム16及びメンテナンススペース18が交互に設けられている。
【0058】
一方、鉄骨柱38がない連結梁30の下の階は、設備室14とされている。このように建物60の中階を部分的に柱抜けにして、設備室14を設けることも可能である。なお、図示を省略するが、この設備室14に、鋼板耐震壁や鋼板制振壁、RC(鉄筋コンクリート)耐震壁、耐震ブレース、制振ブレース、各種ダンパ(オイルダンパ、摩擦ダンパ、粘弾性ダンパ等)の耐震部材又は制振部材を設けて、耐震性能、制振性能を補完することも可能である。
【0059】
なお、上記実施形態に係る建物10、50、60では、クリーンルーム16(メンテナンススペース18を含む)を重層化したが、クリーンルーム16は少なくとも1つあれば良く、必ずしも重層化する必要はない。また、上記実施形態では、クリーンルーム16とメンテナンススペース18とを交互に設けたが、クリーンルーム16を連続して設けても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、2つの骨組み構造20を張間方向に連続させたが、骨組み構造20は少なくとも1つあれば良い。更に、骨組み構造20では、桁行方向に3つの主架構26を並べたが、主架構26は桁行方向に少なくとも2つあれば良い。
【0061】
また、鉄骨柱32、鉄骨柱38等には、角形鋼管、丸形鋼管や、H形鋼、C形鋼等を用いることができる。また、鉄骨柱32は、上記に加えて、コンクリート充填鋼管(CFT)、コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造でも良い。同様に、連結梁30及び繋ぎ梁44には、H形鋼、I形鋼、C形鋼等の種々の形鋼を用いることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 建物
24 トラス梁(第1トラス梁)
24A 上弦材
24B 下弦材
24C 束材
24D 斜材
26 主架構(架構)
32 鉄骨柱(第1柱)
36 開口部
38 鉄骨間柱(第2柱)
40 トラス梁(第2トラス梁)
42 鋼材ブレース(耐震部材)
44 繋ぎ梁
50 建物
56 免震装置
60 建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1柱と該第1柱の間に架設された第1トラス梁とを有し、前記第1トラス梁と直交する方向に並べられた複数の架構と、
前記第1トラス梁と直交する方向に隣接する前記1第柱をそれぞれ連結する連結梁と、
前記第1トラス梁と直交する方向に隣接する前記1第柱の間にそれぞれ設けられ、前記連結梁から上方へ延びる第2柱と、
隣接する前記第1トラス梁の間で、前記第2柱の間に架設される第2トラス梁と、
前記第1柱と前記第2柱との間に架設された繋ぎ梁と、
を備え、
前記第1トラス梁及び第2トラス梁が上弦材及び下弦材を有し、
前記上弦材及び前記下弦材の端部同士が束材及び斜材で連結され、前記上弦材及び前記下弦材の中央部には、斜材がない開口部が設けられている建物。
【請求項2】
前記第2柱がない前記連結梁の下の階には、耐震部材又は制振部材が設けられている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1柱が免震装置で支持されている請求項1又は請求項2に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−162982(P2011−162982A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25823(P2010−25823)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】