説明

建築用装飾材の取付金具、建築用装飾材、装飾壁及び装飾壁施工方法

【課題】装飾材の下地材に対する取付面の形状を単純化することができ、その製造コストの低減を図ることができる装飾材の取付金具を提供することである。
【解決手段】取付板12と板ばね13とによって構成された取付金具において、前記取付板12の上端部に取付板12の正面側へ屈曲された板ばね取付片14、下端部に背面側へ屈曲された差込片15、中間部にその取付板12の正面側へ屈曲された係合片17、装飾材本体への取付穴18が設けられ、前記板ばね取付片14に板ばね13が上下方向にばね力を発生するように固定された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の外壁又は内壁に装飾材を取り付けるための取付金具、その取付金具を一体化した建築用装飾材、前記装飾材を用いた装飾壁及び前記装飾壁の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築用の壁面に装飾性を付与するのみならず、耐熱・耐候性等をも付与すべく、レンガタイルやセラミック外壁材等の装飾材を壁面に取り付けることが従来から行われている。この場合、装飾材を取り付ける際の施工の簡便さ、耐熱・耐候性を増大させる等の観点から、上下方向に一定間隔をおいて水平方向の係合凸条を多段状に多数設けた窯業系材料の下地材が用いられる(特許文献1、2)。
【0003】
前記の下地材を用いた場合、装飾材の背面には前記の係合凸条に係合する係合凹部が設けられるとともに、ばね性のあるクリップが取り付けられる。装飾材は、その係合凹部と下地材の係合凸条とを係合させるとともに、その係合部にクリップのばね力を作用させることにより下地材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−67741号公報
【特許文献2】特許第3128706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、従来の装飾材の取付構造は、装飾材の背面に係合凹部を設ける必要があるが、その係合凹部は逆傾斜面(いわゆる、アンダーカット)となるため、装飾材の背面の構造が複雑となり、成形コストが高くつく要因となっていた。
【0006】
また、装飾材は、一定厚さのものを用いることが普通であるため、デザイン的な観点からは凹凸性に乏しく、あえて厚さの異なるものを用いるとすると、厚さの異なる装飾材を別に製作する必要があり、材料コストが高くつく要因となる問題もあった。
【0007】
そこで、この発明は、前記従来の装飾材におけるこれらの問題を解消することを課題とする。この発明においては、装飾材を下地材に取り付けるために取付金具を用いるが、その取付金具を装飾材本体の裏面に固定した組立体を建築用装飾材又は単に装飾材と称する。
【0008】
この表現に従って、前記課題を具体的にいえば、装飾材本体の背面構造を単純な構造にできる取付金具、その取付金具と装飾材本体との組み合わせからなる建築用装飾材、その建築用装飾材を用いた装飾壁、特に、一種類の装飾材本体を2通りの方法で使用することにより、低コストで凹凸性に富んだデザインを創出できる装飾壁面、及び前記装飾壁の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決する建築用装飾材の取付金具に係る発明は、取付板と板ばねとによって構成され、前記取付板の上端部にその取付板の正面側へ屈曲された板ばね取付片、前記取付板の下端部にその取付板の背面側へ屈曲され装飾材本体に差し込まれる差込片、前記取付板の中間部にその取付板の正面側へ屈曲された係合片、前記装飾材本体に対する取付部がそれぞれ設けられ、前記板ばね取付片に前記板ばねが前記取付板の上下方向にばね弾性を発生するように固定され、前記板ばねが下地材の係合凸条の下面に弾性的に押し当てられ、前記係合片が当該係合凸条より下位の係合凸条の上面に係合される構成としたものである。
【0010】
前記の構成に加え、前記係合片の下方にこれと上下方向に対向した係合ばね片が設けられ、前記係合ばね片が前記下地材のいずれかの係合凸条の下面に弾性的に押し当てられた構成が採られる場合がある。
【0011】
また、建築用装飾材に係る発明は、装飾材本体と前記の取付金具との組み合わせからなり、前記装飾材本体の下地材に対向した取付面に当該装飾材本体の長さ方向のスリットが全長にわたり形成され、前記取付金具の差込片が前記スリットに差し込まれ、前記取付部において当該取付金具が前記装飾材本体に固定された構成としたものである。
【0012】
なお、前記装飾材本体は、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定されたものを用いる場合がある。
【0013】
装飾壁に係る発明は、建物に固定された下地材に前記の建築用装飾材を取り付けて構成され、前記下地材の前面に水平方向の係合凸条が上下方向に一定の間隔をもって形成され、前記取付金具の係合片が前記係合凸条の上面に係合され、前記板ばね又は前記板ばねと係合ばね片とが前記係合凸条の下面に弾性的に押し当てられることにより前記係合片の係合部分に押圧力を付与し、その押圧力により前記取付金具を介して前記装飾材が前記下地材に係合固定された構成としたものである。
【0014】
装飾壁面施工方法に係る発明は、前記の建築用装飾材の取付金具を下地材の係合凸条に係合固定させるに際し、先に取付金具の板ばねを所定位置の前記係合凸条の下面に押し当て、その板ばねを圧縮させつつ前記取付金具の係合片を他の係合凸条の上面に係合させ、前記板ばねのばね力をその係合部分に作用させるようにしたものである。板ばねと係合ばね片の双方を設けた取付金具を使用する場合は、これら双方のばね力が作用する。
【0015】
なお、前記のように、装飾材本体が幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定された建築用装飾材を用いる場合の装飾壁施工方法は、前記建築用装飾材を下地材に係合固定させるに際し、予め幅の広い取付面に取付金具を固定したものと、幅の狭い取付面に取付金具を固定したものとを設け、両者を上下方向に交互に配置しつつ下地材に係合固定する方法を採る。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明に係る建築用装飾材の取付金具は、板ばねの他に係合片も備えているので、装飾材本体の取付面は取付金具の位置決め用のスリットを設けるだけの単純な形状となる。このため、装飾材本体の製造コストのみならず、その装飾材本体と取付金具の組み合わせからなる装飾材等のコストも低減することができる。
【0017】
また、前記板ばねの他に係合ばね片を備えたことにより、双方のばね力が係合片の係合部分に作用するので係合力が増し、装飾材に外力が作用しても容易に外れることがない。
【0018】
特に、装飾材本体として、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ取付金具の位置決め用スリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定された構成を採ることにより、一種類の装飾材本体によって、幅の広い面と狭い面が交互に現れ、かつ壁面から前方へ突き出す高さが交互に異なる変化に富んだデザインの装飾壁面を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、実施形態1の取付金具の正面図である。
【図2】は、図1のX1−X1線の断面図である。
【図3】は、図1の背面図である。
【図4】は、図1の正面側の斜視図である。
【図5】は、図1の背面側の斜視図である。
【図6】(a)から(f)は、実施形態2の装飾材本体の諸例を示す断面図である。
【図7】は、同上の装飾材の取付状態の一部を示す断面図である。
【図8】は、同上の他の装飾材の取付状態の一部を示す断面図である。
【図9】は、同上の施工過程の一部を示す断面図である。
【図10】は、同上の装飾材の一部を示す分解斜視図である。
【図11】は、同上の他の装飾材の一部を示す分解斜視図である。
【図12】は、実施形態3の施工方法に係る下地材と取付金具の関係を一部破断断面で示した正面図である。
【図13】は、同上の施工方法に係る装飾壁面の一部を分解して示した斜視断面図である。
【図14】は、実施形態4の取付金具の正面図である。
【図15】は、図14のX2−X2線の断面図である。
【図16】は、実施形態4の取付金具の斜視図である。
【図17】は、同上の変形例の取付金具の正面図である。
【図18】は、図17のX3−X3線の断面図である。
【図19】は、実施形態4及び実施形態5の装飾材及び装飾壁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づき具体的に説明する。
[実施形態1]
実施形態1に係る建築用装飾材の取付金具11は、図1から図5に示したように、鋼、ステンレス鋼等の金属製の取付板12と板ばね13との組み合わせからなる。
【0021】
前記の取付板12は矩形に形成され、その上端部に正面(図8参照、取付金具11の下地材23に対する面)側へ90度に屈曲された一定幅の板ばね取付片14が設けられる。
【0022】
また、下端部には、取付板12の背面側に90度に屈曲された一定幅の差込片15が設けられる。この差込片15は、後述のように、装飾材本体21のスリット22、24(図7、図9参照)に差し込まれ、装飾材本体21に対する取付金具11の位置決めを行うものである。
【0023】
前記の板ばね取付片14と差込片15との間において、左右方向に長い同一サイズの四角形の長穴16が上下2個所に設けられ、各長穴16の下辺を正面側に切り起こし、下方に一定の傾斜角θ(55°程度)をもった係合片17が形成される。切り起こしの容易さを考慮して、係合片17の両端部は長穴16の両端辺より多少内側に寄った位置に定められる。
【0024】
前記上下の係合片17の間隔D1(図2参照)は、後述の係合凸条33の上下方向の間隔(図7参照)に一致するように設定される。また、上段の係合片17の先端と、前記の板ばね取付片14の間の間隔D2は、前記間隔D1より小さく設定される。下段の係合片17の先端と差込片15の間の間隔D3も、前記の間隔D1より小さく設定される。
【0025】
図示を省略しているが、長穴16の上片を切り起こしても同様の傾斜角θをもった係合片17を形成することができる。また、係合片17は、2個所に限らず、1個所でも、3個所でもよく、その数は装飾材本体21の重量やサイズ等に応じ適宜定められる。
【0026】
前記上下の係合片17の間には、左右に並んだ3個所の取付穴18が設けられる。取付穴18は、後述のように、装飾材本体21にこの取付金具11を取付ネジ30や釘によって固定する場合に用いられる(図7参照)。接着により固定される場合もあるが、その場合はこの取付穴18は不要である。取付穴18や接着によって固定される部分を「特許請求の範囲」においては「取付部」と総称している。
等によって
【0027】
前記板ばね13は、前記板ばね取付片14の幅より多少狭い幅をもった帯板を扁平なV字形に屈曲したものであり、中間部の谷部分がリベット19により板ばね取付片14の中間部分にカシメにより固定される。板ばね13は、上下方向のばね性を有する。この板ばね13は、その一端部を板ばね取付片14に固定し、他端部を傾斜状に立ち上がらせた構成、他端部を上方に円弧状に湾曲させた構成等であってもよい。
【0028】
[実施形態2]
次に、実施形態2として、装飾材本体21及びこれと取付金具11とを組み合わせた装飾材27、その装飾材27を用いた装飾壁について図6から図11に基づいて説明する。装飾材本体21は、木材、人工木材、タイル、石材等によって形成されたものであり、その断面形状(縦断側面形状)は、図6の(a)から(f)に例示したように、正方形、長方形、正面が凸形又は凹形等種々である。また、各図において二点鎖線で示したように、これらの装飾材本体21は、軽量化、材料節約等の理由から中空にする場合がある。
【0029】
これらの装飾材本体21は共に高さAが一定であり、下地材23に対向した背面が取付面25となっている。その取付面25の下端から一定高さaの位置に長さ方向のスリット22が一定の幅と深さをもって全長に渡り形成される。スリット22の幅と深さは、前記取付金具11の差込片15を差し込むことができるサイズに形成される。スリット22の高さaは取付面25の下端からスリット22の上端面までをいうものとする。
【0030】
前記の下地材23は、通常は窯業系材料の板状の成形品であり、図7に示したように、前面に水平方向の係合凸条33が上下方向に一定の間隔をおいて多段状に設けられる。本実施形態の場合は、上下に隣接した2段の係合凸条33が1個の取付金具11に対応する関係となっている。
【0031】
前記係合凸条33の断面形状は、図7及び図9に示したように、下面29は水平面であるが、上面31は前記取付金具11の係合片17の傾斜角度θ(図2参照)に合致する逆傾斜面となっている。この下地材23は、釘等によって建物の胴縁20を通して柱に固定される。
【0032】
前記の装飾材本体21の取付面25に前述の取付金具11を沿わせるとともに、差込片15をスリット22に差し込んで位置決めする。取付穴18に取付ネジ30をねじ込む等の手段で取付金具11を装飾材本体21の背面に固定したものが前述の装飾材27である(図7参照)。
【0033】
前記の装飾材27は、後述のように、板ばね13を対応する上下2段の係合凸条33の1段上、即ち3段目の係合凸条33の下面29に押し当てることにより弾性的に圧縮させ、上下の係合片17を対応する上下2段の係合凸条33の上面31に係合させる。各係合片17が板ばね13のばね力によって逆傾斜した上面31に押し当てられ、係合固定される。
【0034】
下地材23の係合凸条33の間隔及び取付金具11のサイズが一定である場合において、装飾材本体21の高さAは、図7に示したように、3段の係合凸条33の下面間の間隔Pと、装飾材本体21相互間のスキマcによって定まる大きさ、即ち、A=P−cに設定される。
【0035】
図6の(a)図に示したような断面形状が長方形の場合において、縦横の寸法に一定の関係がある装飾材本体21の場合は、以下に述べるように、一種類の装飾材本体21を2つの態様に使い分けることができる。
【0036】
即ち、図9に示したように、装飾材本体21の特定のコーナ部Cを挟んで、高さがXである幅の狭い取付面25a、長辺の長さがY(Y>X)である幅の広い取付面25bが形成される。装飾材本体21は、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有する。
【0037】
幅の狭い取付面25aの場合は、下端からの寸法aの位置にスリット22が設けられる。幅の広い取付面25bにおいては、その下端から寸法bの位置にスリット24が設けられ、Y=X+bの関係があるように設定される。
【0038】
装飾材本体21は一種類であるが、幅の狭い取付面25aに取付金具11を固定した装飾材28a(図9、図10参照)、幅の広い取付面25bに取付金具11を固定した装飾材28b(図9、図11参照)を予め製作しておき、両者が上下方向に交互の配置となるよう下地材23に係合固定する。
【0039】
この場合、各装飾材28a、28b間のスキマcが一定であるとし、前記寸法b及びBを以下の(2)(3)式のように定めることにより、装飾材28aと28bの下地材23に対する係合固定構造は、上下2段の装飾材28a、28bごとに同じパターンとなり、そのパターンが下地材23の上端まで繰り返される。
【0040】
図8に示したように、最下段の装飾材28aと2段目の装飾材28bに着目すると、次の関係が成り立つ。
2(X+c)+b+a=2P+a ……(1)
ゆえに、 b=2(P−X−c) ……(2)
Y=2(P−c)−X ……(3)
【0041】
即ち、P、X及びcの数値に基づき、装飾材28bのb及びYの寸法を(2)(3)式のように設定することにより、2段の装飾材28a、28bごと、即ち、4段の係合凸条33ごとに、装飾材28aと28bの位置関係が繰り返される。これにより、装飾壁を正面から見た場合に、一種類の装飾材本体21によって上下方向の幅が交互に異なり、また壁面からの高さが交互に異なった変化に富んだデザインの装飾壁を得ることができる。
【0042】
なお、前記の幅の狭い取付面25aと幅の広い取付面25bは、上述のようにコーナ部Cを挟んで直交する平面であることが必要であるが、他の2面は任意の形状とすることが可能であるので、そのような形状を採ることにより装飾壁のデザイン性を一層増すことができる。
【0043】
[実施形態3]
前記の下地材23に装飾材27、28a、28bを係合固定して装飾壁を構成する施工方法を実施形態3として、図12、図13に基づいて説明する。
【0044】
この場合の施工方法は、板ばね13を対応する上下2段の係合凸条33の1段上、即ち3段目の係合凸条33の下面29(図12参照)に押し当てることにより弾性的に圧縮させ(図12の鎖線から実線の状態への変化参照)、上下の係合片17を対応する上下2段の係合凸条33の上面31に係合させる。各係合片17が板ばね13のばね力によって逆傾斜した上面31に押し当てられる。これにより装飾材27、28a、28bが外れたり、横方向にずれたりすることが防止され、装飾材27を下地材23に安定よく係合固定することができる。
【0045】
装飾材28a、28bを用いる場合は、両者を交互に下地材23に係合固定すると、図13に示したように、装飾材28aと28bが上下方向に交互に配置され、表面に現れる装飾材28a、28bの幅が交互に異なり、また壁面側からの高さも交互に異なった立体的なデザインをもった装飾壁面が完成する。
【0046】
[実施形態4]
次に、図14から図18に基づいて、実施形態4に係る取付金具11について説明する。この場合の取付金具11の基本的な構成は前述の実施形態1に係るものと同じである。即ち、取付板12の上端部に正面側へ屈曲された板ばね取付片14、下端部に背面側へ屈曲された差込片15、取付板12の中間部の上下2個所に正面側へ切り起こしによって形成された係合片17等を備える。また、取付板12の中間部分に装飾材本体21への取付穴18が設けられ、前記板ばね取付片14に扁平V字形に屈曲された板ばね13の中間部がリベット19によって固定される。
【0047】
以上の実施形態1の構成に加え、この実施形態4の場合は、取付板12の正面において、前記の下段の係合片17と、取付板12の下端の間に、当該係合片17と上下方向に対向した係合ばね片35を取り付けている。係合ばね片35は弾性ある金属板によって形成され、固定部35aと、その下端を正面側にL形に屈曲して形成され凹凸の波形を付与された弾性部35bとからなる。前記金属板の幅は、取付板12の幅の0.1〜0.2程度のものであり、その取付板12の下端中央部に、固定部35aがバーリング加工によって固定される。その加工部分をバーリング加工部36として示す。
【0048】
弾性部35bは、円弧を連ねた凹凸波形に屈曲され(図17参照)、弾性部35bの凸部が下地材23の係合凸条33の下面29に弾性的に押し当てられる。
【0049】
実施形態1には見られないその他の構成として、この実施形態4においては、取付板12の左右両側部にそれぞれ上下方向の2本の縦リブ37と、上段の長穴16と板ばね取付片14との間に1本の横リブ38が、それぞれ背面側から正面側に打ち出すことにより形成されている。これらの縦リブ37及び横リブ38によって取付板12が縦方向及び横方向に補強されている。
【0050】
また、前記板ばね取付片14の中央部において、リベット19を挟んでその左右両側にそれぞれ切り起こしにより2個所の規制片39が設けられる。この2個所の規制片39は板ばね13の根元部分の側面に接触することにより、板ばね13がリベット19を中心に回転することを規制し、その姿勢を安定させる機能をもつ。
【0051】
なお、前記の係合ばね片35は、図17及び図18に示したように、取付板12の左右両側において、それぞれ2本の縦リブ37の間に、バーリング加工部36によって取り付けるようにしてもよい。この場合、弾性部35bは、上部の係合片17が係合される係合凸条33と同じ係合凸条33の下面29に押し当てられる位置に設けられる。このような位置に係合ばね片35を設けることにより、他の取付金具11の板ばね13との干渉のおそれが解消される。
【0052】
[実施形態5]
次に、実施形態5として、図19に基づき前記実施形態4に係る取付金具11を使用した装飾材27及び装飾壁について説明する。この場合の装飾材27も、前記の実施形態2(図6から図11)の場合と同様に、装飾材本体21の背面の取付面25において取付板12の差込片15がスリット22に差し込まれ、取付ネジ30によって取付板12が装飾材本体21に固定される点、板ばね13が、当該取付板12が対応する上下2段の係合凸条33の一段上の係合凸条33の下面に弾性的に押し当てられる点等の構成は実施形態3の場合と同様である。
【0053】
相違する点は、係合ばね片35が対応する上下2個所の係合凸条33のうちの下段の係合凸条33の下面29に弾性的に押し当てられる点である。これによって、上下2個所の係合片17に付与される板ばね13の弾性に加えて係合ばね片35の弾性も合わせて付与されるので、装飾材27が下地材23から外れたり、ガタついたりすることが防止され安定性が増す。
なお、図19に示したように、係合凸条33の下面29を傾斜角δの逆傾斜面に形成しておくことにより、板ばね13及び係合板ばね片35の係合力を一層増すことができる。
【0054】
前記ようにして装飾材27を下地材23に順に取り付けて構成された装飾壁においては、下段の装飾材27の取付金具11の板ばね13と、その上段の装飾材27の取付金具11の係合ばね片35が、同じ係合凸条33の下面29に押し当てられる(図19参照)。このため、板ばね13と係合ばね片35が干渉することがあり得る。しかし、前記のように、実施形態4の取付金具11においては、係合ばね片35の幅が比較的狭く形成されているので、この係合ばね片35を扁平なV字形に広がった板ばね13の中間部分(リベット19の上方)に臨ませることにより前記の干渉を避けることができる。
【0055】
なお、装飾材本体21として、断面長方形のものを用い、その向きを交互に90度異ならせて上下に配置することにより変化に富んだ装飾壁が構成できる点は実施形態2(図6から図11参照)、その装飾壁の施工法は、実施形態3(図12、図13参照)の場合と同様である。
【符号の説明】
【0056】
11 取付金具
12 取付板
13 板ばね
14 板ばね取付片
15 差込片
16 長穴
17 係合片
18 取付穴
19 リベット
20 胴縁
21 装飾材本体
22 スリット
23 下地材
24 スリット
25 取付面
25a 幅の狭い取付面
25b 幅の広い取付面
27 装飾材
28a、28b 装飾材
29 下面
30 取付ネジ
31 上面
32 取付面
33 係合凸条
35 係合ばね片
35a 固定部
35b 弾性部
36 バーリング加工部
37 縦リブ
38 横リブ
39 規制片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板と板ばねとによって構成され、前記取付板の上端部にその取付板の正面側へ屈曲された板ばね取付片、前記取付板の下端部にその取付板の背面側へ屈曲された差込片、前記取付板の中間部にその取付板の正面側へ屈曲された係合片、前記装飾材本体に対する取付部がそれぞれ設けられ、前記板ばね取付片に前記板ばねが前記取付板の上下方向にばね弾性を発生するように固定され、前記板ばねが下地材の係合凸条下面に弾性的に押し当てられ、前記係合片が当該係合凸条より下位の係合凸条の上面に係合される建築用装飾材の取付金具。
【請求項2】
前記係合片が、前記下地材の上下2個所の係合凸条の間隔に合わせて上下2個所において前記取付板の一部を切り起こし、下端側へ傾斜する傾斜角度をもって形成された請求項1に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項3】
前記板ばねが、前記板ばね取付片の長さ方向に長く、その一部が前記板ばね取付片に固定され、少なくともその一端部が当該板ばね取付片から次第に離れる方向に立ち上がった請求項1又は2に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項4】
前記係合片の下方にこれと上下方向に対向した係合ばね片が設けられ、前記係合ばね片が前記下地材のいずれかの係合凸条の下面に弾性的に押し当てられた請求項1から3のいずれかに記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項5】
前記係合ばね片が、前記取付板の正面下端部の中央部分に取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項6】
前記係合ばね片が、弾性金属板をL字形に屈曲して形成され、その垂直部が前記取付板にバーリング加工により固定され、前記垂直部の下端に正面側に屈曲して形成された弾性部が波形に屈曲された請求項4又は5に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項7】
装飾材本体と、請求項1から3のいずれかに記載の取付金具との組み合わせからなり、前記装飾材本体の下地材に対向した取付面に当該装飾材本体の長さ方向のスリットが全長にわたり形成され、前記取付金具の差込片が前記スリットに差し込まれ、前記取付部において当該取付金具が前記装飾材本体に固定された建築用装飾材。
【請求項8】
装飾材本体と、請求項4から6のいずれかに記載の取付金具との組み合わせからなり、前記装飾材本体の下地材に対向した取付面に当該装飾材本体の長さ方向のスリットが全長にわたり形成され、前記取付金具の差込片を前記スリットに差し込み、前記取付部において当該取付金具を前記装飾材本体に固定した建築用装飾材。
【請求項9】
前記装飾材本体は、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定された請求項7又は8に記載の建築用装飾材。
【請求項10】
建物に固定された下地材に請求項7又は9に記載された建築用装飾材を取り付けて構成され、前記下地材の前面に水平方向の係合凸条が上下方向に一定の間隔をもって形成され、前記取付金具の係合片が前記係合凸条の上面に係合され、前記板ばねが前記係合凸条の下面に弾性的に押し当てられることにより前記係合片の係合部分に押圧力を付与し、その押圧力により前記取付金具を介して前記装飾材が前記下地材に係合固定された装飾壁。
【請求項11】
建物に固定された下地材に請求項8又は9に記載された建築用装飾材を取り付けて構成され、前記下地材の前面に水平方向の係合凸条が上下方向に一定の間隔をもって形成され、前記取付金具の係合片が前記係合凸条の上面に係合され、前記板ばねと係合ばね片とがそれぞれ前記係合凸条の下面に弾性的に押し当てられることにより前記係合片の係合部分に押圧力を付与し、その押圧力により前記取付金具を介して前記装飾材が前記下地材に係合固定された装飾壁。
【請求項12】
前記係合凸条の下面が逆傾斜面に形成された請求項11に記載の装飾壁。
【請求項13】
前記下地材に上下に隣接して係合固定される前記建築用装飾材が、幅の広い取付面で前記下地材に係合固定されるものと、幅の狭い取付面で前記下地材に係合固定されるものが交互に配置された請求項10から12のいずれかに記載の装飾壁。
【請求項14】
請求項7又は9に記載の建築用装飾材の取付金具を下地材の係合凸条に係合固定させるに際し、先に取付金具の板ばねを所定位置の前記係合凸条の下面に押し当て、その板ばねを圧縮させつつ前記取付金具の係合片を他の係合凸条の上面に係合させ、前記板ばねのばね力をその係合部分に作用させる装飾壁面施工方法。
【請求項15】
請求項8又は9に記載の建築用装飾材の取付金具を下地材の係合凸条に係合固定させるに際し、先に取付金具の板ばねを所定位置の前記係合凸条の下面に押し当て、その板ばねを圧縮させつつ前記取付金具の係合片を他の係合凸条の上面に係合させ、これと同時に前記係合ばねを対応する係合片の下面に押し当て、前記板ばねと係合ばね片の双方のばね力を前記係合片の係合部分に作用させる装飾壁面施工方法。
【請求項16】
請求項9に記載の建築用装飾材を下地材に係合固定するに際し、予め幅の広い取付面に取付金具を固定したものと、幅の狭い取付面に取付金具を固定したものとを設け、両者を上下方向に交互に配置しつつ下地材に係合固定する装飾壁面施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−153511(P2011−153511A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139669(P2010−139669)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(390036722)神島化学工業株式会社 (54)
【Fターム(参考)】