説明

建設機械におけるキャブのフロント窓構造

【課題】油圧ショベル等の建設機械のキャブ1に設けられたフロント窓2を開放するためにキャブ天井部1cに収納する際、フロント窓2が前後方向に長いため、天窓7とフロント窓2とがオーバーラップし、天窓7からの視認性が損なわれることを防ぐ。
【解決手段】フロント窓2を、縦方向の長さが略同一であるフロント上下側窓3、4に分割したものとして設けることで、キャブ開口部1bを開放したときに、フロント上側窓3は天窓7よりも後方のキャブ天井部1cに収納されることになって、天窓7と収納位置のフロント上側窓3とがオーバーラップすることが回避されるため、天窓7からの視認性が損なわれることはなく、また、天窓7の開閉操作も容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械におけるキャブのフロント窓構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械のキャブには、オペレータの視界を確保し、作業しやすくするために、キャブの前面及び後面、左右両面、乗降用ドア、キャブ天井部など複数の窓が設けられている。
さらに、オペレータの視認性を高め、作業をより容易にするために、キャブの前面に設けられているフロント窓をフロント上側窓とフロント下側窓とに分け、該フロント上側窓を窓枠に設けられたスライドレールを介してキャブ天井部にスライドして収納させるようにし、これによってフロント上側窓を開放し、ここから顔を出して機体の直下を覗けるようにしたものがある。
ところで従来、フロント上側窓はフロント下側窓よりも縦方向に長いものであったため、該フロント上側窓をスライドして天井部に収納させると、天窓とオーバーラップする(積層状態になる)ことになって天窓の開閉が困難になったり、天窓から上方向を見る際にフロント上側窓の下端フレームによって死角が生じたり、二重の窓を通すため視認性が悪くなるなどの問題があった。
【0003】
この改善策として、フロント上側窓をキャブ後面位置までスライド移動させて収納するようにしてフロント上側窓を開放したときでも天窓の開閉を可能にすると共に天窓からの視認性を損なわないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、キャブ天井面を後方に突出させてフロント上側窓を天窓より後方に収納できるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平1−173015号公報
【特許文献2】特開2003−312249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1のものは、フロント上側窓をキャブ後面位置に移動させ、また移動させたものを元位置に戻す場合、オペレータは運転席から立ち上がっての作業が強いられるだけでなく、キャブ後方にフロント上側窓を収納させている状態では、キャブ後面窓とフロント上側窓とが重なることになって後方の視認性が損なわれるという問題もある。さらには、キャブ後面部位には、一般にランチボックスやエアコンの吹き出し口が配設されることが多いため、フロント上側窓の収納スペースを確保することが難しいという問題がある。
また前記特許文献2のものは、キャブ天井面を後方に突出しなければならないため、キャブが特殊仕様になって汎用性が図れないだけでなく、キャブが大型化してしまうといった問題があり、これらに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、キャブの左右前支柱間にはフロント窓用の開口部が形成され、キャブ天井部の前半部に天窓が形成され、キャブ天井部にフロント窓を収納できるように構成してなる建設機械において、前記フロント窓を、キャブ天井部の天窓後端位置からフロント窓収納後端位置までの長さ以下の長さに設定した少なくとも上下二枚の窓に分割すると共に、下側窓は、上側窓に対して開口部閉鎖位置から重合する重合位置に移動可能に設定され、上側窓は、単独もしくは重合した下側窓と共にキャブ天井部の天窓位置より後方に収納されるように構成したことを特徴とする建設機械におけるキャブのフロント窓構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、オペレータがフロント窓を開放させたとき、フロント上側窓は天窓よりも後方のキャブ天井部に収納されるため、窓とフロント上側窓のオーバーラップが回避され、よって、天窓からの視認性は損なわれず、また、天窓の開閉操作を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、10は建設車両の一例である油圧ショベルの下部走行体、11は該下部走行体10に旋回自在に設けられた上部旋回体であって、下部走行体10は、走行フレーム12と、該走行フレーム12の前後に設けられる駆動輪13、アイドラー輪14、走行フレーム12の下側に設けられる遊動輪15、これら輪体に懸回したクローラ16等の各種の部材装置を用いて構成され、また上部旋回体11は、運転室を囲繞形成するキャブ1、バケット17aが取付けられたフロントアタッチメント17、エンジン等が内装されるボンネット18等の部材装置を用いて構成されていること等は何れも従来通りである。
【0008】
さらに、該キャブ1の左右前支柱1a間にはフロント窓2用の開口部1bが開設されている。またフロント窓2は、フロント上側窓3とフロント下側窓4とに分割して構成されているが、該フロント上側窓3とフロント下側窓4とは縦方向(上下方向)の長さが略同一に設定されている。さらに、フロント上側窓3は、ガラス板、アクリル板等の透明な上窓板3aの左右両縁部を、左右縦窓枠3bの前面にシールラバー3cを介して貼着することにより構成されているが、左右縦窓枠3bの上下端部にはガイドローラ5が左右方向外方に向けて突設されている。加えて、前記左右縦窓枠3bには、該フロント上側窓3を開閉移動させる際にオペレータが把持するためのハンドル3dが左右それぞれに設けられている。そして、該ガイドローラ5がキャブ1の左右前支柱1aの左右方向内側面から天井部1cに亘って敷設された側面視したときに略逆L字形状をしたガイドレール6に移動自在にガイドされるようになっており、而してフロント上側窓3は、前記開口部1bの上半部を閉じる閉鎖位置と、キャブ1の天井部1cの前半部に形成した天窓7を越えた後方位置に収納されて前記開口部1bの上半部を開く開放位置(収納位置)とに移動できるように構成されている。
【0009】
一方、フロント下側窓4は、フロント上側窓3と同様、透明な下窓板4aを用いて構成するものであるが、該フロント下側窓4は、上窓板3aに対して前後方向内側に配されると共に、フロント窓用開口部1bの下半部を閉鎖している閉鎖位置では、左右前支柱1aの左右方向内側面に突出するようにして設けた下窓用ガイド1dに上下方向移動自在に設けられるが、該下窓用ガイド1dの上端は、閉鎖位置に位置するフロント上側窓3の左右縦窓枠3bの下端と当接するように設定されている。そして前記縦窓枠3bには、前記下窓用ガイド1dに続く(連続する)状態で下窓用延長ガイド3eが形成されており、これによってフロント下側窓4は、前記開口部1bの下半部を閉鎖する閉鎖位置から、下窓用ガイド1d、下窓用延長ガイド3eに案内されて上動してフロント上側窓3と前後方向に重合(積層)する収納位置に移動できるようになっている。加えて、該下窓板4aは、下窓用ガイド1dおよび下窓用延長ガイド3eで覆われていない左右端部にハンドル4bを設け、該ハンドル4bをオペレータが把持して上下方向に移動できるように構成されている。
【0010】
そしてフロント窓2は、フロント上下側窓3、4によって全体を閉鎖した状態から、フロント下側窓4は該開口部1bの下半部を閉鎖したままフロント上側窓3のみを閉鎖位置から収納位置に移動させて前記開口部1bの上半部を開放した状態と、フロント下側窓4を前記フロント上側窓3に重合させた重合状態にしてフロント上側窓3を閉鎖位置から収納位置に移動させて窓全体(開口部1b全体)を開放した状態とにできるようになっている。因みに、フロント下側窓4は、図示しない係止手段によってフロント上側窓3に重合させた収納姿勢でフロント上側窓3に係脱自在に係止保持できるようになっている。
【0011】
叙述の如く構成された本形態において、フロント上下側窓3、4は長さが略同一になっている結果、フロント上側窓3は、従来のものよりも短いものになっており、このため、オペレータがフロント上側窓3をキャブ天井部1cに収納させてキャブ開口部1bの上半部を開放させたとき、キャブ天井部1cを後方に延長しないでも、フロント上側窓3は天窓7よりも後方のキャブ天井部1cに収納されることになって、天窓7と収納位置のフロント上側窓3とがオーバーラップすることが回避されるため、天窓7からの視認性が損なわれることはなく、また、天窓7の開閉操作がフロント上側窓3によって邪魔されることがなく容易である。
【0012】
さらに、オペレータは、フロント下側窓4をフロント上側窓3に重合させた状態にしてフロント上側窓3をフロント下側窓4と共に収納位置に移動させると、開口部1全体を開放させることができ、この場合においても、天窓7にフロント下側窓4とフロント上側窓3とがオーバーラップすることがなく、この結果、天窓7からの視認性は損なわれないうえ、天窓7の開閉もフロント下側窓4とフロント上側窓3とに邪魔されることなく容易である。また、フロント下側窓4は、フロント上側窓3に積層されているため、フロント下側窓4の収納スペースを新たに設ける必要がなく、キャブの大型化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】キャブのフロント窓を全閉にした状態を示す概略側面図
【図3】キャブのフロント窓を全開にした状態を示す概略側面図
【図4】(A)はフロント上側窓の全閉状態を示す要部の部分断面平面図、(B)はフロント下側窓の全閉状態を示す要部の部分断面平面図である。
【図5】フロント窓の要部の概略部分断面斜視図である。
【符号の説明】
【0014】
1 キャブ
1a 左右前支柱
1b 開口部
1c 天井部
1d 下窓用ガイド
2 フロント窓
3 フロント上側窓
3a 上窓板
3b 縦窓枠
3c シールラバー
3d ハンドル
3e 下窓用延長ガイド
4 フロント下側窓
4a 下窓板
4b ハンドル
5 ガイドローラ
6 ガイドレール
7 天窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの左右前支柱間にはフロント窓用の開口部が形成され、キャブ天井部の前半部に天窓が形成され、キャブ天井部にフロント窓を収納できるように構成してなる建設機械において、
前記フロント窓を、キャブ天井部の天窓後端位置からフロント窓収納後端位置までの長さ以下の長さに設定した少なくとも上下二枚の窓に分割すると共に、下側窓は、上側窓に対して開口部閉鎖位置から重合する重合位置に移動可能に設定され、上側窓は、単独もしくは重合した下側窓と共にキャブ天井部の天窓位置より後方に収納されるように構成したことを特徴とする建設機械におけるキャブのフロント窓構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−88629(P2008−88629A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266949(P2006−266949)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】