説明

建設機械のトラックフレーム

【課題】 脚部の上面に泥土等が堆積するのを抑え、かつ脚部とセンタフレームとの接合強度を高める。
【解決手段】 底板13に左前脚部下板13Bを一体形成し、上板19には左前傾斜板部19Bを設け、この左前傾斜板部19Bと左前脚部下板13Bに立設された一対の左前脚部側板15とに左前脚部上板21を固着する。これにより、左前脚部下板13B、左前脚部側板15、左前脚部上板21等によって囲まれた強固なボックス構造の左前脚部25を形成することができ、センタフレーム12に対する左前脚部25の接合強度を高めることができる。また、左前脚部上板21は、稜線部21Bを頂部として前,後方向に傾斜する山形状の傾斜面21Aを有しているので、この傾斜面21Aに沿って泥土等を前,後方向に落下させることにより、左前脚部25や左サイドフレーム29に泥土等が堆積するのを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の下部走行体に好適に用いられる建設機械のトラックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能なクローラ式の下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、油圧ショベルは、クローラ(履帯)式の下部走行体によって山岳地、泥濘地等の不整地を安定して走行できるようになっている。
【0003】
ここで、この種の従来技術によるクローラ式の下部走行体は、上部旋回体が取付けられるセンタフレームと、該センタフレームの左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右のサイドフレームと、前記センタフレームと前記各サイドフレームとの間を連結する前,後の脚部とからなるトラックフレームを備えている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3247256号公報
【0005】
この特許文献1の従来技術によるトラックフレームは、センタフレームを構成する下板と上板とを上方からみて略X型に形成し、このセンタフレームの下板と上板のうち左,右のサイドフレームに向けて延びる部分を脚部下板及び脚部上板として利用し、この脚部下板と脚部上板との間に前側板と後側板とを設けることにより、脚部下板、脚部上板、前側板、後側板によってボックス構造をなす4本の脚部が構成されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のトラックフレームは、センタフレームの上板に脚部上板を一体形成しており、この脚部上板は、センタフレームからサイドフレームに向けて左,右方向に僅かに下向き傾斜しているものの、前,後方向には殆ど傾斜していない。このため、油圧ショベルが泥濘地等を走行するときに跳ね上げられた泥土が、各脚部の脚部上板に堆積し易くなり、この脚部上板からサイドフレームの上面に亘って泥土が堆積した場合には、クローラの円滑な周回動作が妨げられるという問題がある。
【0007】
これに対し、センタフレーム、サイドフレームとは別部材からなる複数の筒状の脚部を形成し、これら各脚部を介してセンタフレームとサイドフレームとの間を連結する構成となったトラックフレームが提案されている(例えば、特許文献2,3)。
【0008】
【特許文献2】実開昭62−59577号公報
【特許文献3】特開2004−345422号公報
【0009】
この特許文献2,3の従来技術によるトラックフレームは、センタフレームとサイドフレームとの間を連結する各脚部の上面が、前,後方向に対して傾斜した傾斜面となっているため、泥濘地等を走行するときに跳ね上げられた泥土が脚部の傾斜面に沿って落下し易くなり、各脚部やサイドフレームに泥土が堆積してしまうのを抑えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した特許文献2,3によるトラックフレームは、センタフレーム及びサイドフレームとは別部材からなる筒状の脚部を形成し、センタフレームの中央部に設けられた筒体に脚部の一端側を突合わせ溶接すると共に、サイドフレームの側面に脚部の他端側を突合わせ溶接する構成となっている。
【0011】
これにより、センタフレームの筒体と脚部との接合部には、油圧ショベルの作動時等において大きな荷重が作用するようになり、センタフレームの筒体には、脚部を介して面外荷重が作用するようになる。
【0012】
このため、センタフレームの筒体と脚部との接合部に応力が集中するのを抑えるため、当該接合部に形成される溶接ビード部の溶接脚長を大きくしたり、溶接ビード部をグラインダ等を用いて滑らかなビード形状に成形するといった煩雑な作業が必要となり、トラックフレームを製造するときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0013】
また、センタフレームの筒体の剛性を高めるため、筒体の板厚を大きくしたり、筒体と脚部との間に補強板を設けた場合には、トラックフレームの製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、脚部の上面に泥土等が堆積するのを抑えることができ、かつ脚部とセンタフレームとの接合強度を高めることができるようにした建設機械のトラックフレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため本発明は、センタフレームと、該センタフレームの左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右のサイドフレームと、前記センタフレームと前記各サイドフレームとの間を連結する前,後の脚部とからなる建設機械のトラックフレームに適用される。
【0016】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記センタフレームは、下中央板部と該下中央板部から延びて前記各脚部の下面を構成する複数の脚部下板とからなる底板と、該底板の中央板部から上方に突出して設けられた中空な筒体と、前記底板の各脚部下板にそれぞれ前,後方向に対をなして立設され基端側が前記筒体に固着された一対の脚部側板と、前記筒体の上端側に固着された上中央板部と前記底板の各脚部下板に対応する部位にそれぞれ下向きに傾斜して設けられた傾斜板部とからなる上板と、山形状に傾斜した傾斜面を有し該傾斜板部と前記一対の脚部側板とにそれぞれ固着して設けられた脚部上板とにより構成したことにある。
【0017】
請求項2の発明は、前記上板は、前記上中央板部と前記傾斜板部とを単一の板材に一体形成する構成としたことにある。
【0018】
請求項3の発明は、前記上板は、前記上中央板部と前記傾斜板部とを互いに別部材により形成して一体に接合する構成としたことにある。
【0019】
請求項4の発明は、前記脚部上板は、前記山形状に傾斜した傾斜面の頂部となる稜線部を有し、該稜線部は前記センタフレームから前記サイドフレームへと延びる前記脚部の伸長方向と平行に配置する構成としたことにある。
【0020】
請求項5の発明は、前記サイドフレームの一端側には前記センタフレーム側に突出する接続フランジを設け、該接続フランジには走行モータを取付けるモータブラケットを設ける構成とし、前記脚部上板の先端側は、前記稜線部を前記サイドフレームと前記接続フランジとの交点に突合わせた状態で、前記サイドフレームと前記接続フランジとに接合する構成としたことにある。
【0021】
請求項6の発明は、前記脚部上板は、その稜線部が前記上板の上中央板部と傾斜板部との境界線と直交する状態で前記傾斜板部に接合する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、底板の脚部下板に対応して上板に設けられた傾斜板部と、底板の脚部下板に立設された一対の脚部側板とに、脚部上板を固着することにより、これら脚部下板、脚部側板、脚部上板によって囲まれた脚部を形成することができる。この場合、脚部上板は山形状に傾斜した傾斜面を有しているので、この傾斜面に沿って泥土を落下させることにより、脚部に泥土等が堆積するのを抑えることができる。
【0023】
しかも、脚部下板は底板に一体に設けられ、脚部側板の基端側は底板に設けられた筒体に固着され、脚部上板は上板の傾斜板部と脚部側板とに固着されている。従って、例えばセンタフレームとは別部材からなる脚部をセンタフレームの筒体に突合わせて溶接することにより、センタフレームと脚部との接合部分に荷重が集中する場合に比較して、脚部下板、脚部側板、脚部上板等の脚部の構成要素全体で荷重を支えることができる。この結果、センタフレームに対する脚部の接合強度を高めることができ、補強材等を不要にすることができる。また、別部材からなる脚部とセンタフレームの筒体との間に形成された溶接ビード部をグラインダ等を用いて成形する作業を不要にできるので、トラックフレームを製造するときの作業性を高めることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、単一の板材を用いて上板の上中央板部と傾斜板部とを一体形成することができるので、上中央板部と傾斜板部とからなる上板を形成するときの作業性を高めることができ、かつ製造コストの低減にも寄与することができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、上板のうち底板の各脚部下板に対応する部位に、上板とは別部材からなる傾斜板部を固着することにより、上中央板部と傾斜板部とからなる上板を形成することができるので、この傾斜板部の形状の自由度を高めることができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、山形状の傾斜面をもった脚部上板の稜線部を、センタフレームからサイドフレームへと延びる脚部の伸長方向と平行に配置することにより、センタフレームからサイドフレームへの荷重の伝達を各脚部を通じて円滑に行なうことができ、トラックフレーム全体の剛性を高めることができる。また、脚部上に落下した泥土等を、脚部上板の山形状の傾斜面に沿って前,後方向に落下させることにより、サイドフレームに泥土等が堆積するのを抑えることができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、脚部上板の先端側をサイドフレームと接続フランジとに接合する場合に、脚部上板の稜線部をサイドフレームと接続フランジとの交点に突合わせることにより、脚部の先端側を大きな面積をもってサイドフレームと接続フランジとに接合することができ、脚部とサイドフレームとの接合強度を高めることができる。また、脚部上板の稜線部をサイドフレームと接続フランジとの交点に突合わせることにより、接続フランジに設けられるモータブラケットの近傍に泥土等が堆積するのを防止することができ、モータブラケットに取付けられる走行モータを泥土等から保護することができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、脚部上板の稜線部を、上板の上中央板部と傾斜板部との境界線と直交させることにより、山形状の傾斜面を有する脚部上板と上板の傾斜板部との接合部の形状を簡素化することができる。これにより、脚部上板と上板の傾斜板部とを溶接によって接合する場合に、両者を隙間なく突合わせた状態で溶接することができ、この溶接作業の作業性、信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る建設機械のトラックフレームの実施の形態を、油圧ショベルの下部走行体に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図13を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
まず、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械の代表例である油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前部側に俯仰動可能に設けられ、泥土等の掘削作業を行う作業装置5とにより大略構成されている。
【0031】
ここで、下部走行体2は、後述のトラックフレーム11と、後述する左,右のサイドフレーム29,33に設けられた駆動輪6及び遊動輪7と、これら駆動輪6と遊動輪7とに巻装された履帯8とにより大略構成されている。そして、下部走行体2は、駆動輪6によって履帯8を周回駆動することにより山岳地、泥濘地等の不整地を安定して走行するものである。また、トラックフレーム11の前部側には、泥土等の排土作業、地均し作業等を行う排土板9が上,下方向に回動可能に設けられている。
【0032】
11は下部走行体2のベースとなるトラックフレームで、該トラックフレーム11は、図2、図3及び図6等に示すように、後述のセンタフレーム12、左前脚部25、左後脚部26、右前脚部27、右後脚部28、左サイドフレーム29、右サイドフレーム33等により構成されている。
【0033】
12はセンタフレームで、該センタフレーム12はトラックフレーム11の中央部分を構成するものである。そして、センタフレーム12は、図7ないし図10等に示すように、後述の底板13と、円筒体14と、各脚部側板15,16,17,18と、上板19と、各脚部上板21,22,23,24とにより大略構成されている。
【0034】
13はセンタフレーム12の底板で、該底板13は、図8及び図9に示すように、例えば厚肉な単一の鋼板材により全体として略X型に形成されている。ここで、底板13は、左,右方向の中央部に位置する水平な下中央板部13Aと、下中央板部13Aの左前端側から斜め下向きに傾斜しつつ左側方へと延びた左前脚部下板13Bと、下中央板部13Aの左後端側から斜め下向きに傾斜しつつ左斜め後方へと延びた左後脚部下板13Cと、下中央板部13Aの右前端側から斜め下向きに傾斜しつつ右側方へと延びた右前脚部下板13Dと、下中央板部13Aの右後端側から斜め下向きに傾斜しつつ右斜め後方へと延びた右後脚部下板13Eとにより大略構成され、これら下中央板部13Aと各脚部下板13B,13C,13D,13Eとは一体形成されている。
【0035】
そして、底板13の左前脚部下板13Bと左後脚部下板13Cとは、前,後方向に間隔をもって配置され、左前脚部下板13Bは後述する左前脚部25の下面を構成し、左後脚部下板13Cは後述する左後脚部26の下面を構成するものである。また、底板13の右前脚部下板13Dと右後脚部下板13Eとは、前,後方向に間隔をもって配置され、右前脚部下板13Dは後述する右前脚部27の下面を構成し、右後脚部下板13Eは後述する右後脚部28の下面を構成するものである。さらに、下中央板部13Aの中心部には、組立作業や点検作業を行うための中心孔13Fが形成されている。
【0036】
14は底板13の上面側に設けられた中空な筒体としての円筒体で、該円筒体14は、底板13と後述の上板19との間を連結すると共に、後述する各脚部側板15,16,17,18の基端側が固着されるものである。ここで、円筒体14は、図8及び図9に示すように、底板13の中心孔13Fよりも大きな外径寸法を有する円筒状をなし、その下端部が底板13の下中央板部13Aに全周に亘って溶接されることにより、下中央板部13Aの上面側から上方へと突出している。
【0037】
15は底板13の左前脚部下板13B上に立設された左前脚部側板で、図8及び図9に示すように、左前脚部側板15は、前,後方向で間隔をもって対面しつつ円筒体14から左側方へと延びる一対の前板15Aと後板15Bとにより構成されている。そして、左前脚部側板15を構成する前板15A及び後板15Bの下端部は、それぞれ底板13の下中央板部13Aと左前脚部下板13Bの上面に溶接によって固着されている。また、前板15Aの基端部15A1と後板15Bの基端部15B1は、それぞれ円筒体14の外周面に溶接されている。
【0038】
16は底板13の左後脚部下板13C上に立設された左後脚部側板で、該左後脚部側板16は、前,後方向で間隔をもって対面しつつ円筒体14から左斜め後方へと延びる一対の前板16Aと後板16Bとにより構成されている。そして、左後脚部側板16の前板16A及び後板16Bは、その下端部が底板13の下中央板部13Aと左後脚部下板13Cの上面に溶接されている。また、前板16Aの基端部16A1と後板16Bの基端部16B1は、それぞれ円筒体14の外周面に溶接されている。
【0039】
17は底板13の右前脚部下板13D上に立設された右前脚部側板で、該右前脚部側板17は、前,後方向で間隔をもって対面しつつ円筒体14から右側方へと延びる一対の前板17Aと後板17Bとにより構成されている。そして、右前脚部側板17の前板17A及び後板17Bは、その下端部が底板13の下中央板部13Aと右前脚部下板13Dの上面に溶接され、前板17Aの基端部17A1と後板17Bの基端部17B1は、それぞれ円筒体14の外周面に溶接されている。
【0040】
18は底板13の右後脚部下板13E上に立設された右後脚部側板で、該右後脚部側板18は、前,後方向で間隔をもって対面しつつ円筒体14から斜め右後方へと延びる一対の前板18Aと後板18Bとにより構成されている。そして、右後脚部側板18の前板18A及び後板18Bは、その下端部が底板13の下中央板部13Aと右後脚部下板13Eの上面に溶接され、前板18Aの基端部18A1と後板18Bの基端部18B1は、それぞれ円筒体14の外周面に溶接されている。
【0041】
19は円筒体14の上端側に設けられた上板で、該上板19は、底板13と上,下方向で対面して配置されている。ここで、上板19は、図8及び図10に示すように、例えば厚肉な単一の鋼板材を用いて形成され、円筒体14の上端側に固着された水平な上中央板部19Aと、該上中央板部19Aから下向きに傾斜して設けられ底板13の各脚部下板13B,13C,13D,13Eと対面する後述の各傾斜板部19B,19C,19D,19Eとにより構成され、これら上中央板部19Aと各傾斜板部19B,19C,19D,19Eとは一体形成されている。また、上板19の上中央板部19Aの中心部には、底板13の中心孔13Fと対応してセンタジョイント(図示せず)等を配置するための中心孔19Fが形成されている。
【0042】
そして、上板19は、上中央板部19Aの下面が円筒体14の上端部に全周に亘って溶接されることにより、円筒体14を挟んで底板13と上,下方向で対面している。また、上板19の上中央板部19Aの上面側には、環状の丸胴20が溶接等の手段を用いて固着され、該丸胴20上には図1に示す旋回輪3が取付けられる構成となっている。
【0043】
19Bは上中央板部19Aの左前側に一体に設けられた左前傾斜板部で、該左前傾斜板部19Bは、底板13の左前脚部下板13Bと対応する部位を下向きに折曲げることにより、上中央板部19Aに一体形成されている。ここで、左前傾斜板部19Bは、垂直方向に対して傾斜角度θをもって斜め下向きに傾斜しつつ、上中央板部19Aから左側方へと突出している(図4参照)。そして、左前傾斜板部19Bの下面は、左前脚部側板15を構成する前板15A及び後板15Bの上端部に溶接されている。また、左前傾斜板部19Bの上面には、後述の左前脚部上板21が溶接される構成となっている。
【0044】
19Cは上中央板部19Aの左後側に一体に設けられた左後傾斜板部で、該左後傾斜板部19Cは、底板13の左後脚部下板13Cと対応する部位を下向きに折曲げることにより、左前傾斜板部19Bと同様な傾斜角度θをもって傾斜しつつ、上中央板部19Aから左斜め後方へと突出している。そして、左後傾斜板部19Cの下面は、左後脚部側板16の上端部に溶接され、左後傾斜板部19Cの上面には、後述の左後脚部上板22が溶接される構成となっている。
【0045】
19Dは上中央板部19Aの右前側に一体に設けられた右前傾斜板部で、該右前傾斜板部19Dは、底板13の右前脚部下板13Dと対応する部位を下向きに折曲げることにより、左前傾斜板部19Bと同様な傾斜角度θをもって傾斜しつつ、上中央板部19Aから右側方へと突出している。そして、右前傾斜板部19Dの下面は、右前脚部側板17の上端部に溶接され、右前傾斜板部19Dの上面には、後述の右前脚部上板23が溶接される構成となっている。
【0046】
19Eは上中央板部19Aの右後側に一体に設けられた右後傾斜板部で、該右後傾斜板部19Eは、底板13の右後脚部下板13Eと対応する部位を下向きに折曲げることにより、左前傾斜板部19Bと同様な傾斜角度θをもって傾斜しつつ、上中央板部19Aから右斜め後方へと突出している。そして、右後傾斜板部19Eの下面は、右後脚部側板18の上端部に溶接され、右後傾斜板部19Eの上面には、後述の右後脚部上板24が溶接される構成となっている。
【0047】
21は底板13の左前脚部下板13Bと上,下方向で対面して設けられた左前脚部上板で、該左前脚部上板21は、例えば1枚の平板を山形状に折曲げることにより形成されている。ここで、図8及び図10に示すように、左前脚部上板21は、前,後方向に山形状に傾斜した2面の傾斜面21Aを有し、各傾斜面21Aの頂部は直線状の稜線部21Bとなっている。
【0048】
そして、図4及び図5等に示すように、左前脚部上板21の下面は、上板19の左前傾斜板部19Bの上面と、左前脚部側板15を構成する前板15A及び後板15Bの上端部とに溶接されている。これにより、底板13の左前脚部下板13B、左前脚部側板15の前板15A及び後板15B、左前脚部上板21によって囲まれた強固なボックス構造をなす後述の左前脚部25が構成されている。
【0049】
ここで、図2に示すように、上板19の上中央板部19Aと左前傾斜板部19Bとの境界線をA1とすると、左前脚部上板21は、その稜線部21Bが境界線A1と直交する状態で、左前傾斜板部19Bに溶接されている。これにより、山形状の傾斜面21Aを有する左前脚部上板21と上板19の左前傾斜板部19Bとの接合部の形状を簡素化し、両者を隙間なく突合わせた状態で溶接することができる構成となっている。
【0050】
22は底板13の左後脚部下板13Cと上,下方向で対面して設けられた左後脚部上板で、該左後脚部上板22は、例えば1枚の平板を折曲げることにより形成され、前,後方向に山形状に傾斜した2面の傾斜面22Aを有し、各傾斜面22Aの頂部は稜線部22Bとなっている。
【0051】
そして、左後脚部上板22の下面は、上板19の左後傾斜板部19Cの上面と、左後脚部側板16の上端部とに溶接され、これにより、底板13の左後脚部下板13C、左後脚部側板16の前板16A及び後板16B、左後脚部上板22によって囲まれた強固なボックス構造をなす後述の左後脚部26が構成されている。この場合、上板19の上中央板部19Aと左後傾斜板部19Cとの境界線をA2とすると、左後脚部上板22は、その稜線部22Bが境界線A2と直交する状態で、左後傾斜板部19Cに溶接されている(図2参照)。これにより、左後脚部上板22と上板19の左後傾斜板部19Cとの接合部の形状を簡素化することができる構成となっている。
【0052】
23は底板13の右前脚部下板13Dと上,下方向で対面して設けられた右前脚部上板で、該右前脚部上板23は、左前脚部上板21と同様に、前,後方向に山形状に傾斜した2面の傾斜面23Aを有し、各傾斜面23Aの頂部は稜線部23Bとなっている。
【0053】
そして、右前脚部上板23の下面は、上板19の右前傾斜板部19Dの上面と、右前脚部側板17の上端部とに溶接され、これにより、底板13の右前脚部下板13D、右前脚部側板17の前板17A及び後板17B、右前脚部上板23によって囲まれた強固なボックス構造をなす後述の右前脚部27が構成されている。この場合、上板19の上中央板部19Aと右前傾斜板部19Dとの境界線をA3とすると、右前脚部上板23は、その稜線部23Bが境界線A3と直交する状態で、右前傾斜板部19Dに溶接されている(図2参照)。
【0054】
24は底板13の右後脚部下板13Eと上,下方向で対面して設けられた右後脚部上板で、該右後脚部上板24は、左後脚部上板22と同様に、前,後方向に山形状に傾斜した2面の傾斜面24Aを有し、各傾斜面24Aの頂部は稜線部24Bとなっている。
【0055】
そして、右後脚部上板24の下面は、上板19の右後傾斜板部19Eの上面と、右後脚部側板18の上端部とに溶接され、これにより、底板13の右後脚部下板13E、右後脚部側板18の前板18A及び後板18B、右後脚部上板24によって囲まれた強固なボックス構造をなす後述の右後脚部28が構成されている。この場合、上板19の上中央板部19Aと右後傾斜板部19Eとの境界線をA4とすると、右後脚部上板24は、その稜線部24Bが境界線A4と直交する状態で、右後傾斜板部19Eに溶接されている(図2参照)。
【0056】
これにより、図6及び図7等に示すように、センタフレーム12の左前側には、底板13の左前脚部下板13Bと、左前脚部側板15と、左前脚部上板21とで囲まれたボックス構造をなす左前脚部25が形成されている(図5参照)。また、センタフレーム12の左後側には、底板13の左後脚部下板13Cと、左後脚部側板16と、左後脚部上板22とで囲まれたボックス構造をなす左後脚部26が形成されている。そして、左前脚部25と左後脚部26の先端側には、後述の左サイドフレーム29が取付けられる構成となっている。
【0057】
一方、センタフレーム12の右前側には、底板13の右前脚部下板13Dと、右前脚部側板17と、右前脚部上板23とで囲まれたボックス構造をなす右前脚部27が形成されている。また、センタフレーム12の右後側には、底板13の右後脚部下板13Eと、右後脚部側板18と、右後脚部上板24とで囲まれたボックス構造をなす右後脚部28が形成されている。そして、右前脚部27と右後脚部28の先端側には、後述の右サイドフレーム33が取付けられる構成となっている。
【0058】
29はセンタフレーム12の左側に位置して前,後方向に延びる左サイドフレームで、図2及び図6に示すように、左サイドフレーム29は、逆U字型の断面形状をもって前,後方向に延び、その後端側(一端側)には後述の接続フランジ30が設けられている。そして、左サイドフレーム29の前端側は、図1に示す遊動輪7を前,後方向に移動可能に支持する遊動輪支持部29Aとなり、左サイドフレーム29のうちセンタフレーム12と対向する側面29Bには、左前脚部25と左後脚部26の先端側が接合される構成となっている。
【0059】
30は左サイドフレーム29の後端側に設けられた接続フランジで、該接続フランジ30は、鋼板等を用いて略四角形の平板状に形成されている。そして、接続フランジ30は、左サイドフレーム29の後端部に溶接されるフレーム側フランジ面30Aと、該フレーム側フランジ面30Aからセンタフレーム12側に張出した脚部側フランジ面30Bとからなり、脚部側フランジ面30Bには、左後脚部26の先端側が溶接される構成となっている。また、接続フランジ30のうち左サイドフレーム29が接合された面とは反対側の面(後面)には、図1に示す駆動輪6の走行モータ(図示せず)を取付けるためのモータブラケット31が固着されている。
【0060】
そして、底板13の左前脚部下板13B、左前脚部側板15、左前脚部上板21等からなる左前脚部25の先端側は、左サイドフレーム29(側面29B)の長さ方向の途中部位に溶接によって接合され、左前脚部上板21の傾斜面21Aと左サイドフレーム29の側面29Bとの間には、略三角形状の補強板32が固着されている。
【0061】
この場合、左前脚部25の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B1−B1として表すと、左前脚部上板21は、その稜線部21Bが伸長方向線B1−B1と平行となるように配置されている。これにより、センタフレーム12から左サイドフレーム29への荷重の伝達を左前脚部25を通じて円滑に行なうことができ、かつ左前脚部25上に落下した泥土等が、左前脚部上板21の傾斜面21Aに沿って落下する構成となっている。
【0062】
一方、底板13の左後脚部下板13C、左後脚部側板16、左後脚部上板22等からなる左後脚部26の先端側は、左サイドフレーム29(側面29B)の後端側と、接続フランジ30の脚部側フランジ面30Bとに溶接によって接合されている。
【0063】
この場合、左後脚部26の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B2−B2として表すと、左後脚部上板22は、その稜線部22Bが伸長方向線B2−B2と平行となるように配置されている。これにより、センタフレーム12から左サイドフレーム29への荷重の伝達を左後脚部26を通じて円滑に行なうことができ、かつ左後脚部26上に落下した泥土等が、左後脚部上板22の傾斜面22Aに沿って落下する構成となっている。
【0064】
さらに、図2に示すように、左サイドフレーム29の側面29Bと接続フランジ30との交点をP1とすると、左後脚部上板22の先端側は、稜線部22Bを交点P1に突合わせた状態で、左サイドフレーム29の側面29Bと接続フランジ30の脚部側フランジ面30Bとに溶接されている。これにより、左後脚部26の先端側を大きな面積をもって左サイドフレーム29と接続フランジ30とに溶接することができ、左後脚部26と左サイドフレーム29との接合強度を高めることができる構成となっている。
【0065】
33はセンタフレーム12の右側に位置して前,後方向に延びる右サイドフレームで、右サイドフレーム33は、逆U字型の断面形状をもって前,後方向に延び、その後端側には後述の接続フランジ34が設けられている。そして、左サイドフレーム29と同様に、右サイドフレーム33の前端側は遊動輪支持部33Aとなり、右サイドフレーム33のうちセンタフレーム12と対向する側面33Bには、右前脚部27と右後脚部28の先端側が接合される構成となっている。
【0066】
34は右サイドフレーム33の後端側に設けられた接続フランジで、該接続フランジ34は、鋼板等を用いて略四角形の平板状に形成されている。そして、接続フランジ34は、右サイドフレーム33の後端部に溶接されるフレーム側フランジ面34Aと、該フレーム側フランジ面34Aからセンタフレーム12側に張出した脚部側フランジ面34Bとからなり、脚部側フランジ面34Bには、右後脚部28の先端側が溶接される構成となっている。また、接続フランジ34のうち右サイドフレーム33が接合された面とは反対側の面(後面)には、モータブラケット35が固着されている。
【0067】
そして、底板13の右前脚部下板13D、右前脚部側板17、右前脚部上板23等からなる右前脚部27の先端側は、右サイドフレーム33(側面33B)の長さ方向の途中部位に溶接によって接合され、右前脚部上板23の傾斜面23Aと右サイドフレーム33の側面33Bとの間には、略三角形状の補強板36が固着されている。
【0068】
この場合、右前脚部27の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B3−B3として表すと、右前脚部上板23は、その稜線部23Bが伸長方向線B3−B3と平行となるように配置されている。これにより、センタフレーム12から右サイドフレーム33への荷重の伝達を右前脚部27を通じて円滑に行なうことができ、かつ右前脚部27上に落下した泥土等が、右前脚部上板23の傾斜面23Aに沿って落下する構成となっている。
【0069】
一方、底板13の右後脚部下板13E、右後脚部側板18、右後脚部上板24等からなる右後脚部28の先端側は、右サイドフレーム33(側面33B)の後端側と、接続フランジ34の脚部側フランジ面34Bとに溶接によって接合されている。
【0070】
この場合、右後脚部28の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B4−B4として表すと、右後脚部上板24は、その稜線部24Bが伸長方向線B4−B4と平行となるように配置されている。これにより、センタフレーム12から右サイドフレーム33への荷重の伝達を右後脚部28を通じて円滑に行なうことができ、かつ右後脚部28上に落下した泥土等が、右後脚部上板24の傾斜面24Aに沿って落下する構成となっている。
【0071】
さらに、図2に示すように、右サイドフレーム33の側面33Bと接続フランジ34との交点をP2とすると、右後脚部上板24の先端側は、稜線部24Bを交点P2に突合わせた状態で、右サイドフレーム33の側面33Bと接続フランジ34の脚部側フランジ面34Bとに溶接されている。これにより、右後脚部28の先端側を大きな面積をもって右サイドフレーム33と接続フランジ34とに溶接することができ、右後脚部28と右サイドフレーム33との接合強度を高めることができる構成となっている。
【0072】
37はセンタフレーム12の左,右方向の中央部に位置して円筒体14等に固着されたシリンダブラケットで、図6及び図7等に示すように、シリンダブラケット37は、円筒体14から前方に突出している。そして、シリンダブラケット37は、図1に示す排土板9を上,下に昇降させる油圧シリンダ(図示せず)が取付けられるものである。
【0073】
38,38はシリンダブラケット37を挟んで左,右に配置された一対の排土板ブラケットで、該排土板ブラケット38は、図1に示す排土板9を上,下方向に回動可能に支持するものである。
【0074】
本実施の形態による油圧ショベル1のトラックフレーム11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作用効果について説明する。
【0075】
まず、センタフレーム12と左サイドフレーム29との間を連結する左前脚部25についてみると、底板13に左前脚部下板13Bを一体形成し、円筒体14を挟んで底板13と対面する上板19には左前傾斜板部19Bを設け、この左前傾斜板部19Bと左前脚部下板13Bに立設された一対の左前脚部側板15とに左前脚部上板21を固着することにより、これら左前脚部下板13B、左前脚部側板15、左前脚部上板21によって囲まれた強固なボックス構造の左前脚部25を形成することができる。
【0076】
この場合、左前脚部上板21は、稜線部21Bを頂部として前,後方向に傾斜する山形状の傾斜面21Aを有しているので、この傾斜面21Aに沿って泥土等を前,後方向に落下させることにより、左前脚部25や左サイドフレーム29に泥土等が堆積するのを抑えることができる。
【0077】
しかも、左前脚部下板13Bは底板13に一体に設けられ、左前脚部側板15の基端側は底板13に設けられた円筒体14に固着され、左前脚部上板21は上板19の左前傾斜板部19Bと左前脚部側板15とに固着されているので、左前脚部25の構成要素全体で荷重を支えることができる。従って、例えばセンタフレームとは別部材からなる左前脚部をセンタフレームの筒体に突合わせて溶接することにより、センタフレームと脚部との接合部分に荷重が集中する場合に比較して、センタフレーム12に対する左前脚部25の接合強度を高めることができる。また、例えば別部材からなる左前脚部とセンタフレームとを溶接によって接合した場合に、両者間に形成される溶接ビード部をグラインダ等を用いて成形するといった煩雑な作業を不要にできるので、トラックフレーム11を製造するときの作業性を高めることができる。
【0078】
また、左前脚部25の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B1−B1として表したときに、左前脚部上板21の稜線部21Bを伸長方向線B1−B1と平行となるように配置する構成としている。これにより、センタフレーム12から左サイドフレーム29への荷重の伝達を左前脚部25を通じて円滑に行なうことができ、トラックフレーム11全体の剛性を高めることができる。また、左前脚部25上に落下した泥土等を、左前脚部上板21の傾斜面21Aに沿って前,後方向に落下させることができるので、左前脚部25、左サイドフレーム29に泥土等が堆積するのを確実に抑え、履帯8を常時円滑に周回させることができる。
【0079】
また、図2に示すように、上板19の上中央板部19Aと左前傾斜板部19Bとの境界線をA1とすると、左前脚部上板21は、その稜線部21Bが境界線A1と直交する状態で、左前傾斜板部19Bに溶接する構成としている。これにより、山形状の傾斜面21Aを有する左前脚部上板21と上板19の左前傾斜板部19Bとの接合部の形状を簡素化し、両者を隙間なく突合わせた状態で溶接することができるので、左前脚部上板21と左前傾斜板部19Bとを溶接するときの作業性、信頼性を高めることができる。
【0080】
一方、センタフレーム12と左サイドフレーム29との間を連結する左後脚部26についてみると、該左後脚部26も、底板13の左後脚部下板13C、左後脚部側板16、左後脚部上板22によって囲まれた強固なボックス構造をなし、左後脚部上板22は上板19の左後傾斜板部19Cと左後脚部側板16とに固着されている。これにより、左後脚部26の構成要素全体で荷重を支えることができ、センタフレーム12に対する左後脚部26の接合強度を高めることができる。また、左後脚部上板22は山形状の傾斜面22Aを有しているので、左後脚部26や左サイドフレーム29に泥土等が堆積するのを抑えることができる。
【0081】
また、左後脚部26の伸長方向を、図6中の一点鎖線で示す伸長方向線B2−B2としたときに、左後脚部上板22の稜線部22Bを、伸長方向線B2−B2と平行に配置することにより、センタフレーム12から左サイドフレーム29への荷重の伝達を左後脚部26を通じて円滑に行なうことができる。
【0082】
また、図2に示すように、上板19の上中央板部19Aと左後傾斜板部19Cとの境界線をA2とすると、左後脚部上板22の稜線部22Bを境界線A2と直交させることにより、左後脚部上板22と上板19の左後傾斜板部19Cとを、隙間なく突合わせた状態で溶接することができるので、その作業性、信頼性を高めることができる。
【0083】
さらに、図2に示すように、左サイドフレーム29の側面29Bと接続フランジ30との交点をP1とすると、左後脚部上板22の先端側を、稜線部22Bを交点P1に突合わせた状態で、左サイドフレーム29の側面29Bと接続フランジ30の脚部側フランジ面30Bとに溶接する構成としている。これにより、左後脚部26の先端側を大きな面積をもって左サイドフレーム29と接続フランジ30とに溶接することができ、左後脚部26と左サイドフレーム29との接合強度を高めることができる。また、左後脚部上板22の稜線部22Bを、左サイドフレーム29の側面29Bと接続フランジ30との交点をP1に突合わせることにより、接続フランジ30に設けられるモータブラケット31の近傍に泥土等が堆積するのを抑え、モータブラケット31に取付けられる走行モータを泥土等から保護することができる。
【0084】
そして、上述した左前脚部25、左後脚部26についての作用効果は、センタフレーム12と右サイドフレーム33との間を連結する右前脚部27、右後脚部28についても同様である。
【0085】
次に、図11ないし図13は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、上板を構成する上中央板部と傾斜板部とを、互いに別部材により形成して一体に接合する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0086】
図中、41は本実施の形態によるセンタフレームで、該センタフレーム41は、第1の実施の形態によるセンタフレーム12と同様に、底板13と、円筒体14と、各脚部側板15,16,17,18と、後述の上板42と、各脚部上板21,22,23,24とにより大略構成されている。しかし、上板42の構成が、第1の実施の形態による上板19とは異なるものである。
【0087】
42は円筒体14の上端側に設けられた上板で、該上板42は、底板13と上,下方向で対面して配置されている。そして、上板42は、中心孔43Aを有し円筒体14の上端側に固着された水平な1枚の板体からなる上中央板部43と、該上中央板部43とは別部材として形成された後述の左前傾斜板部44、左後傾斜板部45、右前傾斜板部46、右後傾斜板部47とからなり、上中央板部43に各傾斜板部44,45,46,47を一体に接合する構成となっている。
【0088】
ここで、左前傾斜板部44は、上中央板部43の下面に当接する水平面44Aと、該水平面44Aから下向に傾斜した傾斜面44Bとを有する1枚の板体からなっている。そして、左前傾斜板部44の水平面44Aを、上中央板部43の前部左端側の下面に溶接することにより、左前傾斜板部44の傾斜面44Bは、垂直方向に対して傾斜角度θをもって斜め下向きに傾斜しつつ、上中央板部43から左側方へと突出している(図13参照)。また、左前傾斜板部44の下面は、左前脚部側板15の上端部に溶接され、左前傾斜板部44の傾斜面44Bの上面には、左前脚部上板21が溶接されている。
【0089】
一方、左後傾斜板部45は、水平面45Aと傾斜面45Bとを有する1枚の板体からなっている。そして、左後傾斜板部45の水平面45Aを、上中央板部43の後部左端側の下面に溶接することにより、傾斜面45Bは、左前傾斜板部44の傾斜面44Bと同様な傾斜角度θをもって傾斜しつつ、上中央板部43から左斜め後方へと突出している。また、左後傾斜板部45の下面は、左後脚部側板16の上端部に溶接され、左後傾斜板部45の傾斜面45Bの上面には、左後脚部上板22が溶接されている。
【0090】
これと同様に、右前傾斜板部46は、上中央板部43の前部右端側の下面に溶接される水平面46Aと、水平面46Aから下向きに傾斜しつつ上中央板部43から右側方へと突出する傾斜面46Bとからなっている。そして、右前傾斜板部46の下面は、右前脚部側板17の上端部に溶接され、右前傾斜板部46の傾斜面46Bの上面には、右前脚部上板23が溶接されている。
【0091】
また、右後傾斜板部47は、上中央板部43の後部右端側の下面に溶接される水平面47Aと、水平面47Aから下向きに傾斜しつつ上中央板部43から右斜め後方へと突出する傾斜面47Bとからなっている。そして、右後傾斜板部47の下面は、右後脚部側板18の上端部に溶接され、右後傾斜板部47の傾斜面47Bの上面には、右後脚部上板24が溶接されている。
【0092】
本実施の形態によるトラックフレームは上述の如きセンタフレーム41を備えるもので、その基本的な作用効果については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0093】
然るに、本実施の形態によれば、上板42を構成する上中央板部43と各傾斜板部44,45,46,47とを、互いに別部材により形成して一体に接合する構成としている。これにより、左前傾斜板部44、左後傾斜板部45、右前傾斜板部46、右後傾斜板部47を、それぞれ上中央板部43とは別部材として形成することができるので、これら各傾斜板部44,45,46,47の形状の自由度を高めることができる。
【0094】
なお、上述した各実施の形態では、センタフレーム12を構成する底板13を、単一の鋼板材を用いて下中央板部13A、左前脚部下板13B、左後脚部下板13C、右前脚部下板13D、右後脚部下板13Eを一体形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば下中央板部13Aの左半分に左前脚部下板13B及び左後脚部下板13Cを設けた部材と、下中央板部13Aの右半分に右前脚部下板13D及び右後脚部下板13Eを設けた部材との2部材を別個に形成し、これら2部材を溶接等の手段を用いて接合することにより一体化する構成としてもよい。
【0095】
また、上述した各実施の形態では、底板13の下中央板部13A上に設けられる筒体として円筒体14を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば角筒状の筒体を用いる構成としてもよい。
【0096】
また、上述した各実施の形態では、建設機械のトラックフレームとして油圧ショベル1の下部走行体2を構成するトラックフレーム11を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン等の他の建設機械のトラックフレームにも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるトラックフレームを備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】トラックフレームを示す平面図である。
【図3】トラックフレームを図2中の矢示III−III方向からみた左側面図である。
【図4】図3中の左前脚部を拡大して示す要部拡大図である。
【図5】左前脚部下板、左前脚部側板、左前脚部上板を図4中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】トラックフレームを示す斜視図である。
【図7】センタフレームと脚部を示す斜視図である。
【図8】センタフレームと脚部を示す分解斜視図である。
【図9】底板、円筒体、脚部側板を分解した状態で示す分解平面図である。
【図10】上板、脚部上板を分解した状態で示す分解平面図である。
【図11】第2の実施の形態によるセンタフレームと脚部を示す図7と同様な斜視図である。
【図12】上板を構成する上中央板部と各傾斜板部とを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図13】第2の実施の形態による左前脚部を拡大して示す図4と同様な要部拡大図である。
【符号の説明】
【0098】
1 油圧ショベル(建設機械)
11 トラックフレーム
12,41 センタフレーム
13 底板
13A 下中央板部
13B 左前脚部下板(脚部下板)
13C 左後脚部下板(脚部下板)
13D 右前脚部下板(脚部下板)
13E 右後脚部下板(脚部下板)
14 円筒体(筒体)
15 左前脚部側板(脚部側板)
16 左後脚部側板(脚部側板)
17 右前脚部側板(脚部側板)
18 右後脚部側板(脚部側板)
19,42 上板
19A,43 上中央板部
19B,44 左前傾斜板部(傾斜板部)
19C,45 左後傾斜板部(傾斜板部)
19D,46 右前傾斜板部(傾斜板部)
19E,47 右後傾斜板部(傾斜板部)
21 左前脚部上板(脚部上板)
21A,22A,23A,24A 傾斜面
21B,22B,23B,24B 稜線部
22 左後脚部上板(脚部上板)
23 右前脚部上板(脚部上板)
24 右後脚部上板(脚部上板)
25 左前脚部
26 左後脚部
27 右前脚部
28 右後脚部
29 左サイドフレーム
30,34 接続フランジ
31,35 モータブラケット
33 右サイドフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタフレームと、該センタフレームの左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右のサイドフレームと、前記センタフレームと前記各サイドフレームとの間を連結する前,後の脚部とからなる建設機械のトラックフレームにおいて、
前記センタフレームは、下中央板部と該下中央板部から延びて前記各脚部の下面を構成する複数の脚部下板とからなる底板と、該底板の中央板部から上方に突出して設けられた中空な筒体と、前記底板の各脚部下板にそれぞれ前,後方向に対をなして立設され基端側が前記筒体に固着された一対の脚部側板と、前記筒体の上端側に固着された上中央板部と前記底板の各脚部下板に対応する部位にそれぞれ下向きに傾斜して設けられた傾斜板部とからなる上板と、山形状に傾斜した傾斜面を有し該傾斜板部と前記一対の脚部側板とにそれぞれ固着して設けられた脚部上板とにより構成したことを特徴とする建設機械のトラックフレーム。
【請求項2】
前記上板は、前記上中央板部と前記傾斜板部とを単一の板材に一体形成する構成としてなる請求項1に記載の建設機械のトラックフレーム。
【請求項3】
前記上板は、前記上中央板部と前記傾斜板部とを互いに別部材により形成して一体に接合する構成としてなる請求項1に記載の建設機械のトラックフレーム。
【請求項4】
前記脚部上板は、前記山形状に傾斜した傾斜面の頂部となる稜線部を有し、該稜線部は前記センタフレームから前記サイドフレームへと延びる前記脚部の伸長方向と平行に配置する構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械のトラックフレーム。
【請求項5】
前記サイドフレームの一端側には前記センタフレーム側に突出する接続フランジを設け、該接続フランジには走行モータを取付けるモータブラケットを設ける構成とし、
前記脚部上板の先端側は、前記稜線部を前記サイドフレームと前記接続フランジとの交点に突合わせた状態で、前記サイドフレームと前記接続フランジとに接合する構成としてなる請求項4に記載の建設機械のトラックフレーム。
【請求項6】
前記脚部上板は、その稜線部が前記上板の上中央板部と傾斜板部との境界線と直交する状態で前記傾斜板部に接合する構成としてなる請求項4または5に記載の建設機械のトラックフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−149945(P2008−149945A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341336(P2006−341336)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】