説明

建設機械の制御装置

【課題】複数のコントローラを有する制御装置を安価に構成する。
【解決手段】デジタル端子、アナログ端子、およびcan通信端子をそれぞれ有し、制御対象物61〜72に駆動指令に対応した制御信号を出力する第1および第2の制御装置50,51と、can通信端子を介して第1および第2の制御装置50,51を接続してなる第1の通信系統L1と、デジタル端子およびアナログ端子を介して第1および第2の制御装置50,51を接続してなる第2の通信系統L2と、これら通信系統L1,L2の正常/異常を判定する判定手段50,51と、第1の通信系統L1が異常かつ第2の通信系統L2が正常と判定されると、第2の通信系統L2を介した駆動指令に対応する信号に基づき制御信号を出力するように第1および第2の制御装置50,51からの信号出力を制御する制御手段50,51とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械を制御する建設機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機体に搭載された複数のコントローラをcan通信線を介して接続し、複数のコントローラ間で互いに通信を行うようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の装置では、通信線の断線や短絡があると、正常な通信が行えなくなる。そこで、通信機能のバックアップのため、can通信を2系統備えるようにした装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144626号公報
【特許文献2】特開2003−191804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、can通信線を2系統備えるのは装置の価格上昇を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による建設機械の制御装置は、デジタル信号入出力用のデジタル端子、アナログ信号入出力用のアナログ端子、およびcan通信用のcan通信端子をそれぞれ有し、制御対象物に駆動指令に対応した制御信号を出力する少なくとも第1および第2の制御装置と、can通信端子を介して第1および第2の制御装置を接続してなる第1の通信系統と、デジタル端子およびアナログ端子を介して第1および第2の制御装置を接続してなる第2の通信系統と、第1の通信系統と第2の通信系統の正常/異常を判定する判定手段と、判定手段により第1の通信系統が正常と判定されると、第1の通信系統を介した駆動指令に対応する信号に基づき制御対象物に制御信号を出力し、第1の通信系統が異常かつ第2の通信系統が正常と判定されると、第2の通信系統を介した駆動指令に対応する信号に基づき制御対象物に制御信号を出力するように第1および第2の制御装置からの信号出力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、can通信端子を介した通信系統が異常のときは、デジタル端子およびアナログ端子を介した通信により制御信号を出力するので、can通信線を2系統設ける必要がなく、安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明が適用される建設機械の一例である油圧ショベルの外観側面図。
【図2】図1の油圧ショベルの運転室内の構成を示す平面図。
【図3】本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図。
【図4】本実施の形態に係る通信系統選択処理の一例を示すフローチャート。
【図5】本実施の形態に係る電磁比例弁駆動処理の一例を示すフローチャート。
【図6】本実施の形態の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜図6を参照して本発明による建設機械の制御装置の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る制御装置を有する油圧ショベルの側面図である。油圧ショベルは、走行体1と、走行体1上に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2に回動可能に取り付けられたブーム3A,アーム3B,バケット3Cからなる作業用フロント3とを有する。ブーム3A,アーム3Bおよびバケット3Cは、それぞれブームシリンダ30A,アームシリンダ30Bおよびバケットシリンダ30Cにより駆動される。旋回体2の前部には運転室4が、その後方にはエンジン室5がそれぞれ設けられ、旋回体2の後端部にはカウンタウエイト6が取り付けられている。なお、図示は省略するが、油圧ショベルには、油圧アクチュエータとして油圧シリンダ30A〜30C以外に、旋回体2を旋回させる旋回モータと、走行体1を走行させる左右一対の走行モータが設けられている。
【0009】
ブームシリンダ30A、アームシリンダ30B、バケットシリンダ30C、旋回モータおよび走行モータには、それぞれ図示しない油圧ポンプから圧油が供給され、油圧ポンプからの圧油によりこれら油圧アクチュエータが駆動される。油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの圧油の流れは、後述する電磁比例弁61〜72により制御される。
【0010】
図2は、運転室4内の構成を示す平面図である。運転席40の左側には旋回操作およびアーム操作を行う操作レバー41が配置され、右側にはバケット操作およびブーム操作を行う操作レバー42が配置されている。運転席40の前方には走行操作を行う操作レバー43が配置されている。これら操作レバー41〜43は操作量に応じた電気信号を出力する電気レバーであり、操作レバー41〜43からの信号は図3に示すようにメインコントローラ50に入力される。
【0011】
図3は、本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。メインコントローラ50およびサブコントローラ51は、それぞれCPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。各コントローラ50,51は、アナログ信号入出力用のアナログ端子と、デジタル信号入出力用のデジタル端子と、can通信用のcan通信端子とをそれぞれ有する。
【0012】
メインコントローラ50には、操作レバー41の操作による旋回操作信号およびアーム操作信号と、操作レバー42の操作によるバケット操作信号およびブーム操作信号と、操作レバー43の操作による左走行操作信号および右走行操作信号がそれぞれ入力される。メインコントローラ50からは電磁比例弁61〜70にそれぞれ制御信号が出力される。
【0013】
電磁比例弁61は、旋回体2を右旋回させる右旋回電磁比例弁であり、電磁比例弁62は、旋回体2を左旋回させる左旋回電磁比例弁である。電磁比例弁63は、アーム3Bを前方に押し出すアーム押し電磁比例弁であり、電磁比例弁64は、アーム3Bを機体側に引き寄せるアーム引き電磁比例弁である。電磁比例弁65は、バケット内に土砂を取り込むバケット掘削電磁比例弁であり、電磁比例弁66は、バケット内から土砂を放土するバケット放土電磁比例弁である。
【0014】
電磁比例弁67は、左側の走行体1を前進させる左走行前進電磁比例弁であり、電磁比例弁68は、左側の走行体1を後進させる左走行後進電磁比例弁である。電磁比例弁69は、右側の走行体1を前進させる右走行前進電磁比例弁であり、電磁比例弁70は、右側の走行体1を後進させる右走行後進電磁比例弁である。なお、電磁比例弁71,72は、それぞれブーム3Aを上昇および下降するブーム上げ電磁比例弁およびブーム下げ電磁比例弁であるが、これらはメインコントローラ50ではなくサブコントローラ51に接続されている。
【0015】
本実施の形態の制御装置は、メインコントローラ50とサブコントローラ51の2つのコントローラを有する。このようにコントローラを2つに分けることで、各コントローラ50,51の基板を小型化できる。このため、基板の温度管理が容易となり、鉛フリーはんだを使用したコントローラ50,51を容易に製造できる。
【0016】
このようにコントローラをメインコントローラ50とサブコントローラ51の2つに分けると、各コントローラ50,51間で通信が必要となる。この場合、各コントローラ50,51を例えば1系統のcan通信線で接続したのでは、can通信線に断線や短絡があると、正常な通信が行えなくなり、機体の正常な動作が不能となる。一方、can通信線を2系統設け、1つをバックアップ用としたのでは、装置の価格上昇を招く。この点を考慮して、本実施の形態では制御装置を以下のように構成する。
【0017】
メインコントローラ50とサブコントローラ51は、メイン通信線であるcan通信線L1を介して接続されるとともに、サブ通信線L2であるアナログ通信線L21およびデジタル通信線L22を介して接続されている。すなわち各コントローラ50,51間の通信系統は、メイン通信線L1を介した通信系統とサブ通信線L2を介した通信系統の2系統ある。これら通信系統を介して後述するようにメインコントローラ50とサブコントローラ51の間で通信が行われ、サブコントローラ51から電磁比例弁71,72に制御信号が出力される。
【0018】
本実施の形態では、通常はメイン通信線L1(can通信線)を介してコントローラ50,51間で通信を行わせ、メイン通信線L1の断線等があると、バックアップモードとしてサブ通信線L2を介して通信を行わせる。バックアップモードのオンオフは、図2に示す運転室4内のモード切換スイッチ44により選択される。運転室4内にはメイン通信線L1による通信が正常であるか否かを報知するメイン警報ランプ45と、サブ通信線L2による通信が正常であるか否かを報知するサブ警報ランプ46が設置されている。図3に示すようにモード切換スイッチ44とメイン警報ランプ45はメインコントローラ50に接続され、サブ警報ランプ46はサブコントローラ51に接続されている。
【0019】
コントローラ50,51では、電磁比例弁61〜72の駆動に関する処理(電磁比例弁駆動処理)と通信系統の選択に関する処理(通信系統選択処理)が行われる。図4は、通信系統選択処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。
【0020】
ステップS1では、サブ通信線L2による通信(サブ通信)が正常か否かを判定する。この判定は例えば以下のように行う。すなわちデジタル通信線21を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51に所定のチェック信号v1(例えば24V)を送信するとともに、アナログ通信線22を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51に所定のチェック信号v2(例えば5V)を送信する。この信号v1,v2の送信は所定の周期(例えば1分毎)で行われ、1回につき所定時間(例えば1秒間)だけ信号v1,v2を送信する。そして、サブコントローラ51がメインコントローラ50からの信号v1,v2を所定時間(例えば2分)内に受信した場合にサブ通信が正常と判定し、所定時間内に受信しない場合に異常と判定する。
【0021】
ステップS1でサブ通信が正常と判定されるとステップS2に進み、運転室内のサブ警報ランプ46を消灯して、サブ通信が正常である旨を報知する。ステップS3では、メイン通信線L1による通信(メイン通信)が正常か否かを判定する。この判定は例えば以下のように行う。すなわちcan通信線L1を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51に信号を送信する。そして、一定時間内にサブコントローラ51からメインコントローラ50に信号の応答がある場合にメインコントローラ50はメイン通信が正常と判定し、一定時間内に応答がない場合に異常と判定する。
【0022】
ステップS3でメイン通信が異常と判定されるとステップS4に進み、運転室内のメイン警報ランプ45を点灯して、メイン通信が異常である旨を報知する。ステップS5では、メイン通信線L1による通信を禁止するためのフラグ(メインフラグ=0)をセットする。ステップS6では、モード切換スイッチ44によりバックアップモードが選択されているか否かを判定する。
【0023】
ステップS6が肯定されるとステップS7に進み、メイン警報ランプ45を点滅させて、バックアップモードが選択されている旨を報知する。ステップS8では、サブ通信線L2による通信を許可するためのフラグ(サブフラグ=1)をセットする。一方、ステップS6が否定されるとステップS11に進み、サブ通信線L2による通信を禁止するためのフラグ(サブフラグ=0)をセットする。
【0024】
ステップS3でメイン通信が正常と判定されるとステップS9に進み、メイン警報ランプ45を消灯して、メイン通信が正常である旨を報知する。ステップS10では、メイン通信線L1による通信を許可するためのフラグ(メインフラグ=1)をセットし、ステップS11に進む。
【0025】
ステップS1でサブ通信が異常と判定されるとステップS12に進み、サブ警報ランプ46を点灯して、サブ通信が異常である旨を報知する。ステップS13では、ステップS3と同様にしてメイン通信が正常か否かを判定する。ステップS13が否定されるとステップS14に進み、メイン警報ランプ45を点灯させる。次いで、ステップS15でメインフラグ=1をセットし、ステップS11に進む。ステップS13が肯定されるとステップS16に進み、メイン警報ランプ45を点灯させる。次いで、ステップS17でメインフラグ=0をセットし、ステップS11に進む。
【0026】
図5は、コントローラ50,51間での通信を介して行われる電磁比例弁71,72の駆動処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。なお、他の電磁比例弁61〜70については、コントローラ50,51間での通信を介さずにメインコントローラ50から操作レバー41〜43の操作量に応じた制御信号が出力されるだけであり、フローチャートによる説明は省略する。
【0027】
ステップS21では、メインコントローラ50での処理により操作レバー42の操作によるブーム操作信号を読み込む。ステップS22では、図4の処理で設定されたメインフラグの値を判定する。ステップS22でメインフラグ=0、すなわちメイン通信線L1による通信が禁止と判定されるとステップS23に進み、図4の処理で設定されたサブフラグの値を判定する。ステップS23でサブフラグ=0、すなわちサブ通信線L2による通信が禁止と判定されるとリターンする。この場合は、メインコントローラ50からサブコントローラ51へ操作信号が送信されず、サブコントローラ51から電磁比例弁71,72への信号出力が停止される。
【0028】
一方、ステップS23でサブフラグ=1、すなわちサブ通信線L2による通信許可と判定されるとステップS24に進む。ステップS24では、デジタル通信線L22を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51にブーム操作信号に対応したコード信号を出力する。例えばブーム上げ操作であれば、オン−オフ−オン(1−0−1)のコード信号を、ブーム下げ操作であればオン−オフ−オフ(1−0−0)のコード信号をそれぞれ繰り返し出力する。この場合、1回のオンオフ信号の出力を所定時間T1だけ継続し、各コード信号の間に所定時間T2(>T1)のブランクをあける。したがって、コード信号の出力時間はT1×3であり、これとブランク時間T2との和(T1×3+T2)をコード信号単位とする。
【0029】
ステップS25では、ブーム操作信号が入力されてから所定時間T3(コード信号単位)の経過後に、アナログ通信線L21を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51に、レバー操作量に応じたアナログ信号を出力する。例えばレバー操作量が大きいほど大きなアナログ信号を出力する。この場合、レバー操作開始時のアナログ信号はレバー操作に追従させて変化させるのではなく、レバー操作に比べ徐々に変化させる。ステップS26では、コード信号に対応した電磁比例弁70,71に対し、サブコントローラ51からアナログ信号に対応した制御信号I1を出力する。これにより電磁比例弁71,72が駆動される。
【0030】
ステップS22でメインフラグ=1、すなわちメイン通信線L1による通信が許可と判定されるとステップ27に進む。ステップS27では、メイン通信線L1を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51にブーム操作信号を送信する。ステップS28では、サブコントローラ51から電磁比例弁71,72にブーム操作信号に対応した制御信号I2を出力する。
【0031】
本実施の形態に係る制御装置の動作をより具体的に説明する。
図6は、メイン通信系統が異常かつサブ通信系統が正常の場合の動作の一例を示すタイムチャートである。図6(a)に示すように時点taでモード切換スイッチ44をオンすると、図6(b)に示すようにメイン警報ランプ45にオンオフ信号が繰り返し出力され、メイン警報ランプ45が点滅する(ステップS7)。ここで、図6(c)に示すように時点ta〜tbの間で操作レバー43をブーム上げ操作すると、図6(d)に示すようにサブ通信線L2を介してメインコントローラ50からブーム上げ操作に対応したコード信号(1−1−0)が繰り返し出力される(ステップS24)。なお、各コード信号の間にはブランクT2が設けられる。
【0032】
このとき、図6(e)に示すようにブーム操作信号が入力されてから所定時間T3の経過後に、サブ通信線L2を介してメインコントローラ50からブーム上げ操作に対応したアナログ信号が出力される(ステップS25)。また、アナログ信号は所定時間T4かけてブーム操作に対応した値に徐々に変化する。このメインコントローラ50からのコード信号およびアナログ信号を受信すると、サブコントローラ51はブーム上げ電磁比例弁71に制御信号を出力する。これによりブームシリンダ30Aが伸張し、ブーム3Aが上昇する。
【0033】
この場合、コード信号が送信された後にアナログ信号が遅れて送信されるので、サブコントローラ51でブーム上げ操作が確認されてから電磁比例弁71に制御信号が出力されることとなる。このため、より多くの電磁比例弁がサブコントローラ51に接続されている場合であっても、レバー操作に対応した電磁比例弁に対し確実に制御信号を出力できる。また、アナログ信号を徐々に変化させるので、ブーム操作から所定時間T3後のブーム3Aの急激な動作を避けることができる。
【0034】
図6(c)に示すように時点tb〜tcにおいて、操作レバー43を中立位置に戻し操作すると、その間、コード信号はオフとなり、アナログ信号は中立の信号となる。これによりブームシリンダ30Aの駆動が停止され、ブーム3Aが停止する。
【0035】
時点tc〜tdにおいて、操作レバー43をブーム下げ操作すると、図6(d)に示すようにメインコントローラ50からブーム下げ操作に対応したコード信号(1−0−0)が繰り返し出力される。また、図6(e)に示すようにブーム操作信号が入力されてから所定時間T3の経過後に、メインコントローラ50からブーム下げ操作に対応したアナログ信号が出力される。これによりサブコントローラ51はブーム下げ電磁比例弁72に制御信号を出力し、ブームシリンダ30Bが縮退し、ブーム3Aが下降する。
【0036】
その後、時点td〜teで操作レバー43を中立位置に戻し操作すると、ブーム3Aが停止し、時点te〜tfで、操作レバー43をブーム上げ操作すると、ブーム3Aが上昇する。時点tfでモード切換スイッチ44をオフすると、レバー操作に対応したメインコントローラ50からサブコントローラ51への操作信号(コード信号、アナログ信号)の送信が停止され、ブーム3Aが停止する(ステップS6→ステップS11)。
【0037】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)can通信線(メイン通信線L1)を介してメインコントローラ50とサブコントローラ51とを接続するとともに、アナログ通信線およびデジタル通信線(サブ通信線L2)を介してメインコントローラ50とサブコントローラ51とを接続し、通信系統を2系統設けた。そして、メイン通信の正常時にはメイン通信線L1を介した操作信号に基づきサブコントローラ51から電磁比例弁71,72に制御信号を出力し、メイン通信の異常かつサブ通信の正常時にはサブ通信線L2を介した操作信号に基づきサブコントローラ51から電磁比例弁71,72に制御信号を出力するようにコントローラ50,51の信号出力を制御した。これによりメイン通信の異常時にも操作信号に対応して電磁比例弁71,72を駆動することができ、can通信線L1を2系統設ける必要がないため、安価に構成できる。
【0038】
(2)デジタル信号線L22を介して電磁比例弁71,72を特定するためのコード信号を出力するとともに、アナログ信号線L21を介してレバー操作量に対応したアナログ信号を出力するようにした。すなわち、汎用性のあるコントローラに装着されるアナログ端子とデジタル端子とを用いて通信を行い、電磁比例弁71,72を駆動するようにしたので、部品点数の増加を抑制できる。
(3)コード信号が送信された後にアナログ信号を送信するようにしたので、多数の電磁比例弁がサブコントローラ51に接続されている場合であっても、レバー操作に対応した電磁比例弁に対して確実に制御信号を出力できる。
【0039】
(4)運転室内にモード選択スイッチ44を設け、モード選択スイッチ44のオフ時には、サブ通信が正常であってもサブ通信線L2を介した通信による電磁比例弁71,72の駆動を禁止するようにした。これによりモード選択スイッチ44のオフで作業しておけば、can通信線の断線等が発生した場合には一旦作業が中断されるため、その後、オペレータの判断でバックアップモードによる作業を行うかどうかを選択できる。
(5)バックアップモード時にメイン警報ランプ45を点滅させるようにしたので、オペレータはバックアップモードであるか否かを容易に認識することができ、レバー操作の応答性が悪化した場合に、オペレータが混乱することを防ぐことができる。
【0040】
なお、以上では、メインコントローラ50(第1の制御装置)とサブコントローラ51(第2の制御装置)を設け、各コントローラ50,51からレバー操作による操作信号に対応した制御信号を出力するようにしたが、操作信号以外の電磁比例弁の駆動指令に対応した制御信号を出力するようにしてもよい。コントローラ50,51からの信号により電磁比例弁61〜72を制御するようにしたが、制御対象物は電磁比例弁以外でもよい。
【0041】
上記実施の形態では、第1の通信系統としてのメイン通信系統と第2の通信系統としてのサブ通信系統とによりコントローラ50,51を接続したが、より多くのコントローラを接続するようにしてもよい。図4の処理(ステップS1,ステップS3)によりサブ通信とメイン通信の正常/異常を判定するようにしたが、判定手段はこれに限らない。メイン通信が異常かつサブ通信が正常と判定されると、サブ通信を介した信号に基づき電磁比例弁71,72に制御信号を出力するようにコントローラ50,51からの信号出力を制御するのであれば、制御手段としてのコントローラ50,51の構成は上述したものに限らない。すなわちメイン通信の異常かつサブ通信の正常時に、デジタル信号線L22を介してメインコントローラ50からサブコントローラ51にコード信号(第1の信号)を出力するとともに、アナログ信号線L21を介してアナログ信号(第2の信号)を出力するようにしたが、他の構成としてもよい。
【0042】
レバー操作信号が入力されてから所定時間T3後に、メインコントローラ50からサブコントローラ51にアナログ信号を出力するようにしたが、コード信号が出力された後であれば、アナログ信号の出力は所定時間T3後に限定されない。モード切換スイッチ44によりバックアップモードのオンオフを選択するようにしたが、モード選択手段はこれに限らない。バックアップモード時にメイン警報ランプ45を点滅表示するようにしたが、報知手段はこれに限らない。
【0043】
以上では、本発明を油圧ショベルに適用する場合について説明したが、複数のコントローラ(制御装置)を有する他の建設機械にも本発明は同様に適用可能である。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の建設機械の制御装置に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
41〜43 操作レバー
44 モード切換スイッチ
45 メイン警報ランプ
50 メインコントローラ
51 サブコントローラ
61〜72 電磁比例弁
L1 メイン通信線(can通信線)
L2 サブ通信線
L21 アナログ通信線
L22 デジタル通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号入出力用のデジタル端子、アナログ信号入出力用のアナログ端子、およびcan通信用のcan通信端子をそれぞれ有し、制御対象物に駆動指令に対応した制御信号を出力する少なくとも第1および第2の制御装置と、
前記can通信端子を介して前記第1および第2の制御装置を接続してなる第1の通信系統と、
前記デジタル端子および前記アナログ端子を介して前記第1および第2の制御装置を接続してなる第2の通信系統と、
前記第1の通信系統と前記第2の通信系統の正常/異常を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1の通信系統が正常と判定されると、前記第1の通信系統を介した前記駆動指令に対応する信号に基づき前記制御対象物に制御信号を出力し、前記第1の通信系統が異常かつ前記第2の通信系統が正常と判定されると、前記第2の通信系統を介した前記駆動指令に対応する信号に基づき前記制御対象物に制御信号を出力するように前記第1および第2の制御装置からの信号出力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記制御手段は、前記デジタル端子を介して前記制御対象物を特定するための第1の信号を出力し、その特定された制御対象物に前記アナログ端子を介して前記駆動指令に対応する第2の信号を出力するように前記第1および第2の制御装置からの信号出力を制御することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の制御装置において、
前記制御手段は、前記デジタル端子を介して前記第1の信号が出力された後に、前記アナログ端子を介して前記第2の信号を出力するように前記第1および第2の制御装置からの信号出力を制御することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
バックアップモードのオンオフを選択するモード選択手段を有し、
前記モード選択手段によりバックアップモードのオンが選択されたときは、前記判定手段により前記第1の通信系統が異常かつ前記第2の通信系統が正常と判定されると、前記第2の通信系統を介した信号に基づき制御信号を出力し、
前記バックアップモードのオフが選択されたときは、前記第1の通信系統が異常と判定されると、前記第2の通信系統が正常であっても、前記第2の通信系統を介した信号に基づく制御信号の出力を停止するように前記第1および第2の制御装置からの信号出力を制御することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
前記第2の通信系統を介した信号に基づき制御信号を出力していることを報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする建設機械の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−170258(P2010−170258A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10986(P2009−10986)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】