説明

建設機械の操縦席および建設機械

【課題】操縦席内における空間の制約を低減させることができる建設機械の操縦席および建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械の操縦席は、オペレーターが座るシート部4と、第1スライド機構5と、載置台6と、第1操作部材7とを備える。第1スライド機構5は、シート部4を支持すると共に、シート部4を前後方向に移動可能にする解放状態と、前後方向に沿った所望の位置にシート部4をロックするロック状態とに切替可能である。載置台6は、第1スライド機構5を介してシート部4が載置される部分である。第1操作部材7は、載置台6に設けられており、第1スライド機構5の解放状態とロック状態とを切り替える部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の操縦席および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルやブルドーザーなどの建設機械の操縦席には、オペレーターが座るシート部が設けられており、このシート部は、スライド機構によって支持されている。このスライド機構は、所定のスライド方向にシート部を移動させることができ、オペレーターは、スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える操作部材を操作することによって、シート部を所望の位置にセットすることができる(特許文献1参照)。
【0003】
この操作部材は、例えば、シート部の下面に設けられており、オペレーターは、シート部に着席した状態で操作部材を上方に引き上げることによってスライド機構を解放状態とする。そして、シート部を前後方向に移動させ、シート部が所望の位置に配置された状態で操作部材を元の状態に戻す。これにより、シート部が移動不能となり、所望の位置に固定される。
【特許文献1】特開2005−96746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような建設機械の操縦席では、操作部材はシート部に設けられるため、シート部の移動と共に操作部材も移動する。従って、操作部材が操縦席内の他の部材と干渉することを防止するために、操縦席内において操作部材が移動できる空間を確保する必要が生じ、操縦席内の他の部材や操作部材自身の配置が制限される恐れがある。また、操作部材が移動できる空間を十分に確保できない場合には、操作部材の操作が行い難くなってしまう。例えば、操作部材がシート部の下面前側に設けられる場合、シート部を前方に移動させると、操作部材もシート部と共に前方に移動する。このため、操作部材と、操縦席のオペレーターの足下前方の内壁部との間が狭くなり、操作部材を操作し難くなる。また、この場合、オペレーターの足を置く空間が狭くなってしまうという問題もある。
【0005】
本発明の課題は、操縦席内における空間の制約を低減させることができる建設機械の操縦席および建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る建設機械の操縦席は、オペレーターが座るシート部と、第1スライド機構と、載置部と、第1操作部材とを備える。第1スライド機構は、シート部を支持すると共に、シート部を所定のスライド方向に移動可能にする解放状態と、スライド方向に沿った所望の位置にシート部を固定するロック状態とに切替可能である。載置部は、第1スライド機構を介してシート部が載置される部分である。第1操作部材は、載置部に設けられており、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える部材である。
【0007】
この建設機械の操縦席では、第1操作部材がシート部ではなく載置部に設けられているため、シート部が移動させる際に第1操作部材が一緒に移動しない。このため、第1操作部材を大きく移動させる必要がない。これにより、この建設機械の操縦席では、第1操作部材がシート部に設けられる場合と比べて、操縦席内における空間の制約を低減させることができる。
【0008】
第2発明に係る建設機械の操縦席は、第1発明の建設機械の操縦席であって、第1操作部材は、スライド方向と直交する平面に沿って回動されることによって、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える。
【0009】
この建設機械の操縦席では、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替えるための第1操作部材の操作は、スライド方向と直交する平面に沿って回動させることによって行われる。このため、第1操作部材をスライド方向に殆ど移動させずに操作することができる。これにより、操縦席内におけるシート部のスライド方向の空間の制約をより低減させることができる。
【0010】
第3発明に係る建設機械の操縦席は、第1発明の建設機械の操縦席であって、第1操作部材は、スライド方向に交差する方向に操作されることによって、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える。
【0011】
この建設機械の操縦席では、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替えるための第1操作部材の操作は、スライド方向に交差する方向に操作されることによって行われる。このため、第1操作部材をスライド方向に殆ど移動させずに操作することができる。これにより、操縦席内におけるシート部のスライド方向の空間の制約をより低減させることができる。
【0012】
第4発明に係る建設機械の操縦席は、第1発明から第3発明のいずれかの建設機械の操縦席であって、第1スライド機構は、一対の固定レールと、一対の可動レールと、一対のロック部材と、連結部材とを有する。一対の固定レールは、載置部に固定されており、スライド方向と直交する方向に距離を隔てて配置される。一対の可動レールは、シート部に固定されており、一対の固定レールに対して摺動可能にそれぞれ設けられる。一対のロック部材は、一対の可動レールにそれぞれ設けられ、可動レールを固定レールに対して移動不能にするロック位置と、可動レールを固定レールに対して移動可能にする解放位置とに移動可能な部材である。連結部材は、一対のロック部材を連結する部材である。そして、第1操作部材は、連結部材を押圧することによってロック部材を移動させ、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える。
【0013】
この建設機械の操縦席では、連結部材と第1操作部材とが、それぞれシート部側と載置部側とに分けて設けられ、第1操作部材の操作が連結部材を介してロック部材に伝達されることによって、第1スライド機構の解放状態とロック状態とが切り替えられる。このため、載置部側に設けられた第1操作部材によって、第1スライド機構の解放状態とロック状態とを容易に切り替えることができる。
【0014】
第5発明に係る建設機械の操縦席は、第1発明から第4発明のいずれかの建設機械の操縦席であって、シート部は、シート本体と、第2スライド機構と、第2操作部材と、可動コンソール台とを有する。第2スライド機構は、シート本体を支持すると共に、シート本体をスライド方向に移動可能にする解放状態と、スライド方向に沿った所望の位置にシート本体を固定するロック状態とに切替可能である。第2操作部材は、第2スライド機構の解放状態とロック状態とを切り替える部材である。可動コンソール台は、第2スライド機構を介してシート本体が載置される部材である。また、第1スライド機構は、可動コンソール台を支持する。載置部は、操縦席の床面に固定されている。そして、第1操作部材は、載置部からスライド方向に突出するように設けられている。
【0015】
この建設機械の操縦席では、第1スライド機構によって、可動コンソール台とシート本体とを含めたシート部全体の位置調整が可能であるだけではなく、第2スライド機構によって、シート本体の可動コンソール台に対する位置調整も可能である。このため、オペレーターの着席位置をより細かく調整することができる。
【0016】
また、シート本体が可動コンソール台に対して移動可能である場合、第1操作部材の上方をシート本体が通過することがあるため、第1操作部材を低い位置に配置することが望ましい。この場合、第1操作部材の全体が載置部上に位置するように設けられていると、第1操作部材と載置部との間が狭くなり、オペレーターの指を挿入し難くなるなどして第1操作部材の操作が行い難くなる恐れがある。
【0017】
しかし、この建設機械の操縦席では、第1操作部材は、載置部からスライド方向に突出するように設けられている。このため、第1操作部材を低い位置に設けても第1操作部材の下方の空間に余裕があるため、第1操作部材を容易に操作することができる。また、この建設機械の操縦席では、第1操作部材はシート部と共にスライド方向に移動しないため、第1操作部材が載置部からスライド方向に突出するように設けられても、第1操作部材からスライド方向に位置する空間を過度に狭めることはない。
【0018】
第6発明に係る建設機械は、第1発明から第5発明のいずれかの建設機械の操縦席を備える。
【0019】
この建設機械では、第1操作部材がシート部ではなく載置部に設けられているため、シート部が移動させる際に第1操作部材が一緒に移動しない。このため、第1操作部材を大きく移動させる必要がない。これにより、この建設機械では、第1操作部材がシート部に設けられる場合と比べて、操縦席内における空間の制約を低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、第1操作部材がシート部ではなく載置部に設けられているため、シート部が移動させる際に第1操作部材が一緒に移動しない。このため、第1操作部材を大きく移動させる必要がない。これにより、第1操作部材がシート部に設けられる場合と比べて、操縦席内における空間の制約を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<第1実施形態>
〔構成〕
本発明の第1実施形態に係る建設機械1を図1に示す。この建設機械1には運転室2が設けられており、運転室2の内部には、図2に示すような操縦席3が設けられている。この操縦席3は、シート部4と、第1スライド機構5と、載置台6と、第1操作部材7とを備える。
【0022】
〈シート部4〉
シート部4は、オペレーターが座るシート本体8と、第2スライド機構9と、第2操作部材10と、可動コンソール台11とを有する。
【0023】
シート本体8は、座面部12と背面部13とを有しており、座面部12の下方に配置された調整レバー14を操作することによって、座面部12の高さや背面部13の傾斜角度の調整が可能である。
【0024】
第2スライド機構9は、シート本体8の前後位置を調整可能とする機構である。第2スライド機構9は、シート本体8の下方に設けられており、シート本体8と可動コンソール台11との間に設けられている。第2スライド機構9は、シート本体8を支持すると共に、シート本体8を前後方向(スライド方向)に移動可能にする解放状態と、前後方向に沿った所望の位置にシート本体8を固定するロック状態とに切替可能である。第2スライド機構9は、図3に示すように、一対の固定レール15a,15bと、一対の可動レール16a,16bと、一対のロック部材(図示せず)とを有する。
【0025】
一対の固定レール15a,15bは、それぞれ前後方向に長い形状を有する部材であり、ボルト等の固定手段によって可動コンソール台11の上面に固定されている。固定レール15a,15bは、左右方向に距離を隔てて互いに平行に配置されている。また、各固定レール15a,15bの左右方向の内側側面には、図6の凹溝25と同様の複数の凹溝が前後方向に並んで設けられている。
【0026】
一対の可動レール16a,16bは、それぞれ前後方向に長い形状を有する部材であり、ボルト等の固定手段によってシート本体8の下面に固定されている。可動レール16a,16bは、固定レール15a,15bに対応して配置されており、左右方向に距離を隔てて互いに平行に配置されている。可動レール16a,16bは、固定レール15a,15bに対してスライド可能に組み合わされている。可動レール16a,16bは、可動レール16a,16bの内側面に設けられたロック部材によって固定レール15a,15bに対して移動不能とされる。
【0027】
第2操作部材10は、ロック部材を移動させて第2スライド機構9の解放状態とロック状態とを切り替えるための部材である。第2操作部材10は、上面視において、前方に凸に屈曲したU字型の形状を有している。第2操作部材10の両端部10a,10bは、第2スライド機構9に沿って前後方向に延びて設けられており、一対のロック部材にそれぞれ連結されている。第2操作部材10の両端部10a,10bの間の中央部分は、座面部12の前端部の下方に位置し、左右方向に概ね平行になっており、オペレーターがシート本体8の位置調整をする際に把持する把持部10cとなっている。第2操作部材10は、ロック部材に連結された部分を支点として揺動して把持部10cが上下方向に移動可能なように設けられている(図3の矢印A1,A2参照)。第2操作部材10が操作されていない基本状態では、ロック部材が固定レール15a,15bの凹溝に嵌合しており、可動レール16a,16bが移動不能となっている。この基本状態から把持部10cが上方に移動することによって、ロック部材のロックが外れ、可動レール16a,16bが移動可能となる。
【0028】
可動コンソール台11は、第2スライド機構9を介してシート本体8が載置される部材である。可動コンソール台11には、シート本体8以外にも、建設機械1の操作に必要な運転操作レバーや機器類の操作部などが設けられるコンソール19が載置されている(図2参照)。可動コンソール台11は、コンソール19が載置される底板部17と、底板部17上に取り付けられ、第2スライド機構9の固定レール15a,15bが固定されるシート本体取付部材18とを有している。
【0029】
〈第1スライド機構5〉
第1スライド機構5は、可動コンソール台11を含めたシート部4の前後位置を調整可能とする機構である。第1スライド機構5は、可動コンソール台11の下方に設けられており、可動コンソール台11と載置台6との間に設けられている。第1スライド機構5は、可動コンソール台11を支持することによりシート部4を支持すると共に、シート部4を前後方向に移動可能にする解放状態と、前後方向に沿った所望の位置にシート部4を固定するロック状態とに切替可能である。
【0030】
図4および図5に、第1スライド機構5、載置台6および第1操作部材7の構造を示す。図4は、第1スライド機構5、載置台6および第1操作部材7を斜め上方から見た斜視図であり、図5は上面図である。なお、図4及び図5では、理解の容易のために、シート部4などの他の部材は省略している。第1スライド機構5は、一対の固定レール21a,21bと、一対の可動レール22a,22bと、一対のロック部材23a,23bと、連結部材24とを有する。
【0031】
一対の固定レール21a,21bは、それぞれ前後方向に長い形状を有する部材であり、ボルト等の固定手段によって載置台6の上面に固定されている。固定レール21a,21bは、シート部4のスライド方向と直交する方向、すなわち左右方向に距離を隔てて互いに平行に配置されている。また、図6に示すように、各固定レール21a,21bの左右方向の内側側面には、複数の凹溝25が前後方向に並んで設けられている。なお、図6では、固定レール21a、可動レール22a、ロック部材23aが図示されているが、固定レール21b、可動レール22b、ロック部材23bも左右対称の同様の部材である。
【0032】
一対の可動レール22a,22bは、それぞれ前後方向に長い形状を有する部材であり、ボルト等の固定手段によって可動コンソール台11の下面に固定されている(図3参照)。可動レール22a,22bは、固定レール21a,21bに対応して左右方向に距離を隔てて互いに平行に配置されており、固定レール21a,21bに組み合わされている。可動レール22a,22bは、固定レール21a,21bに対して前後方向に摺動してスライド可能に設けられている。また、可動レール22a,22bは、ロック部材23a,23bによって、固定レール21a,21bに対して移動不能とされる。
【0033】
一対のロック部材23a,23bは、一対の可動レール22a,22bにそれぞれ設けられており、可動レール22a,22bを固定レール21a,21bに対して移動不能にするロック位置と、可動レール22a,22bを固定レール21a,21bに対して移動可能にする解放位置とに移動可能な部材である。ロック部材23a,23bは、可動レール22a,22bの内側面に沿って設けられており、支点26aを中心に回動可能に可動レール22a,22bに取り付けられている。ロック部材23a,23bの外側面には外方に突出する爪部(図示せず)が設けられており、爪部はロック部材23a,23bが回動することによって上下方向に移動する。ロック部材23a,23bの爪部が固定レール21a,21bの凹溝25に嵌合する位置がロック位置であり、爪部が凹溝25から外れる位置が解放位置である。ロック部材23a,23bが回動して固定レール21a,21bの凹溝25に嵌合することによって可動レール22a,22bが固定レール21a,21bに対して移動不能となる。また、ロック部材23a,23bが上記と逆方向に回動することによって、爪部と凹溝25との嵌合が解かれ、ロック部材23a,23bがロック位置から解放位置に移動する、これにより、可動レール22a,22bが固定レール21a,21bに対して移動可能となる。ロック部材23a,23bには、図示しない付勢部材が取り付けられており、ロック部材23a,23bは付勢部材によってロック位置方向に付勢されている。
【0034】
連結部材24は、一対のロック部材23a,23bを連結する部材であり、前方に凸に屈曲したU字型の形状を有する。連結部材24の両端部24a,24bは、前後方向に平行に第1スライド機構5に沿って設けられており、一対のロック部材23a,23bにそれぞれ連結されている。連結部材24の中央部分24cは、一対の可動レール22a,22bの間に亘って設けられており、図5に示すように後方へ凸に緩やかに湾曲している。また、この中央部分24cには補強用のリブ27が設けられている。連結部材24は、ロック部材23a,23bと共にロック部材23a,23bの支点26aを中心に揺動して中央部分24cが上下方向に移動可能なように設けられている。連結部材24の中央部分24cが上方に移動することによって(図4の矢印A3参照)、ロック部材23a,23bが解放位置に移動し、可動レール22a,22bが移動可能となる。また、連結部材24の中央部分24cが下方に移動することによって(図4の矢印A4参照)、ロック部材23a,23bがロック位置に移動し、可動レール22a,22bが移動不能となる。
【0035】
〈載置台6〉
載置台6は、操縦席3の床面33に固定されており、第1スライド機構5を介してシート部4が載置される部分である。載置台6は、エアコンなどの装置が収容される空間が内部に設けられた箱形の部材である。載置台6の前端部6aは操縦席3の前壁部3aから後方に距離を隔てて配置されており(図7参照)、載置台6の前端部6aと操縦席3の前壁部3aとの間はオペレーターの足が置かれる空間となっている。
【0036】
〈第1操作部材7〉
第1操作部材7は、載置台6に設けられており、第1スライド機構5の解放状態とロック状態とを切り替える部材である。第1操作部材7は、図4及び図5に示すように、L字型に屈曲した形状を有しており、軸部7aと、軸部7aの側面に固定された当接部材7bと、軸部7aの前端に約90度の角度で繋がった把持部7cとを有する。
【0037】
軸部7aは、前後方向に沿って配置されており、一対の固定部材28a,28bによって前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に載置台6の上面に固定されている。また、軸部7aは、連結部材24の下方に配置されており、一対の固定部材28a,28bは、連結部材24を間に挟んで前後方向に距離を隔てて配置されている。
【0038】
当接部材7bは、前後方向に延びる細長い板状の部材であり、軸部7aと共に回動して、連結部材24を上方に押圧することができる。
【0039】
把持部7cは、前後方向と直交する平面に沿って配置されており、軸部7aが軸線を中心に回転可能に設けられていることにより、把持部7cは、軸部7aとの接続部分を中心に前後方向と直交する平面に沿って回動可能となっている(図3および図4の矢印A5,A6参照)。第1操作部材7は、載置台6の前端部6aから前方に突出して設けられており、把持部7cは、載置台6の前端部6aよりも前方に位置している。
【0040】
なお、第1操作部材7の軸部7aの後端部には、付勢部材29が設けられており、当接部材7bが下方へ移動する方向に軸部7aを付勢している。また、第1操作部材7が付勢部材29によって付勢されることにより、把持部7cが操作されていない状態において、把持部7cのガタツキや、第1操作部材7の前後方向のガタツキが防止されている。
【0041】
〔着席位置調整時の操作〕
この建設車両の操縦席3では、オペレーターが着席位置を調整する場合、シート本体8を可動コンソール台11に対して移動させるシート本体8の位置調整と、可動コンソール台11およびシート本体8を含むシート部4を載置台6に対して移動させるシート部4の位置調整との2種類の位置調整を行うことができる。以下、主として図7に基づいて、各位置調整時の操作内容について説明する。
【0042】
〈シート本体8の位置調整時の操作〕
シート本体8の位置調整の場合、オペレーターは、座面部12の前端部の下方に位置する第2操作部材10の把持部10cを持って上方に引き上げる(矢印A1参照)。これにより、ロック部材が解放位置に移動して、可動レール16a,16bが固定レール15a,15bに対してスライド可能となり、シート本体8が前後方向に移動可能となる。シート本体8は、可動コンソール台11の前端よりも前方まで移動可能となっている。なお、図7では、可動レール16aおよび固定レール15aが記載されているが、可動レール16bおよび固定レール15bについても同様である。
【0043】
オペレーターは、第2操作部材10と共にシート本体8を前後方向に移動させて(矢印A6参照)、所望の位置に配置した状態で把持部10cを下方に降ろす(矢印A2参照)。これにより、ロック部材がロック位置に移動して、可動レール16a,16bが固定レール15a,15bに対してスライド不能となり、シート本体8が固定される。なお、図7(b)は、図7(a)の状態からシート本体8を前方に移動させた状態を示している。
【0044】
以上のようにして、シート本体8の位置調整が行われる。オペレーターは、シート本体8の位置調整を行うことにより、操縦席3におけるシート本体8の位置調整だけではなくコンソール19に対するシート本体8の位置調整も行うことができる。
【0045】
〈シート部4の位置調整時の操作〕
次に、シート部4の位置調整の場合、オペレーターは、可動コンソール台11より下方に位置し且つ載置台6の前端部6aよりも前方に位置する第1操作部材7の把持部7cを握って前後方向に直交する平面内で回動させ、上方へ移動させる(矢印A5参照)。把持部7cが回動すると軸部7aが前後方向に伸びる軸線を中心に回転し、軸部7aの回転と共に、図4に示す当接部材7bも回転して上方へ移動する。当接部材7bは上方へ移動することにより、連結部材24を押圧して連結部材24を上方へ押し上げる(図4の矢印A3参照)。連結部材24が上方へ押し上げられるとロック部材23a,23bが解放位置に移動して第1スライド機構5が解放状態となる。これにより、シート部4が前後方向に移動可能となる。なお、上述したように、連結部材24は後方へ凸に緩やかに湾曲しているため、第1操作部材7の前側の固定部材28aと干渉し難くなっており、シート部4の前方への可動量が増大している。シート部4は、第1操作部材7の把持部7cよりも前方まで移動可能となっている。
【0046】
オペレーターは、シート部4を前後方向に移動させて(矢印A7参照)、所望の位置に配置した状態で把持部7cを逆方向に回動させ、下方へ移動させる(矢印A6参照)。把持部7cが逆方向に回動すると当接部材7bも逆方向に回動して下方へ移動し、これに伴って連結部材24も下方へと移動する(図4の矢印A4参照)。連結部材24が下方へと移動するとロック部材23a,23bがロック位置に移動して第1スライド機構5がロック状態となり、シート部4が固定される。なお、図7(b)は、図7(a)の状態からシート部4を前方に移動させた状態を示している。
【0047】
以上のようにして、シート部4の位置調整が行われる。オペレーターは、シート部4の位置調整を行うことにより、操縦席3におけるシート本体8の位置調整だけではなくコンソール19の位置調整も行うことができる。
【0048】
また、シート部4の位置調整とシート本体8の位置調整とを併せて行うことにより、オペレーターの着席位置をより細かく調整することが可能である。
【0049】
〔特徴〕
この建設機械1の操縦席3では、シート部4の位置調整の際に操作される第1操作部材7が載置台6の前端部6aから前方に突出して設けられており、第1操作部材7の把持部7cは載置台6の前端部6aより前方に位置している。このため、第1操作部材7が載置台6から突出しておらず把持部7cが載置台6上に位置している場合と比べて、把持部7cを操作する際に把持部7cを把持しやすくなっている。このため、第2操作部の操作が容易である。
【0050】
また、第1操作部材7の把持部7cが載置台6の前端部6aより前方に位置しているため、第1操作部材7の位置を低くして第1操作部材7と載置台6の上面との隙間が小さくなっても、第1操作部材7の操作性に悪影響を与えることがない。このため、第1操作部材7の操作性を悪化させることなく第1操作部材7の位置を低くすることができ、シート本体8と第1操作部材7の把持部7cとの干渉を容易に回避することができる。
【0051】
さらに、第1操作部材7は載置台6に設けられているため、シート部4が前後方向に移動しても第1操作部材7は前後方向に移動しない。また、第1操作部材7の操作方向も前後方向ではなく前後方向に直交する平面に沿った方向である。このため、第1操作部材7が載置台6の前端部6aから前方に突出していても、それ以上前方に移動することはなく、オペレーターの足下の空間を狭める恐れがない。また、第1操作部材7が操縦席3の前壁部3aに干渉する恐れもない。
【0052】
以上のように、この建設機械1の操縦席3では、第1操作部材7がシート部4ではなく載置台6に設けられることにより、操縦席3内における空間の制約を低減させることができる。
【0053】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る建設機械1の操縦席3は、図8に示す第1操作部材30を備えている。この第1操作部材30は、把持部30cが上下方向に操作されることによって第1スライド機構5の解放状態とロック状態とが切り替えられる。
【0054】
第1操作部材30は、U字型に屈曲した形状を有しており、互いに平行に前後方向に沿って配置された一対の軸部30a,30bと、軸部30a,30bの前端を繋ぐ把持部30cとを有する。軸部30a,30bの後端は、後端を支点として第1操作部材30が上下方向に揺動可能なように、一対の固定部材31a,31bによって載置台6の上面に回動可能に固定されている。このため、第1操作部材30が揺動することによって、把持部30cが上下に移動可能となっている。第1操作部材30は、載置台6の前端部6aから前方に突出して配置されており、把持部30cは、載置台6の前端部6aよりも前方に位置している。第1操作部材30の軸部30a,30bの後端は、連結部材24の後方に位置している。また、第1操作部材30は連結部材24の下方に位置している。
【0055】
他の構成については第1実施形態と同様である。
【0056】
この建設機械1の操縦席3では、シート部4の位置調整が行われる場合、オペレーターは、第1操作部材30の把持部30cを握って上方に引き上げる。把持部30cが上方に移動すると、第1操作部材30の軸部30a,30bが上方へと移動し、連結部材24を押圧して連結部材24を上方へ押し上げる。連結部材24が上方へ押し上げられるとロック部材23a,23bが解放位置に移動して第1スライド機構5が解放状態となる(図4参照)。これにより、シート部4が前後方向に移動可能となる。オペレーターは、シート部4を前後方向に移動させて、所望の位置に配置した状態で把持部30cを下方に降ろす。把持部30cが下方に移動すると、第1操作部材30の軸部30a,30bも下方へと移動し、これに伴って連結部材24も下方へと移動する。連結部材24が下方へと移動するとロック部材23a,23bがロック位置に移動して第1スライド機構5がロック状態となり、シート部4が固定される。
【0057】
この建設機械1の操縦席3においても、第1操作部材30が載置台6に設けられており、また、第1操作部材30の操作方向は、前後方向ではなく上下方向である。このため、第1実施形態に係る建設機械1の操縦席3と同様に、操縦席3内における空間の制約を低減させることができる。
【0058】
<他の実施形態>
(1)
上記の実施形態では、第1操作部材7,30は、前後方向に直交する平面内において回動したり、上下方向に移動するように操作されているが、第1操作部材7,30の操作方向はこれらに限らず、前後方向に交差する方向に操作されればよい。例えば、第1操作部材7,30が左右方向に操作されてもよい。
【0059】
また、第1操作部材7,30が、前後方向にシート部4の移動量と比べて僅かな距離だけ移動することによって、第1操作部材7,30の操作が行われてもよい。例えば、第1操作部材7,30が前方に僅かに引き出されることによって第1スライド機構5が解放状態となり、第1操作部材7,30が後方に僅かに押し戻されることによって第1スライド機構5がロック状態となってもよい。この場合も、第1操作部材7,30がシート部4と共に移動する場合と比べて、操縦席3内における空間の制約を低減させることができる。
【0060】
(2)
上記の実施形態では、シート部4の位置調整とシート本体8の位置調整との2種類の位置調整が可能であるが、シート部4の位置調整のみが可能な建設機械1の操縦席3に本発明が適用されてもよい。この場合も、操縦席3内における空間の制約を低減させることができる。
【0061】
また、シート本体8の位置調整のみが可能な建設機械1の操縦席3に本発明が適用されてもよい。すなわち、第1操作部材7および第1スライド機構5がシート本体8の位置調整を行うために設けられることによっても、シート本体8の前方の空間の余裕を増大させることができる。
【0062】
ただし、シート部4とシート本体8との両方の位置調整が可能な建設機械1の操縦席3においては、操縦席3内における空間の制約が大きくなり易いため、本発明がより有効である。
【0063】
(3)
上記の実施形態では、載置台6(載置部)は操縦席3の床面33上に設けられた部材であるが、操縦席3の床面33が載置部として用いられてもよい。すなわち、第1操作部材7および固定レール21a,21bが操縦席3の床面33に取り付けられてもよい。この場合も、上記の実施形態と同様に、シート本体8の前方の空間の余裕を増大させることができる。ただし、第1操作部材7の操作性を容易にする観点からは上記の実施形態のように、載置台6が操縦席3の床面33上に設けられた部材であり、第1操作部材7が載置台6の前端部6aから突出するように設けられることが、より望ましい。
【0064】
(4)
上記の実施形態では、シート部4およびシート本体8のスライド方向は前後方向であるが、左右方向など他の方向であってもよい。
【0065】
(5)
第1実施形態において、把持部7cは水平位置よりも下方に回動した状態を取りうるが(図3参照)、把持部7cは操作されていない状態において水平となるように設けられてもよい。また、把持部7cはバネ等によって水平に保持されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、操縦席内における空間の制約を低減させることができる効果を有し、建設機械の操縦席および建設機械として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】建設機械の外観図。
【図2】操縦席の正面図。
【図3】操縦席の一部の拡大図。
【図4】第1スライド機構、載置台および第1操作部材の構造を表す斜視図。
【図5】第1スライド機構、載置台および第1操作部材の構造を表す上面図。
【図6】第1スライド機構の構造を示す斜視図。
【図7】シート部およびシート本体の位置調整時の移動を示す側面断面図。
【図8】第2実施形態に係る第1スライド機構、載置台および第1操作部材の構造を表す上面図。
【符号の説明】
【0068】
1 建設機械
3 操縦席
4 シート部
5 第1スライド機構
6 載置台(載置部)
7,30 第1操作部材
8 シート本体
9 第2スライド機構
10 第2操作部材
11 可動コンソール台
21a,21b 固定レール
22a,22b 可動レール
23a,23b ロック部材
24 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーターが座るシート部と、
前記シート部を支持すると共に、前記シート部を所定のスライド方向に移動可能にする解放状態と前記スライド方向に沿った所望の位置に前記シート部を固定するロック状態とに切替可能な第1スライド機構と、
前記第1スライド機構を介して前記シート部が載置される載置部と、
前記載置部に設けられ、前記第1スライド機構の前記解放状態と前記ロック状態とを切り替える第1操作部材と、
を備える建設機械の操縦席。
【請求項2】
前記第1操作部材は、前記スライド方向と直交する平面に沿って回動されることによって、前記第1スライド機構の前記解放状態と前記ロック状態とを切り替える、
請求項1に記載の建設機械の操縦席。
【請求項3】
前記第1操作部材は、前記スライド方向に交差する方向に操作されることによって前記第1スライド機構の前記解放状態と前記ロック状態とを切り替える、
請求項1に記載の建設機械の操縦席。
【請求項4】
前記第1スライド機構は、
前記載置部に固定され、前記スライド方向と直交する方向に距離を隔てて配置される一対の固定レールと、
前記シート部に固定され、一対の前記固定レールに対して摺動可能にそれぞれ設けられる一対の可動レールと、
一対の前記可動レールにそれぞれ設けられ、前記可動レールを前記固定レールに対して移動不能にするロック位置と、前記可動レールを前記固定レールに対して移動可能にする解放位置とに移動可能な一対のロック部材と、
一対の前記ロック部材を連結する連結部材と、
を有し、
前記第1操作部材は、前記連結部材を押圧することによって前記ロック部材を移動させ、前記第1スライド機構の前記解放状態と前記ロック状態とを切り替える、
請求項1から3のいずれかに記載の建設機械の操縦席。
【請求項5】
前記シート部は、
シート本体と、
前記シート本体を支持すると共に、前記シート本体を前記スライド方向に移動可能にする解放状態と前記スライド方向に沿った所望の位置に前記シート本体を固定するロック状態とに切替可能な第2スライド機構と、
前記第2スライド機構の前記解放状態と前記ロック状態とを切り替える第2操作部材と、
前記第2スライド機構を介して前記シート本体が載置される可動コンソール台と、
を有し、
前記第1スライド機構は、前記可動コンソール台を支持し、
前記載置部は、前記操縦席の床面に固定されており、
前記第1操作部材は、前記載置部から前記スライド方向に突出するように設けられている、
請求項1から4のいずれかに記載の建設機械の操縦席。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の前記操縦席を備える建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−326469(P2007−326469A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159262(P2006−159262)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】