説明

建設機械の油圧制御弁

【課題】タンデム通路とパラレル通路からチェック弁を介して圧油が供給されるタイプの油圧制御弁に内蔵されたチェック弁の弁体の高速回転を阻止する油圧制御弁を提供する。
【解決手段】チェック弁ユニットCHは本体6と第1チェック弁4の弁体4aとから構成される。O−リング溝6aの右側に絞り3が設けられている。前記本体側には油圧制御弁のケーシングに固定するため外周部にネジ部dを形成した円筒状の収納部6bが形成される。この収納部内周面には軸方向に溝8が形成されている。一方、第1チェック弁4の弁体にはリブ7が設けられており組付けの際このリブ7は本体の溝8へ矢視のように挿入される。弁体が本体に組みつけられて前記ケーシングに固定されると同弁体は圧油通路4bの位相ずれなどの不均衡があっても溝に嵌まり込んだリブすなわち、弁体は軸方向に摺動可能であるが回転は阻止されるので弁体の着座部分のケーシングを磨耗することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に使用される油圧制御弁に係り、特に同制御弁に内蔵されるチェック弁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械例えば油圧ショベルにおいては、通常、ブームやアーム、ショベルなどを駆動する油圧シリンダと、旋回台、走行用キャタピラまたは車両を駆動する油圧モータを備えている。これら油圧アクチュエータには、それぞれ、旋回台に搭載された制御弁ユニットの各油圧制御弁を介して油圧ポンプから所用の圧油が供給されるようになっている。
【0003】
ところで、前記制御弁ユニットには、特許文献1の図1に示されるように、センタバイパス通路34を介してタンデムに接続された切換弁k1、k2、k3が設けられており、切換弁k2、k3にはパラレルライン32を介してチェック弁が設けられている。また、切換弁k2、k3にはこれら各チェック弁の下流側でセンタバイパス通路34との間に別のチェック弁が設けられている。
【0004】
本願の図2は、前記特許文献1の図1の油圧回路部分である制御弁6を参照し本願発明に関係する部分についてのみ簡略化して示す。なお、以下の説明では特許文献1中の切換弁に相当するものを油圧制御弁、制御弁に相当するものを制御弁ユニットとそれぞれ呼称する。
【0005】
図2において、3個の油圧制御弁VL1〜VL3がタンデム接続されている。可変吐出ポンプVPMから吐出される圧油はタンデム通路2に与えられると共にバイパス通路1を介してパラレルに絞り3、チェック弁5を経てタンデム通路2からの分岐通路に設けられたチェック弁4と合流して油圧制御弁VL2のポートPT2へ与えられる。油圧制御弁VL3についても同様な回路構成である。
【0006】
同図2の構成は、負荷の小さい油圧アクチュエータと負荷の大きい油圧アクチュエータを同時に駆動可能とするものであって、絞り3は負荷の大きさに応じて定められる。また、チェック弁4はタンデム通路2への逆流を防ぎ、チェック弁5はパラレル通路1への逆流を防ぐものである。
【0007】
図3は、前記油圧制御弁VL2の構造の要部を示す。同図3において、油圧制御弁VL2は、そのケーシングCS内部を貫通する孔にスプールSprが配置されている。参照符号a、bはスプールSprの位置を制御する圧油ポートである。図の中央部に設けられた通路イ、ロは、前記スプールSprの位置に応じてタンデム通路2またはバイパス通路2から供給されるポンプからの圧油をポートAPTまたはBPTへ供給する分岐通路を構成している。この圧油の分岐操作はチェック弁ユニットCHにより行われる。
【0008】
チェック弁ユニットCHは、その本体6の上部に絞り3が形成されその下部には開口部cが形成されその外周部はケーシングCSに取り付けられるためのネジ部dが設けられている。
【0009】
チェック弁ユニットCH下部の開口部cには、タンデム通路2に対向し、図示ではケーシングCSのシート面に着座している下向きの第1弁体4aを有する第1チェック弁4と、同第1チェック弁4内に摺動可能に収納された上向きの第2弁体5aを有する第2チェック弁5が収納されている。すなわち、油圧制御弁としての構造のコンパクト化を図るため、2つのチェック弁を結合した構造になっている。
【0010】
なお、前記各弁体4a、5aは図示しないバネにより下方および上方へ付勢されている。
【0011】
断面A−Aで示すように、第1チェック弁4は断面外周が略四角形状であってチェック弁ユニットCHの円筒状下部との間の符号4bはバイパス通路1からの圧油を通路イまたはロへ導く通路を構成している。
【0012】
しかしながら、図3に示される従来の構造では以下のような問題がある。
【0013】
すなわち、前記通路4bを通る圧油は絞り3の機械加工誤差に伴う位相のずれや、第1チェック弁4の下流の流路形状等に起因する第1チェック弁4回りの流体力の不均衡により第1チェック弁4が高速で回転し、さらに、第1弁体4aがケーシングCSの着座面に押し付けられているのでケーシング自体を磨耗させるという現象が起きていた。この磨耗は、ケーシングCSの材料が鋳物であり弁体4aは鋼材であるため特に着座面の油膜が切れた状態となると図3の下方へ進行し、油圧制御弁としての正常な機能を破壊するに到る恐れがある。また、第1弁体4aが高速で回転することにより、圧油の有するエネルギーが無駄に使用されていることになり、結果として作動油の発熱原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−155903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者等は、鋭意検討した結果、第1チェック弁の弁体の回転を阻止することによりこの問題が基本的に解決できることを見出した。
【0016】
従って、本発明の目的は、タンデム通路とパラレル通路からチェック弁を介して圧油が供給されるタイプの油圧制御弁に内蔵されたチェック弁の弁体の高速回転を阻止するようにした油圧制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明による油圧制御弁は、可変吐出ポンプに接続されたタンデム通路またはパラレル通路からの圧油を受け入れる油圧制御弁であって、同油圧制御弁のケーシングには、前記パラレル通路からの圧油が供給されている状態でタンデム通路との連通を遮断するよう作動する第1チェック弁の弁体を摺動可能且つ回転不能に収納するチェック弁ユニットが固定して内蔵されており、前記チェック弁ユニットの収納部内周面と前記弁体外周面との間には前記パラレル通路からの圧油通路が形成されていることを特徴とする。
【0018】
その場合、前記回転不能に収納するチェック弁ユニットとして、前記第1チェック弁の弁体外形面には摺動方向に所定長さのリブが設けられ、前記チェック弁ユニットの収納部内周面には前記リブを受け入れる溝を形成することができる。または、前記チェック弁ユニットの収納部内周面には所定長さのリブが設けられ、前記第1チェック弁の弁体外形面には前記リブを受け入れる溝を形成することも可能である。
【0019】
またそれらの場合、前記チェック弁ユニットには、前記パラレル通路から前記圧油通路への圧油の流動を遮断する第2チェック弁を設けることができる。
【0020】
さらにまた、前記第2チェック弁の弁体は、前記第1チェック弁の弁体内に摺動可能に収納されよう構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、油圧制御弁のケーシングにはパラレル通路からの圧油が供給されている状態でタンデム通路との連通を遮断するよう作動する第1チェック弁の弁体を摺動可能且つ回転不能に収納するチェック弁ユニットが固定して内蔵されており、前記チェック弁ユニットの収納部内周面と前記弁体外周面との間には前記パラレル通路からの圧油通路が形成されているので、前記圧油通路やその下流での圧油の流れの不均衡があっても前記弁体の回転は阻止されているのでケーシングの磨耗を可及的に少なくすることができ、圧油の有するエネルギーが無駄に使用されておらず、また作動油の発熱も起きない。更に、前記のように圧油通路を形成していることも相俟って、前記チェック弁ユニットが内蔵された油圧制御弁では、ケーシングCS内においてキャビテーションが起きないため、振動も騒音も発生しなく、内部破損もおきない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による油圧制御弁のケーシングに内蔵されるチェック弁ユニットの組み付け前の斜視図である。
【図2】タンデム通路とパラレル通路により接続された複数の油圧制御弁の一般的な回路図である。
【図3】従来の油圧制御弁のスプール軸方向断面図である。
【図4】本発明による油圧制御弁のケーシングに内蔵されるチェック弁ユニットの別形態の組み付け前の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施例について図1により詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明による油圧制御弁のケーシングに内蔵されるチェック弁ユニットの組み付け前の斜視図である。以下の説明では図3中の要素に対応する要素については同じ符号を用いるものとする。
【0025】
図1において、チェック弁ユニットCHは本体6と第1チェック弁4の弁体4aとから構成される。参照符号6aはO−リング溝である。参照符号3は絞りである。参照符号6bは、本体6を油圧制御弁VL2のケーシングCSに固定するため外周部にネジ部dが形成された円筒状の収納部であって、参照符号cはその内周側の開口部である。収納部6bの内周面には軸方向に溝8が形成されている。
【0026】
一方、第1チェック弁4の弁体4aは、リブ7、圧油通路4bを形成する平面状の側壁4c、及びチェック弁ユニットが開口した際にケーシングCSの着座面と接する着座部位4a3が設けられている。弁体4aが本体6に組付けられる際、このリブ7は本体6の溝8へ矢視のように挿入される。弁体4aが本体6の開口部c内に嵌合されることにより、弁体4aが本体6に組付けられることとなる。
【0027】
チェック弁ユニットが閉口した際には、弁体4aの着座部位4a3と収納部6bは当接する。圧油が通過できるように、弁体4aの側壁4cを設けている。部位4a2は本体6の開口部cより幅が小さく構成されている。弁体4は本体6内で摺動可能となるように構成されている。また、弁体4aのリブ7を設けている部位4a1は部位4a2より幅が小さく構成されている。部位4a3の幅の大きさは、本体6の開口部cの幅の大きさ以上である。弁体4aが本体6に組付けられてケーシングCSに固定されると弁体4aは圧油通路4bの位相ずれなどの不均衡があっても溝8に嵌まり込んだリブ7すなわち、弁体4aは軸方向に摺動可能であるが回転は阻止される。そのため、チェック弁ユニットが開口し、部位4a3とケーシングCSの着座面が当接した場合も、第1チェック弁の弁体4aは回転することがなくケーシングCSの着座面が摩耗することがなく、圧油の有するエネルギーが無駄に使用されておらず、また作動油の発熱が起きない。更に、前記のように圧油が通過できるように構成していることも相俟って、図1に示すようなチェック弁ユニットが内蔵された油圧制御弁では、ケーシングCS内においてキャビテーションが起きないため、振動も騒音も発生しなく、内部破損もおきない。
【0028】
以上本発明の好適実施例を説明したが、当業者であれば図1に開示された回転阻止手段を種々変形することが可能である。例えば、溝8とリブ7を円周上に等間隔で複数対設けるよう構成することも可能である。また、弁体4aが本体6内で摺動可能でかつ本体6内で圧油が通過可能な程度であれば、例えば部位4a1の幅は、部位4a2の幅と同じ又は部位4a2の幅より大きく構成することも可能である。
【0029】
また、図4に示すように、本体6の収納部内周面にリブ9を設け、弁体4aの外形面に溝10を設けるよう構成することも可能である。この場合、本体6に弁体4aを組付ける際は、溝10は本体6のリブ9へ矢視のように挿入される。参照符号4cは圧油通路4bを形成する平面状の側壁である。弁体4aが本体6に組みつけられてケーシングCSに固定されると弁体4aは圧油通路4bの位相ずれなどの不均衡があっても溝10に嵌まり込んだリブ9すなわち、弁体4aは軸方向に摺動可能であるが回転は阻止される。そのため、チェック弁ユニットが開口し、弁体4aの着座部分とケーシングCSの着座面が当接した場合も、第1チェック弁の弁体4aは回転することがなくケーシングCSの着座面が摩耗することがなく、圧油の有するエネルギーが無駄に使用されておらず、また作動油の発熱が起きない。更に、前記のように圧油が通過できるように構成していることも相俟って、図4に示すようなチェック弁ユニットが内蔵された油圧制御弁でも、ケーシングCS内においてキャビテーションが起きないため、振動も騒音も発生しなく、内部破損もおきない。
【符号の説明】
【0030】
1 パラレル通路
2 タンデム通路
3 絞り
4 第1チェック弁
4a 第1チェック弁の弁体
4a1 リブ7を設けている部位
4a2 側壁4cを設けている部位
4a3 着座部位
4b 通路
5 第2チェック弁
5a 第2チェック弁の弁体
6 チェック弁ユニットの本体
7、9 リブ
8、10 溝
a、b 圧油ポート
c 開口部
d ネジ部
CH チェック弁ユニット
CS ケーシング
Spr スプール
VL2 油圧制御弁
VPM 可変吐出ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変吐出ポンプに接続されたタンデム通路またはパラレル通路からの圧油を受け入れる油圧制御弁であって、同油圧制御弁のケーシングには、前記パラレル通路からの圧油が供給されている状態でタンデム通路との連通を遮断するよう作動する第1チェック弁の弁体を摺動可能且つ回転不能に収納するチェック弁ユニットが固定して内蔵されており、前記チェック弁ユニットの収納部内周面と前記弁体外周面との間には前記パラレル通路からの圧油通路が形成されていることを特徴とする建設機械の油圧制御弁。
【請求項2】
前記回転不能に収納するチェック弁ユニットとして、前記第1チェック弁の弁体外形面には摺動方向に所定長さのリブが設けられ、前記チェック弁ユニットの収納部内周面には前記リブを受け入れる溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御弁。
【請求項3】
前記回転不能に収納するチェック弁ユニットとして、前記チェック弁ユニットの収納部内周面には所定長さのリブが設けられ、前記第1チェック弁の弁体外形面には前記リブを受け入れる溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御弁。
【請求項4】
前記チェック弁ユニットには、前記パラレル通路から前記圧油通路への圧油の流動を遮断する第2チェック弁が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載された建設機械の油圧制御弁。
【請求項5】
前記第2チェック弁の弁体は、前記第1チェック弁の弁体内に摺動可能に収納されていることを特徴とする請求項4に記載された建設機械の油圧制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163459(P2011−163459A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27485(P2010−27485)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】