説明

建設機械の盗難防止装置

【課題】設置スペースを低減しつつ、設定変更する暗証番号を確認することができる建設機械の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】暗証番号を入力するテンキー54と、テンキー54で入力した暗証番号と内部メモリ等に設定記憶された暗証番号とが一致するかどうかを判定し、暗証番号が一致すると判定されたときに、建設機械のロック状態を解除するコントローラ41とを備えた建設機械の盗難防止装置において、テンキー54にそれぞれ対応して設けた複数の照明灯60を備え、コントローラ41は、設定キー55等の入力操作により暗証番号変更モードが設定され、テンキ54ーで新規の暗証番号が入力された後、その暗証番号を入力したテンキー54に対応する照明灯60を順次点灯させるとともに、新規の暗証番号を書き換え記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等を含む建設機械の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の盗難防止装置は、これまで種々の技術が提唱されており、その一例として、建設機械を起動する際に暗証番号を入力するテンキーと、その入力した暗証番号が予め記憶された暗証番号と一致するかどうかを判定する解除電子装置と、この解除電子装置からの信号に応じて駆動するスタータ制御リレーと、キースイッチの操作に応じて駆動するキースイッチスタートリレーと、それらスタータ制御リレー及びキースイッチスタートリレー等を介し電源(バッテリ)に接続されたエンジン起動用のスタータとを備えた構成が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、テンキーで入力した暗証番号と予め記憶された暗証番号とが一致したときに、解除電子装置からの信号によりスタータ制御リレーの接点を閉じ状態とし、その後、キースイッチの操作によりキースイッチスタートリレーの接点を閉じ状態とすることで、スタータが通電されエンジンを起動するようになっている。一方、暗証番号が一致しないときには、スタータ制御リレーの接点を開き状態とし、エンジン起動を不能(ロック状態)として盗難防止を図るようになっている。
【0003】
【特許文献1】特許第3233573号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、上記従来技術においては、テンキーで入力した暗証番号と予め設定記憶された暗証番号とが一致したときに、エンジン起動を可能とし、暗証番号が一致しないときには、エンジン起動を不能として建設機械の盗難防止を図るようになっている。そのため、盗難防止効果を高めるために、暗証番号を変更可能な暗証番号変更機能を設け、テンキー等の操作により暗証番号を変更することが好ましい。ところが、操作者がテンキーでの操作を誤ったり入力操作が正しく認識されなかったりすると、間違えた暗証番号が設定記憶されて暗証番号が不明となる可能性がある。そこで、これに対応するため、入力した暗証番号を表示するモニタを設ける方法が考えられる。ところが、例えば小型の建設機械では運転室内のスペースが極めて限定されるため、モニタ等の設置スペースを確保することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、設置スペースを低減しつつ、設定変更する暗証番号を確認することができる建設機械の盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、暗証番号を入力する複数の入力スイッチと、前記入力スイッチで入力した暗証番号と記憶手段に設定記憶された暗証番号とが一致するかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段で暗証番号が一致すると判定されたときに、建設機械のロック状態を解除する解除手段とを備えた建設機械の盗難防止装置において、前記複数の入力スイッチにそれぞれ対応して設けた複数の照明灯と、前記記憶手段に設定記憶された暗証番号が変更可能な暗証番号変更モードを設定指示するモード設定手段と、前記モード設定手段で暗証番号変更モードが設定され、前記入力スイッチで新規の暗証番号が入力された後、その暗証番号を入力した前記入力スイッチに対応する前記照明灯を順次点灯させる照明制御手段と、前記新規の暗証番号を前記記憶手段に書換え記憶する書換手段とを備える。
【0007】
本発明においては、複数の入力スイッチにそれぞれ対応して複数の照明灯を設ける。これにより、夜間等においても入力スイッチに標記された暗証番号用文字等を識別することができ、その入力操作を容易に行うことができる。また、記憶手段に設定記憶された暗証番号を変更する暗証番号変更モードにおいて、新規の暗証番号を入力スイッチで入力すると、照明制御手段が、その暗証番号を入力した入力スイッチに対応する照明灯を順次点灯し、書換え手段が、新規の暗証番号を記憶手段に書き換え記憶する。この照明灯の点灯により、操作者は設定変更する新規の暗証番号を確認することができる。したがって、例えば暗証番号を表示するモニター等を設けなくてすむため、設置スペースを低減しつつ、設定変更する暗証番号を確認することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設置スペースを低減しつつ、設定変更する暗証番号を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態による建設機械の盗難防止装置の適用対象である小型油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、図2は、小型油圧ショベルの全体構造を表す上面図であり、図3は、油圧ショベルの運転室内の詳細構造を表す斜視図である。なお、以降、油圧ショベルが図1に示す状態にて操作者が運転席に着座した場合における操作者の前側(図1中右側)、後側(図1中左側)、左側(図1中紙面に向かって奥側)、右側(図1中紙面に向かって手前側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0010】
これら図1〜図3において、油圧ショベルは、走行手段としての左・右の無限軌道履帯(クローラ)1L,1Rを備えた下部走行体2と、この下部走行体2の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3の基礎下部構造をなす旋回フレーム4に垂直ピン(図示せず)を中心にして水平方向に回動可能に取り付けられたスイングポスト5と、このスイングポスト5に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)取り付けられた多関節型のフロント作業機6と、旋回フレーム4上に設けられたいわゆるキャノピータイプの運転室7と、旋回フレーム4上の運転室7以外の大部分を覆う上部カバー8とを備えている。
【0011】
下部走行体2は、略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左・右両側の後端近傍に回転自在に支持された駆動輪10L,10R(但し10Lのみ図1に図示)と、駆動輪10L,10Rをそれぞれ駆動する左・右走行用油圧モータ11L,11R(但し11Lのみ図1に図示)と、トラックフレーム9の左・右両側の前端近傍に回転自在に支持され、履帯1L,1Rを介し駆動輪10L,10Rの駆動力でそれぞれ回転される従動輪(アイドラ)12L,12R(但し12Lのみ図1に図示)と、トラックフレーム9の前方側に上下動可能に設けられ、ブレード用油圧シリンダ13により上下動する排土用のブレード14とを備えている。また下部走行体2の中央部には旋回台軸受(旋回輪)15が配置され、この旋回輪15の中心近傍に、下部走行体2に対し旋回フレーム4を旋回させる旋回用油圧モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0012】
スイングポスト5は、垂直ピン(図示せず)を介し旋回フレーム4に対し水平に回動可能となっている。またスイングポスト5は、旋回フレーム4に設けられたスイング用油圧シリンダ16に、連結ピン(図示せず)を介して連結されており、スイング用油圧シリンダ16の伸縮でスイングポスト5全体が鉛直方向の軸心まわりに回動することによって、フロント作業機6が左・右にスイングするようになっている。
【0013】
フロント作業機6は、ブーム17と、ブーム17に回動可能に結合されたアーム18と、アーム18に回動可能に結合されたバケット19とを備えている。そして、ブーム17、アーム18、及びバケット19は、それぞれブーム用油圧シリンダ20、アーム用油圧シリンダ21、及びバケット用油圧シリンダ22により動作するようになっている。
【0014】
運転室7は、上記した旋回フレーム4上の左側に設けられており、操作者が着座する座席(運転席)23と、この座席23の上方に設けられたルーフ24と、このルーフ24を支持する支柱25とを有している。
【0015】
座席23の前方側(図3中左下側)には、左・右走行用油圧モータ11L,11Rをそれぞれ駆動し油圧ショベルの前進又は後進走行等をさせるための手でも足でも操作可能な左・右走行用操作レバー26L,26Rが設けられている。左走行用操作レバー26Lのさらに左側(図3中右下側)足元部分には、オプション用油圧アクチュエータ(例えばブレーカ用油圧モータ)を駆動するためのオプション用操作ペダル27Lが設けられている。右走行用操作レバー26Rのさらに右側(図3中左上側)足元部分には、スイング用油圧シリンダ16を駆動しスイングポスト5(言い換えればフロント作業機6全体)を左・右にスイングさせるためのスイング用操作ペダル27Rが設けられている。
【0016】
座席23の左側には、左側又は右側に操作することで上記旋回用油圧モータを駆動し上部旋回体3を左側又は右側に旋回させるとともに前側又は後側に操作することでアーム用油圧シリンダ21を駆動しアーム18をダンプ又はクラウドさせる十字操作式の左手動操作レバー28Lが設けられている。また、左手動操作レバー28Lの下方側には、パイロットポンプ29(後述の図4参照)等の油圧源からの元圧を遮断可能な誤操作防止用のロックレバー30が設けられている。
【0017】
座席23の右側には、左側又は右側に操作することでバケット用油圧シリンダ22を駆動しバケット19をクラウド又はダンプさせるとともに前側又は後側に操作することでブーム用油圧シリンダ20を駆動しブーム17を下げ又は上げる十字操作式の右手動操作レバー28Rと、キースイッチ31やキー入力装置32等を備えたコンソールとが設けられている。
【0018】
上部カバー8は、その内部に、エンジン33(後述の図4参照)、このエンジン33により駆動される油圧ポンプ34(後述の図4参照)、この油圧ポンプ34の圧油源となる作動油タンク35(後述の図4参照)等の機器を収納している。
【0019】
以上説明した構成において、左・右無限軌道履帯1L,1R、上部旋回体3、スイングポスト5、ブレード14、ブーム17、アーム18、及びバケット19は、この油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置により駆動される被駆動部材を構成している。
【0020】
図4は、上記油圧駆動装置のうちブーム17に係わる要部構成を例にとって、本実施形態の建設機械の盗難防止装置を表す回路図であり、図5は、後述するキー入力装置の全体構造を表す上面図であり、図6は、図5中断面VI−VIによる縦断面図である。
【0021】
これら図4〜図6において、上記エンジン(原動機)33と、このエンジン33により駆動される例えば可変容量型の上記油圧ポンプ34と、エンジン33により駆動される例えば固定容量型の上記パイロットポンプ29と、これらポンプ34,29の圧油源となる上記作動油タンク35と、油圧ポンプ34からの吐出圧油によって駆動される上記ブーム用油圧シリンダ20と、油圧ポンプ34からブーム用油圧シリンダ20への圧油の流れを制御する油圧パイロット式のブーム用コントロールバルブ36と、ブーム17等の動作を指示する上記右手動操作レバー28Rを備えた操作レバー装置37と、上記ロックレバー30を備えたロックレバー装置38と、パイロットポンプ29からの元圧を遮断可能とするロックバルブ39とが設けられている。さらに、エンジン33及び電源のON・OFFを指示する上記キースイッチ31と、キースイッチ31の操作によりエンジン33を起動するエンジン起動回路40と、暗証番号等が入力可能な上記キー入力装置32と、コントローラ41と、ブザー42と、ホーン43とが設けられている。
【0022】
ロックバルブ39は、パイロットポンプ29と操作レバー装置(図4では操作レバー装置37)との間の油圧管路に設けられ、ロックレバー30の操作により油圧管路を連通・遮断可能とするものである。すなわち、ロックレバー30を下降位置(下げた状態)に引き下げると、ロックレバー装置38の接点が閉じ状態となり、またパイロット制御リレー44の接点が通常閉じ状態となっているから、ロックレバー装置38からの操作信号がロックバルブ39のソレノイド駆動部39aに入力されて、ロックバルブ39が図4中左側に示す連通位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ29からの元圧(1次パイロット圧)が操作レバー装置37等へ導かれるようになっている。一方、ロックレバー30を上昇位置(上げた状態)に引き上げると、ロックレバー装置38の接点が開き状態となり、ロックバルブ39がバネ39bの付勢力で図4中右側に示す遮断位置に切換えられ、上記1次パイロット圧が遮断されるようになっている。
【0023】
操作レバー装置37は、上記右手動操作レバー27Lと、その操作量に応じてパイロットポンプ29からの1次パイロット圧を減圧した操作パイロット圧(2次パイロット圧)を出力する一対の減圧弁37a,37bとを備えている。そして、操作レバー装置37の操作レバー28Rを図4中矢印A側(又はその反対側、以下かっこ内対応関係同じ)に操作すると、その操作量に応じて減圧弁37a(又は減圧弁37b)で生成した操作パイロット圧をブーム用コントロールバルブ36のパイロット操作部36a(又は36b)へ出力し、これによってコントロールバルブ36を切換えるようになっている。
【0024】
エンジン起動回路40は、エンジン33を例えば電動モータ等で起動するスタータ45と、このスタータ45に配線46aを介し接続されるスタータ制御リレー47と、このスタータ制御リレー47に配線46bを介し接続されるキースイッチスタートリレー48と、このキースイッチスタートリレー48に配線46cを介し接続される電源(バッテリ)49とで構成されている。
【0025】
キースイッチ31は、例えば操作者が所持する操作キー等をキーシリンダ等に挿入して回転操作されるようになっている。これにより、キースイッチ31が例えばOFF位置に操作されると、電気系統をOFF状態とするとともにエンジン33を停止し、また例えばON位置に操作されると、電気系統をON状態とするようになっている。また、キースイッチ31が例えば起動位置に操作されると、その操作信号がキースイッチスタートリレー48に出力され、キースイッチスタートリレー48の接点が閉じ状態となり、またスタータ制御リレー47の接点は通常閉じ状態となっているから、スタータ45は配線46a,46b,46c等を介しバッテリ49から給電され、エンジン33を起動するようになっている。
【0026】
キー入力装置32は、本体ケース50と、この本体ケース50内に配設された基板51と、この基板51全体を覆う光透過性防水膜52と、本体ケース50の上面側に設けられた化粧銘板53とを備えている。基板51にはスイッチ類及びランプ類等の電子部品が実装されており、暗証番号を入力する0〜9までのテンキー54と、暗証番号の設定及び変更を指示する設定キー(ファンクションキー)55と、入力した暗証番号の取消等を指示する取消キー(クリアキー)56と、後述する油圧ショベルのロック状態及び解除状態をそれぞれ表示する施錠表示灯(LED)57及び開錠表示灯(LED)58とを備えている。
【0027】
テンキー54、設定キー55、及び取消キー56はそれぞれ、基板51に実装された例えばタクティールスイッチ59と、このスイッチ59近傍に実装された照明灯(LED)60とで構成されている。本体ケース50の上面側は、テンキー54、設定キー55、取消キー56、施錠表示灯57、及び開錠表示灯58にそれぞれ対応して複数の貫通孔が形成され、防水膜52には、基板51上のスイッチ59にそれぞれ近接するように下方側に突出した複数のスイッチ接触部52aが形成されている。これにより、化粧銘板53及び防水膜52のスイッチ接触部52aを介し、基板51上のスイッチ59が操作されるようになっている。なお、化粧銘板53は、少なくともテンキー54、設定キー55、取消キー56、施錠表示灯57、及び開錠表示灯58に対応する部分が光を透過するようになっている。
【0028】
コントローラ41は、キースイッチ31及びキー入力装置32からの入力信号に対し所定の演算処理を行い、生成した制御信号をキー入力装置32、スタータ制御リレー47、及びパイロット制御リレー44にそれぞれ出力するようになっている。すなわち盗難防止機能として、コントローラ41はスタータ制御リレー47に制御信号を出力してスタータ制御リレー47の接点を開き状態とし、上述したキースイッチ31の操作によるエンジン33の起動を不能とするようになっている。また、コントローラ41はパイロット制御リレー44に制御信号を出力してパイロット制御リレー44の接点を開き状態とし、上述したロックレバー30の操作によるロックバルブ39の連通状態への切換えを不能とし、1次パイロット圧が遮断されて油圧アクチュエータ(ブーム用油圧シリンダ20等)の動作を不能とするようになっている。このようにしてエンジン33の起動又は油圧アクチュエータの動作を不能とすることを、以降、ロック状態を設定すると称す。
【0029】
またコントローラ41は、キースイッチ31がOFF位置にあるとき(又はエンジン33が停止状態にあるとき)の継続時間tを測定し、その継続時間tが予め設定記憶された所定の待機時間T(詳細は後述する)以上となるか、或いはキー入力装置26で所定のスイッチ(例えばテンキー54、設定キー55、及び取消キー56のいずれか1つ)が操作入力されると、上述したロック状態を設定するようになっている。このようなコントローラ41の制御手順を図7により説明する。図7は、コントローラ41におけるロック設定の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0030】
この図7において、まずステップ100において、キースイッチ31がOFF位置に切換えられると、エンジン33が停止する。このとき、施錠表示灯57は消灯、開錠表示灯58は点灯している。そして、ステップ110に進んで、コントローラ41は、キー入力装置32で所定のスイッチ(例えばテンキー54、設定キー55、及び取消キー56のいずれか1つ)が操作入力されたかどうかを判定する。所定のスイッチが操作入力されない場合は、ステップ110の判定が満たされず、ステップ120に移る。
【0031】
ステップ120では、コントローラ41は、内部メモリ等の記憶手段に予め設定記憶された所定の待機時間Tを読込み、キー入力装置32に制御信号を出力して対応する照明灯60(すなわち、複数の設定待機時間とテンキー54との組合せが予め記憶手段に記憶されており、例えば待機時間Tが15秒に設定された場合は「1」キーの照明灯、例えば待機時間Tが5分に設定された場合は「2」キーの照明灯、…等)が点灯する。その後、ステップ130に進んで、コントローラ41は、キースイッチ31がOFF位置に切換えられてからの継続時間tを測定し、ステップ140に進んで、測定した継続時間tが所定の待機時間T以上であるかどうかを判定する。
【0032】
キースイッチ31のOFF位置での継続時間tが所定の待機時間Tに到達するまでは、ステップ140の判定が満たされず、前述のステップ110〜140を繰り返す。そして、キースイッチ31のOFF位置での継続時間tが所定の待機時間Tに到達すると、ステップ140の判定が満たされ、ステップ150に移る。また、ステップ110においてキー入力装置31で所定のスイッチが操作入力された場合は、その判定が満たされ、ステップ150に移る。ステップ150では、コントローラ41は上述したロック状態を設定し、ステップ160に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が点滅、開錠表示灯58が消灯し、ステップ170に進んで、照明灯60が消灯する。
【0033】
なお、コントローラ41に設定記憶された所定の待機時間Tを変更することを意図して、油圧ショベルの解除状態(このとき、施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯した状態)で、例えば設定キー55とテンキー54のうちいずれか1つの特定キーとが同時に所定時間継続して(例えば2秒以上)入力されると、コントローラ41は待機時間変更モードに移行する。まずコントローラ41は、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58がともに点滅し、ブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば3回吹鳴する。そして、テンキー54のいずれか1つが操作入力されると、コントローラ42は予め設定記憶された組合せに基づいて対応する待機時間(上述したように、「1」キーに対応する待機時間15秒、「2」キーに対応する待機時間5分、…等)を読込み、キー入力装置32に制御信号を出力して対応する照明灯60が点灯し、ブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば1回吹鳴する。なお、テンキー54のいずれか1つが再び操作入力されると、コントローラ41は対応する待機時間を新たに読込んで書換え、制御信号を出力して前回の対応する照明灯60が消灯、今回の対応する照明灯60が点灯し、ブザー42が1回吹鳴する。その後、設定キー56が操作入力されると、コントローラ41は読込んだ待機時間を所定の待機時間Tとして設定記憶し、さらに制御信号をそれぞれ出力して、照明灯60が消灯、施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯し、ブザー42が例えば3回吹鳴するようになっている。
【0034】
また、キー入力装置32のテンキー52で暗証番号が入力されると、コントローラ41は、入力された暗証番号と予め設定記憶された暗証番号とが一致しているかどうかを判定し、暗証番号が一致したときに、スタータ制御リレー47に制御信号を出力してスタータ制御リレー47の接点を閉じ状態とし、キースイッチ31の操作によるエンジン33の起動を可能とするようになっている。また、パイロット制御リレー44に制御信号を出力してパイロット制御リレー44の接点を閉じ状態とし、ロックレバー30の操作によるロックバルブ39の連通状態への切換えを可能とし、1次パイロット圧が操作レバー装置37等に導入されて油圧アクチュエータを動作可能とするようになっている。このようにしてエンジン33の起動又は油圧アクチュエータの動作を可能とすることを、以降、ロック状態を解除すると称し、その制御手順を図8及び図9により説明する。図8は、コントローラ41におけるロック解除の制御処理内容を表すフローチャートであり、図9は、暗証番号入力の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0035】
この図8において、まずステップ200において、油圧ショベルのロック状態(このとき、施錠表示灯57が点滅、開錠表示灯58が消灯した状態)で、キースイッチ31がON位置に切換えられると、ステップ210に進み、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58が消灯し、ステップ220に進んで、全ての照明灯60が点灯する。そして、ステップ230の暗証番号の入力処理に移る。
【0036】
ステップ230の暗証番号の入力処理は、まずステップ231で、コントローラ41は入力表示フラグF=0に初期設定する。そして、ステップ232に進んで、テンキー54のいずれか1つのキーが操作入力されると、ステップ233に進み、コントローラ41は、ブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば1回吹鳴する。その後、ステップ234に進んで、入力表示フラグF=0であるかどうかを判定する。最初は、入力表示フラグF=0であるから、ステップ234の判定が満たされ、ステップ235に移る。ステップ235では、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が点灯、開錠表示灯58が消灯し、ステップ236に進んで、入力表示フラグF=1に設定する。そして、ステップ237に進んで、例えば4桁の暗証番号の入力が完了したかどうかを判定する。最初は、ステップ237の判定が満たされないためステップ232に戻り、前述したステップ232〜234の手順を繰り返す。
【0037】
ステップ234にて今回は入力表示フラグF=1となっているから、その判定が満たされず、ステップ238に移る。ステップ238では、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯し、ステップ239に進んで、入力表示フラグF=0に設定し、その後、前述のステップ237に移る。このようにして4桁の暗証番号が入力完了するまでは、前述のステップ232〜236(又はステップ232〜234,238,239)の手順が繰り返し行われる。そして、4桁の暗証番号が入力完了すると、ステップ237の判定が満たされ、ステップ230の暗証番号の入力処理が終了する。
【0038】
なお、上述したステップ230の暗証番号の入力処理において、例えば入力途中の暗証番号を取り消すことを意図して、取消キー56が操作入力されると、コントローラ41は、ブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば1回吹鳴する。そして、前述のステップ210に戻り、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58が消灯する。これにより、操作者は暗証番号入力が初期状態に戻ったことを確認し、再びテンキー54で暗証番号を入力可能としている。
【0039】
上述したステップ230の暗証番号の入力処理が終了すると、ステップ240に進み、コントローラ41は、テンキー54で入力された暗証番号と内部メモリ等の記憶手段に予め設定記憶された暗証番号とが一致しているかどうかを判定する。暗証番号が一致すると判定された場合は、ステップ240の判定が満たされ、ステップ250に移ってロック設定を解除する。そして、ステップ260に進んで、コントローラ41はブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば3回吹鳴し、ステップ270に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯し、ステップ280に進んで、全ての照明灯60が消灯する。なお、以降、コントローラ41はテンキー54での暗証番号入力を無効化する。
【0040】
一方、暗証番号が一致しないと判定された場合は、ステップ240の判定が満たされず、ステップ290に移る。ステップ290では、コントローラ41は制御信号を出力してブザー42及びホーン43が同時に所定時間(例えば30秒程度)連続吹鳴し、ステップ300に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が点滅、開錠表示灯58が消灯し、前述のステップ280に進んで、全ての照明灯60が消灯する。なお、ブザー42及びホーン43の連続吹鳴は、たとえキースイッチ31がOFF位置に切換えられても所定時間が経過するまでは継続する。また、ブザー42及びホーン43が吹鳴している間は、コントローラ41はテンキー54での暗証番号入力等を無効化し、ブザー42及びホーン43の吹鳴終了後は、キースイッチ31をOFF位置からON位置に切換えることで、再びテンキー54で暗証番号を入力可能としている。
【0041】
また、コントローラ41に設定記憶された暗証番号を変更することを意図して、例えば設定キー55とテンキー54のうちのいずれか1つの特定キーとが同時に所定時間継続して(例えば2秒以上)入力されると、コントローラ41は暗証番号変更モードに移行する。この暗証番号変更モードにおける制御手順を図10により説明する。図10は、コントローラ41における暗証番号変更の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0042】
この図10において、まずステップ400において、油圧ショベルの解除状態(このとき、施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯した状態)で、例えば設定キー55とテンキー54のうちのいずれか1つの特定キーとが同時に所定時間継続して入力されると、コントローラ41は暗証番号変更モードに設定され、ステップ410に進み、コントローラ41はブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば3回吹鳴し、ステップ420に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58が同時に点滅し、ステップ430に進んで、全ての照明灯60が点灯する。
【0043】
そして、ステップ440に進み、テンキー54の入力操作による1回目の新規の暗証番号の入力処理(前述の図9に示す暗証番号の入力処理と同じ制御処理)が行われ、この1回目の新規の暗証番号が内部メモリ等の記憶手段に一時的に記憶される。その後、ステップ450に進んで、コントローラ41はブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば2回吹鳴し、ステップ460に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58がともに点灯する。
【0044】
そして、ステップ470に進み、テンキー54の入力操作による2回目の新規の暗証番号の入力処理(前述の図9に示す暗証番号の入力処理と同じ制御処理)が行われ、この2回目の新規の暗証番号が内部メモリ等の記憶手段に一時的に記憶される。そして、ステップ480に進んで、コントローラ41は、第1回目と第2回目の新規の暗証番号が一致するかどうかを判定する。暗証番号が一致しないと判定された場合は、ステップ480の判定が満たされず、ステップ490に移る。ステップ490では、コントローラ41はブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば8回吹鳴し、ステップ500に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が点滅、開錠表示灯58が消灯する。その後、前述のステップ440に戻って、上記同様の手順を繰り返す。
【0045】
一方、暗証番号が一致すると判定された場合は、ステップ480の判定が満たされ、ステップ510に移る。ステップ510では、コントローラ41は、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58が交互に点滅する。そして、ステップ520に進み、所定時間(例えば1秒)が経過した後、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力し、新規の暗証番号を入力したテンキー54に対応する照明灯60が順次点灯(又は点滅)し、最終的に全ての照明灯60が消灯する。
【0046】
そして、ステップ530に進んで、設定キー55が所定時間継続して(例えば2秒以上)入力されると、ステップ540に進み、コントローラ41は新規の暗証番号を内部メモリに書換え記憶し、ステップ550に進んで、キー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58がともに点灯し、ステップ560に進んで、ブザー42に制御信号を出力してブザー42が例えば3回吹鳴する。その後、コントローラ41はキー入力装置32に制御信号を出力して施錠表示灯57が消灯し、開錠表示灯58が点灯する。
【0047】
なお、上記において、テンキー54は、特許請求の範囲記載の暗証番号を入力する複数の入力スイッチを構成し、設定キー55及びテンキー54のうちいずれか1つの特定キーは、記憶手段に設定記憶された暗証番号が変更可能な暗証番号変更モードを設定指示するモード設定手段を構成する。また、コントローラ41が行うステップ240は、入力スイッチで入力した暗証番号と記憶手段に設定記憶された暗証番号とが一致するかどうかを判定する判定手段を構成し、コントローラ41が行うステップ250は判定手段で暗証番号が一致すると判定されたときに、建設機械のロック状態を解除する解除手段を構成する。また、コントローラ41が行うステップ520は、モード設定手段で暗証番号変更モードが設定され、入力スイッチで新規の暗証番号が入力された後、その暗証番号を入力した入力スイッチに対応する照明灯を順次点灯させる照明制御手段を構成し、コントローラ41が行うステップ540は、新規の暗証番号を記憶手段に書換え記憶する書換手段を構成する。
【0048】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
例えばコントローラ41に記憶された暗証番号を変更する場合、油圧ショベルのロック解除状態(このとき、施錠表示灯57が消灯、開錠表示灯58が点灯した状態)で、操作者が設定キー55及びテンキー54のうちいずれか1つの特定キーを操作入力すると、コントローラ41は、図10のステップ400〜430にて、暗証番号変更モードが設定されるとともに、制御信号をそれぞれ出力してブザー42を3回吹鳴し、施錠表示灯57及び開錠表示灯58を同時に点滅し、全ての照明灯60を点灯する。
【0049】
そして、操作者がキー入力装置32のテンキー54で新規の暗証番号を正しく2回入力すると、コントローラ41は、ステップ440〜480を経てステップ510にて、制御信号を出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58を交互に点滅し、ステップ520にて、新規の暗証番号を入力したテンキー54に対応する照明灯60を順次点灯する。
【0050】
そして、操作者がキー入力装置32の設定キー55を操作入力すると、コントローラ41は、ステップ530を経てステップ540にて、新規の暗証番号を書換え記憶し、ステップ550〜570にて、制御信号をそれぞれ出力して施錠表示灯57及び開錠表示灯58をともに点灯し、ブザー42を3回吹鳴し、その後、ステップ580にて、制御信号を出力して施錠表示灯57を消灯、開錠表示灯58を点灯する(すなわち、油圧ショベルのロック解除状態を表示する)。
【0051】
以上のように本実施形態においては、テンキー54等にそれぞれ対応して複数の照明灯60を設け、油圧ショベルのロック状態解除や暗証番号変更モード時において照明灯60を点灯する。これにより、夜間等においてもテンキ−54等に標記された暗証番号用文字等を識別することができ、その入力操作を容易に行うことができる。また、暗証番号変更モード時に、新規の暗証番号をテンキー54で入力すると、その暗証番号を入力したテンキー54に対応する照明灯60が順次点灯する。この照明灯60の点灯によって、操作者は設定変更する新規の暗証番号を確認することができる。したがって、例えば暗証番号を表示するモニター等を設けなくてすむため、設置スペースを低減しつつ、設定変更する暗証番号を確認することができる。
【0052】
なお、上記一実施形態においては、小型の油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、例えば中型及び大型の油圧ショベルや、ホイールローダ等に適用してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の建設機械の盗難防止装置の適用対象である小型油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の建設機械の盗難防止装置の適用対象である小型油圧ショベルの全体構造を表す上面図である。
【図3】本発明の建設機械の盗難防止装置の適用対象である油圧ショベルの運転室の詳細構造を表す斜視図である。
【図4】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を油圧駆動装置のブームに係わる要部構成とともに表す回路図である。
【図5】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を構成するキー入力装置の外観を表す上面図である。
【図6】図5中断面VI−VIによる縦断面図である。
【図7】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を構成するコントローラにおけるロック設定の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図8】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を構成するコントローラにおけるロック解除の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図9】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を構成するコントローラにおける暗証番号入力の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図10】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態を構成するコントローラにおける暗証番号変更設定の制御処理内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
41 コントローラ(記憶手段、判定手段、解除手段、照明制御手段、書換手段)
54 テンキー(入力スイッチ、モード設定手段)
55 設定キー(モード設定手段)
60 照明灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗証番号を入力する複数の入力スイッチと、前記入力スイッチで入力した暗証番号と記憶手段に設定記憶された暗証番号とが一致するかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段で暗証番号が一致すると判定されたときに、建設機械のロック状態を解除する解除手段とを備えた建設機械の盗難防止装置において、
前記複数の入力スイッチにそれぞれ対応して設けた複数の照明灯と、
前記記憶手段に設定記憶された暗証番号が変更可能な暗証番号変更モードを設定指示するモード設定手段と、
前記モード設定手段で暗証番号変更モードが設定され、前記入力スイッチで新規の暗証番号が入力された後、その暗証番号を入力した前記入力スイッチに対応する前記照明灯を順次点灯させる照明制御手段と、
前記新規の暗証番号を前記記憶手段に書換え記憶する書換手段とを備えたことを特徴とする建設機械の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−30684(P2007−30684A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216760(P2005−216760)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】