説明

建設機械の防塵装置

【課題】塵埃の多い稼動現場での防塵ネットの目詰まりを抑制することのできる建設機械の防塵装置を提供する。
【解決手段】防塵ネット8は、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。防塵ネット8に衝突して重力により落下する塵埃と防塵ネット8との間の冷却風水平方向に距離が生じ、落下する塵埃が再び防塵ネット8に捕捉され難くなり、エンジン室1下部に到達する。また、防塵ネット8に捕捉された塵埃も一部が重力により落下し、エンジン室1下部に到達する。これにより、防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなど建設機械の防塵装置に係り、特に冷却風中の塵埃を捕捉する防塵ネットを備えた建設機械の防塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなど建設機械ではブーム、アーム、バケットをそれぞれ駆動するアクチュエータを動作させて土砂の掘削作業を行う。動力源としてエンジンで油圧ポンプを駆動し、作動油を油圧シリンダーに圧送して各アクチュエータを動作させている。エンジンや油圧ポンプを稼働させると、エンジンや作動油に熱が発生する。そこで、エンジン冷却水や熱を帯びた作動油の冷却のために、ラジエータ、オイルクーラなどの熱交換器が設置されている。冷却ファンにより誘起された冷却風が、熱交換器を通過する事により、熱交換器は冷却される。熱交換器を冷却する装置を冷却装置という。
【0003】
更に、近年の排ガスの規制のため、排ガス中の窒素酸化物など濃度を小さくするために、インタークーラを搭載している建設機械が主流になりつつある。インタークーラはターボ加給されて断熱圧縮されたエンジン吸気を、所定の温度まで冷却し、充填効率を上げ、燃焼温度を低くすることで排気のNOx(窒素酸化物)の発生を抑制するものである。また、エアコンの冷媒を冷却するコンデンサが設置されることもある。
【0004】
このような建設機械は産業廃棄物の処理場や林業など、周辺に塵埃の浮遊する空間で稼動する場合も多く、冷却風と共に周囲の塵埃を吸引して熱交換器に堆積することのないように、熱交換器の冷却風上流側に熱交換器に対向して防塵ネットが設けられている。
【0005】
防塵ネットは冷却風中の塵埃を捕捉するものであるが、塵埃が防塵ネットに堆積し目詰まりが生じると、冷却風量が低下して熱交換器の冷却性能が低下する。そのため防塵ネットの清掃を頻繁に行って目詰まりを除去する必要がある。従来多く採用されていたいわゆる直列配置型の熱交換器ユニットでは熱交換器ごとに防塵ネットを設ける必要があり、防塵ネットの清掃も個別に行う必要がある。また、下流側に配置された熱交換器に設けられた防塵ネットは、アクセスが難しいため、清掃が困難であった。
【0006】
このような防塵ネットの清掃容易性を改善するために、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の防塵装置は、ラジエータ、オイルクーラ、インタークーラなどの熱交換器を並列配置した並列配置型の熱交換器ユニットに対向するように共通の防塵ネットを設置したものである。これにより、1つの防塵ネットのみを清掃すればよく、清掃容易性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−52689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように特許文献1に記載の防塵装置は、清掃容易性を改善することができるものであるが、防塵ネットの目詰まり自体を抑制するものではない。防塵ネットの清掃は防塵ネットの着脱作業を伴うため、清掃頻度が少ない方が好ましい。しかし防塵ネットの目詰まりを放置しておくと、冷却風量が低下して熱交換器の冷却性能が低下し、様々な問題を引き起こす。例えば、ラジエータの冷却性能が低下するとエンジンがオーバーヒートしてしまう。
【0009】
冷却性能の低下に対し、熱交換器の容量アップすることで対応することも考えられるが、エンジン室内の熱交換器の搭載スペースも限られていることから現実的でない。
【0010】
また、従来の防塵装置では、冷却風を取り入れる開口部と冷却ファンを結ぶラインが冷却風の主経路になる結果、冷却風の主経路に塵埃が集中し、冷却風の経路と防塵ネットとが交わる周辺領域に塵埃が集中して捕捉され、目詰まりが生じやすいという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、塵埃の多い稼動現場での防塵ネットの目詰まりを抑制することのできる建設機械の防塵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、冷却ファンにより誘起され開口部から取り入れられた冷却風により熱交換器装置を冷却する冷却装置に、この熱交換器装置の冷却風上流側に位置するように設けられ、冷却風中の塵埃を捕捉する防塵ネットを備えた建設機械の防塵装置において、前記防塵ネットは、上端部が開口部側に近づき下端部が熱交換装置側に近づくように傾斜している。
【0013】
このように構成した本発明においては、防塵ネットが上記のように傾斜して設置されているため、防塵ネットに衝突して重力により落下する塵埃と防塵ネットとの間の冷却風水平方向に距離が生じる。この距離があるため、落下する塵埃が再び防塵ネットに捕捉され難くなり、エンジン室下部に到達する。これにより、防塵ネットの目詰まりを抑制することができる。
【0014】
また防塵ネットが傾斜して設置されているため、防塵ネットに捕捉された塵埃も一部が重力により落下し、エンジン室下部に到達する。これにより、防塵ネットの目詰まりを抑制することができる。
【0015】
エンジン室下部に堆積した塵埃は、コンプレッサの風圧により吹き飛ばされ、エンジン室底部冷却風上流側に設けられた開口部から放出される。これにより、エンジン室内の清掃を容易に行うことができる。
【0016】
防塵ネットの目詰まりが抑制される結果、防塵ネットの清掃頻度を少なくすることで、清掃手間を少なくすることができる。防塵ネットの清掃手間を少なくし、かつエンジン室内の清掃を容易に行うことによりエンジンがオーバーヒートすることを防止できる。
【0017】
(2)上記(1)において、好ましくは、更に、前記開口部と前記冷却ファンを結ぶ冷却風経路上で、かつ前記防塵ネットの冷却風上流側に位置するように設けられた仕切り部材を備える。
【0018】
従来の防塵装置では、冷却風を取り入れる開口部と冷却ファンを結ぶラインが冷却風の主経路になる結果、冷却風の主経路に塵埃が集中し、冷却風の経路と防塵ネットとが交わる周辺領域に塵埃が集中して捕捉され、防塵ネットの目詰まりが生じやすいという問題があった。
【0019】
このように仕切り部材を備えることにより、冷却風の主経路に含まれる塵埃は、仕切り部材に衝突して落下する。防塵ネットが傾斜して設置されているため、落下する防塵と防塵ネットとの間の冷却風水平方向に距離が生じ、落下する塵埃が防塵ネットに捕捉され難くなり、エンジン室下部に到達する。これにより、防塵ネットの目詰まりを抑制することができる。
【0020】
(3)上記(1)において、好ましくは、更に、前記開口部と前記冷却ファンを結ぶ冷却風経路上に設けられ、前記防塵ネットを上下に分割して保持する仕切り部材を備える。
【0021】
このように仕切り部材を備えることにより、冷却風の主経路に含まれる塵埃は、仕切り部材に衝突して落下する。防塵ネットが傾斜して設置されているため、落下する防塵と防塵ネットとの間の冷却風水平方向に距離が生じ、落下する塵埃が防塵ネットに捕捉され難くなり、エンジン室下部に到達する。これにより、防塵ネットの目詰まりを抑制することができる。
【0022】
更に、仕切り部材が、防塵ネットを上下に分割して保持することで、防塵装置のサイズを維持しつつ、防塵ネットが分割されていない構成に比べ、防塵ネットはより大きな傾斜角を形成することができる。傾斜角が大きくなるほど、防塵ネットの目詰まり抑制効果を向上させることができる。
【0023】
一方、防塵ネットの傾斜角を一定にした場合、防塵ネットが分割されていない構成に比べ、防塵装置の構成をより省スペースで実現できる。
【0024】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記仕切り部材は、上端部が熱交換装置側に近づき下端部が開口部側に近づくように傾斜している。
【0025】
このように仕切り部材が傾斜して設けられることで、防塵装置のサイズを維持しつつ、仕切り部材が鉛直に設けられる構成に比べ、防塵ネットは更により大きな傾斜角を形成することができる。傾斜角が大きくなるほど、防塵ネットの目詰まり抑制効果を向上させることができる。
【0026】
一方、防塵ネットの傾斜角を一定にした場合、仕切り部材が鉛直に設けられる構成に比べ、防塵装置の構成を更により省スペースで実現できる。
【0027】
このように仕切り部材が傾斜して設けられることで、冷却風の流路面積が増える。これにより冷却風の風速が低下し、単位時間単位面積当たりに通過する塵埃も減少する。その結果、防塵ネットに目詰まりが生じ難くなる。また、通風抵抗の減少により冷却装置の冷却効率の向上も期待できる。
【0028】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記冷却装置は、建設機械のエンジン室に設けられており、前記防塵ネットは、前記エンジン室を開閉可能に覆う建屋カバーに設けられている。
【0029】
このように防塵ネットが建屋カバーに設けられていることにより、エンジン室に流入する塵埃を減少させ、その結果、エンジン室内の清掃手間を少なくすることができる。
【0030】
また、建屋カバーの開閉をすることなく防塵ネットにアクセスし、防塵ネットの着脱作業をすることなく、防塵ネットの清掃を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、塵埃の多い稼動現場での防塵ネットの目詰まりを抑制することができる。その結果エンジンがオーバーヒートすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図2】エンジン室の平面図である。
【図3】本実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルの全体図である。
【図4】比較のため、従来の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図7】エンジン室の斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【図11】本発明の参考例に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1を示す断面図である。図2はエンジン室1の平面図である。図1及び図2を用いて第1実施形態の構成について説明する。
【0035】
本実施形態の防塵装置はエンジン室1内に設けられるものである。エンジン室1は外側を建屋カバー27で覆われ、建屋カバー27には冷却風を取り入れるための開口部21,22が形成されている。上面の開口部21には防塵ネット26が設けられている。エンジン室1内には、熱交換器ユニット10と燃料クーラ14とコンデンサ15と、熱交換器ユニット10の下流側に設けられたシュラウド4と、熱交換器ユニット10を冷却する冷却風を誘起する冷却ファン3とが備えられ、これらは冷却装置を構成している。
【0036】
エンジン2はエンジン室1内にエンジンマウント(図示せず)を介して支持されている。油圧ポンプ(図示せず)はエンジン2のフライホイール側の駆動軸に取付けられている。冷却ファン3は油圧ポンプと反対側の駆動軸に取付けられて、エンジン2により駆動され冷却風を誘起する。熱交換器ユニット10は冷却ファン3の冷却風上流側で対向するように配置され、冷却風方向に並列配置されたラジエータ11、オイルクーラ12、インタークーラ13から構成されている。また燃料クーラ14とエアコン用のコンデンサ15は、熱交換器ユニット10の冷却風上流側で対向するように並列に配置されている。
【0037】
冷却ファン3はいわゆる軸流ファンであり、補助回転軸34に取り付けられている。補助回転軸34には、エンジンクランク軸35のクランクプーリ31に対応する位置となるようにファンプーリ32が固定されている。そして、クランクプーリ31とファンプーリ32との間にはファンベルト33が掛け渡されている。冷却ファン3は、エンジンクランク軸35からの駆動力が伝達される補助回転軸34に固定されたボス3aと、このボス3aまわりに固定された複数枚の羽根3bとを備えており、補助回転軸34の回転によって回転駆動されて、冷却ファン3と熱交換器ユニット10との間に負圧を発生させ、冷却風を誘起するようになっている。
【0038】
またエンジン室1底部の冷却風上流側にバッテリー18が設置されている。バッテリー18は電装品の電源として、例えばエンジン始動時にセルモーターを回す。
【0039】
防塵ネット8は、側面部の開口部22から取り入れられた冷却風中の塵埃を捕捉するものであり、コンデンサ15冷却風上流側に位置し、上端部が開口部21の導風ガイド25に固定され、下端部が熱交換器ユニット10の下部のフレームに固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。防塵ネット8はメッシュ構造となっており、通常の場合は、メッシュ粗さは熱交換器のフィンピッチ間隔より小さい間隔で構成されている。
【0040】
図3は、本実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルの全体図である。
【0041】
油圧ショベル101は、下部走行体102の上に上部旋回体103を構成するフレーム104を備え、フレーム104上にエンジン室1とキャビン105、カウンタウェイト106を備えている。また、車体前方には、ブーム111とブームシリンダ112、アーム113とアームシリンダ114、バケット115とバケットシリンダ116から構成されたフロントアタッチメント110を備えている。
【0042】
次に、以上のように構成した本実施形態の動作及び作用を説明する。
【0043】
油圧ショベルの稼動時に、エンジン2を駆動すると、クランク軸35の回転がクランクプーリ31、ファンベルト33、及びファンプーリ32を介して補助回転軸34に伝達される。これによって、冷却ファン3が駆動されて回転する。この冷却ファン3の回転によって外気が開口部21,22からエンジン室1内に取り入れられ、冷却風となって上流側から流入してコンデンサ15及び熱交換器ユニット10(ラジエータ11、オイルクーラ12、インタークーラ13)を冷却した後、熱交換器ユニット10の下流側にあるシュラウド4の内部を通過して絞られ、冷却ファン3の吸い込み側に導入される。その後、冷却ファン3から吹き出された冷却風は、冷却ファン3の下流側にあるエンジン2及び油圧ポンプ等を冷却した後、開口部23、24からエンジン室1の外部に放出される。
【0044】
油圧ショベル101が塵埃や粉塵の多い場所で稼動した場合には、開口部21、22から流入した冷却風は塵埃を伴ってエンジン室1内に流入する。この時、防塵ネット8のメッシュの粗さよりも粒径が小さい塵埃は防塵ネット8を通過し、比重が小さいためエンジン室1内の冷却風により熱交換器ユニット10の間も通過して、開口部23、24から冷却風とともにエンジン室1の外部に放出される。一方、防塵ネット8のメッシュの粗さよりも粒径が大きい塵埃は、防塵ネット8に捕捉される。
【0045】
しかし一部の塵埃は、防塵ネット8に衝突して重力により落下する。防塵ネット8が傾斜して設置されているため、落下する塵埃と防塵ネット8との間の冷却風水平方向に距離が生じる。この距離があるため、落下する塵埃が再び防塵ネット8に捕捉され難くなり、エンジン室1下部に到達する。これにより、防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0046】
また防塵ネット8が傾斜して設置されているため、防塵ネット8に捕捉された塵埃も一部が重力により落下し、エンジン室1下部に到達する。これにより、防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0047】
エンジン室1内の清掃は、建屋カバー27を開閉して、コンプレッサを用いて行う。エンジン室1下部に堆積した塵埃は、コンプレッサの風圧により吹き飛ばされ、エンジン室1底部冷却風上流側に設けられた開口部(図示せず)から放出される。これにより、エンジン室1内の清掃を容易に行うことができる。
【0048】
以上のように構成した本実施形態の効果を従来の防塵装置と比較しながら説明する。
【0049】
図4は、比較のため、従来の防塵装置が備えられるエンジン室を示す断面図である。図1と同等の構成には同じ符号を付している。第1実施形態において防塵ネット8が、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜しているのに対し、防塵ネット80は、熱交換器ユニット10及びコンデンサ15に対向するように鉛直に設置されている。
【0050】
防塵ネット80のメッシュの粗さよりも粒径が大きい塵埃は、防塵ネット80に捕捉される。防塵ネット80は鉛直に設置されているため、塵埃が一度捕捉されると、落下しにくい。また、塵埃が防塵ネット80に衝突して重力により落下した場合、防塵ネット80は鉛直に設置されているため、落下する塵埃と防塵ネット80の間の冷却風水平方向に距離が生じず、落下する塵埃が再び防塵ネット80に捕捉される。塵埃が防塵ネット80に堆積すると目詰まりが生じる。防塵ネット80の目詰まりを放置しておくと、冷却風量が低下して熱交換器の冷却性能が低下し、様々な問題を引き起こす。例えば、ラジエータ11の冷却性能が低下するとエンジン2がオーバーヒートしてしまう。そのため防塵ネット80の清掃を頻繁に行って目詰まりを除去する必要がある。防塵ネット80の清掃は防塵ネット80の着脱作業を伴うため、防塵ネット80の目詰まりが生じやすくて清掃頻度が多くなると、手間がかかる。
【0051】
これに対し本実施の形態では、上述したように、防塵ネット8が傾斜して設置されていることにより、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0052】
また、塵埃はエンジン室1下部に堆積し、上述したように、エンジン室1内の清掃を容易に行うことができる。
【0053】
防塵ネット8の目詰まりが抑制される結果、防塵ネット8の清掃頻度を少なくすることで、清掃手間を少なくすることができる。防塵ネット8の清掃手間を少なくし、かつエンジン室1内の清掃を容易に行うことによりエンジン2がオーバーヒートすることを防止できる。
【0054】
本発明の第2実施形態を図5を用いて説明する。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Aを示す断面図であり、第1実施形態の構成に更に仕切り部材9を備えたものである。
【0056】
仕切り部材9は、開口部22と冷却ファン3を結ぶ冷却風経路上で、かつ防塵ネット8の冷却風上流側に位置するように設けられている。
【0057】
図4の従来の防塵装置では、冷却風を取り入れる開口部22と冷却ファン3を結ぶラインが冷却風の主経路になる結果、冷却風の主経路に塵埃が集中し、冷却風の経路と防塵ネット80とが交わる周辺領域(図4ではコンデンサ15が対向する周辺)に塵埃が集中して捕捉され、防塵ネット80の目詰まりが生じやすいという問題があった。
【0058】
本実施形態では、冷却風の主経路に含まれる塵埃は、仕切り部材9に衝突して落下する。防塵ネット8が傾斜して設置されているため、落下する防塵と防塵ネット8との間の冷却風水平方向に距離が生じ、落下する塵埃が防塵ネット8に捕捉され難くなり、エンジン室1A下部に到達する。これにより、防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態においても、防塵ネット8が傾斜して設置されていることにより、第1実施形態と同様に、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0060】
更に、仕切り部材9を備えることにより、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。
【0061】
本発明の第3実施形態を図6及び図7を用いて説明する。
【0062】
図6は、本発明の第3実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Bを示す断面図であり、図7はエンジン室1Bの斜視図である。第3実施形態は第2実施形態の変形例である。
【0063】
仕切り部材9Bは、開口部22と冷却ファン3を結ぶ冷却風経路上に、ブラケット28a,28bに略鉛直に固定されて設けられている。
【0064】
防塵ネット8Bは上側の防塵ネット8Baと防塵ネット8Bbとに上下に分割され、仕切り部材9Bにより保持されている。防塵ネット8Baは、上端部が開口部21の導風ガイド25に固定され、下端部が仕切り部材9Bの上端に固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。防塵ネット8Bbは、上端部が仕切り部材9Bの下端に固定され、下端部が熱交換器ユニット10の下部のフレームに固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。
【0065】
仕切り部材9Bが、防塵ネット8Bを上下に分割して保持することで、第2実施形態と同等のスペース(防塵装置の冷却風水平方向の長さ)を維持しつつ、防塵ネット8Ba、8Bbは第2実施形態の防塵ネット8に比べて、より大きな傾斜角を形成することができる。傾斜角が大きくなるほど、第1実施形態及び第2実施形態で上述した、防塵ネット8の目詰まりを抑制する効果が更に大きくなる。
【0066】
一方、防塵ネット8Ba、8Bbの傾斜角と第2実施形態の防塵ネット8の傾斜角を同等にした場合、第2実施形態と比べて防塵装置の構成を省スペースで実現できる。
【0067】
以上のように構成した本実施形態においても、防塵ネット8Ba,8Bbが傾斜して設置されていることにより、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8の目詰まりを抑制することができる。更に、仕切り部材9Bを備えることにより、第2実施形態と同様に塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8Bの目詰まりを抑制することができる。
【0068】
更に、本実施形態では、仕切り部材9Bが、防塵ネット8Bを上下に分割して保持することにより、目詰まり抑制効果を向上させることができ、または、防塵装置の構成を省スペースで実現できる。
【0069】
本発明の第4実施形態を図8を用いて説明する。
【0070】
図8は、本発明の第4実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Cを示す断面図である。第4実施形態は第3実施形態の変形例であり、第3実施形態の仕切り部材9Bが略鉛直に設けられているのに対し、第4実施形態の仕切り部材9Cは傾斜して設けられている。
【0071】
仕切り部材9Cは、開口部22と冷却ファン3を結ぶ冷却風経路上に、ブラケット28a,28bに固定されて、上端部が熱交換器ユニット10側に近づき下端部が開口部22側に近づくように傾斜して設けられている。
【0072】
防塵ネット8Cは上側の防塵ネット8Caと防塵ネット8Cbとに上下に分割され、仕切り部材9Cにより保持されている。防塵ネット8Caは、上端部が開口部21の導風ガイド25に固定され、下端部が仕切り部材9Cの上端に固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。防塵ネット8Cbは、上端部が仕切り部材9Cの下端に固定され、下端部が熱交換器ユニット10の下部のフレームに固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。
【0073】
仕切り部材9Cが傾斜して設けられることで、第3実施形態と同等のスペースを維持しつつ、防塵ネット8Ca、8Cbは第3実施形態の防塵ネット8Ba、8Bbに比べて、更により大きな傾斜角を形成することができる。傾斜角が大きくなるほど、第3施形態で上述した、防塵ネット8Bの目詰まりを抑制する効果が更に大きくなる。
【0074】
一方、防塵ネット8Ca、8Cbの傾斜角と第3実施形態の防塵ネット8Ba、8Bbの傾斜角を同等にした場合、第3実施形態と比べて防塵装置の構成を省スペースで実現できる。
【0075】
ところで、第2実施形態及び第3実施形態のように仕切り部材9,9Bを開口部22と冷却ファン3を結ぶ冷却風経路上に設けると、仕切り部材9,9Bが通風抵抗となって、冷却装置の冷却効率が低下する。また、仕切り部材9,9Bの分だけ冷却風の流路面積が減るため、冷却風の風速が上昇し、単位時間単位面積当たりに通過する塵埃も増加する。その結果、防塵ネット8、8Bに目詰まりが生じやすくなる可能性がある。
【0076】
本実施形態では、仕切り部材9Cが傾斜して設けられることで、第2実施形態及び第3実施形態に比べて冷却風の流路面積が増える。これにより冷却風の風速が低下し、単位時間単位面積当たりに通過する塵埃も減少する。その結果、防塵ネット8Cに目詰まりが生じ難くなる。また、通風抵抗の減少により冷却装置の冷却効率の向上も期待できる。
【0077】
以上のように構成した本実施形態においても、第3実施形態及と同様に、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8Ca、8Cbの目詰まりを抑制することができる。
【0078】
更に、本実施形態では、仕切り部材9Cが傾斜して設けられることにより、目詰まり抑制効果を向上することができ、または、防塵装置の構成を省スペースで実現できる。また、通風抵抗の減少により冷却装置の冷却効率の向上も期待できる。
【0079】
本発明の第5実施形態を図9を用いて説明する。
【0080】
図9は、本発明の第5実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Dを示す断面図である。第5実施形態は第3実施形態の変形例であり、第3実施形態の上側の防塵ネット8Baは、上端部が開口部21の導風ガイド25の冷却風最上流側に固定されるのに対し、第5実施形態の上側の防塵ネット8Daは、上端部が開口部21の導風ガイド25の冷却風最下流側に固定される。
【0081】
第1〜4実施形態の防塵装置は、側面の開口部22から流入する塵埃を対象にし、上面の開口部21から流入する冷却風中の塵埃は防塵ネット26により捕捉されている。一般に、防塵ネットの目詰まりの原因となるような粒径の大きい塵埃は、側面の開口部22から流入することが多く、上面の開口部21に設けられた防塵ネット26が目詰まりすることは少ない。しかし、産廃処理など塵埃の非常に多い稼動現場では、状況によっては防塵ネット26が目詰まりする可能性もある。本実施形態は、開口部21から流入する冷却風中の塵埃にも対応するものである。
【0082】
仕切り部材9Dは、開口部22と冷却ファン3を結ぶ冷却風経路上に、ブラケット28a,28bに略鉛直に固定されて設けられている。第3実施形態の仕切り部材9Bに比べて、やや冷却風下流側に位置している。
【0083】
防塵ネット8Dは上側の防塵ネット8Daと防塵ネット8Dbとに上下に分割され、仕切り部材9Dにより保持されている。防塵ネット8Baは、上端部が開口部21の導風ガイド25の冷却風最上流側に固定され、下端部が仕切り部材9Dの上端に固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。防塵ネット8Dbは、上端部が仕切り部材9Dの下端に固定され、下端部が熱交換器ユニット10の下部のフレームに固定されることによって、上端部が開口部22側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。
【0084】
以上のように構成した本実施形態においても、第3実施形態及と同様に、側面の開口部22から流入する冷却風中の塵埃に対し、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8Dの目詰まりを抑制することができる。
【0085】
更に、本実施形態では、上面の開口部21から流入する冷却風中の塵埃に対しても、同様な効果を有する。
【0086】
また、第1〜4実施形態の防塵ネット26が不要となり、部材削減によりコスト的にも有利である。
【0087】
本発明の第6実施形態を図10を用いて説明する。
【0088】
図10は、本発明の第6実施形態に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Eを示す断面図である。本実施形態は防塵ネット8Eが建屋カバー27Eに設けられている。
【0089】
エンジン室1Eは開閉可能に建屋カバー27Eに覆われている。建屋カバー27Eは、側面にカバー上部27Eaと開口部形成部材27Eb〜dとカバー下部27Eeと、上面に開口部形成部材27Efを有している。また、建屋カバー27Eには、冷却風を取り入れるための開口部21E,22Eが形成されている。本実施形態では、カバー上部27Eaと開口部形成部材27Efとから形成される領域を上部の開口部21Eとし、建屋カバー27Eの冷却風最上流で鉛直に形成される平面領域を側面側の開口部22Eとする。すなわち、カバー上部27Eaの下端と、開口部形成部材27Eb〜dそれぞれの下端とを含む領域が開口部22Eとなる。
【0090】
開口部形成部材27Eb〜dは、上端部が熱交換器ユニット10側に近づき下端部が開口部22E側に近づくように傾斜して設けられている。
【0091】
防塵ネット8Eは防塵ネット8Ea〜dとに上下に分割され、建屋カバー27Eに設けられている。防塵ネット8Eaは、上端部がカバー上部27Eaの下端に固定され、下端部が開口部形成部材27Ebの上端に固定され、防塵ネット8Ebは、上端部が開口部形成部材27Ebの下端に固定され、下端部が開口部形成部材27Ecの上端に固定され、防塵ネット8Ecは、上端部が開口部形成部材27Ecの下端に固定され、下端部が開口部形成部材27Edの上端に固定され、防塵ネット8Edは、上端部が開口部形成部材27Efの上流端に固定され、下端部が開口部21Eの導風ガイド25の冷却風最上流側に固定されていることによって、防塵ネット8Ea〜dは、上端部が開口部22E側に近づき下端部が熱交換器ユニット10側に近づくように傾斜している。
【0092】
以上のように構成した本実施の形態においても、防塵ネット8Ea〜dが傾斜して設置されていることにより、第1実施形態と同様に、塵埃の多い稼動現場での防塵ネット8Ea〜dの目詰まりを抑制することができる。
【0093】
更に、防塵ネット8Eが建屋カバー27Eに設けられていることにより、エンジン室1Eに流入する塵埃を減少させ、その結果、エンジン室1E内の清掃手間を少なくすることができる。
【0094】
また、建屋カバー27Eの開閉をすることなく防塵ネット8Eにアクセスし、防塵ネット8Eの着脱作業をすることなく、防塵ネット8Eの清掃を容易に行うことができる。
【0095】
本発明の参考例を図11を用いて説明する。
【0096】
図11は、本発明の参考例に係わる建設機械の防塵装置が備えられるエンジン室1Fを示す断面図である。本実施形態は、防塵ネット80に関しては図4に示す従来の防塵装置と同様だが、従来構成に更に仕切り部材9Fを備えたものである。
【0097】
仕切り部材9Fを備えることにより、第2実施形態と同様に塵埃の多い稼動現場での防塵ネット80の目詰まりを抑制することができる。
【符号の説明】
【0098】
1〜1F エンジン室
2 エンジン
3 冷却ファン
4 シュラウド
8〜8E,80 防塵ネット
9〜9F 仕切り部材
10 熱交換器ユニット
11 ラジエータ
12 オイルクーラ
13 インタークーラ
14 燃料クーラ
15 コンデンサ
18 バッテリー
21,22,23,24 開口部
25 導風ガイド
26 防塵ネット(上面)
27 建屋カバー
28 ブラケット
31 クランクプーリ
32 ファンプーリ
33 ファンベルト
34 補助回転軸
35 エンジンクランク軸
101 油圧ショベル
102 下部走行体
113 上部旋回体
104 フレーム
105 キャビン
106 カウンタウェイト
110 フロントアタッチメント
111 ブーム
112 ブームシリンダ
113 アーム
114 アームシリンダ
115 バケット
116 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンにより誘起され開口部から取り入れられた冷却風により熱交換器装置を冷却する冷却装置に、この熱交換器装置の冷却風上流側に位置するように設けられ、冷却風中の塵埃を捕捉する防塵ネットを備えた建設機械の防塵装置において、
前記防塵ネットは、上端部が開口部側に近づき下端部が熱交換装置側に近づくように傾斜していることを特徴とする建設機械の防塵装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の防塵装置において、
更に、前記開口部と前記冷却ファンを結ぶ冷却風経路上で、かつ前記防塵ネットの冷却風上流側に位置するように設けられた仕切り部材を備えたことを特徴とする建設機械の防塵装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の防塵装置において、
更に、前記開口部と前記冷却ファンを結ぶ冷却風経路上に設けられ、前記防塵ネットを上下に分割して保持する仕切り部材を備えたことを特徴とする建設機械の防塵装置。
【請求項4】
請求項3記載の建設機械の防塵装置において、
前記仕切り部材は、上端部が熱交換装置側に近づき下端部が開口部側に近づくように傾斜していることを特徴とする建設機械の防塵装置。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械の防塵装置において、
前記冷却装置は、建設機械のエンジン室に設けられており、
前記防塵ネットは、前記エンジン室を開閉可能に覆う建屋カバーに設けられていることを特徴とする建設機械の防塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−229744(P2010−229744A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79734(P2009−79734)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】