説明

建設機械

【課題】 洗車作業で多くの水が浴びせ掛けられた場合でも、外気フィルタに水が付着するのを防止する。
【解決手段】 キャブ8の左,右方向の外側に位置する左側面部13には、外気ダクト21の外気導入口21Dを覆うように設けたフィルタカバー25の下側位置にのみ開口する下側開口部26Dを有する庇部材26を設ける構成とする。従って、庇部材26の下側開口部26Dによりフィルタカバー25の下側位置から外気ダクト21の外気導入口21Dに向け外気を導入することができる。一方で、洗車作業でキャブ8に勢いよく水を浴びせ掛けた場合、キャブ8の左側面部13に沿って多くの水が流れ落ちるが、フィルタカバー25の下側位置にのみ開口した庇部材26は、流れ落ちる水が上側または横側から外気フィルタ24に向けて流れるのを阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ内に空調装置の室内機を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持部材を形成する旋回フレームと、該旋回フレーム上に取付けられ床面、前,後と左,右の側面および天面によって居住空間を画成するキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の後側に位置して前記床面上に設けられ前記キャブ内の居住空間に調和空気を供給する空調装置の室内機とを備えている。前記キャブには、左側面にオペレータが乗降するときに開閉するドアが設けられている。
【0004】
ここで、キャブの左側面のうち、ドアの後側位置には、前記室内機に外気を導入するための導入口を有する外気ダクトが設けられ、該外気ダクトの外気導入口内には、吸込む外気中の塵埃を捕捉するための外気フィルタが取付けられている。このキャブの左側面には、前記外気ダクトの外気導入口を覆うようにフィルタカバーが取付けられ、このフィルタカバーは、外気フィルタのメンテナンスを行えるように前記キャブに対して開閉可能に取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、フィルタカバーを閉じた状態では、外気ダクトの外気導入口を覆って雨水等が外気フィルタに付着するのを防止することができる。さらに、キャブの下側に位置する旋回フレームの側面に外気ダクトの外気導入口を設け、外気フィルタを覆うようにフィルタカバーを取付けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−57245号公報
【特許文献2】特開平4−27618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1によるものでは、フィルタカバーによって外気ダクトの外気導入口を覆うことにより、外気フィルタに雨水が付着するのを防止することができる。また、特許文献2も同様に、フィルタカバーによって外気フィルタを雨水等から保護している。
【0008】
しかし、油圧ショベルは、土砂の掘削作業等を行うものであり、キャブ等は泥によって汚れ易く、洗車作業が頻繁に行われている。この洗車作業では、水を勢いよく浴びせ掛けて洗浄するから、このときの水がフィルタカバー内に入り込んで外気フィルタに付着する虞がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、洗車作業で多くの水が浴びせ掛けられた場合でも、外気フィルタに水が付着するのを防止できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、車体の支持部材を形成する車体フレームと、該車体フレーム上に取付けられ内部にオペレータの居住空間を画成すると共に、一の側面にオペレータが乗降するときに開閉するドアが設けられたキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、前記キャブ内に設けられ前記居住空間に調和空気を供給する空調装置の室内機と、前記ドアの後側に位置して前記キャブの一の側面に設けられ前記室内機に外気を導入するための導入口を有する外気ダクトと、該外気ダクトの外気導入口に設けられた外気フィルタと、前記外気ダクトの外気導入口を覆うように前記キャブの一の側面に開閉可能に設けられたフィルタカバーとを備えている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャブの一の側面、前記外気ダクト、前記フィルタカバーのいずれかには、前記フィルタカバーの下側位置にのみ開口する下側開口部を有する庇部材を設け、該庇部材の下側開口部から前記外気フィルタに向けて外気を導入する構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記庇部材は、前記キャブの一の側面と前記フィルタカバーとの間で、前記外気フィルタの上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体により形成したことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記庇部材の下側開口部の位置には、前記外気ダクトの外気導入口の位置よりも前記フィルタカバーに向けて突出することにより前記下側開口部から前記外気フィルタに水が浸入するのを防止する水浸入防止突起を設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記キャブの一の側面のうち、前記フィルタカバーの下側位置には、前記庇部材の下側開口部に向けて外気を円滑に案内する凹湾曲面を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、キャブの一の側面、外気ダクト、フィルタカバーのいずれかには、下側開口部によってフィルタカバーの下側位置にのみ開口する庇部材を設けているから、この庇部材の下側開口部により前記フィルタカバーの下側位置から外気ダクトの外気導入口に向け外気を導入することができる。
【0016】
従って、洗車作業でキャブに勢いよく水を浴びせ掛け、キャブの一の側面に沿って多くの水が流れ落ちた場合でも、フィルタカバーの下側位置にのみ開口した庇部材は、流れ落ちる水が上側または横側から外気フィルタに向けて流れるのを阻止して、水が外気フィルタに付着するのを防止することができる。
【0017】
この結果、洗車作業、豪雨等によりキャブに多くの水が掛かっても、外気フィルタに水が付着するのを防止できるから、塵埃の堆積による外気の吸入効率の低下、カビの発生等を防止でき、信頼性を向上することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、外気フィルタの上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体からなる庇部材は、簡単な構成で上側または横側からの水の浸入を防止できる。しかも、庇部材は、キャブの一の側面とフィルタカバーとの間に設けているから、フィルタカバーを開いた状態では、外気フィルタを大きく露出させることができ、メンテナンス作業、交換作業等を容易に行うことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、庇部材の下側開口部には、外気ダクトの外気導入口の位置よりもフィルタカバーに向けて突出した水浸入防止突起を設けているから、例えば洗車作業時にフィルタカバーの下側から上向きに水を掛けた場合、水浸入防止突起は、庇部材の下側開口部から外気フィルタに水が浸入するのを防止することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、キャブの一の側面には、フィルタカバーの下側位置に凹湾曲面を設けているから、この凹湾曲面は、庇部材の下側開口部に向けて外気を円滑に案内することができ、外気ダクトに外気を効率よく導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1中のキャブを拡大して示す正面図である。
【図3】キャブ内の構造を図2中の矢示III−III方向からみた横断面図である。
【図4】キャブの左側面部の後側位置をフィルタカバーを開いた状態で示す要部拡大の正面図である。
【図5】図4を斜め後側から見上げて見た要部拡大の斜視図である。
【図6】図4中の矢示VI−VI方向から見た要部拡大の断面図である。
【図7】外気ダクトとシール部材とを分離した状態で示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による庇部材等を示す要部拡大の断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による庇部材等を示す要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0023】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0024】
上部旋回体3は、支持部材を形成する車体フレームとしての旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の左前側に搭載された後述のキャブ8と、該キャブ8の後側に位置して旋回フレーム5に搭載されたエンジン、油圧ポンプ、制御弁等(いずれも図示せず)を覆う建屋カバー6と、前記旋回フレーム5の後部に取付けられたカウンタウエイト7とにより大略構成されている。
【0025】
8は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブで、該キャブ8は、オペレータが搭乗して各種操作を行う居住空間を画成するものである。キャブ8は、図2、図3に示す如く、後述するフロア部材9とキャブボックス10とにより構成されている。
【0026】
9はキャブ8の床面を構成するフロア部材で(図3参照)、該フロア部材9は、前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。フロア部材9は、その四隅等が防振マウント(図示せず)を介して旋回フレーム5に支持されている。さらに、フロア部材9のほぼ中央位置には運転席台座(図示せず)が設けられ、該運転席台座上には後述の運転席17が設けられている。
【0027】
10はフロア部材9と共にキャブ8を構成するキャブボックスで、該キャブボックス10は、フロア部材9上にオペレータの居住空間を画成するものである。このキャブボックス10は、図2、図3等に示すように、前面部11、後面部12、左側面部13、右側面部14および天面部15によりボックス状に形成され、前面部11、後面部12、左側面部13、右側面部14の下部がフロア部材9の周囲に取付けられている。
【0028】
キャブボックス10の一の側面となる左側面部13には、前,後方向の中間部に位置して上,下方向に延びるセンタピラー13Aが設けられている。このセンタピラー13Aよりも前側はオペレータが出入りする乗降口13Bとなり、センタピラー13Aよりも後側は閉塞された後パネル部13Cとなっている。前記乗降口13Bは、センタピラー13Aに回動可能に取付けられたドア16によって開閉することができる。
【0029】
ここで、左側面部13の後パネル部13Cには、下側寄りに位置してカバー取付部13Dが設けられている。このカバー取付部13Dは、後述のフィルタカバー25を閉じたときに、該フィルタカバー25が左側に大きく突出しないように収容するもので、該フィルタカバー25の傾斜に合わせて後側に向け上側に傾斜した広幅な凹溝として形成されている。しかも、カバー取付部13Dには、後述する外気ダクト21を取付けるために四角形状の開口からなるダクト取付孔13Eが形成されている。
【0030】
さらに、左側面部13の後パネル部13Cには、後述するフィルタカバー25の下側に位置して凹湾曲面13Fが設けられている。この凹湾曲面13Fは、後パネル部13Cとカバー取付部13Dとの間を緩やかな凹円弧状をもって湾曲させるものである。凹湾曲面13Fは、フィルタカバー25の下側位置でカバー取付部13Dとの間から外気ダクト21に向けて流れる外気を、緩やかな円弧面で円滑に案内することにより、外気ダクト21に外気を効率よく導入させることができる。
【0031】
17はフロア部材9の運転席台座上に設けられた運転席(図3参照)で、該運転席17はオペレータが着座するものである。また、運転席17の左,右両側には、作業装置4等を操作する左,右の作業レバー18が設けられている。一方、運転席17の前側となるフロア部材9の前部には下部走行体2を走行させるための左,右の走行レバー(ペダル)19が配設されている。さらに、運転席17の後側には、後述する空調装置の室内機20が配設されている。
【0032】
20はキャブ8内に位置してフロア部材9上に設けられた空調装置の室内機を示している。この室内機20は、所望の温度に調整した冷風または温風を調和空気としてキャブ8内の居住空間に吹き出すことにより、キャブ8内をオペレータが望む温度環境に調整するものである。また、室内機20は、左,右方向に延びる横置き状態でフロア部材9の後部に設けられている。そして、室内機20は、左,右方向に延びる箱体状に形成されたハウジング20Aと、該ハウジング20Aに内蔵された電動式の送風ファン、冷風を発生するエバポレータ、温風を発生するヒータコア、風向を切換える切換板(いずれも図示せず)とにより大略構成されている。室内機20はエンジン側に設けられるコンデンサ、コンプレッサ等からなる室外機(図示せず)と接続されている。
【0033】
21は室内機20に外気を導入するために該室内機20に接続して設けられた外気ダクトである。この外気ダクト21は、図4、図5に示すように、上流側となる吸込側がキャブボックス10の左側面部13に設けられたダクト取付孔13Eに嵌合状態で取付けられ、図3に示すように、下流側が室内機20のハウジング20Aの外気流入口に取付けられている。
【0034】
詳しくは、外気ダクト21は、図6、図7に示すように、外気の導入方向の上流側(左側)に位置してダクト取付孔13E内に嵌合した角枠体状のフィルタ収容枠部21Aと、該フィルタ収容枠部21Aから室内機20に向けて右側に延びた接続管部21Bとにより角型のダクトとして構成されている。ここで、フィルタ収容枠部21Aの上流側端部には、周方向の外側に延びるようにフランジ部21Cが設けられ、該フランジ部21Cの前面側には後述の庇部材26が一体的に設けられている。フィルタ収容枠部21Aの開口端となるフランジ部21Cの内周側は、室内機20に外気を導入するための外気導入口21Dとなっている。
【0035】
このような、外気ダクト21は、左側面部13のダクト取付孔13Eに対し、外側から挿嵌することにより、該ダクト取付孔13E内にフィルタ収容枠部21Aを嵌合させる。これにより、フランジ部21Cは、カバー取付部13Dの底面に対面し、所望の隙間をもった状態で複数本のボルト22によって左側面部13の後パネル部13Cに取付けられている。
【0036】
一方、フランジ部21Cの全周にはシール部材23が取付けられ、該シール部材23は、例えば弾性を有する発泡樹脂材料からなり、一般的にウェザストリップと呼ばれるものである。このシール部材23は、カバー取付部13Dの底面に密着することにより、フィルタカバー25内(カバー取付部13D内)に流れ込んだ雨水等がダクト取付孔13Eからキャブ8内に浸入するのを防止するものである。
【0037】
24は外気ダクト21の外気導入口21Dに設けられた外気フィルタである。この外気フィルタ24は、例えば角枠状のケース24A内に蛇腹状のフィルタエレメント24Bを収容することにより形成され、外気導入口21Dからフィルタ収容枠部21A内に着脱可能に挿嵌されている。これにより、外気フィルタ24は、空調装置の室内機20に導入するための外気から塵埃等の異物を除去し、清浄な空気だけを室内機20側に流通させるものである。
【0038】
25は外気ダクト21の外気導入口21Dを覆うようにキャブ8の左側面部13に設けられたフィルタカバーである。このフィルタカバー25は、図2に示すように、左側面部13のカバー取付部13Dに嵌まるように傾斜した蓋板として形成されている。フィルタカバー25は、図3、図5に示すように、後側に向け斜め上側に傾斜した板状のカバー本体25Aと、該カバー本体25Aの基端側を後パネル部13Cの前側寄り位置に開閉可能に取付けるヒンジ25Bと、フィルタカバー25の先端側を後パネル部13Cの後側寄り位置に固定するキーシリンダ25Cとにより大略構成されている。キーシリンダ25Cは、フィルタカバー25を閉扉状態で固定すると共に、いたずらを防止するものである。
【0039】
カバー本体25Aは、図5、図6に示す如く、カバー取付部13Dに倣うように略平行四辺形状に形成され、その周囲にはカバー取付部13D側に屈曲することにより折返し部25A1が形成されている。この折返し部25A1は、カバー本体25Aの強度を維持する機能の他に、フィルタカバー25の周囲から外気フィルタ24に向けて雨水等が入り難くする機能も有している。
【0040】
26は外気ダクト21に設けられた第1の実施の形態による庇部材を示している。この庇部材26は、フィルタカバー25の下側位置から外気を吸込ませるものである。庇部材26は、外気ダクト21のフランジ部21Cの前面に一体的に設けられている。具体的に、庇部材26は、キャブ8の左側面部13とフィルタカバー25との間に位置するもので、外気ダクト21のフランジ部21Cの前面からフィルタカバー25に向けて延びている。庇部材26は、外気フィルタ24の上側位置をフィルタ収容枠部21Aに沿うように横方向に延びた上側庇部26Aと、該上側庇部26Aの前端部からフィルタ収容枠部21Aに沿うように下方向に延びた前横側庇部26Bと、前記上側庇部26Aの後端部からフィルタ収容枠部21Aに沿うように下方向に延びた後横側庇部26Cとにより、外気フィルタ24の上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体として構成されている。
【0041】
ここで、庇部材26は、上述したように上側庇部26Aと前横側庇部26Bと後横側庇部26Cとにより逆U字状の枠状体として形成しているから、その下側位置には下側開口部26Dが形成されている。この下側開口部26Dは、フィルタカバー25の下側位置にのみ開口するもので、外気フィルタ24に向けて外気を導入するものである。
【0042】
27は庇部材26の先端部に設けられたシール部材で、該シール部材27は、前述したフランジ部21Cのシール部材23とほぼ同様に、例えば弾性を有する発泡樹脂材料からなり、一般的にウェザストリップと呼ばれるものである。このシール部材27は、図6に示す如く、フィルタカバー25を閉じたときに、そのカバー本体25A内面に密着する。
【0043】
これにより、庇部材26は、シール部材27によってフィルタカバー25との間を液密にシールできるから、上側や横側から外気フィルタ24に向け洗車時の洗浄水、雨水等が浸入するのを防止することができる。一方で、庇部材26は、下側開口部26Dによって下側のみに開口しているから、洗車時の洗浄水、雨水等が浸入し難い構造となっており、外気だけを外気フィルタ24に向けて流通させることができる。
【0044】
28は庇部材26の下側開口部26Dの位置に設けられた1段目の水浸入防止突起である。この水浸入防止突起28は、外気ダクト21の外気導入口21Dの位置、即ち、外気フィルタ24を挟んで庇部材26の上側庇部26Aの反対側に位置し、前横側庇部26Bと後横側庇部26Cとの間を接続するように横方向に延びている。
【0045】
この状態で、1段目の水浸入防止突起28は、フランジ部21Cよりもフィルタカバー25に向けて前方に突出する構成となっている。これにより、1段目の水浸入防止突起28は、下側から上側に向けて水が掛けられた場合に、隔壁となって水が外気フィルタ24に浸入するのを防止するものである。従って、水浸入防止突起28は、フィルタカバー25を閉じた状態で、そのカバー本体25Aの折返し部25A1先端と外気フィルタ24とを結ぶ直線よりも前方に突出するように形成されている。
【0046】
また、29は庇部材26の下側開口部26Dの位置、詳しくは、1段目の水浸入防止突起28と外気フィルタ24との間に設けられた2段目の水浸入防止突起である。この水浸入防止突起29は、1段目の水浸入防止突起28と間隔をもって平行に並ぶように配置されている。2段目の水浸入防止突起29は、1段目の水浸入防止突起28とほぼ同様に、フランジ部21Cよりもフィルタカバー25に向けて前方に突出する構成となっている。これにより、1段目の水浸入防止突起28を通過した水があっても、2段目の水浸入防止突起29がこの水の浸入を防ぐことができる。
【0047】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0048】
まず、オペレータは、キャブ8に搭乗し、走行レバー19を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、キャブ8内のオペレータは、作業レバー18を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0049】
油圧ショベル1の作業時には、キャブ8内の作業環境を良好にするために、空調装置を運転して居住空間に調和空気を供給する。この空調装置の運転時に、例えば外気を吸込んで調和空気として居住空間に吹出す場合、フィルタカバー25のカバー本体25Aと左側面部13の凹湾曲面13Fとの間から導入される外気は、庇部材26の下側開口部26Dから外気フィルタ24を通過し、洗浄化された状態で室内機20に供給される。
【0050】
一方、油圧ショベル1を洗車する場合には、キャブ8に対しても多くの水が勢いよく掛けられる。この洗車作業時に、庇部材26は、上側や横側から外気フィルタ24に向け洗浄水が浸入するのを防止することができる。
【0051】
かくして、第1の実施の形態によれば、キャブ8の左,右方向の外側に位置する左側面部13には、外気ダクト21の外気導入口21Dを覆うように設けたフィルタカバー25の下側位置にのみ開口する下側開口部26Dを有する庇部材26を設ける構成とした。従って、庇部材26の下側開口部26Dによりフィルタカバー25の下側位置から外気ダクト21の外気導入口21Dに向け外気を導入することができる。
【0052】
一方、洗車作業でキャブ8に勢いよく水を浴びせ掛けた場合、キャブ8の左側面部13に沿って多くの水が流れ落ちる。然るに、フィルタカバー25の下側位置にのみ開口した庇部材26は、流れ落ちる水が上側または横側から外気フィルタ24に向けて流れるのを阻止することができ、水が外気フィルタ24に付着するのを防止することができる。
【0053】
この結果、洗車作業、豪雨等によりキャブ8に多くの水が勢いよく掛かっても、庇部材26は外気フィルタ24に水が付着するのを防止することができる。これにより、外気フィルタ24に塵埃が堆積することによる外気の吸入効率の低下、カビの発生等を防止でき、信頼性を向上することができる。
【0054】
しかも、外気ダクト21のフランジ部21Cの全周にはシール部材23を取付け、このシール部材23をキャブ8の左側面部13に設けたカバー取付部13Dの底面に密着させる構成としている。これにより、シール部材23は、フィルタカバー25内に水が流れ込んでも、この水がダクト取付孔13Eからキャブ8内に浸入するのを防止することができる。
【0055】
また、庇部材26の先端部にはシール部材27を取付け、このシール部材27をフィルタカバー25のカバー本体25A内面に密着させる構成としている。これにより、シール部材27は、庇部材26とフィルタカバー25との間の密閉性を向上することができるから、庇部材26による水の浸入防止効果を高めることができる。
【0056】
また、フィルタカバー25のカバー本体25Aの周囲には、左側面部13側に屈曲することにより折返し部25A1を形成している。これにより、折返し部25A1は、カバー本体25Aの強度を高めることができると共に、フィルタカバー25の周囲から外気フィルタ24に向けて雨水等が入り難くすることができる。
【0057】
また、庇部材26は、左側面部13の後パネル部13Cとフィルタカバー25のカバー本体25Aとの間で、外気フィルタ24の上側位置を取囲む上側庇部26Aおよび横側位置を取囲む前,後の横側庇部26B,26Cにより逆U字状の枠状体として形成している。従って、逆U字状に形成した庇部材26は、簡単な構成で上側または横側からの水の浸入を防止できる。しかも、庇部材26は、フィルタカバー25を開いた状態では、外気フィルタ24を大きく露出させることができ、外気フィルタ24のメンテナンス作業、交換作業等を容易に行うことができる。
【0058】
一方、庇部材26の下側開口部26Dの位置には、外気ダクト21の外気導入口21Dの位置よりもフィルタカバー25に向けて突出した水浸入防止突起28,29を設ける構成としている。これにより、洗車作業時にフィルタカバー25の下側から上向きに水が掛けられた場合でも、水浸入防止突起28,29は、庇部材26の下側開口部26Dから外気フィルタ24に水が浸入するのを防止することができる。特に、水浸入防止突起28,29は、フィルタカバー25の下側から外気ダクト21に向かう流れに対し、2段階で配置しているから、庇部材26の下側開口部26Dからの水の浸入をより確実に防ぐことができる。
【0059】
さらに、左側面部13のカバー取付部13Dには、フィルタカバー25の下側に位置して凹湾曲面13Fを設けているから、外気を導入するときに、庇部材26の下側開口部26Dに向けて外気を円滑に案内することができ、外気ダクト21に外気を効率よく導入することができる。
【0060】
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、庇部材をキャブの一の側面に設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0061】
図8において、31はキャブ8の一の側面となる左側面部13に設けられた第2の実施の形態による庇部材を示している。この庇部材31は、フィルタカバー25の下側位置から外気を吸込ませるものである。庇部材31は、外気ダクト21と別個に設けられ、該外気ダクト21を左側面部13の後パネル部13Cにボルト22を用いて取付けるときに、共締めによって後述の取付板部31Aが後パネル部13Cに固定されている。
【0062】
庇部材31は、外気ダクト21のフランジ部21Cと対面するようにフィルタ収容枠部21Aの周囲に設けられた角枠状の取付板部31Aと、該取付板部31Aの上縁からフィルタカバー25に向けて延びた上側庇部31Bと、前記取付板部31Aの前縁からフィルタカバー25に向けて延びた前横側庇部31Cと、前記取付板部31Aの後縁からフィルタカバー25に向けて延びた後横側庇部(図示せず)とにより、外気フィルタ24の上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体として構成されている。
【0063】
ここで、庇部材31は、前述した第1の実施の形態による庇部材26とほぼ同様に、逆U字状の枠状体として形成しているから、その下側位置には下側開口部31Dが形成されている。この下側開口部31Dは、フィルタカバー25の下側位置にのみ開口するもので、外気フィルタ24に向けて外気を導入するものである。庇部材31の先端部にはシール部材27が取付けられている。
【0064】
32は庇部材31の下側開口部31Dの位置に設けられた1段目の水浸入防止突起である。この水浸入防止突起32は、庇部材31の取付板部31Aの下縁からフィルタカバー25に向け、フランジ部21Cよりも前方に突出して形成されている。また、33は1段目の水浸入防止突起32と外気フィルタ24との間に設けられた2段目の水浸入防止突起を示している。これらの水浸入防止突起32,33は、外気フィルタ24側への水の浸入を防ぐものである。
【0065】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、庇部材31は、外気ダクト21と別部材として形成しているから、既存の外気ダクト21に対し、追加加工を施すことなく庇部材31を設けることができる。
【0066】
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、庇部材をフィルタカバーに設ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図9において、41はフィルタカバー25の内面側に設けられた第3の実施の形態による庇部材を示している。この庇部材41は、フィルタカバー25の下側位置から外気を吸込ませるものである。庇部材41は、例えばフィルタカバー25のカバー本体25Aに一体的に設けられている。この他にも、接着、螺着等の手段で庇部材41をフィルタカバー25に設けることができる。
【0068】
庇部材41は、後述する1段目の水浸入防止突起42を含んで角筒体として形成されている。この庇部材41は、フィルタカバー25の上部位置から外気ダクト21に向けて延びた上側庇部41Aと、フィルタカバー25の前部位置から外気ダクト21に向けて延びた前横側庇部41Bと、フィルタカバー25の後部位置から外気ダクト21に向けて延びた後横側庇部(図示せず)とにより、フィルタカバー25を閉じたときには外気フィルタ24の上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体として構成されている。
【0069】
ここで、庇部材41は、前述した第1の実施の形態による庇部材26とほぼ同様に、逆U字状の枠状体として形成しているから、その下側位置には下側開口部41Cが形成されている。この下側開口部41Cは、フィルタカバー25の下側位置にのみ開口するもので、外気フィルタ24に向けて外気を導入するものである。庇部材41の先端部には、フランジ部21Cとの間をシールするシール部材27が取付けられている。
【0070】
42は庇部材41の下側開口部31Dの位置に設けられた1段目の水浸入防止突起である。この水浸入防止突起42は、庇部材41の下側に横方向に延び、フランジ部21Cよりも前方に突出して形成されている。また、43は1段目の水浸入防止突起42と外気フィルタ24との間に設けられた2段目の水浸入防止突起を示している。これらの水浸入防止突起42,43は、外気フィルタ24側への水の浸入を防ぐものである。
【0071】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、庇部材41は、フィルタカバー25に設けているから、例えばフィルタカバー25に簡単な加工を施したり、交換するだけで庇部材31を設けることができる。
【0072】
なお、第1の実施の形態では、庇部材26の下側開口部26Dの位置に、1段目の水浸入防止突起28と2段目の水浸入防止突起29とを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、庇部材26の下側開口部26Dの位置に水浸入防止突起を1段だけ設ける構成としてもよい。また、水浸入防止突起を3段設ける構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0073】
一方、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 旋回フレーム(車体フレーム)
8 キャブ
9 フロア部材
10 キャブボックス
13 左側面部(一の側面)
13A センタピラー
13B 乗降口
13C 後パネル部
13D カバー取付部
13E ダクト取付孔
13F 凹湾曲面
16 ドア
17 運転席
20 室内機
21 外気ダクト
21A フィルタ収容枠部
21B 接続管部
21C フランジ部
21D 外気導入口
24 外気フィルタ
25 フィルタカバー
26,31,41 庇部材
26A,31B,41A 上側庇部
26B,31C,41B 前横側庇部
26C 後横側庇部
26D,31D,41C 下側開口部
28,32,42 1段目の水浸入防止突起
29,33,43 2段目の水浸入防止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の支持部材を形成する車体フレームと、該車体フレーム上に取付けられ内部にオペレータの居住空間を画成すると共に、一の側面にオペレータが乗降するときに開閉するドアが設けられたキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、前記キャブ内に設けられ前記居住空間に調和空気を供給する空調装置の室内機と、前記ドアの後側に位置して前記キャブの一の側面に設けられ前記室内機に外気を導入するための導入口を有する外気ダクトと、該外気ダクトの外気導入口に設けられた外気フィルタと、前記外気ダクトの外気導入口を覆うように前記キャブの一の側面に開閉可能に設けられたフィルタカバーとを備えてなる建設機械において、
前記キャブの一の側面、前記外気ダクト、前記フィルタカバーのいずれかには、前記フィルタカバーの下側位置にのみ開口する下側開口部を有する庇部材を設け、該庇部材の下側開口部から前記外気フィルタに向けて外気を導入する構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記庇部材は、前記キャブの一の側面と前記フィルタカバーとの間で、前記外気フィルタの上側位置および横側位置を取囲む逆U字状の枠状体により形成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記庇部材の下側開口部の位置には、前記外気ダクトの外気導入口の位置よりも前記フィルタカバーに向けて突出することにより前記下側開口部から前記外気フィルタに水が浸入するのを防止する水浸入防止突起を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記キャブの一の側面のうち、前記フィルタカバーの下側位置には、前記庇部材の下側開口部に向けて外気を円滑に案内する凹湾曲面を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−102500(P2012−102500A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250642(P2010−250642)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】