説明

建設機械

【課題】建設機械のデザイン性、運転室の強度および居住性に優れた建設機械を提供すること。
【解決手段】建設機械1の運転室6の後部に設けられる左右一対の柱部材14L、14Rと、一対の柱部材14L、14Rの中央部同士を連結する梁部材17とを有する建設機械1において、一対の柱部材14L、14Rは、上方に行くに従って前方に傾斜しており、梁部材17の左右両端部18b、18cとつながっており、梁部材17は、左右中央部18aの前端18afが、左右両端部18b、18cの前端18bf、18cfよりも後方にオフセットされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械は、運転室の外郭であるフレームと、フレームに取り付けられ、運転室と外部を区画するパネル群とを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フレームは、水平に配置されるベース、ベース後部の上面に立設される左右一対の柱部材、該一対の柱部材の中央部同士を連結する梁部材などで構成される。梁部材は、建設機械の転倒時などに、一対の柱部材の間隔を保つため、一対の柱部材の間に配置されている。
【0004】
パネル群は、側面パネルや背面パネルなどで構成される。側面パネルは、フレームの側面に取り付けられ、運転室の側壁となる。側面パネルの外形は、建設機械の側面から見たとき、側面パネルが一対の柱部材を外部から隠すように設計されている。背面パネルは、柱部材や梁部材の後方に設けられ、運転室の後壁となる。背面パネルは、側面パネルの後端縁に沿う形状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−106286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の柱部材は、途中で屈曲しているので、建設機械の転倒時などに、柱部材に負荷がかかると、柱部材の屈曲部に応力が集中し、屈曲部が折れ曲がるので、運転室の強度が低いという問題があった。
【0007】
運転室の強度を向上するため、柱部材がベースに対して垂直に真っ直ぐ延びていると、柱部材の形状に合わせて、側面パネルの後端縁が、柱部材の下端から上端まで、直線状に形成されることになる。そのため、側面パネルの外形の自由度が少なく、側面パネルのデザイン性が損なわれる。また、背面パネルは側面パネルの後端縁に沿う形状に形成されるので、背面パネルのデザイン性も損なわれる。
【0008】
運転室の強度と、側面パネルなどのデザイン性を両立するため、直線状の柱部材を前傾させると、柱部材の中央部同士の間に設けられる梁部材が、運転室を狭くしてしまうので、運転室の居住性が悪くなる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、建設機械のデザイン性、運転室の強度および居住性に優れた建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明は、
建設機械の運転室の後部に設けられる左右一対の柱部材と、前記一対の柱部材の中央部同士を連結する梁部材とを有する建設機械において、
前記一対の柱部材は、上方に行くに従って前方に傾斜しており、前記梁部材の左右両端部とつながっており、
前記梁部材は、左右中央部の前端が、左右両端部の前端よりも後方にオフセットされていることを特徴とする建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建設機械のデザイン性、運転室の強度および居住性に優れた建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による建設機械の外観図
【図2】本発明の一実施形態による建設機械の要部の分解斜視図
【図3】図2の組立斜視図
【図4】フレームの左側面図
【図5】フレームにパネル群を取り付けた状態の左側面図
【図6】フレームの要部の上面図
【図7】図6のA−A線に沿った断面図
【図8】図6のB−B線に沿った断面図
【図9】後中ビームの斜視図
【図10】取り付け部の説明図
【図11】図10の変形例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一のまたは対応する構成については同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による建設機械の外観図である。各図面において、矢印X1方向は前方向、矢印X2方向は後方向、矢印Y1方向は左方向、矢印Y2方向は右方向、矢印Z1方向は上方向、矢印Z2方向は下方向を表す。各方向は、運転室の運転席に着座する運転者から見た方向である。
【0015】
建設機械1は、例えば油圧ショベルであって、クローラ2を有する下部走行体3と、下部走行体3に旋回可能に支持される上部旋回体4と、上部旋回体4に搭載される作業機5および運転室6とを有している。
【0016】
作業機5は、上部旋回体4に揺動可能に取り付けられるブーム7、ブーム7の先端に揺動可能に取り付けられるアーム8、アーム8の先端に揺動可能に取り付けられるバケット9などで構成される。バケット9の代わりに、油圧クラッシャーや油圧カッターなどの他のアタッチメントが取り付けられても良い。
【0017】
運転室6は、運転者が運転操作を行うための部屋である。運転室6には、下部走行体3の走行、上部旋回体4の旋回、作業機5の動作を行うための操作レバー、操作ペダルなどが設けられている。
【0018】
なお、本実施形態の建設機械1は、油圧ショベルであるとしたが、ブルドーザなどであっても良く、建設機械1の機種は、特に限定されない。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態による建設機械の要部の分解斜視図である。図3は、図2の組立斜視図である。
【0020】
建設機械1は、運転室6の外郭であるフレーム10と、フレーム10に取り付けられ、運転室6と外部を区画するパネル群20とを有する。
【0021】
フレーム10は、ベース11、左右一対の前ピラー12L、12R、左右一対の上ピラー13L、13R、および左右一対の後ピラー(特許請求の範囲の「柱部材」に相当)14L、14Rを有する。フレーム10を構成する部材同士は、溶接などによって接合されている。
【0022】
ベース11は、枠状に形成されており、水平に配置されている。ベース11の上面には、前ピラー12L、12R、および後ピラー14L、14Rが立設されている。
【0023】
前ピラー12L、12Rは、中空の角鋼管などで構成され、ベース11の前部から上方に延びている。前ピラー12L、12Rの上端部からは、それぞれ、対応する上ピラー13L、13Rが後方に延びている。
【0024】
上ピラー13L、13Rは、それぞれ、対応する前ピラー12L、12Rと一体に成形されている。具体的には、左前ピラー12Lは左上ピラー13Lと一体に成形されており、右前ピラー12Rは右上ピラー13Rと一体に成形されている。なお、上ピラー13L、13Rは、それぞれ、対応する前ピラー12L、12Rと別に成形され、接合されてもよい。
【0025】
上ピラー13L、13Rの後端部は、それぞれ、対応する後ピラー14L、14Rの上端部と溶接などで連結されている。具体的には、左上ピラー13Lの後端部は左後ピラー14Lの上端部と連結されており、右上ピラー13Rの後端部は右後ピラー14Rの上端部と連結されている。
【0026】
上ピラー13L、13Rの後端面は、それぞれ、対応する後ピラー14L、14Rの上端部の前面に当接して固定されている。建設機械1の前倒時に、後ピラー14L、14Rが上ピラー13L、13Rを支え、前ピラー12L、12Rの後倒を抑える。
【0027】
後ピラー14L、14Rは、中空の角鋼管などで構成される。後ピラー14L、14Rは、ベース11の後部から上方に延びている。なお、後ピラー14L、14Rの詳細な構成については後述する。
【0028】
フレーム10は、前ピラー12L、12R、上ピラー13L、13R、後ピラー14L、14Rを補強するため、前上ビーム15、天井ビーム16、後上ビーム17、後中ビーム(特許請求の範囲の「梁部材」に相当)18、およびガセット部材19を有している。
【0029】
前上ビーム15は、前ピラー12L、12Rの上端部同士を連結している。前上ビーム15は、建設機械1の横転時に、前ピラー12L、12R同士の間隔が狭まるのを制限するため、前ピラー12L、12R同士の間に設けられている。前上ビーム15は、鋼板などで構成される。
【0030】
天井ビーム16は、上ピラー13L、13Rの中央部同士を連結している。天井ビーム16は、建設機械1の横転時に、上ピラー13L、13R同士の間隔が狭まるのを制限するため、上ピラー13L、13R同士の間に設けられている。天井ビーム16は、鋼板などで構成される。
【0031】
後上ビーム17は、後ピラー14L、14Rの上端部同士を連結している。後上ビーム17は、建設機械1の横転時に、後ピラー14L、14R同士の間隔が狭まるのを制限するため、後ピラー14L、14R同士の間に設けられている。後上ビーム17は、中空の角鋼管などで構成される。
【0032】
後中ビーム18は、後ピラー14L、14Rの中央部同士を連結しており、後ピラー14L、14Rは、後中ビーム18の端部につながっている。具体的には、左後ピラー14Lは後中ビーム18の左端部18b(図2および図6参照)につながっており、右後ピラー14Rは後中ビームの右端部18c(図2および図6参照)につながっている。
【0033】
後中ビーム18は、建設機械1の横転時に、後ピラー14L、14Rの間隔が狭まるのを制限するため、後ピラー14L、14Rの間に設けられている。後中ビーム18は、鋼板を加工してなる。なお、後中ビーム18の詳細な構成については後述する。
【0034】
ガセット部材19(図2および図8参照)は、後中ビーム18の上面18dと、後ピラー14L、14Rの内側面(具体的には、左後ピラー14Lの右側面14La、左後ピラー14Lの右側面14La)とを接合する。よって、建設機械1の横転時に、後中ビーム18の上方において、後ピラー14L、14Rの間隔が狭まるのを抑制することができる。
【0035】
パネル群20は、側面パネル21と、上面パネル22と、背面パネル23とを有している。パネル群20は、溶接などによってフレーム10に固定される。
【0036】
側面パネル21は、フレーム10の側面(例えば、左側面)に取り付けられ、運転室6の側壁となる。側面パネル21の外形は、建設機械1の側面から見たとき、側面パネル21が後ピラー14L、14Rを外部から隠すように設計されている。側面パネル21には、運転者が側方を確認するため、透明な窓部24が取り付けられている。
【0037】
上面パネル22は、フレーム10の上面に取り付けられ、運転室6の上方を覆う天井となる。上面パネル22には、開口部25が設けられている。開口部25には、窓(図示せず)が取り付けられる。
【0038】
背面パネル23は、フレーム10(詳細には、後ピラー14L、14Rおよび後中ビーム18)の後方に設けられ、運転室6の後方を覆う後壁となる。背面パネル23は、側面パネル21の後端縁に沿う形状に形成される。背面パネル23には、運転者が後方を確認するため、透明な窓部26が取り付けられている。
【0039】
次に、図4〜図5に基づいて、後ピラー14L、14Rの詳細な構成について説明する。
【0040】
図4に示すように、後ピラー14L、14Rは、ベース11の上面から直線状に延びており、上方に行くに従って前方に傾斜している。また、図5に示すように、後ピラー14L、14Rは、側面視にて、側面パネル21で隠されている。
【0041】
このように、本実施形態では、後ピラー14L、14Rが上方に行くに従って前方に傾斜しているので、前方に傾斜していない場合に比べて、後ピラー14L、14Rを隠す側面パネル21の外形の自由度が高い。よって、側面パネル21のデザイン性が向上し、背面パネル23のデザイン性も向上する。
【0042】
また、本実施形態では、後ピラー14L、14Rに屈曲部がないので、屈曲部がある場合に比べて、建設機械1の転倒時に、後ピラー14L、14Rにかかる外力が屈曲部に集中することを防止でき、運転室6の強度が向上する。さらに、屈曲部がないため、製造コストが低減可能となる。
【0043】
次に、図6〜図7に基づいて、後中ビーム18の詳細な構成について説明する。
【0044】
図6および図7に示すように、後中ビーム18は、左右中央部18aの前端18afが、左右両端部18b、18cの前端18bf、18cfよりも後方にオフセットされている。よって、運転室6が広がり、運転室6の居住性が向上する。
【0045】
後中ビーム18は、図6に示すように、左右中央部18aと左右両端部18b、18cとの間に屈曲部を有している。なお、後中ビーム18の形状は、図6に示す形状に限定されず、例えば、後方に向けて凸の湾曲形状であっても良い。
【0046】
次に、図9〜図11に基づいて、後中ビーム18の断面形状などについて説明する。
【0047】
図9に示すように、後中ビーム18は、曲げ強度を高めるため、背面部材31と、背面部材31の上面から前方に張り出す上面部材32と、背面部材31の下面から前方に張り出す下面部材33とを有しており、断面コ字状に形成されている。背面部材31は鉛直な板部材であって、上面部材32および下面部材33は水平な板部材である。背面部材31、上面部材32、および下面部材33は、一体に形成されている。
【0048】
後中ビーム18は、前方に開放されているので、後中ビーム18の内部空間を電装部品などの設置スペースとして、有効利用することができる。電装部品は、背面部材31によって後方から保護される。
【0049】
なお、後中ビーム18は、下面部材33を有しておらず、断面逆L字状に形成されていても良い。この場合も、同様の効果が得られる。
【0050】
背面部材31の前面31aには、ECU(Electronic Control Unit)などの電装品を取り付ける取り付け部50が設けられている。取り付け部50は、背面部材31の左右中央部の前面に設けられて良い。ここで、電装品の代わりに(または加えて)、工具箱、小物入れ、カップホルダ等を取り付け部50に取り付けるようにしてもよい。
【0051】
図10に示す取り付け部50は、ボルト孔51などで構成される。ボルト孔51には、電装品60を後中ビーム18に締結するボルト61が挿入される。ボルト61は、ボルト孔51に螺合されても良いし、ボルト孔51に挿通され、ボルト孔51の出口縁に固定されるナット52に螺合されても良い。
【0052】
図11に示す取り付け部50Aは、背面部材31の前面に固定される座部53などで構成されている。座部53は、背面部材31の前面から離間する離間部54を有している。離間部54には、ボルト孔55が設けられている。ボルト孔55には、電装品60を離間部54に締結するボルト61が挿入される。ボルト61は、ボルト孔55に螺合されても良いし、ボルト孔55に挿通され、ボルト孔55の出口縁に固定されるナット56に螺合されても良い。
【0053】
次に、図4および図5を再度参照して、後中ビーム18と背面パネル23の位置関係について説明する。
【0054】
後中ビーム18の左右中央部18aの後端18abは、図5に示すように、背面パネル23に近接しており、背面パネル23から10mm以内の位置にある。運転室6をできるだけ広くするためである。
【0055】
後中ビーム18の左右中央部18aの後端18abは、図4に示すように、側方から見たとき、後ピラー14L、14Rの後下端と、同一の鉛直線上にあって良い。背面パネル23の下部は鉛直に配置されることが多く、この場合に、運転室6を最大限に広くするためである。
【0056】
後中ビーム18の左右中央部18aには、図5に示すように、背面パネル23が取り付けられて良い。背面パネル23の形状を、後ピラー14L、14Rの形状に合わせる必要がなくなるので、背面パネル23の生産性やデザイン性が向上する。背面パネル23は、後ピラー14L、14Rの上端から下端まで延びている。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 建設機械
6 運転室
14L 左後ピラー(柱部材)
14La 右側面(内側面)
14R 右後ピラー(柱部材)
14Ra 左側面(内側面)
18 後中ビーム(梁部材)
18a 後中ビームの左右中央部
18af 前端
18ab 後端
18b 後中ビームの左端部
18bf 前端
18c 後中ビームの右端部
18cf 前端
18d 後中ビームの上面
19 ガセット部材
23 背面パネル
31 背面部材
32 上面部材
33 下面部材
50 取り付け部
51 ボルト孔
60 電装品
61 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の運転室の後部に設けられる左右一対の柱部材と、前記一対の柱部材の中央部同士を連結する梁部材とを有する建設機械において、
前記一対の柱部材は、上方に行くに従って前方に傾斜しており、前記梁部材の左右両端部とつながっており、
前記梁部材は、左右中央部の前端が、左右両端部の前端よりも後方にオフセットされていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記梁部材は、背面部材と、該背面部材の上面から前方に張り出す上面部材とを有する請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記一対の柱部材および前記梁部材の後方に配置される背面パネルをさらに有し、
前記梁部材の左右中央部の後端が、前記背面パネルに近接している請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記梁部材の上面と、前記柱部材の内側面を接合するガセット部材をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の建設機械。
【請求項5】
前記背面部材の前面には、電装品等を取り付ける取り付け部が設けられている請求項2に記載の建設機械。
【請求項6】
前記梁部材の左右中央部に、前記背面パネルが取り付けられている請求項3に記載の建設機械。
【請求項7】
前記背面パネルは、前記柱部材の上端から下端まで延びている請求項3または6に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−193519(P2012−193519A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57057(P2011−57057)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】