説明

弁座構造

【課題】チャタリングが生じやすい従来では低開度に相当した弁体の移動距離(リフト)までは、閉弁状態を保持し、弁体がチャタリングを生じ得ない弁座との離間距離を超えた時に開弁する様に構成した弁座構造を提供する。
【解決手段】一次側流路5と二次側流路6とに連通する弁口8の一方の開口端に、弁体10が着離自在と成す様に設けられた弁座9であって、該弁座9には、これの外周縁を環囲すると共に、弁体10が弁座9との着座位置から所定距離L離隔する位置Yまでの間は弁体周壁10bが往復動自在に摺接して閉弁状態を保持し、前記離隔位置Yを超えると弁体周壁10bが離脱して開弁するシートリング9aを連設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が閉弁間近の低開度で弁座を繰り返したたいて騒音を発生する現象、所謂チャタリングを防止する様にした弁座構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたパイロット式減圧弁は、調節バネと二次側圧力とのバランスによりパイロット弁を通過する圧力流体が調整され、該圧力流体によって変位するダイヤフラムと、該ダイヤフラムに弁棒を介して連繋された弁体を閉弁方向へ付勢した弁バネとのバランスによって弁体の開度を調整する様にして二次側を所定の減圧状態に保持するものである。
上記減圧弁内において、一次側流路と二次側流路が連通する様に設けた弁口の一次側の開口端には、テーパー穴状の弁座を設け、該弁座に着離する弁体は、弁座との着座部をテーパー状に形成したプラグ形に形成されている。
したがって、弁体が閉弁間近の低開度では、弁体における着座部と弁座との間隔が微小で、ここで流体通路が極端に絞られるため、弁体が細かい開閉弁動作(チャタリング)を誘発し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−110051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャタリングは、上記の様な減圧弁のほかにリリーフ弁や逆止弁等にも発生し、いずれも、弁体が閉弁間近の低開度で生ずる。
そこで、本発明では、チャタリングが生じやすい従来では低開度に相当した弁体の移動距離(リフト)までは、閉弁状態を保持し、弁体がチャタリングを生じ得ない弁座との離間距離を超えた時に開弁する様に構成した弁座構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の弁座構造は、一次側流路と二次側流路とに連通する弁口の一方の開口端に、弁体が着離自在と成す様に設けられた弁座であって、該弁座には、これの外周縁を環囲すると共に、弁体が弁座との着座位置から所定距離離隔する位置までの間は弁体周壁が往復動自在に摺接して閉弁状態を保持し、前記離隔位置を超えると弁体周壁が離脱して開弁するシートリングを連設したことを特徴とする。
又、シートリングには、弁口に連通する様に周方向に複数連設した流体挿通口を介して、少なくとも開弁時には弁体周壁が摺接することで弁体を案内支持するスリーブを設けても良い。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明に係る弁座には、これの外周縁を環囲すると共に、弁体が弁座との着座位置から所定距離離隔する位置までの間は、弁体周壁が往復動自在に摺接して閉弁状態を保持し、前記離隔位置を超えると弁体周壁が離脱して開弁するシートリングを連設したことにより、開弁初期時又は閉弁間際では、弁体における弁座との着座部と、弁座との間隔を従来に比し広げられ、弁体の着座部が弁座に激しく接触を繰り返せるほどに弁座との距離が近接していないので、チャタリングを生ずることがない。
【0007】
シートリングには、弁口に連通する様に周方向に複数連設した流体挿通口を介して、少なくとも開弁時には弁体周壁が摺接することで弁体を案内支持するスリーブを設けたので、該スリーブによって弁体が開弁しても振動等により横触れすることがなく、常に弁体の開閉弁動作を安定的に支持できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る弁座構造を装備したパイロット式減圧弁の縦断面図である。
【図2】閉弁時の要部拡大断面図である。
【図3】開弁初期時又は閉弁間際の要部拡大断面図である。
【図4】全開時の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る弁座構造を装備したパイロット式減圧弁の縦断面図を示している。
この減圧弁1の弁箱2は、左右側方に圧力流体の入口3及び出口4を開設すると共に、内部に入口3に通ずる一次側流路5と、出口3に通ずる二次側流路6とを設けている。
【0010】
弁箱2内の中央には、一次側流路5と二次側流路6を上下に区画した隔壁7を設け、該隔壁7の中央に両流路5、6に連通する弁口8を開設している。
弁口8の一次側の開口端には、二次側に向かうに従って徐々に縮径して成るテーパー穴状の弁座9を設け、該弁座9との着座部10aをテーパー(円錐台)状に形成すると共に、該着座部10aの大径部位と同径の円柱部10bを連続形成したプラグ形の弁体10を弁座9に着離自在に設けている。
【0011】
弁座9には、これの外周縁を環囲すると共に、弁体10が弁座9との着座位置から所定距離Lを離隔する位置Y(図2参照)までの間は、弁体10の円柱部10b周壁(以下、弁体周壁10bと称する。)が往復動自在に摺接して閉弁状態を保持し、離隔位置Yを超えると弁体周壁10bが離脱して開弁するシートリング9aを一体的に連設している。
シートリング9aは、その高さ(厚み)が距離Lに相当し、この距離Lは、弁体10(着座部10a)がチャタリングを生じ得ない程度に弁座9から離隔した移動距離に対応する様に設定している。
この様に、シートリング9aが形成されることにより、その厚み分だけ弁口8は弁座9を介して開弁方向へ延出形成されたことになり、チャタリングを生じやすい(従来では閉弁間近の低開度に相当する)弁体10の移動距離(リフト)までは、弁座9から弁体10が離脱しているにも拘らず、シートリング9a内周面に弁体周壁10bが摺接状態にあることで、弁体10がシートリング9aに弁座9を介して連続する弁口8を閉塞して閉弁状態を保持し、弁体10がチャタリングを生じ得ない弁座9との離間距離Lを超えた時(図3参照)に、弁体周壁10bがシートリング9a内より離脱して開弁するので、チャタリングは生じない。
【0012】
シートリング9aには、弁口8に連通する様に周方向に複数連設した流体挿通口11を介して、少なくとも開弁時(図示例では、常時、即ち弁体10の弁座離脱時及び開閉弁時)には弁体周壁10bが摺接することで弁体10を案内支持するスリーブ9bを設けている。
本実施例で示す様に、弁座9には、その外周縁を環囲するシートリング9aを連設し、該シートリング9aに上方連続して流体挿通口11及びスリーブ9bを設けるのが、スリーブ9bによって弁体10が開弁しても振動等により横触れすることがなく、常に弁体10の開閉弁動作を安定させるので、より望ましいが、弁座9には、シートリング9aを設けるだけでチャタリングを防止できるので、流体挿通口11及び支持スリーブ9bを必ずしも設けなくても良い。
【0013】
弁箱2の下部には、ダイヤフラム12で内部空間を上下に区画されたダイヤフラムケーシング13を設けている。
ダイヤフラムケーシング13の上部中心には、上端部を二次側流路6から弁口8を通して弁体10の着座部10a側の端部に連結した弁棒14を挿通し、ダイヤフラム12の上面に設置したダイヤフラム押さえ15を介して弁棒14の下端部をダイヤフラム12に当接し、該ダイヤフラム12と弁体10とを弁棒14を介して連繋している。
ダイヤフラムケーシング13内のダイヤフラム12で区画された上方空間は、上部に貫設した連通孔16で二次側流路6と連通し、ダイヤフラム12の下方空間を圧力室17と成している。
【0014】
弁箱2の上部は、その中央に一次側流路5との連通口が開設され、該連通口を介して弁箱2上端に設置したパイロット弁箱18の下端口と一次側流路5とを連通し、かかる下端口に装着したリング状のバネ受け19と、弁体10上部に形成したバネ座10cとの間に弁バネ20を圧縮介装し、これにより弁体10を閉弁方向へ付勢している。
【0015】
パイロット弁箱18は、その中央にパイロット圧力室21を設け、該パイロット圧力室21と、下端口を介して連通する一次側流路5とを、パイロット弁バネ22にて閉弁方向に付勢したパイロット弁23で以て連通又は遮断する様に設けている。
パイロット圧力室21は、圧力室17に導管24を介して連通し、該導管24の分岐導管24aを二次側流路6に設けたオリフィス25に連結してパイロット圧力室21を二次側流路6に連通している。
【0016】
パイロット弁23の弁棒23aは、パイロット圧力室21の上部に区画形成した空間26に摺動自在に突出しており、かかる空間26は、パイロットダイヤフラム27を介してパイロット弁箱18上に被冠したバネカバー28の内部空間と区画され、パイロットダイヤフラム室26と成している。
バネカバー28の内部空間には、バネカバー28の上部より突入した調節ネジ29で弾性力を調整自在と成した調節バネ30をパイロットダイヤフラム27上面に付勢し、該パイロットダイヤフラム27を介して弁棒23aの突出端部が調節バネ30の弾性力を受承する様に成している。
又、パイロットダイヤフラム室26は、出口4に連結した検出管31を介して二次側流路6と連通し、二次側圧力によりパイロットダイヤフラム27が変位する様に成している。
【0017】
上記の様に構成された減圧弁1にあっては、調節バネ30の無負荷状態で、弁体10は弁バネ20、パイロット弁23はパイロット弁バネ22により閉止している。
高圧流体が一次側流路5へ流入すると、弁体10及びパイロット弁23背部に一次側圧力が加わる。
かかる状態において、調節ネジ29により調節バネ30を圧縮し、その弾性力によりパイロットダイヤフラム27を介して弁棒23aを押圧し、パイロット弁23を開弁させる。
これにより、一次側流路5の圧力流体は、パイロット圧力室21から導管24を経て圧力室17に流入すると共に、分岐導管24a、オリフィス25を経て二次側流路6へ流入する。
【0018】
そして、パイロット圧力室21を通る流量がオリフィス25を通る流量より多くなると、圧力室17の操作圧が上昇し、弁体10背部の圧力及び弁バネ20の弾性力に打ち勝って弁体10を押し開き、一次側流路5から二次側流路6へ圧力流体が流れ始める。
又、二次側流路6へ流入した圧力流体は、検出管31よりパイロットダイヤフラム室26へ導かれる。
【0019】
パイロットダイヤフラム27は二次側圧力を受け、調節バネ30と釣り合い、二次側圧力の増減によりパイロットダイヤフラム27に作用する圧力と、調節バネ30が働き合ってパイロット弁23による開度を加減し、圧力室17への流入量を変化させて弁体10による開度を制御し、二次側を適正な圧力にする。
二次側への負荷が無くなると、パイロットダイヤフラム室26の圧力が上昇し、パイロット弁23が閉弁し、これにより圧力室17の操作圧がオリフィス25を通って二次側流路6へ逃げ、弁体10は弁バネ20に押されて閉止する。
【0020】
上記弁体の開閉弁動作について詳述すると、閉弁状態では、弁体10の着座部10aが弁座9に着座することで、図2に示す様に弁口8を閉塞している。
この時、弁体周壁10bの下部はシートリング9aに内接し、弁体周壁10bの中央部は流体連通口11を閉塞し、弁体周壁10bの上部はスリーブ9bに内接している。
そして、図2に示す着座部10aの弁座9との着座位置から弁体10が開弁方向へ移動しても、その着座位置から距離Lを離隔した位置Yまでの間は、着座部10aが弁座9より離脱中にも拘らず、弁体周壁10bがシートリング9aを摺接して流体連通口11と弁口8との不通状態を保持し、弁口8を閉塞しているので、閉弁状態が保持されている。
【0021】
開弁方向へ移動する弁体10が離隔位置Yを超えると、弁体周壁10bは弁口8に連続するシートリング9a内から離脱し、流体挿通口11と弁口8が開通することより開弁し、これら通じて一次側流路5と二次側流路6とは連通する。
図3に示す開弁初期時又は閉弁間際では、弁体10の着座部10aと弁座9との間隔を、従来に比し確実に広げられ、弁体10の着座部10aが弁座9に激しく接触を繰り返せるほどに弁座9との距離が近接していないので、チャタリングを生ずることがない。
又、図2〜4に示す様に、弁体10の開閉弁動作中、スリーブ9b内壁には常に弁体周壁10bが摺接して弁体10を案内しているので、弁体10が開弁しても振動等により横触れすることがなく、常に弁体10の開閉弁動作が安定的に支持される。
【0022】
尚、本実施例では、本発明に係る弁座9を減圧弁1に備えたものを示したが、その他にリリーフ弁、逆止弁等のバルブにおける弁体としても適用可能である。
又、本実施例では、弁座9をテーパー穴状に形成し、弁体10の着座部10aを弁座9に対応する様にテーパー状に形成したものを示したが、かかる方式に限定されることなく、例えば弁口8の一方の開口端に平坦な弁座9を設け、該弁座9に平行な平坦状の着座部10aを弁体10に設けたものであっても良い。
【符号の説明】
【0023】
5 一次側流路
6 二次側流路
8 弁口
9 弁座
9a シートリング
10 弁体
10b 弁体周壁
11 流体挿通口
L 距離
Y 離隔位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と二次側流路とに連通する弁口の一方の開口端に、弁体が着離自在と成す様に設けられた弁座であって、該弁座には、これの外周縁を環囲すると共に、弁体が弁座との着座位置から所定距離離隔する位置までの間は弁体周壁が往復動自在に摺接して閉弁状態を保持し、前記離隔位置を超えると弁体周壁が離脱して開弁するシートリングを連設したことを特徴とする弁座構造。
【請求項2】
シートリングには、弁口に連通する様に周方向に複数連設した流体挿通口を介して、少なくとも開弁時には弁体周壁が摺接することで弁体を案内支持するスリーブを設けたことを特徴とする請求項1記載の弁座構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−169133(P2010−169133A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10514(P2009−10514)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(591059515)株式会社ヨシタケ (19)
【Fターム(参考)】