説明

弁装置のアクチュエータ

【課題】医薬品、食品、酒類、化粧品、半導体等のメーカーにおける製造設備の流体管路に配備されるダイヤフラム弁のアクチュエータの軽量化、製造コストの低減化、研磨作業に起因する研磨微粉の飛散による製造環境の悪化を改善する。
【解決手段】弁4を介して弁本体部3に設けられるカップを逆さまにした形状のボンネット6、該ボンネットの内部を上下に貫通して設けたシャフト5、および該シャフト下端に設けられ弁4を押圧する加圧手段7を具備するアクチュエータ2により、ボンネット6内を上下動する加圧手段7を介して弁を弁本体部3へ膨出変位させて、弁本体部内部を流動する流体の流通開口面積を制御する弁装置1のアクチュエータ2において、少なくともボンネット6および加圧手段7を、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、酒類、化粧品、半導体等の製造設備の流体管路に配備される弁装置のアクチュエータの改良に係り、殊に軽量化、製造環境の改善、製造コスト低減等を可能にした弁装置のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばインターフェロンといった医薬品の製造設備に配備される配管には、弁装置としてバタフライ弁ではなくダイヤフラム弁装置が多用される。これは、ダイヤフラム弁装置を洗浄する場合には、バタフライ弁タイプでは、生産ラインを一時休止し、弁を分解して洗浄を行わなければならないのに対して、ダイヤフラム弁装置にあっては逐一分解しないで弁装置内を水蒸気や洗浄液を流すだけで簡易に洗浄が行え、生産ラインの停止を回避でき、生産メーカーの稼働効率を高められる利点があるからである。
係るダイヤフラム弁装置に採用される自動弁型あるいは手動弁型のアクチュエータは弁本体部の上方にダイヤフラム弁を介して設けられる。このアクチュエータの主な構成部品は無垢材のステンレスやアルミダイキャストを用い、切削、ボーリング等の多くの種類の機械加工を施して構成部品を削り出し、バフ研磨等の鏡面仕上げを行って製作していた。
ところが、無垢のステンレス材やアルミダイキャストからアクチュエータの構成部品を製造するには、複雑で熟練を要する機械加工や研磨工程が必要であり、出来上がった部品で構成されるアクチュエータの重量が大きくなり、アクチュエータ、ひいてはダイヤフラム弁装置全体の軽量化、製作コストの低減化を図るには限界があった。
そこで、軽量化を図るダイヤフラム弁装置に関する特許文献1および特許文献2記載のものが知られている。これら文献にはパイプ材をスタンプ部材とダイ部材との間にセットし、パイプ材の両端開口に押付部材を嵌入させた状態でスタンプ部材を上方へ進めてバルジ加工を行う。バルジ加工で得られた弁本体の環状カラー部と、パイプ材外周面とにフランジを溶接で結合することにより、弁構造体(弁本体部)を製造する技術が開示されている。
【特許文献1】特表平10−501466号公報
【特許文献2】特表平10−503272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2記載のダイヤフラム弁装置にあっては、弁本体部の軽量化を図るものではあるが、その上方に設けられるアクチュエータの軽量化を図り、ひいてはダイヤフラム弁装置全体の重量軽減化に関する技術についての記載や、その示唆はない。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するために工夫されたものであり、医薬品、食品、酒類、化粧品、半導体等のメーカーにおける製造設備の流体管路に配備されるダイヤフラム弁やボール弁等の弁装置に採用されるアクチュエータの軽量化、製造コストの低減化、研磨作業に起因する研磨微粉の飛散による製造環境の悪化を改善する弁装置のアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1の発明は、弁装置のアクチュエータであって、弁を介して弁本体部に設けられるカップを逆さまにした形状のボンネット、該ボンネットの内部を上下に貫通して設けたシャフト、および該シャフト下端に設けられ前記弁を押圧する加圧手段を具備するアクチュエータにより、前記ボンネット内を上下動する前記加圧手段を介して前記弁を前記弁本体部へ膨出変位させて、前記弁本体部内部を流動する流体の流通開口面積を制御する弁装置のアクチュエータにおいて、前記アクチュエータの前記ボンネットおよび前記加圧手段を、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、アクチュエータの構成要素(部品)であるボンネットおよび加圧手段を、例えば、ステンレスやスーパーステンレス、ジュラルミン、チタン等の金属板材、あるいはフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成した後、該ブランクをプレス成型して形成する。このため、従来のようにステンレスやアルミダイキャストの無垢材から種々の機械加工により彫られて削り出されて組み立てられるアクチュエータに比べて、ボンネットや加圧手段の肉厚を薄くできる。その結果、ダイヤフラム弁装置やボール弁装置等におけるアクチュエータを大幅に軽量化でき、また複雑な機械加工工数の大幅な低減化を図れ、錆が発生するのを抑制もできる。また、研磨工程も大幅に削減でき、マイクロポロシティの発生を抑制し、表面に微細空孔の存しない弁装置のアクチュエータを得ることができるようになる。
【0007】
又、請求項2の発明は、請求項1記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記弁はダイヤフラム弁であって、かつ、前記加圧手段は、前記シャフト下端に結合される上部加圧部材と、前記ダイヤフラム弁に結合される下部加圧部材とで形成されると共に、前記上下部両加圧部材の中央部は互いに所定間隙を存して離間し、周縁部は互いに接合することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、加圧手段を上部加圧部材と下部加圧部材との二部品構成により、中央に間隙(空隙)を有するように形成している。このため、従来のように加圧手段を無垢材で機械加工により削りだして形成したものと異なり、大幅な重量軽減化を図れ、また、二部品を重ね合わせるだけで加圧手段を形成できるので、製作コストも安価にできるようになる。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または2記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記アクチュエータは自動弁型のアクチュエータであり、前記ボンネット上部に設けた下部カバーと、該下部カバーで下端開口を閉塞して内部に空間が形成される有底構造の上部カバーと、前記上下部両カバーを貫通する前記シャフトに設けられ、前記内部空間を上下動するピストンと、該ピストンにより仕切られる前記内部空間のうち、いずれか一方の内部空間に縮設されたバネ手段とを具備し、前記いずれか他方の内部空間に圧縮エアを給排することにより前記バネ手段のバネ力に抗して前記シャフトが前記上下部両カバーおよび前記ボンネット間を上下動するように構成され、かつ、前記上部カバー、前記下部カバー、および前記ピストンを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成した後、該ブランクをプレス成型して形成し、さらに、前記下部カバーを前記ボンネット頭部に、前記上部カバーを前記下部カバーにそれぞれ溶接結合したことを特徴とする。
請求項3の発明によれば、プレス成型されて形成したボンネット、下部カバー、および上部カバーを互いに溶接結合するだけで、軽量化を図った製作コストの安価な自動弁型のアクチュエータを得ることができる。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記バネ手段は、中心に穴を有する複数個の皿バネで形成し、該皿バネを前記シャフトに積み重ねるように通したことを特徴とする。
請求項4の発明によれば、シャフトの周りにバネ手段としてコイルスプリングを縮設した従来型のアクチュエータとは異なり、皿バネを積み重ねて縮設することで、シャフトの軸長さ、換言するとアクチュエータの全高寸法を縮小でき、コンパクトなアクチュエータを製作できるようになる。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載に記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記ボンネットの内部に、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型したガイドを、溶接結合することを特徴とする。
請求項5の発明によれば、ボンネット内部に、プレス成型して形成したガイドを溶接結合するだけで、上下部両加圧部材を円滑に上下動させるボンネットを製作できる。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記ボンネットの下方外周に、前記ダイヤフラム弁を介して前記弁本体部に締結されるボンネットフランジを溶接結合すると共に、該ボンネットフランジが金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工で形成したブランクをプレス成型により形成されること特徴とする。
請求項6の発明によれば、ボンネットフランジを無垢材から削りだして製作するのではなく、板材からプレス成型して形成するので製作コストが安価で、軽量化を図れるアクチュエータを得ることができるようになる。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項6記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記溶接結合を、レーザ溶接したことを特徴とする。
請求項7の発明によれば、レーザ溶接の特徴により素材に熱ひずみをほとんど与えることなく溶接できる。このため、肉厚の薄いボンネットでもボンネットフランジに精密に溶接でき、ピンホールができにくく、生産効率に優れた溶接結合を実現できるようになる。
また、請求項8の発明は、請求項1または2記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記アクチュエータは手動弁型のアクチュエータであり、前記シャフト外周に刻設した雄ネジ部と、前記ボンネットに設けられ、前記雄ネジ部に螺合される雌ネジ部を有するシャフト支持ネジと、前記シャフト上端に設けたハンドルと、該ハンドルと前記シャフトとの間に設けたハンドルカバーとを具備し、前記ハンドルの回転操作によりネジ送りされる前記シャフトの上下動に連動して、前記ハンドルカバーが前記シャフト支持ネジ外周の上下方向に案内されるように構成され、かつ、前記ハンドルを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したことを特徴とする。
請求項8の発明によれば、手動弁型のアクチュエータの場合であっても、シャフトをネジ送り操作するハンドルを、金属の無垢材でなく板材を用いてプレス成型により形成するので、ハンドルの軽量化が図れ、かつ、安価なアクチュエータを得ることができるようになる。
【0013】
また、請求項9の発明は、請求項8記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記ハンドルカバーを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したこと特徴とする。
請求項9の発明によれば、金属の無垢材から削りだして製作するハンドルカバーと異なり、金属の板材を用いてプレス成型することでハンドルカバーを製作できる。このため、製作コストが安価で、軽量化を図れるアクチュエータを得ることができるようになる。
【0014】
また、請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータに係り、前記アクチュエータは、前記流体の流通開口面積を、常時開口する常開型、または常時閉止する常閉型であることを特徴とする。
請求項10の発明によれば、常時開口型あるいは常時閉止型のいずれのアクチュエータにも採用でき、製作コストの低減化に有利となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、医薬品、食品、酒類、化粧品、半導体等のメーカーにおける製造設備の流体管路に配備される弁装置のアクチュエータにあって、ダイヤフラム弁装置やボール弁装置におけるアクチュエータの衛生確保、軽量化、製造コストの低減化、研磨仕上げの大幅削減化、製造過程における落下に起因する作業者に与えるダメージの未然回避等を図った弁装置のアクチュエータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に示す実施形態に基づいて詳述する。図1は実施形態に係るダイヤフラム弁装置1の縦断面図、図2はダイヤフラム弁装置の弁本体部の組み立てを示す外観正面図、図3はアクチュエータ2の拡大縦断面図である。
【0017】
ダイヤフラム弁装置1の概要構成を説明する。ダイヤフラム弁装置1は図1に示すように、弁本体部3,ダイヤフラム弁4,およびダイヤフラム弁4を作動せしめるアクチュエータ2を主要構成要素とする。
【0018】
弁本体部3の製造組み立て構造に関する発明については、本発明者は平成20年10月21日付提出の特許出願にて出願を行った。この弁本体部3の概要構成は図2のように、主体部3aと、該主体部3aの左右両側の同一線上に対向配置され、端部にフェルールを設けた管部材としての流入フェルール3bおよび流出フェルール3cと、主体部3aの上方に設けられダイヤフラム弁4を載せて支持する本体フランジ3dとの四部品を溶接結合して組み立てられる。これら四部品3a〜3dは、例えばステンレスの板材又はスレンレスのフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工でブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成される。プレス成型で得られた各部品を互いに溶接結合で合体して、図1のように組み立てられる。これにより、肉厚が薄く重量の軽減化を図った弁本体部3が得られる。なお、弁本体部3の中間には、図1に示すように断面山形に突出する弁着座部3eが形成されている。
【0019】
ダイヤフラム弁4は自体公知のもので、例えば、ゴム4aとテフロン(登録商標)部4bとを重ねてパッキン兼用のダイヤフラム膜を形成している。後述するシャフト5の上下動により弁着座部3cに密着・離間することにより、プロセス流体の流通開口面積が制御され、開口面積に応じたプロセス流体を流動させるようになっている。
【0020】
アクチュエータ2は高圧エアを給排して作動する自動弁型のアクチュエータであり、ダイヤフラム弁4を介して弁本体部3に、不図示のボルト・ナット等の締結具を用いて締結され、内部を流動するプロセス流体が外部へ漏洩しないようになっている。
【0021】
本発明の特徴であるアクチュエータ2は、カップを逆さまにした形状のボンネット6,ボンネット6の内部を上下に貫通して設けたシャフト5,シャフト5下端に設けられる加圧手段7、ボンネット6の上方に結合されるカバー8,シャフト5に固定されてカバー8内部空間を上下動するピストン9,複数個の皿バネ10aを積み重ねるようにしてカバー8とピストン9の間に縮設したバネ手段10、および高圧エアを給排する口金11の構成でなる常閉型のアクチュエータである。
【0022】
アクチュエータの構成を具体的に説明していく。ボンネット6はその下端が開口し、上方を有底構造のカップを逆さまにした円筒状に形成され、その内周には上下に指向してガイド6bが溶接結合されている。ガイド6bにより、後述の加圧手段7の上下動が円滑に行われるようにしている。
ボンネットの下端開口の外周には、ボルト穴19aを設けたボンネットフランジ19がレーザ溶接L1により結合され、ダイヤフラム弁4の周縁部を介して相手側の弁本フランジ3dに結合されるようになっている。
【0023】
ボンネット6の頭部6aには、その中心をシャフト5が上下に貫通し、その下端に設けられる上部加圧部材7aと、上部加圧部材7aを受容する下部加圧部材7bとの二部品で加圧部材7が形成される。上部加圧部材7aはシャフト5下端に加締められ、下部加圧部材7bはダイヤフラム弁4にリベット4cにより一体に結合される。そして、上下部両加圧部材7a,7bで一体化された加圧手段7は、その中央部では互いに所定間隙を存して離間し、周縁部を互いに接合(係合)した組み立て体を形成する。これにより、シャフト5から加圧手段7に操作力が作用した場合に、加圧手段7は上下間で圧縮弾性変形し、上記所定間隙が縮むように変化するようになっている。
【0024】
カバー8はその下端が開口され、上方を有底構造のカップを逆さまにした円筒状に形成した上部カバー8aと、その下端開口を閉塞する下部カバー8bとを有する。上部カバー8aと下部カバー8bとはレーザ溶接L2により結合される。そして、下部カバー8bはボンネット6の頭部6aに着座させてレーザ溶接により結合される。これにより、カバー8はボンネット6に一体化される。
上下部両カバー8a、8bにより形成されるカバー8の内部空間の中央にシャフト5が貫通している。すなわち、ボンネット6中心に上下方向に指向して設けたシャフト5は、カバー8の中心を上方向に伸び、カバー8の頭部8cを貫通するように設けられる。
【0025】
シャフト5には、円板状のピストン9がスナップリング12とスペーサリング13とに挟持され、これら三者9,12,13が内部空間をシャフト5と共に上下動できるようになっている。
カバー8はピストン9によりその内部空間を上室S1と下室S2の二室に仕切られ、上室S1には複数個のリング状の皿バネ10aがピストン9とバネ受けリング14との間のシャフト5に積み重ねるようにして挿通され、バネ手段10を形成している。このバネ手段10により、ピストン9は図1,図2のように常時ボンネット6側へ付勢される。また、スペーサリング13の存在により、ピストン9が最下位の位置にあっても下室S2には常時所定の空間が確保されるようにしている。したがって、ピストン9が最下位の位置にあるときは、図1のようにダイヤフラム弁4は弁着座部3cに密着し、プロセス流体の流動を閉止するように制御する。
【0026】
上部カバー8aには、下室S2へ高圧エアを給排するための口金11が溶接結合される。口金11から高圧エアが下室S2へ供給されると、バネ手段10のバネ力に抗してピストン9が上方へストロークし、シャフト5および加圧手段7を介してダイヤフラム弁4が弁着座部3cから離間して開口する。これにより、その流通開口面積に応じたプロセス流体が流動するように制御される。なお、シャフト5には段差によりストッパ部5aが形成される。これにより、ピストン9は図3に示す最下位の位置から、ストッパ部5aがボンネットの頭部6aに衝合するまでの区間をストロークできる。
【0027】
なお、ボンネット6の頭部6aと下部カバー8b、ピストン9とスペーサ13,および上部カバー8aの頭部8cとシール受け8dの各間には合成樹脂製のシール15,16,17が圧入される。これにより、カバー8内部の高圧エアが外部へ漏洩しないようにしている。また、ピストン9の外周にも合成樹脂製のシール18が設けられ、下室S2から上室S1へ高圧エアが漏洩するのを抑制している。
【0028】
ところで、アクチュエータ2を構成する部品のうち、図4に示す上部カバー8a,図5に示されるシール受け8c、ピストン9,下部カバー8b、ボンネット6,ボンネットフランジ19,上部加圧部材7a、下部加圧部材7b、およびガイド6b等の部品はステンレスの板材又ステンレスのフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型することにより形成されるものである。
例えば、図4のように上部カバー8aを製作する場合には、先ずステンレスの板材Pを打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクBを形成する。次いで、このブランクBをプレス成型することで薄肉の上部カバー8aを製作する。これにより、上部カバー8aを複雑な機械加工や研磨加工を行うことなく簡易に得ることができ、かつ、重量の軽い上部カバーを得ることができる。
上部カバー8a以外の部品も上記と同様にして容易に製作でき、重量の軽い部品を得ることができる。
【0029】
こうして得られた各部品は溶接結合で組み立てられていく。すなわち、上部カバー8aとシール受け8d、ピストン9とスペーサリング13,下部カバー8bとボンネット6、ボンネット6とガイド6b、ボンネット6とボンネットフランジ7、および上部加圧部材7aと下部加圧部材7bのそれぞれは互いにTIG又はレーザ等による溶接により結合される。これにより、アクチュエータ2が製作されることとなる。
【0030】
なお、その他のバネ受けリング14,口金11,スペーサリング13,およびシャフト5は機械切削加工により形成される部品である。
係るアクチュエータ2はダイヤフラム弁4を介して弁本体部3に取り付けられることでダイヤフラム弁装置1が構成される。
【0031】
本実施形態に係る弁装置のアクチュエータの動作を説明する。口金11から下室S2へ高圧エアが供給されない場合には、ピストン9はスペーサリング13を介してボンネット6頭部に着座している。加圧手段7、すなわちダイヤフラム弁4は弁着座部3eに密着し流路を閉止し、プロセス流体の流動が遮断される。
高圧エアが下室S2に供給されると、バネ手段10のバネ力に抗してピストン9は上方へストロークする。これにより、加圧手段7はガイド6bに沿ってボンネット6内を上昇していき、ダイヤフラム弁4は弁着座部3eから上方へ離間する。このため、図1の矢印で示すように流入フェルール3b側の流体は弁着座部3eを通過して流出フェルール3cへと流動していくようになる。
高圧エアの供給を停止または下室S2のエアを排気すると、バネ手段10の復元力により、ダイヤフラム弁4は図1に示す状態に復帰する。
【0032】
本実施形態に係る弁装置のアクチュエータによれば、アクチュエータ2を構成する部品を、スレンレスの板材からブランクBを形成し、そのブランクBをプレス成型により肉厚を薄く形成する。こうして製作された各部品を溶接結合することでアクチュエータ2を形成したので、アクチュエータ2自体の重量、ひいてはダイヤフラム弁装置1全体の重量を軽減でき、また、複雑な機械加工や研磨作業を不要化することで、製作コストを安価にできる利点もある。
【0033】
また、加圧手段7は上部加圧部材7aと下部加圧部材7bとの二部品により、内部に空洞を有する形態に形成するため、その重量を大幅に低減した加圧手段7を得ることができ、アクチュエータ2の軽減化に一層寄与できる。
また、ボンネット6とボンネットフランジ19、および上部カバー8aと下部カバー8bをレーザ溶接L1、L2で結合するため、各素材に熱ひずみをほとんど与えることなく溶接できる。レーザ溶接の特徴を利用して精密に溶接でき、ピンホールの発生を抑制しつつ、生産効率に優れたアクチュエータを実現できる。
また、バネ手段10はコイルスプリングではなく、複数個の皿バネ10aを用いたことにより、シャフト5の軸長さを小さくできる。その結果、コンパクトなアクチュエータ2を得ることができ、さらには、研磨工程を不要化から起因して作業環境の改善を図ることもできる。
【0034】
上記実施形態では自動弁型のアクチュエータ2の場合について説明したが、この代わりに図6に示す変形例のように、手動弁型のアクチュエータ20(ノーマルオープン型)にも適用できる。
すなわち、アクチュエータ20は主な構成要素として、シャフト5の外周に雄ネジ部5bと、上下両端が開口するボンネット6の上端側に設けられ、雄ネジ部5bに螺合される雌ネジ部21aを有するシャフト支持ネジ21と、シャフト上端に設けたハンドル22と、ハンドル22とシャフト5との間に設けたハンドルカバー23からなる。
シャフト支持ネジ21はボンネット6に例えばレーザ溶接や加締めK等により固定され、ハンドル22およびハンドルカバー23はハンドル押さえナット24によりシャフト5に締結される。
【0035】
上記以外のその他の構成は上記実施形態におけるアクチュエータ2と同一である。
ハンドル22を回すことでシャフト5がシャフト支持ネジ21に対して上下に相対移動する。これにより、不図示のダイヤフラム弁が弁着座部に密着したり離間したりし、プロセス流体の流動を制御できるようになっている。
この変形例に係るアクチュエータ20においては、ボンネット6や加圧手段7をステンレスの板材又はステンレスのフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成される点は上記実施形態と共通する。これら以外に、本変形例ではハンドル22およびハンドルカバー23もステンレスの板材又はステンレスのフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成する点に特徴がある。
【0036】
なお、ハンドル押さえナット24、シャフト支持ネジ21,およびシャフト5等は機械切削により製作される。
本変形例によれば、手動弁型のアクチュエータ20の構成部品を肉厚薄く製作するので、アクチュエータの重量を軽減でき、ひいては製作コストを安価にできる等上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。また、回転操作力を作用させるハンドル22には、通常複雑な凹凸の深い外面を呈する形態が要求されるが、その場合でも軽量でデザイン性に優れた外観体裁を有するハンドルを容易に製作でき、ひいては他者のアクチュエータと差別化を図れる利点がある。
【0037】
以上、本発明を実施形態および変形例により説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態および変形例に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明の範囲に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、ダイヤフラム弁装置のアクチュエータについて説明したが、ボール弁装置のアクチュエータにも適用できるのは言うまでもない。
また、上記実施形態では、素材をステンレスの板材を用いて説明したが、この代わりに、スーパーステンレス、ジュラルミン、チタン等の金属を用いることも可能である。
また、上記実施形態では、皿バネ手段10を縮設したが、コイルスプリングを設けた態様にすることも可能である。
また、上記実施形態および変形例では、管部材における継ぎ手部としてはフェルール接合されるフェルールを有する場合について説明したが、この代わりにIDF規格のユニオンを設けた管部材、あるいはネジ締結による継ぎ手部等の態様であってもよい。
上記実施形態および変形例に係るアクチュエータは、流体の流通開口面積を、常時閉止する常閉型であったが、常時開口する常開型のアクチュエータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、医薬品、食品、酒類、化粧品、半導体等の製造設備の流体管路に配備される弁装置のアクチュエータに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータを搭載したダイヤフラム弁装置の縦断面図である。
【図2】上記ダイヤフラム弁装置の弁本体部の組み立てを示す外観正面図である。
【図3】上記アクチュエータの拡大縦断面図である。
【図4】カバーの製作を説明する説明図である。
【図5】アクチュエータの構成部品について、ブランクからプレス成型される部品を示す説明図である。
【図6】上記実施形態の変形例に係り、一部を破断して示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ダイヤフラム弁装置
2 アクチュエータ
3 弁本体部
4 ダイヤフラム弁
5 シャフト
6 ボンネット
6b ガイド
7 加圧手段
7a 上部加圧部材
7b 下部加圧部材
8 カバー
8a 上部カバー
8b 下部カバー
8d シール受け
9 ピストン
10 バネ手段
10a 皿バネ
19 ボンネットフランジ
20 アクチュエータ
22 ハンドル
23 ハンドルカバー
K 加締め
L1,L2 レーザ溶接


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を介して弁本体部に設けられるカップを逆さまにした形状のボンネット、該ボンネットの内部を上下に貫通して設けたシャフト、および該シャフト下端に設けられ前記弁を押圧する加圧手段を具備するアクチュエータにより、前記ボンネット内を上下動する前記加圧手段を介して前記弁を前記弁本体部へ膨出変位させて、前記弁本体部内部を流動する流体の流通開口面積を制御する弁装置のアクチュエータにおいて、前記アクチュエータの前記ボンネットおよび前記加圧手段を、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したことを特徴とする弁装置のアクチュエータ。
【請求項2】
前記弁はダイヤフラム弁であり、かつ、前記加圧手段は、前記シャフト下端に結合される上部加圧部材と、前記ダイヤフラム弁に結合される下部加圧部材とで形成されると共に、前記上下部両加圧部材の中央部は互いに所定間隙を存して離間し、周縁部は互いに接合することを特徴とする請求項1記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項3】
前記アクチュエータは自動弁型のアクチュエータであり、前記ボンネット上部に設けた下部カバーと、該下部カバーで下端開口を閉塞して内部に空間が形成される有底構造の上部カバーと、前記上下部両カバーを貫通する前記シャフトに設けられ、前記内部空間を上下動するピストンと、該ピストンにより仕切られる前記内部空間のうち、いずれか一方の内部空間に縮設されたバネ手段とを具備し、前記いずれか他方の内部空間に圧縮エアを給排することにより前記バネ手段のバネ力に抗して前記シャフトが前記上下部両カバーおよび前記ボンネット間を上下動するように構成され、かつ、前記上部カバー、前記下部カバー、および前記ピストンを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成した後、該ブランクをプレス成型して形成し、さらに、前記下部カバーを前記ボンネット頭部に、前記上部カバーを前記下部カバーにそれぞれ溶接結合したことを特徴とする請求項1または2記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項4】
前記バネ手段は、中心に穴を有する複数個の皿バネで形成し、該皿バネを前記シャフトに積み重ねるように通したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載に記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ボンネットの内部に、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型したガイドを、溶接結合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ボンネットの下方外周に、前記ダイヤフラム弁を介して前記弁本体部に締結されるボンネットフランジを溶接結合すると共に、該ボンネットフランジが金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工で形成したブランクをプレス成型により形成されること特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項7】
前記溶接結合は、レーザ溶接であることを特徴とする請求項6記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項8】
前記アクチュエータは手動弁型のアクチュエータであり、前記シャフト外周に刻設した雄ネジ部と、前記ボンネットに設けられ、前記雄ネジ部に螺合される雌ネジ部を有するシャフト支持ネジと、前記シャフト上端に設けたハンドルと、該ハンドルと前記シャフトとの間に設けたハンドルカバーとを具備し、前記ハンドルの回転操作によりネジ送りされる前記シャフトの上下動に連動して、前記ハンドルカバーが前記シャフト支持ネジ外周の上下方向に案内されるように構成され、かつ、前記ハンドルを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したことを特徴とする請求項1または2記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項9】
前記ハンドルカバーを、金属の板材又はフープ材から打ち抜き加工又はレーザ加工によりブランクを形成し、該ブランクをプレス成型して形成したこと特徴とする請求項8記載の弁装置のアクチュエータ。
【請求項10】
前記アクチュエータは、前記流体の流通開口面積を、常時開口する常開型、または常時閉止する常閉型であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の弁装置のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−127441(P2010−127441A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305728(P2008−305728)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(508315899)株式会社長崎プレス工業 (2)
【Fターム(参考)】