説明

弁装置

【課題】使用流体によって生ずる寸法変化に伴うメイン弁の摺動性の低下を抑制して、流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮し得る弁装置を提供する。
【解決手段】作動弁13により第三流路8を流体が流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換することによって、メイン弁3に作用する力のバランスを変化させ、該メイン弁3をシリンダ2内で摺動させ、第一流路6と第二流路7との間で流体の流入出を制御する弁装置1であって、前記メイン弁3は、シリンダ2との隙間およびバイアスカットされた環状リング17と溝16との隙間により構成される流路11を介して、第一空域4と第二空域5との間で流体を流入出可能に設けられたものとしたから、環状リング17やメイン弁3が使用流体によって膨潤等の寸法変化することにより生ずるシリンダ2との摩擦力の増大を抑制でき、メイン弁3の摺動性の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン弁の摺動によって流体の流入出を制御する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化石油ガス(以下、LPGという)やジメチルエーテル(以下、DMEという)等の液化ガス燃料を貯留する燃料タンクには、過充填防止装置や燃料供給装置等が配設されている。
【0003】
上記の過充填防止装置や燃料供給装置に適用される弁装置としては、例えば、特許文献1のように、電磁弁を作動制御することによって、メイン弁にその摺動方向両側から作用する力のバランスを変化させてメイン弁を摺動し、これに伴って燃料タンク内の燃料を該燃料タンク外へ供給可能な状態と供給不能な状態とに変換可能とするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/146968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した過充填防止装置や燃料供給装置等の弁装置は、メイン弁の摺動によって所望の働きをするものであることから、作動弁や電磁弁の作動に伴ってメイン弁がスムーズに摺動することが必要である。そのため、メイン弁には、作動弁や電磁弁の作動に対して反応性が良くスムーズに摺動できるように、軽量な樹脂製のものが適用されている。しかし、メイン弁は流体に曝されることから、樹脂製のメイン弁の場合には、使用される流体によって膨潤や収縮等の寸法変化を生じ易く、これに伴ってメイン弁の摺動性の低下が懸念される。例えば、樹脂製のメイン弁を配した過充填防止装置や燃料供給装置を備える燃料タンクに上記したDME燃料を貯留する場合には、該DME燃料に曝されたメイン弁が膨潤して寸法変化を生じ、前記した摺動性の低下が生じ易い。これに伴って、流体の流入出を制御する弁装置としての機能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、使用する流体によって生ずる寸法変化に伴うメイン弁の摺動性の低下を抑制して、流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮し得る弁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弁装置は、内部空域を有する筒状のシリンダと、前記シリンダの内部空域で摺動可能に配されて前記内部空域を第一空域と第二空域とに隔てるプレート状のメイン弁であって、シリンダの内側壁面との隙間を介して該第一空域と第二空域とを連通するように設けられたメイン弁と、前記メイン弁の摺動方向に沿って前記第一空域から第二空域へ向かって該メイン弁を付勢する付勢手段と、第二空域に接続されて該第二空域と連通する第一流路と、前記第二空域に接続されて該第二空域と連通する第二流路と、前記第二空域側へ摺動する前記メイン弁が当接することによりこの当接位置よりも第二空域側へメイン弁が摺動しないように設けられた弁座部材であって、該メイン弁が該弁座部材に当接した状態で前記第一流路と第二流路との間で流体を流入出不能とするように構成されると共に該第二流路と前記第一空域との間で該メイン弁と前記シリンダの内側壁面との隙間を介して流体を流入出不能とするように構成され、さらに、該メイン弁が該弁座部材に当接した状態で該第一流路と該第一空域との間で該メイン弁と該シリンダの内側壁面との隙間を介して流体を流入出可能とするように構成され、該メイン弁が該弁座部材と離間した状態で該第一流路と該第二流路との間で流体を流入出可能とするように構成された弁座部材と、前記第一空域に接続されて該第一空域と連通する第三流路と、前記第三流路を、流体を流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換する作動弁とを備えた弁装置であって、前記メイン弁は、前記シリンダの内側壁面と対向する摺動面に周成された溝と、該溝とシリンダの内側壁面との間に介装された樹脂製の環状リングであってバイアスカットされ且つバイアスカットされた面が互いに対向するように配置された環状リングとを備え、環状リングと溝との隙間を介して第一空域と第二空域との間で流体を流入出可能とするように設けられたものであることを特徴とする。
【0008】
かかる構成の弁装置では、第一空域および第二空域の流体圧や付勢手段による付勢力といったメイン弁に作用する力のバランスが変化することによって、メイン弁がシリンダ内で摺動し、第一流路と第二流路との間で流体の流入出を制御する。すなわち、作動弁により第三流路を流体が流入出可能な状態に変換すると、第一空域内に生ずる流体の圧力は第三流路を介してシリンダの外部へ開放される。この状態で、第一流路の内圧と第二流路の内圧とによりメイン弁に作用する力が付勢手段の付勢力よりも大きくなると、メイン弁が第一空域側へ摺動し、第二空域を介して第一流路と第二流路との間で流体が流入出可能となる。一方、作動弁により第三流路を流体が流入出不能な状態に変換すると、メイン弁と該シリンダの内側壁面との隙間を介して第一空域の内圧と第二空域の第一流路側の内圧とが略等しくなる。この状態で、第二空域の第二流路側の内圧よりも第一流路側の内圧が高い場合には、必ずメイン弁には第一空域側から第二空域側へ作用する力が大きくなることから、メイン弁が第一空域側に摺動しないで弁座部材に当接し、高圧の第一流路から低圧の第二流路への流体の流出が不能となる。また、作動弁により第三流路を流体が流入出不能な状態で、第二空域の第一流路側の内圧よりも第二流路側の内圧が高い場合には、第一流路の内圧と第二流路の内圧とによりメイン弁に作用する力が付勢手段の付勢力よりも大きくなれば、メイン弁が第一空域側へ摺動し、高圧の第二流路から低圧の第一流路への流体の流出が可能となる。
【0009】
そして、この弁装置において、樹脂製のメイン弁は、該メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との隙間および環状リングと溝との隙間を介して、第一空域と第二空域との間で流体を流入出可能に設けられる。ここで、環状リングはバイアスカットされていることから、使用流体による膨潤や収縮等を生じた場合でも、周方向の寸法変化を抑制することはできないが径方向の寸法変化を小さくすることはできる。これにより、環状リングとシリンダの内側壁面との接触に伴う摩擦力の増大を抑制し、該メイン弁の摺動性の低下を抑制することができる。また、この弁装置では、メイン弁の環状リングと溝との隙間を調整することによって第一空域と第二空域との間における流体の流入出の程度が調整されると共に、メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との隙間を流体の流路として用いている。こうしたことにより、メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との隙間を、使用流体によるメイン弁の膨潤や収縮等に対して余裕を持った寸法に設定することができるため、メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との接触に伴う摩擦力の増大を抑制し、該メイン弁の摺動性の低下を抑制することができる。以上のことから、本発明の弁装置によれば、メイン弁の摺動性の低下を抑制して、上記した流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【0010】
上述した本発明の弁装置において、燃料タンクに配設される弁装置であって、第一流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、第二流路はエンジンの燃料ポンプに連通するように設けられ、第三流路は第二流路と連通するように設けられ、作動弁は電磁弁として構成されているものである構成が提案される。
【0011】
かかる構成の弁装置は、電磁弁である作動弁を作動制御することにより、エンジンの燃料ポンプへ供給される燃料の供給と供給停止とに切り換えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弁装置は、上述したように、作動弁により第三流路を流体が流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換することによって、メイン弁に第一空域側から作用する力と第二空域側から作用する力のバランスを変化させ、該メイン弁を弁座部材に当接または弁座部材から離間するようにシリンダ内で摺動させ、第一流路と第二流路との間で流体の流入出を制御する弁装置であって、前記メイン弁は、バイアスカットされた環状リングと溝との隙間および該メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との隙間を介して、第一空域と第二空域との間で流体を流入出可能とするように設けられたものである。バイアスカットされた環状リングは、使用流体による膨潤や収縮等によって生ずる径方向の寸法変化を小さくできることから、該環状リングとシリンダの内側壁面との接触に伴う摩擦力の増大を抑制できる。また、メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との隙間を、使用流体によるメイン弁の膨潤や収縮等に対して余裕を持った寸法に設定できることから、該メイン弁の摺動面とシリンダの内側壁面との接触に伴う摩擦力の増大を抑制できる。こうした摩擦力の増大を抑制する作用によって、メイン弁の摺動性の低下を抑制することができ、前記した流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の弁装置1を示す説明図である。
【図2】メイン弁3に作用する力の様子を示す説明図である。
【図3】作動弁13を開弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態を示す説明図である。
【図4】第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態で作動弁13を閉弁したときの状態を示す説明図である。
【図5】作動弁13を閉弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能になった状態を示す説明図である。
【図6】(A)膨潤する前の環状リング17と(B)膨潤した後の環状リング17とを説明するメイン弁3の側面図である。
【図7】実施例2の燃料供給装置21の、(A)縦断面図と(B)横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
実施例1の弁装置1は、図1のように、円筒状のシリンダ2の内部空域にプレート状のメイン弁3が摺動可能に配され、該メイン弁3によって前記内部空域が第一空域4と第二空域5とに隔てられている。また、シリンダ2には、第二空域5に連通する管状の第一流路6と、第二空域5に連通する管状の第二流路7と、第一空域4に連通する管状の第三流路8とが夫々接続されている。また、シリンダ2の第二空域5側には、該第二空域5側へ摺動するメイン弁3が当接する弁座部材9が設けられており、該弁座部材9により前記第二流路7の出入口が構成されている。この弁座部材9にメイン弁3が当接することにより、この当接位置よりも該メイン弁3が第二空域5側へ摺動できないと共に第二流路7の出入口を閉鎖して該第二流路7への流体の流入出を制限できる。さらにまた、弁装置1には、第三流路8を流体が流入出可能な開放状態と流入出不能な閉鎖状態とに変換作動する作動弁13が配設されている。
【0015】
上記のメイン弁3は、円柱状を成し、樹脂材料により形成されている。メイン弁3は、シリンダ2の内部空域で摺動可能な寸法に設定されている。また、メイン弁3の摺動面3aには溝16が周成されていると共に、該溝16とシリンダ2の内側壁面2aとの間に樹脂製の環状リング17が介装されている。この環状リング17は、バイアスカットされ且つバイアスカットされた面が互いに対向するように配置されている。そして、メイン弁3とシリンダ2の内側壁面2aとの隙間や環状リング17と溝16との隙間が第一空域4と第二空域5との間で流体を流入出させる流路11として構成され、この流路11はメイン弁3の全周に亘って形成されている。また、メイン弁3は、第一空域4内に配設された弾性バネ10により、弁座部材9側へ付勢されている。
【0016】
こうして構成された本実施例1の弁装置1は、第一空域4および第二空域5(第一流路6と第二流路7)の流体圧や弾性バネ10による付勢力といったメイン弁3に作用する力のバランスが変化することによってメイン弁3がシリンダ2内で摺動し、第一流路6と第二流路7との間で流体の流入出を制御する。図2にメイン弁3に作用する力の様子を示す。図2中で、実線の矢印は流体の流れを表し、白抜きの矢印はメイン弁3に作用する力を表している。図2のように、メイン弁3には、第一流路6の流体圧による上向きの力、第二流路7の流体圧による上向きの力、第一空域4の流体圧による下向きの力、弾性バネ10による下向きの力が作用する。
【0017】
次に、弁装置1が、第一流路6側から第二流路7側へ流れる流体の流入出を制御する動作について説明する。
図3に、作動弁13を開弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態を示す。この状態では、第一空域4が第三流路8を介して開放されていることから、第一空域4の流体圧と弾性バネ10とによってメイン弁3に作用する下向きの力に比して、第一流路6の流体圧と第二流路7の流体圧とによってメイン弁3に作用する上向きの力が大きくなっている。これにより、メイン弁3が第一空域4側へ摺動し、流体が第一流路6から第二空域5を介して第二流路7へ流れる。
【0018】
続いて、このように第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態で作動弁13を閉弁したときの状態を図4に示す。この状態では、作動弁13が閉弁したことにより、流路11を介して第二空域5から第一空域4に流入した流体によって第一空域4の流体圧が上昇して、該第一空域4の流体圧と第一流路6の流体圧とが略等しくなる。また、流体の下流側である第二流路7の流体圧は第一流路6の流体圧に比して低いことから、第一空域4の流体圧によってメイン弁3に作用する下向きの力が、第一流路6と第二流路7との流体圧によってメイン弁3に作用する上向きの力に比して大きくなる。これにより、メイン弁3は、下向きに作用する力が大きくなって下向きに摺動する。
【0019】
こうしてメイン弁3が下向きに摺動すると、メイン弁3は弁座部材9に当接し、第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となる。このように、作動弁13を閉弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能になった状態を図5に示す。この状態では、第一流路6と第一空域4とは流路11を介して流体の流入出が可能であることから、第一流路6の流体圧が変化しても第一空域4の流体圧と第一流路6の流体圧とは略等しくなる。したがって、第二流路7の流体圧が第一流路6の流体圧に比して低くなっている限り、第一流路6と第二流路7との流体圧によってメイン弁3に作用する上向きの力に比して、第一空域4の流体圧と弾性バネ10の付勢力とによってメイン弁3に作用する下向きの力が常に大きくなる。これにより、メイン弁3が弁座部材9に当接した状態が継続するため、第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となる。
【0020】
このように、本実施例1の弁装置1によれば、作動弁13を開閉してメイン弁に作用する力のバランスを変化させてメイン弁3を摺動させることによって、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を制御することができる。
【0021】
このような弁装置1では、メイン弁3や環状リング17が流体に曝される。ここで、図6は、(A)膨潤する前の環状リング17と(B)膨潤した後の環状リング17とを説明するメイン弁3の側面図である。環状リング17は、摺動方向に対して傾斜するようにバイアスカットされて周方向で切断されたものである。そのため、環状リング17は、流体に曝されることによって膨潤した場合に、周方向の寸法変化を抑制することはできないが径方向の寸法変化を小さくすることはできる。これにより、環状リング17とシリンダ2の内側壁面2aとの接触に伴う摩擦力の増大を抑制して、メイン弁3の摺動性の低下を抑制することができる。また、流路11を流れる流体の流入出の程度は、作動弁13を開放状態または閉鎖状態に変換した際にメイン弁3に加わる流体圧の変化の程度に影響するから、メイン弁3の摺動性に影響を与えることになる。ここで、実施例1の弁装置1では、流路11を構成する隙間のうち、メイン弁3の摺動面3aとシリンダ2の内側壁面2aとの隙間は単なる流路として用いられ、メイン弁3の環状リング17と溝16との隙間は流路11を流れる流体の流入出の程度を調整するために用いられるものとした。したがって、メイン弁3の摺動面3aとシリンダ2の内側壁面2aとの隙間は、メイン弁3の摺動性への影響が少なく、使用流体によるメイン弁3の膨潤や収縮等に対して余裕を持った寸法に設定される。これにより、樹脂製のメイン弁3が流体に曝されることによって膨潤した場合に、該メイン弁3の摺動面3aとシリンダ2の内側壁面2aとの接触に伴う摩擦力の増大を抑制して、メイン弁3の摺動性の低下を抑制することができる。したがって、本実施例1の弁装置1によれば、メイン弁3の摺動性の低下を抑制して、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【0022】
また、弁装置1では、作動弁13を閉弁してメイン弁3が弁座部材9に当接することにより第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となっている状態で作動弁13を開弁した際に、メイン弁3を弁座部材9から離間させるためには弾性バネ10の付勢力に勝る大きな力を第一流路6側から加える必要がある。このとき、流路11が広いほど、第一流路6側の流体が第一空域4側へ流出し易くなることから、第一流路6側の流体圧が低下し易く、メイン弁3を押し上げる力が弱まる。逆に、流路11が狭いほど、第一流路6側の流体が第一空域4側へ流出し難くなることから、第一流路6側の流体圧が低下し難く、メイン弁3を押し上げる力が弱まることを抑制できる。すなわち、流路11が狭いほど、メイン弁3が作動し易くなる。但し、こうした流路は、狭くなるほど異物が詰まりやすく、異物が詰まった場合には弁装置としての機能が低下してしまう。しかしながら、本実施例1の弁装置1では、流路11がメイン弁3の全周に亘って形成されているから、メイン弁3に代えてメイン弁の一箇所に第一空域4と第二空域5との間で流体を流入出させる流路としてオリフィス孔を穿設した構成に比して、流体内に混入した異物がこうした流路に詰まることによって生ずる弁装置の機能低下に対して有利である。これは、流路11が全周に亘って異物で詰まってしまう可能性よりも、一箇所のオリフィス孔が異物で詰まる可能性の方が高いと考えられるからである。したがって、実施例1の弁装置1では、流路11を比較的狭くすることができ、作動弁13を開弁する際に、メイン弁3を作動し易くすることができ、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。しかも、メイン弁3の摺動性に影響が生じ易いメイン弁3とシリンダ2の内側壁面2aとの隙間を狭くするのではなく、メイン弁3の摺動性に影響が生じ難い環状リング17と溝16との隙間を調節することによって流路11を狭くするから、メイン弁3の摺動性の低下を抑制しつつメイン弁3を作動し易くすることができ、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【実施例2】
【0023】
実施例2は、上述した実施例1の弁装置1と同様の弁装置としての構成を備えた燃料供給装置21である。燃料供給装置21は、液化ガス燃料により駆動するエンジンを動力としたトラックなどの車両に配設される燃料タンクに設けられ、エンジンへ燃料を供給するための燃料ポンプに接続される。そして、燃料供給装置21は、燃料ポンプへ供給する液化ガス燃料を制御するためのものである。ここで、液化ガス燃料には、例えばLPG(液化石油ガス)燃料やDME(ジメチルエーテル)燃料が用いられる。
【0024】
燃料供給装置21には、図7のように、装置本体20に、シリンダ22、第一流路26、第二流路27、第三流路28が形成されている。そして、第一流路26が燃料タンク内に連通し、第二流路27が燃料ポンプに接続されている。シリンダ22の内部空域には、メイン弁23が摺動可能に配されており、該メイン弁23により第一空域24と第二空域25とを隔てている。第二空域25には第一流路26と第二流路27とが連通しており、第二流路27が接続する開口縁に弁座部材29が第二空域25内へ突出するように形成されている。また、第三流路28は、第一空域24と第二流路27とを連通するように形成されている。そして、燃料供給装置21は、第三流路28を液化ガス燃料が流入出可能な開放状態と流入出不能な閉鎖状態とに変換する作動弁としての電磁弁33を備えると共に、該電磁弁33を作動制御するための制御装置39を備えている。また、第一空域24内には弾性バネ30が配設されており、該弾性バネ30によってメイン弁23が第二空域25側へ付勢されている。メイン弁23は、実施例1と同様に、樹脂材料により形成された円柱状を成し、メイン弁23の外周面である摺動面には溝36とバイアスカットされた樹脂製の環状リング37,37とを備える。そして、メイン弁23とシリンダ22の内側壁面との隙間や、溝36と環状リング37,37との隙間を介して第一空域24と第二空域25との間で液化ガス燃料を流入出可能としている。ここで、本実施例2では、二つの環状リング37,37をメイン弁23の摺動方向に沿って並べて配設している。
【0025】
この燃料供給装置21は、制御装置39によって電磁弁33を開閉作動制御することにより、上述した実施例1と同様に、液化ガス燃料を第一流路26から第二流路27への流入出を制御する動作を行う。すなわち、電磁弁33を開弁した状態では、メイン弁23に作用する力のバランスによって該メイン弁23と弁座部材29とが離間して、上記燃料ポンプの駆動によって燃料タンク内の液化ガス燃料が第一流路26から第二流路27へ流れる。一方、電磁弁33を閉弁した状態では、第一空域24と第一流路26との流体圧が略等しくなると共に燃料ポンプの駆動により第二流路27の内圧が第一流路26の内圧よりも低くなることから、メイン弁23が第二空域25側へ摺動して弁座部材29と当接する。これにより、第一流路26から第二流路27への液化ガス燃料が流出不能となる。
【0026】
本実施例2の燃料供給装置21は、上述した実施例1と同様に、メイン弁23にバイアスカットされた環状リング37,37を備えていることから、環状リング37,37が液化ガス燃料に曝されることによって膨潤や収縮等を生じた場合に、周方向の寸法変化を抑制することはできないが径方向の寸法変化を小さくすることはできる。これにより、環状リング37,37とシリンダ22との摩擦力の増大を抑制して、メイン弁23の摺動性の低下を抑制できる。また、メイン弁23とシリンダ22との隙間やメイン弁23の環状リング37,37と溝36との隙間により第一空域24と第二流路27との間で流体を流入出する流路31が構成され、メイン弁23とシリンダ22との隙間が単なる流路として用いられると共に環状リング37,37と溝36との隙間が流体の流入出の程度を調整するために用いられる。これにより、メイン弁23とシリンダ22との隙間を、液化ガス燃料によるメイン弁23の膨潤や収縮等に対して余裕を持った寸法に設定できるため、樹脂製のメイン弁23が膨潤や収縮等を生じた場合に、メイン弁23とシリンダ22との摩擦力の増大を抑制して、メイン弁23の摺動性の低下を抑制できる。以上ことから、本実施例2の燃料供給装置21の弁装置によれば、液化ガス燃料の流入出を制御する機能がより適正に発揮できる。
【0027】
また、本実施例2の燃料供給装置21は、上述した実施例1と同様に、流路31が全周に亘って形成されていることから、液化ガス燃料内に混入した異物が流路31の全周に亘って詰まる可能性が低いと考えられる。これにより、本実施例2の燃料供給装置21は、メイン弁にオリフィス孔を備えた構成に比して、異物が詰まることによって生ずる弁装置の機能低下に対して有利であり、これに伴って流路31を狭くすることも可能である。一方、上述した実施例1と同様に、流路31が狭いほどメイン弁23が作動し易くなる。そして、本実施例2の構成は、前記したオリフィス孔を備えた構成に比して、メイン弁23を作動し易くすることができる。
【0028】
上述した実施例1,2の構成にあって、それぞれの弾性バネ10,30により本発明にかかる付勢手段が構成されている。
【0029】
また、上述した実施例1の弁装置1を、実施例2と同様の燃料タンクに配設されて液化ガス燃料が燃料タンク内に所定量以上充填されることを防止するための過充填防止装置に適用することも可能である。
【0030】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜実施可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 弁装置
2,22 シリンダ
2a 内側壁面
3,23 メイン弁
3a 摺動面
4,24 第一空域
5,25 第二空域
6,26 第一流路
7,27 第二流路
8,28 第三流路
9,29 弁座部材
10,30 弾性バネ(付勢手段)
11,31 流路
13 作動弁
33 電磁弁(作動弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空域を有する筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部空域で摺動可能に配されて前記内部空域を第一空域と第二空域とに隔てるプレート状のメイン弁であって、シリンダの内側壁面との隙間を介して該第一空域と第二空域とを連通するように設けられたメイン弁と、
前記メイン弁の摺動方向に沿って前記第一空域から第二空域へ向かって該メイン弁を付勢する付勢手段と、
第二空域に接続されて該第二空域と連通する第一流路と、
前記第二空域に接続されて該第二空域と連通する第二流路と、
前記第二空域側へ摺動する前記メイン弁が当接することによりこの当接位置よりも第二空域側へメイン弁が摺動しないように設けられた弁座部材であって、該メイン弁が該弁座部材に当接した状態で前記第一流路と第二流路との間で流体を流入出不能とするように構成されると共に該第二流路と前記第一空域との間で該メイン弁と前記シリンダの内側壁面との隙間を介して流体を流入出不能とするように構成され、さらに、該メイン弁が該弁座部材に当接した状態で該第一流路と該第一空域との間で該メイン弁と該シリンダの内側壁面との隙間を介して流体を流入出可能とするように構成され、該メイン弁が該弁座部材と離間した状態で該第一流路と該第二流路との間で流体を流入出可能とするように構成された弁座部材と、
前記第一空域に接続されて該第一空域と連通する第三流路と、
前記第三流路を、流体を流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換する作動弁と
を備えた弁装置であって、
前記メイン弁は、前記シリンダの内側壁面と対向する摺動面に周成された溝と、該溝とシリンダの内側壁面との間に介装された樹脂製の環状リングであってバイアスカットされ且つバイアスカットされた面が互いに対向するように配置された環状リングとを備え、環状リングと溝との隙間を介して第一空域と第二空域との間で流体を流入出可能とするように設けられたものであることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
燃料タンクに配設される弁装置であって、
第一流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、
第二流路はエンジンの燃料ポンプに連通するように設けられ、
第三流路は第二流路と連通するように設けられ、
作動弁は電磁弁として構成されているものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24180(P2013−24180A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161608(P2011−161608)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)
【出願人】(591148369)株式会社ハマイ (9)
【Fターム(参考)】