説明

弁装置

【課題】ばね部材の付勢力を好適に設定しつつ、バルブに対するシート部材のシート性を常時確保することが可能な弁装置を提供する。
【解決手段】開閉弁36aは、流体通路41を有するボディ40と、流体通路41を開閉する球状の弁体50と、弁体50に対向配置され径方向外側に突出形成された鍔部72bを有するガイド部材72と、ガイド部材72の外周面に沿って摺動自在に配置され弁体50をシートする第1のシート部材74と、第1のシート部材74とガイド部材72との間に配置されたOリング76と、流体通路41の内壁部41cとガイド部材72の外周面及び鍔部72bと第1のシート部材74とにより形成された室78と、室78に配置され第1のシート部材74を弁体50に向かって付勢するばね部材82とを備える。流体通路41の内壁部41cと第1のシート部材74との間には、流体通路41の弁体50側と室78とを連通する間隙部80が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が通流する流体通路に配置され、当該流体通路を開閉する弁体を有するボールバルブ(弁装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなボールバルブとしては、従来、図4に示すような構造がある。なお、 図4(a)は、従来のボールバルブ(弁装置)を示す概略縦断面図であり、(b)は、シート部材及びOリングに作用する力について説明するための(a)の部分拡大図である。
【0004】
図4(a)に示すように、この従来のボールバルブ(弁装置)100は、流体通路210を内部に有するボディ200と、流体通路210に配置され、当該流体通路210を開閉する球状の弁体300と、弁体300に対して流体通路210の軸方向に沿って所定間隔離間して配置されたガイド部材400と、弁体300とガイド部材400との間に配置され、弁体300をシートするシート部材500と、シート部材500の外周面に形成された溝部510に装着され、流体通路210の内壁部220とシート部材500の外周面との間をシールするOリング600と、ガイド部材400とシート部材500との間に形成される室700に配置され、シート部材500を弁体300に向かって付勢するばね部材800と、を備えている。すなわち、従来のボールバルブ100は、ばね部材800の付勢力Y2’によりシート部材500が弁体300を押圧して、弁体300に対するシート部材500のシート性を得る構造になっている。
【0005】
ところで、前記ボールバルブ100を各種システムに設置した場合、流体通路210のシート部材500側が負圧になり、流体通路210の弁体300側の圧力(以下、「バルブ側圧力P1」という。)がシート部材500側の圧力(以下、「シート部材側圧力P2」という。)よりも高くなることがある(P1>P2)。
【0006】
このとき、図4(b)に示すように、シート部材500の軸方向一端面520のうち弁体300との接触部T1’よりも径方向内側の部分520aと、軸方向他端面530のうち接触部T1’を当該軸方向他端面530に投影した位置よりも径方向内側の部分530aには、シート部材側圧力P2がそれぞれ加わる。両者の受圧面積は同一(略同一)であるため、軸方向一端面520の部分520aにおいて、シート部材側圧力P2によりシート部材500を弁体300から離間させる方向に作用する押圧力と、軸方向他端面530の部分530aにおいて、シート部材側圧力P2によりシート部材500を弁体300に接近させる方向に作用する押圧力とが相殺(キャンセル)される。
【0007】
また、シート部材500側の流体は、シート部材500と流体通路210の内壁部220との間に形成される間隙900bを経由して、溝部510に流入するため、溝部510の側面部510bと、Oリングの他方側受圧面600bには、シート部材側圧力P2がそれぞれ加わる。側面部510bの受圧面積と、他方側受圧面600bのうち間隙900bに対応する面積を除いた部分600b1の受圧面積は、同一(略同一)であるため、側面部510bにおいて、シート部材側圧力P2によりシート部材500を弁体300から離間させる方向に作用する押圧力と、他方側受圧面600bの部分600b1において、シート部材側圧力P2によりシート部材500を弁体300に接近させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0008】
更に、弁体300側の流体は、間隙900aを経由して、溝部510(詳しくはOリング600を挟んで側面部510bと反対側の部分)に流入するため、溝部510の側面部510aと、Oリングの一方側受圧面600aには、バルブ側圧力P1がそれぞれ加わる。側面部510aの受圧面積と、一方側受圧面600aのうち間隙900aに対応する面積を除いた部分600a1の受圧面積は、同一(略同一)であるため、側面部510aにおいて、バルブ側圧力P1によりシート部材500を弁体300に接近させる方向に作用する押圧力と、一方側受圧面600aの部分600a1において、バルブ側圧力P1によりシート部材500を弁体300から離間させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0009】
一方、シート部材500の軸方向一端面520のうち接触部T1’よりも径方向外側の部分520b(図4(b)の破線部分参照)には、シート部材500を弁体300から離間させる方向に作用するバルブ側圧力P1が加わり、軸方向他端面530のうち接触部T1’を当該軸方向他端面530に投影した位置よりも径方向外側の部分530bには(図4(b)の破線部分参照)、シート部材500を弁体300に接近させる方向に作用するシート部材側圧力P2が加わる。
【0010】
また、Oリング600の一方側受圧面600aのうち間隙900aに対応する部分600a2(図4(b)の破線部分参照)には、バルブ側圧力P1が加わり、他方側受圧面600bのうち間隙900bに対応する部分600b2(図4(b)の破線部分参照)には、シート部材側圧力P2が加わる。
【0011】
したがって、軸方向一端面520の部分520bと軸方向他端面530の部分530bとの受圧面積、及び一方側受圧面600aの部分600a2と他方側受圧面600bの部分600b2との受圧面積は、それぞれ同一(略同一)であり、かつバルブ側圧力P1はシート部材側圧力P2よりも高いため、シート部材500及びOリング600において、相殺されない部分(図4(b)の破線部分参照)が生じることになる。
【0012】
なお、相殺されない部分の受圧面積は、図4(a)に示すように、ボディ200の内壁部220の内径面積S2’から、シート部材500のうち弁体300との接触部T1’,T1’よりも径方向内側の部分の面積S1’を引いた値になる(S2’−S1’)。この場合、面積S1’は、シート部材500の中心に形成された孔部を含む面積のことをいう。
【0013】
その結果、シート部材500には、弁体300から離間させる方向の力((P1−P2)×(S2’−S1’)=差圧による力Y1’)が作用するため、この差圧による力Y1’の分だけシート部材500が弁体300を押圧する力(弁体300に加わる荷重)Y3’が低下してしまい、弁体300に対するシート部材500のシート性が悪化するという問題があった。
【0014】
そこで、このような問題を解決する手段として、弁体300に加わる荷重Y3’の低下分を考慮して、ばね部材800の付勢力(ばね荷重)Y2’を高めに設定する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公昭63−9150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、ばね部材の付勢力を高めに設定した場合、シート部材のシート面が弁体に強く押し付けられるため、弁体の回動動作時の作動フリクションが増大したり、弁体の回動動作時に当該弁体とシート部材のシート面とが強く擦れ合ってしまい、シート部材の磨耗が増大したりするという問題があった。
【0017】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、ばね部材の付勢力を好適に設定しつつ、バルブに対するシート部材のシート性を常時確保することが可能な弁装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、本発明は、流体通路を内部に有するボディと、前記流体通路に配置され、前記流体通路を開閉する球状のバルブと、前記流体通路の軸方向で前記バルブに対向して配置され、その外周面に軸方向に略直交する方向に沿う支持部を有するガイド部材と、前記ガイド部材の外周面に沿って摺動自在に配置され、前記バルブをシートする円筒状のシート部材と、前記シート部材の内周面と前記ガイド部材の外周面との間に配置されたシール部材と、前記流体通路の内壁部と前記ガイド部材の外周面及び前記支持部と前記シート部材とによって囲まれて形成された室と、前記室に配置され、前記シート部材を前記バルブに向かって付勢するばね部材と、を備えた弁装置であって、前記流体通路の内壁部と前記シート部材との間には、前記流体通路の前記バルブ側と前記室とを連通する連通部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、シール部材は、シート部材の内径側に配置され、且つ流体通路の内壁部とシート部材との間には、流体通路のバルブ側と室とを連通する連通部が設けられていることにより、流体通路のシート部材側において、流体通路のバルブ側の流体(例えば、大気)が連通部を経由して室に流入する。そのため、室の圧力(以下、「室の圧力P3」という。)は、バルブ側圧力P1と同圧(略同圧)になり、且つシート部材側圧力P2よりも高くなる。その結果、シート部材及びシール部材のうちバルブと反対側の部分には、室の圧力P3が加わるため、従来技術(特許文献1に記載の発明)に比較して、シート部材及びシール部材において、相殺される部分を増加して相殺されない部分を低減することが可能となり、バルブから離間させる方向の力を低下させることができる。したがって、流体通路のシート部材側におけるシート部材のシート性が向上するため、従来技術に比較して、ばね部材の付勢力を高めに設定する必要がなくなり、バルブの回動動作時の作動フリクションの増大を防止できると共に、シート部材の磨耗の増大を防止してシート部材の耐用性を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ばね部材の付勢力を好適に設定しつつ、バルブに対するシート部材のシート性を常時確保することが可能な弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】燃料電池システムに組み込まれる本発明の実施形態に係る弁装置(開閉弁)の概略縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大縦断面図である。
【図3】第1のシート部材及びOリングに作用する力について説明するための図2の部分拡大図である。
【図4】(a)は、従来のボールバルブ(弁装置)を示す概略縦断面図であり、(b)は、シート部材及びOリングに作用する力について説明するための(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、燃料電池システムに組み込まれる本発明の実施形態に係る弁装置(開閉弁)の概略縦断面図である。なお、本実施形態では、車両に搭載された燃料電池システムに組み込まれる弁装置を以下に例示して説明しているが、これに限定されるものでなく、例えば、船舶や航空機等、又は業務用や家庭用の定置式の燃料電池等に組み込まれる各種の弁装置に適用することができる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る弁装置が組み込まれた燃料電池システム10は、燃料電池12、アノード系14、カソード系16、図示しない制御系等を備えて構成されている。なお、以下の説明においては、本実施形態に係る弁装置を、燃料電池システム10のカソード系16の開閉弁36aに適用した場合を例として説明する。
【0025】
燃料電池(燃料電池スタック)12は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)からなり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)を図示しないセパレータで挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)、これを挟持するカソード及びアノード等を備える。前記カソード及びアノードは、例えば、白金等の触媒がカーボンブラック等の触媒担体に担持された電極触媒層からなる。また、各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路22及びカソード流路24が形成されている。
【0026】
このような燃料電池12では、アノードに水素(反応ガス、燃料ガス)が供給され、一方、カソードに酸素を含むエア(反応ガス、酸化剤ガス)が供給されると、アノード及びカソードに含まれる触媒上で電極反応が起こり、燃料電池12が発電可能な状態となる。
【0027】
前記燃料電池12は、図示しない外部負荷と電気的に接続され、前記外部負荷によって電流が取り出されると、燃料電池12が発電するようになっている。なお、前記外部負荷とは、走行用のモータ、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置、後記するエアポンプ26等である。
【0028】
アノード系14は、水素タンク28、遮断弁30、パージ弁32、配管a1〜a4等によって構成される。
【0029】
水素タンク28は、高純度の水素を高圧で貯蔵するものであり、配管a1を介して下流側の遮断弁30と接続されている。前記遮断弁30は、例えば、電磁弁からなり、配管a2を介して下流側の燃料電池12のアノード流路22の入口と接続されている。
【0030】
パージ弁32は、例えば、電磁弁からなり、配管a3を介して上流側の燃料電池12のアノード流路22の出口と接続されている。
【0031】
カソード系16は、エアポンプ26、開閉弁36a,36b、背圧弁38、配管(酸化剤ガス流路)c1〜c5等で構成されている。
【0032】
エアポンプ26は、例えば、図示しないモータで駆動される機械式の過給器であり、取り込んだ外気(エア)を圧縮して燃料電池12に供給する。
【0033】
開閉弁36aは、酸化剤ガスの供給側に設けられ、配管c1を介して上流側のエアポンプ26と接続されると共に、配管c2を介して下流側の燃料電池12のカソード流路24の入口と接続されている。また、開閉弁36bは、酸化剤ガスの排出側に設けられ、配管c3を介して上流側の燃料電池12のカソード流路24の出口と接続されると共に、配管c4を介して下流側の背圧弁38と接続されている。
【0034】
背圧弁38は、カソード流路24の出口側に接続されている。背圧弁38は、下流側の希釈器(図示せず)を通じて大気側に排気されるエアの排出量を調節し、同時に、燃料電池12のカソード流路24に供給されるエアの圧力を制御する機能を有している。
【0035】
次に、燃料電池システム10に組み込まれた開閉弁36aの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1中の矢印Xは、流体が流れる方向を示す。
図1に示すように、開閉弁36aは、ボディ40と、このボディ40の上部に図示しないボルトにより装着されるハウジング42と、を備えており、ボディ40及びハウジング42内に、回転駆動源44、ギアプレート46、シャフト48、弁体50、保持部材66、第2のシート部材70、ガイド部材72、第1のシート部材74等を備えている。
【0036】
ボディ40の下部側内部には、一方の面40aから他方の面40bに貫通する流体通路41が形成されており、この流体通路41には、流体の流れ方向Xにおいて上流側から順に、保持部材66と、第2のシート部材70と、弁体50と、第1のシート部材74と、ガイド部材72が配置されている。
【0037】
保持部材66及び第2のシート部材70には、夫々軸方向に沿って貫通した断面円形状の孔部66c,70eが形成されており、これらの孔部66c,70eが流入通路41aを構成している。一方、ガイド部材72には、軸方向に沿って貫通した断面円形状の孔部72cが形成されており、この孔部72cが流出通路41bを構成している。なお、流入通路41aには、配管c1が接続される一方、流出通路41bには、配管c2が接続されている。
【0038】
回転駆動源44は、公知のDCモータ、ステッピングモータ及びブラシレスDC/ACモータ等の中から適宜選択して用いられるものであり、ボディ40に形成された凹部40cに収容されている。回転駆動源44の出力軸44aには、駆動ギア52が固定されており、この駆動ギア52が、アイドルシャフト54に軸支されるアイドルギア56に設けられた大径ギア部56aに噛合する。
【0039】
シャフト48は、ボディ40に設けられた支持孔40dに挿通されて弁軸として機能するものであり、流体通路41内に位置される部位には、流体通路41を開閉するバルブとしての弁体50が連結されている。シャフト48の軸方向の一端部は、弁体50の上部に形成された凹部50aに嵌合している。弁体50は、流体通路41の断面形状に対応した球状に形成されており、その中心軸に沿って貫通形成された円形状の貫通孔50bを有している。なお、図1は、弁体50が流体通路41を全面的に閉止する全閉位置に保持された状態を示している。
【0040】
この場合、回転駆動源44を駆動して、シャフト48と一体的に弁体50が回動されると、貫通孔50bが流入通路41aに連通すると共に、流出通路41bに連通して、流体が流体通路41を通流可能な開弁状態となる。
【0041】
弁体50が固定されたシャフト48は、ベアリング58を介して、ボディ40に軸支される。ボディ40には、流体通路41からボディ40内のギアプレート46等が収容される空間部へのガス漏れを防止するためのシール部材60が装着されている。
【0042】
シャフト48のギアプレート46側の外周部には、弁体50を閉弁方向に回動するように付勢するばね部材62が設置されている。すなわち、ここでは、開閉弁36aは、通常時(回転駆動源44の非通電時)に弁体50がばね部材62の付勢力により流体通路41を全面的に閉止する全閉位置に保持されるノーマルクローズタイプの弁装置である。
【0043】
ギアプレート46は、シャフト48の軸方向の他端部に、ねじ部材64により固定されている。なお、ギアプレート46の回転方向位置が回転角度センサ(図示せず)により検出されることにより、弁体50の開度が検知されるようになっている。
【0044】
ギアプレート46は、硬質樹脂製のギアであり、アイドルギア56の回動力を受けて回動駆動されるように構成されている。ギアプレート46は、その外周部の一部にギア部46aを有しており、このギア部46aがアイドルギア56に設けられた小径ギア部56bに噛合する。
【0045】
保持部材66は、第2のシート部材70を保持するための略円筒状の部材である。保持部材66は、流体通路41の軸方向に沿って形成され、流体通路41に挿入される挿入部66aと、挿入部66aの軸方向の一端部外周面から径方向外側に突出形成された鍔部66bと、を有している。
【0046】
挿入部66aは、孔部66cに連通し且つ当該孔部66cよりも拡径して形成された環状段部66dを有している。挿入部66aの外周面には、保持部材66とボディ40との間を液密乃至気密に保持するためのシール部材68が装着されている。保持部材66は、ボディ40の一方の面40aに対して、鍔部66bを介して図示しないボルトで固定されている。
【0047】
第2のシート部材70は、環状段部66dに嵌合する円筒状の樹脂製部材又は金属製部材である。第2のシート部材70の内周面70bの弁体50側(軸方向の一方の端面70a側)には、弁体50の外周面に接触可能な接触面(シート面)70cが形成されており、この接触面70cは、弁体50の中心軸に向かうにつれて徐々に拡径する縦断面視円弧面に形成されている。なお、接触面70cは、弁体50の中心軸に向かって凸又は凹となる縦断面視円弧面に形成される。第2のシート部材70の外周面には、第2のシート部材70と保持部材66との間を液密乃至気密に保持するためのシール部材70dが装着されている。
【0048】
次に、図2及び図3を参照して、ガイド部材72、第1のシート部材74、Oリング76、室78、間隙部80及びばね部材82について説明する。なお、図2は、図1の部分拡大縦断面図である。図3は、第1のシート部材及びOリングに作用する力について説明するための図2の部分拡大図である。
なお、図3では、説明の便宜のため、ばね部材82を省略すると共に、Oリング76の軸方向両側部分と溝部74cとの間に間隙を設けた状態を描いている。
【0049】
図2に示すように、ガイド部材72は、第1のシート部材74及びばね部材82を保持すると共に、第1のシート部材74を摺動可能に支持するための略円筒状の部材である。
ガイド部材72は、流体通路41の軸方向で弁体50に対向して(所定間隔離間して)配置された部材であり、流体通路41の軸方向に沿って形成され、流体通路41に挿入される挿入部72aと、挿入部72aの軸方向の一端部外周面から径方向外側に突出形成された鍔部72bと、を有している。
【0050】
挿入部72aの外径は、流体通路41の内壁部41cの内径よりも小さく形成されており、ボディ40の内部には、流体通路41の内壁部41cと、ガイド部材72の挿入部72a及び鍔部72bと、第1のシート部材74とによって囲まれた環状の室78が形成されている。
支持部としての鍔部72bは、挿入部72aの弁体50と反対側の端部外周面から軸方向に略直交する方向に沿って延設されている。ガイド部材72は、ボディ40の他方の面40bに対して、鍔部72bを介して図示しないボルトで固定されている。ガイド部材72の中心軸には、流体通路41の軸方向に沿って貫通した円形状の孔部72cが形成されている。
【0051】
第1のシート部材74は、第2のシート部材70(図1参照)と協働して、流体通路41の軸方向両側から弁体50をシートするための円筒状の樹脂製部材又は金属製部材である。すなわち、第1のシート部材74は、ばね部材82の付勢力により弁体50を押圧して、当該弁体50をシートする部材である。
第1のシート部材74は、挿入部72aの外周面に装着され、当該外周面に沿って摺動自在に配置された摺動部74aと、摺動部74aの軸方向の一端部に連続して形成され、弁体50に接触するシート部74bと、を有している。
【0052】
摺動部74aは、軸方向に沿って一定の外径を有する円筒状に形成された部位である。摺動部74aの内周面には、図3に示すように、後記する小径面74kよりも直径が大きく軸方向に沿って一定の内径を有する第1中径面74f及び第2中径面74gと、第1中径面74f及び第2中径面74gよりも直径が大きく軸方向に沿って一定の内径を有する大径面74hと、径方向に沿って延在して第1中径面74f及び第2中径面74gと大径面74hとを繋ぐ第1段差面74i及び第2段差面74jと、が形成されている。
【0053】
大径面74h、第1段差面74i、及び第2段差面74jは、環状の溝部74cを構成している。第1中径面74f及び第2中径面74gは、挿入部72aの外周面に摺接する摺動面を構成している。第1中径面74fは、径方向に沿って延在する軸方向の他端面74nに連続している。
【0054】
摺動部74aの内周面には、環状の溝部74cを介してOリング76が装着されている。すなわち、シール部材としてのOリング76は、摺動部74aの内周面と挿入部72aの外周面との間に配置される部材であって、流体通路41の軸方向で室78に対して所定間隔離間して設けられている。
【0055】
ちなみに、Oリング76の径方向両側部分は、摺動部74a(溝部74c)の内周面及びガイド部材72の挿入部72aの外周面に圧接する(図3参照)。また、摺動部74aと挿入部72aとの間には、微細な間隙CL1,CL2が形成される。この間隙CL1は、流体通路41の第1のシート部材74側と溝部74c(詳しくは溝部74cのうち、Oリング76よりも弁体50側の部分)とを連通し、間隙CL2は、室78と溝部74c(詳しくは溝部74cのうち、Oリング76よりも室78側の部分)とを連通している。このような構成により、流体通路41の第1のシート部材74側の負圧環境下において、流体通路41の第1のシート部材74側の流体は、間隙CL1を経由して溝部74cに流入する一方、室78の流体は、間隙CL2を経由して溝部74cに流入することになる。図3では、説明の便宜のため、間隙CL1,CL2を極端に大きく描いている。
【0056】
なお、以下の説明において、Oリング76の軸方向両側部分のうち、流体通路41の第1のシート部材74側の圧力が加わる面のことを、「一方側受圧面76a」といい、Oリング76の軸方向両側部分のうち、室78の圧力が加わる面のことを、「他方側受圧面76b」という。
【0057】
図2に戻り、シート部74bの内周面には、摺動部74aの内径よりも縮径し且つガイド部材72の内径と略同一の内径を有する段部74dが形成されている。すなわち、シート部74bの内周面には、図3に示すように、第1中径面74f及び第2中径面74gよりも直径が小さく軸方向に沿って一定の内径を有する小径面74kと、小径面74kと径方向に沿って延在する軸方向の一端面74mとを繋ぐと共に弁体50の外周面に接触可能な接触面(シート面)74eと、径方向に沿って延在して小径面74kと第2中径面74gとを繋ぐ第3段差面74lと、が形成されている。
【0058】
段部74dは、挿入部72aに対して弁体50側に所定間隔離間して設けられており、第3段差面74lと挿入部72aとの間には、間隙CL1と連通する間隙CL3が形成される。
【0059】
接触面74eは、弁体50の中心軸に向かうにつれて徐々に拡径する縦断面視円弧面に形成されている。なお、接触面74eは、弁体50の中心軸に向かって凸又は凹となる縦断面視円弧面に形成される。また、段部74dを省略し、シート部74bが摺動部74aの内径と同一の内径を有する構成として、当該シート部74bの内周面の弁体50側に接触面74eを形成してもよい。
【0060】
第1のシート部材74の外径は、図2に示すように、流体通路41の内壁部41cの内径よりも僅かに小さく形成されている。これにより、ボディ40の内部には、流体通路41の弁体50側と室78とを連通する環状の間隙部(連通部)80が形成されている。なお、第1のシート部材74の外径を、流体通路41の内壁部41cの内径と同一にし、第1のシート部材74の外周面に、流体通路41の弁体50側と室78とを連通する溝部を形成してもよいし、第1のシート部材74の内部に、流体通路41の弁体50側と室78とを連通する孔部(貫通孔)を形成してもよい。
【0061】
ばね部材82は、公知のばねの中から適宜選択し、その一例としてコイルスプリングが用いられ、第1のシート部材74を弁体50に向けて付勢する部材である。ばね部材82は、ガイド部材72の挿入部72aの外周面に装着された状態で、室78に配置されている。ばね部材82の軸方向両端部は、ガイド部材72の鍔部72b及び第1のシート部材74の摺動部74aに係着されている。
【0062】
本発明の実施形態に係る開閉弁(弁装置)36aは、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図2及び図3を適宜参照して、流体通路41の第1のシート部材74側におけるOリング76及び第1のシート部材74に作用する力について説明する。
【0063】
流体通路41の弁体50側は、エアポンプ26を介して外部と連通しているため(図1参照)、燃料電池システム10の運転停止時には、外部から流体通路41の弁体50側に大気が流入して、流体通路41の弁体50側の圧力(以下、「バルブ側圧力P1という。」)は大気圧になる。
また、流体通路41の第1のシート部材74側は、燃料電池12のカソード流路24と連通しているため(図1参照)、燃料電池システム10の運転停止時には、流体通路41の第1のシート部材74側の圧力(以下、「シート部材側圧力P2」という。)は小さくなって負圧になる。したがって、バルブ側圧力P1は、シート部材側圧力P2よりも高くなる(P1>P2)。
【0064】
このとき、図3に示すように、接触面74eのうち弁体50との接触部T1よりも径方向内側の部分74e1と、第3段差面74lのうち接触部T1を当該第3段差面74lに投影した位置よりも径方向内側の部分74l1には、シート部材側圧力P2がそれぞれ加わる。両者の受圧面積は同一(略同一)であるため、接触面74eの部分74e1において、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用する押圧力と、第3段差面74lの部分74l1において、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用する押圧力とが相殺(キャンセル)される。
【0065】
また、第1のシート部材74側の流体は、間隙CL1,3を経由して、溝部74c(詳しくは溝部74cのうち、Oリング76よりも弁体50側の部分)に流入するため、第2段差面74jと、Oリング76の一方側受圧面76aには、シート部材側圧力P2がそれぞれ加わる。第2段差面74jの受圧面積と、一方側受圧面76aのうち間隙CL1に対応する面積を除いた部分76a1の受圧面積は、同一(略同一)であるため、第2段差面74jにおいて、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用する押圧力と、一方側受圧面76aの部分76a1において、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0066】
また、第3段差面74lと、Oリング76の一方側受圧面76aには、シート部材側圧力P2がそれぞれ加わる。第3段差面74lのうち間隙CL1に対応する部分74l2の受圧面積と、一方側受圧面76aのうち間隙CL1に対応する部分76a2の受圧面積は、同一(略同一)であるため、第3段差面74lの部分74l2において、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用する押圧力と、一方側受圧面76aの部分76a2において、シート部材側圧力P2により第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0067】
ところで、本実施形態では、流体通路41の弁体50側の流体(大気)が、間隙部80を経由して室78に流入するため、室78の圧力P3は、バルブ側圧力P1と同圧(略同圧)になり、且つシート部材側圧力P2よりも高くなる(P3=P1、P3>P2)。
以下の説明において、室78の圧力P3を「バルブ側圧力P1」という場合もある。
【0068】
そして、室78の流体は、間隙CL2を経由して、溝部74c(詳しくは溝部74cのうち、Oリング76よりも室78側の部分)に流入するため、第1段差面74iと、Oリング76の他方側受圧面76bには、バルブ側圧力P1がそれぞれ加わる。第1段差面74iの受圧面積と、他方側受圧面76bのうち間隙CL2に対応する面積を除いた部分76b1の受圧面積は、同一(略同一)であるため、第1段差面74iにおいて、バルブ側圧力P1により第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用する押圧力と、他方側受圧面76bの部分76b1において、バルブ側圧力P1により第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0069】
また、軸方向の一端面74m及び接触面74eのうち点Vよりも径方向外側の部分74e2と、軸方向の他端面74n及びOリング76の他方側受圧面76bのうち間隙CL2に対応する部分76b2には、バルブ側圧力P1がそれぞれ加わる。軸方向の一端面74m及び接触面74eの部分74e2の受圧面積と、軸方向の他端面74n及び他方側受圧面76bの部分76b2の受圧面積は、同一(略同一)であるため、軸方向の一端面74m及び接触面74eの部分74e2において、バルブ側圧力P1により第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用する押圧力と、軸方向の他端面74n及び他方側受圧面76bの部分76b2において、バルブ側圧力P1により第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用する押圧力とが相殺される。
【0070】
一方、接触面74eのうち部分74e1,74e2を除いた部分74e3(図3の破線部分参照)には、第1のシート部材74を弁体50から離間させる方向に作用するバルブ側圧力P1が加わり、第3段差面74lのうち部分74l1,74l2を除いた部分74l3(図3の破線部分参照)には、第1のシート部材74を弁体50に接近させる方向に作用するシート側圧力P2が加わる。
【0071】
したがって、接触面74eの部分74e3と第3段差面74lの部分74l3の受圧面積は、同一(略同一)であり、かつバルブ側圧力P1はシート部材側圧力P2よりも高いため、第1のシート部材74において、相殺されない部分(図3の破線部分参照)が生じることになる。
【0072】
なお、相殺されない部分の受圧面積は、図2に示すように、ガイド部材72の挿入部72aの外径面積S2から、第1のシート部材74のうち弁体50との接触部T1,T1よりも径方向内側の部分の面積S1を引いた値になる(S2−S1)。この場合、面積S1は、第1のシート部材74の中心に形成された孔部を含む面積のことをいい、外径面積S2は、ガイド部材72の中心に形成された孔部72cを含む面積のことをいう。
【0073】
その結果、第1のシート部材74には、弁体50から離間させる方向の力((P1−P2)×(S2−S1)=差圧による力Y1)が作用する。
【0074】
しかして、本実施形態では、図3に示すように、流体通路41の弁体50側の流体(大気)が、間隙部80を経由して室78に流入し、かつ室78の流体が、間隙CL2を経由して溝部74cに流入するため、第1のシート部材74の軸方向の他端面74n及び他方側受圧面76bの部分76b2にバルブ側圧力P1が加わるため、従来技術(特許文献1に記載の発明)に比較して、第1のシート部材74及びOリング76において、相殺される部分を増加して相殺されない部分を低減することが可能となり、弁体50から離間させる方向の力(差圧による力Y1)を低下させることができる。
【0075】
したがって、本実施形態によれば、流体通路41の第1のシート部材74側における第1のシート部材74のシート性が向上するため、従来技術に比較して、ばね部材82の付勢力Y2を高めに設定する必要がなくなり、弁体50の回動動作時の作動フリクションの増大を防止できると共に、第1のシート部材74の磨耗の増大を防止して第1のシート部材74の耐用性を向上できる。なお、燃料電池システム10の作動時には、ばね部材82の付勢力Y2によって第1のシート部材74を弁体50に確実にシートさせることができるため、弁体50に対する第1のシート部材74のシート性を常時確保できる。
【0076】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0077】
本実施形態では、本発明の弁装置を、バルブ側圧力P1が大気圧であり、シート部材側圧力P2が負圧である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バルブ側圧力P1が正圧であり、シート部材側圧力P2が負圧である場合や、バルブ側圧力P1が正圧(大)であり、シート部材側圧力P2が正圧(小)である場合等にも適用可能である。すなわち、バルブ側圧力P1がシート部材側圧力P2よりも大(P1>P2)の関係になっているものに適用可能である。
【0078】
また、本実施形態では、本発明の弁装置を、燃料電池システム10のカソード系16に設置される開閉弁36aに適用したが、これに限定されるものではなく、各種システム(装置)の任意の箇所に設置される弁装置に適用してもよい。
【0079】
また、本発明の弁装置を、燃料電池システム10のカソード系16に設置される開閉弁36bや背圧弁38に適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
36a 開閉弁(弁装置) 40 ボディ
41 流体通路 41c 内壁部
50 弁体(バルブ) 72 ガイド部材
72b 鍔部(支持部) 74 第1のシート部材(シート部材)
76 Oリング(シール部材) 78 室
80 間隙部(連通部) 82 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を内部に有するボディと、
前記流体通路に配置され、前記流体通路を開閉する球状のバルブと、
前記流体通路の軸方向で前記バルブに対向して配置され、その外周面に軸方向に略直交する方向に沿う支持部を有するガイド部材と、
前記ガイド部材の外周面に沿って摺動自在に配置され、前記バルブをシートする円筒状のシート部材と、
前記シート部材の内周面と前記ガイド部材の外周面との間に配置されたシール部材と、
前記流体通路の内壁部と前記ガイド部材の外周面及び前記支持部と前記シート部材とによって囲まれて形成された室と、
前記室に配置され、前記シート部材を前記バルブに向かって付勢するばね部材と、
を備えた弁装置であって、
前記流体通路の内壁部と前記シート部材との間には、前記流体通路の前記バルブ側と前記室とを連通する連通部が設けられていることを特徴とする弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−29127(P2013−29127A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164136(P2011−164136)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】